説明

カラーカメラ装置

【課題】像のずれや色むらの発生を低減することができると共に高速で滑らかな動画撮影を可能とするカラーカメラ装置を提供する。
【解決手段】印加電圧を可変することにより光の透過波長を可変することができるカラーフィルタ20として液晶カラーフィルタを用い、また、イメージセンサ40としてCMOSイメージセンサを用いる。制御回路120は、カラーフィルタ20を透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその変化が周期的に繰り返すようにカラーフィルタ20に印加する電圧を制御し、且つ、その透過波長の変化の各周期において、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光がカラーフィルタ20を透過する各タイミングでイメージセンサ40の動作を制御することにより、三つの基準波長の画像データを一画面分のカラー画像データとして時分割に取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサを用いてカラー画像を取得するカラーカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(a)は第一の従来例であるカラーカメラ装置の概略構成図、図8(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。第一の従来例であるカラーカメラ装置は、図8に示すように、赤色フィルタ220aと、緑色フィルタ220bと、青色フィルタ220cと、三つのイメージセンサ240a,240b,240cと、三つのADコンバータ250a,250b,250cと、三つの画像メモリ270a,270b,270cと、画像処理装置280と、制御回路290とを備える。
【0003】
かかるカラーカメラ装置では、三つのイメージセンサ240a,240b,240cにそれぞれ、フィルタ220a,220b,220cが設置されている。各フィルタ220a,220b,220cは入射光のうち所定色の光を透過させる。これにより、各色の光を所定のイメージセンサに取り込み、カラー画像を得ることができる。具体的に、赤色フィルタ220aを透過した赤色波長の光学像はイメージセンサ240aに取り込まれ、電気信号に変換される。その変換された電気信号はADコンバータ250aにより数値化され、赤色の画像データが得られる。同様に、緑色フィルタ220bを透過した緑色波長の光学像はイメージセンサ240bに取り込まれ、電気信号に変換された後、その変換された電気信号はADコンバータ250bにより緑色の画像データに変換される。そして、青色フィルタ220cを透過した青色波長の光学像はイメージセンサ240cに取り込まれ、電気信号に変換された後、その変換された電気信号はADコンバータ250cにより青色の画像データに変換される。ここで、各イメージセンサ240a,240b,240c及び各ADコンバータ250a,250b,250cの動作は制御回路290により制御される。また、各色の画像データとしては、1画素当たり例えば8bitの2進データを用いている。こうして得られた赤色の画像データ、緑色の画像データ、青色の画像データはそれぞれ、画像メモリ270a,270b,270cに記憶される。
【0004】
画像処理装置280は、三つの画像メモリ270a,270b,270cに記憶されている各色の画像データを合成し、1画素当たり24bitのカラー画像データを生成する。具体的に、1画面が縦方向400画素、横方向600画素で構成される場合には、三つのイメージセンサ240a,240b,240cを構成する光電変換素子を、合計400×600×3=720000個必要とする。そして、そのカラー画像データのデータ量は、1画素当たり24bitであるので、720000×24bit=17280000bit=2160000バイト=2.16メガバイトとなる。また、画像処理装置280は、カラー画像データに対して画像圧縮や色補正等の画像処理を施す。
【0005】
ところで、カラーカメラ装置では光学設計上の制限から、イメージセンサを限られたサイズに形成する必要がある。例えば、三つのイメージセンサ240a,240b,240cの面積を24cmとする場合には、1画素のサイズは約0.33×10−4cmとなる。カラーカメラ装置の解像度は今後さらに高められていく傾向にあるが、そのためには光電変換素子のサイズを小さくし、集積度を高める必要がある。しかし、これでは、受光面積が小さくなり、受光感度の低下、応答スピードの低下等の悪影響が出てしまうおそれがある。このように、従来のカラーカメラ装置では、高解像度、高感度、高応答性、高色階調、小型化等を同時に実現することは非常に困難であった。
【0006】
上記のような問題を解決するために、近年、イメージセンサの前面に透過波長可変型のカラーフィルタを設け、その透過波長を順次変えながら三原色の画像データを取り込むという方法を適用したカラーカメラ装置が案出されている(例えば、特許文献1参照)。ここでは、このカラーカメラ装置を第二の従来例とする。図9(a)は第二の従来例であるカラーカメラ装置の概略構成図、図9(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。第二の従来例であるカラーカメラ装置は、図9に示すように、カラーフィルタ320と、ドライバ回路330と、イメージセンサ340と、ADコンバータ350と、三つのレジスタ360a,360b,360cと、三つの画像メモリ370a,370b,370cと、画像処理装置380と、制御回路390とを備える。
【0007】
カラーフィルタ320は、入射光のうち特定波長の光を選択してイメージセンサ340に導くものである。このカラーフィルタ320に印加する電圧を可変することにより、カラーフィルタ320を透過する光の波長を可変することができる。ドライバ回路330は、カラーフィルタ320に電圧を印加するものである。制御回路390は、ドライバ回路330を介してカラーフィルタ320の印加電圧を制御し、カラーフィルタ320の透過波長を三原色の各色の波長に設定すると共に、イメージセンサ340及びADコンバータ350の動作を制御する。
【0008】
次に、第二の従来例であるカラーカメラ装置の動作について説明する。図10(a)はそのカラーカメラ装置においてカラーフィルタ320に印加する電圧の波形を説明するための図、図10(b)はそのカラーフィルタ320に(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタ320の透過波長の変化を説明するための図である。ここで、図10(a)において縦軸は印加電圧を、横軸は時間を表す。また、図10(b)において縦軸は透過波長を、横軸は時間を表す。
【0009】
図10に示すように、時刻tで、制御回路390がドライバ回路330を介してカラーフィルタ320に、所定の電圧Vを印加すると、所定の応答時間Tが経過した後、カラーフィルタ320の透過波長は赤色波長λに達する。一般に、カラーフィルタの電極に電圧を印加してからカラーフィルタの透過波長が変化を開始するまでの応答時間Tとしては、約10msを要する。そして、制御回路390がカラーフィルタ320の透過波長が赤色波長λに達したタイミングでイメージセンサ340の動作を制御することにより、カラーフィルタ320を透過した赤色波長λの光学像はイメージセンサ340に取り込まれ、電気信号に変換される。その変換された電気信号はADコンバータ350により数値化され、赤色の画像データが得られる。一方、赤色波長λの光学像がイメージセンサ340に取り込まれると、制御回路390は直ちにカラーフィルタ320に印加する電圧をオフにする。
【0010】
こうして印加電圧をオフにしてから応答時間Tが経過すると、カラーフィルタ320の透過波長は初期状態に戻る。制御回路390は、カラーフィルタ320の透過波長が初期状態に戻ったタイミングで、カラーフィルタ320に所定の電圧Vを印加する。すると、応答時間Tが経過した後、カラーフィルタ320の透過波長は緑色波長λに達する。そして、制御回路390がカラーフィルタ320の透過波長が緑色波長λに達したタイミングでイメージセンサ340の動作を制御することにより、カラーフィルタ320を透過した緑色波長λの光学像はイメージセンサ340に取り込まれ、電気信号に変換される。その変換された電気信号はADコンバータ350により数値化され、緑色の画像データが得られる。一方、緑色波長λの光学像がイメージセンサ340に取り込まれると、制御回路390は直ちにカラーフィルタ320に印加する電圧をオフにする。
【0011】
印加電圧をオフにしてから応答時間Tが経過すると、カラーフィルタ320の透過波長は再び、初期状態に戻る。制御回路390は、カラーフィルタ320の透過波長が初期状態に戻ったタイミングで、カラーフィルタ320に所定の電圧Vを印加する。すると、応答時間Tが経過した後、カラーフィルタ320の透過波長は青色波長λに達する。そして、制御回路390がカラーフィルタ320の透過波長が青色波長λに達したタイミングでイメージセンサ340の動作を制御することにより、カラーフィルタ320を透過した青色波長λの光学像はイメージセンサ340に取り込まれ、電気信号に変換される。その変換された電気信号はADコンバータ350により数値化され、青色の画像データが得られる。一方、青色波長λの光学像がイメージセンサ340に取り込まれると、制御回路390は直ちにカラーフィルタ320に印加する電圧をオフにする。
【0012】
こうして得られた赤色の画像データ、緑色の画像データ、青色の画像データはそれぞれ、レジスタ360a,360b,360cを介して、画像メモリ370a,370b,370cに記憶される。画像処理装置380は、三つの画像メモリ370a,370b,370cに記憶されている各色の画像データを合成して、カラー画像データを生成すると共に、その生成したカラー画像データに対し所定の画像処理を施す。
【0013】
このように、第二の従来例のカラーカメラ装置では、一つのカラーフィルタ320を用い、そのカラーフィルタ320の透過波長を赤色波長、緑色波長、青色波長と順次変えながら、一つのイメージセンサ340で各色の画像データを取り込んでいる。これにより、第二の従来例では、三原色の各色毎にイメージセンサを設ける必要がないので、第一の従来例に比べてイメージセンサの1画素当たりのサイズを広く取ることができる。したがって、解像度を高めるために光電変換素子のサイズを小さくすることにしても、受光感度がそれ程低下することはない。
【0014】
【特許文献1】特開平11−205807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の第二の従来例では、カラーフィルタの電極に電圧を印加してからカラーフィルタの透過波長が変化を開始するまで、或いは、カラーフィルタに印加する電圧をオフにしてからカラーフィルタの透過波長が初期状態に戻るまでには、所定の応答時間、例えば10ms程度を要する。具体的に、図10の例では、赤色の画像データを取り込んでから緑色の画像データを取り込むまでに約20msかかり、緑色の画像データを取り込んでから青色の画像データを取り込むまでに約20msかかる。このため、赤色の画像データの取り込みから青色の画像データの取り込みまでに約40msを要するので、移動する被写体を撮影する場合は、カラー画像に像のずれ又は色のむらが発生してしまうという問題がある。しかも、図10の例では、1画面分のカラー画像を撮影する周期は約60msであり、最大でも約16画面/秒の動画撮影が限界である。このため、第二の従来例のカラーカメラ装置では、高速で滑らかな動画撮影を行うのは困難であった。
