説明

カラーフィルタ用顔料組成物、その製造方法及びカラーフィルタ

【課題】高温での熱履歴を受けてもより色相が変化し難い、より耐熱性に優れるカラーフィルタ用顔料組成物、高温で長期間の画像表示を行なっても、コントラスト低下がないカラーフィルタを提供する。
【課題手段】C.I.ピグメントグリーン58(A)と、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)とを含有し、質量基準でC.I.ピグメントグリーン58(A)100部当たり、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)不揮発分0.1〜10部であることを特徴とする、カラーフィルタ用顔料組成物、前記カラーフィルタ用顔料組成物の製造方法、及び前記のカラーフィルタ用顔料組成物を緑色画素部に含有してなるカラーフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントラストの耐熱性に優れたカラーフィルタが得られるポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物、その製造方法及び当該顔料組成物を緑色画素部に含有する、高温で長期間の液晶表示を行なってもコントラスト低下が少ない画像が得られるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料として、C.I.ピグメントグリーン58の様なポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が知られており、これはそれ以外のポリハロゲン化異種金属フタロシアニン顔料に無い特異的な性質を示す。
【0003】
具体的には、このポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を液晶表示装置のカラーフィルタの緑色画素部への適用が知られている。このポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する緑色画素部は、Tmaxが従来のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料を含有する緑色画素部に比べ高波長側にあるため高色純度となり、黄色顔料と混色した場合においても緑色領域の光透過量も多く、高色純度カラーフィルタに好適に使用できる(特許文献1)。
【0004】
この優れたポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料にあっても、輝度の耐熱性が充分でないことから、従来は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料に、線状(リニアー)のポリウレタン樹脂を含有させた顔料組成物を用いることで、より輝度の耐熱性に優れた液晶表示が可能となるカラーフィルタ緑色画素部が用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−161827公報
【特許文献2】WO2010/061830公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料に、線状(リニアー)のポリウレタン樹脂を含有させた顔料組成物を用いて得た上記したカラーフィルタでは、液晶表示装置が高温での熱履歴を受けた際に画像表示のコントラストの低下の程度が、未処理のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料に比べれば抑制されるものの、コントラストの低下自体を避けることはやはり出来ず、未だ満足できるものではない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高温での熱履歴を受けても色相が変化しない、より耐熱性に優れたカラーフィルタの緑色画素部の形成に適した、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を提供することにある。
また本発明が解決しようとする課題は、前記顔料組成物の好適な製造方法を提供すること、及び前記顔料組成物を緑色画素部に含有する、高温で長期間の画像表示を行なってもコントラスト低下がないカラーフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、各種ポリウレタン樹脂をC.I.ピグメントグリーン58に含ませた上で、熱履歴を与えたときの色相変化の評価を行なったところ、エポキシ架橋したポリウレタン樹脂を含有させることで、架橋していないポリウレタン樹脂を含有させた場合に比べて、コントラストの耐熱性により優れたカラーフィルタが得られること、この様なポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を緑色画素部に含有してなるカラーフィルタは高温で長期間の画像表示を行なっても、従来の様なコントラスト低下がないことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、C.I.ピグメントグリーン58(A)と、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)とを含有し、質量基準でC.I.ピグメントグリーン58(A)100部当たり、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)不揮発分0.1〜10部であることを特徴とする、カラーフィルタ用顔料組成物を提供する。
また本発明は、C.I.ピグメントグリーン58(A)と、非架橋ポリウレタン樹脂水性分散体と、水溶性多官能エポキシ化合物とを、不揮発分の質量基準でC.I.ピグメントグリーン58(A)100部当たり、非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物の合計が0.1〜10部となる様に混合した後、架橋させ液媒体を除去することを特徴とするカラーフィルタ用顔料組成物の製造方法を提供する。
