説明

カメラ

【課題】光学ローパスフィルタに付着した異物の除去を容易にする。
【解決手段】カメラは、被写体を撮像して画像を取得する撮像素子107と、撮像素子107の表面に配置され、表面に光触媒物質が塗布された保護部材109と、光触媒物質を照明する照明手段110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の表面に配置された保護部材に付着する異物を除去できるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学ローパスフィルタに対して静電気の帯電を低減する親水性コーティング処理を機器内で施すカメラが知られている(たとえば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−173887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、光学ローパスフィルタに付着した異物が除去し切れないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明によるカメラは、被写体を撮像して画像を取得する撮像素子と、撮像素子の表面に配置され、表面に光触媒物質が塗布された保護部材と、光触媒物質を照明する照明手段とを備える。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカメラにおいて、保護部材に付着した異物を除去するための準備動作として、照明手段は光触媒物質を照明する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、表面に光触媒物質が塗布された保護部材を照明することにより、保護部材に付着した異物除去が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜図3を参照して、本発明による一実施の形態におけるカメラを説明する。図1は電子カメラ100の要部構成を示す図である。電子カメラ100のボディ10に、撮影レンズL1と絞り201とを備える交換レンズ200が着脱可能に装着されている。カメラ100のボディ側には、クイックリターンミラー101、焦点板102、ペンタプリズム103、接眼レンズ105、シャッタ106、撮像素子107、焦点検出用センサ108、光学ローパスフィルタ109および照明装置110が設けられている。
【0007】
図2は電子カメラ100の制御系のブロック図である。図2において、図1に示した構成要素には同一の符号を付して説明する。電子カメラ100の制御系は、撮像素子107、焦点検出用センサ108、照明装置110、制御回路111、LCD駆動回路119、表示器120、操作部121、カードインタフェース122、およびメモリカード123を備えている。
【0008】
図1を参照して説明すると、交換レンズ200を通過して電子カメラ100に入射した被写体光は、シャッタレリーズ前は図1において実線で示すように位置するクイックリターンミラー101で上方へ導かれて焦点板102に結像する。被写体光はさらにペンタプリズム103へ入射される。ペンタプリズム103は、入射された被写体光を接眼レンズ105へ導く。被写体光の一部はクイックリターンミラー101の半透過領域を透過し、サブミラー101aにて下方に反射され、焦点検出用センサ108へ入射される。
【0009】
レリーズ後はクイックリターンミラー101が図1の破線で示される位置(ミラーアップ位置)へ回動し、被写体光がシャッタ106を介して撮像素子107へ導かれ、その撮像面上に被写体像が結像する。撮像素子107は、受光した被写体光をその強度に応じた画像信号に変換するCCDやCMOSなどの光電変換素子である。
【0010】
撮像素子107の表面には、被写体光の内、空間周波数の高い光を除去する光学ローパスフィルタ109が密着して設けられている。この光学ローパスフィルタ109は、たとえば酸化チタン(TiO)などの光触媒が塗布されることによってコーティングされている。照明装置110は、ボディ10内下部のシャッタ106の前段において、光学ローパスフィルタ109の全面を下方から照射可能な位置に配置されている。照明装置110は、後述する制御回路111からの照明指示に基づいて、たとえば390nm以下の紫外光を、所定時間としてたとえば3秒間、光学ローパスフィルタ109に照射する。
【0011】
図2を参照して制御系について詳細に説明する。
撮像素子107は、制御回路111が出力するタイミング信号に応じて、画像信号を出力する。制御回路111は、図示しないCPU、ROMおよびRAM等を備え、電子カメラ100の各構成要素を制御したり、各種のデータ処理を実行する演算回路である。制御回路111は、撮像素子107の出力する画像信号にアナログ的な処理を施してからデジタルの画像データに変換して、ホワイトバランス処理、ガンマ補正処理、色補間処理、輪郭強調、ビネット補正などの画像処理を実行する。そして、制御回路111は、画像処理の施された画像データに対してJPEG圧縮処理を実行する。
