説明

カラーフィルタ用感光性着色組成物、液晶表示装置用カラーフィルタ及び液晶表示装置

【課題】優れた斜め視認性を有する液晶表示装置を製造することのできるカラーフィルタ用感光性着色組成物提供すること。
【解決手段】カラーフィルタの各着色画素3R,3G,3Bを形成する感光性着色組成物であって、顔料、樹脂、モノマー及び溶剤を含有する感光性着色組成物であって、前記顔料として2種以上の顔料を含有し、前記溶剤のうち50%以上の溶剤が、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした場合に蒸発速度10〜35の溶剤であり、モノマーと樹脂の質量比(モノマー/樹脂)が0.3から1.0の範囲であり、かつ、この感光性着色組成物をガラス基板上に塗布後、乾燥、露光、現像、ポストベークの工程を経て得られた塗膜の膜応力σが0から+30の範囲にある組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜め方向及び正面の視認性の良好な液晶表示装置と、この液晶表示装置を製造する際に利用される材料に関するものである。すなわち、本発明は、前記液晶表示装置に加えて、このように視認性に優れた液晶表示装置を製造するために必要なカラーフィルタと、このカラーフィルタの製造に必要な感光性着色組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶分子の持つ複屈折性を利用した表示素子であり、液晶セル、偏光素子および光学補償層から構成される。このような液晶表示装置は、光源の種類により、光源を内部に有する構造である透過型と、外部の光源を利用する構造である反射型の2つに大別される。
【0003】
透過型液晶表示装置は、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に配置し、一枚または二枚の光学補償層を液晶セルと偏光素子との間に設けた構成からなる。また、反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、一枚の光学補償層、及び一枚の偏光素子の順に配置した構成を有する。
【0004】
液晶セルには、二枚の基板に狭持された棒状液晶性分子が配向して封入されており、二枚の基板の両側もしくは片側に配置された電極層に電圧を加えることにより、棒状液晶性分子の配向状態を変化させて光の透過/遮光をスイッチングするしくみとなっている。
【0005】
液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いで、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensated Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードのものが提案されている。
【0006】
偏光素子は、一般に、ポリビニルアルコール(以下、PVAと称する)にヨウ素を拡散して延伸した偏光膜の両側にトリアセチルセルロース(以下、TACと称する)からなる二枚の透明保護膜を取り付けた構成を有する。
【0007】
光学補償層としては様々なものが提案されているが、例えば、高視野角な範囲において表示特性が良好なVAモード液晶表示装置では、三次元の主屈折率nx,ny,nzに対し、nx≧ny>nzで表される屈折率楕円体を有する二軸性位相差フィルムが併用されている(非特許文献1参照)。
【0008】
近年、液晶表示装置は、その薄型ゆえの省スペース性や軽量性、また省電力性などが評価され、テレビ視聴機としても急速な広がりを見せるとともに、輝度、コントラストや全方位の視認性などの表示性能をより高めることが強く要求されるようになっている。
【0009】
具体的には、テレビ用途としては、より高コントラスト、広視野角表示が可能なノーマリーブラックモードのIPSやVAの液晶表示装置が特に好まれて使用されており、上述した光学補償層も、正面から見た時の黒表示時の色付きや、斜めから見たときの色変化が最小となるように設計されたものが使用されている。
【0010】
しかしながら、上述したVAモード液晶表示装置に用いられる光学補償層は、一般的に二軸方向に延伸して形成される二軸性の位相差フィルムであるか、重合性液晶性及び/又は非重合性液晶性材料を塗布して形成される位相差フィルムであることがほとんどで、三次元の主屈折率nx,ny,nzに対し近時求められる高度な表示品質のレベルで制御して製造することが困難であった。
【0011】
具体的には、液晶材料の複屈折性のみならず、カラーフィルタを構成する赤色、緑色および青色の着色画素層が有する厚み方向位相差値(以下、Rth(R)、Rth(G)、Rth(B)と称する)まで考慮して光学補償層の三次元の主屈折率を決定して製造する必要があるが、nx,nyの2つのパラメータで表される面内の位相差値と、nx,ny,nzの3つのパラメータで表される厚み方向の位相差値を同時に精度良く制御することに加えて、液晶材料の複屈折率の波長分散、およびカラーフィルタを構成する赤色、緑色および青色の各着色画素層の、それぞれ赤領域、緑領域、青領域の波長の光に対する厚み方向位相差値の両方を補償する波長分散性を光学補償層に持たせることは困難であり、従来の液晶表示装置では、まだ最適な値に設計されているとは言えなかった。
【0012】
この結果、表示面に対して正面(垂直方向)からの視認性は良いが、45度など斜めから観察した視認性(以下、斜め視認性と略称する)において、最適に光学補償されていないため、ある特定の色だけが光漏れすることになり、黒表示時に赤味や青味など、あるいは緑味などの色付きを生じさせてしまうことになる。
【0013】
液晶表示装置に用いられる他の部材に比べて、カラーフィルタのリタデーションは比較的小さいものであったために、従来方式の液晶表示装置ではカラーフィルタのリタデーションはほとんど考慮されずに光学補償層の補償能が設計されていたが、高コントラストや広い視野角特性が要求される液晶テレビなどでは無視できないレベルとなってきた。
【0014】
特に1000、あるいは3000以上の高コントラストの液晶表示装置では、要求される黒表示の画質に高いものが求められ、問題となってきた。
【0015】
これに対して、着色高分子薄膜の側鎖に平面構造基を有する高分子を含有させるか、又は着色高分子薄膜に高分子と正負逆の複屈折率をもつ複屈折低減粒子を含有させることで、カラーフィルタのもつリタデーション量を低減させる試みがなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0016】
また、カラーフィルタの青色領域の面内位相差を緑色領域や赤色領域よりも大きくすることで、青の漏れ光を大きくして全体的に青と補色関係にある黄味付きを相殺し、液晶表示装置を斜めから見た場合に全体が黄色に着色することを改善する方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0017】
さらに、カラーフィルタの赤色、緑色、および青色画素の厚み方向位相差値Rth(R)、Rth(G)、Rth(B)を液晶材料や位相差フィルムの波長分散性に合わせてRth(R)>Rth(G)>Rth(B)またはRth(R)<Rth(G)<Rth(B)とすることで、斜め視認性を改善する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0018】
しかしながら、カラーフィルタのもつ厚み方向位相差値は、用いる顔料種によって大きく異なることや、また該顔料の微細化や分散、あるいはマトリックス樹脂(たとえばアクリル樹脂やカルド樹脂など)によって厚み方向位相差値の程度も大きくなることを本発明者らは見出しており、これら高分子薄膜や複屈折低減粒子を含有させる方法では十分な効果が得られず、上述の問題を解決できなかった。
【0019】
高コントラスト液晶表示装置向けの、有機顔料の分散性が良いアクリル樹脂に代表される透明樹脂を基材とするカラーフィルタでは、要求される高コントラスト値(1000以上、より好ましくは、3000以上)を維持しながら斜め視認性を改善することは困難であった。特に、高精細化、高コントラスト化が要求される近年では、高精細なパターンをフォトリソグラフィーで得つつ、斜め視認性を改善することは困難であった。
【0020】
加えて、従来の技術では、単純に複屈折の小さいカラーフィルタが優れたカラーフィルタであるとされており、斜め視認性を改善する手段については検討されていても、高コントラスト液晶表示装置として、液晶材料および光学補償層の複屈折率の波長分散性を考慮し、黒表示に問題ないレベルまでカラーフィルタの各色の厚み方向位相差を最適な値に調整する手段についてはほとんど検討されていなかった。
【0021】
カラーフィルタの着色層における位相差の発現メカニズムについては明確でなく、特に位相差を制御することが困難であったり、また、パターニング特性と位相差を両立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2000−136253号公報
【特許文献2】特開2000−187114号公報
【特許文献3】特開2001−242460号公報
【特許文献4】特開2007−212603号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】石鍋ら、The Society for Information Display Digest, 1094.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、優れた斜め視認性を有する液晶表示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような液晶表示装置を製造することのできるカラーフィルタ用感光性着色組成物と、この感光性着色組成物を用いて形成されたカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、液晶表示装置用カラーフィルタの着色画素を形成する感光性着色組成物であって、顔料、樹脂、モノマー及び溶剤を含有する感光性着色組成物において、
前記顔料として2種以上の顔料を含有し、
前記溶剤のうち50%以上の溶剤が、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした場合に蒸発速度10〜35の溶剤であり、
モノマーと樹脂の質量比(モノマー/樹脂)が0.3から1.0の範囲であり、
かつ、この感光性着色組成物をガラス基板上に塗布後、乾燥、露光、現像、ポストベークの工程を経て得られた塗膜の膜応力σを式(1)にて算出したとき、その膜応力σが0から+30の範囲にあることを特徴とするカラーフィルタ用感光性着色組成物を提供する。
【0026】
σ=E・h/[6(1−λ)R・t]・・・式(1)
(但し、式中、Eは基板のヤング率、hは基板厚(m)、λは基板のポアソン比、tは塗膜厚(m)を表す。また、Rは有効曲率半径(m)を表し、着色塗膜形成前の基板の曲率半径をRとし、着色塗膜形成後の基板の曲率半径をRとして、1/R=1/R
1/Rを充足する数値である。)
本発明の第2の態様は、リタデーション調整剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性着色組成物を提供する。
【0027】
本発明の第3の態様は、前記リタデーション調整剤が、一つ以上の架橋性基を有する平面構造基を有する有機化合物、メラミン化合物、ベンジル系化合物、から選択された1種以上の有機化合物であることを特徴とする請求項2に記載の感光性着色組成物を提供する。
【0028】
