説明

カラオケ装置

【課題】カラオケ装置において、楽曲の演奏と歌詞表示を正確に同期させ、歌唱し易さの向上を図る。
【解決手段】本発明に係るカラオケ装置は、表示手段に出力したデジタル信号の出力タイミングと、撮像手段にて撮像された表示手段の画面を撮像する撮像手段の撮像信号に基づいて、遅延時間を計測して記憶するキャリブレーション処理と、入力手段にて指定された楽曲に対応する歌詞情報に基づいて表示手段に歌詞を表示させ、表示させた歌詞の色替えを行う歌詞再生処理と、キャリブレーション処理で記憶した遅延時間に基づいて、歌詞再生処理における色替えタイミングを早める、あるいは、演奏処理における演奏タイミングを遅延させる少なくとも一方を実行する調整処理と、を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏にあわせて歌唱を楽しむカラオケ装置に関するものであり、特に、演奏に同期して表示手段に歌詞を表示することのできるカラオケ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、社交の場あるいは個人の楽しみとして、自動演奏に合わせて歌唱を楽しむカラオケ装置が知られている。このカラオケ装置では、演奏に合わせて歌詞を表示することで、歌詞を知らない、あるいは、正確に記憶していない歌唱者に対しても、歌唱すべき歌詞を告知することが可能とされている。現在では一定区間の歌詞を表示した上で、歌唱すべきタイミングに合わせて順次色替えをすることで、歌詞の歌唱タイミングを告知することが主流となっている。
【0003】
このような歌唱すべき歌詞の色替えを行うカラオケ装置について、特許文献1には、音声タイミング検出部で検出した発生タイミングと、ガイドメロディーデータの出力タイミングに基づいて、歌詞テロップ遅延出力部を制御し、歌詞テロップの色変わりを実際の歌唱タイミングに合わせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−173256公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるカラオケ装置では、歌唱者の発声に追従して、画面に表示する歌詞テロップの色変わりのタイミングが変化することで、歌唱者の満足度を向上させることができるものの、色変わりのタイミングは、本来歌うべき模範的なタイミングとは異なるものであって、歌唱すべきタイミングを教示する点においては不都合が生じる。
【0006】
ところで、現在、デジタル化された薄型テレビが一般化される中、カラオケ装置の歌詞表示のために利用される表示手段として使用されている。このようなデジタル化されたテレビ(モニター)を利用する際には、カラオケ装置からデジタル信号として出力された映像信号をモニター側で復号化して表示することが行われる。さらには表示する映像の高画質化、高解像度化などを図るため、カラオケ装置から入力された映像信号に対して、モニター側で画像処理(例えば、映像の高解像度化が図られる超解像処理など)が行われている。
【0007】
デジタルテレビ内で実行される復号化、あるいは、画像処理には時間を要することとなるが、デジタル映像をカラオケ装置に適用した場合、MIDI情報などに基づく演奏音を出力するための音響系統と、デジタル映像信号を出力する映像系統が異なるため、演奏音に対して表示に遅延が生じることとなる。カラオケ装置側で、デジタル映像の複合化と演奏音の再生を全て処理できるのであれば、予め、映像の遅延時間を考慮して設計することが可能である。
【0008】
しかしながら、デジタルテレビを内蔵しないカラオケ装置において、歌詞を表示出力する表示手段として、外部接続した汎用のデジタルテレビを利用した場合、カラオケ装置では、MIDI情報などに基づいて演奏行う音響系の出力と、背景映像や歌詞映像などの映像系の出力が異なる系統となるため、音響系の出力タイミングに対して、デジタルテレビ
内で実行される処理が介在した映像系の出力タイミングに遅延が生じてしまうこととなる。特に、歌詞の歌唱タイミングを告知する色替えについて、遅延が生じた場合には、わずかな遅延時間であっても歌唱者にとっては違和感が生じることとなる。
【0009】
また、デジタルテレビで生じる遅延時間は、デジタルテレビの機種毎、各種設定あるいは実機毎に異なる場合があるため、カラオケ装置側で一定の遅延時間を設けることで対応することも困難な状況となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、デジタルテレビを利用したカラオケ装置に関して、このような状況を鑑みてなされたものである。
そのため、本発明に係るカラオケ装置は、