【0016】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、像のずれや色むらの発生を低減することができると共に高速で滑らかな動画撮影を可能とするカラーカメラ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明に係るカラーカメラ装置は、印加電圧を可変することにより光の透過波長を可変することができるカラーフィルタと、前記カラーフィルタを透過した特定波長の光の画像情報を電気信号に変換することにより当該特定波長の画像データを得るイメージセンサと、前記カラーフィルタを透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその変化が周期的に繰り返すように前記カラーフィルタに印加する電圧を制御し、且つ、その透過波長の変化の各周期において、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光が前記カラーフィルタを透過する各タイミングで前記イメージセンサの動作を制御することにより、前記三つの基準波長の画像データを一画面分のカラー画像データとして時分割に取得する制御手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のカラーカメラ装置において、前記制御手段は、前記カラーフィルタの透過波長が前記一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第一期間と、その後、前記カラーフィルタの透過波長が前記最大波長である状態を保持する第二期間とを併せた期間が前記カラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、前記カラーフィルタに印加する電圧を制御することを特徴とするものである。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のカラーカメラ装置において、前記制御手段は、前記カラーフィルタの透過波長が前記一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第一期間と、その後、前記カラーフィルタの透過波長が前記最小波長から前記最大波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第二期間とを併せた期間が前記カラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、前記カラーフィルタに印加する電圧を制御することを特徴とするものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載のカラーカメラ装置において、前記制御手段は、透過波長の変化の各周期において、前記三つの基準波長の光が前記カラーフィルタを透過する各タイミングで前記イメージセンサの動作を制御するだけでなく、前記三つの基準波長の光以外に一つ又は複数の所定波長の光が前記カラーフィルタを透過する各タイミングで前記イメージセンサの動作を制御することにより、前記三つの基準波長の画像データ及び前記一つ又は複数の所定波長の画像データを時分割に取得することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明では、制御手段は、カラーフィルタを透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその透過波長の変化が周期的に繰り返すようにカラーフィルタに印加する電圧を制御し、且つ、その透過波長の変化の各周期において、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御することにより、三つの基準波長の画像データを一画面分のカラー画像データとして時分割に取得する。ここで、カラーフィルタの透過波長が一定の波長範囲内で連続的に変化している場合には、その波長範囲内におけるある波長から他の波長に変化するまでの時間はとても短い。これにより、透過波長が連続的に変化する短い期間内に、三つの基準波長の画像データを得ることができるので、それら三つの基準画像データについては、最初の画像データを取得してから残り二つの画像データを取得するまでの待ち時間がとても短くなる。このため、一画面分のカラー画像データを構成する各基準波長の画像データの間で像のずれ、色むらが発生するのを十分低減することができると共に、高速で滑らかな撮影が可能となる。したがって、本発明のカラーカメラ装置では、高品位で解像度の高い画像を高速で得ることが可能である。
【0022】
また、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データを時分割に扱うことにより、各基準波長の画像データとしては、従来よりもデータ量の少ないデータを用いればよく、しかも、画像処理を行う際にはそのデータ量の少ない画像データを基準波長毎に処理すればよいので、画像処理のための演算量を少なくして、処理スピードの向上を図ることができる。
【0023】
請求項2記載の発明では、制御手段は、カラーフィルタの透過波長が一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第一期間と、その後、カラーフィルタの透過波長が最大波長である状態を保持する第二期間とを併せた期間がカラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、カラーフィルタに印加する電圧を制御する。これにより、第一期間内ではカラーフィルタの透過波長が略直線的に若しくは段階的に変化するので、制御手段は、ある時点からの経過時間を管理し、その経過時間に基づいてイメージセンサを動作させる各タイミングを容易に決定することができる。
【0024】
請求項3記載の発明では、制御手段は、カラーフィルタの透過波長が一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第一期間と、その後、カラーフィルタの透過波長が最小波長から最大波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第二期間とを併せた期間がカラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、カラーフィルタに印加する電圧を制御する。これにより、第一期間だけでなく第二期間においても各基準波長の画像データを取得して、カラーフィルタの透過波長の変化の一周期の間に、二画面分のカラー画像データを取得することができるので、さらに高速撮影が可能なカラーカメラ装置を実現することができる。
【0025】
請求項4記載の発明では、制御手段は、透過波長の変化の各周期において、三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御するだけでなく、三つの基準波長の光以外に一つ又は複数の所定波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御することにより、三つの基準波長の画像データ及び前記一つ又は複数の所定波長の画像データを時分割に取得する。これにより、より多くの色情報を得ることができるので、さらに高品位で色再現性のよい画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0027】
まず、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の第一実施形態であるカラーカメラ装置の概略構成図、図1(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。第一実施形態のカラーカメラ装置は、図1に示すように、レンズ10と、カラーフィルタ20と、ドライバ回路30と、イメージセンサ40と、ADコンバータ50と、制御信号生成回路60と、三つの画像メモリ71,72,73と、画像処理装置110と、制御回路120とを備える。以下では、かかるカラーカメラ装置を用いて、被写体Aのカラー画像を連続的に撮影する場合について説明する。
【0028】
レンズ10は、被写体Aからの光を光学像(光学画像情報)としてイメージセンサ40の光電面上に結像させるものである。撮影の際には、被写体Aの像がイメージセンサ40の光電面上にできるように、レンズ10を動かして、レンズ10とイメージセンサ40との位置関係を調整しなければならない。
【0029】
カラーフィルタ20は、レンズ10とイメージセンサ40との間に設けられている。このカラーフィルタ20は、レンズ10を介して入射した光のうち特定波長の光を選択してイメージセンサ40に導くものである。第一実施形態では、カラーフィルタ20として、印加電圧を可変することにより光の透過波長を可変することができるものを用いる。このようなカラーフィルタ20の具体例としては、液晶を用いて作製された液晶カラーフィルタや、有機系のエレクトロクロミックを用いて作製された有機系カラーフィルタを挙げることができる。ここでは、特に、カラーフィルタ20として液晶カラーフィルタを用いる場合を説明する。
【0030】
液晶カラーフィルタは、液晶フィルタと偏向フィルタとを幾枚も組み合わせた構造を有している。液晶フィルタの電極に所定の電圧を印加すると、液晶材の配列がその電圧(電流)方向に揃い、液晶フィルタによる光の透過率が変わる。液晶カラーフィルタでは、液晶フィルタと偏向フィルタとを組み合わせているので、電圧を印加したときに、液晶格子効果により特定波長の光だけが透過することができるようになる。このように、印加電圧と液晶カラーフィルタの透過波長とは一対一に対応する。また、液晶カラーフィルタは、印加電圧の変化に対し、緩やかな応答特性を示す。このため、液晶カラーフィルタに印加する電圧を適切に制御すれば、液晶カラーフィルタが透過する光の波長を連続的に変化させることができる。第一実施形態では、制御回路120がドライバ回路30を介してカラーフィルタ20に印加する電圧を制御する。
【0031】
ドライバ回路30は、カラーフィルタ20に電圧を印加するものであり、図1(a)に示すように、電源部31と、可変抵抗32と、アンプ33とを有する。電源部31はカラーフィルタ20に印加する電圧を生成するものである。可変抵抗32はその印加電圧を調整するものであり、アンプ33はその印加電圧を増幅するものである。ここで、ドライバ回路30は、後述する図3(a)に示すような略鋸波形の電圧を出力する。このドライバ回路30は制御回路120によって制御される。
【0032】
イメージセンサ40は、カラーフィルタ20を透過した特定波長の光の画像情報を電気信号に変換することにより当該特定波長の画像データ(輝度データ)を得るものである。このイメージセンサ40の動作は、制御信号生成回路60からの信号に基づいて制御される。また、イメージセンサ40は多数の光電変換素子から構成されている。ここでは、一画素に対して一個の光電変換素子を使用している。具体的に、縦方向400画素、横方向600画素の画像を得る場合には、一画面に使用する光電変換素子の数は、240000(=400×600)個である。すなわち、第一実施形態では、後述するように、三原色の各波長の画像データを時分割で取得するため、カラー画像を撮影する場合であっても、モノクロ画像を撮影する場合に必要とする光電変換素子の数と同じ数の光電変換素子から構成されたイメージセンサを用いるだけで済む。
【0033】
また、このイメージセンサ40としては、例えば200μs程度のシャッタースピードで露光できる高感度イメージセンサ、具体的には、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、電子撮像管等を使用することが望ましい。特に、第一実施形態では、イメージセンサ40として、CMOSイメージセンサを用いることにする。CMOSイメージセンサは、チップ内にシャッター(電子的シャッター)を内蔵しているため、メカニカルシャッターを設ける必要はなく、制御がしやすいという利点がある。これに対し、イメージセンサ40としてCCDイメージセンサを用いる場合には、そのチップ内に電子シャッターを製造プロセス上作り込むのが困難であるため、メカニカルシャッターを設ける必要がある。
【0034】
