説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】高精細パターン形成の生産性を向上するカラーフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に複数色の画像パターンが形成されているカラーフィルタの製造方法であって、予め準備されたロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出し、画像パターンを凹部とした凸版に該フィルム状インキ塗工フィルム21の予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程と、しかる後、画像パターンが残った該予備乾燥インキ膜を被印刷基材23の表面へ転写する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材やプラスチックフィルム、特に生産効率の良いロール状のプラスチックフィルム等の可撓性基材上へ、再現性の高い高精細パターンを形成でき、かつ、生産において、時間ロスの少ないことを特徴とするカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは、省エネルギー、省スペース、可搬性等の点から、据え置き型、壁掛け型、携帯型等の様々な形態で広く利用されている。
【0003】
特に携帯型においては、携帯時に落下させても破損しないような耐衝撃性の確保や、軽量化、薄型化等の種々の要望からプラスチック化への要求が強い。また、壁掛け型においても円柱状の柱へ設置したいという要望から可撓性のプラスチック基材を利用したディスプレイの開発が強く望まれている。
【0004】
しかしながら、従来のフラットパネルディスプレイは、何れもガラス基板を利用して製造された物であり、プラスチック基板を使用して製造することは難しかった。
【0005】
その理由は、従来のフラットパネルディスプレイの部材の作製には高温での加熱工程とフォトリソグラフィ工程が含まれているためである。
【0006】
例えば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造に当たっては、感光性樹脂のパターニングの際に、現像、洗浄、ベーキング等の工程があり、プラスチック基板等の耐熱性のよくない部材の熱による損傷や伸縮が生じてしまうことになる。
【0007】
また、ディスプレイの駆動電極である薄膜トランジスタの製造工程にあっては、シリコーン半導体や絶縁膜の形成には300℃以上の高温処理工程が含まれるが、このときの処理温度はプラスチック基板の耐熱性を上回っている。
【0008】
また、フォトリソグラフィ工程は、製膜、露光、現像、剥離を材料毎に行うので、製造設備も大掛かりとなり、製造のコストが高くなっていた。
【0009】
以上のことから、プラスチック基材上への精密なパターニングが可能な印刷方法の確立が強く求められていた。
【0010】
プラスチック基材上への印刷法については、インキジェット法を利用することが検討されている。インキジェット法は、所定の部分にのみ所定の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、版も使用しないことから、もっとも簡便なパターニング方法として期待されている。
【0011】
しかしながら、現状のインキジェット法のインキ液滴の直径は数十μm程度であり、着弾精度も数μm程度ある。
【0012】
そのため、カラーフィルタのブラックマトリクスや薄膜トランジスタ配線等の10μm程度のパターンを形成する方法としては、採用することができない。
【0013】
一方、インキジェット法以外の方法としては、スクリーン印刷法が挙げられる。スクリーン印刷法は、電子部品における配線や抵抗体、誘電体の印刷などで実用化されている。
【0014】
しかしながら、孔版印刷であることからインキはペースト状の高粘度のものに限られ、また、現状の孔版の精細度では、10μm前後のパターンを形成する方法としては、採用することができない。
【0015】
そこで、インキジェット法およびスクリーン印刷法以外の方法として、フィルムへ乾燥インキ膜をあらかじめ設けた、いわゆるドライフィルムを使用して熱圧によりインキ膜のパターンを除去した後、残ったインキ膜のパターンを目的の基材に転写する転写方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0016】
しかしながら、フィルムからインキ膜の一部を転写する際に熱圧を加えるために、フィルム基材の膨張・収縮や版の膨張、インキ膜の溶融・軟化を伴うことから、数十μm程度の微小なパターンの再現が困難である。また、熱圧を均一に加えるための装置も複雑になり、大面積での転写も困難となってしまう。
【0017】
また、シリンダーに巻き付けたブランケット上にインキを塗工し、予備乾燥してインキ膜を形成し、その後、非画像部パターン対応の凸部が形成された凸版をインキ膜に押圧することにより、インキ膜から非画像部用パターンに該当する部分を除去し、しかる後に、ブランケット上に残っている画像パターンを被印刷基材上に転写し、被印刷基材上に所望の画像パターンを形成する印刷方法が試みられている(例えば特許文献2参照)。
【0018】
この印刷方法ではインキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成することから、被印刷基材へのインキ転写性が良好であり、大面積での転写も容易にできる。また、10μm前後の凹凸パターンを持つ凸版を用いれば、薄膜での10μm前後の微細パターン形成が可能である。
【0019】
しかしこの印刷方法は、シリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなるブランケット上でインキの予備乾燥を行う時に、ブランケット表面のインキ濡れ性や転写性が不安定になるという問題点を有していた。これはブランケットがシリンダーに固定されたまま乾燥を行うために均一な予備乾燥が困難であり、塗工されたインキ中の溶剤がブランケット内に吸収されてブランケットが膨潤し、部分的に転写性や精度のバラツキが発生してしまうからである。
