説明

カラオケ装置

【課題】ロングトーン歌唱を検出して評価するカラオケ装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカラオケ装置は、ガイドメロディのピッチに対応した所定のピッチ範囲である検出領域に、歌唱者音声のピッチが所定時間以上連続して検出された場合に、その時間を累算していくことができる。ロングトーン歌唱の評価においては、歌唱者は長く伸ばすべき音を安定した音程で長く歌唱していることになり、ロングトーン歌唱ができているといえる。これらにより、採点結果に対して、ロングトーン歌唱の影響を加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌唱を採点するカラオケ装置において、音程の安定性を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ装置において、歌唱者の歌唱の巧拙を点数で表示する採点機能を備えたものがある。このような採点機能のうち、できるだけ実際の歌唱の巧拙と採点の結果が対応するように、歌唱者の歌唱音声信号から抽出された音程データや音量データなどのデータと、カラオケ曲の歌唱旋律(ガイドメロディ)と対応するデータとの比較機能を持たせたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−69216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような採点機能を備えたカラオケ装置によって、1音を単位としてノートごとの音程変化などを比較して採点することが可能になったが、この採点機能は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式でデータ化されたガイドメロディを基準にして、歌唱者の歌唱と比較していたため、楽譜上の音符を基準にした採点に止まっていた。そのため、このような採点を行った場合、実際の巧拙の印象とは異なった採点結果となることがあった。例えば、歌唱の音程(以下、ピッチという)が所定のピッチに達する際に、本来のピッチからずれたピッチで安定するような時間があると、歌唱者は本来の音程がわからずに、その音程を探すようにして迷っている歌唱(以下、迷い歌唱という)である印象を受けるため巧くないと感じることになるが、本来のピッチに一致している時間が同じであれば、その途中経過によらず同じような採点結果になってしまう場合がある。また、長く伸ばすべき音を安定した音程で長く伸ばして歌唱(以下、ロングトーン歌唱という)することができる歌唱者は、巧く聞こえることになるが、このような歌唱ができても必ずしも採点結果がよくなるわけではなかった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、ロングトーン歌唱を検出して評価するカラオケ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、楽曲の進行に対応して、時刻の進行に伴ってピッチ幅が変化するピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出する検出手段と、前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が所定時間以上である場合に、当該計測した時間に応じた情報を出力する計測手段とを具備することを特徴とするカラオケ装置を提供する。
【0007】
また、別の好ましい態様において、前記楽曲のメロディを構成する少なくとも一の音に対応する期間内において、前記ピッチ幅が変化することを特徴とする。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記楽曲のメロディを構成する音のうち少なくとも一の音に対応する前記ピッチ幅は、当該メロディを構成する他の音とは異なることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、楽曲の進行に対応して、所定のピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出する検出手段と、前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が、当該進行に対応して歌唱すべき音の長さに応じて設定された所定時間以上である場合に、当該計測した時間に応じた情報を出力する計測手段とを具備することを特徴とするカラオケ装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、楽曲の進行に対応して、所定のピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱の音量レベルを前記楽曲の進行に対応して抽出するレベル抽出手段と、前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出するとともに、前記レベル抽出手段が抽出した音量レベルの安定性を検出する検出手段と、前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が所定時間以上であり、かつ前記検出手段が検出した音量レベルの安定性が予め設定された安定性よりも安定している場合に、当該計測した時間に応じた情報を出力する計測手段とを具備することを特徴とするカラオケ装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、楽曲の進行に対応して、所定のピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出する検出手段と、前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が所定時間以上である場合に、当該計測した時間および前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチの安定性に応じた情報を出力する計測手段とを具備することを特徴とするカラオケ装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロングトーン歌唱を検出して評価するカラオケ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係るカラオケ装置のハードウエアの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るカラオケ装置のソフトウエアの構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る迷い歌唱評価部における迷い歌唱の評価の流れを示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る迷い歌唱評価部における迷い歌唱の評価の一部を示す説明図である。
