説明

カラーフィルタならびに液晶表示装置

【課題】ブラックマトリクスが格子状に設けられたカラーフィルタにおいて、画素着色層がストライプ状に設けられた構成であっても、表面の平坦性に優れ、液晶表示装置の製造工程においてカラーフィルタ上に形成される透明導電膜の内部応力起因などによる断線、配向膜形成不良によるラビング不良を引き起こすことない表示特性良好なカラーフィルタ、ならびに液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも基板上に格子状に形成されたブラックマトリクスとストライプ状に形成された複数の画素着色層よりなるカラーフィルタであって、該格子状ブラックマトリクスのうち該画素着色層に直交する部分の膜厚が、該格子状ブラックマトリクスのうち該画素着色層に平行な方向の部分の膜厚より0.3μm以上薄いことを特徴とするカラーフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ受像機、コンピュータの表示装置(ディスプレイ)、および携帯電話の表示部等に用いられるカラーフィルタ、ならびにそれを使用した液晶表示装置に係わり、特に、該カラーフィルタのブラックマトリクスの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、近年様々な分野に応用が進んでいる液晶表示装置のカラー化に必要不可欠な部品である。カラーフィルタは、ガラスなどの透明基板上に画素部を着色するための赤(R)、緑(G)、青(B)などの画素着色層を設けたものである。各画素着色層の間には、表示時のコントラストを向上させるため、およびアクティブマトリクス型液晶表示装置において対向基板上に設けられるTFT素子の光による誤動作を防ぐために、格子状の遮光部(ブラックマトリクス)が設けられるのが一般的である。
【0003】
なお、カラーフィルタを部材と見なす場合には、単にカラーフィルタと記載せずカラーフィルタ基板と記載する場合が多い。また、ブラックマトリクスと画素着色層のほかに、配向膜や透明導電膜を形成した状態のものをカラーフィルタ、あるいはカラーフィルタ基板と記載することが多い。本発明においても同様である。
【0004】
カラーフィルタの製造方法としては染色法、印刷法、電着法、インクジェット法、顔料分散法など様々な方法が挙げられるが、コスト、品質面で優れた顔料分散法が広く用いられている。
【0005】
顔料分散法によるカラーフィルタ基板の製造は以下のように行う。最初に、黒色顔料を分散した感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。次に予備加熱(プリベーク)を行ってから所定の格子状のブラックマトリクスパターンを有するフォトマスクを介して露光し、前記感光性樹脂組成物の所定部分を硬化する。その後、現像して硬化した部分を基板上に残し、さらに水洗・乾燥し、さらに焼成(ポストベーク)を行って、格子状のブラックマトリクスを形成する。この格子状のブラックマトリクスに囲まれた矩形の領域各々が画素部である。
【0006】
次に、ブラックマトリクスが形成された基板上に着色顔料を分散した感光性樹脂組成物を塗布し、ブラックマトリクスを形成する場合と同様にして、露光、現像処理等を施すことで矩形の画素着色層を形成する。同様の操作を各色について行うことにより、所望の画素着色層を有するカラーフィルタ基板を得ることができる。
【0007】
上記の方法において、ブラックマトリクスが形成された基板上に矩形の画素着色層を形成する際には、光漏れ(いわゆる白抜け)を防止するために画素着色層がブラックマトリクスに乗り上げた構造をとるのが一般的である。しかしながら、画素着色層とブラックマトリクスが重なることにより段差が発生し、カラーフィルタの平坦性が損なわれる。
【0008】
この段差が大きいと、液晶表示装置の製造工程においてカラーフィルタ上に形成される透明導電膜の内部応力起因などによるの破損、断線、また配向膜形成時のラビング不良、さらには液晶表示装置において液晶の配向不良といった不具合が生じ問題となっていた。
【0009】
上記の矩形の画素着色層とブラックマトリクスが重なることにより生じる段差を低減するための施策として、例えば、特許文献1および2には、ブラックマトリクスの幅方向に傾斜面を有するブラックマトリクスを用いて段差を低減する提案、および段差による不具
合を低減する提案がなされている。
【0010】
また、特許文献3および4には、遮光部と画素着色層の膜厚を略同一にし、遮光部に対する画素着色層の乗り上げ量を制御することにより段差を低減する提案がなされている。
【0011】
さらに、特許文献5には、ブラックマトリクスに乗り上げた着色層とブラックマトリクスの頂部がなす角度に着目してカラーフィルタの平坦性を向上させる提案もなされている。
【0012】
ところで、特に最近のカラーフィルタ基板の大型化に伴って、カラーフィルタの構成として、ブラックマトリクスが格子状に設けられた基板上に、画素着色層がストライプ状に設けられる場合がある。図1(b)は、この構造のカラーフィルタの従来技術による製造において、画素着色層を一色設けた状態を、図1(c)は三色設けた状態を示している。
【0013】
ここで、図1(a)はガラス基板(図示せず)の上にブラックマトリクス2p、2vを形成した図である。ブラックマトリクス2pはストライプ状に形成する画素着色層に対して平行方向であり、ブラックマトリクス2vは垂直方向である。従来技術ではこのブラックマトリクス2p、2vは同時に形成され、膜厚doも同じである。ここで膜厚doは、所定の光学濃度を得ることができる膜厚である。
【0014】
図1(b)は画素着色層を1色(3R)形成した図であり、3Rはブラックマトリクス2pに対しては幅方向の途中まで乗上げ、一方ブラックマトリクス2vに対しては完全に乗上げている。また、3色形成した図1(c)において、3G、3Bもブラックマトリクス2pに対しては幅方向の途中まで乗上げている。
【0015】
図1(d)は図1(c)において、m−m’で切断した場合の断面を示す説明図であり、ガラス基板1の上に形成されたブラックマトリクス2vの上に画素着色層3Rが完全に乗上げている状態を示している。乗上げた部分の全体厚さDo’は、実際には実施例に示すように、ブラックマトリクス2vの膜厚doと画素部の画素着色層の膜厚Doを合計したものより薄い。その理由は、画素着色層用の感光性樹脂組成物の溶液を塗布した場合に、溶液が凸部から凹部へ流動するからである。この平坦化の程度は溶液の粘弾性、溶剤揮発速度、凹凸の程度(高低差、幅)等によって異なる。
【0016】