さらに本発明は、上記のカラーフィルタ用顔料組成物または上記製造方法で得られたカラーフィルタ用顔料組成物を緑色画素部に含有してなるカラーフィルタを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、C.I.ピグメントグリーン58にエポキシ架橋ポリウレタン樹脂を含有しているので高温での熱履歴を受けてもより色相が変化しない、より耐熱性に優れるという格別顕著な効果を奏する。
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物を含有するカラーフィルタは、従来のポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料組成物を含有するカラーフィルタに比べて、高温で長期間の画像表示を行なっても、コントラスト低下がないという格別顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。以下、C.I.ピグメントグリーン58(A)は、顔料(A)または前者顔料(A)と略記することがある。同様に、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)は、樹脂(B)または後者樹脂(B)と略記することがある。
本発明におけるカラーフィルタ用顔料組成物は、C.I.ピグメントグリーン58(A)と、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)とを含有し、質量基準で前者顔料(A)100部当たり、後者樹脂(B)0.1〜10部であることを特徴とする。
【0012】
本発明者等は、試行錯誤により、種種のポリウレタン樹脂を顔料(A)に含有させて、カラーフィルタ用感光性組成物の耐熱性を比較対比したところ、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)を少量含ませて得た顔料組成物だけが、カラーフィルタとした際に、特異的に高温で長期間の使用においても色相変化が小さく、しかもコントラスト低下なく、より耐熱性に優れることを見い出した。
【0013】
本発明における顔料(A)は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン58である。
【0014】
本発明においてカラーフィルタ用顔料(A)は、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.30μm、なかでも0.01〜0.10μmのC.I.ピグメントグリーン58であることが好ましい。
【0015】
なお、本発明における一次粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子株式会社製)で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成する顔料(A)または本発明の顔料組成物の一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料である顔料(A)または本発明の顔料組成物は、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。また、透過型電子顕微鏡の代わりに走査型電子顕微鏡を使用してもよい。
【0016】
エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)を含まない、C.I.ピグメントグリーン58としては、DIC(株)製FASTOGEN(登録商標)GREEN A−110、A−210、A−310などが挙げられる。
【0017】
C.I.ピグメントグリーン58は、C.I.ピグメントグリーン36に比べて、カラーフィルタとした場合、高色純度となり、より高水準の輝度とより理想的なRGB色再現性を達成できる。
【0018】
本発明におけるエポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)は、エポキシ基の開環に基づく架橋された部位と、一分子中にウレタン結合2以上を必須として含んだポリウレタン樹脂である。このエポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)には、ウレタン結合だけでなく更に尿素結合を含んだ、エポキシ架橋ポリウレタンポリ尿素樹脂等もふくまれる。
【0019】
エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)の原料となる非架橋ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂等が挙げられるが、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が、架橋した後に、後記するカラーフィルタとした際の耐熱性に優れる点で好ましい。これら非架橋ポリウレタン樹脂が後記する様にして架橋されることで、それぞれ対応するエポキシ架橋ポリウレタン樹脂となる。
【0020】
非架橋ポリウレタン樹脂としては、有機ジイソシアネートとジオールと必要に応じて二官能鎖伸長剤のみを反応させた線状の熱可塑性ポリウレタン樹脂であることが、架橋後の皮膜特性に優れ取扱いが容易な点でも好ましい。
【0021】
非架橋ポリウレタン樹脂としては、後記する感光性組成物の調製の際に用いられるバインダー樹脂や単量体が(メタ)アクリル酸エステル樹脂や(メタ)アクリル酸エステルである場合に、優れた分散安定性を発揮できる点で、主鎖に芳香環を含む直鎖芳香族単位とアニオン性基とを含むポリウレタン樹脂であることが、架橋後における密着性・耐久性の様な皮膜特性に優れる点で好ましく、なかでも、主鎖に芳香環を含む直鎖芳香族単位とアニオン性基とを含む、脂肪族または脂環式ジイソシアネートを用いて得たポリエステル系ポリウレタン樹脂であることが、更に架橋後の耐熱性に優れ、長期間液晶表示をさせた際の画像のコントラストの低下がない点で特に好ましい。尚、ここでアニオン性基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸基又はこれらの酸基を塩基にて中和した塩をいう。架橋ポリウレタン樹脂の優れた耐熱性は、後に詳記する耐熱性試験を行なうことで初めて知見されるものであり、耐熱性試験を行なわない常態での観察からは到底知得できないものである。
