説明

カラーフィルター用インクセット、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】吐出安定性に優れるとともに、保存安定性にも優れ、部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターの製造に安定的に好適に用いることができるインクジェット方式のカラーフィルター用インクセットを提供すること、そのようなカラーフィルターの製造方法、カラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明のカラーフィルター用インクセットは、基板上に設けられた多数個のセル内に着色部を有するカラーフィルターを、インクジェット方式により製造するのに用いるカラーフィルター用インクセットであって、着色剤と、未硬化の樹脂材料とを含む着色インクと、着色インクと同一のセル内に吐出されることにより、未硬化の樹脂材料の硬化反応を促進する硬化剤を含む硬化用インクとを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インクセット、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色層形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
【0004】
しかしながら、従来のカラーフィルターの製造に用いるインクでは、インク中に重合開始剤等の樹脂材料の硬化剤が含まれているため、インクの粘度が比較的高く、安定してインクジェットヘッドから吐出するのが困難であった。また、従来のインクでは、上述したように樹脂材料の硬化剤が含まれているため、経時的に粘度が高くなる傾向があり、保存安定性に問題があった。また、一般に、カラーフィルターの製造に用いるインクは、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なり、長時間にわたって連続して吐出される。このように、インクジェットヘッドからインクを連続して吐出すると、ヘッド内の温度が上昇し、この温度上昇によってインク中に含まれる樹脂材料の硬化が進行してしまうといった問題もあった。このようにインク中に含まれる樹脂材料の硬化が進行すると、インクの粘度が上昇してしまい、インクジェットヘッドのインクの吐出部の目詰まり等が生じ、吐出不良が生じてしまう。また、インクジェットヘッドを冷却しつつインクを吐出して、上記硬化の進行を抑制することも考えられるが、温度を下げると、インクの粘度が上昇してしまい、安定して吐出することができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、インクジェットヘッドから吐出安定性に優れるとともに、保存安定性にも優れ、部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターの製造に安定的に好適に用いることができるインクジェット方式のカラーフィルター用インクセットを提供すること、部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターの製造に安定的に好適に用いることができるカラーフィルターの製造方法を提供すること、各部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルター用インクセットは、基板上に設けられた多数個のセル内に着色部を有するカラーフィルターを、インクジェット方式により製造するのに用いるカラーフィルター用インクセットであって、
着色剤と、未硬化の樹脂材料とを含む着色インクと、
前記着色インクと同一のセル内に吐出されることにより、前記未硬化の樹脂材料の硬化反応を促進する硬化剤を含む硬化用インクとを備えることを特徴とする。
これにより、インクジェットヘッドから吐出安定性に優れるとともに、保存安定性にも優れ、部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターの製造に安定的に好適に用いることができるインクジェット方式のカラーフィルター用インクセットを提供することができる。
【0008】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記未硬化の樹脂材料は、エポキシ系樹脂を含むことが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の基板に対する密着性をさらに向上させることができる。また、着色部の耐薬品性(耐溶剤性)をより高いものとすることができる。
【0009】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記未硬化の樹脂材料は、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなる重合体Aを含むことが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の基板に対する密着性、耐薬品性(耐溶剤性)等を特に優れたものとすることができるとともに、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、イソシアネート基またはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えたビニル単量体a2を含有してなる共重合体であることが好ましい。
これにより、着色インク中における気体の含有率(溶存気体、マイクロバブル等として存在する気泡等)をより効果的に低くすることができ、インクジェット法による液滴吐出の安定性が特に優れたものとなる。
【0011】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、水酸基を備えたビニル単量体a3を含有してなる共重合体であることが好ましい。
これにより、形成される着色部の基板に対する密着性、特に、画像表示に伴う急激な温度変化に、繰り返しさらされた場合における密着性を特に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記未硬化の樹脂材料は、少なくとも下記式(1)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体を単量体成分として含有してなる重合体Bをさらに含むことが好ましい。
【化1】

これにより、着色インク中における気体の含有率を低くすることができ、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0013】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記着色インク中における前記重合体Aの含有率と前記重合体Bの含有率との比率は、重量比で、25:75〜75:25であることが好ましい。
これにより、着色インク中における着色剤の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、各部位での色むら、濃度むらをより確実に防止することができ、また、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0014】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記未硬化の樹脂材料は、少なくとも下記式(2)で表されるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなる重合体Cをさらに含むことが好ましい。
【化2】

これにより、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。特に、液滴吐出ヘッドのノズルからの液切れが良好になるとともに、着色インクの固形分のノズルへの固着等をより効果的に防止することができる。また、形成される着色部の耐熱性を特に優れたものとすることができる。
【0015】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、前記着色インク中における前記重合体Aの含有率と前記重合体Cの含有率との比率は、重量比で、50:50〜99:1であることが好ましい。
これにより、着色インク中における着色剤の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとし、カラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に防止し、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0016】
本発明のカラーフィルター用インクセットでは、複数種の前記着色インクと、少なくとも1種以上の樹脂材料硬化用インクとを備えるものであることが好ましい。
これにより、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0017】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、多数個のセルが設けられた基板上に、インクをインクジェット方式で吐出して、カラーフィルターを製造する方法であって、
着色剤と、未硬化の樹脂材料とを含む着色インクを前記セル内に吐出する着色インク付与工程と、
前記着色インクを吐出する前記セル内に、前記未硬化の樹脂材料の硬化を促進する硬化剤を含む硬化用インクを吐出する硬化用インク付与工程とを有することを特徴とする。
このように、着色インクと硬化用インクとを分けてセル内に吐出することにより、各インクの粘度が高くなることを確実に防止することができ、各インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。
【0018】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、各部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターを提供することができる。
本発明のカラーフィルターは、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、各部位での色むら、濃度むらが抑制されたカラーフィルターを提供することができる。
【0019】
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、表示部の各部位での色むら、濃度むら等が抑制され、個体間での特性の均一性に優れ、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、かつ、耐久性にも優れた画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部の各部位での色むら、濃度むら等が抑制され、個体間での特性の均一性に優れ、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、かつ、耐久性にも優れた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《インクセット》
本発明のカラーフィルター用インクセットは、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるインクセットであり、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
【0021】
ところで、近年検討されているインクジェット方式によりカラーフィルターを製造するのに用いるインクでは、インク中に重合開始剤等の樹脂材料の硬化剤が含まれているため、インクの粘度が比較的高く、安定してインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)から吐出するのが困難であった。また、従来のインクでは、上述したように樹脂材料の硬化剤が含まれているため、経時的に粘度が高くなる傾向があり、保存安定性に問題があった。また、一般に、カラーフィルターの製造に用いるインクは、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なり、長時間にわたって連続して吐出される。このように、インクジェットヘッドからインクを連続して吐出すると、ヘッド内の温度が上昇し、この温度上昇によってインク中に含まれる樹脂材料の硬化が進行してしまうといった問題もあった。このようにインク中に含まれる樹脂材料の硬化が進行すると、インクの粘度が上昇してしまい、インクジェットヘッドのインクの吐出部の目詰まり等が生じ、吐出不良が生じてしまう。また、インクジェットヘッドを冷却しつつインクを吐出して、上記硬化の進行を抑制することも考えられるが、温度を下げると、インクの粘度が上昇してしまい、安定して吐出することができなかった。
【0022】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、硬化剤を、未硬化の樹脂材料が含まれているインクとは、別のインクに含ませて、着色部の形成の際に両インクを混合することで、上記問題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明のカラーフィルター用インクセットは、着色剤と、未硬化の樹脂材料とを含む着色インクと、着色インクと同一のセル内に吐出されることにより、着色インク中の未硬化の樹脂材料の硬化反応を促進する硬化剤を含む硬化用インクとを備えるものである。
このように、着色インクに加え、硬化用インクを有するカラーフィルター用インクセットを用いることにより、以下のような効果が得られる。
【0023】
一般に、樹脂材料と、硬化剤とが同一のインク中に含まれると、そのインクは比較的粘度が高いものとなる。これに対して、本発明のように、樹脂材料と、硬化剤とを異なるインクに含ませることにより、未硬化の樹脂材料を含む着色インクの粘度を比較的低いものとすることができ、液滴吐出ヘッドからのインク(着色インク)の吐出を安定して行うことができる。また、着色インクは、硬化剤を含んでいないので、未硬化の樹脂材料の硬化反応による経時的な粘度上昇が抑制され、保存安定性に優れたものとなる。また、液滴吐出ヘッド内において、連続吐出によってヘッド内の温度が上昇した場合であっても、着色インク中の樹脂材料の硬化反応が進行するのを抑制することができるため、吐出するインクの粘度が極端に上昇するのを防止することができ、インクを安定して吐出することができる。また、液滴吐出ヘッドの吐出部付近での目詰まりを防止することができる。また、これにより、液滴吐出装置のメンテナンスも容易となる。
なお、本発明において、未硬化の樹脂材料とは、未だ硬化に至らない樹脂材料のことを指し、一部のモノマー成分が重合した重合体を含むものであってもよい。
【0024】
また、このようなカラーフィルター用インクセットは、複数種の着色インクを備えるものであるのが好ましい。
また、カラーフィルター用インクセットは、硬化用インクを少なくとも1種備えるものであればよく、複数種備えるものであってもよい。以下の説明では、カラーフィルター用インクセットは、硬化用インクを1種備え、全ての着色インクに対し、当該硬化用インクを用いるものとして説明する。
【0025】
[着色インク(カラーフィルター用インク)]
カラーフィルター用インクセットを構成する着色インクは、着色剤、未硬化の樹脂材料等を含むものである。また、着色インクは、未硬化の樹脂材料の硬化反応を促進する硬化剤を実質的に含まないものである。このように硬化剤を含まないことにより、着色インクは保存安定性(長期安定性)に優れるとともに、吐出安定性に優れたものとなる。なお、硬化剤を実質的に含まないとは、着色インク中における硬化剤の含有量が、500ppm以下のことをいう。
【0026】
<未硬化の樹脂材料>
カラーフィルター用インクセットを構成する着色インクは、未硬化の樹脂材料を含んでいる。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の基板に対する密着性を向上させることができる。また、インクジェット法によるインク付与工程の後工程として薬品塗布や洗浄を行った場合においても、着色部が悪影響を受けるのを防止することができる。
このような樹脂材料としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂を含んでいるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の基板に対する密着性をさらに向上させることができる。また、着色部の耐薬品性(耐溶剤性)をより高いものとすることができる。
【0027】
また、未硬化のエポキシ系樹脂として、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなる重合体Aを含んでいるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の基板に対する密着性、耐薬品性(耐溶剤性)等を特に優れたものとすることができるとともに、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、インクジェット法により、長期間液滴吐出を行ったり、連続して液滴吐出を行ったりした場合においても、吐出された液滴の軌道が変化し(いわゆる、飛行曲がりが発生し)、目的に部位に液滴を着弾させることができなくなったり、液滴の吐出量が不安定化する等の問題が生じるのをより確実に防止することができる。また、未硬化の樹脂材料中に重合体を含むことにより、着色インクの保存安定性をより高いものとすることができる。
【0028】
[重合体A]
以下、重合体Aについて、詳細に説明する。
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものである。重合体Aは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Aが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有するものである。
【0029】
(エポキシ基含有ビニル単量体a1)
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものである。このようなエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有することにより、重合体A中にエポキシ基を容易かつ確実に導入することができる。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有することにより、着色インク中における上述したような顔料の分散安定性を優れたものとすることができ、着色インクの保存安定性(長期保存性)、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部を、耐薬品性(耐溶剤性)に優れたものとすることができる。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有することにより、着色部を形成する際(後述する硬化用インクと混ざった際)に、比較的緩やかに硬化反応が進行し、急激な硬化反応による色むら等が生じるのを効果的に防止することができる。また、形成される着色部の硬度等を優れたものとする上で有利である。また、重合体Aが、後述するようなビニル単量体a2、ビニル単量体a3等を含むものである場合、重合体の合成を好適に行うことができ、所望の特性を有する重合体Aを容易かつ確実に得ることができる。
【0030】
エポキシ基含有ビニル単量体a1としては、例えば、下記式(3)で表される構造を有するものを用いることができる。エポキシ基含有ビニル単量体a1がこのような構造を有するものであると、着色インク中における上述したような顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1が下記式(3)で表される構造を有するものであると、カラーフィルター用インクセットを用いて形成される着色部の耐溶剤性をより優れたものとすることができる。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1が下記式(3)で表される構造を有するものであると、着色部を形成する際(後述する硬化用インクと混ざった際)に、比較的緩やかに硬化反応が進行し、急激な硬化反応による色むら等が生じるのを効果的に防止することができる。また、形成される着色部の硬度等を特に優れたものとする上で有利である。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1がこのような構造を有するものであると、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、形成される着色部の透明性を特に高いものとすることができる。
【0031】
【化3】