表示手段にデジタル映像信号を出力する映像出力端子を備えるカラオケ装置において、
表示手段に出力したデジタル信号の出力タイミングと、撮像手段にて撮像された前記表示手段の画面を撮像する撮像手段の撮像信号に基づいて、遅延時間を計測して記憶するキャリブレーション処理と、
入力手段にて指定された楽曲に対応する演奏情報に基づいて演奏を行う演奏処理と、
前記入力手段にて指定された楽曲に対応する歌詞情報に基づいて前記表示手段に歌詞を表示させ、表示させた歌詞の色替えを行う歌詞再生処理と、
前記キャリブレーション処理で記憶した遅延時間に基づいて、前記歌詞再生処理における色替えタイミングを早める、あるいは、前記演奏処理における演奏タイミングを遅延させる少なくとも一方を実行する調整処理と、を実行することを特徴とする。
【0011】
さらに本発明に係るカラオケ装置において、
前記映像出力端子から出力されるデジタル映像信号は、HDMI規格の信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、デジタル映像信号に基づいて表示を行う表示手段に対して、歌詞映像を表示するカラオケ装置において、キャリブレーション処理で記憶された遅延時間に基づいて、色替えタイミングを早める、あるいは、演奏タイミングを遅延させる少なくとも一方を実行する調整処理を行うことで、演奏タイミングと歌詞の色替えタイミングの誤差を抑えることを可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るカラオケ装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係るキャリブレーション処理を示すフロー図
【図3】本発明の実施形態におけるタイミングチャートを示す図
【図4】本発明の実施形態に係る楽曲情報のデータ構成を示す図
【図5】本発明の実施形態に係る楽曲情報再生処理を示すフロー図
【図6】本発明の実施形態に係る歌詞再生処理を示すフロー図
【図7】本発明の実施形態に係るキャリブレーション情報のデータ構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るカラオケ装置の構成を示す図である。本実施形態のカラオケ装置1(「コマンダ」ともいう)は、CPU14、RAM15、ROM16などで構成される制御部を中心として、HDD(ハードディスク)13、音声処理部18、出力映像処理部11、入力映像処理部12、操作パネル10、通信インタフェイス17などを備えて構成されている。
【0015】
制御手段を構成するCPU14、RAM15、ROM16は、コンピューターにおいて一般的に使用される構成であって、CPU14は、プログラムの実行などに基づく各種制御を、RAM15、ROM16、ハードディスク13などに記憶する各種プログラム、各種データに基づいて行う。
【0016】
カラオケ装置1における音声処理部18は、主として演奏情報に基づく演奏処理を実行する手段である。演奏情報はMIDI規格に基づいて作成されたデータの他、コーラスなどを担当する音声データなどを含んで構成されている。音声処理部18では、ユーザーが指定した楽曲に対応する演奏情報に基づいて演奏処理を実行することで、所望の楽曲の演奏を行う。また、オーディオ入力端子に接続されたマイクから入力された音声情報と、演奏情報に基づく演奏音をミキシングしてアンプに出力し、アンプに接続されているスピーカーから放音する。なお、マイクから入力される音声情報に対しては、エコーなどの効果を付加することも可能としている。
【0017】
出力映像処理部11は、歌詞再生処理、並びに、背景映像表示処理など、ディスプレイ21(表示手段)を介してユーザーに視覚的情報を提供する処理を実行する。本実施形態では、出力遺贈処理部11から出力するデジタル映像信号として、HDMI規格の信号を利用している。ディスプレイ21では、受信したデジタル映像信号を復号化するとともに、高解像度化、高画質化などの各種画像処理を行って、その表示画面に表示を行う。
【0018】
歌詞再生処理は、楽曲情報に含まれる歌詞情報に基づいて歌詞をディスプレイ21に表示させる処理であって、演奏処理に同期して実行される。ディスプレイ21に表示された歌詞は、演奏に同期して歌唱すべき箇所が色替え表示され、歌唱者に歌唱箇所を教示する。また、背景映像表示処理は、演奏される楽曲の対応した各種映像を表示することで、歌唱の雰囲気を盛り上げる処理である。そのため、記憶手段としてのハードディスク13には、MPEG形式などによる圧縮が施された背景映像情報が記憶されており、映像処理部11では、この背景映像情報をデコードし、歌詞映像を重畳した映像をディスプレイ12に表示する。
