説明

カラーフィルタ製造装置、カラーフィルタ製造方法、乾燥装置、乾燥方法、表示装置の製造装置、表示装置の製造方法

【課題】溶剤の結露を抑制して結露に起因する欠陥の発生を防止し、歩留まりを向上させることを可能とするカラーフィルタ製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】減圧加熱装置8は、減圧部9によりチャンバ41内の空気を吸引して減圧し、加熱部10はチャンバ41内の温度低下を抑制すると同時に基板3の着色層45を加熱する。着色層45から水分や溶剤が気化して気化成分51が生じる。気化成分51は、チャンバ41内に蒸散して滞留する。加熱部10がチャンバ41内を上部から加熱することにより気化成分51が結露することを防止する。従って結露に起因する欠陥の発生を防止することができる。また、加熱部10は、チャンバ41内の温度低下を抑制すると同時に着色層45を加熱するので、着色層45からの水分や溶剤の気化を促進し乾燥時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ製造装置及び製造方法に関する。詳細には、着色層の加熱乾燥を行うカラーフィルタ製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや携帯電話の普及に伴い、高精細かつ軽薄な表示装置が必要とされる。表示装置は、例えば、LCD(液晶ディスプレイパネル)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、有機EL(ElectroLuminescent Display)である。これらの表示装置の構成部材として、カラーフィルタが用いられる。
【0003】
カラーフィルタにおける着色層の形成方法として、インクジェット法、染色法、顔料分散法、電着法、印刷法等の各種方法がある。
インクジェット法では、基板上にパターン形成されたインク受容層にインクを付与することにより、着色層が形成される。あるいは、基板上に遮光部により画設された開口部にインクを塗布することにより、着色層が形成される。インク受容層あるいはインクを乾燥及び硬化させるためには、加熱工程が必要となる。例えば、ホットプレートを用いて加熱することにより、プリベイク(乾燥工程)及びポストベイク(硬化工程)が行われる。一般に、吐出安定性を確保するために遅乾性溶媒(例えば、沸点250℃)がインクの主溶剤として用いられる。加熱により溶剤を気化(揮発)させることによりプリベイクが行われる。
【0004】
また、減圧環境下において加熱乾燥を行うことにより、乾燥時間の短縮化を図るカラーフィルタの製造方法が提案されている(例えば、[特許文献1]参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−182028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、減圧環境下で加熱乾燥を行う場合、溶剤の気化成分が減圧室(減圧チャンバ)の上蓋等の内面に付着して結露が生じ、結露した溶剤が落下して基板上に再付着し、混色や色ムラ等の欠陥が生じるという問題点がある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、溶剤の結露を抑制して結露の滴下に起因する欠陥の発生を防止し、歩留まりを向上させることを可能とするカラーフィルタ製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造装置であって、前記基板を収容する容器と、前記容器内の上方を加熱する上方加熱部と、を具備し、前記上方加熱部は、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とするカラーフィルタ製造装置である。
【0009】
カラーフィルタ製造装置は、基板を容器に収容し、当該基板の着色層に含まれる溶媒成分(水分や溶剤成分やバインダ)を気化させる。容器内の上方を加熱する上方加熱部は、着色層からの気化成分の温度低下を抑制して液化を防止する。
【0010】
これにより、気化成分が結露となり液滴となって落下することを防止できるので、液滴が基板の着色層に再付着することがない。従って、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。
【0011】
また、カラーフィルタ製造装置は、容器内の下方を加熱する下方加熱部を具備し、上方加熱部及び下方加熱部による加熱処理により着色層に含まれる溶媒成分を気化させるようにしても良い。このように、着色層を加熱することにより、乾燥時間の短縮を図ることができる。
上方加熱部及び下方加熱部としての加熱源は、例えばホットプレート、IR(Infrared Rays:赤外線)ヒータ、電熱線、ランプ等を用いることができる。
【0012】
また、着色層の加熱乾燥は、減圧環境下で行うようにしてもよい。このように、減圧環境下で加熱乾燥を行うことにより、乾燥時間の短縮及び着色層の表面形状の改善を図ることができる。
【0013】
