説明

カラーフィルターの製造方法、インク、カラーフィルターおよび該カラーフィルターを使用した画像表示装置

【課題】画素の微細さ、シャープさなどの画像特性に優れた性能を有するCFを合理化された工程で、経済的に安価に生産でき、また、CFの大型化に対応できる製造方式で製造し、CFおよび画像表示装置を安価に提供すること。
【解決手段】屈曲性を有するプラスチックフィルム上にセンターインプレッション型印刷機により、レッド色、グリーン色およびブルー色の3原色画素、或いはイエロー色、マゼンタ色およびシアン色の3原色画素からなるカラーフィルターの画素パターンを印刷形成することを特徴とするカラーフィルターの製造方法、インク、カラーフィルターおよび該カラーフィルターを使用した画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター(以下「CF」と略称する)の製造方法、インク、CFおよび該CFを使用した画像表示装置に関し、さらに詳しくはCF用フィルムに直接、或いは該フィルムの印刷面に固定した空孔(画素形成用インクが通過する開口部、以下同じ)を有するマスクに介して、センターインプレッション型印刷機を使用して3原色画素を印刷したCF、その製造に使用する材料、その製造方法に関し、表示画像品質として画素の微細さ、シャープさなどの画像特性に優れた性能を有し、かつ製造工程の合理化を達成でき、経済的に安価に製造されるCFおよび該CFを装着した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の情報化機器の非常な発展に伴い、液晶カラーディスプレイが情報表示部材として、例えば、パーソナルコンピューター、モバイル情報機器、テレビジョン、プロジェクター、モニター、カーナビゲーション、携帯電話、電子計算機や電子辞書の表示画面、情報掲示板、案内掲示板、機能表示板、標識板などのディスプレイ、デジタルカメラやビデオカメラの撮影画面など、あらゆる情報表示関連機器に多岐にわたって使用されている。それに伴い液晶カラーディスプレイに搭載されるCFもより鮮明性、透過性、コントラスト性などの画像性能面でより優れた品質が要求され、それとともに大きさも前記の用途の多様化から小型化および大型化がともに進行し、それら全てにおいてCFが安価に提供されることが要求されて来ている。
【0003】
CFの製造は、多くの場合「フォトリソグラフ法」と称される製造方法によっている。この方法で、加色混合方式のレッド色(R)、グリーン色(G)、ブルー色(B)の3原色の画素パターンを形成する場合には、3色のうちの1つの色の感光性カラーレジスト(感光性インク)をスピンコーターでCF基板に塗布し、次いで予め作成された対応する色の画素のパターンに一致した透光パターンを有するフォトマスクを介して紫外線照射して上記塗布レジスト膜を硬化させ、該塗布膜の未露光部分を洗浄および除去してその特定の色の画素パターンを現像する。残りの2種類についても上記の手段を繰り返してCFを作製する。イエロー色(Y)、マゼンタ色(M)およびシアン色(C)3原色の画素パターンを有するCFの形成も同様である。
【0004】
しかしながら、上記フォトリソグラフ法ではスピンコーターにより塗布されて対応する実際の画素パターンを形成する各レジストの量は、実際に使用されるレジストの、例えば、10%程度であり、大部分のレジストは廃棄され、非常に不経済であり、画素パターンを形成しているレジストは相対的に高価なものとなっている。
【0005】
上記課題の解決法としてレジストをスピンコートする代わりに、プラスチックフィルム上に全面塗布したR、G、Bそれぞれの着色膜をCF基板上に順次転写したり、CF基板上にスリットコーターで流し塗ることで、カラーレジストのロスを少なくする試みがなされている。しかしながら、いずれもフォトリソグラフ法で画素を形成しており、多くの工程を要するという課題は解決されていない。
【0006】
また、製造方式の合理化および経済性を目的として、印刷方式によるCFの製造も試みられたが、R、G、B3原色の印刷が一色毎に行なわれることから印刷された画素同士間にずれが生じたりするため、印刷画素の解像性や位置精度が低く、そのため3原色画素の微細さ、シャープさなどは不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、画素の微細さ、シャープさなどの画像特性に優れた性能を有するCFを合理化された工程で、経済的に安価に生産でき、また、CFの大型化に対応できる製造方式で製造し、CFおよび画像表示装置を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、CFの画素パターンの形成をセンターインプレッション型(センタードラム型)印刷機を使用し、特に画素パターンに合わせた空孔を有するマスクを通して印刷形成することにより極めて精度の高い画素パターンが形成され、画素の微細さ、シャープさなどの画像特性に優れた性能を有するCFが得られ、前記したような通常の印刷方法の必然的な欠陥である解像性および位置精度が不十分であることが解決されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
1.屈曲性を有するプラスチックフィルム上にセンターインプレッション型印刷機により、レッド色、グリーン色およびブルー色の3原色画素、或いはイエロー色、マゼンタ色およびシアン色の3原色画素からなるCFの画素パターンを印刷することを特徴とするCFの製造方法。
2.屈曲性を有するプラスチックフィルムが、転写または貼り付け用プラスチックフィルムであり、該フィルム上に印刷された画素パターンをCF基板に転写または貼り付けする前記1に記載のCFの製造方法。
3.画素パターンとポジ−ネガ関係にある空孔マスクを介して画素パターンを印刷した後、上記マスクを剥離する前記1に記載のCFの製造方法。
【0010】
4.センターインプレッション型印刷機が、センタードラムと該センタードラムの周囲にサテライト状に設置された3〜10基の印刷ユニットとからなる前記1に記載のCFの製造方法。
5.空孔マスクが、該プラスチックフィルム上にマスク用膜を形成した後、レーザアブレーション方法により画素パターンに対してネガ−ポジ関係にある空孔が形成されたマスクである前記3に記載のCFの製造方法。
6.空孔マスクが、プラスチックフィルム上に形成すべき画素パターンに相当する以外の領域に、膜を印刷して得られたマスクである前記3に記載のCFの製造方法。
7.空孔マスクが、貼着層を備え、該貼着層を介して該プラスチックフィルム上に固着されている前記3に記載のCFの製造方法。
【0011】
8.空孔マスクが、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体およびそれらのアンモニウム塩またはアミン塩からなる可溶性塩;(メタ)アクリル酸エステル−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート;ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコール−エチレン共重合体;親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル;およびエチレンオキサイド−アルキレン(C3、C4)オキサイド共重合体からなる群から選ばれた材料から形成されている前記3に記載のCFの製造方法。
【0012】
9.空孔マスクが、ポリエステル、ナイロン、ビニルアルコール共重合体、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選ばれた材料のプラスチックフィルムから形成されている前記3に記載のCFの製造方法。
10.空孔形成用マスクが、熱エネルギー線吸収性成分および/または自己燃焼性樹脂成分を含有する前記3に記載のCFの製造方法。
11.熱エネルギー線吸収性成分が、カーボンブラックおよび/または赤外線吸収性化合物である前記10に記載のCFの製造方法。
12.自己燃焼性樹脂成分が、ニトロセルロースである前記10に記載のCFの製造方法。
【0013】
13.センターインプレッション型印刷機が、画素パターンを有する印刷版を用いるフレキソ印刷方式、グラビア印刷方式およびオフセット印刷方式からなる群から選ばれる印刷方式を用いるタイプのものである前記1に記載のCFの製造方法。
14.センターインプレッション型印刷機が、液状インクジェットプリンティング方式、ディスペンサー注入プリンティング方式、塗布針液滴下プリンティング方式、静電方式液体プリンティング方式、熱転写プリンティング方式、静電方式粉体プリンティング方式およびソリッドインクジェットプリンティング方式からなる群から選ばれる印刷方式を用いるタイプのものである前記1に記載のCFの製造方法。
【0014】
15.色素およびバインダーを含むことを特徴とする、前記1〜14のいずれか1項に記載のCFの製造方法に使用するインク。
16.有機溶剤系インク、水性インク、無溶剤系インク或いは熱溶融性固体状インクである前記15に記載のインク。
17.色素が、顔料である前記15に記載のインク。