図1に示した画素着色層がストライプ状である構造は、例えば、露光方式としてスリット露光法を行った場合に特に採用される。ここでスリット露光法とは、スリット状のフォトマスクを使用する方法である。カラーフィルタ用ガラス基板が例えば、2100mm×2400mm程度の第8世代、さらに3000mm×3000mm程度の第10世代と大型化するのに伴い、フォトリソグラフィ工程のコストを低減するために開発された方法である。画素着色層をストライプ状に形成する方法の大きな利点の一つは、画素着色層パターンを露光する際に、高精度位置合わせが縦横のうちの一方向だけで済み、他方向はかなり精度が低い位置合わせでよい点である。この利点は、露光法がスリット露光法でなく、通常のプロキシミティ露光法、プロジェクション露光法であっても大きい。
【0017】
しかし、特許文献1〜5に開示されている段差対応策は、画素着色層が矩形状に形成され、どのブラックマトリクスに対してもブラックマトリクスの途中まで乗上げる場合に対応している方法であり、図1のように画素着色層が、ブラックマトリクス2vに完全に乗り上げた場合の段差に対応できるものではなかった。
【0018】
先行技術文献は以下の通りである。
【特許文献1】特開平9−113721号公報
【特許文献2】特開平9−120063号公報
【特許文献3】特開平9−189904号公報
【特許文献4】特開2005−128562号公報
【特許文献5】特開2006−227296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ブラックマトリクスが格子状に設けられたカラーフィルタにおいて、画素着色層がストライプ状に設けられた構成であっても、表面の平坦性に優れ、液晶表示装置の製造工程においてカラーフィルタ上に形成される透明導電膜の内部応力起因などによる断線、配向膜形成不良によるラビング不良を引き起こすことない表示特性良好なカラーフィルタ、ならびに液晶表示装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明はかかる状況を鑑みてなされたものであり、請求項1記載の発明によるカラーフィルタは、少なくとも基板上に格子状に形成されたブラックマトリクスとストライプ状に形成された複数の画素着色層よりなるカラーフィルタであって、該格子状ブラックマトリクスのうち該画素着色層に直交する部分の膜厚が、該格子状ブラックマトリクスのうち該画素着色層に平行な方向の部分の膜厚より0.3μm以上薄いことを特徴とするカラーフィルタである。
【0021】
請求項2記載のカラーフィルタは、該格子状ブラックマトリクスのうち該ストライプ状の画素着色層に直交する部分の膜厚が、該格子状ブラックマトリクスのうち該ストライプ状の画素着色層に平行な方向の部分の膜厚より0.3μmから0.7μmの範囲で薄いことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタである。
【0022】
請求項3記載の液晶表示装置は、請求項1または2に記載のカラーフィルタを使用していることを特徴とする液晶表示装置である。
【0023】
請求項4記載の液晶表示装置は、少なくとも、請求項1または2に記載のカラーフィルタの上に配向膜を形成したカラーフィルタ基板と、該フィルター基板に対向する対向基板を有し、両基板間に液晶が封入されていることを特徴とする液晶表示装置である。
【0024】
請求項5に記載の発明は、少なくとも、請求項1または2に記載のカラーフィルタの上に透明導電膜を形成し、さらにその上に配向膜を形成したカラーフィルタ基板と、該フィルタ基板に対向する対向基板を有し、両基板間に液晶が封入されていることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1〜5記載の発明による効果は、第一に、本発明のカラーフィルタは、ストライプ状の画素着色層に直交する方向のブラックマトリクスが通常法によるブラックマトリクスより薄膜であるため、画素着色層が乗り上げることにより生じる段差を低く抑えることができ、平坦性が通常の工程によるカラーフィルタより良好である点である。該平坦性良好な該カラーフィルタを用いることにより、液晶表示装置の製造工程においてカラーフィルタ上に形成される透明導電膜の破損、ラビング不良の発生を防ぐことができる。また、該カラーフィルタを用いることにより、液晶の配向不良を引き起こすことのない、表示特性良好な液晶表示装置を得ることができる点である。
【0026】
第二の効果は、画素着色層をストライプ状とすることで、大型のガラス基板を使用するカラーフィルタの製造に適したストライプ露光法を使用することが容易になり、カラーフ
ィルタ、液晶表示装置の生産性向上に寄与することができる点である。
【0027】
さらに、請求項1記載の発明の効果は、ブラックマトリクス材に使用する材料に関係なく、通常の液晶表示装置製造工程に使用しても問題を生じないブラックマトリクスの厚さを規定する点である。
【0028】
請求項2記載の発明は、ストライプ状画素着色層に平行なブラックマトリクスと直交するブラックマトリクスに同じブラックマトリクス材を使用した場合の、後者の上限の厚さを規定しているので、実用的なカラーフィルタを提供することができる。
【0029】
請求項3に記載の発明により、格子状のブラックマトリクスとストライプ状の画素着色層を有するカラーフィルタを実際に使用した液晶表示装置を提供することができる。実際の液晶表示装置としては、請求項4、5に記載したもの以外に、例えばパッシブマトリクス型の液晶装置がある。
【0030】
請求項4に記載の発明により、本発明のカラーフィルタを使用した横電界方式(IPS方式)液晶表示装置を提供することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明により、本発明のカラーフィルタを使用した、カラーフィルタ側に透明導電膜および配向膜を有する液晶表示装置、たとえばTN方式、VA方式、OCB方式、の液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図2の説明図に基づいて、まず本発明によるカラーフィルタの構造について、以下に説明する。図2(a)、(b)に、本発明のカラーフィルタにおける遮光部であるブラックマトリクス2v、2pの配置の模式図を示す。また、図2(c)に、上記ブラックマトリクス2v、2pが形成された基板上にストライプ状の画素着色層3R、3G、3Bを形成した際の模式図を示す。ここでブラックマトリクス2vはストライプ状の画素着色層に直交する方向のブラックマトリクスであり、2pは該画素着色層に平行なブラックマトリクスである。さらに、 図2(d)は、図2(c)において、n−n’の部分で切断した際の断面説明図である。
【0033】
本発明のカラーフィルタにおいては、ブラックマトリクス2pの膜厚dpは通常のブラックマトリクスの厚さ、つまり従来法におけるdoであり、一方ブラックマトリクス2vの膜厚dvは、ブラックマトリクス2pの膜厚より薄いことが特徴である。
【0034】
図2に示すように、このカラーフィルタ10は、基板1と、基板1上に格子状に配置されたブラックマトリクス2v、2pと、ストライプ状に形成された複数の画素着色層、例えば赤色層3R、緑色層3G、および青色層3Bを含む。
