説明

カラーフィルタおよびその製造方法

【課題】 本発明は、液晶表示装置とした際に光漏れ等がなく、またカラーフィルタの欠陥検査の際に擬似欠陥が検出されることが少ないカラーフィルタ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、透明基板と、前記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、前記透明基板上の前記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタであって、 前記遮光部の端辺の形状を座標データに変換し、各座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、 各座標点の近似直線からの距離の標準偏差が、0.2以下であり、 かつ前記座標データをグラフとした際、前記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、カラーフィルタ側の透明基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶化合物を封入して薄い液晶層を形成し、液晶駆動側基板により液晶層内の液晶配列を電気的に制御してカラーフィルタの透過光または反射光の量を選択的に変化させることによって表示を行う。
【0003】
このような液晶表示装置には、スタティック駆動方式、単純マトリックス方式、アクティブマトリックス方式など種々の駆動方式があるが、近年、パーソナルコンピューターや携帯情報端末などのフラットディスプレーとして、アクティブマトリックス方式又は単純マトリックス方式の液晶パネルを用いたカラー液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0004】
図3は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置パネルの一例である。液晶表示装置101は、カラーフィルタ11と液晶駆動側基板であるTFTアレイ基板12とを対向させて1〜10μm程度の間隙部13を設け、この間隙部13内に液晶Lを充填し、その周囲をシール材14で密封した構造をとっている。カラーフィルタ11は、透明基板15上に、画素間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成されたブラックマトリックス層16と、各画素を形成するために複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)を所定順序に配列した画素部17と、保護膜18と、透明電極膜19とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。
【0005】
一方、TFTアレイ基板12は、透明基板上にTFT素子を配列し、透明電極膜21を設けた構造をとっている。また、カラーフィルタ11及びこれと対向するTFTアレイ基板12の内面側には配向膜20が設けられる。そして、各色に着色された画素の背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0006】
ここで、一般的なTFTアレイ基板側に設けられる透明電極は、上記カラーフィルタの画素部より広い幅で各画素部ごとに形成されることとなる。しかしながら、例えば上記遮光部の端辺、すなわち遮光部と画素部との境界がビリつき(ビリつきとは、パターンのエッジがギザギザしている状態を示すこととする)を有する場合には、画素部の幅が、対向する透明電極より一部はみ出して広くなってしまう。この場合、対向する透明電極からはみ出した画素部上の液晶には電圧がかからないため、この部分から光が漏れてしまう、という問題があった。
【0007】
また、カラーフィルタの画素部のキズやムラ等の欠陥検査は、カラーフィルタの背面から所定の強度を有する光を照射し、各画素部を透過した光量の強度を測定することにより行われている。しかしながら、遮光部の端辺がビリつきを有する場合には、この光量の強度が変化するため、画素部の欠陥がない場合にも欠陥が生じている(擬似欠陥)として検出されてしまう、という問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、液晶表示装置とした際に光漏れ等がなく、またカラーフィルタの欠陥検査の際に擬似欠陥が検出されることが少ないカラーフィルタ、およびその製造方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、上記透明基板上の上記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタであって、上記遮光部の端辺の長さ100μm〜200μmの範囲内の形状を1000点〜10000点の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0010】
【数1】

【0011】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、0.2以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0012】
本発明によれば、遮光部端辺の形状を座標データとした際、上記近似直線からの距離の標準偏差が上記範囲内であることから、近似直線から大きく外れたような座標点が少ないものであり、大きなビリつきが少ないものとすることができる。また、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が、所定の値以上であることから、所定の値より大きなビリつきの間隔を比較的広いものであるといえ、全体として所定の値より大きなビリつきが少ないものとすることができる。したがって、本発明におけるカラーフィルタにおいては、液晶表示装置とした際に、画素部が対向する透明電極よりはみ出して光漏れすることや、またカラーフィルタの欠陥検査の際に、擬似欠陥が生じること等の少ないカラーフィルタとすることができるのである。
【0013】
また、本発明は、上述したカラーフィルタを用いたことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、上述した遮光部の端辺のビリつきの少ないカラーフィルタを用いることにより、光漏れ等がなく、また歩留まりのよい液晶表示装置とすることができる。
【0015】
またさらに、本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、上記透明基板上の上記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記遮光部の端辺の長さ100μm〜200μmの範囲内の形状を1000点〜10000点の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0016】
【数2】