ここで、CMOSイメージセンサ40における光電変換素子及びシャッターの回路構成について説明する。図2はCMOSイメージセンサ40における光電変換素子及びシャッターの回路構成を説明するための図である。図2に示す回路は、光電変換素子41と、コンデンサ42と、四つのトランジスタ43,44,45,46とから構成されている。カラーフィルタ20を透過した特定波長の光が光電変換素子41に入射すると、その光の強弱に応じた光電荷が光電変換素子41に発生する。トランジスタ43はシャッターに相当するものである。すなわち、トランジスタ43をオンにすると、シャッターが開き、一方、トランジスタ43をオフにすると、シャッターが閉じることになる。シャッターが開くと、光電変換素子41に発生した光電荷はコンデンサ42に蓄えられる。このコンデンサ42に蓄えられた光電荷を取り出すことにより、その時の光強度を読み取ることができる。かかる光電荷を取り出す際には、トランジスタ44,45が用いられる。これらトランジスタ44,45は増幅器に相当する。トランジスタ45をオンにすると、コンデンサ42に蓄えられた光電荷に対応する電気信号がライン47から出力され、これにより、光強度が読み取られる。また、トランジスタ46はコンデンサ42に蓄えられた電荷を消去する、いわゆるリセット用のトランジスタである。上記のようにして光強度を読み出した後には、トランジスタ46をオンにして即座にコンデンサ42に蓄えられている光電荷を消去すると共に、光電変換素子41を初期状態にする。これにより、次の読み取り動作を行う準備が整うことになる。このような読み取り動作は各光電変換素子に対して行われ、画素毎の光強度信号が得られる。かかる画素毎の光強度信号の全体が当該特定波長の画像データとなる。このように、電子的シャッターを内蔵するCMOSイメージセンサでは、光電変換素子と電子的シャッターとを個々に制御して、それらを正確に且つ高速に動作させることができる。したがって、CMOSイメージセンサは、メカニカルシャッターを設ける必要があるCCDイメージセンサに比べて、高速撮影に対して有効な手段であるといえる。
【0035】
ADコンバータ50は、イメージセンサ40で得られた輝度データをデジタルの画像データに変換するものである。ADコンバータ50の動作は、制御信号生成回路60からの信号に基づいて制御される。第一実施形態では、デジタル画像データとして一画素当たり8bitの2進データを用いることにする。この8bitデータは256階調まで光強度を表現することができる。尚、ビット長は容易に増やすことができるので、一画素当たりのデジタル画像データのビット長としては、求める画質に応じた所望のビット長を定めればよい。例えば、高画質に要求に対しては、ビット長を16bitや24bit等に設定することになる。
【0036】
制御信号生成回路60は、制御回路120から送られたタイミング信号に基づいて、所定のタイミングで、イメージセンサ40に対する制御信号(読取信号)を生成し、イメージセンサ40に送出する。イメージセンサ40はかかる制御信号(読取信号)を受け取ると、その受け取ったタイミングで画像の読み取り動作を行うことになる。また、制御信号生成回路60は、上記タイミング信号に基づいて、所定のタイミングで、ADコンバータ50に対する制御信号(開始信号)を生成し、ADコンバータ50に送出する。ADコンバータ50はかかる制御信号(開始信号)を受け取ると、変換処理を開始することになる。
【0037】
制御回路120は、カラー画像を得るために、各部の動作を統括して制御するものである。カラー画像を得るには、三つの基準波長の光、例えば三原色の光である赤色波長λ(例えば700nm)の光、緑色波長λ(例えば546.1nm)の光、青色波長λ(例えば435.8nm)の光をそれぞれイメージセンサ40に取り込み、当該各基準波長の画像データを取得する必要がある。これら三つの基準波長の画像データが一画面分のカラー画像データを構成する。第一実施形態では、制御回路120は、被写体Aを撮影する際に、カラーフィルタ20を透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその変化が周期的に繰り返すようにカラーフィルタ20に印加する電圧を制御し、且つ、透過波長の変化の各周期において三つの基準波長の光がカラーフィルタ20を透過する各タイミングでイメージセンサ40の動作を制御する。すなわち、各周期においてカラーフィルタ20の透過波長が変化している期間内に、イメージセンサ40のシャッターを三回だけ切ることにより、カラー画像を得るのに必要な三つの基準波長の画像データを時分割に取得するのである。
【0038】
上述したように、第一実施形態では、カラーフィルタ20として液晶カラーフィルタを用いている。この液晶カラーフィルタは次のような応答特性を有する。すなわち、液晶カラーフィルタの応答時間は、一般に20ms程度であり、高速応答品の場合でも8ms程度である。このように液晶カラーフィルタの応答時間が遅いことはよく知られている。ここで、液晶カラーフィルタの応答時間とは、液晶カラーフィルタに電圧を印加したときに、その電圧印加の時点から液晶カラーフィルタがその電圧印加に対する応答(透過波長の変化)を開始するまでの時間をいう。また、本発明者等が調べたところ、液晶カラーフィルタの透過波長がある波長範囲内で変化している場合、その波長範囲内におけるある波長から他の波長に変化するまでの時間はとても短いことが分かった。これは、フィルタ内部の粒子の移動量が時間に比例するためであると考えられる。このため、液晶カラーフィルタの透過波長を予め所定の波長に保持しておき、その後、液晶カラーフィルタの透過波長を当該所定の波長から一定の波長範囲内で連続的に変化させることにすれば、その変化の期間においては、液晶カラーフィルタは高速で動作することになる。第一実施形態では、この事実を利用し、液晶カラーフィルタの透過波長が変化している期間内に三つの基準波長の画像データを取得することにしているのである。これにより、非常に短い時間で一画面分のカラー撮影を完了することができるので、像のずれや色むらのないカラー画像を得ることができる。すなわち、第一実施形態のカラーカメラ装置では、上述した第二の従来例のように、一画面分のカラー撮影において、各基準波長の画像データを取得する度に液晶カラーフィルタの透過波長を初期状態に戻すのではない。また、このように液晶カラーフィルタを高速動作させている間に撮影を行うため、イメージセンサ40としては高速撮影が可能なCMOSイメージセンサを用いているのである。
【0039】
いま、カラーフィルタ20の印加電圧及びその印加電圧に応じたカラーフィルタ20の透過波長の変化について詳しく説明する。図3(a)は第一実施形態のカラーカメラ装置においてカラーフィルタ20に印加する電圧の波形を説明するための図、図3(b)はそのカラーフィルタ20に(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタ20の透過波長の変化を説明するための図である。ここで、図3(a)において縦軸は印加電圧を、横軸は時間を表す。また、図3(b)において縦軸は透過波長を、横軸は時間を表す。
【0040】
第一実施形態では、図3(a)に示すような略鋸波形の電圧を周期的にカラーフィルタ20に印加している。具体的に、この印加電圧は、時間T11の間に電圧Vから電圧Vまで連続的に変化し、それから、時間T12の間、その電圧Vに保持される。その後、印加電圧は同じ変化を繰り返す。ここで、電圧Vは、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λ近傍の所定波長λとなるときの印加電圧の設定値であり、電圧Vは、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λ近傍の所定波長λとなるときの印加電圧の設定値である。実際には、波長λを、例えば700nmより少し長い波長に定め、波長λを、例えば435.8nmより少し短い波長に定めている。すなわち、波長λから波長λまでの範囲内には、青色波長λ、緑色波長λ、赤色波長λが含まれる。また、上記の時間T12をフィルタ応答時間Tに設定する。
【0041】
図3(a)に示す略鋸波形の電圧を周期的にカラーフィルタ20に印加すると、カラーフィルタ20の透過波長は、図3(b)に示すように、その電圧変化に追従して連続変化を示す。具体的に、時刻tで印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始したとする。時刻tからフィルタ応答時間T(=T12)が経過した後、カラーフィルタ20の透過波長は波長λから波長λへの変化を開始する。ここで、第一実施形態では、制御回路120は、予めドライバ回路30の可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長が時間の経過に伴って波長λから波長λまで略直線的に変化するように印加電圧を制御している。例えば、変化開始の時刻t+Tから所定の時間T1Rが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λに達し、それから所定の時間T1Gが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が緑色波長λに達し、それからさらに所定の時間T1Bが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λに達する。そして、時刻t+Tから時間T11が経過すると、カラーフィルタ20の透過波長は波長λに達する。その直後、カラーフィルタ20の透過波長は、時刻t+T11で印加電圧が電圧Vから電圧Vに降下したことに応じて、波長λから波長λに急激に変化する。このカラーフィルタ20の透過波長が波長λである状態は、時間T12(=T)だけ保持される。このように、カラーフィルタ20の透過波長は、その透過波長が波長λから波長λまで略直線的に変化する第一期間T11と、その後、透過波長が波長λである状態を保持する第二期間T12とを併せた期間を一周期とする変化を行う。したがって、第一実施形態のカラーフィルタ20を用いると、第一期間T11において、スペクトラム光のスィープ変化を実現することができる。
【0042】
ここで、上述したように、制御回路120は、予めドライバ回路30の可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長が時間の経過に伴って略直線的に変化するように印加電圧を制御している。しかしながら、例えばカラーフィルタ20に印加する電圧を直線的に変化させたとしても、カラーフィルタ20の透過波長が必ずしも直線的に変化するとは限らない。実際、カラーフィルタ20の透過波長を所定の波長に設定するための印加電圧の値は個々のカラーフィルタ毎に多少異なっていることがあり、また、カラーフィルタ20の透過波長が変化するときの振る舞いは温度によって変わることもある。すなわち、一般に、液晶応答時間及び透過波長は、フィルタの個体差や使用する環境(使用温度、動作時間等)等により変動する。このため、制御回路120は、カラーフィルタ20の個体差や使用温度等の要素を考慮して、カラーフィルタ20に印加する電圧を決定する必要がある。尚、図3(a)では、電圧Vから電圧Vへの印加電圧の変化の様子を直線で示しているが、上述したことから分かるように、必ずしもその変化の様子は直線となるわけではない。
【0043】
また、印加電圧の変化の傾き又は印加電圧の変化量(電圧差)を大きくすることにより、カラーフィルタ20の透過波長の変化速度を速くすることができる。実際、第一実施形態では、制御回路120は、予めドライバ回路30の可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期における第一期間T11が2ms程度となるように印加電圧を制御している。また、図3の例では、第二期間T12は約8msである。したがって、カラーフィルタ20の透過波長の変化の周期T11+T12は約10msである。
【0044】
更に、制御回路120は、例えば、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λから緑色波長λに変化するまでの時間T1Gと、緑色波長λから青色波長λに変化するまでの時間T1Bとが略同じとなるように印加電圧を制御することもできる。このような変化に要する時間は、イメージセンサ40の特性に応じて設定することが好ましい。
【0045】
次に、イメージセンサ40の動作タイミングについて説明する。イメージセンサ40は、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期における第一期間T11内に、制御信号生成回路60から読取信号が送られたタイミングで、画像の読み取り動作を行う。制御信号生成回路60は、カラーフィルタ20の印加電圧が変化を開始した時点からの経過時間に基づいて読取信号を送出するタイミングを決定することができる。カラーフィルタ20の印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始した時点から、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λ、緑色波長λ、青色波長λの各波長に達するまでの時間は一定だからである。
