説明

カメラ用フォーカルプレンシャッタ

【課題】後羽根のスリット形成羽根が、露光作動の最終段階で中間板の被写体光路用開口部の縁に当接しないようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供すること。
【解決手段】シャッタ地板1と補助地板3の間を中間板2が仕切って、シャッタ地板1と中間板2の間に後羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3の間に先羽根の羽根室を構成している。シャッタ地板1に立設されている押えピン1qは、露光開口(開口部1a)の下側で中間板2を補助地板3側へ押し、円弧状に撓ませている。また、中間板2は、露光開口の下側の領域の幅が、押えピン1qに押されるところで一番狭くなっていて、撓まされ易い形状をしている。そのため、露光作動時に後羽根のスリット形成羽根20の一部が、露光開口の下方へ走り込むとき、スリット形成羽根20が撓んでいても、中間板2の被写体光路用開口部2aの縁2cに当接することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の羽根を有しているシャッタ羽根を二つ備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、各々が複数枚の羽根を有するシャッタ羽根を二つ備えているカメラ用フォーカルプレンシャッタは、シャッタ地板(シャッタ基板などともいう)と補助地板(カバー板などともいう)との間を中間板(仕切り板などともいう)で仕切ることによって二つの羽根室を構成し、それらの羽根室内に、二つのシャッタ羽根を個別に配置するようにしている。そして、それらの3枚の板部材の各々には、被写体光路用の開口部が相互に重なるようにして形成されており、それらの開口部の一つ又は複数によって、長方形を横長にした露光開口が形成されている。
【0003】
また、各々のシャッタ羽根は、いずれも、露光開口の一方の側方領域、即ち露光開口を形成している長方形の一方の短辺の外側となる領域において、シャッタ地板に対して一端を個々に枢着されている二つのアームと、それらのアームの両方に対して、それらの自由端に向けて順に枢支された細長い短冊状をした複数枚の羽根とからなっており、撮影時にアームが回転すると、各々の複数枚の羽根は、それらの幅方向の直線状の端縁が、露光開口の長辺との平行性を保ちながら作動するように構成されている。そして、各々のシャッタ羽根は、露光開口から退いているときは、複数枚の羽根の重なり量を大きくした重畳状態にさせられ、露光開口を覆っているときは、複数枚の羽根の重なり量を小さくした展開状態にさせられる。
【0004】
また、二つのシャッタ羽根が露光作動を行うときは、先ず、展開状態にある方のシャッタ羽根(以下、先羽根という)が作動を開始させられ、複数枚の羽根の重なり量を大きくしながら露光開口を開いてゆき、続いて、重畳状態にある方のシャッタ羽根(以下、後羽根という)が同じ方向へ作動を開始させられ、複数枚の羽根の重なり量を小さくしながら露光開口を覆っていくことにより、先羽根の最後部を走行していく羽根(以下、スリット形成羽根という)と、後羽根の最前部を走行していく羽根(以下、スリット形成羽根という)との間に形成されたスリットにより、撮像面を一方から他方へ連続的に露光していくようにしているが、その露光作動を行うときの駆動源としては、ばねを用いるものと、モータを用いるものとが知られている。
【0005】
そして、ばねを駆動源としたものとしては、上記の先羽根のアームの一つに駆動ピンを連結させた駆動部材(以下、先羽根用駆動部材という)を、駆動ばね(以下、先羽根用駆動ばねという)の付勢力によって回転させるようにし、上記の後羽根のアームの一つに駆動ピンを連結させた駆動部材(以下、後羽根用駆動部材という)を、駆動ばね(以下、後羽根用駆動ばねという)の付勢力によって回転させるように構成しているのが普通であるが、周知のように、そのような構成のフォーカルプレンシャッタには、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材とを露光作動開始直前の状態に保持しておくための構成の違いによって、ダイレクトタイプと言われているものと、係止タイプと言われているものとがある。
【0006】
また、このような、ばねを駆動源として露光作動を行うようにしたフォーカルプレンシャッタの中には、ダイレクトタイプの場合であっても係止タイプの場合であっても、撮影前には、後羽根だけではなく、先羽根も重畳状態にして、露光開口を全開にしておき、撮影対象とする被写体像を、撮影用の撮像素子を介してモニタで観察可能にし、撮影に際してレリーズボタンを押すと、先羽根を重畳状態から展開状態にして露光開口を閉じさせておいてから、上記のようにして露光作動を行わせるものが知られているが、下記の特許文献1には、そのように構成したダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタが記載されている。
【0007】
他方、モータを駆動源としたものは、第1のモータの回転子と一体化されている出力ピン(駆動ピン)を先羽根のアームの一つに連結させ、第2のモータの回転子と一体化されている出力ピン(駆動ピン)を後羽根のアームの一つに連結させたものが知られており、下記の特許文献2には、そのように構成されたフォーカルプレンシャッタが、第2実施例として記載されている。
【0008】
そして、そのような構成をしたフォーカルプレンシャッタの場合には、上記のような、ばねを駆動源として露光作動を行うようにしたものの場合と同様に、撮影後直ちにセット作動を行わせ、撮影に際しては、直ちに、先羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、続いて後羽根を重畳状態から展開状態に作動させるようにすることも可能であるが、上記の特許文献1に記載されているフォーカルプレンシャッタのように、撮影前には、先羽根と後羽根の両方を重畳状態にして露光開口を全開にし、撮影用の撮像素子を介して被写体像をモニタで観察することを可能にしておき、撮影に際してレリーズボタンを押すと、先羽根を展開状態にして露光開口を閉じさせておいてから、先ず先羽根に露光作動を開始させ、次に後羽根に露光作動を開始させることも可能である。
【0009】