本発明の第4の態様は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の感光性着色組成物を使用して着色画素を形成したカラーフィルタであって、前記着色画素の厚み方向位相差Rthを式(2)にて算出したとき、その厚み方向位相差Rthの絶対値が2.0以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタを提供する。
【0029】
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d・・・式(2)
(式中、Nxは着色画素層の平面内のx方向の屈折率であり、Nyは着色画素層の平面内のy方向の屈折率であり、Nzは着色画素層の厚み方向の屈折率であり、NxをNx≧Nyとする遅相軸とする。また、dは着色画素層の厚み(nm)である。)
本発明の第5の態様は、請求項4に記載のカラーフィルタを備える液晶セルと、この液晶セルの両外面にそれぞれ配置された偏光板と、これら偏光板の内側に設けられた光学補償層とを具備する液晶表示装置において、
該液晶表示装置を黒表示させてCIE1960表色系で表される色度(u、v)を測定し、垂直方向から見たときの色度(u(⊥)、v(⊥))と、表示面の法線方向からθ°傾けた方位から見たときの色度(u(θ)、v(θ))との色度差Δuvを下記式(3)で算出したとき、0<θ≦60の範囲でその色度差Δuvが0.02以下であることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0030】
Δuv=[{u(⊥)−u(θ)}+{v(⊥)−v(θ)}1/2・・・式(3)
本発明の第6の態様は、VA方式ないしはIPS方式であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0031】
感光性着色組成物が顔料として2種以上の顔料を含有し、溶剤、モノマーと樹脂の質量比が前記条件を充足し、しかも、膜応力σが0から+30の範囲にあるとき、後述する実施例から分かるように、その厚み方向位相差Rthの絶対値が2.0以下となり、このため、この感光性着色組成物を使用してカラーフィルタを作成すると共に、こうして作成したカラーフィルタを使用した液晶表示装置は、正面方向視認性と斜め方向視認性との間に差異がなく、このため、この両者が優れた液晶表示装置を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラーフィルタを示す概略断面図
【図2】本発明の一実施形態に係るカラーフィルタを備えた液晶表示装置の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る感光性着色組成物は、顔料、樹脂、モノマー及び溶剤を必須の成分として含有するものである。本発明に係る感光性着色組成物は、前記顔料として、2種以上の顔料を含有する必要がある。また、溶剤としては1種類又は2種類以上の溶剤の混合物であってよいが、1種類の溶剤を使用する場合及び2種類以上の溶剤の混合物を使用する場合の
いずれの場合であっても、その50%以上を占める溶剤が、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした場合に蒸発速度10〜35の溶剤でなければならない。また、前記モノマーと樹脂の質量比(モノマー/樹脂)が0.3から1.0の範囲にある必要がある。そして、これらの条件を充足することに加えて、この感光性着色組成物をガラス基板上に塗布後、乾燥、露光、現像、ポストベークの工程を経て得られた塗膜の膜応力σを式(1)にて算出したとき、その膜応力σが0から+30の範囲にある必要がある。
【0034】
σ=E・h/[6(1−λ)R・t]・・・式(1)
(但し、式中、Eは基板のヤング率、hは基板厚(m)、λは基板のポアソン比、tは塗膜厚(m)を表す。また、Rは有効曲率半径(m)を表し、着色塗膜形成前の基板の曲率半径をRとし、着色塗膜形成後の基板の曲率半径をRとして、1/R=1/R−1/Rを充足する数値である。)
ところで、本発明に係る感光性着色組成物は、前記必須成分に加えて、光重合開始剤を含有すること望ましい。また、必要に応じて、増感剤、連鎖移動剤、顔料を組成物中に均一に分散させる分散助剤、リタデーション調整剤、貯蔵安定剤、密着向上剤などを含むことができる。
【0035】
そして、前記条件を充足する本発明の感光性着色組成物は、液晶表示装置のカラーフィルタの着色画素を形成するために利用されるものである。こうしてこの感光性着色組成物を使用して製造されたカラーフィルタを備える液晶表示装置は、斜め方向および正面の視認性に優れている。
【0036】
このため、まず、カラーフィルタと液晶表示装置について説明し、次に本発明の原理について説明する。そして、前記感光性着色組成物の組成と製造方法及びその使用方法(カラーフィルタの着色画素の形成方法)について説明する。
【0037】
(カラーフィルタ及び液晶表示装置の説明)
図1は、本発明の感光性着色組成物で着色画素3を形成した液晶表示装置用カラーフィルタの構成例を示し、透明基板1上にブラックマトリクス2が設けられ、このブラックマトリクス2により区画された領域に、赤色画素3R、緑色画素3G、及び青色画素3Bの3色の着色画素が形成されている。
【0038】
次に、図2は、本発明の一実施形態に係るカラーフィルタを備えた液晶表示装置4の概略断面図である。図2に示す液晶表示装置4は、液晶TV用のTFT駆動型液晶表示装置の典型例であって、離間対向して配置された第1の基板5と第2の基板とを備え、それらの間には、液晶(LC)が封入されている。
【0039】
なお、図から分かるように、カラーフィルタを構成する前記透明基板1はこの第2の基板として使用されている。そして、この図2において使用されているカラーイルタは、着色画素3を覆って、透明保護膜(図示せず)が形成され、さらにその上に例えばITOからなる透明電極12が形成され、透明電極12を覆って配向層13が設けられている。
【0040】
なお、後述するように、透明基板1として、透明電極を有するものを使用することができ、この場合には、透明保護膜(図示せず)の上の透明電極12を必要としない。
【0041】
液晶(LC)は、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)、IPS(In−Plane switching)、VA(Vertical Alignment)、OCB(Optically Compensated Birefringence)等の液晶配向モードに応じて配向される。
【0042】
第1の基板5の内面には、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ7が形成されており、その上には例えばITOからなる透明電極層8が形成されている。透明電極層8の上には、配向層9が設けられている。また、基板5の外面には、位相差フィルムを構成に含む偏光板10が形成されている。
【0043】
また、透明基板1の外面には、偏光板14が形成されている。なお、偏光板10の下方には、三波長ランプ15を備えたバックライトユニット16が設けられている。
【0044】
(本発明の原理の説明)
液晶表示装置4の表示面をその法線方向(正面方向)から観察したときの視認性と、斜め方向から見たときの視認性とを、共に良好なものとするためには、カラーフィルタの赤色画素3Rの厚み方向位相差値Rth(R)、緑色画素3Gの厚み方向位相差値Rth(G)、および青色画素3Bの厚み方向位相差値Rth(B)のいずれもが、2以下である必要がある。このほかの色彩の着色画素を有する場合には、その着色画素の厚み方向位相差値Rthも2以下である必要がある。
【0045】
ここで、厚み方向位相差値Rthは、それぞれの画素3R,3G,3Bの面内屈折率の平均から厚み方向屈折率を引いた値と、画素3R,3G,3Bの厚み(nm)の積より得られ、Rth(R)は赤色画素3Rを通過する波長610nmの光に対する厚み方向位相差値、Rth(G)は緑色画素3Gを通過する波長545nmの光に対する厚み方向位相差値、Rth(B)は青色画素3Bを通過する波長450nmの光に対する厚み方向位相差値をそれぞれ表している。
【0046】
そして、各着色画素3R,3G,3Bの厚み方向位相差値Rthは、可視域(たとえば光の波長380nm〜780nmの範囲)の透過光ピーク域の波長を含む連続した光を正面および複数の傾斜した角度から各着色画素3R,3G,3Bに照射し、分光エリプソメータなどの位相差測定装置を用いて3次元屈折率を測定することで得られる。
【0047】
例えば、赤色画素3Rでは610nm、緑色画素3Gでは545nm、青色画素3Bでは450nmの波長の光を用い、正面と入射角45度の少なくとも2方向からの光で位相差測定を行い、Nx、Ny、Nzの3次元屈折率を得たのち、以下に示す式(2)により厚み方向位相差値(Rth)を算出する。
【0048】
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d・・・式(2)
式中、Nxは、各着色画素3R,3G,3Bの平面内のx方向の屈折率であり、Nyは、各着色画素3R,3G,3Bの平面内のy方向の屈折率であり、Nzは、各着色画素3R,3G,3Bの厚み方向の屈折率であり、NxをNx≧Nyとする遅相軸とする。dは、各着色画素3R,3G,3Bの厚み(nm)である。
【0049】
この際、測定する対象がカラーフィルタである場合は、着色画素3R,3G,3Bのそれぞれを透過するように加工されたマスクを介して測定することで、各着色画素3R,3G,3Bの位相差値を求めることができる。
【0050】
また、例えば、610nmの波長の光を入射光として使用した場合は、赤色画素3Rのみに起因する位相差値、545nmの場合は緑色画素3Gのみに起因する位相差値、450nmの場合は、青色画素3Bのみに起因する位相差値としてそれぞれ単一着色画素のおおよその値を見積もることができる。
【0051】
ところで、VAモード液晶表示装置に用いられる光学補償層は、一般的に、nx≧ny
>nzで表される屈折率楕円体を有する二軸性位相差フィルムであるか、重合性液晶性及び/又は非重合性液晶性材料を塗布して形成される位相差フィルムであることがほとんどで、これらのフィルムを使用した場合には、位相差フィルムの厚み方向位相差値Rthも通常、波長が大きくなるほど値が大きくなるか、波長が小さくなるほど値が大きくなる波長分散を有することとなる。
【0052】
一般的に斜めから見たときに液晶の複屈折性にも波長分散性を有するVAモード液晶表示装置に対しては、これらの位相差フィルムの厚み方向位相差値Rthの波長分散が液晶の波長分散性を完全に補償していないと、特に黒表示時に斜めから見た表示特性を悪化させる不具合を生じさせる。すなわち、斜めから見たときに、黒表示が黄色味付き視認性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0053】
一方、カラーフィルタの各着色画素3R,3G,3Bの複屈折率の絶対値は0.01以下であることが望ましい。すなわち厚み方向位相差値(Rth)が、限りなくRth(R)=Rth(G)=Rth(B)=0に近いことが通常望ましく、この場合には、カラーフィルタの各着色画素3R,3G,3Bが、黒表示時の斜め方向視認性に影響することはない。しかし、各着色画素3R,3G,3Bの厚み方向位相差値Rth(R),Rth(G),Rth(B)はそれぞれ異なり、一例として赤色画素3Rは正または負の厚み方向位相差値を示し、青色画素3Bは正の厚み方向位相差値を示し、緑色画素3Gは負の厚み方向位相差値を示す性質を有することを見出している。
【0054】
この結果、カラーフィルタの各着色画素3R,3G,3Bが、黒表示時の斜め方向視認性に影響するため、表示面に対して正面(垂直方向)からの視認性は良いが、45度など斜めから観察した視認性において、ある特定の色だけが光漏れすることになり、黒表示時に斜めから見た場合に赤味や黄味、青味、あるいは緑味などの色付きを生じてしまう。
【0055】