【0046】
具体的に、制御回路120は、カラーフィルタ20の印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始するタイミングでタイミング信号を制御信号生成回路60に出力する。制御信号生成回路60は、制御回路120からタイミング信号が送られた時点からの経過時間を管理している。そして、制御信号生成回路60は、その経過時間が時間T+T1Rに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40は赤色波長の画像データ(R画像データ)を読み取る。次に、制御信号生成回路60は、経過時間が時間T+T1R+T1Gに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40は緑色波長の画像データ(G画像データ)を読み取る。その後、制御信号生成回路60は、経過時間が時間T+T1R+T1G+T1Bに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40は青色波長の画像データ(B画像データ)を読み取る。このようにして、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期T11+T12の間に、三つの基準波長の画像データがイメージセンサ40により時分割で取得され、ADコンバータ50に順次出力される。ここで、この取得された三つの基準波長の画像データは一画面分のカラー画像データとなるので、一画面分のカラー画像を撮影する周期は、カラーフィルタ20の透過波長の変化の周期と同じである。具体的に、その周期は約10msであるので、第一実施形態のカラーカメラ装置を用いると、1秒間に約100画面(フレーム)が得られ、滑らかな撮影が可能である。
【0047】
ここで、上述したように第一期間T11は2ms程度であるが、第一実施形態では、イメージセンサ40として、200μs程度のシャッタースピードで露光できる高感度なCMOSイメージセンサを使用しているので、第一期間T11の間にイメージセンサ40のシャッターを三回切ることは十分可能である。
【0048】
尚、制御信号生成回路60が読取信号を送出するタイミングをより正確に決定するには、次のような方法を用いればよい。すなわち、イメージセンサ40の一部に、透過波長を赤色波長に固定した光学フィルタ、透過波長を緑色波長に固定した光学フィルタ、透過波長を青色波長に固定した光学フィルタを設置すると共に、それらの光学フィルタ毎に、当該光学フィルタを透過する光を検出する検出手段を設ける。制御信号生成回路60は、各検出手段からの検出信号を受けたときに、カラーフィルタ20の透過波長が当該検出手段の検出する光の波長に達したことを認識し、読取信号をイメージセンサ40に送出すればよい。
【0049】
各画像メモリ71,72,73は、ADコンバータ50から出力されたデジタルの画像データを記憶するものである。一画面分のカラー画像データは、R画像データ、G画像データ、B画像データから構成されるが、これらの画像データはそれぞれ、最終的に第一の画像メモリ71、第二の画像メモリ72、第三の画像メモリ73に記憶される。具体的に、ADコンバータ50がR画像データを出力すると、そのR画像データはまず第三の画像メモリ73に一旦記憶される。次に、ADコンバータ50がG画像データを出力すると、第三の画像メモリ73に記憶されているR画像データは第二の画像メモリ72に転送されると共に、当該G画像データは第三の画像メモリ73に記憶される。また、ADコンバータ50がB画像データを出力すると、第二の画像メモリ72に記憶されているR画像データは第一の画像メモリ71に転送され、第三の画像メモリ73に記憶されているG画像データは第二の画像メモリ72に転送されると共に、当該B画像データは第一の画像メモリ73に記憶される。こうして、R画像データ、G画像データ、B画像データはそれぞれ、第一の画像メモリ71、第二の画像メモリ72、第三の画像メモリ73に記憶される。
【0050】
画像処理装置110は、図1(b)に示すように、三つの画像処理回路111,112,113を含んで構成されている。第一の画像処理回路111は第一の画像メモリ71に記憶されているR画像データに所定の画像処理を施すものであり、第二の画像処理回路112は第二の画像メモリ72に記憶されているG画像データに所定の画像処理を施すものであり、第三の画像処理回路113は第三の画像メモリ73に記憶されているB画像データに所定の画像処理を施すものである。このように、画像処理は各基準波長の画像データ毎に行われる。具体的に、各画像処理回路111,112,113で行われる画像処理の内容としては、画像圧縮処理や色補正処理等がある。尚、各画像処理回路111,112,113は、制御回路120からの信号に基づいて処理を開始する。
【0051】
画像圧縮処理は、同一波長色の画像について、時間変化に対する前後の画像を比較演算し、その差分を求めて後の画像をデータ化することで、扱うデータ量を削減する処理である。例えば、この圧縮方法としては、後の画像において前後の画像の間で輝度変化がある部分のみデータ化し、輝度変化のない部分をデータ化しない方法や、画素データを大きなブロック像として扱う方法などがある。実際、圧縮方法には各種規格化されたフォーマット(例えばJPEG等)があり、各画像処理回路111,112,113は所定のフォーマットに応じた演算を行えばよい。圧縮方法としては公知の技術を用いることができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0052】
色補正処理は、同一波長色の画像について、色を強調するなど、色を補正する処理である。この色補正の方法としては公知の技術を用いることができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0053】
ところで、従来のカラーカメラ装置では、カラー画像データとして1画素当たり24bitのデータを用いている。このため、画像圧縮処理において、前後の画像を比較演算する際には、その演算量が膨大になってしまい、処理を迅速に行うことができなかった。これに対し、第一実施形態では、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データを時分割に扱い、各基準波長の画像データとして1画素当たり8bitのデータを用いている。そして、画像処理装置110が各基準波長の画像データに対してそれぞれ独立に処理を行うことにより、画像圧縮処理における演算量を少なくして、処理スピードを速めることができる。
【0054】
また、従来のカラーカメラ装置では、ある特定の画素に対して色補正を行う際に、24bitの元データに対して補正色も24bitデータを用いる必要がある。このため、色補正処理においても、その演算処理が複雑となり、処理スピードが追いつかないという問題や、回路規模が大きくなるという問題を抱えていた。いま、従来の色補正についての計算例を詳しく説明する。具体的に、ある画素のR画像データに対して、色を強調する補正を行う場合を考える。そして、24bitの元データ(カラー画像データ)は(331188)であるとする。ここで、このデータ表記(000000)は16進数表記である。また、そのデータのうち最初の二桁がR画像データを、その次の二桁がG画像データ、そして、最後の二桁がB画像データを表している。まず、R画像データを抽出するため、元データ(331188)と(FF0000)との論理積(AND)をとる(ステップ1)。これにより、R画像データ(330000)が得られる。次に、そのR画像データを右にシフトする処理を行い、R画像データをデータ(000033)に変換する(ステップ2)。その後、そのデータ(000033)に所定の補正値、例えば(000001)を加える補正演算を行う(ステップ3)。これにより、(000034)というデータが得られる。次に、そのデータを左にシフトする処理を行い、そのデータをデータ(340000)に変換する(ステップ4)。最後に、そのデータ(340000)を元データに書き込む処理を行い、補正後のカラー画像データ(341188)が得られる(ステップ5)。このように、従来は、色補正処理の際の演算ステップがとても多かった。
【0055】
これに対し、第一実施形態では、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データを時分割に扱うことにより、画像処理装置110は、各基準波長の画像データに対してそれぞれ独立に演算を行えばよいので、色補正処理における演算量を少なくして、処理スピードを速めることができる。具体的に、上記例と同様に、ある画素のR画像データに対して、色を強調する補正を行う場合を説明する。第一実施形態では、各基準波長の画像データとして1画素当たり8bitのデータを用いている。いま、元のR画像データを(33)とする。ここで、データ表記(00)は16進数表記である。この場合、その元データ(33)に所定の補正値、例えば(01)を加算するだけで、補正後のR画像データ(34)が得られる。このように、第一実施形態では、色補正処理の際の演算ステップを、従来に比べて約80%削減することができるので、画質補正等を容易に行うことができる。
【0056】
各画像処理回路111,112,113で処理された各基準波長の画像データは、時分割で出力される。すなわち、画像処理装置110で処理されたR画像データ、G画像データ、B画像データはその順番で順次出力される。ここで、データを出力する際に要する時間は例えば10μs以下であり、フィルタ応答時間T(=8ms)に比べてとても短いので、画像処理装置110において画像処理を行う時間を十分確保することができ、撮影性能が低下することはない。
【0057】
次に、第一実施形態のカラーカメラ装置において、被写体Aを撮影して、そのカラー画像データを取得する処理の手順について説明する。
【0058】
まず、被写体Aの像がイメージセンサ40の光電面上にできるように、レンズ10とイメージセンサ40との位置関係を調整する。次に、制御回路120は、ドライバ回路30を制御して、図3(a)に示す周期的な電圧をカラーフィルタ20に印加する。このとき、制御回路120は、印加電圧の各周期において第一の電圧Vから第二の電圧Vへの変化が開始するタイミングで、制御信号生成回路60にタイミング信号を出力する。
【0059】
制御信号生成回路60は、そのタイミング信号を受けたときから所定の時間T+T1Rが経過すると、読取信号をイメージセンサ40に送出すると共に、開始信号をADコンバータ50に送出する。これにより、イメージセンサ40は、シャッターを切り、R画像データを取得した後、そのR画像データをADコンバータ50に出力する。そして、ADコンバータ50は、イメージセンサ40から送られたそのR画像データをデジタルのR画像データに変換する。その後、ADコンバータ50で変換されたR画像データは、第三の画像メモリ73に記憶される。
【0060】
次に、制御信号生成回路60は、当該タイミング信号を受けたときから所定の時間T+T1R+T1Gが経過すると、読取信号をイメージセンサ40に送出すると共に、開始信号をADコンバータ50に送出する。これにより、イメージセンサ40は、シャッターを切り、G画像データを取得した後、そのG画像データをADコンバータ50に出力する。そして、ADコンバータ50は、イメージセンサ40から送られたそのG画像データをデジタルのG画像データに変換する。その後、既に第三の画像メモリ73に記憶されているR画像データは第二の画像メモリ72に転送されると共に、今回、ADコンバータ50で変換されたG画像データは、第三の画像メモリ73に記憶される。
【0061】