【0020】
また、転写後のクリーニングやブランケットの乾燥による膨潤量の調整を転写毎に行う必要があるため、連続加工には不向きである。また、ブランケットがシリンダーに固定されているので、あるパターンが予め形成されている基材上にさらに別のパターンを転写する場合には、ブランケット上のパターンと基材上のマーク等との位置合わせが困難であった。
【0021】
上述の印刷方法における上記のような課題を解決すべく、巻取りロールからインキ剥離性のフィルム基材を供給し、そのインキ剥離性のフィルム基材をブランケットとして使用する印刷方法が提案されている。この印刷方法によれば、新規インキ剥離性のフィルム基材を順次送り出し使用することが出来るため、転写の連続安定性を確保することができる。また、ブランケットとしてインキ剥離性フィルム基材を使用していることで、均一な予備乾燥が可能であり、精度のバラツキを抑えることができ、転写性も安定化できる。また、インキ剥離性のフィルム基材が光学的に透明であることで、インキ剥離性のフィルム基材表面に残った画像パターンやアライメントマーク越しに、被印刷基材上の画像パターンやアライメントマークを確認することができることから、転写位置を正確に合わせこむことが容易となり再現性の高い10μm前後の高精細パターンを形成することができる(例えば特許文献3参照)。しかしながら、この方法は、画像パターン形成においてインキ塗工・乾燥・転写・剥離工程を同一の装置で連続して行うため、サイクルタイムの長い転写・剥離工程が律速段階となり単位時間当たりの生産量が少ないという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平9−90117号公報
【特許文献2】特開2001−56405号公報
【特許文献3】特開2008−155449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、上記に示す従来の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、高精細パターン形成の生産性向上である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、基材上に複数色の画像パターンが形成されているカラーフィルタの製造方法であって、予め準備されたロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出し、画像パターンを凹部とした凸版に該フィルム状インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程、しかる後、画像パターンが残った該予備乾燥インキ膜を被印刷基材表面へ転写する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法における、前記画像パターンを凹部とした凸版にフィルム状インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程において、予備乾燥インキ膜は常温においては前記凸版の凸部により外力を加えた部分のみが転移して除去され得る半乾燥状態であることを特徴とする。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のカラーフィルタの製造方法であって、前記フィルム状インキ塗工フィルムは、フィルム基材の両面にインキ剥離性の異なる離型層が形成されており、又、該離型層のうち、剥離強度の大きい離型層面上に予備乾燥インキ膜が形成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項4に記載の発明は請求項1乃至3の何れか1項に記載のカラーフィルタの製造方法であって、前記フィルム状インキ塗工フィルムの膜厚差が0.1μm以上10.0μm以下であることを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載の発明は請求項1乃至4の何れか1項に記載のカラーフィルタの製造方法であって、前記フィルム状インキ塗工フィルムのフィルム基材と離型層が光学的に透明であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の発明によれば、予め準備されたロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出し、画像パターンを凹部とした凸版に該インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程、しかる後、画像パターンが残った該予備乾燥インキ膜を被印刷基材表面へ転写する工程を含むことで、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工でき、単位時間当たりの高精細パターン生産量を多くすることができる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、前記画像パターンを凹部とした凸版にインキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程において、予備乾燥インキ膜は常温においては前記凸版の凸部により外力を加えた部分のみが転移して除去され得る半乾燥状態であることで、前記凸版への転移除去の歩留まりを高くすることができ、安定して高精細パターンを形成することができる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、前記フィルム状インキ塗工フィルムは、フィルム基材の両面に剥離強度の異なる離型層が形成されており、又、該離型層のうち、剥離強度の大きい離型層面上に予備乾燥インキ膜が形成されていることで、予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層によって予備乾燥インキ膜が保護され、予備乾燥インキ膜の半乾燥状態から乾燥状態への変化、塵埃の付着を防ぐことができる。そして、ロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出す際に、予備乾燥インキ膜の形状変化やインキ転移を防ぐことができ、剥離強度の大きい離型層面上に予備乾燥インキ膜が完全に残る。そのため、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工できる。