【0022】
この特に好ましい非架橋ポリウレタン樹脂としては、前記した直鎖芳香族ポリエステル単位を含有する、主鎖に芳香環を含む直鎖芳香族単位と、アニオン性基とを含み、有機ジイソシアネートとしては脂肪族ジイソシアネートまたは脂環式ジイソシアネートを用いて得たポリウレタン樹脂が挙げられる。後記する様に、カラーフィルタの画素部を形成する際に用いる顔料は、ポリウレタン樹脂を含有させない場合のコントラストに比べて、非架橋ポリウレタン樹脂を含有させた場合のそれは、小さくなるのが一般的であるが、C.I.ピグメントグリーン58に上記特に好ましいエポキシ架橋ポリウレタン樹脂を含有させた場合は、逆に非架橋ポリウレタン樹脂を含有させた場合に比べてコントラストが高くなるという特異性がある。
【0023】
エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)は、非架橋ポリウレタン樹脂を多官能エポキシ化合物で架橋したものをいう。この架橋は、非架橋ポリウレタン樹脂の存在下で多官能エポキシ化合物を開環重合させても良いが、特段の反応開始剤を用いることなく、非架橋ポリウレタン樹脂分子と多官能エポキシ化合物とが化学的に結合した架橋とすることが出来る点で、上記した様なアニオン性基を有する非架橋ポリウレタン樹脂のアニオン性基と多官能エポキシ化合物のエポキシ基とを反応させるようにすることが好ましい。
【0024】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、例えば、C.I.ピグメントグリーン58(A)と、非架橋ポリウレタン樹脂水性分散体と、水溶性多官能エポキシ化合物とを混合した後、架橋させ液媒体を除去することで製造することが出来る。
【0025】
非架橋ポリウレタン樹脂に対する水溶性多官能エポキシ化合物の使用量は、用いる非架橋ポリウレタン樹脂のエポキシ基と反応しうる官能基の含有量及び水溶性多官能エポキシ化合物の官能基数によっても異なるが、質量換算で、非架橋ポリウレタン樹脂の不揮発分100部に対し水溶性多官能エポキシ化合物の不揮発分は、1〜10部とすることが、得られた顔料組成物でカラーフィルタ緑色画素部を調製した際の、コントラストや輝度などの諸特性に優れるので好ましい。
【0026】
エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)は、その不揮発分をそのまま前記顔料(A)と混合することにより、本発明の顔料組成物としても良いが、顔料(A)と、非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物とを液媒体に溶解または分散させた溶液や分散液とを混合した後、架橋し液媒体を除去することで、顔料(A)とより均一に樹脂(B)と混合した顔料組成物を調製することができる。この混合は、攪拌下に行なうことが好ましい。中でも、顔料(A)と、非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物とを液媒体に溶解または分散させた溶液や分散液とを混合攪拌して、加熱を行なうことで、加熱を行なわない場合に比べて樹脂(B)を更に均一かつ確実に顔料(A)の表面を被覆することができると共に、架橋反応も充分に行うことが出来るので好ましい。また、加圧加熱を行なうことで、単なる加熱の場合の顔料(A)粒子の表面への樹脂(B)の被覆のみならず、顔料(A)粒子の細孔の様な空隙部分への樹脂(B)の浸透を促進することができ、より被覆の効果が高まる。
【0027】
このとき、液媒体として、水のみまたは水を主体として水溶性有機溶媒を含む液媒体(水性媒体という)を用いる様にすると、液媒体として、有機溶媒のみを用いて前記混合加熱を行う場合に比べて、顔料(A)自体の結晶形状等の変化が少なく、色相変化が小さくなるので好ましい。非架橋ポリウレタン樹脂を水性媒体中に分散させた分散体は、非架橋ポリウレタン樹脂水性分散体と呼ばれる。
【0028】
本発明に用いられる、非架橋ポリウレタン樹脂としては、例えば、ハイドラン(登録商標)AP−40F、同AP−30F、同AP−20(以上、DIC(株)製)、スーパーフレックス460、同460S、同126(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販の非架橋ポリウレタン樹脂水性分散体が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる水溶性多官能エポキシ化合物とは、分子中に2〜6のエポキシ基を含有し水に溶解するエポキシ化合物をいい、具体的には、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、他の還元もしくは非還元糖又はポリサッカライドポリグリシジルエーテルあるいはセルロース誘導体のポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(ビニルアルコール)グリシジルエーテル及びポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0030】
上記した様な水溶性多官能エポキシ化合物は、例えば、ナガセケムテックス(株)のデナコールEXシリーズ製品として市販されているが、別途に乳化剤等を併用しなくともそのままで完全水溶性を有していると共に反応開始剤を用いなくともより反応性に富む点で、同社製デナコールEX−500シリーズや600シリーズを用いることが好ましい。
【0031】