【0035】
次に製造方法について以下に記す。まず、図2(a)において、カラーフィルタ用基板1(図示せず)の上にブラックマトリクス2pをフォトリソグラフィ工程やその他の方法、例えば印刷を使用して形成する。その膜厚は、所定の遮光率を得るために、図1の従来法のブラックマトリクスの膜厚doと同じにする。
【0036】
次に図2(b)のブラックマトリクス2vを形成する。ブラックマトリクス2vの膜厚dvは、ブラックマトリクス2pの膜厚dpより薄くする。この場合、ブラックマトリクス2pの間隙を埋める形、すなわち連結する矩形状で形成してもよく、またストライプ状に形成してもよい。形成方法としては、両形成法ともにフォトリソグラフィ工程を使用することができる。また、印刷法を使用することもできる。間隙を埋める形状で形成する場合には
、フォトリソグラフィ工程の一種である裏面露光法を使用することも好都合である。
【0037】
また、別の形成方法として次の方法がある。最初に膜厚が上記のブラックマトリクス2vの厚さ、すなわち薄い方の厚さ、である格子状のブラックマトリクスを形成する。次に、上記のブラックマトリクス2pの厚さになるように、上記格子状ブラックマトリクスのストライプ状画素着色層に平行な方向のブラックマトリクス部にブラックマトリクスをストライプ状に上積みする。形成方法は、格子状のブラックマトリクスを形成する場合もストライプ状のブラックマトリクスを上積みする場合も、フォトリソグラフィ工程を使用してもよいし、印刷法、その他の方法を使用してもよい。
【0038】
さらに他の製造方法、たとえば型の中にブラックマトリクス材を充填し、半硬化または硬化した状態でカラーフィルタ基板へ転写する方法でもよい。この方法の場合、ブラックマトリクス2pと2vを同時に形成することができる。
【0039】
いずれの場合にも必要なことはブラックマトリクス2vの膜厚をブラックマトリクス2pの膜厚より薄く形成することである。フォトリソグラフィ工程を使用してストライプ状のブラックマトリクス2vとブラックマトリクス2pを順次形成する場合には、交差部で重なるので、その部分の膜厚が厚くなる。その際、ブラックマトリクス2pを先に形成し、ブラックマトリクス2vを後に形成することが、ブラックマトリクス2vとブラックマトリクス2pが交差する部分でのブラックマトリクスの膜厚を両者の膜厚の合計より薄くすることができる場合がある。
【0040】
すなわち、原料塗料の粘度を下げることによって、塗布後の平坦化よって交差する部分の膜厚を合計の膜厚より低下させることができるが、あとでブラックマトリクス2vを形成するほうが、ブラックマトリクス2pの膜厚が厚いので、ブラックマトリクス2p用の塗布膜のだれが余計に発生するからである。しかし、塗料の特性や工程の都合等で、この利点が生かせない場合には、順序が逆でも構わない。
【0041】
なお、ブラックマトリクスをストライプ状に形成することは、画素着色層もストライプ状に形成するので、類似した技術を使用することができる利点がある。また、ストライプ露光法の露光装置を使用することができる。また、ブラックマトリクスが交差する場所の膜厚が厚くなってしまうことの対策として、交差する場所では画素着色層が連続でなく、離れているので特許文献1〜5に示した方法を使用することができる。
【0042】
図2(d)においても、図1(d)と同様に、ガラス基板1の上に形成されたブラックマトリクス2vの上に画素着色層3Rが完全に乗上げている。図1の従来法におけるブラックマトリクス2vの膜厚をdo、図2の本発明におけるブラックマトリクス2vの膜厚をdvとすると、do>dvなので、3Rの表面の凹凸は本発明のカラーフィルタの画素着色層の表面の凹凸は、従来法のカラーフィルタのそれより小さく、平坦性が良好である。
【0043】
さらに、実際には、画素着色層を形成する場合に画素着色層用の塗料が流動して、凹凸を平坦化するため、画素着色層がブラックマトリクス2Vに乗上げている部分の総厚D、すなわちブラックマトリクス2vの膜厚dvとその上の画素着色層の膜厚の合計は、画素部分の画素着色層の膜厚Dと膜厚dvの合計より小さくなる。この平坦化は塗料の流動性や溶剤揮発によって流動性を失うまでの雰囲気条件に大きく依存する。全く平坦化しない場合もあり得る。どの程度平坦化するかは、実際にテストして求める。いずれにせよ、(D’−D)の値、即ち表面の平坦性は、従来のブラックマトリクスより、本発明のブラックマトリクスのほうが、向上する。
【0044】
図2のブラックマトリクス2pの膜厚dpは、所定の遮光率を得るため、図1のブラック
マトリクス2pの膜厚doと同じとする。ブラックマトリクス2pの材料とブラックマトリクス2vの材料が、どちらも単位膜厚当たりの遮光率(光学濃度)が2.0〜4.0/μmである場合、所定の遮光率(光学濃度)を得るためのブラックマトリクス2pの膜厚dpは通常1〜3μmであるが、その場合のブラックマトリクス2pの膜厚dpとブラックマトリクス2vの膜厚dvの差(dp−dv)の値としては、0.3μmから0.7μmの範囲であることが望ましく、より好ましくは0.4μmから0.6μmの範囲である。
【0045】
(dp−dv)が0.3μm以下であり、かつ平坦化が期待できない場合、ブラックマトリクス2pとブラックマトリクス2vの材料として単位厚さ当たりの遮光率が同じものを使用しても、あるいは異なるものを使用しても、膜厚差をつけることによる平坦性向上の効果が十分でなく、液晶表示装置の製造工程においてカラーフィルタ上に形成される透明導電膜の破損、ラビング不良といった不具合が生じてしまう。また、液晶表示装置において液晶の配向不良が発生する可能性が高くなる。
【0046】
一方、(dp−dv)が0.7μm以上であると、ブラックマトリクス2pとブラックマトリクス2vのどちらにも通常使用される光学濃度2.5〜4.0/μmの同じ材料を使用すると、ブラックマトリクス2vの遮光性が低下し、液晶表示装置において表示品位の低下を招いてしまう。
【0047】
一方、ブラックマトリクス2vの材料として上記のブラックマトリクス2pの材料より単位膜厚当たりの遮光率が高い材料を使用すれば、dp−dvが0.7μm以上であってもよい。例えば、ブラックマトリクス2vが遮光材としてカーボンブラック使用ものである場合には、dpは通常1〜2μmであるが、ブラックマトリクス2pが遮光材としてチタンブラック使用のもので、単位膜厚当たりの遮光率が例えば5.0である場合には、dvは0.5μmであってもよい。
【0048】
ブラックマトリクス2pの上には、画素着色層が一部重なって形成されて、段差が発生する。この段差は、従来技術の項で述べた方法によって、低減することができる。図3は、段差を理想的に低減して画素着色層3R、3G、3Bの各々の表面を平坦にし、さらにその上に配向膜を形成した状態を示す断面説明図である。図3において、ブラックマトリクス2の形状は順台形であるが、ブラックマトリクスをこの形状にすることも画素着色層の段差を平坦にするために有効な方法である。