【0032】
本発明では、剥離強度を180度方向に剥離を行った際に測定された強度と定義する。又、剥離強度はJIS K−6854−2に基づき測定した。剥離強度はこの定義に限定されるものではなく、公知の定義としてもよい。いずれの定義で剥離強度を測定しても、フィルム基材の両面に形成された離型層は剥離強度は異なる値を示す。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、前記フィルム状インキ塗工フィルムの膜厚差が0.1μm以上10.0μm以下であることにより、予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層によって予備乾燥インキ膜を保護する際、貼合部の凹凸が小さいため、過度のエア混入や皺の発生を防ぐことができる。又、貼合時の密着においても、すべての面で密着していないために予備乾燥インキ膜から予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層への溶剤浸透を抑えることができる。そのため、半乾燥状態のインキ膜を維持することができ、ロール状インキ塗工フィルムを予め準備しておくことができる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、前記フィルム状インキ塗工フィルムのフィルム基材と離型層が光学的に透明であることにより、離型層面上の画像パターンやアライメントマーク越しに、被印刷基材上の画像パターンやアライメントマークを確認することができ、転写位置を正確に合わせこむことが容易となる。そのため、再現性の高い高精細パターンの印刷加工をすることができる。
【0035】
以上のことから請求項1乃至5に記載のカラーフィルタの製造方法において、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工できるため、複数の転写・剥離装置を用いると、インキ塗工・乾燥・転写・剥離を連続して1つの装置で行う製造方法と比較して、単位時間当たりの高精細パターン生産量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態であるカラーフィルタの製造方法に用いられる転写・剥離装置を示す概略図である。
【図2】(a)は同実施形態に係るカラーフィルタの製造方法に用いられるフィルム状インキ塗工フィルムを示す断面図、(b)は同実施形態に係るカラーフィルタの製造方法に用いられるロール状インキ塗工フィルムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るカラーフィルタの製造方法の実施の形態について説明する。
【0038】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、予め準備されたロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出し、画像パターンを凹部とした凸版に該フィルム状インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程、しかる後、画像パターンが残った該予備乾燥インキ膜を被印刷基材表面へ転写する工程を有する。
【0039】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について、その概略の構成を示す図1および図2を使用して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態であるカラーフィルタの製造方法に用いられる転写・剥離装置を示す概略図である。図2(a)は同実施形態に係るカラーフィルタの製造方法に用いられるフィルム状インキ塗工フィルムを示す断面図、同図(b)は同実施形態に係るカラーフィルタの製造方法に用いられるロール状インキ塗工フィルムを示す断面図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態のカラーフィルタの製造方法に用いられる転写・剥離装置は、大略的には、ロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出す巻出し部12、フィルム状インキ塗工フィルム21の予備乾燥インキ膜104のうち、転写をさせない部分をパターン状に転移・除去するための除去部22、予備乾燥インキ膜104の転写をさせようとする部分を被印刷基材23に見当を合わせて転写させるためのアライメント部24と予備乾燥インキ膜104と被印刷基材23の貼合部25、被印刷基材23上に転写された予備乾燥インキ膜104を乾燥させるための乾燥部26、インキ剥離性のフィルム基材100によって構成されている。
【0041】
フィルム状インキ塗工フィルム21は、図2(a)に示すように、フィルム基材101、離型層102、103、予備乾燥インキ膜104から成り立っている。そして、フィルム基材101の両面に離型層102、103が形成されており、二つの離型層のうち剥離強度の大きい離型層103上に予備乾燥インキ膜104が形成されている。ここで、フィルム基材101の両面に離型層102、103が形成されている基材をインキ剥離性のフィルム基材100とする。又、フィルム状インキ塗工フィルム21が何層もロール状に巻き取られているロール状インキ塗工フィルム11では、図2(b)に示すように、離型層103上に形成されている予備乾燥インキ膜104と離型層102が貼合されている。
【0042】