【0032】
式(3)において、Rによって示される炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。これにより、着色インク中における着色剤の分散安定性を特に優れたものとすることができ、着色インク(カラーフィルター用インク)の長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。また、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、形成される着色部の透明性を非常に高いものとすることができる。
式(3)中、Gによって示される2価のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基の代表的な例としては、直鎖または分枝状のアルキレン基、より具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン等が挙げられる。
【0033】
エポキシ基含有ビニル単量体a1の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸エチルグリシジル、グリシジルビニルベンジルエーテル(セイミケミカル株式会社製、商品名VBGE)、下記式(3−1)〜式(3−31)で表される脂環式エポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、エポキシ基含有ビニル単量体a1としては、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これにより、着色インク中における着色剤の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部の硬度、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。また、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、形成される着色部の透明性を非常に高いものとすることができる。
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
なお、式(3−1)〜(3−31)において、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示し、Rは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。また、R、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、wは、0〜10を示す。
重合体A中におけるエポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、50〜99wt%であるのが好ましく、70〜94wt%であるのがより好ましい。重合体A中におけるエポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率が前記範囲内の値であると、着色インク中における着色剤の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、重合体A中におけるエポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率が前記範囲内の値であると、着色部を形成する際(後述する硬化用インクと混ざった際)に、比較的緩やかに硬化反応が進行し、急激な硬化反応による色むら等が生じるのを効果的に防止することができるとともに、形成される着色部の硬度、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、エポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でエポキシ基含有ビニル単量体a1を含有しているのが好ましい。
【0040】
(ビニル単量体a2)
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、さらに、イソシアネート基またはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えたビニル単量体a2を単量体成分として含有してなるもの(共重合体)であるのが好ましい。これにより、着色インク中における気体の含有率(溶存気体、マイクロバブル等として存在する気泡等)をより効果的に低くすることができ、インクジェット法による液滴吐出の安定性が特に優れたものとなる。その結果、製造されるカラーフィルターにおいて、各部位での色むら、濃度むらや、個体間での特性のばらつきが発生するのをより効果的に防止することができる。
重合性ビニル単量体a2としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基と結合した(メタ)アクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
上記(メタ)アクリロイルイソシアネートのイソシアネート基は、ブロックイソシアネート基であることが好ましい。ここで言うブロックイソシアネート基とは、末端をブロック剤でマスキングしたイソシアネート基を指す。ブロックイソシアネート基を持つ単量体としては、例えば、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられ、また、昭和電工株式会社製「カレンズMOI−BM」の商品名で市販されている。これら重合性ビニル単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のエポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、2〜20重量部であるのが好ましく、3〜15重量部であるのがより好ましい。重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率が前記範囲内の値であると、着色インクの保存安定性等を十分に優れたものとしつつ、着色インク中における気体の含有率(溶存気体、マイクロバブル等として存在する気泡等)をより効果的に低くすることができ、インクジェット法による液滴吐出の安定性が特に優れたものとなる。また、形成される着色部の透明性を十分に高いものとすることができる。これに対し、重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率が前記下限値未満であると、上記のようなビニル単量体a2を含有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率が前記上限値を超えると、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性が低下し、形成される着色部の透明性を十分に優れたものとするのが困難になる可能性がある。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、ビニル単量体a2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でビニル単量体a2を含有しているのが好ましい。
【0043】
(ビニル単量体a3)
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、さらに、水酸基を備えたビニル単量体a3を単量体成分として含有してなるもの(共重合体)であるのが好ましい。これにより、形成される着色部の基板に対する密着性、特に、画像表示に伴う急激な温度変化に、繰り返しさらされた場合における密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、例えば、カラーフィルターを長期間使用した場合においても、光漏れ(白抜け、輝点)等の問題が発生するのをより確実に防止することができる。すなわち、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Aが、ビニル単量体a3を単量体成分として含有してなるものであると、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、形成される着色部の透明性を非常に高いものとすることができる。
【0044】
ビニル単量体a3としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合した化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のエポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、2〜20重量部であるのが好ましく、3〜15重量部であるのがより好ましい。重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率が前記範囲内の値であると、着色インクの保存安定性等を十分に優れたものとしつつ、着色インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部の透明性を高いものとすることができる。これに対し、重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率が前記下限値未満であると、上記のようなビニル単量体a3を含有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率が前記上限値を超えると、着色インク中における気体の含有率を十分に低いものとするのが困難になる可能性がある。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、ビニル単量体a3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でビニル単量体a3を含有しているのが好ましい。
【0046】
(その他の重合性ビニル単量体a4)
重合体Aは、上述したようなエポキシ基含有ビニル単量体a1、ビニル単量体a2、および、ビニル単量体a3以外の重合性ビニル単量体a4を単量体成分として含有していてもよい。このような重合性ビニル単量体a4としては、エポキシ基含有ビニル単量体a1と共重合可能なビニル単量体を用いることができ、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル、アラルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、FCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHCHOCOCH=CH、H(CFCHCHOCOC(CH)=CH、F(CFCHCHOCOCH=CH、F(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH等のフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、重合体Aは、単量体成分として、後述するようなアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を含有するものではない。
【0047】
重合体Aにおける重合性ビニル単量体a4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のエポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、20重量部以下であるのが好ましく、10重量部以下であるのがより好ましい。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、重合性ビニル単量体a4の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、各化合物について、重合性ビニル単量体a4の含有率が上記のような条件を満足するのが好ましい。
【0048】
上記のように、重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、ビニル単量体a2およびビニル単量体a3を含有するものであるのが好ましい。これにより、上述したようなビニル単量体a2を含むことによる効果と、上述したようなビニル単量体a3を含むことによる効果とを、両立することができる。
硬化性樹脂材料(バインダー樹脂)中に占める重合体Aの割合(含有率)は、特に限定されないが、25〜80wt%であるのが好ましく、33〜70wt%であるのがより好ましい。なお、重合体Aが複数種の化合物の混合物である場合、重合体Aの含有率としては、これらの化合物の含有率の総和を採用する。
【0049】
[重合体B]
また、未硬化の樹脂材料には、上記成分の他、少なくとも下記式(1)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなる重合体Bを含んでいてもよい。
【0050】
【化9】

