説明

カラーフィルター用インキ組成物、このインキ組成物を用いて得たカラーフィルター硬化膜及びカラーフィルター

【課題】インクジェット法で用いられて硬化性に優れたカラーフィルター用インキ組成物を提供する。
【解決手段】溶剤中に、下記一般式(1)で表される不飽和化合物(A)、4官能以上の多官能アクリレート化合物(B)、及び顔料(D)を必須成分として含有し、上記(A)成分と(B)成分の重量の比率(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲であり、且つ、実質的に反応開始剤が配合されていないことを特徴とするインキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法によってカラーフィルターを作製するのに適したカラーフィルター用インキ組成物、並びにこのインキ組成物を用いて得たカラーフィルター硬化膜、及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置に使われるカラーフィルターのこれまでの製造方法としては、感光性樹脂に光重合開始剤、各種添加剤、及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各着色剤を加えた後、溶剤によって調製したカラーレジストを塗布し乾燥後、一連の工程により画素パターンをフォトリソ法により形成したものが主流である。しかしながら、近時のマザーガラスの大型化に伴い、従来のフォトリソ法によるカラーフィルターの製造方法では、塗布工程などの各工程に於いて技術的な問題点が生じ始めている。
【0003】
例えば、これまでスピンコートを用いた塗工方法が主に用いられているが、ベースとなるマザーガラスが大きくなるにつれ、スピンコートで塗布することは技術的に困難になり、替わりにスリットコータを用いた塗工方法が採用されている。ところが、スリットコータを用いた塗工方法でも更なるマザーガラスの大型化により全面に均一な塗膜を形成することが難しく、特に8G、10Gクラスといった超大型マザーガラスではこの問題はより一層顕著になる。また、フォトリソ法では3色ごとに塗工、乾燥、露光、現像、硬化の各処理が必要となることから、工程数が嵩みコスト高となってしまうと言う問題もあり、フォトリソ法とは別の画素形成手段が望まれている。
【0004】
そこで、フォトリソ法に替わるカラーフィルターの製造方法として、例えば特許文献1に開示されているようなオフセット印刷法を用いた画像形成が提案され、実施されている。しかしながらオフセット印刷法に関しても十分に超大型マザーガラスに対して安定した画素形成は困難な状態となっており、実用化が遅れている。これに対してインクジェット法による画素形成方法は、近年注目を集め、実施され、ある程度の実績を残していることは周知の事実である。そして、インクジェット法において使用されるインキについて幾つかの特許が提示されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
ところで、テレビ用途に耐えうるような良好な画像を液晶表示装置で実現するためには、液晶表示装置そのものや回路に格段の技術向上が求められるが、その中でカラーフィルターがより大きなNTSC比、コントラストなど、良好な表示仕様を達成できることも要求の一つである。その為には、カラーフィルター用のインキ組成物により多くの顔料を含有させる必要がある。しかしながら、インキ組成物における顔料の含有量が増加すると、相対的に樹脂の量が減少してしまうことから、バインダーである樹脂が不足して硬化膜の強度低下を招き、液晶の電圧保持率や耐熱性、耐薬品性などの信頼性と呼ばれる性能が著しく低下してしまうという問題が生じる。
【0006】
また、光開始剤などの開始剤を添加して露光、重合させるシステムの場合には、先に露光することにより現像に耐えうる分子量程度まで重合させる事から後の熱硬化処理では、十分に架橋が発達しないために硬化膜の強度が低下する。通常これを補うためにフォトリソ用のカラーインキ組成物には、バインダーに用いる樹脂とは別に熱硬化性のモノマー(例えば二官能以上のエポキシモノマーなど)の添加を実施する事が多い。これは、特に光硬化の場合、短時間で重合が完了することから、通常高分子ラジカル重合の基礎的な知見から特殊な場合以外は、『初期の重合体は、組成比と異なり一方のモノマーが単独で重合する事が一般的』と言われている事例に適応する。そのため、反応性の高い熱硬化性モノマーの官能基が優先的に反応して分子量を適当量まで上昇させるが、その後は、分子の自由度が低下するので反応が進行しにくくなり、結果として、最終形態の架橋密度が低下するおそれもある。
【特許文献1】特開平11−58921号公報
【特許文献2】特開2001−350012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カラーフィルターの製造において、大型化が進むガラス基板に対して画素パターンを形成するのに適していると共に、低コスト化及び量産化が可能なインクジェット法に用いるインキ組成物について、硬化性に優れて、大きなNTSC比を達成すべく顔料を高濃度で含有しても高い信頼性(高電圧保持率、高耐溶剤性、高耐薬品性、高耐熱性)を維持することができるカラーフィルター用インキ組成物、並びにこのインキ組成物を用いて得たカラーフィルター硬化膜及びカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、大きなNTSC比を達成すべく顔料を高濃度で含有し、光、熱系の重合開始剤を排除しても、十分に膜の硬化が進行し、高い信頼性を得ることが可能な硬化性に優れたインキ組成物について鋭意検討した結果、当該技術分野における一般的な常識とは反対に、インキ組成物に開始剤を配合させず熱硬化により硬化膜を得るようにすることにより、上記のような課題を解決できることを見出した。