次に、制御信号生成回路60は、当該タイミング信号を受けたときから所定の時間T+T1R+T1G+T1Bが経過すると、読取信号をイメージセンサ40に送出すると共に、開始信号をADコンバータ50に送出する。これにより、イメージセンサ40は、シャッターを切り、B画像データを取得した後、B画像データをADコンバータ50に出力する。そして、ADコンバータ50は、イメージセンサ40から送られたそのB画像データをデジタルのB画像データに変換する。そして、既に第二の画像メモリ72に記憶されているR画像データは第一の画像メモリ71に転送され、そして、既に第三の画像メモリ73に記憶されているG画像データは第二の画像メモリ72に転送されると共に、今回、ADコンバータ50で変換されたB画像データは、第三の画像メモリ73に記憶される。
【0062】
こうして、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データ(R画像データ、G画像データ、B画像データ)がそれぞれ所定の画像メモリ71,72,73に記憶されると、制御回路120は、各画像処理回路111,112,113に対して所定の信号を送出する。各画像処理回路111,112,113は制御回路120からの信号を受け取ると、所定の画像処理を開始する。具体的に、第一の画像処理回路111は、第一の画像メモリ71に記憶されているR画像データに対して画像圧縮処理や色補正処理を施す。そして、第二の画像処理回路112は、第二の画像メモリ72に記憶されているG画像データに対して画像圧縮処理や色補正処理を施し、第三の画像処理回路113は、第三の画像メモリ73に記憶されているB画像データに対して画像圧縮処理や色補正処理を施す。こうして、三つの基準波長の画像データのそれぞれに対する画像処理が終了すると、三つの基準波長の画像データは時分割で出力される。上記の処理が繰り返されることにより、被写体Aのカラー画像が連続的に撮影される。
【0063】
第一実施形態のカラーカメラ装置では、制御回路は、カラーフィルタを透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその透過波長の変化が周期的に繰り返すようにカラーフィルタに印加する電圧を制御し、且つ、その透過波長の変化の各周期において、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御することにより、三つの基準波長の画像データを一画面分のカラー画像データとして時分割に取得する。これにより、透過波長が連続的に変化する短い期間内に、三つの基準波長の画像データを得ることができるので、それら三つの基準画像データについては、最初の画像データを取得してから残り二つの画像データを取得するまでの待ち時間がとても短くなる。このため、一画面分のカラー画像データを構成する各基準波長の画像データの間で像のずれ、色むらが発生するのを十分低減することができると共に、高速で滑らかな撮影が可能となる。したがって、第一実施形態のカラーカメラ装置では、高品位で解像度の高い画像を高速で得ることが可能である。
【0064】
また、第一実施形態では、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データを時分割に扱うことにより、各基準波長の画像データとしては、従来よりもデータ量の少ないデータを用いればよく、しかも、画像処理を行う際にはそのデータ量の少ない画像データを基準波長毎に処理すればよいので、画像処理のための演算量を少なくして、処理スピードの向上を図ることができる。
【0065】
ここで、第一実施形態で用いる画像データは基準波長毎に独立しているが、各基準波長の画像データを、従来のような24bitのカラー画像データに容易に合成することができる。例えば、一定の規則演算にしたがって、8bitの各基準波長の画像データをビット長方向に並べ重ねることにより、24bitのカラー画像データを容易に得ることができる。このように、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データを時分割に扱うことは、とても汎用性が高い。
【0066】
また、第一実施形態では、一画面分のカラー画像データを構成する三つの基準波長の画像データを時分割に扱うことにより、各基準波長の画像データのデータ長を自由に変更することが可能である。これは、三つの基準波長の画像データをそれぞれ時分割に扱う場合、処理側は各基準波長の画像データの区切りを認識することができるので、各基準波長の画像データのデータ長には何ら制限が課されないからである。したがって、例えば、三つの基準波長の画像データのデータ長がそれぞれ、8bit、16bit、24bitであったとしても、処理側は、処理対象の画像データがどの波長に対する画像データであるかを認識して、即座に対応することが可能である。
【0067】
更に、第一実施形態のカラーカメラ装置では、図8に示すような、イメージセンサを三つ用意し、入射光を赤色、緑色、青色の各光に分光した後、それらの光をそれぞれイメージセンサに取り込むという第一の従来例に比べて、イメージセンサを一つだけ設ければよいので、装置の小型化を図れるという利点がある。また、イメージセンサを一つだけ設けているので、イメージセンサの面積を大きくすれば、図8に示す第一の従来例であるカラーカメラ装置に比べて、感度を上げることも可能である。
【0068】
尚、第一実施形態のカラーカメラ装置とそのカラーカメラ装置で時分割に得られる各基準波長の画像データとを使用すれば、効率のよい画像システムを構築することが可能である。具体的に、この画像システムでは、第一実施形態のカラーカメラ装置を、三原色の各色の時分割データを入力データとして用いることができる市販の画像表示装置に接続する。かかる画像表示装置では、各基準波長の画像データについて時分割にスペクトラム表示を行い、カラー画像を表示する。これにより、画像取り込み、画像処理、画像表示等に際してデータをすべてスペクトラム表現で扱うことができるので、色純度が高く、しかも色の再現性がとてもよい画像を表示することができる。
【0069】
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図4(a)は本発明の第二実施形態であるカラーカメラ装置の概略構成図、図4(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0070】
第二実施形態のカラーカメラ装置は、図4に示すように、レンズ10と、カラーフィルタ20と、ドライバ回路30aと、イメージセンサ40と、ADコンバータ50と、制御信号生成回路60aと、三つの画像メモリ71,72,73と、セレクタ回路80と、画像処理装置110と、制御回路120とを備える。
【0071】
ドライバ回路30aは、カラーフィルタ20に電圧を印加するものであり、図4(a)に示すように、電源部31aと、可変抵抗32と、アンプ33とを有する。電源部31aはカラーフィルタ20に印加する電圧を生成するものである。このドライバ回路30aは、後述する図5(a)に示すような略鋸波形の電圧を出力する。すなわち、ドライバ回路30aと第一実施形態のドライバ回路30とでは、電圧の出力波形のみが異なる。
【0072】
制御信号生成回路60aは、制御回路120から送られたタイミング信号に基づいて、所定のタイミングで、イメージセンサ40に対する制御信号(読取信号)を生成し、イメージセンサ40に送出すると共に、当該タイミング信号に基づいて、所定のタイミングで、ADコンバータ50に対する制御信号(開始信号)を生成し、ADコンバータ50に送出する。制御信号生成回路60aは、後述するように、カラーフィルタ20の透過波長の変化の一周期において、イメージセンサ40及びADコンバータ50に対してそれぞれ、制御信号を四回送出する点で、第一実施形態の制御信号生成回路60と相違する。
【0073】
第二実施形態のカラーカメラ装置と第一実施形態のカラーカメラ装置では、主として、カラーフィルタ20の透過波長の変化の様子が異なる。いま、第二実施形態におけるカラーフィルタ20の印加電圧及びその印加電圧に応じたカラーフィルタ20の透過波長の変化について詳しく説明する。図5(a)は第二実施形態のカラーカメラ装置においてカラーフィルタ20に印加する電圧の波形を説明するための図、図5(b)はそのカラーフィルタ20に(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタの透過波長の変化を説明するための図である。ここで、図5(a)において縦軸は印加電圧を、横軸は時間を表す。また、図5(b)において縦軸は透過波長を、横軸は時間を表す。
【0074】
第二実施形態では、図5(a)に示すような略鋸波形の電圧を周期的にカラーフィルタ20に印加している。具体的に、この印加電圧は、時間T21の間に電圧Vから電圧Vまで連続的に変化し、それから、時間T22の間にその電圧Vから電圧Vまで連続的に変化する。その後、印加電圧は同じ変化を繰り返す。ここで、電圧Vは、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λとなるときの印加電圧の値であり、電圧Vは、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λとなるときの印加電圧の値である。
【0075】
図5(a)に示す略鋸波形の電圧を周期的にカラーフィルタ20に印加すると、カラーフィルタ20の透過波長は、図5(b)に示すように、その電圧変化に追従して連続変化を示す。具体的に、時刻tで印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始したとする。時刻tからフィルタ応答時間Tが経過した後、カラーフィルタ20の透過波長は赤色波長λから青色波長λへの変化を開始する。第二実施形態では、制御回路120は、予めドライバ回路30aの可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長が時間の経過に伴って赤色波長λから青色波長λまで略直線的に変化するように印加電圧を制御している。例えば、変化開始の時刻t+Tから所定の時間T21Gが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が緑色波長λに達し、それから所定の時間T21Bが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λに達する。ここで、T21G+T21B=T21である。その後は、カラーフィルタ20の透過波長はその青色波長λから赤色波長λへの変化を開始する。第二実施形態では、制御回路120は、予めドライバ回路30aの可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長が時間の経過に伴って青色波長λから赤色波長λまで略直線的に変化するように印加電圧を制御している。例えば、変化開始の時刻t+T+T21から所定の時間T22Gが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が緑色波長λに達し、それから所定の時間T22Rが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λに達する。ここで、T22G+T22R=T22である。このように、カラーフィルタ20の透過波長は、その透過波長が赤色波長λから青色波長λまで略直線的に変化する第一期間T21と、その後、透過波長がその青色波長λから赤色波長λまで略直線的に変化する第二期間T22とを併せた期間を一周期とする変化を行う。
【0076】
また、第二実施形態のカラーカメラ装置では、カラーフィルタ20への印加電圧の周期、したがってカラーフィルタ20の透過波長の変化の周期は、例えば1ミリ秒から数秒までの間で任意の時間に設定することが可能である。この場合、制御回路120は、その設定された周期でカラーフィルタ20への電圧印加を行う。
【0077】