【0051】
また、このような重合体Bは、前述した重合体Aとともに用いるのが好ましい。これにより、着色インク中における気体の含有率を低くすることができ、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、未硬化の樹脂材料が、重合体Aとともに重合体Bを含むものであることにより、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、未硬化の樹脂材料と着色剤との混合安定性を長期間にわたって優れたものとすることができ、長期間にわたって安定的に、コントラストに優れたカラーフィルターを製造することができる。また、未硬化の樹脂材料が、重合体Aとともに重合体Bを含むものであることにより、形成される着色部の耐光性を優れたものとすることができる。一般に、染料は、顔料に比べて耐光性に劣るものであるが、着色インクが着色剤として染料を含むものであっても、形成される着色部の耐光性を十分に優れたものとすることができる。また、一旦調製した着色インクを長期間にわたって好適に使用することができるため、着色インクの交換、液滴吐出装置内における着色インクの置換の頻度を少なくすることができるため、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるカラーフィルターの品質の安定性も向上する。
重合体Bは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Bが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、少なくともアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有するものである。
【0052】
(アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1)
重合体Bは、少なくとも式(1)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなるものである。このようなアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有することにより、重合体B中にアルコキシシリル基を容易かつ確実に導入することができる。また、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度、基板に対する密着性、耐光性、耐熱性等を、いずれも、十分に優れたものとすることができる。また、重合体Bが、後述するようなビニル単量体b2等を含むものである場合、重合体の合成を好適に行うことができ、所望の特性を有する重合体Bを容易かつ確実に得ることができる。
【0053】
式(1)において、Rによって示される炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク(着色インク)中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される着色部の硬度、基板に対する密着性、耐光性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。また、重合体Aと重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、形成される着色部の透明性を特に高いものとすることができる。
【0054】
式(1)中、Eによって示される2価の炭化水素基の代表的な例として、直鎖または分枝状のアルキレン基、より具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等が挙げられる。これらのうちでも、炭素数1〜3の直鎖アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン基)が特に好ましい。
【0055】
式(1)中、R、RおよびRによって示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖または分枝状のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル基等が挙げられる。RおよびRによって示される炭素数1〜6のアルコキシル基としては、直鎖または分枝状のアルコキシル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0056】
式(1)で表される単量体の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシブチルフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
重合体B中におけるアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、70〜100wt%であるのが好ましく、80〜100wt%であるのがより好ましい。重合体B中におけるアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1の含有率が前記範囲内の値であると、着色インク中における顔料の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部の硬度、基板に対する密着性、耐光性、耐熱性等を、特に優れたものとすることができる。なお、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を含有しているのが好ましい。
【0058】
(その他の重合性ビニル単量体b2)
重合体Bは、少なくともアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1に加え、さらに、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1以外の重合性ビニル単量体b2を単量体成分として含有していてもよい。このような重合性ビニル単量体b2としては、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1と共重合可能なビニル単量体を用いることができ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合した化合物等の水酸基を備えた重合性ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル、アラルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、FCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHCHOCOCH=CH、H(CFCHCHOCOC(CH)=CH、F(CFCHCHOCOCH=CH、F(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH等のフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、重合体Bは、単量体成分として、前述したようなエポキシ基含有ビニル単量体a1を含有するものではない。また、重合体Bは、単量体成分として、上記のようなフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体を含まないものであるのが好ましい。
【0059】
重合体Bにおける重合性ビニル単量体b2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以下であるのが好ましく、20wt%以下であるのがより好ましい。なお、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、重合性ビニル単量体b2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、各化合物について、重合性ビニル単量体b2の含有率が上記のような条件を満足するのが好ましい。
【0060】
上記のように、重合体Bは、少なくともアルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなるものであればよく、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1以外の単量体成分を含有していてもよいが、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1の単独重合体であるのが好ましい。すなわち、重合体Bは、単量体成分として、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1以外の成分を含まないものであるのが好ましい。これにより、着色インク中における着色剤の分散安定性、着色インクの吐出安定性、および、製造されるカラーフィルターの耐久性を、特に優れたものとすることができる。
未硬化の樹脂材料中に占める重合体Bの割合(含有率)は、特に限定されないが、20〜60wt%であるのが好ましく、25〜55wt%であるのがより好ましい。なお、重合体Bが複数種の化合物の混合物である場合、重合体Bの含有率としては、これらの化合物の含有率の総和を採用する。
【0061】
また、重合体Aの含有率と重合体Bの含有率との比率は、重量比で、25:75〜75:25であるのが好ましく、45:55〜55:45であるのがより好ましい。このような条件を満足することにより、着色インク中における着色剤の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、各部位での色むら、濃度むらをより確実に防止することができ、また、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0062】
[重合体C]
また、未硬化の樹脂材料には、上記成分の他、下記式(2)で表されるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなる重合体Cを含んでいてもよい。
【0063】
【化10】

【0064】
また、このような重合体Cは、前述した重合体A、重合体Bとともに用いるのが好ましい。これにより、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。特に、液滴吐出ヘッドのノズルからの液切れが良好になるとともに、着色インクの固形分のノズルへの固着等をより効果的に防止することができる。また、形成される着色部の耐熱性を特に優れたものとすることができる。
重合体Cは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Cが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、少なくともフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有するものである。
【0065】
(フルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1)
重合体Cは、少なくとも式(2)で表されるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなるものである。このようなフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有することにより、重合体C中にフルオロアルキル基またはフルオロアリール基を容易かつ確実に導入することができる。また、フルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有することにより、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部の耐熱性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Cが、後述するようなビニル単量体c2等を含むものである場合、重合体の合成を好適に行うことができ、所望の特性を有する重合体Cを容易かつ確実に得ることができる。
【0066】
式(2)において、Rによって示される炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。これにより、着色インクの吐出安定性、形成される着色部の耐熱性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
式(2)中、Dによって示される2価の炭化水素基(ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基)の代表的な例として、直鎖または分枝状のアルキレン基、より具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン等が挙げられる。
【0068】
式(2)で表される単量体の具体例としては、例えば、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、FCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHCHOCOCH=CH、H(CFCHCHOCOC(CH)=CH、F(CFCHCHOCOCH=CH、F(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
重合体C中におけるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、15〜100wt%であるのが好ましく、18〜100wt%であるのがより好ましい。重合体C中におけるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1の含有率が前記範囲内の値であると、着色インク中における着色剤の分散安定性、着色インクの吐出安定性、形成される着色部の耐熱性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Cの、重合体Aや重合体Bに対する相溶性を特に優れたものとすることができ、形成される着色部の透明性を特に高いものとすることができる。これに対し、重合体Cにおけるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1の含有率が前記下限値未満であると、上記のようなフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を含有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、フルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を含有しているのが好ましい。
【0070】
(その他の重合性ビニル単量体c2)
重合体Cは、上述したようなフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1以外の重合性ビニル単量体c2を単量体成分として含有していてもよい。このような重合性ビニル単量体c2としては、フルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1と共重合可能なビニル単量体を用いることができ、具体的には、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基と結合した(メタ)アクリロイルイソシアネート、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI−BM」)等の、イソシアネートまたはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えた重合性ビニル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合した化合物等の水酸基を備えた重合性ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル、アラルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、重合体Cは、単量体成分として、前述したようなエポキシ基含有ビニル単量体a1、アルコキシシリル基含有ビニル単量体b1を含有するものではない。
【0071】
重合体C中における重合性ビニル単量体c2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、85wt%以下であるのが好ましく、82wt%以下であるのがより好ましい。なお、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、重合性ビニル単量体c2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、各化合物について、重合性ビニル単量体c2の含有率が上記のような条件を満足するのが好ましい。
【0072】
未硬化の樹脂材料が重合体Cを含むものである場合、未硬化の樹脂材料中に占める重合体Cの割合(含有率)は、特に限定されないが、1〜20wt%であるのが好ましく、2〜15wt%であるのがより好ましい。なお、重合体Cが複数種の化合物の混合物である場合、重合体Cの含有率としては、これらの化合物の含有率の総和を採用する。
また、未硬化の樹脂材料が重合体Cを含むものである場合、重合体Aの含有率と重合体Cの含有率との比率は、重量比で、50:50〜99:1であるのが好ましく、60:40〜98:2であるのがより好ましい。このような条件を満足することにより、着色インク中における着色剤の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとし、カラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に防止し、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0073】
上記のような重合体(重合体A、重合体B、重合体C)の重量平均分子量は、いずれも、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。また、上記のような重合体(重合体A、重合体B、重合体C)の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、いずれも、1〜3程度である。
【0074】
着色インク中における未硬化の樹脂材料の含有率は、0.5〜15wt%であるのが好ましく、1〜8wt%であるのがより好ましい。硬化性樹脂材料の含有率が前記範囲内の値であると、着色インク中における顔料の分散安定性、着色インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。
【0075】
着色剤として顔料を含む場合、着色インクにおいて、着色剤:100重量部に対する、未硬化の樹脂材料の含有率は、15〜50重量部であるのが好ましく、19〜42重量部であるのがより好ましい。このような条件を満足することにより、着色インク中における顔料の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとし、形成されるカラーフィルターの着色部の発色性、コントラストを特に優れたものとすることができる。また、着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
なお、着色インクを構成する未硬化の樹脂材料は、上述した重合体A、重合体B、重合体C以外の重合体を含むものであってもよい。
また、カラーフィルター用インクセットを構成する各着色インクで、樹脂材料の種類、含有率等の条件は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0076】
<着色剤>
カラーフィルターは、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色)を有している。そして、カラーフィルター用インクセットを構成する各着色インクは、それぞれ、形成すべき着色部の色調に応じた着色剤を含むものである。
着色剤としては、各種有機顔料、各種無機顔料、各種染料を用いることができるが、有機顔料であるのが好ましい。有機顔料を用いることにより、例えば、着色インクを用いて形成される着色部の発色性を特に優れたものとすることができる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。より具体的には、有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50,58;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
特に、着色インクが、顔料(赤色顔料)として、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、および/または、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体を含むものであると、当該着色インク(赤色の着色インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、後に詳述するような分散剤、樹脂材料と併用することによる効果がより顕著に発揮され、着色インク中における顔料粒子の長期分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(4)または下記式(5)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
また、特に、着色インクが、顔料(緑色顔料)として、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)を含むものであると、当該着色インク(緑色の着色インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、C.I.ピグメントグリーン58は、明度に優れるという特徴を有しているものの、従来においては、安定的に分散させるのが極めて困難な材料であったが、本発明では、従来においては安定的に分散させるのが極めて困難であったC.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、着色インク中における長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、着色インクが、C.I.ピグメントグリーン58を含むものである場合、さらに、スルホン化された顔料誘導体を副顔料として含むのが好ましい。これにより、着色インクの発色性をさらに優れたものとすることができるとともに、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0081】
顔料として、C.I.ピグメントグリーン58とスルホン化された顔料誘導体とを含む場合、スルホン化された顔料誘導体として、下記式(6)で示される化合物(誘導体)を含有するのが好ましい。これにより、本発明の効果がより顕著に発揮され、着色インク中における顔料粒子の長期分散安定性、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるカラーフィルターにおいて、より優れたコントラストの画像を表示することができる。また、後述するような方法において、微分散工程の効率を特に優れたものとすることができ、短時間で、また、比較的小さなエネルギーで、着色インクを製造することができるため、着色インクの生産性を特に優れたものとすることができ、生産コストの削減にも寄与することができる。
【0082】
【化13】