【図5】第2実施形態に係るカラオケ装置のソフトウエアの構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係るLPFにおける処理前後の歌唱のピッチを示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係るロングトーン歌唱評価部におけるロングトーン歌唱の評価の一部を示す説明図である。
【図8】変形例2に係る検出領域の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態においては、迷い歌唱の評価を行なうことができるカラオケ装置1について説明する。まず、カラオケ装置1のハードウエアの構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るカラオケ装置1のハードウエアの構成を示すブロック図である。
【0016】
CPU(Central Processing Unit)11は、ROM(Read Only Memory)12に記憶されているプログラムを読み出して、RAM(Random Access Memory)13にロードして実行することにより、カラオケ装置1の各部について、バス10を介して制御する。また、RAM13は、CPU11がデータ処理などを行う際のワークエリアとして機能する。
【0017】
記憶部14は、例えば、ハードディスクなどの大容量記憶手段であって、楽曲データ記憶領域14a、歌唱者音声データ記憶領域14bおよびピッチ範囲データ記憶領域14cを有する。楽曲データ記憶領域14aには、カラオケ曲の楽曲データが複数記憶され、各楽曲データは、ガイドメロディトラック、伴奏データトラック、歌詞データトラックを有している。
【0018】
ガイドメロディトラックは、楽曲のボーカルパートのメロディを示すデータであり、発音の指令を示すノートオン、消音の指令を示すノートオフ、コントロールチェンジなどのイベントデータと、次のイベントデータを読み込んで実行するまでの時間を示すデルタタイムデータとを有している。このデルタタイムにより、実行すべきイベントデータの時刻と楽曲の進行が開始されてからの時間経過とを対応付けることができる。また、ノートオン、ノートオフは、それぞれ発音、消音の対象となる音の音程を示すノートナンバを有している。これにより、楽曲のボーカルパートのメロディを構成する各音は、ノートオン、ノートオフ、デルタタイムによって規定することができる。伴奏データトラックは、各伴奏楽器の複数のトラックから構成されており、各楽器のトラックは上述したガイドメロディトラックと同様のデータ構造を有している。なお、本実施形態の場合、MIDI形式のデータが記憶されている。
【0019】
歌詞データトラックは、楽曲の歌詞を示すテキストデータと、楽曲の進行に応じて後述する表示部15に歌詞テロップを表示するタイミングを示す表示タイミングデータと、表
示される歌詞テロップを色替え(以下、ワイプという)するためのタイミングを示すワイプタイミングデータとを有する。そして、CPU11は、楽曲データ記憶領域14aに記憶される楽曲データを再生し、当該楽曲データの伴奏データトラックに基づいて生成した音声データを後述する音声処理部18に出力するとともに、歌詞データトラックに基づいて表示部15に歌詞テロップを表示させる。
【0020】
歌唱者音声データ記憶領域14bには、後述するマイクロフォン17から音声処理部18を経てA/D変換された音声データ(以下、歌唱者音声データという)が、例えばWAVE形式やMP3形式などで時系列に記憶される。このように時系列に記憶されることにより、歌唱者音声データの所定時間長の各フレームに対して、楽曲の進行が開始されてから経過した時間を対応付けることができる。
【0021】
また、ピッチ範囲データ記憶領域14cは、迷い歌唱の判定を行なうためのピッチ範囲データを有する。ピッチ範囲データは、ガイドメロディトラックのノートナンバから決まるピッチを基準としたピッチの範囲を示すピッチ範囲を規定するデータである。具体的には、基準とするピッチより高いピッチ領域におけるピッチの所定範囲(以下、シャープ領域という)および低いピッチ領域におけるピッチの所定範囲(以下、フラット領域という)を示すデータである。以下、シャープ領域とフラット領域を合わせた領域を検出領域という。このように、基準となるピッチに対して相対的に設定されることにより、楽曲の進行に対応して、各時刻における検出領域が決まる。本実施形態においては、シャープ領域は基準となるピッチに対して+30centから+70centのピッチの範囲、フラット領域は基準となるピッチに対して−30centから−70centのピッチの範囲として設定されている。ここで、centは、ピッチの相対的な音程差を示す単位であり、+100centが示すピッチは基準となるピッチから半音分上の音程を示している。なお、検出領域を規定するピッチの範囲については、後述する操作部16を操作することにより変更することもできる。
【0022】
表示部15は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスであって、CPU11に制御されて、記憶部14の楽曲データ記憶領域14aに記憶された歌詞データトラックに基づいて、楽曲の進行に応じて背景画像などとともに歌詞テロップを表示する。また、カラオケ装置1を操作するためのメニュー画面、歌唱の評価結果画面などの各種画面を表示する。操作部16は、例えばキーボード、マウス、リモコンなどであり、カラオケ装置1の利用者が操作部16を操作すると、その操作内容を表すデータがCPU11へ出力される。
【0023】
マイクロフォン17は、歌唱者の歌唱を収音する。音声処理部18は、マイクロフォン17によって収音された音声をA/D変換して歌唱者音声データを生成する。歌唱者音声データは、上述したように記憶部14の歌唱者音声データ記憶領域14bに記憶される。また、音声処理部18は、CPU11によって入力された音声データをD/A変換し、スピーカ19から放音する。
【0024】
次に、CPU11が、ROM12に記憶されたプログラムを実行することによって実現する機能について説明する。図2は、CPU11が実現する機能を示したソフトウエアの構成を示すブロック図である。
【0025】
ピッチ抽出部101は、歌唱者音声データ記憶領域14bに記憶される歌唱者音声データを読み出し、所定時間長のフレーム単位で当該歌唱者音声データに係る歌唱のピッチを抽出する。そして、フレーム単位で抽出した歌唱のピッチを示す歌唱ピッチデータを通常評価部103と迷い歌唱評価部105に出力する。なお、ピッチの抽出にはFFT(Fast Fourier Transform)により生成されたスペクトルから抽出してもよいし、その他公知の方法により抽出すればよい。