18.顔料が、レッド(R)、グリーン(G)またはブルー(B)画素の形成に使用される顔料であり、C.I.ピグメントレッド9、97、168、177、216、224、226、242、254からなるレッド顔料であり、C.I.ピグメントグリーン7、36からなるグリーン顔料であり、C.I.ピグメントブルー15:6、60からなるブルー顔料であり、C.I.ピグメントバイオレット23、サブフタロシアニンからなるバイオレット(V)顔料であり、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、113、114、117、125、138、139、150、154、180、185からなるイエロー(Y)顔料であり、さらに上記したレッド顔料とイエロー顔料との共沈顔料、グリーン顔料とイエロー顔料との共沈顔料、ならびにそれらの顔料の固溶体顔料および混晶顔料からなる群から選ばれる前記17に記載のインク。
【0015】
19.顔料が、イエロー(Y)、マゼンタ(M)またはシアン(C)画素の形成に使用される顔料であり、C.I.ピグメントイエロー62、74、93、128、155、185からなるイエロー顔料であり、C.I.ピグメントレッド122、146からなるレッド顔料とC.I.ピグメントバイオレット19からなるバイオレット顔料とからなるマゼンタ顔料であり、C.I.ピグメントブルー15:3からなるシアン顔料であり、さらに上記したイエロー顔料とシアン顔料との共沈顔料、レッド顔料とバイオレット顔料との共沈顔料およびシアン顔料とイエロー顔料の共沈顔料、ならびにそれらの顔料の固溶体顔料或いは混晶顔料である前記17に記載のインク。
20.顔料が、粗粒子顔料をニーダー中で水溶性塩および水溶性有機溶剤と共に混練および摩砕し、顔料の平均粒子径を10〜130nmに微細化して得られた顔料摩砕塊状物を水洗およびろ過して得られた微細化顔料の水性ろ過ケーキである前記17に記載のインク。
【0016】
21.顔料が、該顔料の水性ろ過ケーキを乾燥および粉砕した微細化粉体顔料である前記17に記載のインク。
22.顔料が、該顔料の水性ろ過ケーキを易分散性重合体と混合し共沈させた加工顔料である前記17に記載のインク。
23.顔料が、該顔料の微細化粉体を易分散性重合体と混練した加工顔料である前記17に記載のインク。
【0017】
24.バインダーが、反応性基、疎水性基および/または親水性基を有してもよいランダム、ブロックおよびグラフト共重合体;反応性基、疎水性基および/または親水性基を有してもよいオリゴマー、および付加重合性不飽和二重結合或いは付加縮合性エポキシ基を有する単量体、オリゴマーおよび/または重合体からなる群から選ばれた皮膜形成性物質である前記17に記載のインク。
25.顔料の平均粒子径が、10〜130nmである前記17に記載のインク。26.前記1〜14のいずれか1項に記載の方法で形成されたことを特徴とするCF。
27.前記26に記載のCFを装備していることを特徴とする画像表示装置。
28.前記27に記載の画像表示装置を装備した情報伝達機器。
【0018】
以下、本発明において、屈曲性を有するプラスチックフィルム或いは転写ないし貼り付け用プラスチックフィルムを「CF用フィルム」と、ガラス製CF基板或いはプラスチック製CF基板を「CF基板」と、或いは転写ないし貼り付け用プラスチックフィルムを「転写乃至貼り付け用フィルム」と称する場合がある。レッド色、グリーン色、ブルー色の3原色或いはイエロー色、マゼンタ色、シアン色の3原色画素をそれぞれ「R」、「G」、「B」、「Y」、「M」、「C」と称し、R、G、B画素ないしY、M、C画素を総称して「CF画素」、「画素パターン」或いは単に「画素」と称する場合がある。また、ブラックマトリックスを「BM」と称する場合がある。
【0019】
CFのR、G、B3原色の画素パターン或いはY、M、C3原色の画素パターンとしては、公知の画素パターンが使用され、文字やグラフィックなどの情報表示に適するストライプ配列、映像データー表示に適するモザイク配列或いはトライアングル配列などである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、CF用フィルムをそのまま使用して、或いは予めCF用フィルム上にCF画素のパターンに対してポジ−ネガ関係にある空孔マスクを固定し、CF用フィルムに直接または空孔マスクが固定されている場合にその空孔マスクを介してセンターインプレッション型印刷機により画素形成用インクを用いて3色の画素パターンを印刷し、上記マスクを使用した場合には、印刷後、マスクは取り除き、また、転写、貼付用フィルムを使用した場合には、上記フィルムの画素パターンをCF基板に転写ないし貼り付けしてCFを製造することができる。
【0021】
本発明方法が、印刷法によっているに拘わらず画素パターンを精度良く形成できる理由は、「CF用フィルム」はセンターインプレッション型印刷機のセンタードラムに押さえられて一緒に回転しつつ、3原色画素が連続に印刷されるので画素パターンは精度高く印刷される。さらに、CF用フィルム上に空孔マスクを形成した場合には、該3原色画素の空孔が色毎でなく1回の同時操作で精度良く形成され、また、マスクが該フィルムに固着されていることから、極めて精度の高い画素パターンが形成され、得られたCFは画素の微細さ、シャープさなどの画像特性に優れた性能を有する。
【0022】
また、経済的効果面から見ると、従来のCFの製造が有機溶剤系のカラーレジスト塗布−フォトリソグラフ法であり、数多くの長い製造工程を必要としているため、多大の初期投資が必要であり、また、ランニングコストも高かったのに比べ、本発明の製造方法は基本的には印刷方法であり、初期投資が比較的少なくて済み、また、製造工程も短く、合理化が達成でき、ランニングコストも安く、非常に経済的であり、安価にCFが提供できる。
【0023】
特にインクとして水性インクを使用する場合には、該インクの着色剤として微粒子化顔料の水性フィルターケーキが使用でき、鮮明性、色純度、光学濃度、透過性、コントラスト性などの光学特性に優れた画素を形成できるとともに、作業環境における衛生特性、火災の危険に対する安全性などに多大の設備投資が不要となり、製造工程の合理化効果もあいまって経済的効果が著しい。
【0024】
また、上記の通り昨今のカラーディスプレイ、カラーテレビジョンなどの画像表示装置の大型化に対応してCFの大型化が推進されているが、本発明のセンターインプレッション印刷方式による製造方法は、大きな投資を必要とせずにカラーディスプレイの大型化が容易に可能とするCFを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。センターインプレッション型印刷機を使用して3原色画素を印刷し、CFを製造する方法について以下に述べる。本発明を特徴づけるセンターインプレッション型印刷機の特長について説明する。図1を参照して、フレキソ印刷用のセンターインプレッション型印刷機を例にとって説明する。センタードラム1(中央圧胴)の周りに印刷ユニット2が、例えば、3基ないし10基がサテライト型に装着されている。
【0026】
上記印刷機によって印刷されるプラスチックフィルムの最大幅は、印刷機の設計によるが、例えば、250mmから1550mmで、最大印刷有効幅は、例えば、230mmから1520mmである。被印刷体であるフィルムは供給部から供給され、温度調節されたセンタードラムに巻きついて、その回転にあった速度で廻るので印刷中にフィルムにかかる張力、いわゆるテンションは変わらず、各印刷ユニット間でのフィルムの伸縮やたるみは起こりにくい。センタードラムの外側にサテライト型に装填されている各印刷ユニットからのインクでフィルムが印刷され、印刷フィルムは乾燥部に導入されて乾燥され、巻き取り部にて巻き取られる。そのため薄いフィルムでも見当精度に優れ、フィルム上に形成された画素パターンを構成する各画素が相互にずれずに印刷ができ、非常に好ましい。
【0027】
センタードラムに装着される印刷ユニットの数について説明する。上記画素パターンの印刷むらを避けるためには1色当り、2基以上の印刷ユニットを装着して、同じ色を繰り返し印刷することが好ましい。例えば、R、G、B3原色、或いはY、M、C3原色の画素パターンが印刷できるように6基以上の印刷ユニットがサテライト型に装着されているセンターインプレッション型印刷機が好ましい。さらに色濃度を上げるため、7基〜10基の印刷ユニットを3色に使用して一色を3回以上印刷することも可能である。
【0028】
センターインプレッション型印刷機による印刷方法としては、印刷ユニットとして従来公知の多くの印刷方式のいずれかの利用が可能である。例えば、(1)画素パターンを有する印刷版を使用する印刷方式で、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方式、および(2)画素パターンを吐出或いは転移させるプリンティング方式、例えば、液状インクジェットプリンティング方式、ディスペンサー注入プリンティング方式、塗布針液滴下プリンティング方式、静電方式液体プリンティング方式、熱転写プリンティング方式、静電方式粉体プリンティング方式、ソリッドインクジェットプリンティングインク方式などのプレートレス・プリンティング(印刷版を使用しない印刷)方式が挙げられる。
【0029】