すなわち、開始剤を配合させないことで、インキ組成物の硬化は官能基の衝突確率に影響される反応となる。そこで、バインダーとして用いる樹脂や硬化性のモノマーの種類や量について最適化を図ることにより、適切な架橋密度を有した硬化膜を得ることができ、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、カラーフィルターの画素をインクジェット法により形成するのに用いるインキ組成物であって、溶剤中に、下記一般式(1)で表される不飽和化合物(A)、4官能以上の多官能アクリレート化合物(B)、及び顔料(D)を必須成分として含有し、上記(A)成分と(B)成分の重量の比率(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲であり、且つ、実質的に反応開始剤が配合されていないことを特徴とするカラーフィルター用インキ組成物である。
【化1】

[式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Aは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を示し、Xは4価のカルボン酸残基を示し、Y1及びY2は独立に水素原子又は-OC-Z-(COOH)m〔Zはm価のカルボン酸残基を示し、mは1〜3の数を示す〕であり、nは1〜200の数を示す。]
【0010】
そして、本発明においては、2官能以上の多官能エポキシ化合物(C)を(A)成分及び(B)成分の和に対して20重量%以下含有することが好ましい態様である。ここで、多官能エポキシ化合物(C)は、一分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物からなる。例えばフェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシなどのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシなどのビス型エポキシ樹脂やビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等を代表的なものとして例示することができる。本発明における多官能エポキシ化合物(C)は、最大20重量%を限度とし、最小は0重量%でもよい。
【0011】
本発明におけるインキ組成物は、上記一般式(1)で表される不飽和化合物(A)を樹脂の構成成分として含有する。この(A)成分は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に、多塩基酸であるジカルボン酸又はその酸無水物(以下、「ジカルボン酸類」と称することもある)とテトラカルボン酸又はその酸二無水物(以下、「テトラカルボン酸類」と称する場合もある)とのそれぞれ1種以上と反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸又は両方を意味する。
【0012】
また、上記(A)成分については、好ましくは下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物から誘導されるのがよい。このエポキシ化合物はビスフェノール類から誘導されるが、ビスフェノール類をグリシジルエーテル化する際に、オリゴマー単位が混入することになるが、一般式(2)におけるlの平均値が0〜10の範囲であればインキ組成物としての性能には問題はない。
【化2】

【0013】
上記一般式(2)において、R1、R2、R3、R4及びAは、一般式(1)と同様の意味を表すが、R1、R2、R3、及びR4について好ましくは水素原子であり、Aについて好ましくは9,9-フルオレニル基であるのがよい。lについては0〜10の整数、好ましくは0又は0〜2の整数であるのがよい。ここで、9,9-フルオレニル基は、下記式一般式(3)で表される基をいう。
【化3】

【0014】
本発明において、(A)成分を得る際のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応については、エポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用して行うのがよい。この反応で得られる反応物は、後述する一般式(5)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。そして、このエポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中のヒドロキシ基にa)ジカルボン酸類及びb)テトラカルボン酸類を反応させ、エポキシ(メタ)アクリレートの酸付加体を得る。
【0015】
上記a)ジカルボン酸類としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はその酸無水物や脂環式ジカルボン酸又はその酸無水物、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物等を使用することができる。このうち、鎖式炭化水素ジカルボン酸又はその酸無水物として、例えばコハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物を挙げることができ、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。また、脂環式ジカルボン酸又はその酸無水物として、例えばヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物を挙げることができ、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。更に、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物として、例えばフタル酸、イソフタル酸等の化合物を挙げることができ、更には任意の置換基が導入されたジカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。