【0049】
本発明のカラーフィルタのブラックマトリクス2p、2vの幅は、後に実施例において述べるが、通常のカラーフィルタのブラックマトリクスの幅、たとえば6〜20μm、であってよい。ただし、ブラックマトリクス2vの幅は、その膜厚を薄くして、遮光率が低くなった場合、それを補うために通常より広く、例えば25〜30μmと、してもよい。
【0050】
本発明のカラーフィルタの製造方法を、顔料分散法を用いた例で説明する。
【0051】
本発明に用いることのできる基板は、可視光に対してある程度の透過率を有するものが好ましく、より好ましくは80%以上の透過率を有するものが好ましい。例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどの各種ガラス基板、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの各種プラスチック基板が挙げられる。
【0052】
遮光部であるブラックマトリクスの形成には、黒色感光性樹脂組成物が用いられる。該組成物は、少なくとも黒色顔料、感光性樹脂、光重合開始剤および溶剤を含有するものである。
【0053】
黒色顔料としては、カーボンブラック、黒鉛、アニリンブラックおよびシアニンブラッ
クなどの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄などの無機顔料が挙げられる。この中でも、安価で遮光性に優れたカーボンブラックが特に好ましい。
【0054】
カーボンブラックとしては、三菱化学社製の#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCG88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CG9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックN339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSG,ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLR、キャンカーブ社製のサーマックスN990、N991、N907、N908、N990、N991、N908、旭カーボン社製の旭#80、旭#70、旭#70L、旭G−200、旭#66、旭#66U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル、デグザ社製のColorBlack Gw200、ColorBlack Gw2、ColorBlack Gw2V、ColorBlack Gw1、ColorBlack Gw18、ColorBlack S170、ColorBlack S160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、SpecialBlack250、SpecialBlack350、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0055】
黒色感光性樹脂組成物の固形分中の顔料濃度は、20%〜60質量%の範囲が好ましく、より好ましくは35%〜55質量%の範囲である。顔料濃度が低い場合、十分な遮光性を得るためには画素部と直交するように配置されたブラックマトリクス2vの膜厚dvを厚くする必要がある。その結果、ストライプ状の画素着色層と平行に配置されたブラックマトリクス2pの膜厚dpを更に厚膜にする必要が生じ、該ブラックマトリクスに着色層が乗り上げることにより生じる段差が大きくなり、カラーフィルタの平坦性が損なわれてしまう。一方、顔料濃度が高い場合、該黒色感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターンの形状が垂直もしくは逆テーパー形状になりやすい。この場合も前記した段差が大きくなり、カラーフィルタの平坦性が損なわれてしまう。
【0056】
感光性樹脂としては、一般に樹脂ブラックマトリクス形成に使用されているものを幅広く用いることができる。具体的には、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、これらの共重合体などのビニル重合系、あるいはエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの脂溶性樹脂などが挙げられる。
【0057】
光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4'−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4'−イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2'−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0058】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジグライム、シクロヘキサノン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸イソアミル、酢酸nアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、液体ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エステル、エチルエトキシプロピオネートなどが挙げられる。
【0059】
ブラックマトリクスの形成に用いられる黒色感光性樹脂組成物には、さらに光重合性モノマー、界面活性剤等を併用することができる。
【0060】
光重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0061】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0062】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布する手段としては、スピンコート、ディップコートおよびダイコートなどの手法が挙げられる。また、一旦フィルム等の支持体上に塗膜を形成した後、基板上に転写することもできる。
【0063】
ストライプ状の画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pの膜厚dpは、ブラックマトリクス材料の光学濃度が2.5〜4.0/μmであり、0.8μmから2.0μmの範囲であることが望ましく、より好ましくは1.2μmから1.6μmの範囲である。
【0064】