第2の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法であって、前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、前記容器内の上方を加熱する上方加熱ステップと、を具備し、前記上方加熱ステップは、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とするカラーフィルタ製造方法である。
【0014】
第2の発明は、基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法に関する発明である。
【0015】
第3の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥装置であって、前記基板を収容する容器と、前記容器内の上方を加熱する上方加熱部と、を具備し、前記上方加熱部は、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする乾燥装置である。
【0016】
第3の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥装置に関する発明である。
【0017】
第4の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥方法であって、前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、前記容器内の上方を加熱する上方加熱ステップと、を具備し、前記上方加熱ステップは、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする乾燥方法である。
【0018】
第4の発明は、基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥方法に関する発明である。
【0019】
第5の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造装置であって、前記基板を収容する容器と、前記容器内の上方を加熱する上方加熱部と、を具備し、前記上方加熱部は、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする表示装置の製造装置である。
【0020】
第5の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造装置に関する発明である。
【0021】
第6の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造方法であって、前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、前記容器内の上方を加熱する上方加熱ステップと、を具備し、前記上方加熱ステップは、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0022】
第6の発明は、基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造方法に関する発明である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶剤の結露を防止して結露の滴下に起因する欠陥の発生を防止し、歩留まりを向上させることを可能とするカラーフィルタ製造装置及び製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るカラーフィルタ製造装置及び製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、略同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0025】
(1.カラーフィルタ製造装置1の構成)
最初に、図1を参照しながら、カラーフィルタ製造装置1の構成について説明する。
図1は、カラーフィルタ製造装置1の構成図である。
【0026】
カラーフィルタ製造装置1は、制御部2、基板3が載置される吸着テーブル4、インクジェットヘッド5、移動部6、アライメントカメラ7、減圧加熱装置8から構成される。
カラーフィルタ製造装置1は、基板3に対してインクジェットヘッド5からインクを吐出してパターニングを行い、カラーフィルタを製造する装置である。
【0027】
基板3は、ガラス基板やフィルム基板である。
吸着テーブル4は、基板3を吸着して固定するテーブルである。基板の吸着は、例えば、吸着テーブル4と基板3との間の空気を減圧あるいは真空にすることにより行われる。この場合、吸着テーブルには、空気を吸引するための小孔(図示しない)が設けられ、吸着の際には当該孔を通じて真空ポンプ(図示しない)等により空気の吸引が行われる。
【0028】
インクジェットヘッド5は、着色剤等を含むインクを吐出する装置である。インクジェットヘッド5は、基板3上に形成されたインク受容層にインクを付与したり、遮光部により画設された開口部にインクを塗布する。