【0019】
通信インタフェイス17は、ネットワーク接続端子を介してインターネットに接続され、図示しないホスト装置から、新しくリリースされた楽曲情報や、背景映像情報、プログラムなどを受信するとともに、ホスト装置に対して利用履歴などを送信する。近年では、ユーザーの利用履歴、登録楽曲などを含んだユーザー情報をホスト装置で管理し、当該ユーザーの利用時に受信することで、各個ユーザーに即したサービスを提供することも可能としている。
【0020】
カラオケ装置1に対して行われる楽曲指定(予約)など、ユーザーからの各種指示は、操作パネル10から行うことも可能であるが、通常、店舗内のネットワークに接続されたリモコン装置(図示せず)から行われる。リモコン装置は、タッチパネルなどのインタフェイスを備えており、ユーザーに各種情報を表示提供するとともに、タッチ指示による入力受付を行うことが可能となっている。
【0021】
記憶手段として機能するハードディスク13には、楽曲を演奏するための楽曲情報の他、ディスプレイ21に背景を表示するための背景映像情報、そして、カラオケ装置1において各種処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、前述したホスト装置から各種データを受信することで、記憶しているデータの追加、更新が実行される。本実施形態で説明する歌詞再生処理についても、プログラムとして受信させることで既存のカラオケ装置1に機能追加することも可能である。
【0022】
さらに本実施形態では、カラオケ装置1による撮像を可能とするためのカメラ22(撮
像手段)を接続するためのビデオ入力端子が設けられている。カメラ22は、歌唱しているユーザーを撮像し、記録するために用いられる他、本実施形態のキャリブレーション処理にて利用される。本実施形態のビデオ入力信号(撮像信号)には、コンポジット映像信号が採用されているが、この他、カメラ22からの出力としてコンポーネント映像信号を用いることや、カメラ22としてUSBカメラを採用し、ビデオ入力端子としてUSB端子を利用することも考えられる。ビデオ入力端子から入力された撮像信号は、入力映像制御部12にて処理される。
【0023】
では、本発明の特徴となるキャリブレーション処理について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るキャリブレーション処理を示すフロー図であり、図3は、そのタイムチャートを示している。キャリブレーション処理は、カラオケ業者が利用できるメンテナンスモードなどからの開始指示にて開始することが可能とされている。キャリブレーション処理にて利用するカメラ22は、通常、歌唱者などを撮影するため、モニタ21の画面外に向けられているが、このメンテナンス処理を実行するときにはモニタ21の画面を撮影する方向に向けられる。
【0024】
キャリブレーション処理が開始され、カメラ22がモニタ21の画面を撮影するように向けられると、カラオケ装置1は、ユーザーによる映像再生開始指示を待つ。ユーザー(カラオケ業者)が、操作パネル10などから開始指示を入力する(S101:Yes)と、制御部として機能するCPU14は、出力映像処理部11に対して所定色のデジタル映像信号を出力する。そして、CPU14は、撮像信号が入力されているか(S102)、また、撮像信号が入力されているときには、撮像信号から所定の色情報を抽出できるか(S103)を判定する。これらの判定について所定時間、クリアできない場合には、モニタ22に対してエラーメッセージを表示させることや、キャリブレーション処理を中断することとしてもよい。
【0025】
一方、撮像信号から所定の色情報が抽出できた場合には、CPU14は出力映像処理部11に対して、出力映像処理部11に対して表示色を変更する指示を実行する(S104)。CPU14は、指示を発した時点からの時間のカウントを開始する(S105)。S104の色替え指示から所定時間経過したことが判定される(S106:Yes)と、出力映像処理部11に対して、異なる色に表示色を変更する指示が発せられる(S107)。この後、CPU14は、カメラ22からの撮像信号を監視し、S107にて変更した色情報が抽出されたかの判定を行う(S108)。判定できた場合(S108:Yes)には、カウントを終了し、カウント開始からの時間を遅延時間Tとして記録し(S110)、キャリブレーション処理を終了する。一方、撮像信号から色情報が抽出できない場合(S108:No)には、再度、S104からの処理を実行する。このような場合、カメラ22の撮像方向が、モニタ21の画面に対して正しく設置されていない場合が、考えられる。そのため、ユーザーに対してカメラ22の撮像方向を確認する指示を表示させることとしてもよい。