次に、イメージセンサ40の動作タイミングについて説明する。第二実施形態では、制御信号生成回路60aは、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期において、イメージセンサ40に読取信号を四回送出する。具体的に、制御回路120は、カラーフィルタ20の印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始するタイミングでタイミング信号を制御信号生成回路60aに出力する。制御信号生成回路60aは、制御回路120からタイミング信号が送られた時点からの経過時間を管理する。そして、制御信号生成回路60aは、その経過時間が時間Tに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はR画像データを読み取る。次に、制御信号生成回路60aは、経過時間が時間T+T21Gに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はG画像データを読み取る。その後、制御信号生成回路60aは、経過時間が時間T+T21に達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はB画像データを読み取る。さらにその後、制御信号生成回路60aは、経過時間が時間T+T21+T22Gに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はG画像データを読み取る。このようにして、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期T21+T22の間に、R画像データ、G画像データ、B画像データ、G画像データがイメージセンサ40により時分割で取得され、ADコンバータ50に順次出力される。
【0078】
こうして一周期の間に得られた四つの画像データのうち、最初に得られたR画像データ、二番目に得られたG画像データ、及び三番目に得られたB画像データが一画面分のカラー画像データを構成し、当該一周期の間において三番目に得られたB画像データ及び四番目に得られたG画像データは、次の一周期の間において最初に得られたR画像データとともに、一画面分のカラー画像データを構成することになる。すなわち、連続する二つの画面を構成するカラー画像データにおいては、R画像データ若しくはB画像データが共通に用いられる。
【0079】
このように、第二実施形態では、一画面分のカラー画像を撮影する周期は、カラーフィルタ20の透過波長の変化の周期の半分となる。つまり、第一実施形態のようにカラーフィルタの透過波長を一定の波長に保持しておく期間が不要となるので、その期間を有効に利用してその期間においても画像データを取得することにより、カラーフィルタ20の透過波長の変化の一周期の間に二画面分のカラー画像データを取得することにしているのである。このため、第二実施形態のカラーカメラ装置では、撮影周期の短い連続した画像を得ることが可能である。
【0080】
また、第二実施形態では、カラーフィルタ20の透過波長の変化の一周期の間に赤色波長の光と青色波長の光についてはそれぞれ一回撮影するのに対し、緑色波長の光については二回撮影している。これは、人間の目は緑色付近の波長の光に対して敏感であり、その光に対する視覚感度が高いとされているからである。すなわち、G画像データをR画像データやB画像データによりも多く取得することにより、視覚感度の高い、非常に鮮明な画像を得ることができる。実際、従来からある一般的なカラーCCDイメージセンサ又はカラーCMOSイメージセンサでは、赤色波長の光を透過する赤色フィルタと青色波長の光を透過する青色フィルタとを同数用いると共に緑色波長の光を透過する緑色フィルタをその二倍の数だけ用いたカラーフィルタを複数の光電変換素子の前面に設けることにより、緑色の感度を高める工夫がなされている。このことからも分かるように、第二実施形態における各色の画像データの読取方法は、緑色の感度を高めるという点でとても有効な方法である。
【0081】
ところで、上記の第一実施形態では、1画面(フレーム)を得るのに要する時間は約10msである。すなわち1秒間に約100画面を得ることができるので、滑らかな撮影が可能である。その撮影速度は、現行のテレビ放送に対する描画規格(1秒間に60画面)と比べても、十分に余裕がある。しかしながら、第一実施形態では、カラーフィルタの透過波長が変化している短い期間(約2ms)に、三つの基準波長の画像データを取り込んでいるので、低照度時の撮影では、イメージセンサへ到達する光量が不足することが考えられる。これに対し、第二実施形態における各色の画像データの読取方法では、このような低照度時の撮影であっても、撮影感度を高めることが可能である。すなわち、第二実施形態では、低照度時の撮影を行う場合には、カラーフィルタ20に印加する電圧を緩やかに変化させてカラーフィルタ20の透過波長の変化の周期を第一実施形態に比べて長く設定すると共に、イメージセンサ40のシャッタースピードを第一実施形態に比べて遅く設定すればよい。これにより、イメージセンサ40へ到達する光量を増やして、撮影感度の向上を図ることができる。
【0082】
セレクタ回路80は、制御回路120からの信号に基づいて、三つの画像メモリ71,72,73の中から、ADコンバータ50から出力される各画像データを記憶する画像メモリを選択するものである。第二実施形態では、各色の画像データは、R,G,B,G,・・・という順番でADコンバータ50から出力され、しかも、連続する二つの画面を構成するカラー画像データにおいてはR画像データ若しくはB画像データが重複して用いられるので、画像処理装置110による画像処理を効率よく行うためにも、ADコンバータ50から出力される各色の画像データを記憶する記憶領域(画像メモリ)を制御する必要がある。
【0083】
具体的に、ADコンバータ50がR画像データを出力するときには、セレクタ回路80は、第一の画像メモリ71に対しその記憶領域を開放する旨の信号を送り、そのR画像データを第一の画像メモリ71に記憶させる。ADコンバータ50がG画像データを出力するときには、セレクタ回路80は、第二の画像メモリ72に対しその記憶領域を開放する旨の信号を送り、そのG画像データを第二の画像メモリ72に記憶させる。そして、ADコンバータ50がB画像データを出力するときには、セレクタ回路80は、第三の画像メモリ73に対しその記憶領域を開放する旨の信号を送り、そのB画像データを第三の画像メモリ73に記憶させる。
【0084】
次に、第二実施形態において、イメージセンサ40(ADコンバータ50)からの各色の画像データの出力順番と、画像処理装置110からの各色の画像データの出力順番との関係について説明する。
【0085】
いま、R画像データDR1、G画像データDG11、B画像データDB1、G画像データDG12、R画像データDR2、G画像データDG21、B画像データDB2、G画像データDG22、・・・がその順番でADコンバータ50から出力されるとする。B画像データDB1が出力された時点では、R画像データDR1、G画像データDG11、B画像データDB1はそれぞれ、第一の画像メモリ71、第二の画像メモリ72、第三の画像メモリ73に記憶される。そして、各画像処理回路111,112,113はそれぞれ、画像メモリ71,72,73に記憶されている画像データを読み取り、その画像データに対して画像処理を施す。こうして画像処理が施されたR画像データDR1、G画像データDG11、B画像データDB1はその順番で時分割に出力される。
【0086】
次に、G画像データDG12がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのG画像データDG12を第二の画像メモリ72に記憶させる。その後、R画像データDR2がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのR画像データDR2を第一の画像メモリ71に記憶させる。ここで、この時点では、第三の画像メモリ73にはB画像データDB1が消去されずにそのまま残っている。そして、各画像処理回路111,112,113はそれぞれ、画像メモリ71,72,73に記憶されている画像データを読み取り、その画像データに対して画像処理を施す。こうして画像処理が施されたR画像データDR2、G画像データDG12、B画像データDB1はその順番で時分割に出力される。
【0087】
次に、G画像データDG21がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのG画像データDG21を第二の画像メモリ72に記憶させる。その後、B画像データDB2がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのB画像データDB2を第三の画像メモリ73に記憶させる。ここで、この時点では、第一の画像メモリ71にはR画像データDR2が消去されずにそのまま残っている。そして、各画像処理回路111,112,113はそれぞれ、画像メモリ71,72,73に記憶されている画像データを読み取り、その画像データに対して画像処理を施す。こうして画像処理が施されたR画像データDR2、G画像データDG21、B画像データDB2はその順番で時分割に出力される。
【0088】
したがって、R画像データDR1、G画像データDG11、B画像データDB1、G画像データDG12、R画像データDR2、G画像データDG21、B画像データDB2、・・・がその順番でADコンバータ50から出力された場合には、画像処理装置110からは、R画像データDR1、G画像データDG11、B画像データDB1、R画像データDR2、G画像データDG12、B画像データDB1、R画像データDR2、G画像データDG21、B画像データDB2、・・・がその順番で出力されることになる。すなわち、画像処理装置110からの各画像データの出力順番は、第一実施形態と同様に、R,G,Bの順番である。
【0089】
第二実施形態のカラーカメラ装置でも、上記第一実施形態のカラーカメラ装置と同様の作用・効果を奏する。特に、第二実施形態では、制御回路は、カラーフィルタの透過波長が一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に変化する第一期間と、その後、カラーフィルタの透過波長がその最小波長から最大波長まで略直線的に変化する第二期間とを併せた期間がカラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、カラーフィルタに印加する電圧を制御する。これにより、第一期間だけでなく第二期間においても各基準波長の画像データを取得して、カラーフィルタの透過波長の変化の一周期の間に、二画面分のカラー画像データを取得することができるので、第二実施形態のカラーカメラ装置では、第一実施形態のカラーカメラ装置に比べて高速撮影が可能である。
【0090】
また、第二実施形態では、カラーフィルタの透過波長の変化の周期を、例えば1ミリ秒から数秒までの間で任意の時間に設定することができる。このため、被写体の照度が十分ある場合には、高速撮影、スローモーション撮影など、多彩な撮影方法に対応することができる。また、被写体の照度が低い場合には、カラーフィルタの透過波長の変化の周期を長く設定すると共に、イメージセンサのシャッタースピードを遅く設定することにより、撮影感度を高めることができる。このように、第二実施形態のカラーカメラ装置は、高速撮影、スローモーション撮影、高感度撮影が可能であるので、高品質ビデオ撮影、動画等の連続撮影に適している他、医療、バイオ、天体、地理、農業、生物等の各分野における観察、観測を目的とした撮影、スペクトラム解析等にも利用することができる。
【0091】
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図6(a)は本発明の第三実施形態であるカラーカメラ装置の概略構成図、図6(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。尚、第三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0092】
第三実施形態のカラーカメラ装置は、図6に示すように、レンズ10と、カラーフィルタ20と、ドライバ回路30bと、イメージセンサ40と、ADコンバータ50と、制御信号生成回路60bと、三つの画像メモリ71,72,73と、セレクタ回路80と、画像処理装置110と、制御回路120とを備える。
【0093】
ドライバ回路30bは、カラーフィルタ20に電圧を印加するものであり、図6(a)に示すように、電源部31bと、可変抵抗32と、アンプ33とを有する。電源部31bはカラーフィルタ20に印加する電圧を生成するものである。このドライバ回路30bは、後述する図7(a)に示すような略鋸波形の電圧を出力する。すなわち、ドライバ回路30bと第二実施形態のドライバ回路30aとでは、電圧の出力波形のみが異なる。
【0094】