このように、二つのシャッタ羽根を備えたフォーカルプレンシャッタの場合には、採用されるカメラの仕様によって、二つのシャッタ羽根に種々の異なる作動をさせることが要求される。そのため、二つのシャッタ羽根の駆動装置は、それらの仕様に対応して異なったものになるが、二つのシャッタ羽根自体の基本構成と配置は殆ど同じである。そして、このような二つのシャッタ羽根に対しては、露光作動時にはもちろんであるが、それ以外の作動時においても、高速で安定した作動の行われることが要求されている。
【0010】
ところが、各々のシャッタ羽根は、上記のように、二つのアームと、それらに枢支された細長い短冊状の複数枚の羽根とで構成されていて、なお且つ、それらの複数枚の羽根は、軽量化を図るために、いずれも薄い材料で製作されているため、重畳状態から展開状態に作動させられながら露光開口を覆っていくときには、各羽根の長さ方向の中央部の両面を支える(抑える)ものがなくなって、走行中の各羽根に撓みを生じさせ、その中央部を羽根の面とは直交する方向へ膨らませてしまうことがある。そして、一番先頭を走っているスリット形成羽根の長さ方向の略中央部に形成された膨らみ部が、露光開口の閉鎖時に、中間板に形成された被写体光路用の開口部の縁に衝突してしまい、シャッタ羽根の作動に乱れ(バウンドや傾きなど)を生じさせたり、羽根を損傷させたりするような事態が発生してしまう。
【0011】
そこで、そのような事態の発生を防止するために、露光開口の二つの長辺に対応して中間板に形成されている被写体光路用開口部の縁を、いずれも略V字状に形成するようにしたり、さらにその上に、露光作動時において、一方のシャッタ羽根が複数枚の羽根を展開させながら走行していく方向の縁には、そのようなV字形状の頂点から羽根の走行方向に延びているようにして所定の長さの溝を形成したりすることが、下記の特許文献3に記載されている。
【0012】
ところが、近年のカメラ用フォーカルプレンシャッタの中には、シャッタ羽根の高速化に伴う複数枚の羽根のさらなる改良によって、中間板の開口部の縁を、特許文献3に記載されているようなV字形状にしたり、そのV字の頂点に溝を形成したりするだけでは済まなくなってきて、平板状に製作されている中間板を、これまでのように、シャッタ地板に対して平板状のままにして組み付けるのではなく、露光作動時においてシャッタ羽根が複数枚の羽根を展開させながら走行していく方向の領域が、最初から、羽根の膨らむ方向に僅かに膨らみを持った円弧面となるようにして組み付けたものも考えられるようになってきた。
【0013】
本発明は、このように、二つのシャッタ羽根を備えた種々の構成のフォーカルプレンシャッタであって、シャッタ羽根が、重畳状態から展開状態に作動する過程において、先頭を走っているスリット形成羽根が、中間板に形成された被写体光路用開口部の走行方向の縁に衝突し、そのシャッタ羽根の作動に乱れが生じないようにしたり、シャッタ羽根が破損されたりしないようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタの改良に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−222928号公報
【特許文献2】特開2004−264468号公報
【特許文献3】実用新案登録第2589062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、二つのシャッタ羽根を備えた各種のフォーカルプレンシャッタの場合には、これまでにも、中間板の形状や組み付け構成について改良が重ねられてきた。ところが、最近では、特にプロカメラマンやカメラマニアに愛用されるような高級カメラ用フォーカルプレンシャッタの場合には、シャッタ羽根の高速作動がこれまで以上に一段と安定して得られることを要求されるようになってきた。そのため、シャッタ羽根が重畳状態から展開状態に作動する過程で先頭を走っているスリット形成羽根は、そのスリット形成縁の端面が、中間板に形成された被写体光路用開口部の走行方向の縁の端面に対し、局部的にでも触れることがないようにしたり、仮に僅かに触れるようなことがあったとしても、殆ど作動には乱れを生じさせない構成にする必要に迫られている。
【0016】
このような要求に応えるためには、スリット形成羽根の走り込んでいく方向にある中間板の領域が、羽根の膨らみ状態に対応して柔軟に変形してくれるようにすることが好ましい。そこで、そのようにするための一つの方法としては、中間板をこれまで以上に薄くすることが考えられる。しかしながら、中間板の厚さは、これまでにも、可能な範囲でかなり薄くしてきているため、これまで以上に薄くしてしまうと、俗に言う腰が弱くなってしまって、シャッタ羽根の作動開始直後から発生することが知られている、作動方向とは異なる方向へ働く不規則な力を抑えることができなくなってしまい、かえって全作動工程における各羽根のガタツキを大きくしてしまうという問題が生じてしまう。
【0017】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シャッタ地板と補助地板の間を中間板で仕切って構成した二つの羽根室に、二つのシャッタ羽根を一つずつ配置したカメラ用フォーカルプレンシャッタであって、シャッタ羽根が重畳状態から展開状態になる方向へ作動している過程において、スリット形成羽根の先端縁が、中間板に形成された被写体光路用開口部の縁に局部的に接触するようなことがあったとしても、そのスリット形成羽根が従来よりも安定して作動し得るようにした、特に高級カメラに適用して有効なカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明は、シャッタ地板と補助地板の間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、それらの三つの板部材の被写体光路用開口部の少なくとも一つによって露光開口を形成しており、それらの羽根室に個別に配置されている先羽根と後羽根は、細長い複数枚の羽根を有していて、露光作動時には、先羽根が複数枚の羽根を展開状態から重畳状態にして露光開口を開き、後羽根が複数枚の羽根を重畳状態から展開状態にして露光開口を閉じるカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、前記三つの板部材のうち前記中間板との間に後羽根を配置している第2の板部材は、前記露光作動方向側にある露光開口形成辺から該第2の板部材の外形形状形成縁までの中間部に押えピンを立設していて、前記中間板を該押えピンによって押し前記三つの板部材のうちの第3の板部材側に撓ませており、前記中間板は、前記露光開口形成辺の外側になる領域の幅が、前記押えピンによって押されているところで一番狭く、該幅を規制する二つの規制縁は、その一番狭いところから前記露光開口形成辺の両端方向にいくにしたがい、露光開口側の規制縁が前記露光開口形成辺の両端に徐々に近付き、他方の規制縁が前記第2の板部材の前記外形形状形成縁に徐々に近付いていくように形成されているようにする。