【0016】
また、b)テトラカルボン酸類としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物、芳香族多価カルボン酸又はその酸二無水物等を使用することができる。このうち、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等を挙げることができ、更には置換基が導入されたテトラカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸無水物として、例えばシクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸ノルボルナンテトラカルボン酸等を挙げることができ、更には置換基が導入されたテトラカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。更に、芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物として、例えばピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸無水物等を挙げることができ、更には置換基が導入されたテトラカルボン酸類又はその酸無水物であってもよい。
【0017】
上記a)ジカルボン酸類とb)テトラカルボン酸類については、それぞれ1種以上を使用することができ、a)ジカルボン酸類とb)テトラカルボン酸類の使用割合としてはa/bのモル比で0.1〜10、好ましくは0.2〜1.0の範囲となるようにするのがよい。この使用割合については、(A)成分の最適分子量、硬化性、光透過性、耐熱性、対溶剤性などを考慮し適した割合を選択することができる。
【0018】
また、(A)成分を得る際の一般式(5)で表される上記エポキシ(メタ)アクリレート化合物とa)ジカルボン酸類及びb)テトラカルボン酸類を反応させるには、公知の方法を採用することができるが、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中のヒドロキシ基1モル当たり酸成分が3/4モルとなるように定量的に反応させるのがよい。また、反応温度としては90〜130℃、好ましくは95〜125℃である。
【0019】
(A)成分を製造する方法の一例を9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンを出発原料とする場合について示せば、次のようである。
先ず、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとエピクロロヒドリンとを反応させて下記一般式(4)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物を合成し、このビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物とCH2=CR5-COOHで表される(メタ)アクリル酸とを反応させて下記一般式(5)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂を合成し、次いでプロピレングリコールモノメチル溶剤中でビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂と上記酸成分[a)ジカルボン酸類及びb)テトラカルボン酸類]とを加熱下に反応させ、(A)成分である前記式(1)で表されるフルオレン型の樹脂を得ることができる。
【化4】

【化5】

【0020】
ここで、一般式(4)及び(5)におけるR1、R2、R3、R4、及びR5は、一般式(1)と同様であり、Aは9,9-フルオレニル基を示す。
【0021】
また、本発明において上記(A)成分と(B)成分の重量の比(A)/(B)については10/90〜90/10、好ましくは70/30〜50/50である。(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲から外れると、インキ組成物が十分に硬化しなかったり、得られた硬化膜の光透過性が低下してしまい、カラーフィルターの発色性に影響を及ぼしたり信頼性が低下するおそれがある。ここで、(A)成分の重量平均分子量(Mw)は2000〜20000の範囲であるのがよい。
【0022】