【0017】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、0.2以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上であるカラーフィルタを選定する選定工程を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0018】
本発明によれば、遮光部端辺の形状を座標データとした際、遮光部端辺における上記近似直線からの標準偏差が上記範囲内であり、かつ隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が、所定の値以上であるものを選定する選定工程を有することから、製造されたカラーフィルタの遮光部のビリつきを少ないものとすることができ、画素部の欠陥を検査する工程で擬似欠陥が検出されること等が少ない、高品質なカラーフィルタを効率よく製造することができる。
【0019】
また、本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、上記透明基板上の上記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタの製造方法であって、遮光材料および樹脂を含有する遮光部形成用材料を、上記透明基板上に塗布し、加熱するプリベーク工程と、加熱された上記遮光部形成用材料を遮光部を形成するパターン状に露光する露光工程と、不溶部分の上記遮光部形成用材料をシャワーにより除去する現像工程とを有し、予め、形成された上記遮光部の端辺の長さ100μm〜200μmの範囲内の形状を1000点〜10000点の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0020】
【数3】

【0021】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、0.2以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上となるように上記各工程の条件を調整する調整工程を行うことを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0022】
本発明によれば、形成された遮光部の端辺の形状を座標データとした際、遮光部端辺における近似直線からの標準偏差が上記範囲内であり、かつ隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が、所定の値以上となるように、遮光部を形成する各工程を調整する上記調整工程を、予め行うことから、遮光部の端辺が上記のような形状を有する、光漏れのない高品質なカラーフィルタを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、遮光部の端辺におけるビリつきが少なく、液晶表示装置とした際に、画素部が対向する透明電極よりはみ出して光漏れすることや、またカラーフィルタの欠陥検査の際に、擬似欠陥が生じること等の少ないカラーフィルタとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、液晶表示装置に用いられた際、光漏れ等がなく、また画素部の検査を行う際に、擬似欠陥等が検出されないカラーフィルタ、そのカラーフィルタを用いた液晶表示装置、およびその製造方法に関するものである。以下、それぞれについてわけて説明する。
【0025】
A.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、上記透明基板上の上記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタであって、
上記遮光部の端辺の所定の長さの形状を所定の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、
各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0026】
【数4】

【0027】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、所定の値以下であり、
かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が所定の値以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が所定の値以上であることを特徴とするものである。
【0028】
例えば図2に示すように、遮光部1の端辺aのビリつきが大きい場合には、目的とする領域よりはみ出して画素部2が形成されることとなる。これにより、カラーフィルタが液晶表示装置として用いられた際、対向する透明電極が形成されている領域から画素部がはみ出してしまうこととなり、光漏れが生じる場合があった。
【0029】
また、遮光部の端辺にこのようなビリつきがある場合には、画素部を透過する光の強度を測定して画素部の欠陥を検査する際に、目的とする画素部の面積から画素部の面積が変化してしまうことによって、画素部には問題がないにもかかわらず、欠陥が生じているとして擬似欠陥が検出されてしまう場合があった。
【0030】
そこで、本発明のカラーフィルタにおいては、遮光部の端辺、すなわち遮光部と画素部との境界の形状が、所定の形状を有するように形成されたものとする。具体的には、遮光部の端辺の一部を、例えば図1に示すように、所定の範囲内の個数の座標点を有する座標データsに変換し、そのデータから最小二乗法により算出された近似直線tからの距離に関する標準偏差σが所定の範囲内となるように形成される。なお、近似直線tと各座標データsとの距離とは、それぞれの座標データsから、近似直線tまでの長さの最小値をいうこととする。また、上記近似直線tから所定の値u以上大きなピークのうち、上に凸のピークの頂部を上側頂部α、下に凸のピークの頂部を下側頂部βとした場合、隣接する上側頂部α間の距離γ、および隣接する下側頂部β間の距離γの平均が、所定の値以上となるように形成される。
【0031】
上記標準偏差σが所定の範囲内であることにより、近似直線から離れた点が少ない、すなわちビリつきの大きさを小さいものとすることができ、また、所定の値以上平均から離れた頂部間の距離が広いことから、大きなビリつきの数を全体として少ないものとすることができる。したがって、本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いた際に光漏れ等が生じることが少なく、また上述したような擬似欠陥が検出されることのないものとすることができるのである。
【0032】
ここで、本発明のカラーフィルタにおいては、全ての遮光部の端辺において、上述したような形状を有するものとされる。なお、全ての遮光部の端辺が上述したような形状を有するか否かは、通常、一つのカラーフィルタ内で任意の3画素〜100画素を測定することによって判定される。また、各画素内における上記端辺の形状は、目視にてその画素内で最もビリつきの大きな直線状の箇所を選択し、100μm〜200μmの範囲測定する。
【0033】
なお、本発明においては、測定される上記範囲内の距離と、下記の範囲内の座標データの個数との組み合わせにおいて、少なくとも一つ下記の標準偏差、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が下記の範囲内となるものが含まれていればよいものとする。
【0034】
上記遮光部の端辺の形状を座標データに変換する方法としては、所定の長さの端辺の形状を、短寸法測定装置または2次元座標測定機にてエッジを検出し、その検出した際の各点について実寸座標に変換する方法や、端辺の写真を取り込み、その写真について画像処理することで、エッジを検出し、点に分解した後、1000点〜10000点について、各点における座標を求める方法等とすることができる。
【0035】
また、上記標準偏差は、上記方法により得られた各座標点から、最小二乗法によって近似直線を算出し、各上記座標点の上記近似直線までの距離をXとして、標準偏差
【0036】
【数5】