印刷版を装備する印刷方式では、特にフレキソ印刷方式が好ましい。フレキソ印刷ユニットとしては、アニロックスローラーはセラミック スリーブ アニロックス ローラーで、その線密度が300から2500線/インチ、好ましくは400から1000線/インチ、版深は1から20μm、好ましくは2から10μmであり、また、印刷版がエンドレス・スリーブ型の樹脂製シームレス印刷版で画線密度が100から800線/インチ、好ましくは100から300線/インチである印刷ユニットが好ましい。インク供給装置としては、サイドシールされ、上下2枚のドクターの付いた完全密閉型で、インクの流入および排出は、孔の付いたインクドクターチャンバーで行なわれるインク供給装置を備えるのが好ましい。印刷は上記した印刷ユニットの据付けの構造からウェット・オン・ウェットで行なわれる。印圧は印刷画像にマージナルゾーンを作らないためにも低印圧(キスタッチ)が好ましい。乾燥方式は温風乾燥、加熱乾燥、紫外線硬化、電子線硬化、ガス乾燥などが使用される。
【0030】
上記センターインプレッション型印刷機による印刷に引き続いて、オンライン或いはオフラインで液晶カラーディスプレイを製造するために、オーバーコート層や透明電極層の塗布装置、接着剤の塗布装置、偏光フィルムなどのラミネート加工装置、カッティング装置など各種加工装置と連結することもできる。透明電極層の形成は、導電性材料として、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、インジウム錫オキサイドなどの公知の無機導電性微粒子材料を微分散したインクを用いて行なわれる。さらに、前記(2)の転写、貼り付け法の場合には、ガラス製CF基板或いはプラスチック製CF基板上への貼り付け加工装置、転写加工装置と連結し、連続的に加工をすることもできる。
【0031】
本発明における印刷によるCFの製造は、プラスチックフィルム上に直接印刷する方式および予め3原色画素パターンを印刷したフィルムをCF基板上に転写或いは該フィルムを貼り付けする方式がある。印刷に使用されるCF用フィルムとしてはセンターインプレッション型印刷機の回転に追従できる屈曲性を有し、印刷機でのフィルムの送り出し、方向転換、巻き取りなどの移送工程中に延びのないフィルムであれば使用可能である。フィルムとしてはポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、複合フィルムなど、公知のフィルムが使用される。フィルムの膜厚としてはフィルムの種類や加工にもよるが10〜300μmであり、好ましくは12〜150μmである。
【0032】
さらに精度の高い画素パターンの印刷を必要とする場合には、R、G、B画素或いはY、M、C画素の配列パターンに対してポジ−ネガ関係にある空孔マスクを使用することができる。該マスクは、例えば、以下の方法のいずれかの方法で作成される。
(1)CF用フィルム上に膜形成材料を塗布してマスク用膜(A)を形成するか、或いはマスク形成用フィルム(B)を貼り付けた後、マスク用膜(A)またはマスク形成用フィルム(B)をレーザアブレーションして画素パターンに対してネガ−ポジ関係にある空孔を形成させる方法、
(2)CF用フィルム上に印刷法などで空孔パターンを印刷し、画素パターン以外の領域に膜を形成してマスクを形成させる方法、
(3)マスク形成用フィルム(B)をレーザアブレーションして画素パターンに対してネガ−ポジ関係にある空孔を形成させ、これをCFフィルム上に貼り付ける方法などが挙げられる。
上記マスクの厚さは、形成する画素の厚みに対応して決められるが、凡そ1〜10μmである。
【0033】
上記の空孔マスクを介して画素パターンを印刷形成する方式について説明する。センターインプレッション型印刷機は、画素パターンを印刷する場合の位置見当をさらに精度良く再現することが望まれる場合に使用することが好ましい。前記した印刷版を使用して印刷する方式では、印刷後に不要になった空孔マスクを剥離し、取り除かれることから、マスク上に各画素を順次印刷した際にパターンの印刷精度が不十分であってもCF用フィルム上に形成される画素パターンは空孔の位置に精度良く形成される。また、印刷版のインクの付着領域を空孔よりやや大きく設定して製版しておくことなどで、通常のマスクを使用しない印刷中に起き易い画素のエッジ部分の盛り上がり、逆の肉薄れ、或いは滲みなどの印刷欠陥は、空孔の外側のマスク上に起り、上記と同様に印刷後不要となったマスクが剥離除去されることになり、上記欠陥を解消することも可能である。また、空孔に直接インクを注入する印刷方式は、空孔に適切な量のインクを注入することで、精度の高い画素パターンを形成することができる。空孔をはみ出したインクは上記と同様に、印刷後不要となったマスクとともに剥離除去される。
【0034】
上記のマスク用膜(A)の形成材料としては、続いて使用されるインクなどにより溶解や膨潤しないこと、画素を印刷した後、不要となったマスクを除去する際に使用する除去液に画素が侵されないことが必要である。また、マスクの除去液としては、さらに安全性、経済性などを考えると水や、水−低級アルコール(炭素数:1〜3)混合溶媒を使用するのが好ましく、そのためにはマスク用膜の形成材料としては親水性高分子材料が挙げられ、中でもカルボキシル基を有する共重合体であって、アルカリ性水溶液で除去できる共重合体が好ましい。
【0035】
上記共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体およびそれらのアンモニウム塩またはアミン塩などの可溶性塩類;(メタ)アクリル酸エステル−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート−フタレートなど;ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコール−エチレン共重合体など;親水性ポリウレタン、親水性ポリエステルなど;エチレンオキサイド−アルキレン(C3、C4)オキサイド共重合体などの公知の重合体が挙げられ、これらの重合体は、有機溶剤溶液や水溶液などの状態で使用される。
【0036】
また、マスク形成用フィルム(B)としては、続いて使用されるインクに溶解や膨潤しないフィルム材料が使用され、公知のフィルム材料、例えば、ポリエステル、ナイロン、ビニルアルコール共重合体、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムが使用される。
【0037】
マスク形成用フィルム(B)の場合は、これをCFフィルムへの貼り付けが必要となるが、マスク形成用膜(B)は印刷時に固定化される程度の接着強度であればよく、貼り付けには公知の貼り付けの接着方法が利用される。マスク形成用フィルム(B)は、画素パターンの印刷形成後にそれを剥離する必要があるため、貼り付けに際しては易剥離性を有する接着剤をCFフィルムに下塗りして貼り付ける方法が好ましい。
【0038】
また、マスクの製造に低エネルギーでレーザアブレーションを実施したい場合には、マスク形成用フィルムに熱エネルギー線吸収性成分および/または自己燃焼性樹脂成分を含有させることが好ましい。熱エネルギー線吸収性成分としてはカーボンブラック或いはシアニン化合物などの赤外線吸収性化合物が挙げられ、特に黒色顔料用、ゴム補強用などの公知のカーボンブラックが好ましい。また、自己燃焼性樹脂成分としては塗料用、インク用などの公知のニトロセルロースが好ましい。
【0039】
マスクの空孔の大きさについてはCFの用途に応じて設計される画素パターンによって決まるもので、特に制限されるものではなく、例えば、長径がおよそ30〜500μm、短径がおよそ10〜200μmであり、膜厚はおよそ0.2〜5μmである。
【0040】
本発明で用いられるインクに使用される材料について説明する。該インクを構成する成分としては、色素、バインダー、および必要に応じて添加される重合体系分散助剤、色素分散剤、液状媒体を含む。色素としては耐熱性、耐光性、耐溶剤性などの堅牢性に優れている点から特に顔料が好ましい。顔料を使用してインクとする場合には、バインダー、顔料分散剤および液状分散媒体が使用される。該液状分散媒体の種類或いは有無により、有機溶剤系インク、水性インク、付加重合或いは付加架橋性(すなわち、無溶剤系)インク或いは熱溶融性固体状インクに分類される。
【0041】
R、G、B画素用、Y、M、C画素用のインクに含有される色素について説明する。従来のCFのR、G、B画素用およびY、M、C画素用色素として使用されてきた有機顔料、染料、無機顔料などが同様に使用される。例えば、顔料では、不溶性アゾ系、溶性アゾ系、高分子量アゾ系などのアゾ系顔料、キナクリドンレッド系、キナクリドンマゼンタ系などのキナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系、フタロシアニングリーン系などのフタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジンバイオレットなどのジオキサジン系顔料、キノフタロンイエロー顔料、ニッケルアゾエローなどの錯体顔料など、従来公知の顔料が使用できる。また、印刷方式でBMを形成する場合に使用される黒色顔料としては、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料などの従来公知の黒色顔料が使用される。
【0042】