制御信号生成回路60bは、制御回路120から送られたタイミング信号に基づいて、所定のタイミングで、イメージセンサ40に対する制御信号(読取信号)を生成し、イメージセンサ40に送出すると共に、当該タイミング信号に基づいて、所定のタイミングで、ADコンバータ50に対する制御信号(開始信号)を生成し、ADコンバータ50に送出する。制御信号生成回路60bは、後述するように、カラーフィルタ20の透過波長の変化の一周期において、イメージセンサ40及びADコンバータ50に対してそれぞれ、制御信号を六回送出する点で、第一及び第二の実施形態の制御信号生成回路60,60aと相違する。
【0095】
第三実施形態のカラーカメラ装置と第一及び第二の実施形態のカラーカメラ装置では、主として、カラーフィルタ20の透過波長の変化の様子が異なる。いま、第三実施形態におけるカラーフィルタ20の印加電圧及びその印加電圧に応じたカラーフィルタ20の透過波長の変化について詳しく説明する。図7(a)は第三実施形態のカラーカメラ装置においてカラーフィルタ20に印加する電圧の波形を説明するための図、図7(b)はそのカラーフィルタ20に(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタの透過波長の変化を説明するための図である。ここで、図7(a)において縦軸は印加電圧を、横軸は時間を表す。また、図7(b)において縦軸は透過波長を、横軸は時間を表す。
【0096】
第三実施形態では、図7(a)に示すような略鋸波形の電圧を周期的にカラーフィルタ20に印加している。具体的に、この印加電圧は、時間T31の間に電圧Vから電圧Vまで連続的に変化し、それから、時間T32の間、その電圧Vに保持される。そして、その後、時間T33の間にその電圧Vから電圧Vまで連続的に変化し、それから、時間T34の間、その電圧Vに保持される。以後、印加電圧は同じ変化を繰り返す。ここで、上記第一実施形態で説明したように、電圧Vは、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λ近傍の所定波長λとなるときの印加電圧の値であり、電圧Vは、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λ近傍の所定波長λとなるときの印加電圧の値である。
【0097】
図7(a)に示す略鋸波形の電圧を周期的にカラーフィルタ20に印加すると、カラーフィルタ20の透過波長は、図7(b)に示すように、その電圧変化に追従して連続変化を示す。具体的に、時刻tで印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始したとする。時刻tからフィルタ応答時間Tが経過した後、カラーフィルタ20の透過波長は波長λから波長λへの変化を開始する。第三実施形態では、制御回路120は、予めドライバ回路30bの可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長が時間の経過に伴って波長λから波長λまで略直線的に変化するように印加電圧を制御している。例えば、変化開始の時刻t+Tから所定の時間T31Rが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λに達し、それから所定の時間T31Gが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が緑色波長λに達し、それからさらに所定の時間T31Bが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λに達する。そして、時刻t+Tから時間T31が経過すると、カラーフィルタ20の透過波長は波長λに達する。その後、カラーフィルタ20の透過波長が波長λである状態が、時間T32だけ保持される。
【0098】
その後は、カラーフィルタ20の透過波長はその波長λから波長λへの変化を開始する。第三実施形態では、制御回路120は、予めドライバ回路30bの可変抵抗32の値を調整して、カラーフィルタ20の透過波長が時間の経過に伴って波長λから波長λまで略直線的に変化するように印加電圧を制御している。例えば、変化開始の時刻t+T+T31+T32から所定の時間T33Bが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が青色波長λに達し、それから所定の時間T33Gが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が緑色波長λに達し、それからさらに所定時間T33Rが経過すると、カラーフィルタ20の透過波長が赤色波長λに達する。そして、時刻t+T+T31+T32から時間T33が経過すると、カラーフィルタ20の透過波長は波長λに達する。その後、カラーフィルタ20の透過波長が波長λである状態が、時間T34だけ保持される。このように、カラーフィルタ20の透過波長は、その透過波長が波長λから波長λまで略直線的に変化する第一期間T31と、透過波長がその波長λである状態を保持する第二期間T32と、透過波長がその波長λから波長λまで略直線的に変化する第三期間T33と、透過波長がその波長λである状態を保持する第四期間T34とを併せた期間を一周期とする変化を行う。
【0099】
次に、イメージセンサ40の動作タイミングについて説明する。第三実施形態では、制御信号生成回路60bは、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期において、イメージセンサ40に読取信号を六回送出する。具体的に、制御回路120は、カラーフィルタ20の印加電圧が電圧Vから電圧Vへの変化を開始するタイミングでタイミング信号を制御信号生成回路60bに出力する。制御信号生成回路60bは、制御回路120からタイミング信号が送られた時点からの経過時間を管理する。そして、制御信号生成回路60bは、その経過時間が時間T+T31Rに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はR画像データを読み取る。次に、制御信号生成回路60bは、経過時間が時間T+T31R+T31Gに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はG画像データを読み取る。その後、制御信号生成回路60bは、経過時間が時間T+T31R+T31G+T31Bに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はB画像データを読み取る。
【0100】
次に、制御信号生成回路60bは、経過時間が時間T+T31+T32+T33Bに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はB画像データを読み取る。その後、制御信号生成回路60bは、経過時間が時間T+T31+T32+T33B+T33Gに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はG画像データを読み取る。さらにその後、制御信号生成回路60bは、経過時間が時間T+T31+T32+T33B+T33G+T33Rに達したと判断すると、読取信号をイメージセンサ40に送る。これにより、その読取信号が送られたタイミングでイメージセンサ40のシャッターが開き、イメージセンサ40はR画像データを読み取る。このようにして、カラーフィルタ20の透過波長の変化の各周期T31+T32+T33+T34の間に、R画像データ、G画像データ、B画像データ、B画像データ、G画像データ、R画像データがイメージセンサ40により時分割で取得され、ADコンバータ50に順次出力される。
【0101】
こうして一周期の間に得られた六つの画像データのうち、最初に得られたR画像データ、二番目に得られたG画像データ及び三番目に得られたB画像データが一画面分のカラー画像データを構成し、四番目に得られたB画像データ、五番目に得られたG画像データ及び六番目に得られたR画像データが一画面分のカラー画像データを構成することになる。このように、第三実施形態では、一画面分のカラー画像を撮影する周期は、カラーフィルタ20の透過波長の変化の周期の半分である。
【0102】
また、第三実施形態におけるカラーフィルタ20の透過波長の変化は、第二実施形態におけるカラーフィルタ20の透過波長の変化において、透過波長を一定に保持する期間を余分に設けたものとなっている。このため、第三実施形態のカラーカメラ装置は、第二実施形態よりも長い周期での撮影や、スローシャッタースピードでの撮影を行う場合に使用するのに適している。但し、第三実施形態では、第二実施形態と異なり、連続する二つの画面を構成するカラー画像データにおいて、R画像データ若しくはB画像データを重複して用いることはしていない。これは、撮影周期を長くした場合に、一画面を構成する基準波長毎の像にずれが発生し、色むら等、画像品質が低下してしまうのを防止するためである。
【0103】
次に、第三実施形態において、イメージセンサ40(ADコンバータ50)からの各色の画像データの出力順番と、画像処理装置110からの各色の画像データの出力順番との関係について説明する。
【0104】
いま、R画像データDR1、G画像データDG1、B画像データDB1、B画像データDB2、G画像データDG2、R画像データDR2、R画像データDR3、G画像データDG3、B画像データDB3、・・・がその順番でADコンバータ50から出力されるとする。R画像データDR1がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのR画像データDR1を第一の画像メモリ71に記憶させる。次に、G画像データDG1がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのG画像データDG1を第二の画像メモリ72に記憶させる。その後、B画像データDB1がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのB画像データDB1を第三の画像メモリ73に記憶させる。そして、各画像処理回路111,112,113はそれぞれ、画像メモリ71,72,73に記憶されている画像データを読み取り、その画像データに対して画像処理を施す。こうして画像処理が施されたR画像データDR1、G画像データDG1、B画像データDB1はその順番で時分割に出力される。
【0105】
次に、B画像データDB2がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのB画像データDB2を第三の画像メモリ73に記憶させる。その後、G画像データDG2がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのG画像データDG2を第二の画像メモリ72に記憶させる。さらにその後、R画像データDR2がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのR画像データDR2を第一の画像メモリ71に記憶させる。そして、各画像処理回路111,112,113はそれぞれ、画像メモリ71,72,73に記憶されている画像データを読み取り、その画像データに対して画像処理を施す。こうして画像処理が施されたR画像データDR2、G画像データDG2、B画像データDB2はその順番で時分割に出力される。
【0106】
次に、R画像データDR3がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのR画像データDR3を第一の画像メモリ71に記憶させる。その後、G画像データDG3がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのG画像データDG3を第二の画像メモリ72に記憶させる。さらにその後、B画像データDB3がADコンバータ50から出力されると、セレクタ回路80は、そのB画像データDB3を第三の画像メモリ73に記憶させる。そして、各画像処理回路111,112,113はそれぞれ、画像メモリ71,72,73に記憶されている画像データを読み取り、その画像データに対して画像処理を施す。こうして画像処理が施されたR画像データDR3、G画像データDG3、B画像データDB3はその順番で時分割に出力される。
【0107】