(D)成分の顔料については、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。有機顔料としては、例えばアゾレーキ系、不溶性アゾ(PY-150)系、フタロシアニン系(PG-7、PG-36&PB-15.6)を含むシアニン系、キノフタロン系(PY138)、キナクドリン系、ジオキサジン(PV-23)系、イソインドリノン(PY-139)系、ベリノン系、アントラキノン(PR-177)系、ピロロピロール系(PR-254)、ペリレン系等を挙げることができ、これの1種又は2種以上を併用することもできる。無機顔料としては、例えばミロリブルー、酸化鉄、コバルト系、マンガン系、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等を挙げることができ、これの1種又は2種以上を併用することもできる。これらの顔料については、塗膜の透明性を維持しつつ着色するために、可視光の波長の下限である0.4μm以下の平均粒子径に分散されることが好ましく、実用的に平均粒子径範囲が0.01〜0.25μmであるのが更に好ましい。この(D)成分については、顔料を微細分散し安定化させるのに必要な分散剤(I)等を含むようにして、顔料〔(D)成分〕と分散剤とからなる顔料組成物を形成するようにしてもよい。また、顔料(D)の比率については、インキ組成物における溶剤を除いた固形分の合計重量に対する顔料(D)の重量の比率で0.1以上であるのが好ましい。
【0023】
本発明のカラーフィルター用インキ組成物は、前記(A)、(B)及び(D)成分を必須成分とし、(C)は必要に応じて上限まで添加したこれらを溶剤に溶解又は分散してなる。溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類、酢酸n-ブチル等の酢酸エステル類の他、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤を例示することができる。
【0024】
本発明においては、好ましくはこれら有機溶剤を2種以上使用した混合溶剤とするのがよい。この場合、使用される溶剤の沸点がいずれも120〜350℃の範囲であるのが更に好ましい。
【0025】
本発明におけるインキ組成物は、インクジェット法を用いてマザーガラス等のガラス基板に塗布した後、後述するように乾燥及び熱硬化させることで所定の画像を形成してカラーフィルター硬化膜を得ることができる。
【0026】
上記(B)成分の多官能アクリレート化合物としては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、などのメチロールプロパンで4官能以上のアクリレートやペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールやジペンタエリスリトールのような骨格で4官能以上のアクリレートや、ペンタアクレレートエステル等のアクリル酸エステル類等を挙げることができる。これらはその1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上を併用することもできる。更には、これらのアクリレートはモノマーであってもよくオリゴマーであってもよい。なお、上記アクリレート構造に関しては、同様の構造に於いても3官能以下を除外すると同時に上記構造以外でも4官能以上であれば良く、アクリレートの主骨格に影響されない。
【0027】
更に、本発明では、カラーフィルター用インキ組成物の他の性能を阻害しない範囲であれば、インクジェット適正を調節する目的から粘度調整剤(G)を添加することもできる。粘度調整剤(G)には、粘度を低下させるものと、粘度を高くするものとがある。粘度を低下させるものには、一般的には、溶剤もこれに含まれるが、本発明では通常の溶剤は粘度調整剤ではなく溶剤と看做し、低分子の官能基を有する反応性希釈剤を粘度調整剤(G)とする。一方、粘度を高くするものには、シリカ粒子を分散させたシリカ系エアロジェルや、アマイド系ワックス、ベントナイト系の増粘剤がある。これらを必要に応じて添加する事で粘度調整を実施する。
【0028】
更にまた、本発明のカラーフィルター用インキ組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を含有してもよい。例えば、濡れ性を向上させるためには界面活性剤が使用されてもよく、密着性向上のためにはカップリング剤が好ましく使用される。これらは総称してその他の添加剤(H)とする。この場合、その他の添加剤(H)は0.001〜0.5重量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0029】
なお、顔料の分散に際して添加される分散剤(I)は、分散安定性を付与する為に、必須であり、添加量は顔料種により種類、添加量は必要に応じて変化し、一定ではないが、0.01〜10重量%の範囲で含有する。
【0030】
本発明のカラーフィルター用インキ組成物における(A)〜(D)成分の好適な範囲は下記のとおりである。そして、本発明では、下記成分を含めた固形分100重量部に対して、溶剤を5〜2000重量部、特には50〜1000重量部の範囲で配合したインキ組成物であるのが好ましい。
(A)成分 1〜50重量%より好ましくは5〜30重量%
(B)成分 1〜50重量%より好ましくは5〜30重量%
(C)成分 0〜40重量%より好ましくは0〜20重量%
(D)成分 5〜95重量%より好ましくは10〜60重量%
【0031】