【0019】
その場合、前記中間板は、前記露光開口形成辺の外側となる領域のうち一番狭いところの幅が、前記押えピンの断面の、前記露光開口形成辺とは直交する方向の最大寸法と略同じであるようにしたり、前記露光開口形成辺の外側となる領域のうちの一番狭いところが、前記露光開口形成辺とは直交する方向に形成されたスリットによって分離されていて、該スリットの両側となる部位を、前記押えピンによって押されているようにしたりすると、一層好ましくなる。
【0020】
また、前記中間板は、前記露光作動方向側にある前記被写体光路用開口部の縁が略V字状に形成されていて、前記露光作動方向側にある外形形状形成縁が前記露光開口形成辺と略平行に形成されており、さらに、前記露光開口形成辺の外側となる領域が前記V字状の頂点から前記露光開口形成辺とは直交する方向に形成されたスリットによって分離されており、該スリットの両側の部位が、前記押えピンによって押されているようにしてもよい。
【0021】
更に、前記三つの板部材のうち前記中間板との間に先羽根を配置している第3の板部材は、前記露光開口形成辺に対向する露光開口形成辺から該第3の板部材の外形形状形成縁までの中間部に前記中間板に向けて第2の押えピンを立設しており、前記中間板は、前記第2の露光開口形成辺の外側となる領域が、前記第2の露光開口形成辺とは直交する方向に形成されたスリットで分離されていて、該スリットの両側部位が、前記第2の押えピンに押されて前記第2の地板側に撓まされているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、シャッタ地板と補助地板の間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、それらの羽根室に二つのシャッタ羽根を一つずつ配置しているカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、露光作動時にシャッタ羽根が作動していく側の中間板の領域が、それらのシャッタ羽根の作動で生じる不規則な力に対応して従来よりも好適に撓み得るようにしたので、重畳状態から展開状態まで作動する後羽根のスリット形成羽根の一部がその領域に走り込んでいくとき、スリット形成羽根が撓んでいて中間板に形成されている被写体光路用開口部の縁に接触したとしても、従来よりも作動に乱れを生じることがなく、一層安定して作動を終了させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1を被写体側から見た平面図であって、露光作動を開始する直前の状態を示したものである。
【図2】図1に示されているシャッタ地板を透かして見た平面図であって、後羽根が露光作動を終了した状態を示したものである。
【図3】図1の要部断面図である。
【図4】実施例2を被写体側から見た平面図であって、露光作動を開始する直前の状態を示したものである。
【図5】図4に示されているシャッタ地板を透かして見た平面図であって、後羽根が露光作動を終了した状態を示したものである。
【図6】図4の要部断面図である。
【図7】実施例3を被写体側から見た平面図であって、露光作動を開始する直前の状態を示したものである。
【図8】図7に示されているシャッタ地板を透かして見た平面図であって、後羽根が露光作動を終了した状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、三つの実施例によって説明する。上記したように、本発明は、駆動装置の異なる種々のフォーカルプレンシャッタに適用することが可能であるが、これらの実施例については、いずれも、二つのシャッタ羽根が、ばねを駆動源として露光作動を行い、露光作動終了後には直ちにセット作動をさせられるようにした、従来から良く知られているオーソドックスな作動を行うフォーカルプレンシャッタの場合で説明する。尚、図1〜図3は実施例1を説明するためのものであり、図4〜図6は実施例2を説明するためのものであり、図7及び図8は実施例3を説明するためのものである。
【実施例1】
【0025】
図1〜図3を用いて実施例1を説明する。尚、図1は、カメラに内蔵されたとき、本実施例のフォーカルプレンシャッタを、被写体側から見て示した平面図であって、露光作動を開始する直前の状態を示したものであるが、駆動装置については周知であるため、具体的な構成の図示が省略されている。また、図2は、図1に示されているシャッタ地板を透かして見た平面図であって、後羽根が露光作動を終了した状態を示したものであるが、図1に示されているシャッタ地板の必要箇所と、シャッタ地板に取り付けられている二つの緩衝部材についてだけは二点鎖線で示してある。更に、図3は、図1の要部断面図であるが、この図面は、露光開口の下方部を水平に切断し、上方を見て右側を部分的に示したものである。
【0026】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。図1において、シャッタ地板1の略中央部には、長方形を横長にした被写体光路用の開口部1aが形成されている。また、周知のように、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられている。そして、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板2との間を後羽根の羽根室にし、中間板2と補助地板3との間を先羽根の羽根室にしている。しかしながら、本発明は、そのような羽根室の配置構成に限定されず、シャッタ地板1と中間板2の間を先羽根の羽根室にし、中間板2と補助地板3の間を後羽根の羽根室にしてもよく、そのようにする場合のことについては後述する。
【0027】