【0026】
図3には、このキャリブレーション処理に関するタイムチャートが示されている。図3(a)、(b)に示されるように色替えタイミングクロックの立ち上がりを判定することで、所定時間毎の色替えが実行される。キャリブレーション処理で計測される遅延時間Tは、図3(a)の色替え開始指示からカメラ22にて色換えを判定するまでの時間Tとなるが、このTには、CPU14が色替え開始指示を出力してから、デジタル映像信号を出力するのに要する遅延時間T1(カラオケ装置1の内部処理に要する時間)と、カメラ22から撮像信号を取得して、色替え判定に要する遅延時間T3を含んだものとなっている。
【0027】
遅延時間T1については、カラオケ装置1に依存するため既知の値として取得すること
ができる。そして、遅延時間T3についても使用するカメラ22に依存することとなるが、使用するカメラ22が事前に分かっていれば既知の値として取得できる。したがって、カウントした遅延時間Tから、これら既知の遅延時間T1とT3を差し引くことで、モニタ21の内部処理による遅延時間T2を判定することが可能となる。
【0028】
実際のカラオケ楽曲の再生時には、演奏情報の再生タイミングに対し、歌詞情報の再生タイミング(特に色替え)を、遅延時間T2だけ先行するようにすることで、モニタ21の内部処理による遅延を防ぐことが可能となる。なお、遅延時間T1、T3は無視して、計測した遅延時間Tをそのまま再生時に利用することとしてもよい。特に、遅延時間T1、T3が小さい場合には視覚的影響も少ないものとなる。また、使用するカメラ22をカラオケ装置1に設定し、そのカメラ22に応じた遅延時間T3が設定されるようにしてもよい。さらには、カラオケ装置1に接続されているカメラ22を自動判定して、遅延時間T3を設定することとしてもよい。
【0029】
では、キャリブレーション処理で測定された遅延時間を利用した歌詞再生処理について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る楽曲情報のデータ構成を示す図である。この図に示されるように楽曲情報は、楽曲情報の各種属性を示すメタデータ、演奏のために使用される演奏情報、歌詞表示のために使用される歌詞情報を含んで構成されている。本実施形態では、メタデータとして曲名、作曲者名、曲番号、ジャンル、個別素材画像の有無などを含んで構成されている。曲名、作曲者名、曲番号、ジャンルは、楽曲を検索、指定するための情報として用いられる。個別素材画像は、背景映像として当該楽曲に特化したものを有しているか否かを示す情報であって、有りの場合には、アーティストのライブ映像など当該楽曲に特化した映像が使用可能である。
【0030】
本実施形態の演奏情報は、MIDI規格に即して作成されたMIDIデータとされているが、この他、バックコーラスなどの音声情報を含ませることとも考えられる。MIDIデータの場合には、演奏手段としてのMIDI音源に演奏させることで楽音が奏でられる。
【0031】
歌詞情報(テロップデータ)は、演奏情報による演奏に同期してディスプレイ12に歌詞を表示させるためのデータである。本実施形態では、1つのタイミングで1度に表示させるブロックデータを単位として構成されている。演奏情報の演奏に同期して出力されるステップ値をに基づいて、このブロックデータを読み出し、表示制御することで、演奏に同期した歌詞表示が実行されることとなる。
【0032】
各ブロックデータは、表示データ、属性データを含んで構成されている。表示データは、表示させるべき歌詞の文字列(歌詞文字情報)、及び、当該文字列の位置決めのための座標を含んで構成されている。なお、1画面内に表示させるブロックデータは、複数設けることが可能であって、歌唱終了した箇所のブロックデータの歌詞を消去し、新たなブロックデータの歌詞を表示させることで、スムースな歌唱を行うことが可能となる。
【0033】
属性データは、表示データに含まれる文字列に含まれる文字列の表示、消去、色替えタイミングを決めるための情報を含んだデータ群である。これらタイミングを決めるため、本実施形態では、演奏情報の進行に同期して出力されるステップ値(MIDIステップ値)に対応づけられている。表示ステップ、消去ステップは、表示データの文字列の表示タイミング、消去タイミングを示すステップ値である。また、変化ステップは、表示データ、ルビブロックデータの文字列を色替えを開始するためのステップ値であって、本実施形態では文字列の色替え速度を示す変化速度を含んで構成されている。
【0034】
以上、本実施形態の楽曲情報のデータ構成について説明したが、データ構成については