さらに、フィルム状インキ塗工フィルム21の膜厚差は0.1μm以上10.0μm以下であることが望ましい。膜厚差が10.0μm以上になると表面の凸凹が顕著となり、予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層によって予備乾燥インキ膜を保護する際、過度のエア混入や皺が生じる。また、膜厚差が0.1μm以下となると予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層によって予備乾燥インキ膜を保護する際、予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層と予備乾燥インキ膜の密着性能が著しく上がる一方で、予備乾燥インキ膜から予備乾燥インキ膜の形成されていない離型層への溶剤の浸透が増し、予備乾燥インキ膜が半乾燥状態を維持すること困難となる。
【0043】
本実施形態に用いるフィルム基材101としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、トリアセチルセルロース(TAC)等からなる可撓性のフィルムやシートを用いることができる。
【0044】
本実施形態に用いる離型層102、103は、シリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤やシリコーンゴムをフィルム基材101上に塗布して形成することができる。また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴム等も利用され得るし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、公知のゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。これらシリコーン系の塗膜は一般的にはフィルム基材との密着が弱いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して接着性の高い樹脂等からなる層を、アンカー層としてあらかじめフィルム基材101上に設けるようにすればよい。さらに、透明なフィルム基材101及び離型層102、103を用いることにより、パターンの重ね合わせ時にアライメントが容易にできる。
【0045】
また、フィルム基材101上の離型層102、103は、適度のインキ受容性を有すると同時に、一度受容した予備乾燥インキ膜の完全なインキ剥離性を有することが必要である。
【0046】
上記のシリコーンとしては、具体的には、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体等を用いることができる。
【0047】
また、シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせになるもの等が用いられる。その他にはゴム硬度を調節するためのポリシロキサン等も適宜用いられる。
【0048】
また、本実施形態に用いる離型層102、103として、フィルム基材101にゾル−ゲル法により無機酸化膜、あるいはこれらの複合酸化物膜を設けた基材面にシランカップリング剤を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の一種を表面に設けたものを用いることもできる。
【0049】
シランカップリング剤としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類等を用いることができる。このシランカップリング剤の一部位は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等の有機化合物との反応性基を持つものから選ぶことができ、あるいはアルキル基やその一部にフッ素原子が置換されたものやシロキサンが結合して、表面自由エネルギーの小さな表面を形成できる置換基が結合したものを用いることもできる。前者の反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤で基材表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるような他のモノマー成分を塗工して、結合させることができる。反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を用いることができ、モノマーとしては、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることができる。また、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等を用いることができる。但し、アルキル基に限定されるものではない。
【0050】
上記シランカップリング剤を上記フィルム基材101に固定化する方法としては、シランカップリング剤を使用した公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤を水、酢酸水溶液、水−アルコール混合液、あるいはアルコール溶液に希釈させた溶液を調製し、続いて、調製した溶液を公知の塗工方法であるグラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等を用いて基材表面に塗工し、次いで乾燥させることでシランカップリング剤を固定化できる。また、反応性基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、次いで他のモノマー成分を同様に塗工して結合させることができる。
【0051】
また、上記無機酸化物膜を設けるには、一般式M(OR)nで表される金属アルコキシド(MはTi、Al、Zrなどの金属、RはCH、C等のアルキル基)やシリコンアルコキシドを水、アルコールの共存下で加水分解反応および縮重合反応させて得られたゲル溶液を表面にコーティング後、加熱することで無機酸化物膜を設ける、いわゆるゾル−ゲル法を用いることができる。
【0052】
さらに、上記ゾル−ゲル法で用いる金属アルコキシド溶液中にあらかじめ上記シランカップリング剤を添加しておくこともできる。この場合、表面性改質に特に効果が得られる。
【0053】
このようにして得られるフィルム基材101上の離型層102、103に対するインキ剥離性は、処理面へインキ液を滴下した際の接触角が、10°以上90°以下となることが好ましく、20°以上70°以下であることがより好ましい。接触角が小さいと後工程で所定のインキ剥離性が確保できず、転写させようとする予備乾燥インキ膜の転写パターンの欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいとインキ液膜を形成する際にハジキが生じて、均一なインキ液膜を形成することが困難になる。