ストライプ状の画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vの膜厚dvは、ブラックマトリクス材料の光学濃度が2.5〜4.0/μmであり、0.5μmから1.7μmの範囲であることが望ましく、より好ましくは0.7μmから1.0μmの範囲である。
【0065】
基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布し、プリベークした後、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等の活性光源を用い、画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pに対応したストライプ状のパターンを有するフォトマスクを介して露光を行う。
【0066】
次に、アルカリ性水溶液からなる現像液を用いて現像を行う。このアルカリ性水溶液からなる現像液の例としては、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または炭酸水素ナトリウム水溶液、さらに、これらの水溶液に適当な海面活性剤などを加えたものが挙げられる。現像後、水洗、乾燥して焼成することにより、基板上に画素部に対して平行なブラックマトリクス2pのパターンを形成する。
【0067】
次に同様の操作を、ストライプ状の画素着色層に直交する方向、すなわち画素着色層の幅方向、のブラックマトリクスに対応したパターンを有するフォトマスクを用いて行うことにより、格子状に配置され、膜厚差を有するブラックマトリクスパターンを形成する。
【0068】
本発明のカラーフィルタにおいては、ブラックマトリクスが形成された基板上に赤(R)、緑(G)、青(B)などの画素着色層がストライプ状に配置される。画素着色層の形成は、R、G、Bそれぞれの着色顔料を分散した感光性樹脂組成物を用いて行う。
【0069】
各感光性樹脂組成物に用いられる顔料としては、従来のカラーフィルタ製造に使用されている公知のものをいずれも用いることが出来る。また、カラーフィルタの分光調整のために、複数の顔料を組み合わせて用いることもできる。以下に、有機顔料の具体例をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示す。
・Pigment Blue:
<C.I>1,1:2,1:x,9:x,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:5,15:6,16,24,24:x,56,60,61,62
・Pigment Green:
<C.I>1,1:x,2,2:x,4,7,10,36
・Pigment Orange
<C.I>2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,59,60,61,62,64
・Pigment Red
<C.I>1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:3,81:x,83,88,90,112,119,122,123,144,146,149,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,224、226
・Pigment Violet:
<C.I>1,1:x,3,3:3,3:x,5:1,19,23,27,32,42
・Pigment Yellow
<C.I>1,3,12,13,14,16,17,24,55,60,65,73,74,81,83,93,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,156,175等が挙げられる。
【0070】
また、画素着色層の形成に用いる感光性樹脂組成物の樹脂、開始剤等に関しては、上記黒色感光性樹脂組成物で用いたものを適宜使用することができる。
【0071】
画素着色層の膜厚は0.5μmから3.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは1.0μmから2.0μmの範囲である。画素着色層の膜厚が0.5μm以下であると、着色感光性樹脂組成物における固形分中の顔料濃度を高くする必要が生じ、これによって該組成物の粘度が高くなり、均一にパターンを形成することが困難になる。画素着色層の膜厚が3.0μm以上であると、液晶表示装置の製造工程におけるカラーフィルタと対抗基板の貼り合わせ工程でセルギャップの調整が困難になる場合がある。
【0072】
また、画素着色層の膜厚はブラックマトリクスの膜厚と同等もしくはそれ以上であることが好ましい。画素着色層の膜厚がブラックマトリクス以下であると、画素部が画素部に対して平行なブラックマトリクス2pに乗り上げることにより生じる段差が大きくなり、カラーフィルタの平坦性が損なわれてしまう。
【0073】
ブラックマトリクスを形成した基板上に赤色感光性樹脂組成物を塗布し、所定のストライプパターンを有するフォトマスクを介して露光、現像して膜硬化することにより、赤色の画素着色層を形成することができる。一連の工程を緑色、青色の感光性樹脂組成物を用いて行うことにより、赤色、緑色および青色の画素着色層を有するカラーフィルタを製造することができる。
【0074】
図3に、本発明のカラーフィルタの一例を表す模式的な断面説明図を示す。この断面は図2(c)において、x−x’で切断した断面に、配向膜を加えた図である。ただし、ブラックマトリクスと画素着色層が重なっている部分の盛り上がりは、特許文献1〜5に記載されている対策、その他の対策によって無視しうる程度になったとして、省略してある。
【0075】
図3に示したカラーフィルタ20は、基板1、基板1上に設けられたブラックマトリクス2、ブラックマトリクス2によってストライプ状に画定された着色領域に設けられた着色層3R、3G、3Bとを有するカラーフィルタ10と、このカラーフィルタ10上に設けられた配向膜4とを有する。
【0076】
図4に、本発明のカラーフィルタの別の一例を表す模式的な断面説明図を示す。この断面は図2(c)において、x−x’で切断した断面に、透明導電膜と配向膜を加えた図である。ただし、ブラックマトリクスと画素着色層が重なっている部分の盛り上がりは、図3に示したカラーフィルタと同様な理由によって、省略してある。
【0077】
図4に示したカラーフィルタ30は、着色層3R、3G、3Bと配向膜4との間に透明導電5が設けられた以外は、図3と同様の構成を有する。
【0078】
本発明の液晶表示装置は、上記いずれかのカラーフィルタと、カラーフィルタに対向して設けられた対向基板と、カラーフィルタおよび対向基板間に充填された液晶とを具備する。
【0079】
図5に、本発明の液晶表示装置の一例として、図3に示すカラーフィルタと同様の構成を有するカラーフィルタを用いた横電界方式の液晶表示装置の構成を表す断面説明図を示す。