カラーフィルタにおいて各着色画素3R,3G,3Bの位相差値Rth(R),Rth(G),Rth(B)がどの値をとるのが最も望ましいかは、他の部材との組み合わせにより変わるが、VAモード液晶表示装置で広く用いられる二軸性の位相差フィルムの場合は、これらのフィルムの厚み方向位相差値が液晶の厚み方向位相差値より小さい値を持つために、各着色画素3R,3G,3Bの位相差値Rth(R),Rth(G),Rth(B)は正の値であることが好ましい。
【0056】
なお、カラーフィルタの高コントラスト化が進み、カラーフィルタの消偏性が小さくなるに従って、黒表示時に正面から見たときの色度は、偏光板のクロスニコルでの青味がたった色度に近づく。このため、正面から見たときと斜めから見た時の色変化を最小にするには、斜めから見たときの色度も青味にする必要がある。
【0057】
すなわち、偏光板の二色性も向上しており、近年においては高コントラストな偏光板が使用されるようになっているが、クロスニコルでの色相は青味であるものがほとんどである。すなわち、偏光板からの400nm付近の波長の光漏れが多いために、黒表示時の正面から見た時の色相は青味となっている。
【0058】
従って、液晶・偏光板・位相差板・配向膜などの液晶表示装置の光学部材の組み合わせにおいて、最適な斜め視認性を得る組み合わせを選定する必要があり、正面から見たときと斜めから見た時の色変化を最小にするには、斜めから見たときの色度も青味にする必要がある。
【0059】
本発明者らは、これらについて鋭意検討した結果、前述のような条件を充足する感光性着色組成物を使用してカラーフィルタの各着色画素3R,3G,3Bを形成し、得られた
カラーフィルタを使用して液晶表示装置を製造した場合には、正面視認性と斜め視認性の両方が優れていることを発見した。
【0060】
なお、本発明に係る感光性着色組成物を使用して形成された各着色画素3R,3G,3Bは、前記式(2)で算出したその厚み方向位相差Rth(R),Rth(G),Rth(B)の絶対値が、いずれの着色画素についても、2.0以下となる。そして、この各着色画素3R,3G,3Bを有するカラーフィルタを使用して製造した液晶表示装置は、この液晶表示装置を黒表示させてCIE1960表色系で表される色度(u、v)を測定し、垂直方向から見たときの色度(u(⊥)、v(⊥))と、表示面の法線方向からθ°傾けた方位から見たときの色度(u(θ)、v(θ))との色度差Δuvを下記式(3)で算出したとき、0<θ≦60の範囲でその色度差Δuvが0.02以下となる。
【0061】
Δuv=[{u(⊥)−u(θ)}+{v(⊥)−v(θ)}1/2・・・式(3)
そして、このように正面から見たときの色度(u(⊥)、v(⊥))と斜め方向から見たときの色度(u(θ)、v(θ))との色度差Δuvが小さいので、正面視認性と斜め視認性との間に差異が生じないのである。
【0062】
ところで、正面視認性に優れた液晶表示装置を製造するためには、次の条件を充足すればよい。
【0063】
すなわち、まず、透明基板上に形成された各着色画素3R,3G,3Bを2枚の偏光板の間に挟み、一方の偏光板側からバックライトを当てて、他方の偏光板を透過した光を輝度計にて測定し、偏光板が平行状態における光の輝度(Lp)と直交状態における光の輝度(Lc)の比より算出されるコントラストCをC=Lp/Lcより算出する。このとき、
各着色画素3R,3G,3Bを形成していない透明基板を2枚の偏光板の間に挟んで測定算出したコントラストをCSとする。また、赤色画素3RのコントラストをCR、黄色画素3YのコントラストをCY、緑色画素3GのコントラストをCG、青色画素3BのコントラストをCBとした場合、CR/CS>0.45、CY/CS>0.45、かつ、CG/CS>0.45、かつ、CB/CS>0.45を満たす場合に、液晶表示装置の黒表示時の正面視認性が優れたものとなる。すなわち、光漏れの少ない締まった黒表示を再現できる。
【0064】
CR/CS>0.45、かつ、CY/CS>0.45、かつ、CG/CS>0.45、かつ、CB/CS>0.45を満たさない場合、すなわち、CR/CS≦0.45、または、CY/CS>0.45、または、CG/CS≦0.45、または、CB/CS≦0.45の場合には、黒表示時の光漏れが多くなり、優れた正面視認性の液晶表示装置が得られなくなる。
【0065】
このため、本発明の係る感光性着色組成物を使用して各着色画素3R,3G,3Bを形成すると共に、これら各着色画素3R,3G,3BのコントラストCR,CG,CBと透明基板のコントラストとの比CR/CS,CG/CS,CB/CSが、いずれも、0.45より大きいとき、正面視認性と斜め視認性の双方に優れた液晶表示装置を製造することができる。
【0066】
(感光性着色組成物の組成の説明)
前述のように、本発明の感光性着色組成物は、顔料、樹脂、モノマー及び溶剤を必須の成分とし、必要に応じて、光重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、顔料を組成物中に均一に分散させる分散助剤、リタデーション調整剤、貯蔵安定剤、密着向上剤などを含有するも
のである。そこで、これら各成分について逐次説明する。
【0067】
(顔料の説明)
本発明の感光性着色組成物は、カラーフィルタの各着色画素3R,3G,3Bを形成する材料として利用されるものである。このため、目的とする着色画素の色彩に応じて適切な色彩の顔料を使用する必要がある。
【0068】
そして、前述のように、本発明の感光性着色組成物には、顔料として2種以上の顔料を含有する必要がある。1つの顔料のみを含む場合には、着色組成物を塗布した後のプロセス、特にポストベークにより、顔料同士の相互作用が大きく働いて各着色画素3R,3G,3Bの膜応力が大きくなる。2種以上の顔料を含むことにより、同じ顔料同士の相互作用を緩和することができ、膜応力を小さくすることができる。
【0069】
例えば、赤色画素3Rを形成する材料として利用される赤色の組成物の場合には、赤色顔料を主たる顔料とし、黄色顔料や橙色顔料を併用すればよい。また、緑色画素3Gを形成する材料として利用される緑色組成物の場合には、緑色顔料に加えて黄色顔料を併用することができる。また、青色画素3Bを形成する材料として利用される青色組成物の場合には、青色顔料に加えて紫色顔料を併用することができる。
【0070】
これら着色顔料としては有機顔料を使用することが望ましい。無機顔料を使用することもできるが、一般に無機顔料は有機顔料と組み合わせて補助的に用いられ、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保する役割を果たす。
【0071】
このため、以下、これら各感光性着色組成物に使用できる有機顔料について説明する。なお、念のために無機顔料を例示すると、例えば、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。
【0072】
前記赤色組成物に利用できる赤色の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、242、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料が例示できる。
【0073】
また、前記赤色組成物に利用できる黄色の有機顔料としては、C.I.Pigment
Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、147、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。
【0074】
また、前記赤色組成物に利用できる橙色の有機顔料としては、C.I.Pigment
Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等が挙げられる。
【0075】
なお、これら顔料のなかでジケトピロロピロール系赤色顔料、アントラキノン系赤色顔
料のうち1種類以上を含む場合には、容易に厚み方向位相差Rth(R)を制御することができる。すなわち、まずジケトピロロピロール系赤色顔料は、微細化してその一次粒径の平均値を小さくすることで厚み方向位相差Rth(R)を正の方向へ移動させることができ、一次粒径の平均値を粗大なままにすることで厚み方向位相差Rth(R)を負の方向へもっていくことが可能であり、その絶対値もある程度制御可能である。また、アントラキノン系赤色顔料は、微細化処理に関わらず0に近い厚み方向位相差Rth(R)を得やすい。
【0076】
ジケトピロロピロール系赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 254、アントラキノン系赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 177が好ましく使用できる。
【0077】
なお、厚み方向位相差Rth(R)の値は、用いる顔料の配合比による加成律が、ほぼ成り立つと言って良い。このため、赤色顔料の使用量は、赤色顔料の合計重量を基準として、ジケトピロロピロール系赤色顔料を0〜100重量%、好ましくは10〜90重量%、アントラキノン系赤色顔料を0〜66重量%、好ましくは5〜70重量%とすることが、赤色画素3Rの色相や明度、膜厚、コントラスト等の点から好ましく、特に、コントラストCRに着目した場合、ジケトピロロピロール系赤色顔料を25〜75重量%、アントラキノン系赤色顔料を30〜60重量%とすることがより好ましい。
【0078】
また、この赤色顔料と併用する黄色顔料としては、高コントラスト化の点からアゾ金属錯体系黄色顔料が好ましい。アゾ金属錯体系黄色顔料としてはC.I.Pigment Yellow 150が、優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点から好適である。アゾ金属錯体系黄色顔料の使用量は、前記赤色組成物に含まれる顔料の合計重量を基準として5〜25重量%であることが好ましく、5重量%未満の場合には、充分な明度向上などの色相調整が困難となり、30重量%を超える場合には、色相が黄味にシフトし過ぎるため、色再現性は悪くなる。
【0079】
次に、緑色組成物に利用できる緑色の有機顔料としては、ハロゲン化金属フタロシアニン系緑色顔料が使用できる。例えば、C.I.Pigment Green 7、36、58である。また、緑色組成物に利用できる黄色の有機顔料としては、アゾ系黄色顔料やキノフタロン系黄色顔料が使用できる。アゾ系黄色顔料としてはC.I.PigmentYellow 150、キノフタロン系黄色顔料としてはC.I.Pigment Yellow138が、優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点から好適である。
【0080】
これらハロゲン化金属フタロシアニン系緑色顔料、アゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料のうち、少なくとも1種の顔料を含む緑色組成物によって緑色画素3Gを形成した場合、厚み方向位相差Rth(G)を容易に制御することができる。すなわち、ハロゲン化金属フタロシアニン緑色顔料は、中心金属を選択することにより、ある程度方向位相差Rth(G)を制御することが可能であり、例えば、中心金属が銅の場合、方向位相差Rth(G)は小さめの値となるが、中心金属が亜鉛の場合は、方向位相差Rth(G)の値は銅が中心金属のときよりも大きくすることができる。また、アゾ系黄色顔料を使用した場合には、微細化処理に関わらず正の方向位相差Rth(G)を、キノフタロン系黄色顔料を使用した場合には、微細化処理に関わらず負の方向位相差Rth(G)が得られる。
【0081】
顔料の使用量は、緑色組成物に含まれる顔料の合計重量を基準として、ハロゲン化金属フタロシアニン系緑色顔料を30〜90重量%、アゾ系黄色顔料又はキノフタロン系黄色顔料を0〜60重量%、好ましくは5〜60重量%とすることが、緑色画素3Gの色相や