シャッタ地板1と同じような板部材である中間板2と補助地板3にも、上記の開口部1aとは形状や大きさの異なる被写体光路用の開口部2a,3aが形成されている。それらのうち、中間板2の開口部2aは、シャッタ地板1の開口部1aより大きいが、その特異な形状については、中間板2の全体形状と共に後述する。また、補助地板3の開口部3aは、図1では分かりにくいが、図2から分かるように、シャッタ地板1の開口部1aと同様に、長方形をしている。しかしながら、実際には、開口部1aよりも若干大きい。そのため、本実施例の場合には、被写体光を通過させるためのシャッタユニットとしての露光開口は、開口部1aによって決められていることになるが、周知のように、それらの三つの開口部の二つ以上によって横長の長方形に合成されることもあり、本発明は、そのように構成することを妨げるものではない。
【0028】
尚、本実施例の説明においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタがカメラに内蔵されたとき、シャッタ地板1が被写体側を向いて配置されていることを前提にするが、周知のように、デジタルカメラに内蔵される場合には、補助地板3を被写体に向けて配置される場合もある。また、周知のように、中間板2の厚さは、シャッタ地板1よりかなり薄い。それに対して、補助地板3の場合には、シャッタ地板1ほどではないにしても、かなり厚くすることがあり、本発明の場合にもそのようにすることを妨げるものではないが、本実施例の場合には、図3に示されているように薄くて、中間板2と殆ど同じ厚さをしている。
【0029】
このような三つの板部材のうち、シャッタ地板1には、開口部1aの左側の領域に、円弧状の二つの長孔1b,1cが形成されており、それらの下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。また、中間板2は、露光開口よりも左側における領域が、シャッタ地板1の場合よりは小さくて、長孔1b,1cが形成されている領域とは重ならないようになっているが、補助地板3の場合は、全体的にシャッタ地板1と略同じ大きさをしているため、周知の後述する理由によって、それらの長孔1b,1cと重なるところには、略同じ形状をした図示していない長孔が形成されている。
【0030】
図1において、シャッタ地板1の表面側には軸1d,1e,1fが立設されている。また、背面側には、軸1g,1h,1i,1j,1k,1m,1n,1pが立設されているほか、押えピン1qが設けられている。それらのうち、背面側の軸1g,1iは、表面側の軸1d,1eと同心上に立設されている。また、背面側に立設されている軸1kの根元には、所定の厚さで環状をした受け部1rが形成されており、そこに、中間板2の左上方部が補助地板3側から接触し得るようになっている。尚、図2においては、軸1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1m,1n,1pの図示を省略しているが、軸1kと、押えピン1qと、受け部1rとは、シャッタ地板1の外形や、長孔1b,1cや、緩衝部材4,5と同様に、二点鎖線で示されている。
【0031】
上記のうち、シャッタ地板1の表面側に立設されている軸1d,1eには、図示していない先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が回転可能に取り付けられていて、図示していない先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねによって、それぞれ時計方向へ回転するように付勢されている。また、シャッタ地板1の表面側に立設されている軸1fには、カメラ本体側の部材の作動に伴って往復回転する図示していないセット部材が回転可能に取り付けられている。尚、これらの構成は、周知であるため図示を省略したが、例えば、特開2008−46533号公報に記載されている構成などが、その典型例である。
【0032】
そして、それらの先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材とは、各々、シャッタ地板1側に駆動ピンを有していて、それらをシャッタ地板1の円弧状の長孔1b,1cに貫通させ、先端を、補助地板3に形成された上記の図示していない円弧状の長孔に挿入させているが、図1及び図2においては、そのような先羽根用駆動部材の駆動ピン6と後羽根用駆動部材の駆動ピン7だけを、ハッチングを付けて示してある。尚、それらの駆動部材は、図1に示された状態においては、各々の駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられた状態にあって、それらの時計方向への回転は、周知のように、係止タイプのフォーカルプレンシャッタの場合には、図示していない各々の係止部材によって係止され、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタの場合には、上記のセット部材によって抑止されていることになる。
【0033】
シャッタ地板1の背面側に立設されている軸1k,1m,1n,1pには、それぞれ所定の空間を空けて、中間板2と補助地板3が取り付けられている。そして、それらの取付け方は、中間板2の場合には、周知のようにして、左上隅を除く三つの隅に形成された孔を、軸1m,1n,1pに対して、それらの軸方向へ移動可能に嵌合させているだけである。
【0034】
また、補助地板3の場合も、周知のようにして、軸1k,1m,1n,1pに取り付けられている。即ち、軸1n,1pの先端近傍の周面には全周にわたってリング状の溝が形成されており、補助地板3には、それらに対応するところに、大小の孔をつなげたような鍵穴状の孔が横長にして形成されている。更に、軸1k,1mの先端面には、ねじ孔が形成されており、補助地板3には、それらに対応するところに、孔が形成されている。そこで先ず、鍵穴状の孔の大きいところを軸1n,1pに嵌合させてから、補助地板3を左方向へ移動させ、鍵穴状の孔の小さいところの縁を、軸1n,1pのリング状の溝に挿入させる。その後、補助地板3は二つのねじによって、軸1k,1mの先端面に取り付けられている。そして、軸1m,1pには、中間板2と補助地板3の間に、図3に示されているような間座8が、各々嵌められている。
【0035】
そこで次に、このようにして取り付けられている中間板2の形状と取付け状態を説明する。開口部2aの左側における中間板2の外形形状、即ち露光開口の左側となる中間板2の外形形状は、上記したように、シャッタ地板1の長孔1b,1cとは重ならないようにするために複雑な形状をしている。また、露光開口の左側の短辺に対応している開口部2aの縁は、全体として直線状であるが、下方の一部だけが左側へ膨らんだ曲線状に形成されている。更に、開口部2aの右側における中間板2の外形形状、及び露光開口の右側の短辺に対応している開口部2aの縁は、いずれも直線状に形成されている。そして、これらの形状は、周知である。