【0054】
さらに、予備乾燥インキ膜104が形成されている離型層103の剥離強度は、離型層102の剥離強度よりも大きいことが望ましい。離型層の剥離強度を変える手段としては、材料や膜厚変化が挙げられる。ロール状インキ塗工フィルム11では、予備乾燥インキ膜104が離型層103と離型層102に挟まれるため、両者の剥離強度の差が小さいと、ロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出す際、予備乾燥インキ膜104の形状変化や離型層103から離型層102へのインキ転移が起こりやすくなる。
【0055】
このように、予備乾燥インキ膜104が形成されている離型層103の剥離強度を離型層102の剥離強度よりも大きくすることで、後述するロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出す工程において、予備乾燥インキ膜104の離型層103から離型層102への転移が発生せず、剥離強度の大きい離型層103面上に予備乾燥インキ膜が完全に残る。そのため、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工できる。
【0056】
インキ液の材料としては、画像パターン形成材料に溶媒を溶解または分散させたものを用いることができる。例えば、カラーフィルタにおいて赤色、緑色、青色からなるカラーパターン(着色層)やブラックマトリックス等を本発明の印刷方法により設ける場合は、顔料成分と樹脂成分を溶媒中に溶解、分散させてなるインキを用いることができる。
【0057】
顔料としては、例えば、赤、緑、青の各色で使用できるものとして次のようなものが挙げられる。顔料の種類は、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。まず、赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215等が、緑色顔料として7、36等が、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64等が挙げられる。また、墨顔料として、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。さらに、これら赤、緑及び青顔料の色調整及びインキの流動性を改善するために、次に挙げる顔料を必要量添加することができる。
【0058】
すなわち、黄顔料として、17、83、109、110、128等が、紫顔料として、19、23等が、白顔料として、18、21、27、28などが、橙顔料として、38、43等が挙げられる。これらの顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。
【0059】
また、ブラックマトリックスの形成に用いられる黒色顔料としては、カーボンブラックやチタンブラックが単独または混合して用いられる。
【0060】
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。溶剤には、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤等が使用される。そして、エステル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、アルコール系溶剤としては、1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール、1−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、炭化水素系溶剤としては、ソルベッソ100、ソルベッソ150(製品名エクソン化学社製)等が挙げられる。
【0061】
上記した離型層103上へインキ液膜を形成する際には膜厚精度の観点からダイコーターやインキジェット方式が好適である。インキジェット方式のヘッドの方式は、サーマル方式、バブル方式、静電アクチュエータ方式、ピエゾ方式等の従来公知の方式が採用できる。
【0062】
離型層103上の所定領域へ前記方法によりインキ液膜を形成した後に、インキ液膜を予備乾燥するが、この予備乾燥には自然乾燥、冷風・温風乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥などの種々の乾燥方法を用いることができる。また、紫外線、電子線などの放射線を用いて乾燥するようにしてもよい。
【0063】
この予備乾燥では、インキ液膜の粘度またはチキソトロピー性、脆性を上げることを目的とする。使用するインキの組成によって乾燥状態を乾燥時間や雰囲気温度により調節するが、予備乾燥させたインキ膜104において0.1%から10.0%程度の溶剤の残留が認められる状態が好ましい。溶剤残留が0.1%以下であると、後工程で凸版の凸部を押し当てその一部を剥離させる際に、予備乾燥インキ膜104が不必要な個所で断裂してしまう。逆に溶剤残留が10.0%以上であると、予備乾燥インキ膜104表面のタック性が無くなり、凸版の凸部に予備乾燥インキ膜104が転写されない。
【0064】
いわゆるドライフィルムといわれるppmオーダーの溶剤残留量では乾燥が行き過ぎであり、インキが転写されない不具合や、版の押し付けによりインキ膜が部分的に剥離してゴミの原因になったりする不具合があるため、予備乾燥インキ膜104の条件として適さない。
【0065】
また、予備乾燥インキ膜104は、離型層103上に連続して形成されていても良いし、不連続に形成されていても良い。予備乾燥インキ膜104が離型層103面上に連続して形成されている場合、画像パターンを凹部とした凸版へ効率よく連続転写できるし、凸版の大きさの自由度を高めることもできる。そのため、単位時間当たりの生産量を多くすることができる。一方、複数色の予備乾燥インキ膜104が離型層103面上に不連続に形成されている場合、被印刷基材23に複数色を連続転写できるため、単位時間当たりの生産量を多くすることができる。