明度、膜厚等の点から好ましい。さらに好ましくは、ハロゲン化金属フタロシアニン系緑色顔料を50〜85重量%、アゾ系黄色顔料を5〜45重量%、キノフタロン系黄色顔料を5〜45重量%である。
【0082】
次に、青色組成物に利用できる青色の有機顔料としては、金属フタロシアニン系青色顔料が使用できる。例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等である。中でも、優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点からC.I.Pigment Blue 15:6が好適である。
【0083】
また、青色組成物に利用できる紫色の有機顔料としては、ジオキサジン系紫色顔料が使用できる。例えば、C.I.PigmentViolet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等である。中でも、優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点からC.I.Pigment Violet 23が好適である。
【0084】
これら顔料のなかで金属フタロシアニン系青色顔料と、ジオキサジン系紫色顔料のうち1種類以上を含む青色組成物で青色画素3Bを形成した場合には、負から0に近い厚み方向位相差Rth(B)を得ることが容易になる。
【0085】
その使用量は、青色組成物に含まれる顔料の合計重量を基準として、金属フタロシアニン系青色顔料を40〜100重量%、ジオキサジン系紫色顔料を0〜50重量%、好ましくは1〜50重量%とすることが、画素の色相や明度、膜厚等の点から好ましく、さらに、金属フタロシアニン系青色顔料を50〜98重量%、ジオキサジン系紫色顔料を2〜25重量%とすることがより好ましい。
【0086】
次に、良好な正面視認性、特に黒表示において黒輝度の低い引き締まった色を得るには、各着色画素3R,3G,3Bに含まれる顔料の1次粒子が小さいことが望ましい。このため、各着色画素3R,3G,3Bの材料となる感光性着色組成物に含まれる顔料の1次粒子も小さいことが望ましい。すなわち、前記感光性着色組成物に含まれる顔料の1次粒子の粒度分布が、個数粒度分布の積算曲線において積算量が全体の50%に相当する粒子径d50(中央値)が40nm以下であるのが好ましい。粒子径の中央値d50が40nmを超える有機顔料は、正面視認性に悪影響を与える。これに対し、中央値d50が40nm以下である場合、カラーフィルタの高輝度化、高コントラスト化を実現して、正面方向からの視認性の良い液晶表示装置を得ることができる。なお、中央値d50は、望ましくは30以下、より望ましくは20以下である。また、粒子径d50は5nm以上であることが望ましい。これより小さいと、顔料の分散が難しくなり、着色組成物としての安定性を保って流動性を確保することが困難になる。その結果、カラーフィルタの輝度、色特性が悪化する。なお、顔料の粒子径の中央値d50は、顔料を透過型電子顕微鏡で撮影し、その写真の画像解析により算出できる。
【0087】
顔料の粒子径の中央値d50および厚み方向位相差を制御する手段としては、顔料を機械的に粉砕して中央値d50および粒子形状を制御する方法(磨砕法と呼ぶ)、良溶媒に溶解したものを貧溶媒に投入して所望の中央値d50および粒子形状の顔料を析出させる方法(析出法と呼ぶ)、および合成時に所望の中央値d50および粒子形状の顔料を製造する方法(合成析出法と呼ぶ)等がある。使用する顔料の合成法や化学的性質等により、個々の顔料について適当な方法を選択して行うことができる。
【0088】
以下に、それぞれの方法について説明するが、本発明の一実施形態に係るカラーフィルタを構成する着色画素層に含まれる顔料の一次粒子径および粒子形状の制御方法としては
、いずれを用いてもよい。
【0089】
磨砕法は、顔料をボールミル、サンドミルまたはニーダーなどを用いて、食塩等の水溶性の無機塩などの磨砕剤およびそれを溶解しない水溶性有機溶剤とともに機械的に混練(以下、この処理をソルトミリングと呼ぶ)した後、無機塩と有機溶剤を水洗除去し、乾燥することにより所望の一次粒子径および粒子形状の顔料を得る方法である。
【0090】
ただし、ソルトミリング処理により、顔料が結晶成長する場合があるため、処理時に上記有機溶剤に少なくとも一部溶解する固形の樹脂や顔料分散剤を加えて、結晶成長を防ぐ方法が有効である。
【0091】
顔料と無機塩の比率は、無機塩の比率が多くなると顔料の微細化効率は良くなるが、顔料の処理量が少なくなるために生産性が低下する。一般的には、顔料が1重量部に対して無機塩を1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部用いるのが良い。また、上記水溶性有機溶剤は、顔料と無機塩とが均一な固まりとなるように加えるもので、顔料と無機塩との配合比にもよるが、通常は顔料1重量部に対して0.5〜30重量部の量で用いられる。
【0092】
磨砕法についてさらに具体的には、顔料と水溶性の無機塩の混合物に湿潤剤として少量の水溶性有機溶剤を加え、ニーダー等で強く練り込んだ後、この混合物を水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌し、スラリー状とする。次に、このスラリーを濾過、水洗して乾燥することにより、所望の一次粒子径および粒子形状の顔料を得ることができる。
【0093】
析出法は、顔料を適当な良溶媒に溶解させたのち、貧溶媒と混ぜ合わせて、所望の一次粒子径および粒子形状の顔料を析出させる方法であり、溶媒の種類や量、析出温度、析出速度などにより、一次粒子径の大きさおよび粒子形状を制御することができる。
【0094】
一般に、顔料は溶媒に溶けにくいため、使用できる溶媒は限られるが、例として濃硫酸、ポリリン酸、クロロスルホン酸などの強酸性溶媒、または液体アンモニア、ナトリウムメチラートのジメチルホルムアミド溶液などの塩基性溶媒などが知られている。
【0095】
析出法の代表例としては、酸性溶剤に顔料を溶解させた溶液を他の溶媒中に注入し、再析出させて微細粒子を得るアシッドペースティング法がある。工業的にはコストの観点から硫酸溶液を水に注入する方法が一般的である。使用する硫酸の濃度は特に限定されないが、95〜100重量%が好ましい。顔料に対する硫酸の使用量は特に限定されないが、少なすぎると溶液粘度が高くハンドリングが悪くなり、逆に多すぎると顔料の処理効率が低下するため、顔料に対して3〜10倍の重量の硫酸を用いることが好ましい。
【0096】
なお、顔料は完全溶解している必要はない。溶解時の温度は0〜50℃が好ましく、これ以下では硫酸が凍結する恐れがあり、かつ溶解度も低くなる。高温すぎると副反応が起こりやすくなる。
【0097】
注入される水の温度は1〜60℃が好ましく、この温度以上で注入を始めると硫酸の溶解熱で沸騰が生じ、作業が危険である。これ以下の温度では凍結してしまう。注入にかける時間は顔料1部に対して0.1〜30分が好ましい。時間が長くなるほど一次粒子径は大きくなる傾向がある。
【0098】
次に、析出法と磨砕法とを組み合わせて顔料の一次粒子径および粒子形状を制御することも可能である。例えば、ソルトミリング法とアシッドペースティングの組み合わせである。この方法によれば、顔料の整粒度合を考慮しつつ行うことができ、さらにはこのとき
分散体としての流動性も確保できる。
【0099】
ソルトミリング時あるいはアシッドペースティング時には、一次粒子径および粒子形状制御に伴う顔料の凝集を防ぐために、下記に示す色素誘導体や樹脂型顔料分散剤、界面活性剤等の分散助剤を併用することもできる。
【0100】
また、一次粒子径および粒子形状制御を2種類以上の顔料を共存させた形で行うことにより、単独では分散が困難な顔料であっても安定な分散体として仕上げることができる。
【0101】
特殊な析出法としてロイコ法がある。フラバントロン系、ペリノン系、ペリレン系、インダントロン系等の建染染料系顔料は、アルカリ性ハイドロサルファイトで還元すると、キノン基がハイドロキノンのナトリウム塩(ロイコ化合物)になって水溶性になる。この水溶液に適当な酸化剤を加えて酸化することにより、水に不溶性の一次粒子径の小さな顔料を析出させることができる。
【0102】
合成析出法は、顔料を合成すると同時に所望の一次粒子径および粒子形状の顔料を析出させる方法である。しかし、生成した微細顔料を溶媒中から取り出す場合、顔料粒子が凝集して大きな二次粒子になっていないと一般的な分離法である濾過が困難になるため、通常、二次凝集が起きやすい水系で合成されるアゾ系等の顔料に適用されている。
【0103】
さらに、顔料の一次粒子径および粒子形状を制御する手段として、顔料を高速のサンドミル等で長時間分散すること(顔料を乾式粉砕する、いわゆるドライミリング法)により、顔料の一次粒子径を小さくすると同時に分散することも可能である。
【0104】
なお、顔料は、本発明に係る感光性着色組成物の全固形分量を基準(100重量%)として5〜70重量%の割合で含有されることが好ましい。より好ましくは、20〜50重量%である。
【0105】
(溶剤の説明)
前述のように、本発明の感光性着色組成物に含まれる溶剤は1種類の溶剤又は2種類以上の溶剤の混合物であってよいが、1種類の溶剤を使用する場合及び2種類以上の溶剤の混合物を使用する場合のいずれの場合であっても、その50%以上を占める溶剤が、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした場合に蒸発速度10〜35の溶剤でなければならない。このような溶剤としては、エチル−3−エトキシプロピオネート(EEP,蒸発速度12)、シクロヘキサノン(蒸発速度23)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PgMAc,蒸発速度34)などが挙げられる。また、蒸発速度が10から35の範囲であれば、これ以外の溶剤も選択できる。
【0106】
なお、50%未満を占める溶剤は、その蒸発速度に拘わらず使用できる。例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等である。
【0107】
溶剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、800〜4000重量部、好ましくは1000〜2500重量部の量で用いることができる。
【0108】
(樹脂の説明)
本発明の感光性着色組成物に含まれる樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の透明樹脂が望ましい。透明樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は感光性樹脂であってもよい。なお、前述のように、モノマーと樹脂の質量比(モノマー/樹脂)が0.3から1.0の範囲にある必要がある。
【0109】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0110】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0111】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。
【0112】
また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いることができる。
【0113】
樹脂は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、20〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の量で用いることができる。