【0026】
ピッチ算出部102は、楽曲データ記憶領域14aから評価対象となる楽曲のガイドメロディトラックを読み出し、読み出したガイドメロディトラックから楽曲のメロディを認識する。また、認識したメロディを構成する各音について、所定時間長のフレーム単位でピッチを算出する。そして、フレーム単位で算出したガイドメロディのピッチを示すメロディピッチデータを通常評価部103と迷い歌唱評価部105に出力する。なお、メロディを構成する各音の音程は、ノートナンバによって規定されているから、ノートナンバに対応してピッチが決定することになる。例えば、ノートナンバが69(A4)である場合には、ピッチは440Hzとなる。この際、ノートナンバとピッチを対応させるテーブルを記憶部14に記憶しておけば、ピッチ算出部102は当該テーブルを参照してピッチを算出してもよい。
【0027】
通常評価部103は、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータとピッチ算出部102から出力されたメロディピッチデータとをフレーム単位で比較し、ピッチの一致の程度を示す通常評価データを生成し、採点部104へ出力する。ここで、一致の程度は、各フレームにおけるメロディを構成する音のピッチと歌唱のピッチとの差分から算出してもよいし、メロディを構成する音のピッチと歌唱のピッチとが実質的に一致、すなわちメロディを構成する音のピッチに対して所定のピッチの範囲に入った時間的な割合から算出してもよい。なお、通常評価部103においては、歌唱のピッチを評価するだけでなく、音量、その他の特徴量を用いて評価してもよい。この場合には、歌唱からそれぞれ必要な特徴量を抽出する抽出手段を設けるとともに、記憶部14に評価の基準となる特徴量を記憶させておけばよい。
【0028】
迷い歌唱評価部105は、検出部1051、計測部1052、累算部1053、評価部1054を有し、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータ、ピッチ算出部102から出力されたメロディピッチデータおよびピッチ範囲データ記憶領域14cに記憶されたピッチ範囲データに基づいて、迷い歌唱の評価結果を示す迷い歌唱評価データを生成し、採点部104へ出力する。以下、迷い歌唱評価部105を構成する各部について説明する。
【0029】
検出部1051は、ピッチ範囲データ記憶領域14cからピッチ範囲データを読み出す。そして、ピッチ算出部102から出力されたメロディピッチデータが示す各フレームに対応するピッチに対して、ピッチ範囲データが示すピッチ範囲を適用することにより、フレームごとにシャープ領域とフラット領域を認識するとともに、これをまとめて検出領域として認識する。検出部1051は、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータと認識した検出領域をフレーム単位で順に比較し、歌唱ピッチデータが示す各フレームのピッチが検出領域に含まれるか否かの検出結果を示す判断情報を計測部1052に出力する。また、全てのフレームについて比較が終了した場合には、終了したことを示す終了情報および比較した全フレーム数Tallを示す情報を評価部1054に出力する。
【0030】
計測部1052は、検出部1051から出力される判断情報に基づいて、歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に連続して含まれたフレーム数であるTcountの数を計測するとともに、所定の条件を満たした場合には、Tcountを示す情報を累算部1053に出力する。ここで、所定の条件とは、検出部1051から歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に含まれない結果を示す判断情報が出力された時点におけるTcountが予め設定された設定値kより大きいこと、すなわち、歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に連続して含まれたフレーム数が設定値kより大きいことであり、歌唱者による歌唱が迷い歌唱の状態になったことを検出する条件である。所定の条件を満たさなかった場合には、Tcountのカウントをリセットして「0」とする。なお、フレーム数で設定された設定値kは、1フレームの時間が決まっていることから時間に換算することもできる。また、設定値kは、操作部16を操作することにより変更できるようにしてもよい。
【0031】
累算部1053は、計測部1052から出力される情報が示すTcountを累算する。累算した値をTtotalという。評価部1054は、検出部1051から終了情報と全フレーム数Tallを示す情報が出力された場合には、累算部1053から、累算部1053が累算した値であるTtotalを読み出し、当該Ttotalの全フレーム数Tallに対する割合を示す迷い歌唱評価データを採点部104に出力する。なお、迷い歌唱評価データは、Ttotalに基づいて生成されていれば、Ttotal/Tallを示すものに限られない。例えばTtotalそのものを示すものであってもよい。
【0032】
採点部104は、通常評価部103から出力された通常評価データと、迷い歌唱評価部105から出力された迷い歌唱評価データとに基づいて歌唱者の歌唱の評価点を算出する。そして、算出した評価点はCPU11によって表示部15に表示される。
【0033】
次に、カラオケ装置1の動作について説明する。まず、歌唱者は操作部16を操作して、歌唱する楽曲を選択する。CPU11は、歌唱者が選択した楽曲に対応する楽曲データを楽曲データ記憶領域14aから読み出し、楽曲の進行に応じて、読み出した楽曲データの伴奏データトラックに基づいて楽曲の伴奏などをスピーカ19から放音させるとともに、読み出した楽曲データの歌詞データトラックに基づいて表示部15に歌詞をワイプ表示させる。歌唱者は、楽曲の進行にあわせて歌唱すると、当該歌唱がマイクロフォン17に収音され、歌唱者音声データとして歌唱者音声データ記憶領域14bに記憶される。
【0034】
楽曲が最後まで進むことにより終了すると、CPU11によって歌唱者の歌唱の評価が開始される。ピッチ抽出部101は、歌唱者音声データ記憶領域14bに記憶された歌唱者音声データを読み出し、歌唱ピッチデータを通常評価部103および迷い歌唱評価部105の検出部1051に出力する。ピッチ算出部102は、楽曲データ記憶領域14aから評価基準となる楽曲のガイドメロディトラックを読み出し、メロディピッチデータを通常評価部103と迷い歌唱評価部105に出力する。
【0035】