【0037】
を計算することにより得られるものである。ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数である。本発明においては、この標準偏差σが0.2以下、中でも0.1以下であることが好ましい。これにより、上記遮光部端辺のビリつきの幅を小さいものとすることができるからである。
【0038】
また、上記近似直線から1.0μm以上のピークにおいて、隣接する上記上側頂部間の各距離と、隣接する下側頂部間の各距離との平均が、5.0μm以上、中でも10μm以上とすることが好ましい。これにより、ビリつきの大きな箇所が、全体的に少ないものとすることができるからである。近似直線から上記値以上のピークとは、少なくとも頂部が、上記値の絶対値以上、近似直線から離れているピークをいうこととする。
【0039】
本発明においては、上記標準偏差や、近似直線から所定の値以上離れた隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離を、上記範囲内とすることにより、液晶表示装置に用いた際光漏れがなく、また画素部の欠陥を検査する際に擬似欠陥が検出されることのない、高品質なカラーフィルタとすることができるのである。なお、光漏れが生じるか否かは、カラーフィルタと対向基板(TFT側)とを貼り合わせ、液晶ディスプレイとした後、全面黒表示をした際に、光漏れとなって表れる輝点の有無によって検査することができる。
以下、本発明のカラーフィルタに用いられる各構成ごとに詳しく説明する。
【0040】
1.遮光部
まず、本発明のカラーフィルタに用いられる遮光部について説明する。本発明のカラーフィルタに用いられる遮光部としては、後述する透明基材上に形成され、かつ樹脂および遮光材料を含有するものであって、上述したような端辺を有するように形成されるものであれば、特に限定されるものではなく、一般的な樹脂製の遮光部を形成する遮光部形成材料を用いてフォトリソグラフィー法等により、形成したものとすることができる。
【0041】
ここで、端辺の形状を上述したように形成する方法としては、例えば後述するような感光性を有する遮光部形成材料を透明基板全面に塗布し、パターン状に露光を行う際のフォトマスクと遮光部形成材料表面との配置距離を短いものとする方法が挙げられる。上記フォトマスクと遮光部形成材料表面との距離が遠い場合には、照射された光が回折してしまい、パターンがぼやけてしまい、ビリつきが発生しやすくなるからである。
【0042】
また一般的に、上記遮光部形成材料を露光する前に、塗布された遮光部形成材料を加熱するプリベーク工程が行われるが、このプリベークにおける温度を最適化することによっても、上述したような端辺の形状となるように遮光部の形成を行うことができる。このプリベークの温度が高い場合には、露光後の現像工程で不溶部分の除去が困難となることによりビリつきが発生しやすく、またプリベークの温度が低い場合には、硬化が不十分となり、目的とする領域の遮光部まで現像によって遮光部形成材料が除去されてしまい、ビリつきが発生しやすくなるからである。
【0043】
また、例えば上記遮光部形成材料の露光後、目的とする領域以外の遮光部形成材料を除去する現像工程におけるシャワー圧を低いものとする方法等も挙げられる。シャワー圧が高い場合には、遮光部を形成する領域上の遮光部形成材料まで圧力によって削られてしまい、ビリつきが発生する場合があるからである。
【0044】
またさらに、上記現像時間を最適化することによっても、端辺の形状を上述したように形成することができる。現像時間が短い場合には、不溶部分の除去が困難となることによりビリつきが発生し、現像時間が長い場合には、目的とする領域の遮光部まで遮光部形成材料が除去されてしまいビリつきが発生するからである。
【0045】
なお、これらの各条件の最適化は、上記遮光部形成材料の種類や、装置、目的とするカラーフィルタによって適宜選択される。
【0046】
また、上述したような遮光部の形成に用いられる材料としては、少なくとも遮光材料および樹脂が含有されていれば、その材料等は特に限定されるものではなく、通常、遮光材料や樹脂に、光開始剤やモノマー等を添加して遮光部形成用組成物として上記遮光部を形成することができる。
【0047】
上記遮光材料としては、一般的にカラーフィルタに用いられる樹脂製遮光部に用いられる材料を用いることができ、例えばカーボン微粒子、酸化チタン、チタンブラック、チタン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子等が挙げられる。
【0048】
また、本発明に用いられる遮光部に含有される樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等を例示することができる。
【0049】
さらに、重合可能なモノマーであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上からなるポリマー又はコポリマーも例示できる。また、上記のコポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等も例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
上記例示の中でも、エチレン性不飽和結合を含有する樹脂は、モノマーと共に架橋結合を形成し、優れた強度が得られるので、特に好ましく用いられる。
【0051】