【0066】
ロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出し、離型層103上の予備乾燥インキ膜104から離型層102を剥離する工程では、フィルム状インキ塗工フィルム21の予備乾燥インキ膜104が離型層102に転移しない剥離速度を適宜選択する。その結果、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程を分離して印刷加工しても、安定して高精細のパターンを形成することができる。
【0067】
フィルム状インキ塗工フィルム21の予備乾燥インキ膜104のうち、転写をさせない部分をパターン状に転移・除去するための除去部22では、例えば、可動ステージに樹脂製やガラス製等の凸版が吸着により装着されており、フィルム状インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜104に凸版を近づけた後、可動ステージの移動とともにローラーにより加重をかけて、凸版の凸部と接した予備乾燥インキ膜104の部分を凸版側に転移させ、フィルム状インキ塗工フィルムから除去させる。この際、予備乾燥インキ膜104は常温において半乾燥状態であるため、凸版の凸部と接した予備乾燥インキ膜104部だけをフィルム状インキ塗工フィルム21から除去することができる。これにより、凸版への転移除去を効率よく行うことができ、安定して高精細の画像パターンを形成することができる。
【0068】
離型層103上の予備乾燥インキ膜104の所望部分を被印刷基材23に転写するために用いられる凸版としては、ガラスの他、鉄、アルミニウム、ステンレススチール、銅等の金属を用いることができる。これらの表面に感光性樹脂を用いてマスクパターンを形成した後、既存のドライエッチング処理やウエットエッチング処理、もしくはサンドブラスト処理を用いて、2μmから30μm程度の版深の凸部並びに凹部を設けたものを用いることができる。
【0069】
また、凸版にはナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン−ジエン共重合体等からなるものを用いることもできる。またエチレン−プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴムなどのゴム製の凸版を用いることもできる。このような樹脂製の凸版は、すでに一般的な凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とするか、あるいは彫刻によっても版とすることができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製できるので好ましく用いられる。
【0070】
アライメント部24では、可動性ステージと複数の顕微鏡カメラ等から構成されており、可動性ステージ上に吸着させた被印刷基材23に、画像パターンが残ったフィルム状インキ塗工フィルム21の予備乾燥インキ膜104面を100〜250μm程度に近づけた後、予備乾燥インキ膜104の一部やアライメント用のマークパターン等のパターンと、被印刷基材23上のすでに印刷されているパターンを透過画像で認識し、それぞれの基材上のパターンの認識画像を基に可動性ステージを動作させ転写位置の補正を行う。フィルム状インキ塗工フィルムのフィルム基材と離型層が光学的に透明であることで、上記透過画像の認識が可能となる。
【0071】
また、フィルム状インキ塗工フィルム21と被印刷基材23の間に顕微鏡カメラを挿入し、それぞれの基材上のパターンの認識画像を基に位置の補正を行う方法も選択できる。
【0072】
上記顕微鏡カメラとしては、光学顕微鏡、CCD(Charge Coupled Device)顕微鏡等が適用できるが、オートフォーカス、電気的に制御可能な手動焦点制御機構のいずれか、もしくはその両方の機能を必要とし、観察の為に外部に設置したモニターや位置補正のための画像処理装置へのインターフェースを持つものが推奨される。
【0073】
貼合部25には、前記アライメント部24に設置された可動性ステージ上に金属ローラーまたはゴムローラー等の貼りあわせ用のローラーが設けられている。
【0074】
予備乾燥インキ膜104と被印刷基材23の貼合部25では、可動性ステージに固定された被印刷基材23と、画像パターンが残ったフィルム状インキ塗工フィルム21をこの部分でローラーを押し当て、可動性ステージの移動と共にローラーを回転させながら印圧をかけて重ね合わせ、次にインキ剥離性フィルム基材100を被印刷基材23から剥離すことにより、インキ剥離性フィルム基材100上に残っていた予備乾燥インキ膜104を被印刷基材23上へ転写させる。
【0075】
被印刷基材23としては、例えば、ガラス、PET、PEN、PES、COP、PI、PA、PC、PMMA、PVC、TAC等からなるフィルムやシートを用いることもできる。これらの中から印刷に適用するインキ液膜の条件に合わせて適宜選定すればよいが、耐熱性のものとしてはPEN、PES、PC、COP、PI等からなる可撓性のフィルムやシートが好適である。また、無機フィラーを樹脂に添加して耐熱性を向上させた材料からなる基材でもよい。フィルムおよびシートは、延伸されたものでもよく、未延伸のものでもよく、また、必要に応じてガスバリア層や平滑化層等が印刷面または他の面に積層されていてもよい。
【0076】
乾燥部26は、被印刷基材23上に転写された予備乾燥インキ膜104を乾燥させるために設置されるもので、ホットプレート、オーブン、温風、減圧乾燥、紫外線照射等を利用した乾燥装置により所定の乾燥を行う部分である。
【0077】
以上説明した本実施形態のカラーフィルタの製造方法においては、ロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出し、画像パターンを凹とした凸版をフィルム状インキ塗工フィルム21の予備乾燥インキ膜104面に押し当ててから剥離することで非画像部を凸版の凸部に転移させ、しかる後、画像パターンが残ったフィルム状インキ塗工フィルム21を被印刷基材23表面へ転写しているので、インキ塗工・乾燥工程と転写・剥離工程とを分離して印刷することができる。これにより、被印刷基材23への高精細な画像パターン形成の生産効率を向上させることが可能となる。