本発明におけるインキ組成物については、インクジェット法によりガラス基板等の所定の領域に吐出、塗布した後、例えば25〜130℃で1分〜1時間の乾燥処理を施し、熱硬化を行うことで所定の画素を形成することができる。ここで、熱硬化の際の条件について、本発明のインキ組成物は実質的に反応開始剤が配合されないことから、好ましくは反応開始温度を100℃以上にするのがよく、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは200℃の反応開始温度で0.5〜2.0時間の反応開始条件で熱硬化を開始するようにするのがよい。反応開始剤を含む従来のインキ組成物では、配合する開始剤の種類によっても異なるが、主に使用される過酸化ベンゾイル(BPO)の場合、通常反応開始温度が40〜80℃であることから、本発明のインキ組成物では開始温度が従来より高く設定される。そして、(B)成分の多官能アクリレートと一般式(1)で表される(A)成分の不飽和化合物との反応が一度開始されれば、分子量が増し、架橋点が増大して優れた架橋密度を有した硬化膜を形成する。このようにして硬化は進行するが、製造プロセスの効率化や硬化促進等を考慮して、反応開始後には200〜260℃に温度を上げて0.5〜2時間程度の熱硬化を行うようにするのがよい。また、インクジェット法としては、一般に用いられる手段を採用することができ、例えば所定のブラックマトリックスで形成したパターン形状の凹部にインキ組成物を指定量充填し、乾燥、硬化するようにするものであれば特に制限はない。なお、本発明のインキ組成物において「実質的に反応開始剤が配合されていない」とは、反応開始剤によるラジカル重合によらずに、上述のとおり少なくとも(A)成分と(B)成分との反応を開始させることを意味する。
【発明の効果】
【0032】
本発明のカラーフィルター用インキ組成物は、大型化が進むガラス基板に対して画素パターンを形成するのに適していると共に、低コスト化及び量産化が可能なインクジェット法に用いるインキ組成物である。本発明のインキ組成物は、このようにインクジェット特性を維持しつつも、高顔料分、高信頼性を達成可能なカラーフィルター用インキ材料である。また、本発明のカラーフィルター用インキ組成物によれば優れた架橋密度の硬化膜を得ることができることから、これを用いて形成したカラーフィルターについては電圧保持率等の信頼性に優れたカラーフィルターを形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中、別段の断りがない限り、部は重量部を表し、%は重量%を表す。また、(D)成分の顔料を含んだ各分散液の調製方法を以下に記す。
【0034】
[Red分散液の調製]
顔料PR254とPY150を80/20に混合したもの145gを2Lのステンレス容器に採取し、Disperbyk−2000(BYK Chemie社製 分散剤)を205g加え、これをセラミックコーティングを施した3本ロールにて流動性が出るまで混練する。更にBCA(ブチルカルビトールアセテート)200gを添加、混合した後、混練品を横型サンドミルにて分散し、顔料の平均粒径が100nm以下になるまで分散する。分散完了後、BCA 450gで希釈して固形分が22.7%とし試験用分散液とした。
【0035】
[Green分散液の調製]
顔料PG36とPY150を60/40に混合したもの155gを、2Lのステンレス容器に採取し、あらかじめプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 50%溶液としていたPB827(味の素社製 分散剤)を140g加え、これをセラミックコーティングを施した3本ロールにて流動性が出るまで混練する。更にBCA 300g添加、混合した後、混練品を横型サンドミルにて分散し、顔料の平均粒径が100nm以下になるまで分散する。分散完了後、BCA 405gで希釈して固形分が22.5%とし試験用分散液とした。
【0036】
[Blue分散液の調製]
顔料PB;15.6(124g)を2Lのステンレス容器に採取し、あらかじめプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50%溶液としていたPB824(味の素社製 分散剤)を126g加える。これをセラミックコーティングを施した3本ロールにて流動性が出るまで混練する。この混練品に更にブチルカルビトールアセテート250g添加、混合した後、横型サンドミルにて分散し、顔料の平均粒径が100nm以下になるまで分散する。分散完了後、ブチルカルビトールアセテート 500gで希釈して固形分が17.5%とし試験用分散液とした。
【実施例1】
【0037】
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を210.5g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を4.0g加えた。これの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を42.5gと(B)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA(日本化薬社製)16.0gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を227.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。
【0038】
上記で得られたカラーフィルター用インキ組成物を用いて、インクジェット法により125mm×125mmのガラス基板上にインキ組成物を吐出し、ホットプレート上に乾燥温度:90℃、乾燥時間3min静置して乾燥後、硬化温度:230℃、時間60分の硬化条件Aと、乾燥温度:70℃、乾燥時間5min静置して乾燥後、硬化温度:200℃、時間90分の硬化条件Bと、乾燥温度:150℃、乾燥時間5min静置して乾燥後、硬化温度:230℃、時間30分の硬化条件Cと、乾燥温度:90℃、乾燥時間3min静置して乾燥後、硬化温度:150℃、時間60分の硬化条件Dとの4条件にて硬化膜(125mm×125mm×厚さ1〜4μm)をそれぞれ形成した。A条件(実施例1−A)と条件B(実施例1−B)で得られた硬化膜の特性について、所定の手順で各種信頼性試験を実施した結果、その特性が良好であることが確認された。以後、特に断りのない限り硬化は条件Aにて実施する。