【0114】
(モノマーの説明)
モノマーは、紫外線などの放射線を照射することにより硬化して透明樹脂を生成するものである。
【0115】
透明樹脂の前駆体であるモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0116】
モノマーの配合量は、前述のように、モノマーと樹脂の質量比(モノマー/樹脂)が0.3から1.0の範囲になる量である。
【0117】
(光重合開始剤の説明)
前述のように、本発明の感光性着色組成物には光重合開始剤を添加することが望ましい。この光重合開始剤を含む感光性着色組成物の塗膜に紫外線などの放射線を照射することにより、その照射位置の塗膜に含まれるモノマーが重合し、あるいは架橋して、この位置の塗膜が硬化する。そして、現像剤にて現像することにより、未硬化の部位の塗膜が除去され、硬化済みの前記塗膜が選択的に残存して、各着色画素3R,3G,3Bを形成することが可能である。
【0118】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−sトリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。
【0119】
光重合開始剤は、感光性着色組成物中の顔料100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0120】
(増感剤の説明)
上記光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、これに加えて、増感剤を感光性着色組成物に添加することができる。
【0121】
増感剤としては、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が例示できる。
【0122】
増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で含有させることができる。
【0123】
(連鎖移動剤の説明)
前述のように、感光性着色組成物には、必要に応じて連鎖移動剤を添加することができる。代表的な連鎖移動剤としては多官能チオールが例示できる。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオールは、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0124】
多官能チオールは、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.2〜150重量部、好ましくは0.2〜100重量部の量で用いることができる。
【0125】
(分散助剤の説明)
分散助剤は、顔料を感光性着色組成物中に均一に分散させる目的で添加するものである。このような分散助剤としては、樹脂型顔料分散助剤、界面活性剤、顔料誘導体等が例示できる。
【0126】
分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて顔料を顔料担体および有機溶剤中に分散してなる着色組成物を用いた場合には、透明性に優れたカラーフィルタが得られる。分散助剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.1〜30重量部の量で用いることができる。
【0127】
樹脂型顔料分散助剤としては、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。
【0128】
樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0129】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカ
オチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0130】
色素誘導体は、有機色素に置換基を導入した化合物であり、用いる顔料の色相に近いものが好ましいが、添加量が少なければ色相の異なるものを用いても良い。
【0131】
有機色素には、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。
【0132】
色素誘導体としては、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用できる。特に、塩基性基を有する色素誘導体は、顔料の分散効果が大きいため、好適に用いられる。これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0133】
(リタデーション調整剤の説明)
リタデーション調整剤は、液晶表示装置の斜め視認性を改善する目的で添加するものである。リタデーション調整剤は、感光性着色組成物を用いて形成した各着色画素3R,3G,3Bの厚み方向位相差Rth(R),Rth(G),Rth(B)を調整できる添加剤である。
【0134】
リタデーション調整剤として使用することが出来る化合物は、1000あるいは3000以上の高いコントラストを確保するために分散性の良好な有機化合物であることが望ましい。
【0135】
具体的には、無機物など粒子形状のものも採用可能であるが、光散乱性や消偏性の観点から避けたほうが望ましい。
【0136】
具体的なリタデーション調整剤としては、一つ以上の架橋性基を有する平面構造基を有する有機化合物、メラミン樹脂、ポリフィリン化合物、ベンジル系化合物、スチレン系化合物、および重合性液晶化合物から選択された1種以上を選択することができる。
【0137】
平面構造基としては、芳香族環を少なくとも1つ以上有する置換基が例示できる。例えば、単環式炭化水素では、フェニル基、クメニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、トリチル基など、多環式炭化水素ではペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビフェニレン基、アセナフチレン基、フルオレン基、フェナントリル基、アントラセン基、トリフェニレン基、ピレン基、ナフタセン基、ペンタフェン基、ペンタセン基、テトラフェニレン基、トリナフチレン基などを有する公知の化合物を、平面構造基を有する有機化合物として使用することができる。ヘテロ単環化合物の中では、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、トリアジン基など、ヘテロ多環化合物では、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シノリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、アクリジニル基、ポルフィリン基などを有する公知の化合物が例示でき、これらは、炭化水素基、ハロゲン基などの置換基を有するものであってもよい。
【0138】
該平面構造基に付属する少なくとも1つ以上の架橋性基としては、下記式(A〜U)により表される不飽和重合性基(A、B、C、D、E、F)または官能基(I、J、K、L、M、N、O)または熱重合性基(G、H、P、Q、R、S、T、U)が好ましく、エポキシ基(G、H)がさらに好ましく用いられ、P〜Uで表される架橋性基が最も好ましく用いられる。
【0139】
また、不飽和重合性基では、エチレン性不飽和重合性基(A、B、C、D)がさらに好ましく、また、−CHNHCOCH=CH、−CHNHCO(CHCH=CH(CHCH、−OCO(C)O(CHCH=CHなども好適に用いられる。
【0140】
これらの架橋性基は、該平面構造基に少なくとも1つ以上の水酸基等の反応性官能基を有する場合に、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシイソシアネート、トリレン−2、4−ジイソシアネート等の上記反応性官能基と反応する官能基およびエチレン性不飽和基を有する化合物を公知の方法で反応させることによって、容易に得られる。
【0141】
【化1】

メラミン化合物としては、下記一般式(2)で表される市販のものを好ましく用いることができるが、上述の平面構造基を有する化合物であれば何でもよく公知のものを使用できる。以下にメラミン化合物を例示する。
【0142】
【化2】

(式中、R、R、Rはそれぞれ水素原子、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシn−ブチル基、R、R、Rはそれぞれメチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシn−ブチル基である。)
また、上記以外に1,3,5−トリアジン環を有する化合物で、例えば特開2001−166144号公報に記載のものを使用することができる。また下記一般式(3)に示す化合物も好ましく用いられる。
【0143】
【化3】

(R〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基であり、水素原子であることが特に好ましい。)
または下記一般式(4)で表されるポルフィリン骨格を有する化合物を好ましく用いることができる。nは1〜20の整数であり、2であるものが好ましく用いられる。
【0144】
【化4】

(式中、R15〜R22はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換もしくは未置換のフェノキシ基、置換もしくは未置換のナフトキシ基、置換もしくは未置換のフェニルチオ基、または置換もしくは未置換のナフチルチオ基を表す。)
式(4)のR15〜R22におけるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などがあげられる。アルコキシ基およびチオアルキル基としては、特に限定されるものではないが、置換基中のアルキル基が炭素数1〜12の直鎖、分岐或いは環状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐或いは環状のアルキル基が特に好ましい。−Zは−CH−、−N−を表す。
【0145】
また、式(4)のアルコキシ基中およびチオアルキル基中のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3
−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、3−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、1,1,2−トリメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルペンチル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−オクチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、4−エチル4,5−ジメチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラエチルオクチル基、4−ブチルオクチル基、6,6−ジエチルオクチル基、n−トリデシル基、6−メチル−4−ブチルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、3,5−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、2,4−ジメチルヘプチル基、2,2,5,5−テトラメチルヘキシル基、1−シクロペンチル−2,2−ジメチルプロピル基、1−シクロヘキシル−2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。