【0078】
さらに、ロール状インキ塗工フィルム11は、離型層103上の予備乾燥インキ膜104と離型層102が貼合されていることにより、予備乾燥インキ膜104の半乾燥状態から乾燥状態への変化や塵埃の付着を防ぎ、安定に保管することができる。又、離型層103の剥離強度が離型層102の剥離強度よりも大きいため、ロール状インキ塗工フィルム11からフィルム状インキ塗工フィルム21を繰り出す際に、予備乾燥インキ膜104の形状変化やインキ転移を防ぐことができる。
【0079】
なお、この方法はカラーフィルタの製造だけでなく、多岐の分野に応用することができる。例えば、有機EL素子の有機発光層を形成する場合には、ポリフェニレンビニレン(PPV)といった高分子発光材料をトルエンやキシレンといった芳香族系有機溶媒に溶解、分散させることにより得られるインキが用いられる。また、回路基材の配線を形成する場合には、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム等の金属微粒子分散液を水やアルコール、グリコール系溶媒に溶解、分散させることにより得られるインキが用いられる。また、これらのインキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、レベリング剤等の種々の添加剤が添加されていてもよい。なお、本発明に用いられるインキはこれらに限定されるものではない。
【0080】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0081】
カラーフィルタ用赤色インキを次の要領で調製した。
【0082】
(赤色インキの組成)
まず、メタクリル酸を20重量部、メチルメタクリレートを10重量部、ブチルメタクリレートを55重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部を乳酸ブチル300gに溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75重量部を加えて70℃にて5時間反応させ、アクリル共重合体樹脂を得た。次に、得られたアクリル共重合体樹脂を樹脂濃度が10重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈し、アクリル共重合体樹脂の希釈液を得た。
【0083】
この希釈液80.1gに対し、顔料19.0g、分散剤としてのポリオキシエチレンアルキルエーテル0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤の着色ワニスを得た。
【0084】
得られた着色ワニスに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、その顔料濃度が11〜15重量%、粘度が15mPa・s( 2 5 ℃ )になるように調製して添加した後、混合物を均一になるように撹拌混合し、さらに、5μmのフィルタで濾過して赤色インキを得た。
【0085】
続いて、フィルム基材として、基材厚が125μmの透明なPETフィルム:(東レ株式会社製)を500mm幅、500mのロール状で用意した。
【0086】
そして、KS778(東レ・ダウコーニング株式会社製NV.30%)をトルエンにて10倍希釈し、その溶液をグラビアコーターを用いて125μm厚、500mm幅、500mのPET基材に乾燥膜厚0.5μmで塗工して透明な離型層を得た。さらに、KS847(東レ・ダウコーニング株式会社製NV.30%)をトルエンにて3倍希釈し、上記の基材の塗工されていない面にも乾燥膜厚10μmで塗工して透明な離型層を得た。そして、各々の離型層の剥離強度を速度一定の180度剥離にてINSTRONで測定を行ったところ、乾燥膜厚が0.5μmの離型層と比較して、乾燥膜厚が10μmである離型層のほうが、剥離強度が大きかった。そのため、乾燥膜厚10.0μmの離型層側に予備乾燥インキ膜を形成した。
【0087】
そして、上記部材を用い、次のようにしてフィルム状インキ塗工フィルムの作製を行った。
【0088】
まず、ピエゾインキジェットヘッドを用いて、乾燥膜厚10μmの離型層上に52mm×500mの赤色着色インキからなるインキ液膜を塗工した。また、アライメントマーク位置にマークよりも1割ほど大きな四角のパターンも同時に塗工した。インキ液膜の膜厚は、その後の予備乾燥でインキ膜厚が0.8μmになるようにピエゾインキジェットヘッドの吐出量を設定しておいた。
【0089】
次に、乾燥部に設置された40℃のホットプレート上で予備乾燥を30秒間行ってフィルム状インキ塗工フィルムを得た。このとき、フィルム状インキ塗工フィルムの膜厚差は1.0μmであった。
【0090】
そして、皺やエアかみの発生を防ぐためにテンションを100Nかけながら、フィルム状インキ塗工フィルムを巻き取り、ロール状インキ塗工フィルムを得た。
【0091】
続いて、図1に示すような装置を用い、印刷加工を行った。
【0092】
パターンの除去版(凸版)としては、200mm幅(パターン有効幅は150mm)の樹脂製フレキソ用版を用意した。このフレキソ版には、有効幅内に50mm×50mmのパターンが4つ面付けされており、それぞれのパターンは凸部20μm幅、凹部80μm幅の連続したストライプパターンであり、さらに4つの角に位置する200μm□の領域内へアライメントマークを設けたものである。
【0093】
さらに、被印刷基材として125μmの光透過性PET基材を300mm幅、20mのロール状で用意した。
【0094】
上記部材を用い、まず、得られたロール状インキ塗工フィルムから剥離速度50mm/sにてフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出した。この搬送過程では、予備乾燥インキ膜の形状変化やインキ転移が起こらなかった。そして、予備乾燥インキ膜中の溶剤残留割合を測定したところ、4.0%であり、予備乾燥インキ膜は半乾燥状態を維持していた。