【0036】
それに対して、本実施例の中間板2は、シャッタ地板1の開口部1a、即ち露光開口の上方における領域と、露光開口の下方における領域の形状が特異な形状をしている。そこで先ず、露光開口の上方になる領域、即ち本実施例の場合には、後述する後羽根が重畳状態となって格納される側の領域の形状を説明する。本実施例の中間板2においては、露光開口の上側の長辺に対応している開口部2aの縁は、特許文献3に記載されているようにV字状をしている。また、この縁との間に、露光開口の上方領域を形成している中間板2の外形形状形成縁2bは、従来のように、露光開口の長辺に対して略平行に形成されているのではなく、露光開口に向けて凸状となる円弧状に形成されている。
【0037】
次に、後述する後羽根のスリット形成羽根が露光作動の最後に走り込んでいく側の露光開口形成辺の外側の領域、即ち本実施例の場合には露光開口の下側の長辺の外側になる領域の形状を説明する。露光開口の下側の長辺に対応している中間板2の縁2cは、曲線によって、特許文献3に記載されている縁よりも大きなV字状となるように形成されている。また、その縁2cとの間に、露光開口の下方領域を形成している中間板2の外形形状形成縁2dは、従来のように、露光開口の長辺に対して略平行に形成されているのではなく、上記の縁2cと対称的な形状に形成されている。そのため、それらの縁2c,2dによって形成されている上下方向の幅は、両方のV字状の頂点間で最も狭くなっており、その一番狭い幅のところで、シャッタ地板1に設けられた押えピン1qに接触させられている。
【0038】
即ち、露光開口の下方領域の上下方向の幅を規制している二つの縁2c,2dは、その幅の一番狭いところから、露光開口の長辺の左端方向と右端方向へ各々向かうにしたがって、一方の縁2cがその長辺の両端に徐々に近付いてゆき、他方の縁2dがシャッタ地板1や補助地板3の下方の外形形状形成縁に徐々に近付いていくように、曲線で形成されている。そして、図3に示されているように、本実施例の中間板2は、その一番狭いところを押えピン1qに押され、補助地板3側に撓まされているようにして、シャッタ地板1に取り付けられている。
【0039】
尚、本実施例の場合には、押えピン1qの頂面がフラットに形成されているが、本発明は、そのような形状に限定されず球面に形成されていても構わない。また、本実施例の押えピン1qは円柱状をしているが、例えば四角柱にしても差し支えなく、その場合には、頂面を円弧面にしても構わない。更に、本実施例の場合には、中間板2の下方領域の一番狭いところの幅寸法が、押えピン1qの、露光開口の長辺とは直交する方向の寸法(直径)と略同じになっている。しかしながら、一番狭いところの幅寸法を、押えピン1qによって撓まされ易い範囲で、もっと大きくしても差し支えない。
【0040】
次に、先羽根と後羽根の構成を説明する。先ず、中間板2と補助地板3との間に配置されている先羽根は、シャッタ地板1の背面側に立設された上記の二つの軸1g,1hに一端を枢着されている二つのアーム9,10と、それらの自由端に向けて順に枢支された4枚の羽根11,12,13,14とで構成されていて、それらの最先端に枢支された羽根14をスリット形成羽根としている。そして、アーム9は、周知の孔に、先羽根用駆動部材の駆動ピン6を嵌合させている。また、アーム9,10と羽根11,12,13,14との重なり関係は、アーム9,10が最もシャッタ補助地板3側に存在し、羽根11が最も中間板2側に存在している。
【0041】
また、シャッタ地板1と中間板2との間に配置されている後羽根は、シャッタ地板1の背面側に立設された上記の二つの軸1i,1jに一端を枢着されている二つのアーム15,16と、それらの自由端に向けて順に枢支された4枚の羽根17,18,19,20とで構成されていて、それらの最先端に枢支された羽根20をスリット形成羽根としている。そして、アーム15は、周知の孔に、後羽根用駆動部材の駆動ピン7を嵌合させている。また、アーム15,16と羽根17,18,19,20との重なり関係は、アーム15,16が最もシャッタ地板1側に存在し、羽根17が最も中間板2側に存在している。
【0042】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、露光作動の開始直前の状態を示したものである。そのため、先羽根の4枚の羽根11〜14は展開状態となって露光開口、即ち本実施例の場合には開口部1aを覆っており、後羽根の4枚の羽根17〜20は重畳状態となって開口部1aの上方領域に格納されている。このような状態において、カメラのレリーズボタンが押されると、軸1d,1eに対して回転可能に取り付けられている図示していない周知の先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材とが、所定のタイミングで順に回転可能にさせられる。
【0043】
そこで先ず、先羽根用駆動部材が回転可能にさせられると、先羽根用駆動部材は、図示していない周知の先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられる。それによって、駆動ピン6がアーム9を時計方向へ回転させるので、先羽根の4枚の羽根11〜14は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしつつ開口部1aの下方へ作動し、スリット形成羽根14の上端縁によって、開口部1aを開いていく。そして、周知のように、被写体が暗い場合やフラッシュ撮影をする場合は、先羽根の4枚の羽根11〜14が開口部1aを全開にしてから、後羽根用駆動部材が時計方向へ回転させられるが、本実施例の作動説明は、被写体が明るくてフラッシュを使用しない場合で説明する。
【0044】
上記のように、先羽根用駆動部材が時計方向の回転を開始した後、所定時間が経過すると、後羽根用駆動部材が回転可能になって、図示していない周知の後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転する。それによって、駆動ピン7がアーム15を時計方向へ回転させるので、後羽根の4枚の羽根17〜20は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ開口部1a内へ作動してゆき、スリット形成羽根20の下端縁によって、開口部1aを上方から閉じていく。そのため、それ以後は、先羽根のスリット形成羽根14と後羽根のスリット形成羽根20の間に形成されたスリットにより、撮像素子の撮像面を上方から下方に向けて露光していく。