【0146】
また、式(4)の置換もしく未置換のフェノキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−エチルフェノキシ基、3−エチルフェノキシ基、4−エチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、4−アミノフェノキシ基、4−ジメチルアミノフェノキシ基、4−ジエチルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
【0147】
また、式(4)の置換もしく未置換のナフトキシ基の具体例としては、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基、ニトロナフトキシ基、シアノナフトキシ基、ヒドロキシナフトキシ基、メチルナフトキシ基、トリフルオロメチルナフトキシ基等が挙げられる。
【0148】
また、式(4)の置換もしく未置換のフェニルチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、2−エチルフェニルチオ基、3−エチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、2,4−ジメチルフェニルチオ基、3,4−ジメチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−アミノフェニルチオ基、4−ジメチルアミノフェニルチオ基、4−ジエチルアミノフェニルチオ基等が挙げられる。
【0149】
また、式(4)の置換もしく未置換のナフチルチオ基の具体例としては、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ニトロナフチルチオ基、シアノナフチルチオ基、ヒドロキシナフチルチオ基、メチルナフチルチオ基、トリフルオロメチルナフチルチオ基等が挙げられる。
【0150】
また、式(4)のXは二種類以上の置換基を併用してもよい。例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物とポルフィリン骨格を有する置換基とを併用することができる。
【0151】
含平面構造基エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;例えば、フェノールノボラック型エポシキ化合物、クレゾールノボラック型エポシキ化合物等のノボラック型エポシキ化合物;例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、テトラグリシジル−mキシレンジアミン等のグリシジルアミン系エポキシ化合物;例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等のグリシジルエステル系エポキシ化合物;例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルグリシドオキシアルヒダントイン等の複素還式エポキシ化合物などが例示できる。下記一般式(5)にその例を示す。
【0152】
【化5】

重合性液晶化合物としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子を適用することが可能であるが、特にディスコティック液晶性分子が好ましい。棒状液晶性分子としては、特開2006−16599公報に記載の液晶性分子が採用可能で、他、例えばアゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類なども用いられる。ディスコティック液晶性分子としては、例えば特開平8−27284号公報に記載のものを使用できる。以下にその例を示す。
【0153】
【化6】

上記式において、Yは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基、および該二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。
【0154】
アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましく、アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
【0155】
Rは、上述した架橋性基(A)〜(U)、もしくは該架橋性基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基である。
【0156】
不飽和重合性基では、エチレン性不飽和重合性基(A、B、C、D)がさらに好ましく、また、−CHNHCOCH=CH、−CHNHCO(CHCH=CH(CHCH、−OCO(C)O(CHCH=CHなども好適に用いられる。
【0157】
(貯蔵安定剤の説明)
貯蔵安定剤は、組成物の経時粘度を安定化させるために含有させるものである。貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.1〜10重量部の量で含有させることができる。
【0158】
(密着向上剤の説明)
密着向上剤は、本発明の感光性着色組成物の塗布膜と基板との密着性を高める目的で、必要に応じて添加するものである。密着向上剤としては、シランカップリング剤を例示することができる。
【0159】
シランカップリング剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニ
ルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。
【0160】
密着向上剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.01〜100重量部の量で含有させることができる。
【0161】
(感光性着色組成物の製造方法の説明)
本発明に係る感光性着色組成物は、1種または2種以上の前記顔料を、樹脂、モノマーおよびその他の必要な成分(例えば、光重合開始剤)と共に、前記溶剤に混合し、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて製造することができる。
【0162】
また、各顔料を別々に樹脂、モノマー等と共に溶剤に混合して、それぞれの組成物を製造した後、これら組成物を混合して本発明に係る感光性着色組成物を製造することもできる。
【0163】
なお、後述する着色画素の形成工程の直前に、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、顔料や樹脂等が凝集してできた粗大粒子や混入した塵埃を、着色組成物から除去することが望ましい。粗大粒子の目途としては、径5μm以上である。なお、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。
【0164】
(カラーフィルタの着色画素の形成方法の説明)
本発明に係る感光性着色組成物を使用して透明基板1上に前記各着色画素3R,3G,3Bを形成する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィー法、印刷法、電着法などである。本発明に係る着色組成物が感光性を有していることから、これら各方法の中でもフォトリソグラフィー法を好適に利用することができる。なお、剥離性の転写ベースシート上に各着色画素3R,3G,3Bを形成した後、この各着色画素3R,3G,3Bを透明基板1上に転写する転写法を利用することもできる。
【0165】
フォトリソグラフィー法は、透明基板1上に感光性着色組成物を塗布してその塗膜を形成し、この塗膜を部分的に露光現像して、その露光位置の塗膜を選択的に残存させて前記着色画素3を形成する方法である。露光現像の後に加熱処理を施すこともできる。この加熱処理によって着色画素3中に残存するモノマーの重合が促進される。そして、この工程を各着色画素3R,3G,3Bごとに繰り返して、カラーフィルタ1を製造することができる。
【0166】
ここで、透明基板1としては、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル
、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が使用できる。また、ガラス板や樹脂板の表面には透明電極が形成されていてもよい。この透明電極は液晶駆動のために使用することができる。透明電極としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモンなどの金属酸化物、あるいはその組み合わせからなるものが使用できる。
【0167】
塗布方法としては、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の方法が使用できる。感光性着色組成物の塗膜は、その乾燥膜厚が0.2〜10μmとなるように塗布すればよい。塗膜を乾燥させる際には、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブン、ホットプレート等を使用することができる。
【0168】
そして、こうして乾燥された塗膜と接触あるいは非接触状態で露光マスクを配置し、この露光マスクの透過パターンを通して露光することにより、前記塗膜を、目的とする着色画素3の形状に露光し、硬化させることができる。
【0169】
なお、紫外線露光感度を上げるために、上記塗膜の上に酸素バリア性の膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。酸素バリア性の膜としては、ポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等が例示できる。
【0170】
こうして露光した前記塗膜を現像する現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用できる。また、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ現像液を用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。そして、この現像によって、未露光の前記塗膜が現像液に溶解して除去され、露光硬化した部位の前記塗膜が選択的に残存して、着色画素3を構成する。
【0171】
印刷法の中には、着色画素3と同じ画素パターンを有する印刷版を使用する方法と、印刷版を要することのないインキジェット印刷法とがある。
【0172】
印刷版を使用する方法では、この印刷版の画素パターンに着肉した感光性着色組成物を透明基板1上に直接転移させて印刷する方法と、印刷版に着肉した感光性着色組成物をブランケットに一旦転移させ、このブランケットから透明基板1上に転移させて印刷する方法とがある。また、ブランケット上に感光性着色組成物の塗膜を形成し、この塗膜に印刷版を押圧して非画線部の塗膜をブランケット上から除去し、こうしてブランケット上に残存した塗膜を転移させて印刷する方法もある。なお、こうして透明基板1上に印刷して形成した着色画素3を紫外線で露光することにより、硬化させることができる。そして、本発明の感光性着色組成物はこれらの方法のうち、いずれの方法を適用することも可能である。
【0173】
なお、印刷法によれば、感光性着色組成物の印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、カラーフィルタの製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性の制御も重要であり、分散助剤や体質顔料によるインキ粘度の調整を行うこともできる。
【0174】