通常評価部103は、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータとピッチ算出部102から出力されたメロディピッチデータとをフレーム単位で比較し、ピッチの一致の程度を示す通常評価データを生成し、採点部104へ出力する。迷い歌唱評価部105は、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータ、ピッチ算出部102から出力されたメロディピッチデータおよびピッチ範囲データ記憶領域14cに記憶されたピッチ範囲データに基づいて、その評価結果を示す迷い歌唱評価データを生成し、採点部104へ出力する。
【0036】
ここで、迷い歌唱評価部105の評価の流れについて図3を用いて、詳細に説明する。図3は、迷い歌唱評価部105の評価の流れを示すフローチャートである。
【0037】
まず、迷い歌唱評価部105における評価を開始すると、迷い歌唱評価部105において用いられるパラメータであるTall、Ttotal、Tcountを初期化して全て「0」とする(ステップS1)。次に、検出部1051は、比較したフレーム数を示すTallの数値を「1」増加させてカウントアップし(ステップS2)、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータとピッチ算出部102から出力されたメロディピッチデータにピッチ範囲データを適用することにより認識した検出領域について、最初のフレームの比較を開始する。
【0038】
検出部1051は、最初のフレームの比較において、歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に含まれるかどうかを判断する(ステップS3)。含まれると判断した場合(ステップS3;Yes)には、検出部1051は、含まれることを検出したことを示す判断情報を計測部1052に出力する。そして、計測部1052は、Tcountを「1」増加させてカウントアップする(ステップS4)。そして、後述するステップS8へと進む。
【0039】
一方、歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に含まれないと判断した場合(ステップS3;No)には、検出部1051は、含まれないと判断したこと(含まれることを検出しなかったこと)を示す判断情報を計測部1052に出力する。そして、計測部1052は、Tcountが予め設定された設定値kより大きいかどうかを判断する(ステップS5)。
【0040】
Tcountが設定値kより大きい場合(ステップS5;Yes)には、計測部1052は、Tcountを示す情報を累算部1053に出力する。そして、累算部1053は、出力された情報が示すTcountをTtotalに加算し新たなTtotalとする(ステップS6)。そして、計測部1052は、Tcountのカウントをリセットし「0」とした後(ステップS7)、後述するステップS8へ進む。一方、Tcountが設定値k以下である場合(ステップS5;No)には、ステップS6の処理を行わずに、計測部1052は、Tcountのカウントをリセットし「0」とした後(ステップS7)、後述するステップS8へ進む。このように、累算部1053は、計測部1052からTcountを示す情報が出力される度にTtotalに加算していくから、Ttotalは、計測部1052から出力された情報が示すTcountの累算結果となる。そして後述するステップS8へ進む。
【0041】
ステップS4、S6、S7における処理が終了すると、検出部1051は、ピッチ抽出部101から出力される歌唱ピッチデータまたはピッチ算出部102から出力されるメロディピッチデータに基づいて、楽曲が終了したかどうかを判断する(ステップS8)。楽曲が終了していないと判断した場合(ステップS8;No)には、ステップS2から繰り返し上述した処理を行う。一方、楽曲が終了したと判断した場合(ステップS8;Yes)には、検出部1051は、評価部1054に終了情報およびTallを示す情報を出力する。評価部1054は、検出部1051から終了情報が出力されると、累算部1053において累算した結果であるTtotalを読み出す。そして、評価部1054は、ガイドメロディの時間に対する、歌唱者音声データに係るピッチが検出領域に所定時間以上連続して含まれた時間の割合であるTtotal/Tallを示す迷い歌唱評価データを採点部104に出力する(ステップS9)。なお、上述したように、迷い歌唱評価データは、Ttotalに基づいて生成されていれば、Ttotal/Tallを示すものに限られない。例えばTtotalそのものを示すものであってもよい。また、楽曲が終了したときに、Tcountが設定値kより大きい場合、すなわち歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に含まれたまま終了した場合には、計測部1052は、累算部1053に対してTcountを示す情報を出力するようにしてもよい。この場合、検出部1051は、評価部1054に終了情報を送るとともに、計測部1052に対して歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に含まれないことを示す判断情報を出力するようにすればよい。
【0042】
ここで、迷い歌唱評価部105における処理の具体例として、図4に示すような、ある音の場合について説明する。図4は、メロディピッチデータ、歌唱ピッチデータ、検出領域を説明する説明図である。ここで、縦軸はピッチの高さを示し、横軸は時刻を示す。また、斜線の領域は、図中央部分の音に対応する検出領域であって、当該音のピッチを基準にして、上側の+30cent〜+70centの領域がシャープ領域、下側の−30cent〜−70centの領域がフラット領域となっている。また、図中に記載のkは、予め設定された設定値kを示すものであって、フレーム数を時間に換算して表記したものである。なお、上述したフレームに関する内容は、以下の説明においては、時間に換算したものとして説明する。また、当該音を評価する前におけるTtotalはαであるものとする。
【0043】
まず、歌唱者ピッチデータが示すピッチは、時刻t1aになるとフラット領域に含まれる状態となり、計測部1052はTcountをカウントアップしていく。そして、時刻がt1bとなり、歌唱者ピッチデータが示すピッチがフラット領域に含まれない状態になると、連続してフラット領域に含まれていた時間はt1(t1=t1b−t1a)であるからTcount=t1となる。ここで、t1はk以下であるからTcountのカウントがリセットされ、Tcount=0となる。
【0044】