上記した液媒体として、水のみまたは水を主体として水溶性有機溶媒を含む液媒体(水性媒体という)を用いる様にすると、万一、架橋に関与しなった水溶性多官能エポキシ化合物が残存しても、液媒体の除去によりそれを除去することが出来る。
【0032】
本発明では、顔料(A)と、非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物とを不揮発分の質量基準で前者顔料(A)100部当たり、後者の非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物との合計が0.1〜10部となる様に、中でも、架橋皮膜の適度の強靭性やカラーフィルタ特性により優れる点で0.5〜8部、特に3〜7部となる様に混合し架橋した後、液媒体を除去して、顔料組成物の製造することが好ましい。この様にして仕込んだ後者の非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物とは、架橋してエポキシ架橋ポリウレタン樹脂となり、顔料(A)と混合される結果、後記する処理を行なっても、流出することなく、質量基準でその不揮発分の少なくとも70%が、顔料(A)にとどまる。
【0033】
顔料(A)と非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物との加熱は、両者を混合した後、密閉系にて、温度100〜150℃での攪拌下、30分〜5時間の範囲にて行なうことができる。こうして密閉系で加熱を行なうことで、加圧状態が形成され、前記した様に、顔料粒子の空隙にまで、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)が浸透することになり、単に粒子表面だけを被覆するのに比べて、より優れた効果が発現される。
【0034】
顔料(A)と混合した、非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物とが架橋反応を起していることは、例えば、仕込み時(加熱前)及び加熱後における赤外線吸収スペクトル(IR)におけるエポキシ基に基づく特定波数でのピーク強度の低下または消失により、容易に確認することが出来る。また別法として、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂は、非架橋ポリウレタン樹脂に比べて相対的に有機溶剤への溶解性が低下することから、例えば、架橋前後における有機溶剤を用いた際の樹脂溶解量の変化から架橋程度を求めることも出来る。架橋有無までは特定できないが、エポキシ化合物の顔料への吸着等を確認するための簡便な方法としては、水溶性多官能エポキシ化合物は水性媒体に溶解することから、ガスクロマトグラフィー(GPC)などで、架橋前の仕込み量に対して、架橋後の水性媒体に含有している、回収された、架橋に関与しなかった未反応の水溶性多官能エポキシ化合物の量からも、架橋程度を推定することは出来る。
【0035】
こうして加熱を行なった混合物は、例えば冷却し、そこから液媒体を除去し、必要に応じて、固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、顔料(A)とエポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)とを含有する本発明の顔料組成物の粉体を得ることが出来る。
【0036】
洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。洗浄することで、顔料(A)に吸着していない樹脂(B)を容易に除去することが出来る。必要であれば、結晶状態を変化させない様に、酸洗浄、アルカリ洗浄、溶剤洗浄を行ってもよい。カラーフィルタ用顔料組成物に含有された、有効成分である、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)不揮発分の量(いわゆる歩留まり)は、例えば顔料組成物の溶媒抽出による樹脂抽出量から、或いは、仕込んだ非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物の合計不揮発分に対する濾液中の流出量から求めることが出来る。
【0037】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等がある。特にスプレードライ乾燥はペースト作成時に易分散であるため好ましい。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等のとなった際に顔料を解して粉末化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。こうして、顔料(A)と樹脂(B)とを含有するカラーフィルタ用顔料組成物を主成分として含む乾燥粉末が得られる。
【0038】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、公知慣用の用途にいずれも使用できるが、特に一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmであると、顔料凝集も比較的弱く、着色すべき合成樹脂等への分散性がより良好となる。
【0039】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、カラーフィルタ緑色画素部に使用する場合においては、カラーフィルタ用感光性組成物への顔料分散が容易であり、カラーフィルタ用感光性組成物を硬化する際に多用される365nmにおける遮光性は低下し、レジストの光硬化感度の低下がなく、現像時の膜へりやパターン流れも起こり難くなるので好ましい。近年要求されている鮮明度と明度とのいずれもが高いカラーフィルタ緑色画素部がより簡便に得られる。