【0083】
このように、特定の化学構造を有する顔料誘導体(副顔料)を、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料)とともに用いることにより、上記のような優れた効果が得られることは、本発明者が鋭意研究を行った結果、見出したことであり、そのメカニズムの詳細は不明であるが、以下のような理由によるものであると考えられる。
C.I.ピグメントグリーン58を構成する臭素化フタロシアニンは、分子全体として、高度な共役系が形成されており、平面的な構造となるのが、エネルギー的に安定している。そして、臭素化フタロシアニンは、平面状の各分子が積層されるように(平行に)配置することにより、各分子間が有する共役系のπ電子が重なり合った、安定した状態になる。このため、C.I.ピグメントグリーン58は、本来、凝集し易く、溶剤中に安定的に分散させるのが困難である。
【0084】
一方、上記のような顔料誘導体では、式(6)中において窒素原子に結合している水素原子は、フタルイミド構造を構成する酸素原子との間で、水素結合を形成する。このようなことから、式(6)中において窒素原子に結合している水素原子は、実体的には、キノリン構造を構成する窒素原子とともに、フタルイミド構造を構成する酸素原子とも強固に結合しており、上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)では、式(6)中において1〜7の番号を付した7原子による安定的な環構造(7員環構造)が形成されている。このような7員環構造を形成することにより、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とは、非平行状態をとることになる。
【0085】
このように、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とが、非平行となることにより、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化フタロシアニン)に対して適度な親和性を有する顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)が、C.I.ピグメントグリーン58の分子間に入り込み、上記のように、本来、凝集し易いC.I.ピグメントグリーン58を凝集しにくいものとすることができる。さらに、上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)は、分子内にスルホ基を有しているため、後述する溶剤に対する分散性に優れている。以上のようなことが、相乗的に作用し合い、上記のような非常に優れた効果が得られるものと考えられる。
【0086】
C.I.ピグメントグリーン58と上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)とを含む場合、着色インク中における顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料):100重量部に対して、2〜32重量部であるのが好ましく、7〜28重量部であるのがより好ましい。これにより、着色インク中における顔料粒子の長期分散安定性、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、着色インクを用いて製造されるカラーフィルターのコントラスト、明度を特に優れたものとすることができる。
【0087】
また、特に、着色インクが、顔料(青色顔料)として、C.I.ピグメントブルー15:6、または、C.I.ピグメントブルー15の誘導体を含むものであると、当該着色インク(青色の着色インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、着色インク中における顔料粒子の長期分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0088】
着色インク中における着色剤の含有率は、3〜25wt%以上であるのが好ましく、3.5〜20wt%であるのがより好ましく、4.0〜9.4wt%であるのがさらに好ましい。着色剤の含有率が前記範囲内の値であると、着色インクを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、所定の色濃度の着色部を形成するのに要する着色インクの量を少なくすることができ、省資源の観点から有利である。また、カラーフィルターの着色部を形成する際における溶媒の揮発量を抑制することができるため、環境に対する負荷を軽減することができる。また、従来においては、このように比較的高濃度で着色剤を含む場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、着色インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本発明では、比較的高濃度で着色剤を含む場合であっても、後に詳述するように、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。すなわち、着色インクが、上記のように比較的高濃度の着色剤を含む場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0089】
着色インク中における顔料粒子(着色剤粒子)の平均粒径は、特に限定されないが、10〜200nmであるのが好ましく、20〜180nmであるのがより好ましい。これにより、着色インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐光性を十分に優れたものとしつつ、着色インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターにおけるコントラスト等を特に優れたものとすることができる。
【0090】
<溶剤>
また、着色インク中には、上記成分の他、溶剤が含まれていてもよい。
溶剤は、着色インクにおいて、着色剤を分散する分散媒として機能するものである。また、溶剤は、後述するような着色インクの製造方法では、分散液中において、通常、前述したような樹脂材料を溶解する溶媒として機能するものである。そして、通常、着色インクを構成する溶剤(分散媒)は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0091】
溶剤としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。溶剤として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。溶剤としては、これらの中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。液性媒体としては、これらの中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、着色インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、着色インクが、着色剤として顔料を含む場合において、着色インク中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、着色インク中における顔料の含有率を高くした場合であっても、顔料の長期分散安定性を十分に優れたものとすることができる。また、溶剤が上記のような化合物で構成されたものであると、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、着色インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、着色インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。また、溶剤が上記のような化合物で構成されたものであると、後述するようなカラーフィルターの製造方法において、セル内全体に、着色インクを確実に濡れ広がるようにすることができ、溶剤の除去条件を厳密に規定しなくても、平坦化された着色部を容易に形成することができる。言い換えると、ベーク時の画素内形状のコントロールが容易である。
【0092】
溶剤の大気圧(1気圧)下における沸点は、160〜300℃であるのが好ましく、180〜290℃であるのがより好ましく、200〜280℃であるのがさらに好ましい。溶剤の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、着色インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
また、溶剤の25℃における蒸気圧は、0.7mmHg以下であるのが好ましく、0.1mmHg以下であるのがより好ましい。溶剤の蒸気圧が前記範囲内と値であると、着色インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0093】
着色インク中における溶剤の含有率は、50〜98wt%であるのが好ましく、70〜95wt%であるのがより好ましく、80〜93wt%であるのがさらに好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、着色インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。
【0094】
<分散剤>
また、着色インク中には、分散剤が含まれていてもよい。これにより、例えば、着色インクが着色剤として顔料を含む場合において、着色インク中における顔料の分散性、分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、分散剤を用いることにより、後述するような製造方法の微分散工程において、分散剤分散液中に添加された顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の表面に、分散剤が付着(吸着)し、当該顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、着色インクの生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子(微分散された顔料微粒子)の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターの明度、コントラストを特に優れたものとすることができる。
【0095】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子系分散剤を用いることができる。高分子系分散剤としては、例えば、塩基性高分子系分散剤、中性高分子系分散剤、酸性高分子系分散剤等が挙げられる。このような高分子系分散剤としては、例えば、アクリル系、変性アクリル系共重合体からなる分散剤、ウレタン系分散剤、ポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、燐酸エステル系、脂肪族多価カルボン酸等からなる分散剤等が挙げられる。
【0096】
分散剤のより具体的な例としては、例えば、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
特に、本発明においては、分散剤として、所定の酸価を有する分散剤(以下、酸価分散剤とも言う)と、所定のアミン価を有する分散剤(以下、アミン価分散剤とも言う)とを併用するのが好ましい。これにより、着色インクの粘度を低下させる粘度低減効果を発揮する酸価分散剤による効果と、カラーフィルター用インク(第1のインク)の粘度を安定化させるアミン価分散剤による効果とが両立され、着色インク中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。特に、後述するような方法は、顔料の微分散処理を行うのに先立ち、分散剤と熱可塑性樹脂と溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得る予備分散工程を有しているが、このような方法において、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することにより、分散剤の会合(酸価分散剤とアミン価分散剤との会合)を確実に防止し、上述したような顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0098】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0099】
また、アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0100】
酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5〜370KOHmg/gであるのが好ましく、20〜270KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜135KOHmg/gであるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
また、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零であるのが好ましい。
【0101】
アミン価分散剤と酸価分散剤とを併用する場合、アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5〜200KOHmg/gであるのが好ましく、25〜170KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜130KOHmg/gであるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。なお、分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
また、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零であるのが好ましい。
【0102】
また、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、着色インク中における酸価分散剤の含有率をX[wt%]、着色インク中におけるアミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦X/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0103】
また、酸価分散剤の酸価をAV[KOHmg/g]、アミン価分散剤のアミン価をBV[KOHmg/g]、前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.01≦(AV×X)/(BV×X)≦1.9の関係を満足するのが好ましく、0.10≦(AV×X)/(BV×X)≦0.95の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
着色インク中における分散剤の含有率は、特に限定されないが、2.5〜10.2wt%であるのが好ましく、3.2〜9.2wt%であるのがより好ましい。
【0104】
<その他の成分>
着色インクは、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、接着性改良剤;各種光安定化剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤等が挙げられる。
【0105】
また、着色インク中には、上記未硬化の樹脂材料の他に、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これにより、例えば、着色剤として顔料を含む場合において、着色インク中における顔料粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。特に、後述するような製造方法において、予備分散工程で、熱可塑性樹脂を用いることにより、着色インク中における顔料粒子の分散安定性を非常に優れたものとすることができる。
【0106】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色インク中における熱可塑性樹脂の含有率は、特に限定されないが、1.5〜7.7wt%であるのが好ましく、2.1〜7.2wt%であるのがより好ましい。
【0107】
カラーフィルター用インクセットを構成する着色インクの25℃における粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度(動粘度))は、13mPa・s以下であるのが好ましく、12mPa・s以下であるのがより好ましく、5〜11mPa・sであるのがさらに好ましい。これにより、着色インクの吐出安定性がさらに向上し、カラーフィルターの生産性を特に優れたものすることができる。また、着色インクと、後述する硬化用インクとが、特に容易に混合しやすいものとなり、形成される着色部内において着色剤の濃度の不本意なばらつきが生じてしまうのを効果的に防止することができる。なお、着色インクの粘度(動粘度)の測定は、例えば、E型粘度計(例えば、東機産業社製RE−01)を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。本明細書では、特に断りのない限り、「粘度」とは、上記のようにして測定して得られる値のことを指す。
【0108】
[硬化用インク]
カラーフィルター用インクセットを構成する硬化用インクは、前述したような未硬化の樹脂材料の硬化反応を促進する硬化剤を含むものである。
<硬化剤>
硬化用インクに含まれる硬化剤としては、着色インク中に含まれる未硬化の樹脂材料の種類等によって適宜選択され、例えば、架橋剤、熱酸発生剤、光酸発生剤等を用いることができる。
【0109】
架橋剤としては、例えば、アミン系化合物、フェノ−ル系化合物、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、多官能エポキシモノマー、多官能アクリルモノマー、多官能ビニルエーテルモノマー、多官能オキセタンモノマー等を用いることができる。
アミン系化合物の具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン等の脂肪族ポリアミン類、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン類、1、3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族ポリアミン類等、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとから合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0110】
フェノール系化合物の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。
【0111】
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、ドデセニル無水コハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイト等のエステル基含有酸無水物が挙げられる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
【0112】
また、多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。
【0113】
また、多官能エポキシモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業株式会社製、商品名セロキサイド2021、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードGT401、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードPB3600、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。
また、多官能アクリルモノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートトリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0114】
また、多官能ビニルエーテルモノマーの具体例としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シキロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能オキセタンモノマーの具体例としては、キシリレンジオキセタン、ビフェニル型オキセタン、ノボラック型オキセタン等が挙げられる。
【0115】
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する成分であり、その具体例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、特に、スルホニウム塩およびベンゾチアゾリウム塩が好ましい。
熱酸発生剤のより具体的な例としては、商品名として、サンエイドSI−45、同左SI−47、同左SI−60、同左SI−60L、同左SI−80、同左SI−80L、同左SI−100、同左SI−100L、同左SI−145、同左SI−150、同左SI−160、同左SI−110L、同左SI−180L(以上、三新化学工業社製品、商品名)、CI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)社製品、商品名)、CP−66、CP−77(旭電化工業社製品、商品名)、FC−520(3M社製品、商品名)等が挙げられる。
【0116】