したがって、R画像データDR1、G画像データDG1、B画像データDB1、B画像データDB2、G画像データDG2、R画像データDR2、R画像データDR3、G画像データDG3、B画像データDB3、・・・がその順番でADコンバータ50から出力された場合には、画像処理装置110からは、R画像データDR1、G画像データDG1、B画像データDB1、R画像データDR2、G画像データDG2、B画像データDB2、R画像データDR3、G画像データDG3、B画像データDB3、・・・がその順番で出力されることになる。すなわち、画像処理装置110からの各画像データの出力順番は、第一又は第二の実施形態と同様に、R,G,Bの順番である。
【0108】
第三実施形態のカラーカメラ装置でも、上記第一実施形態のカラーカメラ装置と同様の作用・効果を奏する。また、第三実施形態におけるカラーフィルタの透過波長の変化は、第二実施形態におけるカラーフィルタの透過波長の変化において、透過波長を一定に保持する期間を余分に設けたものとなっているので、この第三実施形態のカラーカメラ装置は、第二実施形態のカラーカメラ装置に比べてより長い周期での撮影やスローシャッタースピードでの撮影を行う場合に使用するのに適している。
【0109】
ところで、第一実施形態のカラーカメラ装置でも、カラーフィルタの透過波長が一定の波長を保持している期間を調整すれば、第三実施形態のカラーカメラ装置を用いた場合と同じ撮影結果を得ることができる。いずれのカラーカメラ装置を用いる場合であっても、光電変換素子の性能と撮影する被写体からの光量とに応じて印加電圧の出力波形を適切に選択すれば、最適な撮影性能が得られる。
【0110】
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0111】
例えば、上記の各実施形態では、制御回路が、カラーフィルタの透過波長が一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に変化している期間内に、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御する場合について説明したが、制御回路は、カラーフィルタの透過波長が一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで段階的に変化するようにカラーフィルタに印加する電圧を制御し、その変化の期間内に、三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御するようにしてもよい。
【0112】
また、上記の各実施形態では、本発明のカラーカメラ装置を用いて動画を撮影する場合について説明したが、本発明のカラーカメラ装置を通常のスチールカメラとして使用して、静止画を撮影することもできる。この場合、カラーフィルタの透過波長を一周期にわたってのみ変化させ、透過波長が変化している期間内に三つの基準波長の画像データを取得すればよい。
【0113】
また、上記の各実施形態においては、カラー画像を得るための三つの基準波長の光として三原色(赤、緑、青)の光を用いた場合について説明したが、例えば、三つの基準波長の光として、三原色の補色(黄、マゼンタ、シアン)の光を用いてもよい。
【0114】
更に、上記の各実施形態において、制御回路は、透過波長の変化の各周期において、三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御するだけでなく、三つの基準波長の光以外に一つ又は複数の所定波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御することにより、三つの基準波長の画像データ及び前記一つ又は複数の所定波長の画像データを時分割に取得するようにしてもよい。これにより、より多くの色情報を得ることができるので、さらに高品位で色再現性のよい画像を得ることができる。一般に、制御回路は、カラーフィルタの透過波長が連続的に変化する期間内にイメージセンサを複数回動作させて、複数の任意波長の画像データを時分割に取得するようにしてもよい。これにより、可視光の撮影だけでなく、例えば近赤外線撮影等、可視光外の撮影も可能となるので、本発明のカラーカメラ装置を、スペクトラム分析、解析、観察等の用途にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明のカラーカメラ装置では、制御手段は、カラーフィルタを透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその透過波長の変化が周期的に繰り返すようにカラーフィルタに印加する電圧を制御し、且つ、その透過波長の変化の各周期において、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光がカラーフィルタを透過する各タイミングでイメージセンサの動作を制御することにより、三つの基準波長の画像データを一画面分のカラー画像データとして時分割に取得する。これにより、透過波長が連続的に変化する短い期間内に、三つの基準波長の画像データを得ることができるので、それら三つの基準画像データについては、最初の画像データを取得してから残り二つの画像データを取得するまでの待ち時間がとても短くなる。このため、一画面分のカラー画像データを構成する各基準波長の画像データの間で像のずれ、色むらが発生するのを十分低減することができると共に、高速で滑らかな撮影が可能となる。したがって、本発明のカラーカメラ装置は、高品位カラーカメラとして使用するのに好適であるが、それだけでなく、製品の色検査、表面検査、薬品等の調合検査、食品の品質検査、生物の識別検査、医療検査等の検査の分野での利用や、車載カメラ、セキュリティカメラとしての利用等、広範囲にわたって使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】(a)は本発明の第一実施形態であるカラーカメラ装置の概略構成図、(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。
【図2】CMOSイメージセンサにおける光電変換素子及びシャッターの回路構成を説明するための図である。
【図3】(a)は第一実施形態のカラーカメラ装置においてカラーフィルタに印加する電圧の波形を説明するための図、(b)はそのカラーフィルタに(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタの透過波長の変化を説明するための図である。
【図4】(a)は本発明の第二実施形態であるカラーカメラ装置の概略構成図、(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。
【図5】(a)は第二実施形態のカラーカメラ装置においてカラーフィルタに印加する電圧の波形を説明するための図、(b)はそのカラーフィルタに(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタの透過波長の変化を説明するための図である。
【図6】(a)は本発明の第三実施形態であるカラーカメラ装置の概略構成図、(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。
【図7】(a)は第三実施形態のカラーカメラ装置においてカラーフィルタに印加する電圧の波形を説明するための図、(b)はそのカラーフィルタに(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタの透過波長の変化を説明するための図である。
【図8】(a)は第一の従来例であるカラーカメラ装置の概略構成図、(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。
【図9】(a)は第二の従来例であるカラーカメラ装置の概略構成図、(b)はそのカラーカメラ装置の概略ブロック図である。
【図10】(a)は第二の従来例であるカラーカメラ装置においてカラーフィルタに印加する電圧の波形を説明するための図、(b)はそのカラーフィルタに(a)の電圧を印加したときのカラーフィルタの透過波長の変化を説明するための図である。
【符号の説明】
【0117】
10 レンズ
20 カラーフィルタ
30,30a,30b ドライバ回路
31,31a,31b 電源部
32 可変抵抗
33 アンプ
40 イメージセンサ
41 光電変換素子
42 コンデンサ
43,44,45,46 トランジスタ
47 ライン
50 ADコンバータ
60,60a,60b 制御信号生成回路
71 第一の画像メモリ
72 第二の画像メモリ
73 第三の画像メモリ
80 セレクタ回路
110 画像処理装置
111 第一の画像処理回路
112 第二の画像処理回路
113 第三の画像処理回路
120 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧を可変することにより光の透過波長を可変することができるカラーフィルタと、
前記カラーフィルタを透過した特定波長の光の画像情報を電気信号に変換することにより当該特定波長の画像データを得るイメージセンサと、
前記カラーフィルタを透過する光の波長が一定の波長範囲内で連続的に変化すると共にその変化が周期的に繰り返すように前記カラーフィルタに印加する電圧を制御し、且つ、その透過波長の変化の各周期において、カラー画像を得るために必要な三つの基準波長の光が前記カラーフィルタを透過する各タイミングで前記イメージセンサの動作を制御することにより、前記三つの基準波長の画像データを一画面分のカラー画像データとして時分割に取得する制御手段と、
を具備することを特徴とするカラーカメラ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記カラーフィルタの透過波長が前記一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第一期間と、その後、前記カラーフィルタの透過波長が前記最大波長である状態を保持する第二期間とを併せた期間が前記カラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、前記カラーフィルタに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1記載のカラーカメラ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記カラーフィルタの透過波長が前記一定の波長範囲内における最大波長から最小波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第一期間と、その後、前記カラーフィルタの透過波長が前記最小波長から前記最大波長まで略直線的に若しくは段階的に変化する第二期間とを併せた期間が前記カラーフィルタの透過波長の変化の一周期となるように、前記カラーフィルタに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1記載のカラーカメラ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、透過波長の変化の各周期において、前記三つの基準波長の光が前記カラーフィルタを透過する各タイミングで前記イメージセンサの動作を制御するだけでなく、前記三つの基準波長の光以外に一つ又は複数の所定波長の光が前記カラーフィルタを透過する各タイミングで前記イメージセンサの動作を制御することにより、前記三つの基準波長の画像データ及び前記一つ又は複数の所定波長の画像データを時分割に取得することを特徴とする請求項1、2又は3記載のカラーカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−147749(P2008−147749A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329288(P2006−329288)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000128049)ユー・エム・シー・ジャパン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】