また、本発明に用いられる遮光部の形成に用いることが可能なモノマーとしては、例えば多官能アクリレートモノマーが挙げられ、アクリル基やメタクリル基等のエチレン性不飽和結合含有基を2つ以上有する化合物を用いることができる。具体的には、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0052】
多官能アクリレートモノマーは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート基又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
【0053】
また、本発明に用いることが可能な光開始剤としては、紫外線、電離放射線、可視光、或いは、その他の各波長、特に365nm以下のエネルギー線で活性化し得る光ラジカル重合開始剤を使用することができる。そのような光重合開始剤して具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本発明では、これらの光重合開始剤を1種のみ又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
2.画素部
次に、本発明に用いられる画素部について説明する。本発明に用いられる画素部は、上記遮光部の開口部に形成されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の三色の画素部形成用組成物等を用いて、例えばストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができ、着色面積は任意に設定することができる。上記開口部とは、透明基板上の遮光部が形成されていない領域をいう。
【0055】
ここで、本発明において形成される画素部の膜厚は、目的とするカラーフィルタによって適宜選択されるものであるが、通常1.0μm〜3.0μm程度、中でも1.2μm〜2.5μm程度とされる。
【0056】
なお、本発明に用いられる画素部の形成は、例えばフォトリソグラフィー法や、インクジェット法等、一般的なカラーフィルタの製造の際に用いられる方法とすることができる。また、本発明に用いられる画素部の材料としては、一般的なカラーフィルタに用いられる画素部と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0057】
3.透明基板
次に、本発明に用いられる透明基板について説明する。本発明に用いられる透明基板は、一般的にカラーフィルタに用いられるものであれば特に限定されるものではなく、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。
【0058】
4.カラーフィルタ
本発明におけるカラーフィルタは、上述した透明基板上に、上述した端辺の形状を有する遮光部および上記画素部が形成されているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば必要に応じて、保護層や電極層等が形成されていてもよい。
【0059】
B.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は、上述したカラーフィルタを用いたことを特徴とするものである。本発明によれば、上述したカラーフィルタを用いることから、液晶表示装置の対向基板に形成される透明電極より画素部が広く形成されて光漏れが生じたりすること等を防ぐことができ、高品質なカラーフィルタとすることができる。
【0060】
このような液晶表示装置としては、例えば上述したカラーフィルタと液晶駆動側基板とを対向させて、そのカラーフィルタと液晶駆動側基板との間に液晶を封入したもの等とすることができる。
【0061】
本発明の液晶表示装置に用いられる液晶駆動側基板や液晶等については、一般的な液晶表示装置に用いられるものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0062】
C.カラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法には、2つの実施態様がある。いずれの実施態様においても、遮光部端辺の形状を座標データとした際、遮光部端辺における近似直線からの標準偏差が上記範囲内であり、かつ隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が、所定の値以上であるカラーフィルタを製造することができ、製造されたカラーフィルタを液晶表示装置に用いた際、光漏れが生じることなく、また画素部の欠陥を検査する際に擬似欠陥が検出されることのない、高品質なカラーフィルタとすることができるのである。
以下、各実施態様ごとに詳しく説明する。
【0063】
1.第1実施態様
まず、本発明のカラーフィルタの製造方法における第1実施態様について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法の第1実施態様は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、上記透明基板上の上記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタの製造方法であって、上記遮光部の端辺の所定の長さの形状を所定の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0064】
【数6】