【0039】
[VHR測定試験](液晶汚染性評価)
上記A条件で得られた硬化膜をガラス基板から20mg削り取り、これを試験用液晶1gに浸漬、密封して100℃で76時間エージング後、所定のガラスセルに液晶を注入して電圧保持率を測定した。
【0040】
[NaOH浸漬試験](耐アルカリ性評価)
5%の濃度に調整した水酸化ナトリウム水溶液に上記A条件で硬化膜を成膜したガラス基板ごと浸漬し、40℃で30分後に色相を測色計にて測定し、あらかじめ測定していた結果から硬化膜のΔEを計算した。
【0041】
[NMP浸漬試験](耐溶媒性評価)
NMP(N-メチル-2-2ピロリジノン)に上記A条件で硬化膜を成膜したガラス基板ごと浸漬し、40℃で30分後に色相を測色計にて測定し、あらかじめ測定していた結果から硬化膜のΔEを計算した。
【0042】
[250℃ 1hr](耐熱性評価)
上記A条件で硬化膜を成膜したガラス基板を250℃に設定したオーブン内に1時間放置し、その後、測色計にて測定し、あらかじめ測定していた結果から硬化膜のΔE(色差)を計算した。
【0043】
[粘度安定性](保存安定性評価)
調製した試験用インキ組成物を100g、密閉可能なサンプル瓶に採取し、40℃で一週間保存後の粘度を測定し、初期の粘度からの上昇量を計算した。粘度はE型粘度計で23℃に設定して測定した。上記で得られた各試験結果を表1に示す。
【実施例2】
【0044】
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を249.0g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を3.0g加えた。これの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を33.5gと(B)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA(日本化薬社製)12.5gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を249.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0045】
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を160.0g秤量し、攪拌しながら(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を35.0gと(B)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA(日本化薬社製)13.0gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のBlue顔料の分散液を292.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0046】
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を162.0g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を2.5g加えた。これの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を27.0gと(B)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA(日本化薬社製)10.0gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のRed顔料の分散液を298.5g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0047】
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を116.0g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を4.0g加えた。これの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を43.0gと(B)成分のエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートSR494(日本化薬社製)16.5gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を321.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を116.0g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を4.0g加えた。これの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を43.0gと(B)成分のペンタエリスリトールトリアクリレートSR209(日本化薬社製)16.5gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を321.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を116.0g秤量し、攪拌しながら(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を4.0g加えた。これの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を43.0gと(B)成分のトリメチルプロパンテトラアクリレートTMPTA(日本化薬社製)16.5gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を321.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例3]