移動部6は、吸着テーブル4及びインクジェットヘッド5の移動及び位置決めを行う装置である。尚、移動機構としては、汎用のガイド機構や移動用アクチュエータを用いることができる。例えば、移動用アクチュエータとして、ステップモータ、サーボモータ、リニアモータを用い、ガイド機構として、直線移動機構、エアースライドを用いることができる。
アライメントカメラ7は、基板3の位置座標を検出するために、基板3の所定箇所(基板上に形成されるアライメントマーク等)を撮像するカメラである。
【0029】
減圧加熱装置8は、減圧環境下で加熱を行う装置である。減圧加熱装置8は、減圧部9及び加熱部10を備える。減圧加熱装置8は、基板3に対して減圧環境下で加熱を行い、インクが付与されたインク受容層あるいや塗布されたインクを乾燥及び硬化させる。減圧加熱装置8の詳細については後述する。
【0030】
制御部2は、演算処理や各装置の動作制御を行う装置である。制御部2は、CPU(中央演算処理装置)やメモリを備える。制御部2は、アライメントカメラ7による撮像画像に基づいて基板3の位置座標を算出し、移動部6を介してインクジェットヘッド5及び基板3の移動及び位置決めを行う。また、制御部2は、インクジェットヘッド5におけるインク吐出タイミングを制御する。
【0031】
(2.カラーフィルタ製造方法)
次に、図2及び図3を参照しながら、カラーフィルタ製造方法について説明する。
【0032】
(2−1.インク受容層にインクを付与するカラーフィルタ製造方法)
図2は、インク受容層にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図である。
【0033】
図2(a)に示すように、基板3に遮光層21及びインク受容層22が形成される。遮光層21は、光を透過させない層である。遮光層21は、着色層を画設するブラックマトリクスあるいはブラックストライプである。遮光層21に関しては、インク受容層22の上に形成するようにしてもよい。インク受容層22は、インク付与により着色される着色媒体である。
図2(b)に示すように、フォトマスク24を用いて光23を照射してパターン露光が行われる。インク受容層22にネガ型の樹脂組成物が用いられる場合、露光部分のインク受容層22は、インク受容能を失って非着色域25となる。露光部分以外のインク受容層22は、着色域26となる。
【0034】
図2(c)に示すように、インクジェットヘッド5からインク27が吐出される。インク27は、染料あるいは顔料等の着色剤を含有する。インク受容層22の着色域26にインク27が付与されて着色される。インク27は、インク受容層22の着色域26に吸収されて拡散する。着色された着色域26と着色されない非着色域25とからなる着色層28が形成される。この段階では、着色層28は、水分や溶剤成分を含み、湿潤状態(ウェット状態)である。
図2(d)に示すように、着色層28が形成された基板3は、減圧加熱装置8に搬送される。減圧加熱装置8は、基板3を減圧環境下で加熱し、着色層28に含まれる水分や溶剤成分を除去して乾燥させる。その後、減圧加熱装置8は、基板3をさらに高温で加熱して着色層28全体を硬化させる。
図2(e)に示すように、着色層28上に必要に応じて保護層29を形成してもよい。
【0035】
以上の過程を経て、基板3に形成されるインク受容層22にインク27を付与することにより、カラーフィルタが製造される。
【0036】
(2−2.開口部にインクを塗布するカラーフィルタ製造方法)
図3は、開口部にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図である。
【0037】
図3(a)に示すように、基板3に遮光層31が形成される。遮光層31は、隔壁部である。遮光層31により、各画素に対応する開口部が形成される。
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド5からインク32が吐出される。インク32は、染料あるいは顔料等の着色剤を含有する。開口部にインク32が塗布され、着色層33が形成される。この段階では、着色層33は、水分や溶剤成分を含み、湿潤状態(ウェット状態)である。
図3(c)に示すように、着色層33が形成された基板3は、減圧加熱装置8に搬送される。減圧加熱装置8は、基板3を減圧環境下で加熱し、着色層33に含まれる水分や溶剤成分を除去して乾燥させる。その後、減圧加熱装置8は、基板3をさらに高温で加熱して着色層33全体を硬化させる。
図3(d)に示すように、着色層33上に必要に応じて保護層34を形成してもよい。
【0038】
以上の過程を経て、基板3に形成される開口部にインク32を塗布することにより、カラーフィルタが製造される。
【0039】
(3.減圧加熱装置8)
次に、図4を参照しながら、第1の実施の形態に係る減圧加熱装置8について説明する。
図4は、減圧加熱装置8の構成図である。
減圧加熱装置8では、チャンバ41の上方に加熱部10が設けられる。
【0040】