【0040】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物の一次粒子は、更に縦横のアスペクト比が1〜3であると、各用途分野において粘度特性が向上し、流動性がより高くなる。アスペクト比を求めるには、まず、一次粒子の平均粒子径を求める場合と同様に、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき長い方の径(長径)と、短い方の径(短径)の平均値を求め、これらの値を用いて算出する。
【0041】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物を、少なくともカラーフィルタの緑色画素部に含有させることで、本発明のカラーフィルタを得ることが出来る。カラーフィルタ分野においては、従来の印刷インキや塗料の様な汎用用途とは異なり、彩度値の取扱いが大変厳密であり、極僅か彩度値の向上させるのにも困難を伴うが、本発明の顔料組成物をカラーフィルタの調製に用いることにより、色純度が向上しより広いRGB色再現域の液晶表示装置が得られる。
【0042】
C.I.ピグメントグリーン58を含有する本発明の好適なカラーフィルタ用顔料組成物は、カラーフィルタの緑色画素部を得る場合に、特段に黄色顔料を調色のために併用することなく、或いは併用するにしてもより少量で済むため、380〜780nmの全域における光透過率の低下も最小限に防止できる。特に、より黄味かつより高着色力を有するため、同等の色濃度であれば、黄色顔料はより少ない併用量で良いため、さらに透過率を上げることも出来、有利である。
【0043】
また、C.I.ピグメントグリーン58を含有する本発明の好適なカラーフィルタ用顔料組成物は、前記した様に、380〜780nmにおける分光透過スペクトルの透過率が最大となる波長(Tmax)は、510〜520nmであり、その透過曲線の半値幅が110nm以下と非常にシャープである。(この波長は、後記する様な感光性樹脂による影響を受けない。)。
【0044】
本発明における分光透過スペクトルとは、日本工業規格JIS Z 8722(色の測定方法−反射及び透過物体色)の第一種分光測光器に準じて求められるもので、ガラス基板等の上に前記所定乾燥膜厚に製膜した顔料組成物を含む樹脂被膜について所定波長領域の光を走査照射して、各波長における各透過率値をプロットしたものである。カラーフィルタとしての透過率は、例えば樹脂のみで同一乾燥膜厚となした被膜について同様に求めた分光透過スペクトルで補正すること(ベースライン補正等)によって、より精度良く求めることが出来る。
【0045】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、それだけをそのままカラーフィルタの緑色画素部の製造に用いることが出来るが、必要ならば、経済性を考慮して、公知慣用の緑色や黄色の、顔料や顔料誘導体を併用しても良い。
【0046】
上記した目的でC.I.ピグメントグリーン 7、同36の様な緑色顔料を併用する他に、特性を出現させるため調色用に黄色顔料を使用することがある。ここで併用できる黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメント イエロー 83、同110、同138、同139、同150、同180、同185等の黄色有機顔料が挙げられる。
【0047】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、公知の方法でカラーフィルタの緑色画素部のパターンの形成に用いることが出来る。典型的には、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物と、感光性樹脂とを必須成分して含むカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を得ることが出来る。
【0048】
カラーフィルタの製造方法としては、例えば、このカラーフィルタ用顔料組成物を感光性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して緑色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0049】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で緑色画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。なお、赤色画素部のパターンおよび青色画素部のパターンも公知の顔料を使用して、同様の方法で形成できる。本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、熱履歴を受けても色相変化が小さいため、例えば、ベーキングを工程に含む様なカラーフィルタの製造方法においては、極めて有用である。
【0050】
カラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を調製するには、例えば、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0051】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のディスパービック(DisperbyK登録商標)130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、エフカ社のエフカ46、エフカ47等が挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0052】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0053】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて0〜100質量部の分散剤及び/又は0〜20質量部のフタロシアニン誘導体とを、均一となる様に攪拌分散して分散液を得ることができる。次いでこの分散液に、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物1質量部当たり、3〜20質量部の感光性樹脂、感光性樹脂1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を得ることができる。