【0065】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、所定の値以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が所定の値以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が所定の値以上であるカラーフィルタを選定する選定工程を有することを特徴とするものである。
【0066】
本実施態様のカラーフィルタの製造方法によれば、上述した遮光部の端辺を有するような選定工程を有することにより、上記遮光部の端辺の形状を座標データとした際、上記近似直線からの標準偏差σが所定の範囲内であり、かつ隣接する上記上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が所定の範囲内となるカラーフィルタのみを選択することができる。したがって、液晶表示装置とした際に、対向基板の透明電極より画素部が広くなることによる光漏れや、画素部検査時の擬似欠陥の検出等を防ぐことができ、高品質なカラーフィルタを効率よく製造することができるのである。以下、本実施態様における上記選定工程について説明する。
【0067】
(選定工程)
本実施態様のカラーフィルタの製造方法における選定工程は、上記遮光部の端辺の所定の長さの形状を所定の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0068】
【数7】

【0069】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、所定の値以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が所定の値以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が所定の値以上であるカラーフィルタを選定する工程である。
【0070】
本工程において、遮光部端辺の形状を測定する箇所としては、一つのカラーフィルタ内において、3画素〜100画素、中でも5画素〜30画素とし、各画素内における上記端辺の形状は、目視にてその画素内で最もビリつきの大きな直線状の箇所を選択し、100μm〜200μmの範囲測定するものとする。本工程においては、測定された全ての遮光部の端辺において、所定の形状を有するもののみが選定されるものとする。
【0071】
ここで、本実施態様においては、測定される上記範囲内の距離と、下記の範囲内の座標データの個数との組み合わせにおいて、少なくとも一つ下記の標準偏差、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が下記の範囲内となるものが含まれていれば、上記形状を有するものとされる。
【0072】
また、上記遮光部の端辺の形状を座標データに変換する方法としては、所定の長さの端辺の形状を、短寸法測定装置または2次元座標測定機にてエッジを検出し、その検出した際の各点について実寸座標に変換する方法や、端辺の写真を取り込み、その写真について画像処理することで、エッジを検出し、点に分解した後、1000点〜10000点について、各点における座標を求める方法等とすることができる。
【0073】
また、上記標準偏差は、上記方法により得られた各座標点から、最小二乗法によって近似直線を算出し、各上記座標点の上記近似直線までの距離をXとして、標準偏差
【0074】
【数8】

【0075】
を計算することにより得られるものである。ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数である。本実施態様においては、この標準偏差σが0.2以下であることが好ましい。これにより、上記遮光部端辺のビリつきの幅を小さいものとすることができるからである。
【0076】
また、上記近似直線から1.0μm以上のピークにおいて、隣接する上記上側頂部間の各距離と、隣接する下側頂部間の各距離との平均が、5.0μm以上、中でも10μm〜200μmの範囲内とすることが好ましい。これにより、ビリつきの大きな箇所が、全体的に少ないものとすることができるからである。
【0077】
ここで、上記選定工程は、遮光部を形成した直後に行われるものであってもよく、また例えば遮光部の開口部に画素部を形成した後行われるものであってもよい。
【0078】
(その他)
また、本実施態様においては、上記選定工程以外にも、透明基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程や、その遮光部の開口部に画素部を形成する画素部形成工程等を有していてもよい。このような遮光部形成工程や画素部形成工程等は、一般的なカラーフィルタの製造方法におけるものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。なお、上記遮光部を形成する工程において、上述した「A.カラーフィルタ」の遮光部の項で説明したような方法で遮光部を形成することにより、遮光部の端辺が上述した選択工程において選択される範囲となるように形成することが好ましい。これにより、製造効率よくカラーフィルタを製造することができるからである。
【0079】
ここで、本実施態様に用いられる透明基板や、画素部、遮光部等については、上述した「A.カラーフィルタ」で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0080】
2.第2実施態様
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法における第2実施態様について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法における第2実施態様は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、上記透明基板上の上記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
遮光材料および樹脂を含有する遮光部形成用材料を、上記透明基板上に塗布し、加熱するプリベーク工程と、
加熱された上記遮光部形成用材料を遮光部を形成するパターン状に露光する露光工程と、
不溶部分の上記遮光部形成用材料をシャワーにより除去する現像工程と
を有し、予め、形成された上記遮光部の端辺の所定の長さの形状を所定の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0081】
【数9】