【0045】
ところで、本実施例の場合には、露光開口の上方における中間板2の外形形状が従来とは異なっている。即ち、本実施例の中間板2は、既に説明したように、後羽根の4枚の羽根17〜20が重畳状態にさせられて格納される側の外形形状形成縁2bが、露光開口、即ち開口部1a側に向けて凸状となる円弧状になるように形成されている。そのため、図1に示された状態においては、後羽根の4枚の羽根17〜20は、それらの羽根の長さ方向の略中央部において、中間板2との重なり幅が最も小さくなっている。そこで、本実施例の中間板2が何故このような形状をしているのかを、ここで説明しておく。
【0046】
本実施例のように、シャッタ地板1と中間板2との間に後羽根が配置され、中間板2と補助地板3の間に先羽根が配置されている場合には、周知のように、シャッタ地板1と中間板2との間は、後羽根の4枚の羽根17〜20が重畳状態になるところで最も大きな間隔を必要とするし、中間板2と補助地板3との間では、先羽根の4枚の羽根11〜14が重畳状態になるところで最も大きな間隔を必要とする。即ち、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板2の間の羽根室は、開口部1aの上方において最も大きな間隔を必要とするし、中間板2と補助地板3の間の羽根室は、開口部1aの下方において最も大きな間隔を必要とする。
【0047】
ところが、最近では、カメラの小型化に伴い、シャッタ地板1と補助地板3との間隔を少しでも小さくすることが要求されているため、重畳状態になっているときには、先羽根の4枚の羽根11〜14は、中間板2と補助地板3によって比較的強く挟まれ、後羽根の4枚の羽根17〜20は、シャッタ地板1と中間板2とによって比較的強く挟まれるようになっている。そのため、先羽根の4枚の羽根11〜14の場合も、後羽根の4枚の羽根17〜20の場合にも、重畳状態から展開状態に作動するときには、従来よりも大きな摩擦抵抗力に抗して作動を開始させる必要がある。
【0048】
このような状況下において、本実施例の場合には、先羽根の4枚の羽根11〜14が、重畳状態から展開状態に作動させられるのは、セット作動を行うときである。そのため、先羽根の場合には、その作動開始のタイミングや、そのときにおけるスリット形成羽根の姿勢が多少不安定になったとしても、撮影自体には特に大きな問題を生じさせることがない。
【0049】
ところが、後羽根の4枚の羽根17〜20が、重畳状態から展開状態に作動するのは、露光作動を行うときである。そのため、羽根17〜20の相互間の摩擦抵抗力や、スリット形成羽根20とシャッタ地板1との間の摩擦抵抗力や、羽根17と中間板2との間の摩擦抵抗力が大きいと、部品加工や組立加工上での僅かな差異によって、作動開始のタイミングが不安定になったり、スリット形成羽根20が若干傾いて作動を開始したりしてしまうようになる。その結果、特に高速で撮影する場合には、露光時間が安定して得られなくなったり、露光むらを発生させたりして、極めて大きな問題になる。そこで、本実施例の場合には、重畳状態における後羽根の羽根17と中間板2との接触面積を、全体構成上からみて効率的に小さくするために、中間板2の外形形状形成縁2bを円弧状にしている。
【0050】
つまり、中間板2の上方両端の位置は、シャッタ地板1に対する取付けの都合や、その取付け部が羽根の作動に干渉しないようにするために、従来どおりのままにしており、その上で外形形状形成縁2bを円弧状にしたのは、羽根17と中間板2との接触面積を小さくして摩擦抵抗力を小さくすることにより、間接的にスリット形成羽根20の作動開始を円滑且つ安定したものにすると共に、作動を開始するとき、スリット形成羽根20に左右方向の傾きが生じにくくなるように配慮したものである。尚、本実施例においては、外形形状形成縁2bを円弧状に形成しているが、露光開口に向けて全体として凸状になる形状に形成されていれば、円弧状でなくても同等の効果は得られる。
【0051】
ここで、先羽根と後羽根による露光作動の説明に戻る。本実施例における先羽根と後羽根は、上記のようにして、所定の間隔のスリットを形成して、撮像素子の撮像面を露光していくが、先羽根の4枚の羽根11〜14の場合には、上記のように隣接する羽根同士の重なりを大きくしていくため、徐々に撓みにくくなって開口部1aの下方位置へ格納されていく。そして、スリット形成羽根14の上端縁が開口部1aから退いた直後に、先羽根用駆動部材の駆動ピン6が緩衝部材4に当接することによって停止させられる。
【0052】
他方、後羽根の4枚の羽根17〜20は、上記のように隣接する羽根同士の重なりを小さくして開口部1a内に進入していくため、徐々に撓み易くなってゆく。しかも、その場合には、アーム15,16に対する4枚の羽根17〜20の配置関係から、4枚の羽根17〜20は、それらの長さ方向の略中央部が中間板2側に膨らむように撓まされる。そのため、露光作動の最終段階においてスリット形成羽根20のスリット形成縁側の一部が走り込んでいく方の中間板2の縁が、露光開口の長辺と平行に形成されていると、その縁の端面にスリット形成羽根20のスリット形成縁の端面が衝突してしまうことがある。
【0053】
ところが、本実施例の中間板2は、露光開口の下方になる領域が、上記のような形状に形成されていて、予め押えピン1qによって、一番狭い幅の撓み易いところを補助地板3側に押され、円弧面となるようにして組み付けられているため、スリット形成羽根20が上記のように膨らんでも、開口部2aの縁2cの端面には衝突することがなく、また仮に衝突したとしても露光作動には全く影響を与えず、しかもその衝突によってスリット形成羽根20を破損させてしまうことが全くない。そして、後羽根の露光作動は、その直後に、後羽根用駆動部材の駆動ピン7が緩衝部材5に当接することによって停止させられる。その状態が、図2に示されている状態である。
【0054】
その後、図2に示された状態において、撮像情報が撮像素子から画像処理回路を介して記憶装置に記憶されると、直ちにセット作動が開始されるが、そのセット作動は周知のようにして行われるので、簡単に説明する。上記したように、図1に示されているシャッタ地板1の軸1fには、図示していない周知のセット部材が回転可能に取り付けられており、そのセット部材は、上記のようにして撮影が終了すると、図示していないカメラ本体側の部材によって初期位置から時計方向へ回転させられる。それによって、先ず、上記の先羽根用駆動部材が先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転を開始させられ、続いて、上記の後羽根用駆動部材が後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転を開始させられる。