【0012】
メモリカードインタフェース122は、メモリカード123が着脱可能なインタフェースであり、制御回路111の制御に基づいて、図示しないバッファメモリに一時的に格納された画像データをメモリカード123に書き込んだり、メモリカード123に記録されている画像データを読み出す。メモリカード123はコンパクトフラッシュ(登録商標)やSDカードなどの半導体メモリカードである。
【0013】
LCD駆動回路119は、制御回路111の命令に基づいて表示器120を駆動する回路である。表示器120はたとえば液晶表示パネルであり、再生モードにおいて、図示しない内蔵メモリもしくはメモリカード123に記録されている画像データに基づいて制御回路111で作成された表示データの表示を行う。また、表示器120には、電子カメラ100の各種動作を設定するためのメニュー画面が表示される。メニュー画面に表示される設定内容として、クリーニングモードなどがある。クリーニングモードにおいては、制御回路111は、図示しない駆動機構を駆動させて光学ローパスフィルタ109を振動させることにより、光学ローパスフィルタ109の表面に付着した塵、埃等の異物を振るい落として除去する。
【0014】
操作部121は、ユーザの操作を受け付けるスイッチである。操作部121には、電源スイッチ、レリーズスイッチ、その他の設定メニューの表示切換スイッチ、設定メニュー決定ボタンなどが含まれる。また、操作部121の操作により、メニュー画面上から上述したクリーニングモードの設定が可能である。
【0015】
次に、クリーニングモードにおける電子カメラ100の動作について説明する。ユーザによる操作部121の操作によりクリーニングモードが設定されると、制御回路111は、異物除去の準備動作として、図示しないシーケンス回路を駆動して、クイックリターンミラー101をミラーアップ位置まで回動させるとともに、シャッタ106を開放する。さらに、制御回路111は、照明装置110に対して照明指示信号を出力する。
【0016】
照明装置110は、照明指示信号を入力すると、所定時間である3秒間、紫外光を光学ローパスフィルタ109に対して照射する。紫外光の照射により、光学ローパスフィルタ109にコーティングされた光触媒である酸化チタン(TiO)を構成する1つの酸素原子(O)と、空気中の水分子(HO)とが化学反応を起こす。化学反応の結果、酸化チタン(TiO)の表面に、親水性を有する親水基(−OH)が生成される。
【0017】
酸化チタン(TiO)の表面、すなわち光学ローパスフィルタ109の表面に形成された親水基(−OH)により、空気中の水分が光学ローパスフィルタ109の表面に均一に広がり、水膜を形成する。その結果、光学ローパスフィルタ109の表面における静電気の発生が低減され、塵、埃等の異物の付着が防止される。さらに、光学ローパスフィルタ109の表面に既に異物が付着している場合には、異物と光学ローパスフィルタ109の表面との間に入り込み、異物を光学ローパスフィルタ109の表面から浮き上がらせる。その結果、光学ローパスフィルタ109の表面に付着した異物が除去されやすい状態になる。
【0018】
照明装置110による光学ローパスフィルタ109への紫外光の照射が終了すると、制御回路111は、異物除去の動作を開始する。すなわち、制御回路111は、図示しない駆動機構を駆動させて光学ローパスフィルタ109を振動させる。上述した異物除去の準備動作により、光学ローパスフィルタ109の表面に付着した塵、埃等の異物は除去されやすい状態になっている。したがって、光学ローパスフィルタ109が振動されることにより、光学ローパスフィルタ109の表面に付着した塵、埃等の異物が振るい落とされる。
【0019】
図3に示すフローチャートを用いて、実施の形態による電子カメラ100の異物除去動作における各処理について説明する。図3の各処理は制御回路111でプログラムを実行して行われる。図3の各処理を行なうプログラムはメモリ(不図示)に格納されており、クリーニングモードが設定されたことを示す信号が入力されると起動される。
【0020】
ステップS101において、クイックリターンミラー101をミラーアップ位置まで回動させてステップS102へ進む。ステップS102においては、シャッタ106を開放してステップS103へ進む。ステップS103においては、照明装置110に対して照明指示信号を出力して、照明装置110により光学ローパスフィルタ109を照射させてステップS104へ進む。このとき、図示しないタイマを起動して時間計測を開始する。