次に、歌唱者ピッチデータが示すピッチは、時刻t2aになるとシャープ領域に含まれる状態となり、計測部1052はTcountをカウントアップしていく。そして、時刻がt2bとなり、歌唱者ピッチデータに係るピッチがシャープ領域に含まれない状態になると、歌唱者ピッチデータに係るピッチが連続してシャープ領域に含まれていた時間はt2(t2=t2b−t2a)であるからTcount=t2となる。ここで、t2はkより大きいからTtotalにTcountのカウントであるt2が加算され、Ttotal=α+t2となる。そして、Tcountのカウントがリセットされ、Tcount=0となる。同様にして、次のt3についてもkより大きいから、さらにt3が加算され、Ttotal=α+t2+t3となる。そして、t4についてはk以下であるから、Ttotalに加算されずにTcountのカウントがリセットされる。このように、例としてあげた音においては、Ttotalがαからα+t2+t3に増加することになる。
【0045】
このようにして、全てのフレームについて迷い歌唱評価部105における処理が行われる。そして、評価部1054はTtotal/Tallを示す迷い歌唱評価データを採点部104に出力する。
【0046】
そして、採点部104は、通常評価部103から出力された通常評価データと、迷い歌唱評価部105から出力された迷い歌唱評価データとに基づいて、所定のアルゴリズムによって歌唱者の歌唱の評価点を算出する。そして、その算出結果が表示部15に表示されることになる。
【0047】
以上のように、本実施形態におけるカラオケ装置1は、ガイドメロディのピッチに対応した所定のピッチ範囲である検出領域に、歌唱のピッチが所定時間以上連続して検出された場合に、その時間を累算することができる。この累算された時間Ttotalまたはその割合Ttotal/Tallが大きいほど、歌唱者は正しいピッチからずれたピッチで安定する時間帯が長いことになり、迷い歌唱の状態になっているといえるから、歌唱者の歌唱の評価による採点結果に迷い歌唱の影響を加えることができる。
【0048】
<第2実施形態>
第2実施形態においては、ロングトーン歌唱の評価を行なうことができるカラオケ装置1について説明する。第2実施形態に係るカラオケ装置1のハードウエアの構成については、以下に示す記憶部14のピッチ範囲データ記憶領域14cに係るピッチ範囲データ以外は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0049】
また、ピッチ範囲データ記憶領域14cは、ロングトーン歌唱の判定を行なうためのピッチ範囲データを有する。ピッチ範囲データは、ガイドメロディトラックのノートナンバから決まるピッチを基準として、所定範囲のピッチを示すピッチ範囲を規定するデータである。本実施形態においては、基準となるピッチに対して、−10centから+10centのピッチの範囲として設定されている。第1実施形態との違いは、検出領域は、シャープ領域、フラット領域といった基準となるピッチから離れた部分に設定された領域ではなく、基準となるピッチを含む領域となっている。
【0050】
次に、第2実施形態に係るカラオケ装置1のCPU11が、ROM12に記憶されたプログラムを実行することによって実現する機能について図5を用いて説明する。図5は、CPU11が実現する機能を示したソフトウエアの構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態に係るソフトウエアの構成と同様な機能をもつブロックについては、説明を省略する。
【0051】
LPF(Low Pass Filter)106は、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータの高周波成分を除去し、ロングトーン歌唱評価部107の検出部1071に出力するローパスフィルタである。LPF106は、ピッチ抽出部101から出力された歌唱ピッチデータに係るピッチが、例えば図6に示すような破線で示すようなピッチである場合、短時間の変動(矢印部)の影響を取り除くことにより、実線で示すようなピッチにした歌唱ピッチデータを出力する。このようにすると、実際には歌唱のピッチの変動としてほとんど聞こえないような細かいピッチの変動を除去することができ、より正確な採点を行うための評価データを生成することができる。
【0052】
ロングトーン歌唱評価部107は、検出部1071、計測部1072、累算部1073、評価部1074を有する。これらの機能は、第1実施形態における迷い歌唱評価部105を構成する検出部1051、計測部1052、累算部1053、評価部1054とそれぞれ同様な機能を有しているため、詳細の説明は省略する。ここで、評価部1074は、第1実施形態に係る評価部1054が出力する迷い歌唱評価データに対応する評価データとして、Ttotalの全フレーム数Tallに対する割合(Ttotal/Tall)を示すロングトーン歌唱評価データを採点部104に出力する。なお、迷い歌唱評価データと同様に、ロングトーン歌唱評価データは、Ttotalに基づいて生成されていれば、Ttotal/Tallに限られない。
【0053】
ここで、ロングトーン歌唱評価部107における処理の具体例として、図7に示すような、ある音の場合について説明する。図7は、メロディピッチデータ、歌唱ピッチデータ、検出領域を説明する説明図である。ここで、図4と同様に、縦軸はピッチの高さを示し、横軸は時刻を示す。また、斜線の領域は、図中央部分の音に対応する検出領域であって、当該音のピッチを基準にして、−10centから+10centとなっている。また、図中に記載のkは、予め設定された設定値kを示すものであって、フレーム数を時間に換算して表記したものである。なお、上述したフレームに関する内容は、以下の説明においては、時間に換算したものとして説明する。また、当該音を評価する前におけるTtotalはαであるものとする。
【0054】
まず、歌唱者ピッチデータが示すピッチは、時刻t1aになると検出領域に含まれる状態となり、計測部1072はTcountをカウントアップしていく。そして、時刻がt1bとなり、歌唱者ピッチデータが示すピッチが検出領域に含まれない状態になると、連続してフラット領域に含まれていた時間はt1(t1=t1b−t1a)であるからTcount=t1となる。ここで、t1はkより大きいからTtotalにTcountのカウントであるt1が加算され、Ttotal=α+t1となる。そして、Tcountのカウントがリセットされ、Tcount=0となる。
【0055】
まず、歌唱者ピッチデータが示すピッチは、時刻t2aになると再び検出領域に含まれる状態となり、計測部1072はTcountをカウントアップしていく。そして、時刻がt2bとなり、歌唱者ピッチデータが示すピッチがフラット領域に含まれない状態になると、連続してフラット領域に含まれていた時間はt2(t2=t2b−t2a)であるからTcount=t2となる。ここで、t2はk以下であるから、Tcountのカウントがリセットされ、Tcount=0となる。このように、例としてあげた音におけるロングトーン歌唱評価部107においては、Ttotalがαからα+t1に増加することになる。