光酸発生剤は、光により酸を発生する成分であり、その具体例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。光酸発生剤のより具体的な例としては、商品名として、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−151、SP−170、オプトマーSP−171(以上、旭電化工業株式会社製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業社製、商品名)、UVAC1591(ダイセル・ユーシービー(株)社製、商品名)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758(以上、日本曹達社製品、商品名)、PI−2074(ローヌプーラン社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製品、商品名)、BBI−102、BBI−101、BBI−103、MPI−103、TPS−103、MDS−103、DTS−103、NAT−103、NDS−103(ミドリ化学社製、商品名)、CD−1012(米国、Sartomer社製、商品名)等が挙げられる。
上述した中でも、アミン系化合物、多価カルボン酸無水物、フェノ−ル系化合物は、前述したようなエポキシ系樹脂の硬化剤として好適に用いることができる。また、エポキシ系樹脂の硬化剤としては、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等の硬化触媒も用いることができる。
【0117】
硬化用インク中における上述したような硬化剤の含有率は、着色インク中に含まれる未硬化の樹脂材料の種類および量によっても異なるが、1〜50wt%であるのが好ましく、2〜30wt%であるのがより好ましい。これにより、硬化用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、着色インク中に含まれる未硬化の樹脂材料の硬化反応をより効果的に促進させることができる。また、硬化用インクの保存安定性も特に優れたものとすることができる。
【0118】
また、1つのセル内に吐出される着色インク中に含まれる未硬化の樹脂材料の量を100重量部としたとき、1つのセル内に吐出される硬化用インク中に含まれる硬化剤の量は、5〜50重量部であるのが好ましく、10〜40重量部であるのがより好ましい。これにより、着色インク中に含まれる未硬化の樹脂材料の硬化反応をより効果的に促進させることができる。また、硬化用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0119】
<溶剤>
また、硬化用インク中には、溶剤が含まれていてもよい。これにより、硬化用インクの吐出性を良好なものとすることができる。また、着色インクとの混合性をより高いものとすることができ、形成される着色部内において着色剤の濃度の不本意なばらつきが生じてしまうのをより効果的に防止することができる。
硬化用インクに用いる溶剤としては、上述した着色インクの説明で挙げたものを用いることができる。
【0120】
また、硬化用インクに用いる溶剤は、上述した着色インクに用いる溶剤と同種のものを用いるのが好ましい。これにより、同一のセル内に吐出された着色インクとの混合性をより高いものとすることができ、部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができ、より均一な着色部を形成することができる。
硬化用インク中に含まれる溶剤の含有率は、30〜95wt%であるのが好ましく、40〜90wt%であるのがより好ましい。これにより、硬化用インクの吐出安定性をより効果的に向上させることができるとともに、着色インクとの混合性をより高いものとすることができる。
【0121】
<分散剤>
また、硬化用インク中には、分散剤が含まれていてもよい。これにより、着色インクとの混合性が向上し、形成される着色部内において着色剤の濃度の不本意なばらつきが生じてしまうのをより効果的に防止することができる。また、硬化用インクの吐出安定性をより効果的に向上させることができる。
硬化用インクに用いる分散剤としては、上述した着色インクの説明で挙げたものを用いることができる。
【0122】
また、硬化用インクに用いる分散剤は、上述した着色インクに用いる分散剤と同種のものを用いるのが好ましい。これにより、同一のセル内に吐出された着色インクとの混合性をより高いものとすることができ、形成される着色部内において着色剤の濃度の不本意なばらつきが生じてしまうのをより効果的に防止することができる。
硬化用インク中に含まれる分散剤の含有率は、0.1〜30wt%であるのが好ましく、0.2〜20wt%であるのがより好ましい。これにより、硬化用インクの吐出安定性をより効果的に向上させることができるとともに、着色インクとの混合性をより高いものとすることができる。
【0123】
カラーフィルター用インクセットを構成する硬化用インクの25℃における粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度(動粘度))は、8mPa・s以下であるのが好ましく、6mPa・s以下であるのがより好ましく、2〜6mPa・sであるのがさらに好ましい。これにより、硬化用インクの吐出安定性がさらに向上し、カラーフィルターの生産性を特に優れたものすることができる。また、硬化用インクと、前述した着色インクとが、特に容易に混合しやすいものとなり、形成される着色部内において着色剤の濃度の不本意なばらつきが生じてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0124】
≪カラーフィルター用インク(着色インク)の製造方法≫
次に、上述したようなカラーフィルター用インク(着色インク)の製造方法の好適な実施形態について、説明する。
本実施形態の製造方法は、分散剤と、熱可塑性樹脂と、溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得る予備分散工程と、分散剤分散液に顔料(着色剤)を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行い、顔料分散体を得る微分散工程と、顔料分散体と未硬化の樹脂材料とを混合する未硬化樹脂混合工程とを有する。
【0125】
<予備分散工程>
予備分散工程においては、分散剤と、熱可塑性樹脂と、溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を調製する。これにより、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができる。
このように、本実施形態では、後に詳述する顔料を微分散させる処理に先立ち、顔料を含まない混合物を予備分散することで、最終的に、顔料粒子が均一かつ安定的に分散し、吐出安定性が特に優れた着色インクを得ることができる。
【0126】
本工程において、熱可塑性樹脂を、分散剤および溶剤とともに、混合しておくことにより、後述する微分散工程で、分散剤分散液中に添加された顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の表面に、分散剤および熱可塑性樹脂を付着させ、当該顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、着色インクの生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子(微分散された顔料微粒子)の長期分散安定性、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0127】
本工程で調製する分散剤分散液中における分散剤の含有率(複数種の分散剤を併用する場合には、これらの含有率の総和)は、特に限定されないが、10〜40wt%であるのが好ましく、12〜32wt%であるのがより好ましい。分散剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散剤分散液中における熱可塑性樹脂の含有率は、特に限定されないが、6〜30wt%であるのが好ましく、8〜26wt%であるのがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散剤分散液中における溶剤の含有率は、特に限定されないが、40〜80wt%であるのが好ましく、53〜75wt%であるのがより好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0128】
本工程では、各種攪拌機を用いて上記各成分の混合物を攪拌することにより、分散剤分散液を得る。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間は、特に限定されないが、1〜30分間であるのが好ましく、3〜20分間であるのがより好ましい。これにより、着色インクの生産性を十分に優れたものとしつつ、分散剤の会合状態をより効果的に解くことができ、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子の分散安定性、着色インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0129】
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、500〜4000rpmであるのが好ましく、800〜3000rpmであるのがより好ましい。これにより、着色インクの生産性を十分に優れたものとしつつ、分散剤の会合状態をより効果的に解くことができ、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、熱可塑性樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0130】
<微分散工程>
次に、上記工程で得られた分散剤分散液に上述したような顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)。
このように、本実施形態では、顔料を添加するのに先立ち、上記のような予備分散工程を設けるとともに、顔料を微分散させる工程(微分散工程)において無機ビーズを多段で添加する。微分散工程において、無機ビーズを多段で添加することにより、顔料の微粒化の効率を優れたものとすることができ、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子を十分に小さいものとすることができる。特に、上述したようなハロゲン化フタロシアニンの亜鉛錯体(主顔料)およびスルホン化顔料誘導体(副顔料)を併用することによる効果と、予備分散工程および多段での微分散工程を有する方法を用いることによる効果とが、相乗的に作用し合い、最終的に得られる着色インクは、顔料の分散安定性、および、液滴の吐出安定性が、非常に優れたものとなり、非常に優れた明度、コントラストのカラーフィルターの製造に用いることができるものとなる。
【0131】
これに対し、微分散工程を多段で行わなかった場合には、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子を十分に小さいものとすることが困難になったり、着色インクの生産性が著しく低下する可能性がある。また、微分散工程を多段で行ったとしても、上述したような予備分散工程を省略した場合には、以下のような問題を生じることがある。すなわち、予備分散工程を省略した場合、顔料を添加する際に、分散剤の会合状態が十分に解かれていない(ほぐされていない)ため、微分散工程において、顔料粒子の表面に、分散剤、熱可塑性樹脂を均一に付着させるのが困難となる。また、微分散工程における顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の、溶剤中における分散性を十分に優れたものとすることが困難となる。
【0132】
本工程は、無機ビーズを多段で添加することにより行うものであればよく、3段以上に分けて無機ビーズを添加するものであってもよいが、無機ビーズを2段で添加するのが好ましい。これにより、最終的に得られる着色インク中における顔料粒子の長期分散安定性を十分に優れたものとしつつ、着色インクの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0133】
以下の説明では、無機ビーズを2段で添加する方法、すなわち、微分散工程において、第1の無機ビーズを用いた第1の処理と、第2の無機ビーズを用いた第2の処理とを行う方法について、代表的に説明する。
本工程で用いる無機ビーズ(第1の無機ビーズ、第2の無機ビーズ)は、無機材料で構成されたものであればいかなる材料で構成されたものであってもよいが、無機ビーズの好適な例としては、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
【0134】
[第1の処理]
本工程では、まず、前述した予備分散工程で調製した分散剤分散液に顔料(主顔料および副顔料)を添加し、所定の粒径の第1の無機ビーズを用いて一次微分散する第1の処理を行う。
第1の処理で用いる第1の無機ビーズは、第2の処理で用いる第2の無機ビーズよりも粒径の大きいものであるのが好ましい。これにより、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
【0135】
第1の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜3.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましく、0.5〜1.2mmであるのがさらに好ましい。第1の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。これに対し、第1の無機ビーズの平均粒径が前記下限値未満であると、顔料の種類等によっては、第1の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率が著しく低下する傾向が現れる。また、第1の無機ビーズの平均粒径が前記上限値を超えると、第1の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率は、比較的優れたものとすることができるものの、第2の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率が低下し、微分散工程全体としての顔料の微粒化(微分散)の効率が低下する。
【0136】
第1の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
分散剤分散液に添加する顔料の使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、12重量部以上であるのが好ましく、18〜35重量部であるのがより好ましい。
【0137】
第1の処理は、顔料、第1の無機ビーズを分散剤分散液に添加した状態で、各種攪拌機を用いて攪拌することにより行うことができる。
第1の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第1の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、着色インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)を効率よく進行させることができる。
【0138】
また、第1の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、着色インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、熱可塑性樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0139】
[第2の処理]
第1の処理を行った後、第2の無機ビーズを用いた第2の処理を行う。これにより、顔料粒子が十分に微分散した顔料分散体が得られる。
第2の処理は第1の無機ビーズを含む状態で行うものであってもよいが、第2の処理に先立ち、第1の無機ビーズを除去するのが好ましい。これにより、第2の処理における顔料の微粒化(微分散)の効率を特に優れたものとすることができる。第1の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0140】
第2の処理で用いる第2の無機ビーズは、第1の処理で用いる第1の無機ビーズよりも粒径の小さいものであるのが好ましい。これにより、最終的に得られる着色インク中における顔料を、十分に微粒化(微分散)させたものとすることができ、着色インクにおける顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に特に優れたものとすることができるとともに、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0141】
第2の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましい。第2の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。これに対し、第2の無機ビーズの平均粒径が前記下限値未満であると、顔料の種類等によっては、第2の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率が著しく低下する傾向が現れる。また、第2の無機ビーズの平均粒径が前記上限値を超えると、顔料粒子の微粒化(微分散)を十分に進行させるのが困難になる可能性がある。
第2の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0142】
第2の処理は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
第2の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第2の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、着色インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)を十分に進行させることができる。
【0143】
また、第2の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、着色インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、熱可塑性樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0144】
上記の説明では、微分散処理を2段で行う場合について中心的に説明したが、3段以上の処理を行ってもよい。このような場合、後の処理で用いる無機ビーズの方が、先の処理で用いる無機ビーズよりも小粒径であるのが好ましい。言い換えると、n段目の処理で用いる無機ビーズ(第nの無機ビーズ)の平均粒径は、(n−1)段目の処理で用いる無機ビーズ(第(n−1)の無機ビーズ)の平均粒径よりも小さいものであるのが好ましい。このような関係を満足することにより、顔料粒子の微粒化(微分散)の効率を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる着色インク中の顔料粒子の粒径をより小さいものとすることができる。
なお、微分散工程(例えば、第1の処理、第2の処理)においては、必要に応じて、例えば、溶剤による希釈等の処理を行ってもよい。
【0145】
<未硬化樹脂混合工程>
上記のような微分散工程で得られた顔料分散体を、未硬化の樹脂材料と混合する(未硬化樹脂混合工程)。これにより、着色インクが得られる。
本工程は、第2の処理で用いた第2の無機ビーズを除去した状態で行うのが好ましい。第2の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0146】
本工程は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(本工程の処理時間)は、特に限定されないが、1〜60分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。
なお、本工程では、前記工程で用いた溶剤とは異なる組成の液体を添加してもよい。これにより、前述した予備分散工程での分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有する着色インクを確実に得ることができる。
【0147】
また、本工程においては、顔料分散体と硬化性樹脂材料との混合に先立って、または、顔料分散体と硬化性樹脂材料との混合の後に、前記工程で用いた溶剤の少なくとも一部を除去してもよい。これにより、予備分散工程、微分散工程での溶剤の組成と、最終的に得られる着色インクでの分散媒の組成とを異なるものとすることができる。その結果、前述した予備分散工程での分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有する着色インクを確実に得ることができる。溶剤の除去は、例えば、対象とする液体を、減圧雰囲気下に置いたり、加熱したりすることにより行うことができる。
【0148】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したカラーフィルター用インクを用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0149】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0150】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0151】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものである。