【0055】
そこで先ず、先羽根用駆動部材が反時計方向へ回転を開始すると、図2において、駆動ピン6がアーム9を反時計方向へ回転させるので、開口部1aの下方位置に格納されていた先羽根の4枚の羽根11〜14が、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしつつ、スリット形成羽根14を先頭にして上方へ作動させられていく。そして、先羽根のスリット形成羽根14と後羽根のスリット形成羽根20の重なりが所定量に達すると、上記の図示していないセット部材が、後羽根用駆動部材を後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させ始める。そのため、駆動ピン7がアーム15を反時計方向へ回転させるので、開口部1aを覆っていた後羽根の4枚の羽根17〜20が、隣接する羽根同士の重なり量を大きくしつつ、上方へ作動させられていく。
【0056】
その結果、それ以後は、先羽根と後羽根は、スリット形成羽根同士の重なり量を好適に保ちながら作動を続けてゆくが、先羽根の4枚の羽根11〜14が展開状態となって開口部1aを覆い、後羽根の4枚の羽根17〜20が重畳状態となって開口部1aの上方位置に格納された段階になると、セット部材の回転は停止させられる。その後、係止タイプのフォーカルプレンシャッタの場合には、セット部材が初期位置へ復帰することによって、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材は、各々の係止部材によって係止され、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタの場合には、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材は、セット部材によって、各々の鉄片部材を各々の電磁石に接触した状態を維持される。図1は、実質的にそのときの状態を示したものである。
【0057】
尚、本実施例は、図示していない周知の先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材が、露光作動時には、各々ばねを駆動源として回転されるように構成されたフォーカルプレンシャッタとして説明したが、本発明は、そのようなフォーカルプレンシャッタに限定されず、特許文献1に記載されているような、先羽根用駆動部材を二つの駆動部材で構成するようにしたフォーカルプレンシャッタにも適用できるし、特許文献2に第2実施例として記載されているような、モータを駆動源としたフォーカルプレンシャッタにも適用することができる。
【0058】
更に、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板2の間を後羽根の羽根室としているが、フォーカルプレンシャッタによっては、中間板2と補助地板3の間を後羽根の羽根室としたものもある。本発明は、そのような構成のフォーカルプレンシャッタにも適用可能であって、その場合には、本実施例より補助地板3を厚くして、その補助地板に本実施例の押えピン1qに相当する押えピンを設けるようにし、中間板2が、その押えピンによってシャッタ地板1側に撓まされているように構成すればよい。
【実施例2】
【0059】
次に、図4〜図6を用いて実施例2を説明するが、これらの図面は、本実施例を、実施例1の説明に用いた図1〜図3と同様にして示したものである。そして、本実施例の構成は、中間板の形状が、上記の実施例1の場合と異なるだけである。そのため、これらの図4〜図6においては、中間板以外の部材及び部位に、図1〜図3の場合と同じ符号を付けておき、それらについての説明を省略する。また、本実施例の作動は、実施例1の場合と実質的に同じである。そのため、本実施例の作動説明には、実施例1の作動説明が援用される。
【0060】
そこで、本実施例の中間板22の形状と取付け構成を説明する。本実施例の中間板22は、実施例1の中間板2の場合と同様に、左上隅を除く三つの隅に形成された孔を、シャッタ地板1の軸1m,1n,1pに対して、それらの軸方向へ移動可能に嵌合させており、左上隅の部位は、シャッタ地板1の受け部1rに対して、補助地板3側から接触し得るようになっている。また、露光開口の左側、右側及び上側の領域の形状は、実施例1の中間板2の場合と同じである。そのため、露光開口の上側における外形形状形成縁22bは、実施例1の外形形状形成縁2bと同様に、露光開口に向けて凸状となる円弧状に形成されている。
【0061】
しかしながら、本実施例の中間板22は、露光開口の下側となる領域が、実施例1における中間板2の場合と異なる形状に形成されている。即ち、本実施例の場合には、露光開口の下側となる外形形状形成縁22dが露光開口の長辺と平行になるように形成されている。また、露光開口の長辺に直交するようにして、開口部22aのV字状の縁22cの頂点から外形形状形成縁22dまで、スリット22eが形成されている。そのため、露光開口の下側となる領域は、一番幅の狭いところが、スリット22eによって分断された形状になっており、そのスリット22eの両側となる部位が、シャッタ地板1の押えピン1qによって補助地板3側へ押されている。
【0062】
そのため、本実施例の場合には、中間板22の下方領域における一番幅の狭いところの寸法(スリット22eの長さ寸法に相当)が、実施例1の中間板2の場合よりも非常に大きくなっているが、スリット22eが形成されているために、実施例1の中間板2の場合と同等、もしくはそれ以上に、押えピン1qによって撓まされ易くなっている。尚、本発明は、実施例1の中間板2に、本実施例のようにしてスリットを形成することを妨げず、そうすることによって、一層撓まされ易い中間板が得られる。また、重複を避けるために説明をしなかったが、明らかに本実施例にもいえることは、実施例1の説明が本実施例にも適用される。
【実施例3】
【0063】