【0056】
このようにして、全てのフレームについてロングトーン歌唱評価部107における処理が行われる。そして、評価部1074はTtotal/Tallをロングトーン歌唱評価データとして採点部104に出力する。
【0057】
そして、採点部104は、通常評価部103から出力された通常評価データと、ロングトーン歌唱評価部107から出力されたロングトーン歌唱評価データとに基づいて、所定のアルゴリズムによって歌唱者の歌唱の評価点を算出する。そして、その算出結果が表示部15に表示されることになる。
【0058】
以上のように、本実施形態におけるカラオケ装置1は、ガイドメロディのピッチに対応した所定のピッチ範囲である検出領域に、歌唱のピッチが所定時間以上連続して検出された場合に、その時間を累算することができる。この累算された時間Ttotalまたはその割合Ttotal/Tallが大きいほど、歌唱者は長く伸ばすべき音を安定した音程で長く歌唱していることになり、ロングトーン歌唱ができているといえるから、歌唱者の歌唱の評価による採点結果にロングトーン歌唱の影響を加えることができる。なお、第1実施形態における迷い歌唱の評価と第2実施形態におけるロングトーン歌唱の評価は、同時に行なうことも可能である。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
【0060】
<変形例1>
第1実施形態においては、検出部1051は、歌唱者ピッチデータが示すピッチが、検出領域を構成するシャープ領域およびフラット領域に含まれているかどうかを判断するときには、シャープ領域とフラット領域の区別を行わなかったが、それぞれ区別するようにしてもよい。この場合は、検出部1051は、歌唱者ピッチデータが示すピッチが、シャープ領域に含まれているか、フラット領域含まれているかまたはどの領域にも含まれていないかを判断し、当該判断を示す判断情報を出力するようにすればよい。また、計測部1052は、Tcountの代わりに、シャープ領域に連続して含まれたフレーム数を示すTcount1およびフラット領域に連続して含まれたフレーム数を示すTcount2を用いるようにして、累算部1053は、Ttotalの代わりに、Tcount1を累算した値であるTtotal1およびTcount2を累算した値であるTtotal2を用いればよい。
【0061】
このようにすると、シャープ領域における迷い歌唱と、フラット領域における迷い歌唱とをそれぞれ別に評価することができ、採点結果に重み付けをすることもできる。例えば、シャープ領域における迷い歌唱の評価を採点に与える影響を大きく、例えば減点量を多くするようにすることもでき、シャープ領域における迷い歌唱が多い場合には、フラット領域における迷い歌唱が多い場合よりも、歌唱が巧く聞こえないという効果を採点結果に反映することもできる。
【0062】
<変形例2>
各実施形態における検出領域については、各実施形態の説明において述べたように、メロディを構成する音ごとに、当該音のピッチを基準として、相対的なピッチの範囲として設定されていたが、ピッチ範囲データ記憶領域14cに記憶されたピッチ範囲データの内容を変更しておくことにより、以下に述べるような様々な態様で設定可能である。
【0063】
第1に、検出領域は、各実施形態のように基準となるピッチに対してピッチの高い側、低い側に対称で無くてもよい。例えば、シャープ領域におけるピッチの範囲を+20centから+75centの間とし、フラット領域におけるピッチの範囲を−40centから−70centというように設定してもよい。このような設定は、楽曲のジャンル、歌唱者の歌唱レベル、予め設定されたレベルなど、様々な状況に応じて変更できるようにしておけばよい。
【0064】
この場合、複数のピッチ範囲データをピッチ範囲データ記憶領域14cに記憶させておけばよい。そして、操作部16を操作することにより複数のピッチ範囲データから一のピッチ範囲データを選択して使用するピッチ範囲データを決定できるようにしてもよい。また、楽曲のジャンルに応じて変更するために、各ピッチ範囲データを楽曲データ記憶領域14aに記憶されている各楽曲データに対応付けるテーブルを記憶部14に記憶するようにしてもよい。また、歌唱者とその歌唱者の歌唱レベルを対応付けるテーブル、歌唱レベルとピッチ範囲データを対応付けるテーブルを記憶部14に記憶することにより、歌唱者によってピッチ範囲データを自動的に切り替えることもできる。利用者は、操作部16を操作することによりCPU11に歌唱者の認識をさせればよい。
【0065】
第2に、時刻の進行に伴ってピッチの範囲を変化させ、例えば図8に示すフラット領域のようにしてもよい。この場合は、ピッチ範囲データは、時刻の変化に対応して変化するピッチの範囲のデータとすればよい。このようにすれば、例えば、図8の場合には、低い音程から正しい音程に変化させる「しゃくり」のような歌唱の技法を意図的に用いた場合において、誤って迷い歌唱として評価されることを防ぐことができる。
【0066】
第3に、メロディを構成する音ごとに、検出領域(第1実施形態においては、シャープ領域、フラット領域)を変化させてもよい。この場合は、ピッチ範囲データは、ガイドメロディトラックが示すメロディの音ごとにピッチの範囲を示すデータとすればよい。このようにすれば、メロディを構成する音ごとに、評価基準を変更することもできる。なお、上述したようにメロディを構成する音ごとにピッチの範囲を示すピッチ範囲データとするだけでなく、メロディを構成する音ごとの音程(ノートナンバ)、音長(ノートオンからノートオフまでの時間)などに基づいて、自動的に設定されるようにしてもよい。例えば、音程の高さに応じて検出領域の幅を変化させればよい。
【0067】
第4に、ピッチ範囲データは、ピッチの範囲を基準となるピッチに対して相対的に規定するのではなく、絶対的なピッチの値としてピッチの範囲を規定してもよい。この場合には、ピッチ範囲データは、楽曲の進行(または、メロディを構成する各音)に対応して、絶対的なピッチの範囲を示すデータとし、これによって規定されるピッチ範囲を検出領域とすればよい。このようにすれば、検出部1051、1071は、ピッチ算出部102から出力されるメロディピッチデータを用いなくても、同様な処理が可能となる。
【0068】
<変形例3>