分散性染料、油溶性染料、水溶性染料についてもR、G、B色、Y、M、C色として従来公知の染料類を単独で或いは顔料に配合して使用してもよい。染料は顔料に比べて各種堅牢性に劣るが、色調の鮮明性、冴え、色の透過率、コントラスト性などの光学特性に優れるので顔料と各種染料がそれぞれの特長を生かして使用される。
【0043】
液晶カラーディスプレイに使用されるCFとしては、画像表示部材として人の感じる色を放射することが必要である。バックライト光源として使用される、例えば、三波長蛍光灯のエネルギー分布におけるR、G、Bに対応する発光波長は610nm、540nm、430nm〜480nmであることから、使用される色素の色調としては、上記の発光波長の色および上記発光波長範囲での好ましい波長の色、例えば、レッド画素は610nm、グリーン画素は540nm、ブルー画素は460nmにそれぞれ合わせることが好ましい。従って、CFの画素を形成する色素としては上記の対応する色の波長での透過率が高く、物性の優れた色素、特に顔料が使用される。
【0044】
上記したR、G、Bを形成する顔料としては多くの顔料が挙げられるが、代表的な顔料の具体例としては、レッド顔料としてC.I.ピグメントレッド(以下、PRと称する。)9、97、177、168、216、226、242、254であり、グリーン顔料としてC.I.ピグメントグリーン(以下、PGと称する。)7、36など、ブルー顔料としてC.I.ピグメントブルー(以下、PBと称する。)15:6、60など、バイオレット顔料としてC.I.ピグメントバイオレット(以下、PVと称する。)23、サブフタロシアニン、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー(以下、PYと称する。)20、24、83、93、109、110、113、138、139、150、154、180、185が挙げられ、さらに上記したレッド顔料とイエロー顔料との共沈顔料、グリーン顔料とイエロー顔料との共沈顔料、これらの顔料の固溶体顔料或いは混晶顔料が挙げられる。
【0045】
Y、M、Cの各画素を形成するために有用な顔料の代表的具体例としては、イエロー顔料としてPY62、74、93、128、155、185、マゼンタ顔料としてPR122、146、PV19、シアン顔料としてPB15:3が挙げられ、さらに上記したイエロー顔料とシアン顔料との共沈顔料、マゼンタ顔料とバイオレット顔料との共沈顔料、シアン顔料とイエロー顔料との共沈顔料、これらの顔料の固溶体顔料或いは混晶顔料が挙げられる。上記したBMを形成する黒色顔料の代表的具体例としてC.I.ピグメントブラック(以下、PBKと称する。)6、7、11、26が挙げられる。
【0046】
本発明に使用される好ましい顔料は微粒子化された顔料である。本発明では、顔料合成工程、顔料化工程を経て製造された粉体粗顔料或いは通常の塗料や合成樹脂用の着色剤の用途に使用され得る粉体顔料であっても、顔料の微粒子化工程に施される顔料は全て「粗粒子顔料」と称する。微粒子化顔料としては、例えば、これらの粗粒子顔料をニーダー中で水溶性塩粉末および沸点が好ましくは150℃以上の水溶性有機溶剤とともに混練および摩砕し、顔料の平均粒子径を10〜130nm、好ましくは20〜110nmに微細化して得られた顔料摩砕塊状物を水洗、ろ過して得られた微細化顔料の水性ろ過ケーキ或いはさらにそれを乾燥、粉砕した微細化顔料、或いは易分散性重合体と共沈または混練した加工顔料が使用される。
【0047】
上記で得られた微細化顔料の水性ろ過ケーキ或いは該水性ろ過ケーキを易分散性重合体と共沈または混練した加工顔料を、顔料のアニオン性或いはカチオン性誘導体である顔料分散助剤を併用することなく、疎水性セグメントである親顔料性基および/または親顔料性分子鎖を有する水性重合体分散剤とともに分散して水性顔料分散液を得ることが可能である。この水性分散液をそのまま、または必要に応じてバインダーを添加してCF用水性顔料インクを提供することができる。このCF用水性顔料インクを使用すると、鮮明性、色純度、光学濃度、透過性、コントラスト性などの光学特性に優れた画素パターンが得られる。後述するように、上記の水性重合体分散剤は、親顔料性と疎水性セグメントの疎水性効果によって、上記分散剤が顔料表面に固着し、顔料の微分散性を安定化させるものと考えられる。
【0048】
バインダーについて説明する。インクが乾燥固着型インクの場合には、バインダーは従来公知の乾燥固着型バインダーが使用され、これらのバインダーは溶剤溶液、水溶液、エマルジョン、ラテックス或いは固体状熱溶融性樹脂の形で使用された皮膜形成性重合体であり、また、該皮膜形成性重合体が反応基を有する或いは有しないランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体であり、必要に応じてさらに架橋剤を含有するバインダーであり得る。
【0049】
また、インクが重合型インクの場合に使用するバインダーとしては、従来公知の付加重合或いは付加架橋性を有する不飽和二重結合或いは重合性環状エーテル基を有する単量体、オリゴマーおよび/または重合体、さらに必要に応じて添加される重合開始剤、液状媒体からなる付加重合或いは付加架橋性バインダーが挙げられる。付加重合或いは付加架橋性インクとして、熱重合型、レーザー熱線重合型、紫外線重合型、光カチオン重合型、電子線重合型などの加熱或いはエネルギー線硬化性インクなどが挙げられる。
【0050】
高分子系色素分散剤は、分子中に親色素性基および/または親色素性分子鎖、および親媒性基および/または親媒性分子鎖を有するランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体である。色素分散性と色素固着性などのような複数の機能を1成分で有する上記分散剤を使用することもできる。インクにおける色素の使用量は一概に決められるわけではないが、彩度、発色濃度を満足させ、かつインクの粘度および保存安定性を満足させる添加量であることが望ましい。色素として顔料を使用する場合には、顔料の使用量は全インク組成物に対して2〜30質量%、好ましくは5〜25質量%である。
【0051】
前記バインダーまたは高分子分散剤を構成する好ましい単量体について説明する。単量体に含まれる疎水性基は、有機溶剤性インクでは親媒性基として作用し、水性インクでは親色素性基として作用する。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族系ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルキル(炭素数1〜30)エステル、およびシクロアルキル(炭素数4〜20)エステル、アルキルシクロアルキル(炭素数6〜20)エステル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのアルキレンが挙げられ、疎水性分子鎖を有するマクロモノマーとしては、上記で示した疎水性基を有する単量体の単独或いは共重合体鎖にα,β−エチレン性不飽和基を結合したマクロモノマーが挙げられる。重合性環状エーテル基を有する単量体としてはエポキシ化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0052】
水性インクに使用されるバインダーには親水性基および/または親水性分子鎖が導入される。例えば、アニオン性親水基を有する単量体としては上記したα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸など;ノニオン性親水基を有する共単量体としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール)メタクリレート、(メタ)アクリルアミドなど;カチオン性親水基を有する共単量体としてはN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジンなどが挙げられ、親水性分子鎖を有するマクロモノマーとしては、上記で示した親水性基を有する単量体の単独或いは共重合体或いは親水性基を有する単量体と上記の疎水性基を有する単量体との共重合体にα,β−エチレン性不飽和基を結合したマクロモノマーなどが挙げられる。
【0053】
架橋剤と反応する基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸、マレイン酸など、水酸基を有する2−ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなど、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレートなど、メチロール基を有するN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなど、シラニル基を有するγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなど、イソシアネート基を有するイソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナト−2(p−イソプロペニルフェニル)プロパンなどが挙げられる。架橋剤と反応する基を有するマクロモノマーとしては、上記で示した反応性基を有する単量体の単独或いは共重合体或いは反応性基を有する単量体と上記の疎水性基を有する単量体との共重合体にα,β−エチレン性不飽和基を結合したマクロモノマーなどが挙げられる。