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を210.5g秤量し、攪拌しながら光重合開始剤の2,4−トリクロロメチル(ピペロニル)−6−トリアジン(日本シーベルヘグナー社製トリアジン-PP)1.0gと(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を4.0g加えた。これらの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を42.5gと(B)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA(日本化薬社製)16.0gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を227.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例4]
ビーカー(1000ml)に回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。溶剤としてジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(別称:ブチルカルビトールアセテート(BCA))を210.5g秤量し、攪拌しながら熱重合開始剤のベンゾイルパーオキサイド(関東化学社製 BPO)1.0gと(C)成分としてYX4000HK (ジャパンエポキシレジン社製)を4.0g加えた。これらの溶解を確認した後、(A)成分のフルオレン型エポキシ型アクリレート/酸無水物重合付加体のPGMEA溶液(新日鐵化学(株)製 V259ME 樹脂成分等56.5%)を42.5gと(B)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA(日本化薬社製)16.0gを添加して、攪拌した。次に、あらかじめ分散、調製した(D)成分のGreen顔料の分散液を227.0g加えて更に攪拌した。最後に添加剤のシランカップリング剤と界面活性剤を各2.5と0.3g添加した後、さらに30分攪拌して試験用インキ組成物を得た。得られたインキ組成物を用いて実施例1と同様にガラス基板に硬化条件Aにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例5]
実施例1で得られたインキ組成物を用いて、ガラス基板上に塗布し、条件Cにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例6]
実施例1で得られたインキ組成物を用いて、ガラス基板上に塗布し、条件Dにて硬化膜を形成し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
以上のように、本実施例で得られたインキ組成物は、いずれもVHR測定、NaOH浸漬試験、NMP浸漬試験、及び250℃耐熱試験において良好な結果を示したことから、優れた架橋密度の硬化膜が得られることが分り、高電圧保持率、高耐溶剤性、高耐薬品性、高耐熱性等の信頼性に優れたカラーフィルターを形成することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルターの画素をインクジェット法により形成するのに用いるインキ組成物であって、溶剤中に、下記一般式(1)で表される不飽和化合物(A)、4官能以上の多官能アクリレート化合物(B)、及び顔料(D)を必須成分として含有し、上記(A)成分と(B)成分の重量の比率(A)/(B)が10/90〜90/10の範囲であり、且つ、実質的に反応開始剤が配合されていないことを特徴とするカラーフィルター用インキ組成物。
【化1】

[式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Aは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を示し、Xは4価のカルボン酸残基を示し、Y1及びY2は独立に水素原子又は-OC-Z-(COOH)m〔Zはm価のカルボン酸残基を示し、mは1〜3の数を示す〕であり、nは1〜200の数を示す。]
【請求項2】
2官能以上の多官能エポキシ化合物(C)を(A)成分及び(B)成分の和に対して20重量%以下含有する請求項1に記載のカラーフィルター用インキ組成物。
【請求項3】
粘度調整剤(G)、界面活性剤及び/又はカップリング剤(H)、及び顔料分散剤(I)を含有する請求項1又は2記載のカラーフィルター用インキ組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用インキ組成物を用いて、インクジェット法により形成した画素を乾燥及び硬化させて得たことを特徴とするカラーフィルター硬化膜。
【請求項5】
請求項4に記載のカラーフィルター硬化膜を有したことを特徴とするカラーフィルター。

【公開番号】特開2010−26471(P2010−26471A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191379(P2008−191379)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】