減圧加熱装置8は、基板3を収容するチャンバ41に減圧部9と加熱部10とが設けられて構成される。減圧部9は、チャンバ41内の空気を吸引する減圧装置である。減圧部9は、例えば、真空ポンプである。加熱部10は、チャンバ41内の上方に設けられチャンバ41内を加熱する装置である。加熱部10は、例えば、ホットプレート、電熱線、ランプ、赤外線放射装置等である。尚、図4の着色層45は、図2の着色層28及び図3の着色層33に相当する。
【0041】
(4.減圧加熱装置8による乾燥処理)
次に、図5及び図6を参照しながら、減圧加熱装置8による乾燥処理について説明する。
図5は、減圧加熱装置8による乾燥処理を示す図である。
図6は、減圧加熱装置8内部の、基板3からの距離と温度の関係を示す図である。
【0042】
減圧加熱装置8は、減圧部9によりチャンバ41内の空気を吸引して減圧する。基板3の着色層45から水分や溶剤が気化して気化成分51が生じ、チャンバ41内に蒸散し滞留する。加熱部10がチャンバ41内の上部を加熱することにより、チャンバ41内に滞留する気化成分51が温度低下によって結露することが抑制される。従って、チャンバ41内の上部を加熱することにより、気化成分51が結露して滴下し基板3の着色層45に再付着することを防止することができる。
【0043】
また、加熱部10はチャンバ41内の温度低下を防止するだけでなく、加熱部10が基板3の着色層45を上方から加熱することにより、着色層45からの水分や溶剤の気化を促進する。
【0044】
図6は、減圧加熱装置8内部の、基板3からの距離と温度の関係(温度分布81)を示す図である。図6の横軸は「基板3からの距離」を示し、右端はチャンバ41の最上部位置、左端は基板3の位置である。図6の縦軸は温度を示す。加熱部10をチャンバ41内の上方に設置するので、チャンバ41内の温度は、加熱部10の近傍が最大値を示し、加熱部10からの距離に応じて徐々に低下する温度分布81を示す。
尚、温度分布81は、加熱部10の加熱温度、加熱時間、基板3と加熱部10との距離を変更することによって調整することができる。気化成分51が液化しないように温度分布81を適宜調整することが望ましい。
【0045】
このように、第1の実施の形態では、気化成分51の結露を抑制するので、気化成分51の結露が着色層45に滴下して再付着することを防止する。従って、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。また、着色層45を上方から加熱することにより、着色層45の乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0046】
(5.第2の実施の形態)
次に、図7を参照しながら、第2の実施の形態に係る減圧加熱装置8aについて説明する。
図7は、減圧加熱装置8aの構成図である。
減圧加熱装置8aでは、チャンバ41内の上方に加熱部10−1が設けられると共に、チャンバ41内の下方に加熱部10−2が設けられる。
【0047】
加熱部10−2は、チャンバ41内の下方に設けられ、基板3を下方から加熱する装置である。加熱部10−2は、例えば、ホットプレート、電熱線、ランプ、赤外線放射装置等である。
【0048】
(6.減圧加熱装置8aによる乾燥処理)
次に、図8及び図9を参照しながら、減圧加熱装置8aによる乾燥処理について説明する。
図8は、減圧加熱装置8aによる乾燥処理を示す図である。
図9は、減圧加熱装置8a内部の、基板3からの距離と温度の関係を示す図である。
【0049】
減圧加熱装置8aは、減圧部9によりチャンバ41内の空気を吸引して減圧する。基板3の着色層45から水分や溶剤が気化して気化成分51が生じ、チャンバ41内に蒸散し滞留する。加熱部10−1がチャンバ41内の上部を加熱することにより、チャンバ41内に滞留する気化成分51が温度低下によって結露することが抑制される。従って、チャンバ41内の上部を加熱することにより、気化成分51が結露して滴下し基板3の着色層45に再付着することを防止することができる。加熱部10−1はチャンバ41内の温度低下を防止するだけでなく、基板3の着色層45を上方から加熱することにより、着色層45からの水分や溶剤の気化を促進する。
【0050】
また、チャンバ41内の下方に設けられる加熱部10−2は、基板3の着色層45を下方から加熱する。着色層45を、上方から加熱部10−1、及び下方から加熱部10−2を用いて加熱することにより、着色層45からの水分や溶剤の気化を効果的に促進することができる。
【0051】
図9は、減圧加熱装置8a内部の、基板3からの距離と温度の関係(温度分布83)を示す図である。加熱部10−1をチャンバ41内の上方に設置し、加熱部10−2をチャンバ41内の下方(基板3の下方)に設置するので、チャンバ41内の温度は、加熱部10−1と加熱部10−2の近傍で極大値を示し、加熱部10−1及び加熱部10−2からの距離に応じて徐々に低下する温度分布83を示す。
尚、温度分布83は、加熱部10−1及び加熱部10−2の加熱温度、加熱時間、基板3と加熱部10との距離を変更することによって調整することができる。気化成分51が液化しないように温度分布83を適宜調整することが望ましい。
【0052】