【0054】
架橋剤としては、エポキシ基を有する、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなど、メチロール基を有する、メトキシメチロールメラミン、ブトキシメチロールメラミンなど、カルボジミド基を有する、ポリヘキサメチレンカルボジイミドジイソシアネートとビス(モノメトキシポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンソルビットモノラウレート)とのウレタン反応生成物である多分岐型ポリカルボジイミドなど、イソシアネート基を有するトリメチロールプロパン−トリス(トリレンジイソシアネート)アダクト、トリメチロールプロパン−トリス(ヘキサメチレンジイソシアネート)アダクトのフェノールマスクッドイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
使用されるインクの分散媒体については、油性インクで使用される有機溶剤媒体としては、例えば、炭素数1〜10のアルコール類;炭素数2〜6のアルキレングリコール類、ポリアルキレン(炭素数:2〜6)グリコール類、それらのグリコール類のモノアルキル(炭素数:1〜10)エーテル類、ジアルキル(炭素数:1〜10)エーテル類、モノアルキル(炭素数:1〜10)エーテルモノアシレート類;有機酸(炭素数:1〜6)アルキル(炭素数:1〜6)エステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アルカン系炭化水素(炭素数:6〜10)、アイソパー、シェルゾールなどの脂肪族炭化水素系溶剤;シクロアルカン(炭素数:6〜10)などの脂環式炭化水素系溶剤;芳香族炭化水素(炭素数:7〜10)溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの含窒素系溶剤が挙げられる。
【0056】
水性インクで使用される水性媒体は、水、水と水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては、脱イオンされた水であるイオン交換水、蒸留水などを使用するのが好ましい。また、水性混合溶媒に使用される水溶性有機溶剤としては、従来公知の水溶性有機溶剤、例えば、(炭素数:1〜3)アルコール類;(炭素数:2、3)グリコール類;グリセリン;アルキレン(炭素数:2、3)グリコールアルキル(炭素数:1〜4)エーテル、ポリアルキレン(炭素数:2、3)グリコールアルキル(炭素数:1〜4)エーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどの含窒素溶剤が挙げられる。
【0057】
熱重合型インク、紫外線硬化型インクや電子線硬化型インクなどのエネルギー線付加重合或いは付加架橋性インクについて述べる。これらの公知の熱重合型および紫外線硬化型、光カチオン重合型、電子線硬化型などのラディエーションキュアリング型インクは、色素、色素分散剤および硬化反応を起こし得るα,β−不飽和二重結合或いはエポキシ基を有する付加重合性単量体、付加重合性オリゴマーおよび/または付加架橋性重合体からなるバインダー前駆体、硬化システムの形態に応じて添加される従来公知の重合開始剤および必要に応じて添加される上記以外の添加剤、希釈溶剤からなる硬化性インクである。
【0058】
顔料を使用する熱重合型、紫外線硬化型、電子線硬化型インクでは、例えば、顔料が10〜20質量%、付加重合性単量体20〜50質量%、付加重合性オリゴマーや可溶性樹脂10〜40質量%、重合開始剤を使用する場合には3〜10質量%、さらに必要に応じて上記以外の添加剤、希釈溶剤を添加してインク化される。使用される付加重合性オリゴマーや多官能性単量体としては、(テトラメチレングリコール−ヘキサメチレンジシソシアネート系ポリウレタン)−ビスアクリレートなどのウレタンアクリレート系、ビスフェノールA系エポキシ樹脂−ビスアクリレート、フェノールノボラック系エポキシ樹脂−ポリアクリレートなどのエポキシアクリレート系、ポリ(ヘキシレンイソフタレート)−ビスアクリレート、(トリメチロールプロパン−アジピン酸系ポリエステル)−ポリアクリレートなどのポリエステルアクリレート系などのアクリル系オリゴマー、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのポリアクリレート系などが挙げられる。
【0059】
光カチオン重合型顔料インクでは、例えば、顔料が10〜20質量%、脂環式ジエポキシ化合物40〜60質量%、オキセタン化合物5〜20質量%、重合開始剤および増感剤2〜5質量%、必要に応じて上記以外の添加剤、希釈溶剤を含有する。上記脂環式ジエポキシ化合物としては3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、リモネンジオキサイドなどであり、上記オキセタン化合物としてはオキセタンアルコール、ジオキセタン、フェニルオキセタン、キシリレンジオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタンなどが挙げられる。
【0060】
上記のエネルギー線重合型インクに使用される重合開始剤としては従来公知の開始剤が使用される。好ましいものとして、例えば、熱重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノイソバレリン酸、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートなど、光重合開始剤としてはベンジルケタール、α−ヒドロキアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなど、光カチオン重合開始剤としてはトリアリールスルフォニウム塩、アリールヨードニウム塩など、増感剤として1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0061】
本発明の顔料インクの製造に使用する顔料分散機としては、公知の分散機、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミルなどの縦型媒体分散機、「ダイノミル」(商標、シンマルエンタープライズ社製)、横型ビーズミルなどの横型媒体分散機、ロールミル、超音波ミル、高圧衝突分散機などが使用される。上記の分散機の一種を使用して複数回分散処理する方法、或いは二種以上の分散機を複合させる方法で顔料が分散される。本発明において、望ましい顔料の分散粒子径は、インク中の顔料の沈降性、保存中の凝集性など、およびCFの画素の光学濃度、彩度、鮮明性、透過性、コントラスト性などの表示画像の品質を考慮すると、平均粒子径で10〜130nm、好ましくは20〜110nmであり。さらに好ましくは、平均粒子径100nm以下で、かつ150nm以上の粒子が殆どないことがさらに好ましい。所望の粒度分布を有する顔料の分散体を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、また、処理時間を長くする、吐出速度を遅くする、粉砕後フィルターや超遠心分離機などで分級、分離するなどの手法が用いられる。または、それらの手法の組み合わせが挙げられる。
【実施例】
【0062】
次に具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、文中の「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
実施例1
(a)顔料の微細化処理
顔料としてPR254、PG36、PY138、PY139、PB15−6およびPV23を準備し、順次下記の方法で微細化処理を行なった。各顔料100部を塩化ナトリウム粉末400部およびジエチレングリコール130部とともに加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合し、次いで加圧蓋を閉じて圧力6kg/cm2で内容物を押さえ込みながら混練および摩砕を開始した。
【0063】
内容物が40〜45℃になるように冷却水温度および冷却水量を管理しながら7時間混練・摩砕処理を行った。得られた摩砕物を80℃に加温した3000部の2%硫酸中に投入して1時間の攪拌処理を行った後、ろ過および水洗をして塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去した。これらの操作を繰り返し、PR254、PG36、PY139、PB15−6およびPV23の各顔料のプレスケーキを得た。この各顔料のプレスケーキについてノニオン活性剤を顔料に対して200%添加し、水で希釈し、超音波分散して顔料分散液を調製した。粒度測定機器「ModelN−4」(商品名;コールター社製)で、そのように調製した5種類の顔料分散液の平均粒子径をそれぞれ測定したところ、平均粒子径は50〜80nmであった。
【0064】
(b)顔料分散液の調製