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものであるため、各画素間での特性のばらつきが小さく、不本意な混色(複数種のカラーフィルター用インクの混合)等が確実に防止されている。このため、カラーフィルター1は、色むら、濃度むら等の発生が抑制された、信頼性が高いものとなっている。また、カラーフィルター1は、着色部12の発色性に優れ、コントラストに優れたものとなっている。
【0152】
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0153】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0154】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3.5μmであるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0155】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0156】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、本発明のカラーフィルターの製造方法について説明する。
図2は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図5は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図6は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0157】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、着色インクをセル内に吐出する着色インク付与工程と、着色インクを吐出するセル内に、硬化用インクを吐出する硬化用インク付与とを有するものである。このように、着色インクと硬化用インクとを分けてセル内に吐出することにより、各インクの粘度が高くなることを確実に防止することができ、各インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。この結果、このような製造方法を用いて製造したカラーフィルターは、各部位での濃度むら、色むら等の少ないものとなる。また、着色インクと硬化用インクとに分けることによって、各インクの保存安定性を向上させることができる。
【0158】
また、図2に示すように、本実施形態では、カラーフィルターの製造方法は、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式により着色インク2を隔壁13で囲まれた領域(セル)に付与する着色インク付与工程(1d)と、着色インクが吐出されたセル内に、硬化用インクを吐出する硬化用インク付与工程(1e)と、着色インク2および硬化用インクの混合物から溶媒を除去した後硬化させて着色部12とする着色部形成工程(1f)とを有している。
【0159】
以下、各工程について詳細に説明する。
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0160】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。プリベーク処理は、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒という条件で行うことができる。
【0161】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。PEBは、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒、放射線照射強度:1〜500mJ/cmという条件で行うことができる。また、現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができ、現像処理時間は、例えば、10〜300秒とすることができる。また、現像処理の後、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、例えば、加熱温度:150〜280℃、加熱時間:3〜120分という条件で行うことができる。
【0162】
<着色インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、上述したカラーフィルター用インクセットを構成する着色インク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種の着色インク2を備えたカラーフィルター用インクセットを用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上の着色インク2が混ざり合うことが確実に防止される。
【0163】
着色インク2の吐出は、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、着色インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101から着色インク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれに着色インク2が圧縮空気によって供給される。
【0164】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、着色インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0165】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、着色インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0166】
図4に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0167】
図5に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0168】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0169】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0170】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からは着色インク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118が着色インク2を吐出するノズルとして機能する。
【0171】
図4に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、着色インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0172】
図6(a)および(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給される着色インク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0173】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から着色インク2が供給される。
【0174】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から着色インク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向に着色インク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0175】
制御手段112(図3参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出される着色インク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
【0176】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する着色インク2を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的に着色インク2を付与することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、着色インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色の着色インク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
【0177】
上述したように、本発明のカラーフィルターの製造方法では、硬化用インクを有することにより、着色インクに未硬化の樹脂材料と硬化剤とが同時に含まれないものとなる。このため、着色インクは、粘度が低く好適なものとなり、長期間にわたって、吐出性の均一性が安定的に保持されている。このため、上記のような液滴吐出を行った場合において、各セル14に付与される着色インク2の液滴量の不本意なばらつきが発生することを確実に防止することができる。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して着色インクを吐出する構成であってもよい。
【0178】
<硬化用インク付与工程>
次に、セル14内に硬化用インクを付与して混合物4を得る(1e)。
硬化用インクのセル14内への付与は、インクジェット方式の液滴吐出装置により行われるものであり、上記のような液滴吐出装置100を用い、着色インク2と同様の方法で行うことができる。
【0179】
着色インク付与工程および硬化用インク付与工程は、どちらを先に行うものであってもよいし、同時に行うものであってもよい。すなわち、各セルに対し、着色インクを先に付与するものであってもよいし、硬化用インクを先に付与するものであってもよいし、着色インクと硬化用インクとを同時に付与するものであってもよい。
また、例えば、着色インクと硬化用インクとを交互に付与し、セル上の混合物が所定量になるまでこれを繰り返すものであってもよい。これにより、着色インクと硬化用インクとをより確実に混合させることができ、より均一な混合物を得ることができる。
【0180】
<着色部形成工程>
次に、セル14内の混合物4から溶剤を除去し、さらに、未硬化の樹脂材料を硬化させることにより、各色で厚さが均一となる固形状の着色部12とする(1f)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
溶剤の除去は、例えば、加熱により行うことができる。また、この際、混合物4が付与された基板11を、減圧環境下に置いてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、溶剤の除去をより効率よく進行させることができる。また、本工程においては、紫外線や電子線、もしくは放射線等のエネルギー照射を行ってもよい。これにより、未硬化の樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させることができる。
上述したような製造方法により、各色の着色部12が均一な厚さを有するカラーフィルター1を得ることができる。
【0181】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図7は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0182】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0183】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図7中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図7中下側)から出射する。
【0184】
上述したように、着色部12は、本発明のカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものであるため、各画素間での特性のばらつきが抑制されたものである。その結果、液晶表示装置60において、各部位での色むら、濃度むら等が抑制された画像を安定的に表示することができる。また、着色部12は、本発明のカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものであるため、コントラストに優れている。
【0185】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0186】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0187】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0188】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0189】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0190】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、色むら、濃度むら等の問題を特に生じ易かったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0191】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、着色インクは、前述したような方法によって得られるものに限定されない。
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
【実施例】
【0192】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合体の合成(重合体溶液の調製)
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた1Lの反応容器に、溶媒(溶剤)としての1,3−ブチレングリコールジアセテート:37.6重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):2重量部、および、1,3−ブチレングリコールジアセテート(溶媒):3重量部を加えた後、該フラスコ内に、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名サイクロマーM100):27重量部、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名MOI−BM):1.5重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):1.5重量部を混合させた溶液を滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。一方、重合開始剤としての2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(和光純薬工業株式会社製、商品名V−601):5重量部を1,3−ブチレングリコールジアセテート(溶媒):20重量部に溶解した溶液(重合開始剤溶液)を別の滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。重合開始剤溶液の滴下が終了した後、AIBN:0.2重量部、および、1,3−ブチレングリコールジアセテート(溶媒):1重量部を添加し約2時間同温程度に保持した後、AIBN:0.2重量部、および、1,3−ブチレングリコールジアセテート(溶媒):1重量部を添加し約2時間同温程度に保持し、その後、室温程度まで冷却して、重合体Aを含む重合体溶液A1を得た。
(合成例2〜10)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量、溶媒(溶剤)の種類を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、重合体Aを含む9種の重合体溶液(重合体溶液A2〜A10)が得られた。
【0193】
(合成例11)
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名サイクロマーM100)、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名MOI−BM)、および、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の代わりにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名SZ6030):30重量部を使用した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、重合体Bを含む重合体溶液B1(単独重合体溶液)が得られた。
(合成例12〜16)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量、溶媒(溶剤)の種類を表1に示すように変更した以外は、前記合成例11と同様の操作を行った。その結果、重合体Bを含む5種の重合体溶液(重合体溶液B2〜B6)が得られた。
【0194】
(合成例17)
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名サイクロマーM100)、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名MOI−BM)、および、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の代わりに1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名ビスコート8FM):30重量部を使用した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、重合体Cを含む重合体溶液C1(単独重合体溶液)が得られた。
(合成例18、19)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量、溶媒(溶剤)の種類を表1に示すように変更した以外は、前記合成例17と同様の操作を行った。その結果、重合体Cを含む2種の重合体溶液(重合体溶液C2、C3)が得られた。
【0195】
なお、各合成例で得られた各重合体溶液中の重合開始剤の残存量は、300ppm以下であった。重合開始剤の残存量は、ガスクロマトグラフィー法により測定した。
合成例1〜19での重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いた材料の種類、使用量(合成例1〜19で合成した重合体の組成)を表1にまとめて示した。なお、表中、「S」は溶媒(溶剤)のことを意味し、特に、「S1」は1,3−ブチレングリコールジアセテートのことを示し、「S2」はビス(2−ブトキシエチル)エーテルのことを示し、「S3」はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのことを示し、「S4」はトリプロピレングリコールモノメチルエーテルのことを示す。また、「V−601」は2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルのことを示し、「AIBN」は2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)のことを示し、「a1−1」は(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(サイクロマーM100)のことを示し、「a1−2」は(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレートのことを示し、「a2−1」はメタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(MOI−BM)のことを示し、「a2−2」は2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI」)のことを示し、「a3−1」は2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のことを示し、「a3−2」は4−ヒドロキシブチルアクリレートのことを示し、「a4−1」は1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート(ビスコート8FM)のことを示し、「a4−2」は2−エチルヘキシルメタクリレートのことを示し、「b1−1」はγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(SZ6030)のことを示し、「b1−2」はγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランのことを示し、「b2−1」はエチルメタクリレートのことを示し、「c1−1」は1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート(ビスコート8FM)のことを示し、「c1−2」は1,2,3,4,5−ペンタフルオロスチレンのことを示し、「c2−1」は2,3−ジヒドロキシブチルメタクリレートのことを示し、「c2−2」はシクロヘキシルメタクリレートのことを示す。また、表中には、重合体溶液を構成する重合体の重量平均分子量Mwをあわせて示した。
【0196】
【表1】