【0095】
続いて、予めパターン除去部に設置しておいたフレキソ版に得られたフィルム状インキ塗工フィルムをゴムローラーで押し当てて非画像部(転写させないパターン状の部分)を除去した後、アライメント部のステージへフィルム状インキ塗工フィルム中に残されている予備乾燥インキ膜のパターンが来るように搬送した。そして、2つのアライメント用カメラで対角上のアライメントマークを確認した後、さらにゴムローラーでフィルム状インキ塗工フィルムと被印刷基材を重ね合わせた後、ステージから動かしながら両面離型層付きフィルム基材を被印刷基材から剥離することによって、被印刷基材へ画像パターンの転写を行った。
【0096】
最後に、画像パターンが転写された被印刷基材を乾燥部へ搬送し、ホットプレートにより120秒間の乾燥を行い、パターン印刷物を得た。このパターン印刷物は高精細パターンを有していた。
【0097】
[比較例1]
実施例1のフィルム状インキ塗工フィルムの作製において、予備乾燥を1日行い、予備乾燥インキ膜を乾燥状態(溶剤残留量割合:0.05%以下)にした以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、フレキソ版に得られたフィルム状インキ塗工フィルムをゴムローラーで押し当てて非画像部(転写させないパターン状の部分)を除去させる際に、予備乾燥インキ膜104が不必要な個所で断裂してしまった。そのため、高精細パターンを形成することができなかった。
【0098】
[比較例2]
実施例1のフィルム状インキ塗工フィルムの作製において、予備乾燥を行わず、予備乾燥インキ膜をウエット状態(溶剤残留量割合:50%以上)にした以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、フレキソ版に得られたフィルム状インキ塗工フィルムをゴムローラーで押し当てて非画像部(転写させないパターン状の部分)を除去させる際に、予備乾燥インキ膜104表面のタック性が無く、凸版の凸部に予備乾燥インキ膜104が転写されなかった。
【0099】
[比較例3]
実施例1のフィルム基材の両面への離型層形成において、フィルム基材の両面に、KS778(東レ・ダウコーニング株式会社製NV.30%)をトルエンにて10倍希釈した溶液を用いて乾燥膜厚0.5μmになるように塗工し、両面の離型層の剥離強度を等しくした以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、ロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出した際に、予備乾燥インキ膜の形状変化やインキ転移が起こってしまい、高精細な画像パターンを形成することができなかった。
【0100】
[比較例4]
実施例1のフィルム状インキ塗工フィルムの作製において、膜厚差が10.0μm以上となるようにした以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、テンションを100Nかけながら、フィルム状インキ塗工フィルムを巻き取り、ロール状インキ塗工フィルムを得た際に、エアかみや皺の混入が生じてしまった。そのため、高精細な画像パターンを形成することができなかった。
【0101】
[比較例5]
実施例1のフィルム状インキ塗工フィルムの作製において、膜厚差が0.1μm以下となるようにした以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、ロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出した際に、予備乾燥インキ膜の形状変化やインキ転移が起こってしまい、高精細な画像パターンを形成することができなかった。
【符号の説明】
【0102】
11…ロール状インキ塗工フィルム、12…巻出し部、21…フィルム状インキ塗工フィルム、22…除去部、23…被印刷基材、24…アライメント部、25…貼合部、26…乾燥部、100…インキ剥離性フィルム基材、101…フィルム基材、102、103…離型層、104…予備乾燥インキ膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に複数色の画像パターンが形成されているカラーフィルタの製造方法であって、予め準備されたロール状インキ塗工フィルムからフィルム状インキ塗工フィルムを繰り出し、画像パターンを凹部とした凸版に該フィルム状インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程、しかる後、画像パターンが残った該予備乾燥インキ膜を被印刷基材表面へ転写する工程を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記画像パターンを凹部とした凸版にフィルム状インキ塗工フィルムの予備乾燥インキ膜を押し当ててから剥離する工程において、予備乾燥インキ膜は常温においては前記凸版の凸部により外力を加えた部分のみが転移して除去され得る半乾燥状態であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記フィルム状インキ塗工フィルムは、フィルム基材の両面に剥離強度の異なる離型層が形成されており、又、該離型層のうち、剥離強度の大きい離型層面上に予備乾燥インキ膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム状インキ塗工フィルムの膜厚差が0.1μm以上10.0μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記ロール状インキ塗工フィルムのフィルム基材と離型層が光学的に透明であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72945(P2013−72945A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210782(P2011−210782)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】