下記の表1の材料を使用し、各色の顔料分散液を調製した。表1に記載の顔料は上記(a)の顔料プレスケーキを使用した。各顔料プレスケーキ中の顔料分は35〜45%であった。追加のイオン交換水はプレスケーキの水分を計算し、不足分を補うために加えた。具体的には各顔料分散液を以下の通りに調製した。表1に記載の材料を記載の部数配合し、ディゾルバーで2時間攪拌して、顔料の塊がなくなったことを確認後、横型媒体分散機「ダイノミル1.4リットルECM型」(商品名;シンマルエンタープライゼス社製)にてジルコニア製ビーズ(径0.65mm)を使用し、周速14m/sで分散処理を行った。調製において使用した水性樹脂顔料分散剤−1は、ベンジルメタクリレート−エチルメタクリレート−(2−エチルヘキシル)メタクリレート−(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート−メタクリル酸アンモニウム共重合体(質量比;30:20:20:10:20、重量平均分子量;約8,000)の水性溶液(固形分50%、溶液の媒体;水:n−ブタノール:イソプロパノール=3:2:1)である。
【0065】

得られた各色の顔料分散液を粒度測定機器「ModelN−4」で平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は40〜70nmであった。
【0066】
(c)水性フレキソ顔料インクの調製
下記の表2の配合に従い、R、G、Bの水性フレキソ顔料インクを調製した。R、G、Bインクは要求されるCFの光学的な透過波長特性に合わせて夫々2種類の顔料分散液を配合し、色調を調整した。具体的には各水性フレキソ顔料インクを以下の通りに調製した。材料を十分攪拌した後、ポアサイズ5μmのメンブランフィルターで濾過を行い、その色の水性フレキソ顔料インクを得た。これらの操作を繰り返してR、G、B各色の水性フレキソ顔料インクを得た。調製において使用した皮膜形成材−1はメチルメタクリレート−エチルメタクリレート−(2−エチルヘキシル)メタクリレート−(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート−メタクリル酸共重合体(質量比;25:40:20:10:5、固形分40%)の乳化重合液である。
【0067】

【0068】
上記で得られたR、G、Bの水性フレキソインクについて、色調や各種光学特性を調べるために、夫々のインクをポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターで均一に塗布し、乾燥した。各インクとも鮮明性、色純度、光学濃度、透過性、コントラスト性などの光学特性に優れた性能を示した。
この要因としては、上記の各水性のフレキソ顔料インクでは、(a)の工程で顔料を加圧ニーダー中で混練磨砕した微細化顔料の水性プレスケーキをそのまま使用し、さらに横型媒体分散機にて分散処理をして顔料分散液を製造しているので、分散した顔料の粒子径は非常に微細にすることができたこと、および(b)の顔料分散液の調製で溶剤系の顔料インクでは必要な顔料のイオン性誘導体を水性のフレキソ顔料インクでは添加する必要がないので本来の顔料の色調を出すことができたものと考えられる。
【0069】
(d)フレキソ印刷による画素転写用フィルムの製造
6基の印刷ユニットがセンタードラムの周囲に装着されているセンターインプレッション(以下、「CI型」と略称する。)型フレキソ印刷機を使用した。R、G、B3原色の画素パターンを形成するための印刷ユニットとしては印刷の品質を向上させるため1色に付き2ユニットを使用して重ね刷りを行なった。樹脂製エンドレス印刷版としてはコンピューター画面で作成された3原色のストライプ配置の画素パターンから各色につき2個の樹脂版が製版された。各印刷ユニットに、セラミック製アニロックスローラーおよび上記で製版した対応するスリーブ型樹脂製エンドレス印刷版を装着した。マージナルゾーンの発生を避けるため、各印刷ユニットを、印刷を低印圧で行なうように調整した。
【0070】
それぞれ2個の印刷ユニットからなる3組の印刷ユニットを、上記(c)で調製されたR水性フレキソインク−1、G水性フレキソインク−1およびB水性フレキソインク−1の各インク貯槽とそれぞれ連結し、6個の印刷ユニットをそれぞれ対応するインク供給装置に装填した。各インク供給装置はサイドシールされた上下にドクターブレードの付いた完全密閉型である。印刷用フィルムとして、予めポリビニルアルコールを剥離層として塗布したポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する。)フィルムを準備した。フィルムは上記印刷機のフィルム供給部から供給され、センタードラムの回転に合わせて廻り、その結果、R、G、Bの各色をウェット・オン・ウェットで重ね刷りされ、乾燥部に導入されて乾燥され、巻き取り部にて巻き取られた。剥離層の上に画素パターンが印刷されたPETフィルム(以下、「転写フィルム1」と称する。)が得られた。
【0071】
(e)転写方式によるCFの調製
次いで上記で得られた転写フィルム1の印刷面の全面にグラビア印刷機を使用して熱硬化性アクリル系接着剤を塗布した。クロム蒸着によるブラックマトリックスが形成されたガラス製CF基板に、そのブラックマトリックスに画素パターンを合わせて、転写フィルム1の接着剤塗布面を脱気しながら密着させた。加熱処理を行い、熱硬化性アクリル系接着剤を硬化させた。次いで、PETフィルムを剥離し、画素パターンに付着している剥離層のポリビニルアルコールを純水にて溶解、除去し、乾燥し、ガラス基板に画素パターンが転写されたガラス製CFを得た。
【0072】
実施例2
(a)画素転写用フィルムの空孔マスクの調製
予めポリビニルアルコール−メチロールメラミン系初期縮合物(7:3)の水溶液をPETフィルムに塗布し、該初期縮合物を焼付け硬化させて剥離層を形成させたPETフィルムを準備した。その上に、t−ブチルメタクリレート−スチレン−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(50:10:40)共重合体:ニトロセルロース:カーボンブラック顔料(5:4:1)の40%メチルエチルケトン溶液を乾燥膜厚でほぼ8μmになるように均一に塗布し、自己燃焼型マスク用膜を形成させた。次いで、コンピューター画面で作成されたR、G、B3原色のストライプ配置の画素パターンに従い、低エネルギーレーザによりマスク用膜をレーザアブレーションして空孔マスクを形成させた画素転写用フィルムを得た。
【0073】
(b)フレキソ印刷による転写フィルムの製造
実施例1(d)の画素の印刷操作に準じてCI型フレキソ印刷機を用いた。上記(a)で得られた空孔マスクを形成させた画素転写用フィルムをCI型フレキソ印刷機のフィルム供給部から供給され、センタードラムの回転に合わせて廻り、実施例1(c)のR水性フレキソインク−1、G水性フレキソインク−1およびB水性フレキソインク−1を使用してウェット・オン・ウェットで重ね刷りされ、乾燥部に導入されて送風乾燥した後、水中に浸漬され、余分の乾燥インクのついた空孔膜層を剥離させ、取り除き、洗浄、乾燥した。次いで、加熱乾燥機に導入し、画素が印刷されてるコーティング膜は180℃にて焼付け、硬化され、剥離層の上にR、G、B3原色の画素パターンが印刷されたPETフィルム(以下、「転写フィルム2」と称する。)が得られた。
【0074】
(c)転写方式によるCFの調製
次いで実施例1(e)に準じて、上記(a)で得られた転写フィルム2の全面に接着剤を塗布し、クロム蒸着によるBMが形成されたガラス製CF基板に転写フィルム2を貼り付け、PETフィルムを剥離し、洗浄し、乾燥し、ガラス基板に画素が転写されたガラス製CFを得た。
【0075】
実施例3
(a)レッド、グリーンおよびブルー顔料分散液の調製
下記の表3の配合に従い、レッド顔料混合物、グリーン顔料混合物或いはブルー顔料混合物を用いて、重合体−2溶液およびイオン交換水を配合し、ディゾルバーで2時間攪拌して、顔料の塊がなくなったことを確認後、実施例1で使用した横型媒体分散機を使用し、周速14m/sで分散処理を行った。400メッシュステンレススクリーンで濾過を行なった。この操作を繰り返して、赤色、緑色および青色顔料分散液を調製した。この各色の顔料分散液を粒度測定機器N−4で平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は80〜110nmであった。顔料分散剤溶液として使用した重合体−2溶液はスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸アルキルエステル共重合体(酸価97、重量平均分子量:約32,000)100部をブチルセロソルブ50部、ブチルカルビトール50部、中和用のアンモニア水および水の合計150部を混合し、80℃、5時間で40%水性樹脂溶液に加熱溶解して調製した。
【0076】

【0077】
(b)インクジェット印刷用インクの調製
上記(a)で得られた赤色、緑色および青色顔料分散液53.6部に対し、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル5部、「サーフィノール465」(商品名;エア・プロダクツ社製)0.5部、水40.4部、メタノール0.5部の混合液を加え、十分攪拌した後ポアサイズ5μmのメンブランフィルターで濾過を行い、レッド、グリーンおよびブルー顔料インクジェットプリンター用インク(以下、「IJインク」と略称する。)をそれぞれ調製した。