、本発明の趣旨を変更しない限り適宜形態を採用することができる。
【0035】
本実施形態において楽曲情報を再生させる処理について詳細に説明する。図5は、発明の実施形態に係る楽曲情報再生処理を示すフロー図である。カラオケ装置を操作するユーザーは、図1の操作パネル10、あるいは、ネットワークに接続されたリモコン装置などの指定手段を利用して歌唱したい楽曲を指定する。楽曲の指定は通常、予約という形態で行うことが可能となっており、予約された楽曲は、その識別子(例えば、曲番号)をRAM15内の予約テーブルに記録し、予約テーブルから識別子を順次、読み出して楽曲情報の再生が実行される。
【0036】
操作パネル10などから指定された楽曲について、楽曲情報の再生が開始されると、まず、S201にてハードディスク13に格納されている楽曲情報が読み出される。S202では、読み出された楽曲情報に基づいて再生が開始されることとなるが、ここでは、演奏処理S400と、歌詞再生処理S300とが並列実行される。演奏処理は、読み出された楽曲情報内に含まれる演奏情報を、音声処理部18に演奏されることで実行される。
【0037】
演奏処理S400は、カラオケ装置ではよく知られる処理であって、順次、読み出される音符に相当する楽音発生指令(MIDIコマンド)を、音声処理部18に内蔵するMIDI音源に出力することで実行される。本実施形態では、S401にて読み出された演奏情報に対して、遅延時間T2を持たせる遅延処理(S402:本発明における「調整処理」)を行った後、音声処理部18にて発音させることとしている(S403)。また、演奏情報を読み出す際(S401)には、演奏情報の読み出しの進行を示すステップ値が順次出力されており(S203)、歌詞再生処理S300では、このステップ値に基づいて歌詞再生処理が実行される。楽曲情報の再生は、これら演奏処理S400、歌詞再生処理S300が終了するまで(S204)実行されることとなる。そして、演奏処理S400で発生する楽曲情報再生信号は、演奏情報に基づく演奏音として、音声処理部18へ入力された、歌唱者のマイクからの音声情報とミックスされ、オーディオ出力端子へ出力される。
【0038】
このように、本実施形態では、演奏処理による発音が歌詞再生処理S300に対して、遅延時間T2だけ遅延されて実行される。したがって、歌詞再生処理S300は、見かけ上、遅延時間T2だけ先行して実行され、モニタ21の内部処理による遅延を抑えることが可能となっている。歌唱者は、自身の目で歌唱すべき歌詞の色替えを見るとともに、耳で演奏音を聴きながら歌唱を行うこととなる。本実施形態では、演奏のタイミングと歌唱時期を告知する色替えタイミングとが、本来のタイミングで同期されたものとなっており、歌唱者は、モニタ21特有の遅延、演奏音に対して行われた遅延処理に気付くことなく、違和感の無いカラオケ歌唱を楽しむことが可能となる。
【0039】
では、この歌詞再生処理S300の詳細について説明しておく。図6は、本発明の実施形態に係る歌詞再生処理を示すフロー図である。歌詞再生処理は、図6の右上に示されるように楽曲データ内の歌詞情報、歌詞文字を表示するためのフォントデータ、演奏処理に伴って出力されるステップ値に基づいて実行される。
【0040】
歌詞情報に含まれる各ブロックデータに対して、S301〜S311のブロックデータ処理ループが順次実行される。S302では、演奏処理で出力されるステップ値と読み出されているブロックデータ中、属性データに含まれる各ステップ(表示ステップ、消去ステップ、変化ステップ)との比較が行われる。S303、S305、S309ではこの比較に基づいて後続の各処理に進むこととなる。
【0041】
表示ステップであることが判定された場合(S303:Yes)には、該当するブロッ
クデータの文字列が表示される(S304)。一方、ステップ値との比較の結果、変化ステップであると判定された場合(S305:Yes)には、当該ブロックの文字列(本体文字、ルビ)に対して色替えが実行される。この色換えは、ブロック描画S304にて、画面に表示された文字列について、左端から順に色替えを行い、歌唱者に対して歌唱位置を告知する処理である。この処理は、ブロックデータの属性データに含まれる変化ステップのタイミングで開始される。S306では、属性データ内に含まれる変化速度に基づいて、1回の描画にて変更される色替えの変更幅(ドット数)が算出される。
【0042】
S307では、算出された変更幅にて順次、表示されている文字列の色替え描画が実行される。なお、本実施形態では、1つのブロックデータについて1つの変化速度としているが、ブロックデータ内で変化速度を変更することも可能であり、その場合、変化タイミングと変更後の変化速度が必要となる。