【0082】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、所定の値以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が所定の値以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が所定の値以上となるように各上記工程の条件を調整する調整工程を行うことを特徴とするものである。
【0083】
本実施態様によれば、上記調整工程によって、遮光部を形成するための各工程の条件が決定されることから、製造されたカラーフィルタの遮光部の形状を所定のものとすることができる。したがって、製造されたカラーフィルタを液晶表示装置に用いた際に、遮光部の端部のビリつきによって光漏れが生じたり、また画素部の欠陥を検査する際に、擬似欠陥が検出されないものとすることができるのである。以下、各工程ごとに詳しく説明する。
【0084】
(調整工程)
まず、本実施態様のカラーフィルタの製造方法における調整工程について説明する。本実施態様のカラーフィルタの製造方法における調整工程は、カラーフィルタの製造を行う前に予め、遮光部の端辺の所定の長さの形状を所定の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各上記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、各上記座標点の上記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【0085】
【数10】

【0086】
(ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数)が、所定の値以下であり、かつ上記座標データをグラフとした際、上記近似直線からの距離が所定の値以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が所定の値以上となるように後述する各工程の条件を調整する工程である。
【0087】
本工程は、まず、一般的な遮光部を形成する条件等により、後述する各工程を行って遮光部を形成し、遮光部の端辺の形状を測定する。その後、遮光部の端辺の形状を座標データとした際に、上記各値が所定の範囲内となるように、各工程を行う条件を調整し、最適な条件を決定する工程である。
【0088】
本工程は、例えば、後述するプリベーク工程をいくつかの異なる温度で行い、最もビリつきが少なくなる温度をプリベーク工程における温度として決定したり、後述する露光工程において、フォトマスクと遮光部形成用材料との距離を変えて露光し、最もビリつきが少なくなる位置を決定したりするものとすることができる。また、例えば後述する現像工程において、現像液を吐出するシャワー圧を調整してビリつきが少なくなるシャワー圧を決定したり、現像時間を調整して決定するもの等とすることもできる。なお、本工程においては、最終的に形成される遮光部の端辺の形状が、後述する範囲内となるように、上記各工程の条件が決定される。
【0089】
ここで、本工程において、上記各条件の決定は、一つのカラーフィルタ内において、3画素〜100画素の各遮光部の端辺100μm〜200μmの範囲の形状を測定し、測定された全ての遮光部の端辺において、所定の形状を有するように調整される。また上記各画素内において測定される端辺としては、目視にてその画素内で最もビリつきの大きな直線状の箇所が選択される。
【0090】
なお、本実施態様においては、測定される上記範囲内の距離と、下記の範囲内の座標データの個数との組み合わせにおいて、少なくとも一つ、下記の標準偏差、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離が下記の範囲内となるものが含まれるように、各工程の条件が決定されることとなる。
【0091】
また、上記遮光部の端辺の形状を座標データに変換する方法としては、所定の長さの端辺の形状を、上述した方法と同様に、1000点〜10000点座標点を有する座標データとする。
【0092】
また、上記標準偏差は、上記方法により得られた各座標点から、最小二乗法によって近似直線を算出し、各上記座標点の上記近似直線までの距離をXとして、標準偏差
【0093】
【数11】