【0080】
図5の液晶表示装置60は、カラーフィルタ20と、カラーフィルタ20に対向して設けられ、基板に平行な向きに電界をかける電極12、14を備えた対向基板40、カラーフィルタ20と対向基板40の間に充填された液晶11とを具備する。カラーフィルタ20および対向基板40の液晶セルと反対側の主面には、例えばポリビニルアルコールにヨウ素錯体を延伸したTAC(トリアセチルセルロース)フィルム等からなる偏光板6が設けられている。
【0081】
また、この対向基板40は、基板7と、基板7上に設けられた共通電極12と、共通電極12を覆って設けられた絶縁層13と、絶縁層13上に設けられた画素電極14とを有する。液晶11は、画素電極14が設けられた絶縁層13とカラーフィルタ20の配向膜4との間に配置される。
【0082】
この液晶表示装置によれば、用いるカラーフィルタの平坦性が良好であるため、液晶の配向乱れがなく、配向膜のラビング工程における膜剥がれが生じることもなく、良好な表示特性を示す。
【0083】
図5に、本発明の液晶表示装置の別の一例として、図4に示すカラーフィルタと同様の構成を有するカラーフィルタを用いたTN方式の液晶表示装置の構成を表す断面説明図を示す。
【0084】
この液晶表示装置70は、カラーフィルタ30と、カラーフィルタ30に対向して設けられ、透明導電5に対向して、基板に垂直な向きに電界をかける電極を備えた対向基板50と、カラーフィルタ30および対向基板50間に充填された液晶21とを具備する。カラーフィルタ30および対向基板50の液晶セルと反対側の主面には、例えばポリビニルアルコールにヨウ素錯体を延伸したTAC(トリアセチルセルロース)フィルム等からなる偏光板6が設けられている。
【0085】
また、この対向基板50は、基板8と、基板8上に設けられた対向電極22と、対向電極22を覆って設けられた配向膜23とを有する。液晶21は、対向基板50の配向膜23と、カラーフィルタ30の配向膜4との間に配置される。
【0086】
この液晶表示装置によれば、用いるカラーフィルタの平坦性が良好であるため、液晶の配向乱れがなく、配向膜のラビング工程における膜剥がれが生じることもなく、良好な表示特性を示す。
【実施例】
【0087】
以下、実施例によって、本発明をより具体的に説明する。
【0088】
[実施例1]
(黒色感光性樹脂組成物の調製)
黒色顔料分散液ABK−2016/御国色素社製:28.9質量部
樹脂V259−ME(固形分56.1質量%)/新日鐵化学社製:8.08質量部
モノマーDPHA/日本化薬社製:1.761.質量部
開始剤OXE−02/チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:1.46質量部
溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:54.5質量部
溶剤エチル−3−エトキシプロピオネート:43質量部
レベリング剤BYK−330/ビックケミー社製:10質量部
上記の材料を混合攪拌して黒色感光性樹脂組成物(固形分中の顔料濃度:41.0質量%)を得た。
【0089】
(ブラックマトリクスの形成)
上記黒色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が1.4μmになるように塗布して乾燥させた。この塗膜を90℃で5分間加熱した後、ストライプ状の画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pに対応したパターンを有するフォトマスクを介し、光源に超高圧水銀光灯ランプを用いて露光した(露光量100mJ/cm2)。次に、2.52質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、230℃で60分焼成してパターンを硬化させ、ストライプ状のブラックマトリクス2pを形成した。
【0090】
次に、この基板上に再度黒色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が0.9μmになるように塗布して乾燥させた。ストライプ状画素着色層に直交する、すなわち画素着色層の幅方向の、ブラックマトリクス2vに対応したパターンを有するフォトマスクを用いること以外は上記と同様の操作を行い、所定の位置で上記ストライプ状のブラックマトリクスを垂直に連結する矩形状の0.9μm膜厚の、ブラックマトリクス部を形成し、図2(b)に示す形状のブラックマトリクスを得た。
【0091】
(赤色顔料分散液の調製)
C.I.Pigment Red 254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガーフォーレッドB−CF」)18質量部、C.I.Pigment Red 177(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「クロモフタールレッドA2B」)2質量部、アクリルワニス(固形分20質量%)108質量部を混合し、均一に攪拌した後、ガラスビーズを用いてサンドミルで5時間分散し、メッシュ目5.0μmフィルタでろ過して赤色顔料分散液を調製した。
【0092】
(緑色顔料分散液の調製)
C.I.Pigment Green 36(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン6YK6」)16質量部、C.I.Pigment Yellow 150(バイエル社製「ファンチョンファーストイエローY−5688」)8質量部、アクリルワニス(固形分20質量%)102質量部を混合し、赤色顔料分散液と同様にして緑色顔料分散液を調製した。
【0093】
(青色顔料分散液の調製)
C.I.Pigment Blue 15(東洋インキ製造社製「リアノールブルーES」)50質量部、C.I.Pigment Violet 23(BASF社製「バリオゲンバイオレット5890」)2質量部、分散剤(ゼネカ社製「ソルスバース20000」)6質量部、アクリルワニス(固形分20質量%)200質量部を混合し、赤色顔料分散液と同様にして青色顔料分散液を調製した。
【0094】
(赤色感光性樹脂組成物の調製)
赤色顔料分散液:150質量部
モノマーTMP3A/大阪有機化学工業社製:13質量部
開始剤Irgacure907/チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:4質量部
増感剤EAB−F/保土ヶ谷化学社製:2質量部
溶剤シクロヘキサノン:257質量部
上記の材料を均一になるように混合攪拌した後、メッシュ目5μmのフィルターでろ過して赤色感光性樹脂組成物を得た。
【0095】
(緑色感光性樹脂組成物の調製)
緑色顔料分散液:126質量部
モノマーTMP3A/大阪有機化学工業社製:14質量部