【0043】
ステップ値との比較の結果、消去ステップであることが判定された場合(S308:Yes)には、当該ブロックの文字列の消去が実行される(S309)。以上の処理を演奏情報の演奏が終了するまで(S310:Yes)実行することで、演奏処理に同期した歌詞表示が実行されることとなる。
【0044】
以上、本実施形態では、演奏情報の読み出しに基づいて出力されるステップ値に基づいて、歌詞再生処理を同期実行することとしている。すなわち、演奏情報の再生進行の主導の下、歌詞再生処理が実行されることとしている。演奏と歌詞表示の同期については、このような形態に限らず、各種形態の採用が考えられ、例えば、歌詞再生処理の主導の下、演奏処理を実行することとしてもよい。その場合、演奏処理に対して歌詞再生処理のタイミングが早められることとなる。あるいは、演奏処理を遅らせるとともに、歌詞再生処理を速めることで、両者が遅延時間T2を有するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、演奏に対して、ブロックデータの表示タイミング、色替えタイミング、消去タイミングそれぞれが遅延時間T2だけ先行することとしているが、遅延時間T2の反映は、少なくとも色替えタイミングに対して行うこととすればよい。歌詞の表示、消去タイミングはある程度、歌唱に対して余裕を持ったタイミングで行われるのに対し、色替えタイミングは、歌唱すべきタイミングとぴったり同期して行うことが好ましいため、モニタ21で発生する遅延時間T2を反映させる必要がある。
【0046】
キャリブレーション処理で測定された遅延時間T2は、測定時の各種状況を含んだ情報を含め、キャリブレーション情報としてホスト装置に対して送信することとしてもよい。ホスト装置は、測定時の状況に対応した他のカラオケ装置に対してこのキャリブレーション情報を送信し、受信したカラオケ装置は、キャリブレーション処理を行うことなく、楽曲の演奏と歌詞表示を同期して行うことが可能となる。
【0047】
図7には、キャリブレーション情報のデータ構成の一例が示されている。ここでは、キャリブレーション処理にて使用したディスプレイ21の識別子と、遅延時間T2を含んで記憶したデータ構成となっている。ホスト装置に送信されたキャリブレーション情報は、同じディスプレイ21を使用するカラオケ装置1に対して送信され、受信したカラオケ装置1では、キャリブレーション情報に含まれる遅延時間T2を使用することで、演奏処理と歌詞再生処理を同期して行うことが可能となる。なお、キャリブレーション情報には、測定時の各種状況を示す情報として、このディスプレイ識別子以外に、各種ディスプレイの設定を示す情報を含めておくこととしてもよい。
【0048】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…カラオケ装置、10…操作パネル、11…出力映像処理部、12…入力映像処理部、13…HDD(ハードディスク)、14…CPU(制御部)、15…RAM、16…ROM、17…通信インタフェース、18…音声処理部、21…ディスプレイ(表示部)、22…カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段にデジタル映像信号を出力する映像出力端子を備えるカラオケ装置において、
表示手段に出力したデジタル信号の出力タイミングと、撮像手段にて撮像された前記表示手段の画面を撮像する撮像手段の撮像信号に基づいて、遅延時間を計測して記憶するキャリブレーション処理と、
入力手段にて指定された楽曲に対応する演奏情報に基づいて演奏を行う演奏処理と、
前記入力手段にて指定された楽曲に対応する歌詞情報に基づいて前記表示手段に歌詞を表示させ、表示させた歌詞の色替えを行う歌詞再生処理と、
前記キャリブレーション処理で記憶した遅延時間に基づいて、前記歌詞再生処理における色替えタイミングを早める、あるいは、前記演奏処理における演奏タイミングを遅延させる少なくとも一方を実行する調整処理と、を実行することを特徴とする
カラオケ装置。
【請求項2】
前記映像出力端子から出力されるデジタル映像信号は、HDMI規格の信号であることを特徴とする
請求項1に記載のカラオケ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29744(P2013−29744A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166893(P2011−166893)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】