【0054】
この際に使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
【0055】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等がある。
【0056】
こうして調製されたカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルタとなすことができる。
【0057】
本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、より黄味の緑色で着色力が高く、高色純度でコントラストの高い明るい緑色を発色する。従って、詳記したカラーフィルタ用以外にも、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子トナー、ジェットインキ、熱転写インキなどの着色に適する。
【0058】
次に本発明の実施例を示して具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【実施例1】
【0059】
FASTOGEN(登録商標)GREEN A−110(DIC株式会社製C.I.ピグメントグリーン58)20gと、ハイドラン(登録商標) AP−40F(DIC株式会社製ポリウレタン樹脂水性分散体。不揮発分(質量換算)22.5%。主鎖に芳香環を含む直鎖芳香族単位とアニオン性基とを含む、脂肪族または脂環式ジイソシアネートを用いて得たポリエステル系のポリウレタン樹脂)4.44gと、デナコールEX−614B(ナガセケムテックス社製ソルビトールポリグリシジルエーテル。3官能と4官能の上記グリシジルエーテルを含む混合物。)0.22gをイオン交換水500gとを、1リットル容量のオートクレーブに仕込み、攪拌しながら2時間で130℃まで昇温し、そのままの温度にて5時間で加熱攪拌を行ない、水中で、顔料に吸着させたポリウレタン樹脂のエポキシ架橋を行った。
【0060】
その後室温となるまで放冷し、吸引濾過し固形分を得て、濾紙上の固形物を温イオン交換水4リットルにて洗浄した。この洗浄液からは未反応の上記デナコールEX−614Bは検出されなかった。こうして得られた顔料組成物のウエットケーキを乾燥機中90℃で12時間乾燥させ、ラボミルにて粉砕を行なった。
【0061】
こうして得られた乾燥した顔料組成物の溶媒抽出による樹脂抽出量から、仕込んだハイドラン AP−40Fの不揮発分の少なくとも80%(質量換算)が、FASTOGEN(登録商標)GREEN A−110に付着していることが確認できた。また、高感度にて測定したこの顔料組成物のIRスペクトルからは、架橋前の水溶性多官能エポキシ化合物であるデナコールEX−614Bのエポキシ基に基づく特異吸収は観察されなかった。以上のことから、得られた顔料組成物は、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂とC.I.ピグメントグリーン58とを含有するものであると推察された。
このカラーフィルタ用顔料組成物の一次粒子の平均粒子径は0.01〜0.10μm、アスペクト比は1〜3の範囲にあった。
【0062】
<カラーフィルタ緑色画素部用組成物の調製>
上記実施例1で得られた乾燥したカラーフィルタ用顔料組成物2.48質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製分散剤 BYK−LPN6919(固形分60%)の1.24質量部、DIC(株)製アクリル樹脂溶液 ユニディック(登録商標)ZL−295(固形分40%)1.86質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.92質量部、の混合物に0.3〜0.4mmφジルコンビーズを加え、東洋精機(株)製ペイントコンディショナーで3時間分散して着色組成物(I)を得た。
得られた着色組成物(I)4.0質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00質量部、上記ユニディック(登録商標)ZL−295の2.10質量部を上記ペイントコンディショナーで攪拌し、カラーフィルタ緑色画素部を形成するための組成物を得た。
【0063】
<CF試験用ガラス基板作製>
続いて上記の組成物をスピンコーターによりソーダガラス製のガラス基板上に塗布した。スピンコーターの回転数は600、800、1000、1200rpmとし、組成物の塗布膜厚の異なる4種のガラス板を作成した。こうして得られた、組成物が塗布された各ガラス板を90℃で3分間加熱し、カラーフィルタ緑色画素部を得た。
【0064】
<カラーフィルタ緑色画素部の評価>
得られたガラス基板を用いて各種カラーフィルタ特性を評価した。
色相(x、y)および輝度(Y値)は大塚電子(株)製の顕微分光光度計MCPD−3000を使用して求めた。まず膜厚の異なる4種のガラス板それぞれについてC光源測色における色度座標x値とy値およびCIE発色系色度におけるY値を測定した。それをもとに4点からなるx-Yグラフを作成し、その近似直線上のy=0.420におけるY値を輝度とした。輝度が大きいほど視覚明度が高いことを意味する。
【0065】
また、初期コントラストは当該カラーフィルタ緑色画素部を2枚の偏光板の間に設置し、偏光板の外側の一方には光源を、更に反対側にはトプコンテクノハウス製色彩輝度計BM−5Aを設置して、2枚の偏光板の偏光軸が平行のときと垂直のときの輝度を測定した。平行時と垂直時の輝度の比を各ガラス板のコントラストとし、4枚のガラス板について測定することで色度座標yとコントラストとのグラフを作成し、その近似直線上のy=0.420における値を当該緑色画素部のコントラストとした。
【0066】
耐熱性は、上記の初期コントラストを測定したカラーフィルタ緑色画素部を設けたガラス基板を230℃の乾燥機に1時間入れ、取り出して放冷した後に、同様にコントラストを測定し、初期コントラストに対する熱履歴を受けた後のコントラストを求めた。