次に、インクジェット法は、微細な複数の吐出口(インクジェットヘッド)を各色ごとに揃えたインクジェット装置にて、透明基板1に着色画素3を直接印刷形成する方法である。また、電着法は、透明基板1上に形成した透明導電膜を利用して、コロイド粒子の電
気泳動により着色画素3を透明導電膜の上に電着形成することでカラーフィルタを製造する方法である。
【0175】
また、転写法は、前述のように、剥離性転写ベースシート上に形成した各着色画素3R,3G,3Bを透明基板1上に転写する方法である。剥離性転写ベースシート上に着色画素3を形成する方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法、電着法などが利用できる。
【実施例】
【0176】
以下、本発明の具体的な実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本実施例で用いる材料は光に対して極めて敏感なものがあるため、自然光などの不要な光による感光を防ぐ必要があり、全ての作業を黄色、または赤色灯下で行うことは言うまでもない。なお、実施例および比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。
【0177】
また、顔料の記号はカラーインデックスナンバーを示し、例えば、「PR254」は「C.I.Pigment Red 254」を、「PY150」は「C.I.Pigment Yellow 150」を表す。
【0178】
以下の実施例にて使用した色素誘導体を下記表1に示す。
【0179】
【表1】

a)微細化顔料の製造
実施例および比較例で用いた微細化顔料を以下の方法により製造した。そして、得られた顔料の平均一次粒子径を、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する一般的な方法で測定した。
【0180】
具体的には、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子(株)製)で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の凝集体を構成する個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料粒子の粒径とした。
【0181】
次に、100個以上の顔料粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒径の直方体と近似して体積平均粒径を求め、個数粒度分布の積算曲線においてこの体積平均粒径の積算量が全体の50%に相当する粒子径(円相当径)を中央値d50とした。この際、試料である前記着色組成物は、これを溶媒に超音波分散させてから前記顕微鏡で粒子を撮影する。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果が得られる。
【0182】
[製造例1]
フラスコにtert−アミルアルコール170部を窒素雰囲気下において装填した。次いで、ナトリウム11.04部を添加し、そしてこの混合物を92〜102℃に加熱した。次に、溶融したナトリウムを激しく撹拌しながら100〜107℃に一晩保持した。
【0183】
4−クロロベンゾニトリルの44.2部およびジイソプロピルスクシナートの37.2部をtert−アミルアルコールの50部中に80℃において溶解した溶液を、得られた溶液に、80〜98℃において、2時間かけて導入した。導入後、この反応混合物を80℃においてさらに3時間撹拌し、そして同時にジイソプロピルスクシナートの4.88部を滴下添加した。
【0184】
この反応混合物を室温に冷却し、メタノール270部、水200部、および濃硫酸48.1部の20℃の混合物へ添加し、20℃において攪拌を6時間続けた。この赤色混合物
を濾過し、残留物をメタノールと水とで洗浄した後、80℃で乾燥して、46.7部のジケトピロロピロールの赤色顔料(R−1)を得た。
【0185】
[製造例2]
ジケトピロロピロール系赤色顔料PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製「イルガフォアレッドB−CF」;(R−2)100部、色素誘導体(D−1)18部、粉砕した食塩1000部、およびジエチレングリコール120部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、60℃で10時間混練した。
【0186】
この混合物を温水2000部に投入し、約80℃に過熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、115部のソルトミリング処理顔料(R−3)を得た。得られた顔料の一次粒子径を下記表2に示す。
【0187】
[製造例3]
アントラキノン系赤色顔料PR177(チバスペシャリティケミカルズ社製「クロモフタルレッドA2B」)100部、色素誘導体(D−2)8部、粉砕した食塩700部、およびジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で4時間混練した。
【0188】
この混合物を温水4000部に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、102部のソルトミリング処理顔料(R−4)を得た。得られた顔料の一次粒子径を下記表2に示す。
【0189】
[製造例4]
セパラブルフラスコに水150部を仕込み、さらに攪拌しながら35%塩酸63部を仕込み、塩酸溶液を調製した。発泡に注意しながらベンゼンスルホニルヒドラジド38.7部を仕込み、液温が0℃以下になるまで氷を追加した。冷却後、30分かけて亜硝酸ナトリウム19部を仕込み、0〜15℃の間で30分撹拌した後、ヨウ化カリウムでんぷん紙で着色が認められなくなるまでスルファミン酸を仕込んだ。
【0190】
次に、バルビツール酸25.6部を添加後、55℃まで昇温し、2時間そのまま撹拌した。次いで、バルビツール酸25.6部を投入し、80℃まで昇温したのちpHが5になるまで水酸化ナトリウムを投入した。さらに80℃で3時間撹拌した後、70℃まで下げ、濾過、温水洗浄を行った。
【0191】
得られたプレスケーキを1200部の温水にリスラリーした後、80℃で2時間攪拌した。その後、そのままの温度で濾過を行い、80℃の水2000部で温水洗浄を行い、ベンゼンホンアミドが濾液側へ移行していることを確認した。得られたプレスケーキを80℃で乾燥し、アゾバルビツール酸ジナトリウム塩61.0部を得た。
【0192】
次いで、セパラブルフラスコに水200部を仕込み、さらに撹拌しながら、得られたアゾバルビツール酸ジナトリウム塩の粉末8.1部を投入して分散した。均一に分散した後、溶液を95℃まで昇温した、メラミン5.7部、ジアリルアミノメラミン1.0部を添加した。
【0193】
さらに、塩化コバルト(II)6水和物6.3部を水30部に溶解した緑色溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、90℃で1.5時間錯体化を行った。
【0194】
その後、pHを5.5に調整し、さらにキシレン4部、オレイン酸ナトリウム0.4部、水16部をあらかじめ攪拌してエマルジョン状態とした溶液20.4部を添加し、さらに4時間加温撹拌した。70℃まで冷却後、速やかに濾過し、無機塩が洗浄できるまで70℃温水洗を繰り返した。
【0195】
その後、乾燥、粉砕の工程を経て、14部のアゾ系黄色顔料(Y−1)を得た。得られた顔料の一次粒子径を下記表2に示す。
【0196】
[製造例5]
黄色顔料(C.I. Pigment Yellow 138、BASF社製「PALIOTOL YELLOW K0961HD」)160部、塩化ナトリウム1600部、およびジエチレングリコール(東京化成社製)270部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、60℃で15時間混練した。次に、この混合物を約5リットルの温水に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除き、80℃で24時間乾燥し、157部のソルトミリング処理顔料(Y−2)を得た。
【0197】
[製造例6]
ハロゲン化銅フタロシアニン系緑色顔料PG36(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン6YK」)120部、粉砕した食塩1600部、およびジエチレングリコール270部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。
【0198】
この混合物を温水5000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、117部のソルトミリング処理顔料(G−1)を得た。
【0199】
得られた顔料の一次粒子径を下記表2に示す。
【0200】
[製造例7]
塩化アルミニウム356部および塩化ナトリウム6部の200℃の溶融塩に、亜鉛フタロシアニン46部を溶解し、130℃まで冷却し1時間攪拌した。反応温度を180℃に昇温し、臭素を1時間あたり10部で10時間滴下した。その後、塩素を1時間あたり0.8部で5時間導入した。
【0201】
この反応液を水3200部に徐々に注入したのち、濾過、水洗して107.8部の粗製ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得た。粗製ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の1分子内に含まれる平均臭素数は14.1個、平均塩素数は1.9個であった。
【0202】
得られた粗製ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料120部、粉砕した食塩1600部、およびジエチレングリコール270部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。
【0203】
この混合物を温水5000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、117部のソルトミリング処理顔料(G−2)を得た。得られた顔料の一次粒子径を下記表2に示す。
【0204】
[製造例8]
銅フタロシアニン系青色顔料PB15:6(東洋インキ製造社製「リオノールブルーE
S」)100部、粉砕した食塩800部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。
【0205】
この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、98部のソルトミリング処理顔料(B−1)を得た。得られた顔料の一次粒子径を下記表2に示す。
【0206】
【表2】

b)アクリル樹脂溶液の調製
反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃に加熱して、同温度で下記のモノマーおよび熱重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。
【0207】
スチレン 60.0部
メタクリル酸 60.0部
メタクリル酸メチル 65.0部
メタクリル酸ブチル 65.0部
アゾビスイソブチロニトリル 10.0部
滴下後、さらに100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、さらに100℃で1時間反応を続けて樹脂溶液を合成した。
【0208】
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%となるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。
【0209】