各実施形態においては、計測部1052、1072に設定された設定値kは、予め設定されたものであったが、楽曲中において変更できるようにしてもよい。例えば、ガイドメロディを構成する音ごとの音長に基づいて自動的に設定されるようにしてもよい。また、ピッチ範囲データが、楽曲の進行(または、メロディを構成する各音)に対応して設定すべき設定値kを示す時間データを有するようにすれば、検出部1051、1071がピッチ範囲データを読み出した後に、計測部1052、1072に対して設定値kを設定することもできる。このようにすれば、メロディを構成する音ごとに異なる設定値kを設定することもできる。
【0069】
<変形例4>
第2実施形態においては、ロングトーン歌唱の評価を歌唱のピッチの安定性によって行なっていたが、音量レベルの安定性についてもロングトーン歌唱の評価に加えてもよい。この場合は、歌唱者音声データ記憶領域14bから読み出した歌唱者音声データに係る歌唱の音量レベルを抽出し、当該音量レベルを示す歌唱音量レベルデータを生成して検出部1071に出力するレベル抽出部を設ければよい。そして、検出部1071は、レベル抽出部から出力された歌唱音量レベルデータが示す音量レベルの安定性を検出し、計測部1072に出力する判断情報に当該音量レベルの安定性の情報を付加するようにすればよい。そして、計測部1072は、第2実施形態における条件に加えて、検出部1071から出力された判断情報が示す音量レベルの安定性が予め設定された安定性よりも安定していると判断した場合には、Tcountをカウントアップするようにすればよい。このようにすれば、ロングトーン歌唱の評価をさらに精度良く行うことができる。
【0070】
<変形例5>
第2実施形態においては、ロングトーン歌唱の評価をピッチが安定した時間によって行っていたが、ロングトーン歌唱におけるピッチの安定性からロングトーン歌唱の質について重み付けをして評価するようにしてもよい。この場合には、以下のようにすればよい。検出部1071は、LPF106から出力される歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に含まれると検出したことを示す判断情報を出力する場合には、当該ピッチを示す歌唱ピッチデータについて楽曲の進行に応じてバッファしておく。そして、計測部1072は、Tcountを出力する際に、検出部1071においてバッファされた歌唱ピッチデータを取得するとともに、取得した歌唱ピッチデータに係るピッチの最大値と最小値の差を計測し、その差が小さいほどピッチの変動が小さいといえるから安定性が高く、質の高いロングトーン歌唱であると評価する。そして、計測部1072は、質が高いほどTcountが大きくなるように重み付けして累算部1073に出力するようにすればよい。このようにすれば、質が高いロングトーン歌唱が多いほど、Ttotalが大きくなることになり、評価にロングトーン歌唱の質を加えることができる。
【0071】
また、ロングトーン歌唱の質の評価は、計測部1072におけるピッチの最大値と最小値の差でなくてもよい。例えば、検出部1071にバッファされた歌唱ピッチデータに係るピッチの変動に対して、所定の周波数帯域を取り出すBPF(Band Pass Filter)、または所定の周波数以上の周波数帯域を取り出すHPF(High Pass Filter)を用いて、低周波成分を取り除いた歌唱ピッチデータに変換する。そして、変換した歌唱ピッチデータに係るピッチの変動の程度を基準に、ロングトーン歌唱の質を評価すればよい。ピッチの変動の程度は、そのピッチの変動が示す波形の平均値、実効値などを用いればよく、平均値、実効値が小さい場合には変動が小さいといえるから安定性が高く、質の高いロングトーン歌唱であると評価する。そして、上述したように計測部1072は、質が高いほどTcountが大きくなるように重み付けして出力するようにすればよい。なお、検出部1071がバッファする歌唱ピッチデータについては、LPF106から出力された歌唱ピッチデータではなく、LPF106によって処理されていない歌唱ピッチデータを直接ピッチ抽出部101から取得して、バッファするようにしてもよい。このようにすれば、質の評価をする歌唱ピッチデータは、LPF106を用いないため、質の評価に必要な高周波成分を残しておくことができるから、より精度の高い判断をすることもできる
【0072】
<変形例6>
各実施形態においては、評価に用いるTtotalは、歌唱者ピッチデータに係る歌唱のピッチが検出領域に連続して含まれたフレーム数をカウントして累算したものであったが、各実施形態における計測部1052、1072がTcountを示す情報を出力する条件を満たした回数をカウントするようにしてもよい。この場合には、累算部1053、1073は、計測部1052、1072からTcountを示す情報が出力された場合には、TtotalにTcountを加算(図3のステップS6)する代わりに、Ttotalの値を「1」増加(Ttotal=Ttotal+1)するようにすればよい。このようにしても、各実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、計測部1052、1072から出力される情報は、Tcountを示す情報でなくてもよく、歌唱ピッチデータに係るピッチが検出領域に連続して含まれたフレーム数が設定値kより大きいこと、すなわち検出部1051、1071が歌唱のピッチを所定時間以上連続して検出したことを示す識別情報であればどのような情報を出力してもよい。
【0073】
<変形例7>
第2実施形態においては、LPF106を用いて、歌唱者ピッチデータに係るピッチの変動のうち高周波成分を取り除いたが、LPF106は必ずしも用いる必要は無い。逆に、第1実施形態においては、LPF106を用いていなかったが、第2実施形態と同様に歌唱者ピッチデータに用いることで、歌唱者ピッチデータに係るピッチの変動のうち高周波成分を取り除くようにしてもよい。
【0074】
ここで、LPF106は設定された周波数(以下、遮断周波数という)以上の高周波成分を取り除くフィルタであるが、この設定された遮断周波数に基づいて検出領域のピッチの範囲を設定するようにしてもよい。例えば、遮断周波数をより低い周波数とした場合には、歌唱者ピッチデータに係るピッチが安定化する方向に処理されるから、CPU11は、検出領域の範囲を狭くするようにピッチの範囲を検出部1051、1071に設定してもよい。
【0075】
<変形例8>
各実施形態におけるピッチ抽出部101が生成する歌唱者ピッチデータが示すピッチは、検出によっては、1オクターブ(1200cent)ずれる可能性があるが、この場合にも対応できるように検出領域を設定してもよい。この場合には、検出部1051、1071は、検出領域を設定された検出領域に対して、さらにピッチの高い側、低い側双方に1200cent、2400cent、・・・とずらした範囲についても含まれた領域とすればよい。具体的には、第2実施形態においては、検出領域を−10centから+10centのほかに、+1190centから+1210cent、−1190centから−1210centとなるようにすればよい。