【0078】
(c)転写フィルムの調製
R、G、B3原色画素パターンを形成するため、ピエゾ方式IJプリンターユニットが装着されているCI型IJ印刷機を準備した。IJプリンターユニットとしては1色に付き2ユニットを使用して重ね刷りを行なった。それぞれ2台のプリンターユニットからなる3組のプリンターユニットを上記(b)で調製された赤色、緑色および青色顔料IJインクの各インク貯槽とそれぞれ連結し、対応するインク供給装置に装填した。印刷用フィルムとして、実施例1で使用したものと同じ種類のポリビニルアルコールを剥離層として塗布したPETフィルムを使用した。フィルムはCI型印刷機のフィルム供給部から供給され、センタードラムの回転に合わせて廻り、コンピューター画面で作成された画素パターンに基づきIJプリンターヘッドよりR、G、Bの各色インクを吐出した。各色がプリントされた後、乾燥部に導入されて乾燥され、巻き取り部にて巻き取られた。剥離層の上にR、G、B3原色の画素パターンが印刷されたPETフィルム(以下、「転写フィルム3」と称する。)が得られた。
【0079】
(d)転写方式によるCFの調製
次いで実施例1(e)に準じて、上記(c)で得られた転写フィルム3の印刷面の全面に接着剤を塗布し、クロム蒸着によるBMが形成されたガラス製CF基板に転写フィルム3を貼り付け、PETフィルムを剥離し、洗浄し、乾燥し、ガラス基板に画素が転写されたガラス製CFを得た。
【0080】
実施例4
(a)転写フィルムの調製
実施例3(c)のCI型IJ印刷機を使用したR、G、B3原色画素パターンに印刷において、印刷用フィルムとして、実施例2で使用したものと同じ種類の剥離層およびレーザーアブレーションで空孔を形成させたPETフィルムを使用した。コンピューター画面で、レーザアブレーションされた空孔よりやや大きめに作成された画素パターンに基づきIJプリンターヘッドよりR、G、Bの各色インクを吐出した。各色がプリントされて後、プリントされたフィルムは乾燥部に導入されて送風乾燥の後、水中に浸漬され、余分の乾燥インクのついたマスク用膜を剥離させ、取り除き、洗浄、乾燥した。次いで、加熱乾燥機に導入し、画素パターンは焼付け、硬化され、剥離層の上にR、G、B3原色の画素パターンが印刷されたPETフィルム(以下、「転写フィルム4」と称する。)が得られた。
【0081】
(b)転写方式によるCFの調製
次いで実施例1(e)に準じて、上記(a)で得られた転写フィルム4の全面に接着剤を塗布し、クロム蒸着によるBMが形成されたガラス製CF基板に転写フィルム4を貼り付け、PETフィルムを剥離し、洗浄し、乾燥し、ガラス基板に画素が転写されたガラス製CFを得た。
【0082】
実施例5
(a)グラビヤ印刷により空孔の形成されたフィルムの調製
硬化メチロールメラミン−ポリビニルアルコール初期縮合生成物の剥離層を形成させたPETフィルム上に、グラビヤ印刷機を使用してメチルメタクリレートー2−エチルヘキシルメタクリレート−メタクリル酸(50:20:30)共重合体の30%イソプロパノール溶液を使用してR、G、B画素パターンの空孔を印刷し、空孔マスクの形成された剥離性PETフィルムを得た。
【0083】
(b)転写フィルムの調製および転写方式によるCFの調製
実施例4と同様にして調製した。CI型IJ印刷機を使用して上記(a)で得られた空孔マスクの形成された剥離性PETフィルム上にR、G、B画素を順次インクジェット印刷した。次いで空孔マスク層を除去し、R、G、B画素パターンが印刷された転写フィルム(以下「転写フィルム5」と称する。)を得た。次いで、転写フィルム5に接着剤を塗布し、クロム蒸着によるBMが形成されたガラス製CF基板に転写フィルム5を貼り付け、PETフィルムを剥離し、洗浄し、乾燥し、ガラス基板に画素が転写されたガラス製CFを得た。
【0084】
実施例6
(a)空孔膜貼り付けによる空孔マスクフィルムの調製
予めレーザーアブレーション法でR、G、B画素パターンの空孔を空けたポリイミドフィルムを準備し、硬化メチロールメラミン−ポリビニルアルコール初期縮合生成物の剥離層を形成させたPETフィルム上に貼着させ、空孔マスクの形成された剥離性PETフィルムを得た。
【0085】
(b)転写フィルムの調製および転写方式によるCFの調製
実施例4と同様にしてCI型IJ印刷機を使用して上記(a)で得られた空孔マスクの形成された剥離性PETフィルム上にR、G、B画素を順次インクジェット印刷した。ついで空孔マスク層を剥離し、R、G、B画素パターンが印刷された転写フィルム(以下「転写フィルム6」と称する。)を得た。次いで、転写フィルム6に接着剤を塗布し、クロム蒸着によるBMが形成されたガラス製CF基板に転写フィルム6を貼り付け、PETフィルムを剥離し、洗浄し、乾燥し、ガラス基板に画素が転写されたガラス製CFを得た。
【0086】
上記実施例1〜6で得られたガラス製CFは常法に従ってその上に全面オーバーコート層を塗布し、ITO透明電極膜をスパッタリング蒸着で形成して、CFを製造した。これらのCFを装着して液晶ディスプレイ装置を製造した。これらのCFは合理的、経済的な、また、大型化に対応できる製造方式で製造されるので通常のモニター用液晶ディスプレイは勿論、液晶ディスプレイの大型液晶ディスプレイであっても安価に提供することができる。
【0087】
実施例7
上記実施例1〜6においてガラス製CF基板に代えて、プラスチック製CF基板、具体的にはメチルメタクリレート製、ポリカーボネート製、ポリエステル製のCF基板にRGB3原色画素パターンを転写して実施例1〜6と同様にして夫々プラスチック製CFを製造した。
実施例8
上記実施例1〜6においてPET製転写用フィルムに換えて屈曲性を有するPETシート製CF基板を使用して直接R、G、B画素を印刷機印刷あるいはインクジェット方式で印刷を行なう以外は実施例1〜6と同様にして夫々のPET製CFを製造した。
実施例7および8で得られたプラスチック製のCFは、常法に従ってその上に全面オーバーコート層を塗布し、ITO透明電極膜を印刷法で形成して、CFを製造した。これらのCFを装着させて液晶ディスプレイ装置を製造した。これらのCFは同様に合理的、経済的な、また、大型化に対応できる製造方式で製造されるので通常のモニター用液晶ディスプレイは勿論、液晶ディスプレイの大型液晶ディスプレイであっても安価に提供することができる。
【0088】
実施例9
実施例1(a)で使用した顔料に代えて、PY128、PR122およびPB15−3を使用して実施例1(a)と同様に顔料の微細化処理を行い、(b)と同様に顔料分散液の調製を行い、(c)と同様にしてイエロー、マゼンタ色およびシアン色の水性フレキソ顔料インクを調製した。次いで実施例1(d)および実施例2(b)と同様にしてフレキソ印刷によるY、M、C画素転写用フィルムを製造し、実施例1(e)および実施例2(c)と同様にして転写方式によるY、M、C画素のCFを調製した。同様にして実施例3(b)に従いイエロー、マゼンタ色およびシアン色のインクジェット印刷用インクを調製し、実施例3(c)および実施例4(a)、実施例5(b)および実施例6(b)の転写フィルムの調製に従ってY、M、C画素転写フィルムを製造し、実施例3(d)、実施例4(b)、実施例5(b)および実施例6(b)と同様にして転写方式によるY、M、C画素のCFを調製した。
【0089】
実施例10
上記実施例9においてガラス製CF基板に代えてプラスチック製CF基板、具体的的には、メチルメタクリレート製、ポリカーボネート製、ポリエステル製のCF基板にYMC3原色画素パターンを転写し実施例9と同様にしてて夫々のY、M、C画素のプラスチック製CFを調製した。
実施例11
上記実施例9においてPET製転写用フィルムに換えて屈曲性を有するPETシート製CF基板を使用して直接Y、M、C画素を印刷機印刷あるいはインクジェット方式で印刷を行なう以外は実施例9と同様にして、夫々のPET製のY、M、C画素のCFを製造した。
上記実施例9、10および11で得られたCFを使用して常法により反射型液晶ディスプレイのCFを製造し、反射型液晶ディスプレイ装置が製造された。これらのCFは合理的、経済的な、また、液晶ディスプレイの大型化に対応できる製造方式で製造されるので通常の反射型のモニター用液晶ディスプレイは勿論、反射型大型液晶ディスプレイであっても安価に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、CFの画素パターンをセンターインプレッション型(センタードラム型)印刷機を使用し、特に画素パターンに合わせた空孔を有する固定されたマスクを通して印刷することにより極めて精度の高い画素パターンが形成され、画素の微細さ、シャープさなどの画像特性に優れた性能を有するCFが得られ、前記したような通常の印刷方法の必然的な欠陥である解像性および位置精度が不十分であることが解決される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の製造方法を実施するのに有用なセンターインプレッション型(センタードラム型)印刷機の基本構造を説明する図。
【符号の説明】
【0092】
1:センタードラム