【0197】
[2]カラーフィルター用インクセットの調製
(実施例1)
[着色インクの調製]
分散剤としてのディスパービック111:5.04g(14重量部)と、分散剤としてのディスパービック166:28.07g(78重量部)と、熱可塑性樹脂としてのSPCN−17X(昭和高分子社製):19.43g(54重量部)と、溶剤としての1,3−ブチレングリコールジアセテート:91.05g(253重量部)とを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌して予備分散を行うことにより、分散剤分散液を得た(予備分散工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0198】
次に、以下に述べるようにして、予備分散工程で得られた分散剤分散液に、顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた分散剤分散液に、顔料:35.99g(100重量部)を一括で添加し、10分間攪拌を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントレッド254と式(5)で表される顔料誘導体との混合物:25.85gと、C.I.ピグメントレッド177と式(4)で表される顔料誘導体との混合物:7.60gと、式(6)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末:3.55gとを用いた。また、このとき、分散剤分散液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、第1の液性媒体としての1,3−ブチレングリコールジアセテートで希釈した。
【0199】
【化14】

【0200】
【化15】

【0201】
【化16】

【0202】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、第1の液性媒体としての1,3−ブチレングリコールジアセテートで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
【0203】
次に、上記のようにして得られた顔料分散体と、重合体溶液A1と、重合体溶液B1と、重合体溶液C1と、溶剤としての1,3−ブチレングリコールジアセテートとを混合した。本工程は、上記顔料分散体と、重合体溶液A1と、重合体溶液B1と、重合体溶液C1とを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を得た。また、このときのRインクの顔料の含有率は、7.3wt%であった。
【0204】
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、Rインクに対応する、R、G、Bの3色のインクからなる第1のインクセットが得られた。Rインクを構成する顔料の平均粒径、Gインクを構成する顔料の平均粒径、Bインクを構成する顔料の平均粒径は、それぞれ、70nm、70nm、70nmであった。また、Gインクの顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58と、前記式(6)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末とを用い、最終的なGインク中の顔料の含有率を10.1wt%とした。また、Bインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、最終的なBインク中の顔料の含有率を4.9wt%とした。
【0205】
[硬化用インク]
硬化剤としてのメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(大日本インキ化学工業(株)社製、商品名「エピローグB−650」):20重量部と、分散剤としてのディスパービック111:1重量部と、分散剤としてのディスパービック166:2重量部と、溶剤としての1,3−ブチレングリコールジアセテート:77重量部とを内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、攪拌し、硬化用インクを得た。
【0206】
(実施例2〜7)
着色インクの調製に用いる材料の種類・使用量を表2に示すように変更し、硬化用インクの構成材料・含有率を表3に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
(比較例)
実施例1の着色インクの調製における各重合体および溶剤の混合において、硬化剤としてのメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(大日本インキ化学工業(株)社製、商品名「エピローグB−650」)を添加し、各成分の含有率を表2に示すように調製した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インクセットを調製した。
【0207】
前記各実施例および比較例の着色インクおよび硬化用インクの組成および特性を表2、表3にまとめて示した。
なお、表中、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、C.I.ピグメントレッド254と式(5)で表される顔料誘導体との混合物を「PR254D」、C.I.ピグメントレッド177と式(4)で表される顔料誘導体との混合物を「PR177D」、式(6)で表される顔料誘導体で構成された粉末を「SPD」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S1」、ビス(2−ブトキシエチル)エーテルを「S2」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S3」、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを「S4」、ディスパービック111を「DA1」、ディスパービック2095を「DA2」、ディスパービックP104を「DA3」、ディスパービック166を「DA4」、ディスパービック9075を「DA5」、SPCN−17Xを「DR1」、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を「MHF」、イソホロンジアミンを「IPD」で示した。
【0208】
また、表2中、未硬化の樹脂材料の欄には、重合体溶液A1に含まれる重合体をA1で示した。同様に、重合体溶液A2〜A9、B1〜B5、C1〜C3に含まれる重合体を、それそれ、A2〜A9、B1〜B5、C1〜C3で示した。なお、粘度の測定は、25℃の環境下、E型粘度計(東機産業社製、RE−01)を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。
【0209】
【表2】