【0076】
<変形例9>
各実施形態においては、迷い歌唱評価部105、ロングトーン歌唱評価部107による処理は、歌唱者が歌唱する楽曲が終了した後に行なわれていたが、歌唱途中で順次処理が行なわれるようにしてもよい。この場合には、ピッチ抽出部101は、楽曲の進行に応じて、すでに歌唱された部分のデータである歌唱者音声データから歌唱のピッチを順次抽出し、歌唱ピッチデータを迷い歌唱評価部105またはロングトーン歌唱評価部107に出力していくようにすればよい。そして、迷い歌唱評価部105、ロングトーン歌唱評価部107は、ピッチ抽出部101から順次出力される歌唱ピッチデータにあわせて、順次処理を行っていけばよい。このようにすれば、楽曲が終了した後わずかな時間で処理が終了するため、早く評価結果を表示部15に表示させることができる。また、計測部1052、1072がTcountを出力するタイミング、すなわち迷い歌唱、ロングトーン歌唱が検出されたときに、CPU11は、表示部15に当該検出が行われたことを示す表示を行なうこともできる。
【符号の説明】
【0077】
1…カラオケ装置、10…バス、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…記憶部、14a…楽曲データ記憶領域、14b…歌唱者音声データ記憶領域、14c…ピッチ範囲データ記憶領域、15…表示部、16…操作部、17…マイクロフォン、18…音声処理部、19…スピーカ、101…ピッチ抽出部、102…ピッチ算出部、103…通常評価部、104…採点部、105…迷い歌唱評価部、1051…検出部、1052…計測部、1053…累算部、1054…評価部、106…LPF、107…ロングトーン歌唱評価部、1071…検出部、1072…計測部、1073…累算部、1074…評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲の進行に対応して、時刻の進行に伴ってピッチ幅が変化するピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、
前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、
前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、
前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出する検出手段と、
前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が所定時間以上である場合に、当該計測した時間に応じた情報を出力する計測手段と
を具備することを特徴とするカラオケ装置。
【請求項2】
前記楽曲のメロディを構成する少なくとも一の音に対応する期間内において、前記ピッチ幅が変化する
ことを特徴とする請求項1に記載のカラオケ装置。
【請求項3】
前記楽曲のメロディを構成する音のうち少なくとも一の音に対応する前記ピッチ幅は、当該メロディを構成する他の音とは異なる
ことを特徴とする請求項1に記載のカラオケ装置。
【請求項4】
楽曲の進行に対応して、所定のピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、
前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、
前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、
前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出する検出手段と、
前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が、当該進行に対応して歌唱すべき音の長さに応じて設定された所定時間以上である場合に、当該計測した時間に応じた情報を出力する計測手段と
を具備することを特徴とするカラオケ装置。
【請求項5】
楽曲の進行に対応して、所定のピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、
前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、
前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、
前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱の音量レベルを前記楽曲の進行に対応して抽出するレベル抽出手段と、
前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出するとともに、前記レベル抽出手段が抽出した音量レベルの安定性を検出する検出手段と、
前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が所定時間以上であり、かつ前記検出手段が検出した音量レベルの安定性が予め設定された安定性よりも安定している場合に、当該計測した時間に応じた情報を出力する計測手段と
を具備することを特徴とするカラオケ装置。
【請求項6】
楽曲の進行に対応して、所定のピッチの範囲を示すピッチ範囲を1以上規定するピッチ範囲データを記憶する記憶手段と、
前記楽曲の進行に対応して入力された歌唱者の歌唱に基づいて歌唱者音声データを生成する音声入力手段と、
前記歌唱者音声データに基づいて、前記歌唱者の歌唱のピッチを前記楽曲の進行に対応して抽出するピッチ抽出手段と、
前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチが、前記ピッチ範囲データが規定するピッチ範囲に含まれることを前記楽曲の進行に対応して検出する検出手段と、
前記検出手段が前記楽曲の進行に対して連続して検出した時間を計測するとともに、当該計測した時間が所定時間以上である場合に、当該計測した時間および前記ピッチ抽出手段が抽出したピッチの安定性に応じた情報を出力する計測手段と
を具備することを特徴とするカラオケ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−8596(P2012−8596A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192053(P2011−192053)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2007−64107(P2007−64107)の分割
【原出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】