【0067】
〔比較例1〕
ナガセケムテックス社製デナコールEX−614Bを用いない以外は実施例1と同様に順に顔料組成物を調製し、その後も実施例1と同様にして<カラーフィルタ緑色画素部用組成物の調製>、<CF試験用ガラス基板作製>及び<カラーフィルタ緑色画素部の評価>を行なった。
得られた乾燥した顔料組成物の溶媒抽出による樹脂抽出量から、仕込んだハイドラン(登録商標) AP−40Fの不揮発分の少なくとも80%(質量換算)が、FASTOGEN(登録商標)GREEN A−110に付着していることが確認できた。この顔料組成物の一次粒子の平均粒子径は0.01〜0.10μm、アスペクト比は1〜3の範囲にあった。
【0068】
これら実施例1及び比較例1の評価結果を表1にまとめて示した。
【0069】
表1
【0070】
【表1】

【0071】
表1から明らかなように、実施例1と比較例1の熱履歴の負荷後におけるコントラスト対比から、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部を有する実施例1のカラーフィルタは、比較例1の従来のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部を有するそれに対し、耐熱性が著しく優れていることがわかる。
尚、実施例1と比較例1の輝度対比から、初期でも熱履歴の負荷後でも、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部を有する実施例1のカラーフィルタは、比較例1の従来のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部を有するそれに対し、絶対値としての輝度が高く、耐熱性に優れていることがわかる。
【0072】
一方、実施例1と比較例1の対比から、一見すると、比較例1の従来のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部の方が、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部を有する実施例1のカラーフィルタに比べて、初期コントラストにおいてはその絶対値が高く優れている様に見えるものの、比較例1の従来のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部が熱履歴の負荷後のコントラストが初期よりも大きく低下するのに対して、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物から作られた緑色画素部を有する実施例1のカラーフィルタは、比較例1の結果とは真逆に、熱履歴の負荷後のコントラストが初期よりもむしろ大きく向上するという従来の当業者の常識を覆す極めて特異な効果を有していることがわかる。
【0073】
この様に、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂を含む本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、非架橋ポリウレタン樹脂を含む従来のカラーフィルタ用顔料組成物より、耐熱性に優れ、高彩度であり、より色純度の高い色度を有し、さらに非常に高い着色力を示す。したがって、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物は、より理想的なRGB色再現域のディスプレー等の大画面用カラーフィルタの緑色画素部のパターン形成に最適である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、コントラストの耐熱性に優れたカラーフィルタが得られるC.I.ピグメントグリーン58の顔料組成物及びその簡便な製造方法並びに前記顔料組成物を緑色画素部に含有する、高温で長期間の液晶表示を行なってもコントラスト低下が無いか少ない画像が得られるカラーフィルタを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントグリーン58(A)と、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)とを含有し、質量基準でC.I.ピグメントグリーン58(A)100部当たり、エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)不揮発分0.1〜10部であることを特徴とする、カラーフィルタ用顔料組成物。
【請求項2】
エポキシ架橋ポリウレタン樹脂(B)が、エポキシ架橋ポリエステル系ポリウレタン樹脂である請求項1記載のカラーフィルタ用顔料組成物。
【請求項3】
C.I.ピグメントグリーン58(A)と、非架橋ポリウレタン樹脂水性分散体と、水溶性多官能エポキシ化合物とを、不揮発分の質量基準でC.I.ピグメントグリーン58(A)100部当たり、非架橋ポリウレタン樹脂と水溶性多官能エポキシ化合物の合計が0.1〜10部となる様に混合した後、架橋させ液媒体を除去することを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用顔料組成物の製造方法。
【請求項4】
非架橋ポリウレタン樹脂(B)が、非架橋ポリエステル系ポリウレタン樹脂である請求項3記載のカラーフィルタ用顔料組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のカラーフィルタ用顔料組成物を緑色画素部に含有してなるカラーフィルタ。

【公開番号】特開2013−23561(P2013−23561A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158902(P2011−158902)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】