次に、図7及び図8を用いて実施例3を説明するが、これらの図面は、本実施例を、実施例1の説明に用いた図1及び図2と同様にして、即ち実施例2の説明に用いた図4及び図5と同様にして示したものである。そして、本実施例の構成は、中間板の形状と取付け構成が、上記の実施例2の場合と異なるだけである。そのため、これらの図7及び図8においては、中間板以外の部材及び部位に、上記の各実施例の場合と同じ符号を付けておき、それらについての説明を省略する。また、本実施例の作動も、実施例1の場合と実質的に同じである。そのため、本実施例の作動説明にも、実施例1の作動説明が援用される。
【0064】
そこで、本実施例の中間板32の形状と取付け構成を説明する。先ず、本実施例の場合には、上記の各実施例のように、シャッタ地板1の軸1kの根元側に受け部1rを形成していない。また、本実施例の補助地板3は、上記の各実施例の場合よりも厚い板部材であり、露光開口の上方領域には、外形形状形成縁と開口部3aとの中間部に、シャッタ地板1に立設されている押えピン1qと同様な押えピン3bを、中間板32に向けて立設している。
【0065】
更に、本実施例の中間板32は、実際には、左右二つの部材に分離されている。即ち、本実施例の中間板32は、実施例2の中間板22と同様に、露光開口の下側領域が、開口部32aのV字状の縁32cの頂点から外形形状形成縁32dまでをスリット32eで分断され、スリット32eの両側となる部位が、シャッタ地板1の押えピン1qによって補助地板3側へ押されており、露光開口の上側領域は、開口部32aの縁から円弧状の外形形状形成縁32bまでをスリット32fで分断され、スリット32fの両側となる部位が、補助地板3の押えピン3bによってシャッタ地板1側へ押されている。そして、左側となる部材は、シャッタ地板1の軸1k,1mに丸孔を嵌合させており、右側となる部材は、シャッタ地板1の軸1n,1pに丸孔を嵌合させている。
【0066】
そのため、本実施例の場合にも、実施例2の場合と同様に、露光作動時において、後羽根のスリット形成羽根20の端面が中間板32の開口部32aの端面に衝突してしまうようなことがないほか、セット作動時に、先羽根と後羽根を高速で作動させても、先羽根のスリット形成羽根14の一部が露光開口の上側領域に走り込むとき、そのスリット形成縁の端面が、中間板32の開口部32aの端面に衝突してしまうようなことがない。
【符号の説明】
【0067】
1 シャッタ地板
1a,2a,3a,22a.32a 開口部
1b,1c 長孔
1d〜1k,1m,1n,1p 軸
1q,3b 押えピン
1r 受け部
2,22 中間板
2b,2d,22b,22d,32b,32d 外形形状形成縁
2c,22c,32c 縁
3 補助地板
4,5 緩衝部材
6,7 駆動ピン
8 間座
9,10,15,16 アーム
11〜14,17〜20 羽根
22e,32e,32f スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッタ地板と補助地板の間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、それらの三つの板部材の被写体光路用開口部の少なくとも一つによって露光開口を形成しており、それらの羽根室に個別に配置されている先羽根と後羽根は、細長い複数枚の羽根を有していて、露光作動時には、先羽根が複数枚の羽根を展開状態から重畳状態にして露光開口を開き、後羽根が複数枚の羽根を重畳状態から展開状態にして露光開口を閉じるカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、前記三つの板部材のうち前記中間板との間に後羽根を配置している第2の板部材は、前記露光作動方向側にある露光開口形成辺から該第2の板部材の外形形状形成縁までの中間部に押えピンを立設していて、前記中間板を該押えピンによって押し前記三つの板部材のうちの第3の板部材側に撓ませており、前記中間板は、前記露光開口形成辺の外側になる領域の幅が、前記押えピンによって押されているところで一番狭く、該幅を規制する二つの規制縁は、その一番狭いところから前記露光開口形成辺の両端方向にいくにしたがい、露光開口側の規制縁が前記露光開口形成辺の両端に徐々に近付き、他方の規制縁が前記第2の板部材の前記外形形状形成縁に徐々に近付いていくように形成されていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記中間板は、前記露光開口形成辺の外側となる領域のうち一番狭いところの幅が、前記押えピンの断面の、前記露光開口形成辺とは直交する方向の最大寸法と略同じであることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記中間板は、前記露光開口形成辺の外側となる領域のうちの一番狭いところが、前記露光開口形成辺とは直交する方向に形成されたスリットによって分離されていて、該スリットの両側となる部位を、前記押えピンによって押されているようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
前記中間板は、前記露光作動方向側にある前記被写体光路用開口部の縁が略V字状に形成されていて、前記露光作動方向側にある外形形状形成縁が前記露光開口形成辺と略平行に形成されており、さらに、前記露光開口形成辺の外側となる領域が前記V字状の頂点から前記露光開口形成辺とは直交する方向に形成されたスリットによって分離されており、該スリットの両側の部位が、前記押えピンによって押されているようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項5】
前記三つの板部材のうち前記中間板との間に先羽根を配置している第3の板部材は、前記露光開口形成辺に対向する露光開口形成辺から該第3の板部材の外形形状形成縁までの中間部に前記中間板に向けて第2の押えピンを立設しており、前記中間板は、前記第2の露光開口形成辺の外側となる領域が、前記第2の露光開口形成辺とは直交する方向に形成されたスリットで分離されていて、該スリットの両側部位が、前記第2の押えピンに押されて前記第2の地板側に撓まされているようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−234024(P2012−234024A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101990(P2011−101990)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】