【0210】
【表3】

【0211】
[3]カラーフィルター用インクの安定性評価(耐久性評価)
[3.1]加熱処理後の外観変化
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセット(着色インク)について、60℃の環境下に、12日間放置した後、目視による観察を行い、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:加熱前からの変化が全く認められない。
B:顔料粒子の凝集・沈降がわずかに認められる。
C:顔料粒子の凝集・沈降がはっきりと認められる。
D:顔料粒子の凝集・沈降が顕著に認められる。
【0212】
[3.2]粘度の変化量
前記各実施例および比較例のカラーフィルター用インクセット(着色インク)について、60℃の環境下に、12日間放置した後の粘度(動粘度)を測定し、製造直後の粘度との差を求めた。すなわち、製造直後の粘度をν[mPa・s]、50℃の環境下に、14日間放置した後の粘度をν[mPa・s]としたとき、ν−νで表される値を求めた。このようにして求められた値について、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0213】
A:ν−νの値が0.2mPa・s未満。
B:ν−νの値が0.2mPa・s以上0.3mPa・s未満。
C:ν−νの値が0.3mPa・s以上0.5mPa・s未満。
D:ν−νの値が0.5mPa・s以上0.7mPa・s未満。
E:ν−νの値が0.7mPa・s以上。
【0214】
[4]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および比較例で得られたカラーフィルター用インクセットを用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
[4.1]着弾位置精度評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および比較例のインクを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、28℃、60%RHの環境下で100000発(100000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された100000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:ズレ量dの平均値が0.05μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.05μm以上0.10μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.10μm以上0.15μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.15μm以上。
【0215】
[4.2]液滴吐出量の安定性評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のインクを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、30℃、55%RHの環境下で各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、100000発(100000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。
A:ΔW/Wの値が、0.023未満。
B:ΔW/Wの値が、0.023以上0.430未満。
C:ΔW/Wの値が、0.430以上0.770未満。
D:ΔW/Wの値が、0.770以上。
【0216】
[4.3]間欠印字性能評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および比較例のインクセットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、30℃、55%RHの環境下で、各インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、10000発(10000滴)の液滴の連続吐出を行い、その後、30秒間、液滴の吐出を中断した(1シーケンス目)。その後、同様に、液滴の連続吐出、および、滴々の吐出の中断の操作を繰り返し行った。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルについて、1シーケンス目に吐出された液滴の平均重量W[ng]と、20シーケンス目に吐出された液滴の平均重量W20[ng]とを求めた。そして、WとW20との差の絶対値の、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(|W−W20|/W)を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。|W−W20|/Wの値が小さいほど、間欠印字性能(液滴吐出量の安定性)に優れていると言える。
A:|W−W20|/Wの値が、0.028未満。
B:|W−W20|/Wの値が、0.028以上0.700未満。
C:|W−W20|/Wの値が、0.700以上。
【0217】
[4.4]連続吐出試験
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置、前記各実施例および比較例のインクセットを用いて、30℃、55%RHの環境下で、液滴吐出装置を64時間、連続で運転させることにより、各インクの吐出を行った。
連続運転後における、液滴吐出ヘッドを構成するノズルの目詰まりの発生率([(目詰まりノズル数)/(全ノズル数)]×100)を求め、ノズルの目詰まりが発生しているものについては、可塑材料で構成されたクリーニング部材により、目詰まりの解消が可能であるか否かを調べた。その結果を、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0218】
A:ノズルの目詰まりの発生がない。
B:ノズルの目詰まりの発生率が0.6%未満(ただし、ゼロを除く)であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
C:ノズルの目詰まりの発生率が0.6%以上1.2%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
D:ノズルの目詰まりの発生率が1.2%以上、または、クリーニングによる目詰まりの解消が不可能。
なお、上記の評価は、各実施例および比較例について、同様の条件で行った。
【0219】
[5]カラーフィルターの製造
前記各実施例および比較例で得られたカラーフィルター用インクセット(製造直後のカラーフィルター用インク)、および、60℃の環境下に10日間放置したカラーフィルター用インクセット(加熱環境下に放置したカラーフィルター用インクセット)を用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
【0220】
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
【0221】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、2.1μmであった。
【0222】
次に、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、着色インクを吐出した。この際、3色の着色インクを用い、各色の着色インクが混色しないようにした。また、液滴吐出ヘッドとしては、ノズルプレートがエポキシ系接着剤(味の素ファインテクノ社社製、AE−40)で接合されたものを用いた。
次に、着色インクが付与されたセル内に、硬化用インクを付与した。なお、セル内に付与された着色インク中の未硬化の樹脂材料100重量部に対して、硬化剤の添加量が表4に示す値となるように、硬化用インクの付与量を調節した。
【0223】
その後、ホットプレート上にて100℃で10分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、3色の着色部が形成された。これにより、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて、それぞれ、8000枚のカラーフィルターを製造した。
【0224】
【表4】

【0225】
[6]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[6.1]色むら、濃度むら
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、8000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0226】
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0227】
[6.2]個体間での特性差
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、1〜10枚目、および、7990〜7999枚目に製造されたカラーフィルターを用意し、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。その結果から、各実施例および各比較例について、それぞれ、1〜10枚目、7990〜7999枚目に製造されたカラーフィルター(合計20枚のカラーフィルター)で最大となる色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0228】
A:色差(ΔE)が2.2未満。
B:色差(ΔE)が2.2以上3.2未満。
C:色差(ΔE)が3.2以上4.2未満。
D:色差(ΔE)が4.2以上5.2未満。
E:色差(ΔE)が5.2以上。
【0229】
[6.3]耐久性
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、7990〜7999枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)が発生していないことを確認した。
【0230】
次に、上記の液晶表示装置からカラーフィルターを取り外した。
取り外した各カラーフィルターを、20℃の環境下に1.5時間、次いで、50℃の環境下に2時間、次いで、20℃の環境下に1.5時間、次いで、−15℃の環境下に3時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(8時間)とし、このサイクルを合計30回繰り返した(合計240時間)。
【0231】
その後、これらのカラーフィルターを用いて、再び、図7に示すような液晶表示装置を組み立てた。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)の発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0232】
A:光漏れ(白抜け、輝点)の発生したカラーフィルターはない。
B:1〜2枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
C:3〜5枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
D:6〜9枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
E:10枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
【0233】
[7]コントラストの評価
前記各実施例および各比較例で得られたカラーフィルター用インク(製造直後のカラーフィルター用インク)、および、60℃の環境下に10日間放置したカラーフィルター用インク(加熱環境下に放置したカラーフィルター用インク)を用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
前記各実施例および各比較例のインクセットを構成するRインクを用いて、それぞれ異なるガラス板(直径:10cm)上に、インクジェット法により、それぞれ、赤色の着色膜を形成した。
着色膜の形成は、ガラス板への液滴吐出後、ホットプレート上にて110℃で8分間の加熱処理を施し、さらに220℃のオーブン内で45分間加熱処理を施すことにより、行った。カラーフィルター用インクの吐出量は、形成される着色膜の厚さが1.5μmとなるように、調整した。
【0234】
このようにして着色膜が形成されたガラス基板について、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、コントラスト(CR)を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3300以上。
B:CRが2200以上3300未満。
C:CRが2200未満。
【0235】
前記各実施例および各比較例のインクセットを構成するGインク、Bインクについても、前記と同様にしてガラス板(直径:10cm)上に、インクジェット法により着色膜を形成し、着色膜が形成されたガラス基板についてコントラストを求めた。
緑色の着色膜が形成されたガラス基板については、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが12000以上。
B:CRが5800以上12000未満。
C:CRが5800未満。
【0236】
青色の着色膜が形成されたガラス基板については、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3000以上。
B:CRが2500以上3000未満。
C:CRが2500未満。
【0237】
なお、上記の評価においては、各カラーフィルター、各ガラス板について、同様の条件で観察、測定を行った。
これらの結果を表5に示す。なお、表中、製造直後のカラーフィルター用インクを「加熱前」と示し、60℃の環境下に10日間放置したカラーフィルター用インク(加熱環境下に放置したカラーフィルター用インク)を「加熱後」と示した。
【0238】
【表5】

【0239】
表5から明らかなように、本発明のカラーフィルター用インクセットでは、掲示安定性(保存安定性)に優れており、カラーフィルター用インクを加熱条件下に放置した後でも、好適に液滴吐出を行うことができ、優れた品質のカラーフィルターを安定的に製造することができた。また、本発明では、液滴吐出の安定性に優れており、製造されたカラーフィルターは、色むら、濃度むら、光漏れの発生が抑制されており、個体間での特性のばらつきも小さいものであった。また、本発明では、カラーフィルターの耐久性にも優れていた。また、本発明では、コントラスト、明度にも優れていた。これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図5】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図6】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図7】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0241】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…チューブ 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた多数個のセル内に着色部を有するカラーフィルターを、インクジェット方式により製造するのに用いるカラーフィルター用インクセットであって、
着色剤と、未硬化の樹脂材料とを含む着色インクと、
前記着色インクと同一のセル内に吐出されることにより、前記未硬化の樹脂材料の硬化反応を促進する硬化剤を含む硬化用インクとを備えることを特徴とするカラーフィルター用インクセット。
【請求項2】
前記未硬化の樹脂材料は、エポキシ系樹脂を含む請求項1に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項3】
前記未硬化の樹脂材料は、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなる重合体Aを含む請求項1または2に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項4】
前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、イソシアネート基またはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えたビニル単量体a2を含有してなる共重合体である請求項3に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項5】
前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、水酸基を備えたビニル単量体a3を含有してなる共重合体である請求項3または4に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項6】
前記未硬化の樹脂材料は、少なくとも下記式(1)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体を単量体成分として含有してなる重合体Bをさらに含む請求項3ないし5のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【化1】

【請求項7】
前記着色インク中における前記重合体Aの含有率と前記重合体Bの含有率との比率は、重量比で、25:75〜75:25である請求項6に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項8】
前記未硬化の樹脂材料は、少なくとも下記式(2)で表されるフルオロアルキル基またはフルオロアリール基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなる重合体Cをさらに含む請求項3ないし7のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【化2】

【請求項9】
前記着色インク中における前記重合体Aの含有率と前記重合体Cの含有率との比率は、重量比で、50:50〜99:1である請求項8に記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項10】
複数種の前記着色インクと、少なくとも1種以上の樹脂材料硬化用インクとを備えるものである請求項1ないし9のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセット。
【請求項11】
多数個のセルが設けられた基板上に、インクをインクジェット方式で吐出して、カラーフィルターを製造する方法であって、
着色剤と、未硬化の樹脂材料とを含む着色インクを前記セル内に吐出する着色インク付与工程と、
前記着色インクを吐出する前記セル内に、前記未硬化の樹脂材料の硬化を促進する硬化剤を含む硬化用インクを吐出する硬化用インク付与工程とを有することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項13】
請求項11に記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項14】
請求項12または13に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−180769(P2009−180769A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17204(P2008−17204)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】