c)リタデーション調整剤
メラミン化合物(商品名ニカラックMX−750;日本カーバイド工業製)をリタデーション調整剤として使用した。
【0210】
d)着色組成物の調製
下記表3に示す組成の混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して各色レジストを得た。
【0211】
なお、表中、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたとき、シクロヘキサノンの蒸発速度は23、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PgMAc)の蒸発速度は34、エチル−3−エトキシプロピオネート(EEP)の蒸発速度は12である。
【0212】
【表3】

e)各色塗膜の作製
上記表3に示した各着色組成物をスピンコート法によりガラス基板に塗工した後、クリーンオーブン中で、70℃で20分間プリベークした。次いで、この基板を室温に冷却後、超高圧水銀ランプを用い、紫外線を露光した。
【0213】
次に、この基板を23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、風乾した。その後、クリーンオーブン中で、230℃で30分間ポストベークを行い、各色塗膜を得た。乾燥塗膜の膜厚は、いずれも2.0μmであった。
【0214】
f)膜応力σ、厚み方向位相差値、コントラストなどの測定
[膜応力σ]
次の式(1)にて算出した膜応力σの値を下記表4に示す。但し、ガラス基板の厚みhは0.5mmである。
【0215】
σ=E・h/[6(1−λ)R・t]・・・式(1)
(但し、式中、Eはガラス基板のヤング率、hはガラス基板厚(m)、λはガラス基板のポアソン比、tは塗膜厚(m)を表す。また、Rは有効曲率半径(m)を表し、着色塗膜形成前のガラス基板の曲率半径をRとし、着色塗膜形成後のガラス基板の曲率半径をRとして、1/R=1/R−1/Rを充足する数値である。)
[厚み方向位相差値Rth]
厚み方向位相差値は以下のように求めることが出来る。透過型分光エリプソメータ(日本分光社製「M−220」)を用いて、塗膜を形成した基板の法線方向から45°傾けた方位より、400nmから700nmの範囲で5nmおきの波長で測定し、エリプソパラメータであるδを得た。
【0216】
各波長における位相差値△(λ)は△=δ/360×λから求めることができ、この値を用いて3次元屈折率を算出し、下記式2より厚み方向位相差値(Rth)を求めた。
【0217】
以上の測定より各波長のRthを求めることが可能であるが、今回の評価では赤色画素を610nm、緑色画素を545nm、青色画素を450nmとして算出した。
【0218】
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d・・・式(2)
(式中、Nxは着色画素層の平面内のx方向の屈折率であり、Nyは、着色画素の平面内のy方向の屈折率であり、Nzは着色画素の厚み方向の屈折率であり、NxをNx≧Nyとする遅相軸とする。また、dは着色画素の厚み(nm)である。)
上記表3に示した各着色組成物より作製された各色塗膜の厚み方向位相差値Rthを下記表4に示す。
【0219】
[コントラスト]
塗膜を形成した基板の両側に偏光板を重ね、偏光板が平行時の輝度(Lp)と直交時の輝度(Lc)との比、Lp/Lcをコントラスト(C)として算出した。
【0220】
また着色画素がない基板のみのコントラスト=Lp/LcをCSとし、CRを赤色画素、CYを黄色画素、CGを緑色画素、CBを青色画素のコントラストとした。
【0221】
なお、輝度は、色彩輝度計(トプコン社製「BM−5A」)を用い、2°視野の条件で測定し、偏光板は、日東電工社製「NPF−SEG1224DU」を用いた。
【0222】
なお、併せて、感光性着色組成物の保存安定性、パターニング特性、塗膜の耐性について評価した結果を表4に示す。
【0223】
【表4】

g)カラーフィルタ及び液晶表示装置の作製
上記表3に示した各着色組成物を組み合わせて、下記に示す方法により、カラーフィルタを作製した。
【0224】
[実施例8]
まず、赤色の着色組成物1をスピンコート法により、予めブラックマトリックスが形成されてあるガラス基板に塗工した後、クリーンオーブン中で、70℃で20分間プリベークした。次いで、この基板を室温に冷却した後、超高圧水銀ランプを用い、フォトマスク
を介して紫外線を露光した。
【0225】
その後、この基板を23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、風乾した。更に、クリーンオーブン中で、230℃で30分間ポストベークを行い、基板上にストライプ状の赤色画素を形成した。
【0226】
次に、緑色の着色組成物4を同様にして緑色画素を形成し、さらに、青色の着色組成物6を使用し、同様にして青色画素を形成し、カラーフィルタを得た。各色画素の形成膜厚は、いずれも2.0μmであった。
【0227】
得られたカラーフィルタ上に、オーバーコート層を形成し、その上にポリイミド配向層を形成した。そして、このガラス基板の他方の表面に偏光板を形成した。
【0228】
他方、別のガラス基板の一方の表面にTFTアレイおよび画素電極を形成し、他方の表面に偏光板を形成した。
【0229】
このようにして準備された2つのガラス基板を電極層同士が対面するよう対向させ、スペーサビーズを用いて両基板の間隔を一定に保ちながら位置合わせし、液晶組成物注入用開口部を残すように周囲を封止剤で封止した。次いで、開口部からVA用液晶組成物を注入し、開口部を封止した。更に、偏光板に広視野角表示が可能なように最適化された光学補償層を設けた。
【0230】
このようにして作製した液晶表示装置をバックライトユニットと組み合わせてVA表示モード液晶パネルを得た。
【0231】
[実施例9]
赤色の着色組成物を着色組成物1から着色組成物3に、緑色の着色組成物を着色組成物4から着色組成物5に、青色の着色組成物を着色組成物6から着色組成物7に変えた以外は実施例8と同様にして、液晶表示装置を得た。
【0232】
[比較例8]
赤色の着色組成物を着色組成物1から着色組成物8に、緑色の着色組成物を着色組成物4から着色組成物12に代えた以外は、青色の着色組成物を着色組成物6から着色組成物14に変えた以外は実施礼8と同様にして、液晶表示装置を得た。
【0233】
[比較例9]
赤色の着色組成物を着色組成物1から着色組成物10に、緑色の着色組成物を着色組成物4から着色組成物13に、青色の着色組成物を着色組成物6から着色組成物14に変えた以外は実施例1と同様にして、液晶表示装置を得た。
【0234】
h)液晶表示装置の黒表示時の視認性評価
作製した液晶表示装置を黒表示させ、液晶パネルの法線方向(略垂直方向)および法線方向から45°傾けた方位(斜め)より漏れてくる光(直交透過光;漏れ光)の量を目視観察した。また黒表示時の略垂直方向から見たときの色度(u(⊥)、v(⊥))と表示面の法線方向から最大60°まで傾けた方位よりから見たときの色度(u(45)、v(45))をトプコン社製BM−5Aにて測定し、色差Δu’v’を算出し、0≦θ≦60°でのΔu’v’の最大値を求めた。評価ランクは次の通りであり、その結果を下記表5に示す。
【0235】
【表5】

上記表5より、実施例1から実施例2に係るカラーフィルタの赤色画素、緑色画素、および青色画素層の厚み方向位相差値が、2以下であるように形成されているので、得られたカラーフィルタを液晶表示装置に用いることで、表示面の法線方向と斜め方向の色度差が上述の式(1)を満たし、正面および斜め方向の視認性が良好な液晶表示装置を得ることができる。
【0236】
これに対し、比較例1及び2に係るカラーフィルタを備えた液晶表示装置では、赤色画素、緑色画素、および青色画素層の厚み方向位相差の絶対値が2以下であるという条件をみたさないため斜め方向において色ずれが生じ、視認性が不良となる。
【符号の説明】
【0237】
1・・・透明基板、2・・・ブラックマトリックス、3・・・着色画素、4・・・液晶表示装置、5・・・第一の基板、7・・・TFTアレイ、8,12・・・透明電極、9,13・・・配向層、10,14・・・偏光板、15・・・三波長ランプ、16・・・バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置用カラーフィルタの着色画素を形成する感光性着色組成物であって、顔料、樹脂、モノマー及び溶剤を含有する感光性着色組成物において、
前記顔料として2種以上の顔料を含有し、
前記溶剤のうち50%以上の溶剤が、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした場合に蒸発速度10〜35の溶剤であり、
モノマーと樹脂の質量比(モノマー/樹脂)が0.3から1.0の範囲であり、
かつ、この感光性着色組成物をガラス基板上に塗布後、乾燥、露光、現像、ポストベークの工程を経て得られた塗膜の膜応力σを式(1)にて算出したとき、その膜応力σが0から+30の範囲にあることを特徴とするカラーフィルタ用感光性着色組成物。
σ=E・h/[6(1−λ)R・t]・・・式(1)
(但し、式中、Eは基板のヤング率、hは基板厚(m)、λは基板のポアソン比、tは塗膜厚(m)を表す。また、Rは有効曲率半径(m)を表し、着色塗膜形成前の基板の曲率半径をRとし、着色塗膜形成後の基板の曲率半径をRとして、1/R=1/R−1/Rを充足する数値である。)
【請求項2】
リタデーション調整剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性着色組成物。
【請求項3】
前記リタデーション調整剤が、一つ以上の架橋性基を有する平面構造基を有する有機化合物、メラミン化合物、ベンジル系化合物、から選択された1種以上の有機化合物であることを特徴とする請求項2に記載の感光性着色組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の感光性着色組成物を使用して着色画素を形成したカラーフィルタであって、前記着色画素の厚み方向位相差Rthを式(2)にて算出したとき、その厚み方向位相差Rthの絶対値が2.0以下であることを特徴とする液晶表示装置用カラーフィルタ。
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d・・・式(2)
(式中、Nxは着色画素層の平面内のx方向の屈折率であり、Nyは着色画素層の平面内のy方向の屈折率であり、Nzは着色画素層の厚み方向の屈折率であり、NxをNx≧Nyとする遅相軸とする。また、dは着色画素層の厚み(nm)である。)
【請求項5】
請求項4に記載のカラーフィルタを備える液晶セルと、この液晶セルの両外面にそれぞれ配置された偏光板と、これら偏光板の内側に設けられた光学補償層とを具備する液晶表示装置において、
該液晶表示装置を黒表示させてCIE1960表色系で表される色度(u、v)を測定し、垂直方向から見たときの色度(u(⊥)、v(⊥))と、表示面の法線方向からθ°傾けた方位から見たときの色度(u(θ)、v(θ))との色度差Δuvを下記式(3)で算出したとき、0<θ≦60の範囲でその色度差Δuvが0.02以下であることを特徴とする液晶表示装置。
Δuv=[{u(⊥)−u(θ)}+{v(⊥)−v(θ)}1/2・・・式(3)
【請求項6】
VA方式ないしはIPS方式であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−105010(P2013−105010A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248582(P2011−248582)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】