2:印刷ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲性を有するプラスチックフィルム上にセンターインプレッション型印刷機により、レッド色、グリーン色およびブルー色の3原色画素、或いはイエロー色、マゼンタ色およびシアン色の3原色画素からなるカラーフィルターの画素パターンを印刷することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項2】
屈曲性を有するプラスチックフィルムが、転写または貼り付け用プラスチックフィルムであり、該フィルム上に印刷された画素パターンをカラーフィルター基板に転写または貼り付けする請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
画素パターンとポジ−ネガ関係にある空孔マスクを介して画素パターンを印刷した後、上記マスクを剥離する請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
センターインプレッション型印刷機が、センタードラムと該センタードラムの周囲にサテライト状に設置された3〜10基の印刷ユニットとからなる請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項5】
空孔マスクが、該プラスチックフィルム上にマスク用膜を形成した後、レーザアブレーション方法により画素パターンに対してネガ−ポジ関係にある空孔が形成されたマスクである請求項3に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項6】
空孔マスクが、プラスチックフィルム上に形成すべき画素パターンに相当する以外の領域に、膜を印刷して得られたマスクである請求項3に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項7】
空孔マスクが、貼着層を備え、該貼着層を介して該プラスチックフィルム上に固着されている請求項3に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項8】
空孔マスクが、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体およびそれらのアンモニウム塩またはアミン塩からなる可溶性塩;(メタ)アクリル酸エステル−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(アルコキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート;ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコール−エチレン共重合体;親水性ポリウレタン、親水性ポリエステル;およびエチレンオキサイド−アルキレン(C3、C4)オキサイド共重合体からなる群から選ばれた材料から形成されている請求項3に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項9】
空孔マスクが、ポリエステル、ナイロン、ビニルアルコール共重合体、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロースアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選ばれた材料のプラスチックフィルムから形成されている請求項3に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項10】
空孔形成用マスクが、熱エネルギー線吸収性成分および/または自己燃焼性樹脂成分を含有する請求項3に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項11】
熱エネルギー線吸収性成分が、カーボンブラックおよび/または赤外線吸収性化合物である請求項10に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項12】
自己燃焼性樹脂成分が、ニトロセルロースである請求項10に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項13】
センターインプレッション型印刷機が、画素パターンを有する印刷版を用いるフレキソ印刷方式、グラビア印刷方式およびオフセット印刷方式からなる群から選ばれる印刷方式を用いるタイプのものである請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項14】
センターインプレッション型印刷機が、液状インクジェットプリンティング方式、ディスペンサー注入プリンティング方式、塗布針液滴下プリンティング方式、静電方式液体プリンティング方式、熱転写プリンティング方式、静電方式粉体プリンティング方式およびソリッドインクジェットプリンティング方式からなる群から選ばれる印刷方式を用いるタイプのものである請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項15】
色素およびバインダーを含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のカラーフィルターの製造方法に使用するインク。
【請求項16】
有機溶剤系インク、水性インク、無溶剤系インク或いは熱溶融性固体状インクである請求項15に記載のインク。
【請求項17】
色素が、顔料である請求項15に記載のインク。
【請求項18】
顔料が、レッド(R)、グリーン(G)またはブルー(B)画素の形成に使用される顔料であり、C.I.ピグメントレッド9、97、168、177、216、224、226、242、254からなるレッド顔料であり、C.I.ピグメントグリーン7、36からなるグリーン顔料であり、C.I.ピグメントブルー15:6、60からなるブルー顔料であり、C.I.ピグメントバイオレット23、サブフタロシアニンからなるバイオレット(V)顔料であり、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、113、114、117、125、138、139、150、154、180、185からなるイエロー(Y)顔料であり、さらに上記したレッド顔料とイエロー顔料との共沈顔料、グリーン顔料とイエロー顔料との共沈顔料、ならびにそれらの顔料の固溶体顔料および混晶顔料からなる群から選ばれる請求項17に記載のインク。
【請求項19】
顔料が、イエロー(Y)、マゼンタ(M)またはシアン(C)画素の形成に使用される顔料であり、C.I.ピグメントイエロー62、74、93、128、155、185からなるイエロー顔料であり、C.I.ピグメントレッド122、146からなるレッド顔料とC.I.ピグメントバイオレット19からなるバイオレット顔料とからなるマゼンタ顔料であり、C.I.ピグメントブルー15:3からなるシアン顔料であり、さらに上記したイエロー顔料とシアン顔料との共沈顔料、レッド顔料とバイオレット顔料との共沈顔料およびシアン顔料とイエロー顔料の共沈顔料、ならびにそれらの顔料の固溶体顔料或いは混晶顔料である請求項17に記載のインク。
【請求項20】
顔料が、粗粒子顔料をニーダー中で水溶性塩および水溶性有機溶剤と共に混練および摩砕し、顔料の平均粒子径を10〜130nmに微細化して得られた顔料摩砕塊状物を水洗およびろ過して得られた微細化顔料の水性ろ過ケーキである請求項17に記載のインク。
【請求項21】
顔料が、該顔料の水性ろ過ケーキを乾燥および粉砕した微細化粉体顔料である請求項17に記載のインク。
【請求項22】
顔料が、該顔料の水性ろ過ケーキを易分散性重合体と混合し共沈させた加工顔料である請求項17に記載のインク。
【請求項23】
顔料が、該顔料の微細化粉体を易分散性重合体と混練した加工顔料である請求項17に記載のインク。
【請求項24】
バインダーが、反応性基、疎水性基および/または親水性基を有してもよいランダム、ブロックおよびグラフト共重合体;反応性基、疎水性基および/または親水性基を有してもよいオリゴマー、および付加重合性不飽和二重結合或いは付加縮合性エポキシ基を有する単量体、オリゴマーおよび/または重合体からなる群から選ばれた皮膜形成性物質である請求項17に記載のインク。
【請求項25】
顔料の平均粒子径が、10〜130nmである請求項17に記載のインク。
【請求項26】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法で形成されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項27】
請求項26に記載のカラーフィルターを装備していることを特徴とする画像表示装置。
【請求項28】
請求項27に記載の画像表示装置を装備した情報伝達機器。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−58838(P2006−58838A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11333(P2005−11333)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】