開始剤Irgacure907/チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:4質量部
増感剤EAB−F/保土ヶ谷化学社製:2質量部
溶剤シクロヘキサノン:257質量部
上記の材料を均一になるように混合攪拌した後、メッシュ目5μmのフィルターでろ過して緑色感光性樹脂組成物を得た。
【0096】
(青色感光性樹脂組成物の調製)
青色顔料分散液:258質量部
モノマーTMP3A/大阪有機化学工業社製:19質量部
開始剤Irgacure907/チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:4質量部
増感剤EAB−F/保土ヶ谷化学社製:2質量部
溶剤シクロヘキサノン:214質量部
上記の材料を均一になるように混合攪拌した後、メッシュ目5μmのフィルターでろ過して青色感光性樹脂組成物を得た。
【0097】
(画素着色層の形成)
ブラックマトリクスを形成した基板に赤色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が1.4μmになるように塗布して乾燥させた。この塗膜を90℃で5分間加熱した後、画素部形成用のストライプ状マスクを用い、光源に超高圧水銀光灯ランプを用いて露光した(露光量200mJ/cm2)。次に、2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、230℃で30分焼成してパターンを硬化させ、ブラックマトリクスを形成した基板上にストライプ状の赤色層を形成した。
【0098】
同様にして、前記の赤色層と隣接した位置にストライプ状の緑色層を形成した。さらに同様にしてストライプ状の青色層を形成し、図2(c)に示した構成の格子状に配置されたブラックマトリクスとストライプ状の赤色、緑色、青色の画素着色層を有するカラーフィルタを作製した。
【0099】
(カラーフィルタの評価)
画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pの膜厚(dp)、画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vの膜厚(dv)、ストライプ状の画素着色層の膜厚(D)、および画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vに乗り上げた部分の膜厚(D’)を触針型膜厚計(ET−4000 Kosaka.Lab社製)で測定した。
【0100】
(配向膜の作製)
得られたカラーフィルタの着色層上に配向膜材料(日産化学社製「サンエバー7492」)を焼成後の膜厚が70nmとなるように塗布し、220℃、30分の焼成を行い、カラーフィルタ上に配向膜を有するカラーフィルタを作成した。
【0101】
(配向膜剥がれ評価)
配向膜を塗布、焼成した後のカラーフィルタを、ラビング装置にて押し込み量0.3mm、ロール回転数1800rpm、ステージ移動速度22.5mm/sの条件にて2回のラビングを行い、ラビング後の配向膜表面状態を観察し、配向膜剥がれについて評価を行った。配向膜剥がれが全く観察されなかったものを○、配向膜剥がれが観察されたものを×とした。
【0102】
[実施例2]
画素着色層の形成以外は実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。また、膜厚測定ならびに配向膜剥がれ評価を行った。
【0103】
(画素着色層の形成(2))
ブラックマトリクスを形成した基板に赤色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が1.6μmになるように塗布して乾燥させた。この塗膜を90℃で5分間加熱した後、画素部形成用のストライプ状パターンのマスクを用い、光源に超高圧水銀光灯ランプを用いて露光した(露光量200mJ/cm2)。次に、2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、230℃で30分焼成してパターンを硬化させ、ブラックマトリクスを形成した基板上にストライプ状の赤色層を形成した。
【0104】
同様にして、前途の赤色層と隣接した位置にストライプ状の緑色層を形成した。さらに同様にしてストライプ状の青色層を形成し、カラーフィルタ基板上に図2(c)に示した構成の格子状に配置されたブラックマトリクスとストライプ状の赤色、緑色、青色の画素着色層を有するカラーフィルタを作製した。
【0105】
[実施例3]
黒色感光性樹脂組成物とブラックマトリクスの形成以外は実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。また、膜厚測定ならびに配向膜剥がれ評価を行った。
【0106】
(黒色感光性樹脂組成物の調製(2))
黒色顔料分散液ABK−2016/御国色素社製:33.1質量部
樹脂V259−ME(固形分56.1質量%)/新日鐵化学社製:5.08質量部
モノマーDPHA/日本化薬社製: 1.1質量部
開始剤OXE−02/チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:0.92質量部
溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:54.5質量部
溶剤エチル−3−エトキシプロピオネート:4.3質量部
レベリング剤BYK−330/ビックケミー社製:1.0質量部
上記の材料を混合攪拌して黒色感光性樹脂組成物(固形分中の顔料濃度:47.0%)を得た。
【0107】
(ブラックマトリクスの形成(2))
上記黒色感光性樹脂組成物(2)を焼成後の膜厚が1.2μmになるように塗布して乾燥させた。この塗膜を90℃で5分間加熱した後、画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pに対応したパターンを有するフォトマスクを介し、光源に超高圧水銀光灯ランプを用いて露光した(露光量100mJ/cm2)。次に、2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、230℃で60分焼成してパターンを硬化させ、画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pを形成した。この基板上に再度黒色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が0.7μmになるように塗布して乾燥させた。画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vに対応したパターンを有するフォトマスクを用いること以外は上記と同様の操作を行い、画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vを形成した。
【0108】