【0094】
を計算することにより得られるものである。ここで、nは上記座標データにおける上記座標点の数である。本実施態様においては、この標準偏差σが0.2以下、中でも0.1以下であることが好ましい。これにより、上記遮光部端辺のビリつきの幅を小さいものとすることができるからである。
【0095】
また、上記近似直線から1.0μm以上のピークにおいて、隣接する上記上側頂部間の各距離と、隣接する下側頂部間の各距離との平均が、5.0μm以上、中でも10μm以上とすることが好ましい。これにより、ビリつきの大きな箇所が、全体的に少ないものとすることができるからである。
【0096】
(プリベーク工程)
次に、本実施態様におけるプリベーク工程について説明する。本実施態様におけるプリベーク工程は、遮光材料および樹脂を含有する遮光部形成用材料を、透明基板上に塗布し、加熱する工程であり、上述した調整工程で決定された温度により加熱が行われるものである。プリベーク工程における温度が高すぎる場合には、後述する現像工程において、不溶部分の遮光部形成用材料の除去が困難となるため、ビリつきが発生しやすくなり、また本工程における温度が低すぎる場合には、後述する露光工程での硬化が不十分となり、目的とする領域の遮光部形成用材料まで、現像工程により除去されてしまい、ビリつきが発生しやすくなるからである。
【0097】
上記遮光部形成用材料の塗布は、一般的な塗布方法を用いることができ、例えばスピンコート法や、ダイコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップコート法、またはあらかじめフィルム基材上に形成された遮光部形成材料を熱、光、加圧等のエネルギーにより、上記透明基板上に転写する方法等を用いることができる。また、上記加熱方法も、所定の温度で遮光部形成用材料を加熱することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えばホットプレートやオーブン等によって行うことができる。
また、加熱時間についても、上記調整工程により適宜選択されたものであることが好ましい。なお、本工程は上記加熱を行う前に、上記遮光部形成用材料を、真空乾燥させる工程等を有していてもよい。
【0098】
ここで、本工程に用いられる透明基板や、遮光部形成用材料等については、上述した「A.カラーフィルタ」で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0099】
(露光工程)
次に、本実施態様における露光工程について説明する。本実施態様における露光工程は、上記プリベーク工程により加熱された遮光部形成用材料を、例えばフォトマスク等を用いて遮光部を形成するパターン状に露光する工程であり、上述した調整工程で決定されたフォトマスクの配置位置等で露光が行われることとなる。
【0100】
フォトマスクと遮光部形成用材料との配置距離が適当でない場合には、照射された光が回折し、パターンがぼやけてしまうことから、ビリつきが発生しやすくなるからである。
【0101】
なお、本工程における露光は、上記遮光部形成用材料を硬化させることが可能な方法により行われるものであれば、特に限定されるものではなく、一般的な露光工程に用いられる装置等を用いて行うことができる。
【0102】
(現像工程)
次に、本実施態様における現像工程について説明する。本実施態様における現像工程は、上記露光工程により硬化された部分以外の不溶部分をシャワーにより除去し、目的とする形状に遮光部を形成する工程であり、上述した調整工程により決定されたシャワー圧や、現像時間によって行われる。
【0103】
シャワー圧が高すぎる場合や、現像時間が長すぎる場合には、目的とする領域以上に遮光部形成用材料が除去されてしまい、ビリつきが発生しやすく、また現像時間が短すぎる場合等には、不溶部分を完全に除去することができず、ビリつきが発生するからである。
【0104】
本工程に用いられるシャワーとしては、現像液を目的とする圧力で吐出することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的な現像工程に用いられるものを用いることができる。また本工程に用いられる現像液としては、遮光部形成用材料の種類等に合わせて適宜選択される。
【0105】
なお、本実施態様においては、上記シャワーによる現像工程終了後、さらに遮光部形成用材料の硬化を促進させるポストベーク工程等を有していてもよい。
【0106】
(その他)
また、本実施態様においては、上記調整工程や、プリベーク工程、露光工程、現像工程以外にも、遮光部の開口部に画素部を形成する画素部形成工程等を有していてもよい。このような画素部形成工程等は、一般的なカラーフィルタの製造方法におけるものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0108】
[実施例]
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0109】
[実施例1]
基板として、厚さ0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、基板の片側全面に下記の組成を有する遮光部形成用組成物を塗布し、乾燥後ホットプレート上で90℃に加熱(プリベーク)した。その後、所定のフォトマスクと遮光部形成用組成物とのギャップが150μmとなるようにフォトマスクを配置し、50mJ/cmの露光量で露光した。その後、2.5kgfの現像圧で現像した後、焼成して遮光部を形成した。
【0110】
(遮光部形成用組成物)
・カーボンブラック 61重量部
・感光性樹脂組成物 39重量部
・メトキシブチルアセテート 300重量部
上記感光性樹脂組成物は、下記組成を有するものである。以下の実施例について用いられる感光性樹脂組成物についても、同様である。
【0111】
(感光性樹脂組成物)
・アクリル樹脂 32重量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 42重量部
・エピコート180S70(三菱油化シェル(株)社製) 18重量部
・Irg.907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製) 8重量部
次に、形成された遮光部の端辺200μmの範囲を、10000点の座標データとした。その後、各座標点から最小二乗法により近似直線を算出し、各座標点から近似直線までの距離をXとした際の、標準偏差
【0112】
【数12】