【0021】
ステップS104においては、ステップS103で起動したタイマによる計測時間が所定時間である3秒を超えたか否かを判定する。計測時間が3秒を超えた場合は、ステップS104が肯定判定されてステップS105へ進む。計測時間が3秒以下の場合は、ステップS104が否定判定されて当該判定処理を繰り返す。
【0022】
ステップS105においては、照明装置110に対して消灯を指示する信号を出力して、照明装置110による光学ローパスフィルタ109への照射を終了させてステップS106へ進む。ステップS106においては、図示しない駆動機構を駆動させて光学ローパスフィルタ109を振動させることにより異物除去を行って一連の処理を終了する。
【0023】
以上で説明した実施の形態の電子カメラによれば、以下の作用効果が得られる。
(1)光学ローパスフィルタ109の表面に光触媒物質である酸化チタン(TiO)を塗布し、照明装置110により光学ローパスフィルタ109を照射するようにした。したがって、光触媒物質の親水性を利用して光学ローパスフィルタ109の表面に付着した塵や埃等の異物の除去が容易になる。
【0024】
(2)異物除去の準備動作として、照明装置110により光触媒物質を照射するようにした。その結果、光触媒物質の親水性により異物が除去されやすい状態で光学ローパスフィルタ109を振動させて異物除去動作を行うので、光学ローパスフィルタ109に付着した異物を確実に除去できる。
【0025】
実施の形態における電子カメラを以下のように変形できる。
(1)照明装置110は、光学ローパスフィルタ109の全面を照射可能な位置であれば、ボディ10の下部でシャッタ106の前段に配置するものに限定されず、シャッタ106と撮像素子107との間に配置してもよい。
【0026】
(2)複数の照明装置を用いて光学ローパスフィルタ109を照射してもよい。この場合、たとえば、照明装置110をボディ10の上下、左右、もしくは上下左右などのように配置することにより、光学ローパスフィルタ109の全面を確実に照射することができる。
【0027】
(3)電子カメラ100が内蔵式の閃光装置を備える場合は、照明装置110に代えて、閃光装置の発光光を用いて光学ローパスフィルタ109を照射してもよい。この場合、閃光装置の発光光を、たとえば光ファイバーケーブル等の導光部材を用いて光学ローパスフィルタ109を照射可能な位置まで導けばよい。
【0028】
(4)クリーニングモードにおいて、光学ローパスフィルタ109を振動させなくてもよい。この場合、クイックリターンミラー101がミラーアップ位置まで回動され、シャッタ106が開放された状態で保持されることにより、ユーザが、たとえばエアーブローなどの方法により異物除去を行えばよい。
【0029】
(5)クリーニングモードにおいて、照明装置110による照明の終了後に光学ローパスフィルタ109を振動させるものに代えて、照明装置110による照明と光学ローパスフィルタ109の振動とを併行して行うことにより異物を除去してもよい。この場合、図3に示すフローチャートにおいて、制御回路111は、ステップS103で照明装置110に照明を開始させるとともに、駆動機構を駆動させて光学ローパスフィルタ109を振動させることにより異物除去動作を開始させればよい。
【0030】
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態による電子カメラの要部構成を示す図である。
【図2】実施の形態による電子カメラの制御系のブロック図である。
【図3】実施の形態による電子カメラの異物除去動作における処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
107・・・撮像素子 109・・・光学ローパスフィルタ 110・・・照明装置
111・・・制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像を取得する撮像素子と、
前記撮像素子の表面に配置され、表面に光触媒物質が塗布された保護部材と、
前記光触媒物質を照明する照明手段とを備えることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記保護部材に付着した異物を除去するための準備動作として、前記照明手段は前記光触媒物質を照明することを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−17273(P2009−17273A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177243(P2007−177243)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】