[実施例4]
画素着色層の形成を実施例2と同様に行うこと以外は実施例3と同様にカラーフィルタを作製した。また、膜厚測定ならびに配向膜剥がれ評価を行った。
【0109】
[比較例1]
ブラックマトリクスの形成条件以外は実施例1と同様にカラーフィルタを作製し、上記
した膜厚測定ならびに配向膜の剥がれ評価を行った。
【0110】
(ブラックマトリクスの形成(3))
実施例1と同様の黒色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が1.4μmになるように塗布して乾燥させた。この塗膜を90℃で5分間加熱した後、格子状のパターンを有するフォトマスクを介し、光源に超高圧水銀光灯ランプを用いて露光した(露光量100mJ/cm2)。次に、2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、230℃で60分焼成してパターンを硬化させ、格子状のブラックマトリクスを形成した。
【0111】
[比較例2]
ブラックマトリクスの形成条件以外は実施例3と同様にカラーフィルタを作製し、上記した膜厚測定ならびに配向膜の剥がれ評価を行った。
【0112】
(ブラックマトリクスの形成(3))
実施例3と同様の黒色感光性樹脂組成物を焼成後の膜厚が1.2μmになるように塗布して乾燥させた。この塗膜を90℃で5分間加熱した後、格子状のパターンを有するフォトマスクを介し、光源に超高圧水銀光灯ランプを用いて露光した(露光量100mJ/cm2)。次に、2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像し、現像後よく水洗し、さらに乾燥後、230℃で60分焼成してパターンを硬化させ、格子状のブラックマトリクスを形成した。
【0113】
画素着色層に対して平行なブラックマトリクス2pの膜厚dp、画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vの膜厚dv、画素着色層の膜厚Dおよびストライプ状の画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vに乗り上げた部分の膜厚D’、さらに配向膜の剥がれ評価の結果を下記の表1に示した。
【0114】
【表1】

表1に示すように、実施例1〜4では、ストライプ状のブラックマトリクス2pの膜厚dpが、画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vの膜厚dvより0.3μm以上厚い。すなわち膜厚差が0.3μm以上である。この場合、平坦性の指標となる上記画素部の画素着色層の膜厚Dとブラックマトリクス2vに乗り上げた部分の全膜厚、すなわちブラックマトリクス2vと画素着色層の総厚D’の差(D’−D)が小さくなり、平坦性が向上していることが確認できた。原因は先に述べたように、画素着色層を形成する際の塗布液の流動性による平坦化である。
【0115】
さらに、ストライプ状の画素着色層に対して直交するブラックマトリクス2vに乗り上げた部分の全膜厚D’と画素部の着色層の膜厚Dの差(D’−D)が0.4μm以下である実施例1〜4では配向膜剥がれが全く発生しなかったのに対し、0.4μm以上である比較例1、2はいずれも配向膜剥がれが発生した。特にストライプ状の画素着色層の乗上げ部の端部で多数発生していた。
【0116】
本発明のカラーフィルタを用いることにより、製造工程において透明導電膜の破損、ラビング時の配向膜剥がれといった不具合がなく、液晶の配向不良がない表示特性良好な液晶表示装置を得ることができる。
【0117】
なお、本発明のカラーフィルタとして、必要に応じて、画素着色層の上にまず保護層(平坦化層とも呼ばれる)を設け、その上に配向膜を設けた構成、または保護層の上に透明導電膜とその上に配向膜を設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】従来技術によるストライプ状画素着色層を有するカラーフィルタの模式的な構成説明図
【図2】本発明によるストライプ状画素着色層を有するカラーフィルタの模式的な構成説明図
【図3】配向膜を形成した本発明のカラーフィルタの一例を表す模式的な断面構成説明図
【図4】導電層と配向膜を形成した本発明のカラーフィルタを表す模式的な断面構成説明図
【図5】本発明の液晶表示装置の一例の構成を表す断面説明図
【図6】本発明の液晶表示装置の別の一例の構成を表す断面説明図
【符号の説明】
【0119】
1、7、8…カラーフィルタ用基板
2、2p、2v…ブラックマトリクス
3、3R、3G、3B…画素着色層
4、23…配向膜
5…透明導電膜
6…偏光板
10…カラーフィルタ
11、21…液晶
12…共通電極
13…絶縁層
14…画素電極
20、30…カラーフィルタ
22…対向電極
40、50…対向基板
60、70…液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基板上に格子状に形成されたブラックマトリクスとストライプ状に形成された複数の画素着色層よりなるカラーフィルタであって、該格子状ブラックマトリクスのうち該ス画素着色層に直交する部分の膜厚が、該格子状ブラックマトリクスのうち該画素着色層に平行な方向の部分の膜厚より0.3μm以上薄いことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
該格子状ブラックマトリクスのうち該ストライプ状の画素着色層に直交する部分の膜厚が、該格子状ブラックマトリクスのうち該ストライプ状の画素着色層に平行な方向の部分の膜厚より0.3μmから0.7μmの範囲で薄いことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーフィルタを使用していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
少なくとも、請求項1または2に記載のカラーフィルタの上に配向膜を形成したカラーフィルタ基板と、該フィルター基板に対向する対向基板を有し、両基板間に液晶が封入されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
少なくとも、請求項1または2に記載のカラーフィルタの上に透明導電膜を形成し、さらにその上に配向膜を形成したカラーフィルタ基板と、該フィルタ基板に対向する対向基板を有し、両基板間に液晶が封入されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−157034(P2009−157034A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333934(P2007−333934)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】