【0113】
を求めた。また、近似曲線からの距離が1.0μm以上となる上側頂部間の距離の平均を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0114】
次に、下記組成の赤色パターン、緑色パターン、青色パターン用の各塗布液を調整し、これらを用いて公知の顔料分散法にしたがって、画素領域に赤色パターン、緑色パターン、および青色パターン(各厚み1.7μm)をそれぞれ形成してカラーフィルタとした。
【0115】
(赤色パターン用塗布液の組成)
・PR254分散液 33重量部
・感光性樹脂組成物 67重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400重量部
【0116】
(緑色パターン用塗布液の組成)
・PG36/PY150分散液 34重量部
・感光性樹脂組成物 66重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400重量部
【0117】
(青色パターン用塗布液の組成)
・PB15:6/PV23分散液 17重量部
・感光性樹脂組成物 83重量部
・プロピレングリコールモノメチルアセテート 400重量部
[比較例1]
プリベーク温度を80℃とした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例2]
プリベーク温度を70℃とした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例3]
露光量を30mJ/cmとした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例4]
露光量を100mJ/cmとした以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例2]
露光時のフォトマスクのギャップを100μmとした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例5]
露光時のフォトマスクのギャップを250μmとした以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例3]
現像時の現像圧を1.0kgfとした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例6]
現像時の現像圧を5.0kgfとした以外は、実施例1と同様に行った。
【0118】
【表1】


上記判定基準としては、上記カラーフィルタ上にオーバーコート層、およびフォトスペーサを形成したものを用いて、IPS方式の液晶ディスプレイを作製し、この液晶ディスプレイを全面黒表示させて、正面または横方向から見たときに、光漏れが生じたものを×、生じていないものを○とした。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明のカラーフィルタの遮光部の端辺の座標データを説明する説明図である。
【図2】本発明に用いられる遮光部を説明する説明図である。
【図3】一般的な液晶表示装置を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0120】
1…透明基板
2…遮光部
3…画素部
s…座標データ
t…近似直線
α…上側頂部
β…下側頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、前記透明基板上の前記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタであって、
前記遮光部の端辺の長さ100μm〜200μmの範囲内の形状を1000点〜10000点の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各前記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、
各前記座標点の前記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【数1】

(ここで、nは前記座標データにおける前記座標点の数)が、0.2以下であり、
かつ前記座標データをグラフとした際、前記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーフィルタを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
透明基板と、前記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、前記透明基板上の前記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
前記遮光部の端辺の長さ100μm〜200μmの範囲内の形状を1000点〜10000点の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各前記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、
各前記座標点の前記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【数2】

(ここで、nは前記座標データにおける前記座標点の数)が、0.2以下であり、
かつ前記座標データをグラフとした際、前記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上であるカラーフィルタを選定する選定工程を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
透明基板と、前記透明基板上に形成され、少なくとも遮光材料および樹脂を含有する遮光部と、前記透明基板上の前記遮光部の開口部に形成された画素部とを有するカラーフィルタの製造方法であって、
遮光材料および樹脂を含有する遮光部形成用材料を、前記透明基板上に塗布し、加熱するプリベーク工程と、
加熱された前記遮光部形成用材料を遮光部を形成するパターン状に露光する露光工程と、
不溶部分の前記遮光部形成用材料をシャワーにより除去する現像工程と
を有し、予め、形成された前記遮光部の端辺の長さ100μm〜200μmの範囲内の形状を1000点〜10000点の範囲内の座標点を有する座標データに変換し、各前記座標点から最小二乗法により近似直線を算出した際、
各前記座標点の前記近似直線からの距離をXとしたときの標準偏差
【数3】

(ここで、nは前記座標データにおける前記座標点の数)が、0.2以下であり、
かつ前記座標データをグラフとした際、前記近似直線からの距離が1.0μm以上となるピークにおける、上に凸のピークの頂部を上側頂部、下に凸のピークの頂部を下側頂部とした場合、隣接する上側頂部間の距離、および隣接する下側頂部間の距離の平均が5.0μm以上となるように各前記工程の条件を調整する調整工程を行うことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3535(P2006−3535A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178490(P2004−178490)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】