このように、第2の実施の形態では、気化成分51の結露を抑制するので、第1の実施の形態と同様に、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができる。また、基板3を上方、下方から同時に加熱することにより、着色層45の乾燥時間をより効果的に短縮することができる。
【0053】
(7.表示装置91の製造)
図10は、表示装置91を示す図である。ここでは、表示装置91として液晶ディスプレイパネルを挙げて説明する。
基板92は、カラーフィルタ製造装置1により製造されたカラーフィルタである。基板92には、液晶封入空間を確保するためのスペーサ96が形成される。基板93は、TFT(Thin Film Transistor)等のアレイ基板である。基板92と基板93とを貼り合わせ、基板の周辺部分にシール材94を設け、基板間に液晶97を封入することにより、表示装置91が製造される。
【0054】
(8.実施例)
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0055】
[1.実施例]
[1−1.着色層形成用基板作製]
カラーフィルタ用ガラス材として用いられている厚み0.7mm、横370mm、縦470mmのCorning社製EAGLE2000を用意し、このガラス基材上にフォトリソグラフィ法にて樹脂製のブラックマトリクスを形成した。
ブラックマトリクスは開口部が150μm×420μm、遮光部分の線幅が縦90μm、横20μmとなるように形成し、横方向に170μmピッチ、縦方向に510μmピッチにて縦方向に600画素、横方向に2400画素(800×3)配置されるものとした。またこの際、遮光部分の膜厚は平均1.5μmとした。
上記ブラックマトリクス付ガラス基材に対し、フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ処理を加えることにより、ブラックマトリクスの表面を撥液性に、それ以外の領域(着色層形成用領域)を親液性とした。このとき表面張力40mN/mの液体との接触角は、ブラックマトリクス上で60°、着色層形成用領域で10°であった。
【0056】
[1−2.着色層形成工程]
上記親疎液性を有する着色層形成用基板に対し、インクジェットヘッドを用いて着色層形成用塗工液を塗布した。着色層形成用塗工液は、カラーフィルタ用顔料と熱硬化型樹脂等からなるRGB各色の顔料分散型インクを用い、1つの開口部(着色層形成用領域)あたり50滴にて所望のカラーフィルタの色が表現できるように濃度を設計したものを用いた。
このときのインクジェットヘッドへの印加電圧は75V、パルス幅は2μsであった。また、インクジェットヘッドは1ヘッドにつき128ノズルを有するものを用い、1色につき1ヘッド、すなわちRGB3色にて3ヘッドを用いた。
塗布は、各着色層形成用領域(1画素)あたり1ノズルが配置されるように位置決めして行い、ノズルから吐出された着色層形成用塗工液の各液滴が、上記着色層形成用領域内に着弾するように行った。また、着色層形成用塗工液は画素短手方向にRGBの順に繰り返し配置し、画素長手方向には同色が並ぶように配置した。そして、インクジェットヘッドを画素長手方向に走査しつつ着色層形成用塗工液を塗布した。この際、各色の着色層形成用塗工液は開口部全域に塗れ広がり、かつ異なる色同士混色することは無かった。
【0057】
[1−3.減圧加熱乾燥工程]
上記着色層形成用塗工液を着弾させたカラーフィルタ用基板を基板下方および基板上方に加熱機構を備えた減圧加熱乾燥装置内に配置し減圧加熱乾燥した。
基板と下方加熱ステージとのギャップはSUS製の5mmピンを用いて設定した。また、基板と上方加熱源とのギャップは80mmに設定した。加熱温度は上方加熱部を30℃、下方加熱部を30℃に設定した。減圧圧力は10Pa、減圧保持時間70secに設定した。尚、設定減圧圧力到達時間は15secであった。尚、この時の基板温度は30℃であった。
プリベイク後の減圧乾燥装置内を観察した結果、結露の発生は無かった。そして、着色層形成用塗工液は、先端の直径が12μmの針で5mgの圧力にて表面を触針しても傷が入らない程度に固化し、混色しない状態であった。
【0058】
[1−4.ポストベイク工程]
上記、プリベイク後が終了したカラーフィルタ用基板を200℃のオーブンに設置し、30分間ポストベイクを行った。
【0059】
[1−5.着色層形状検査工程]
上記ポストベイク後のカラーフィルタ用基板の着色層を、Micromap社三次元非接触表面形状計測装置micromap557を用いて測定した。測定は、カラーフィルタ用基板の中央部および額縁部の着色層形成領域(1画素)、すなわち170μm×510μmの範囲における表面形状を計測した。
カラーフィルタ用基板の中央部および額縁部の画素断面形状について比較した結果、形状は同じであった。また、クラック、表面荒れ、色ムラ等、表示に影響を及ぼすといった欠陥が無く、良質なカラーフィルタ用基板が作製できた。
【0060】
[2.比較例]
減圧加熱乾燥工程に関して、[実施例]では加熱温度として、上方加熱部を30℃、下方加熱部を30℃に設定したのに対して、[比較例]では、加熱は下方加熱部のみを使用して温度を30℃に設定した。尚、[比較例]では[実施例]と同様に着色層形成用基板作製、着色層形成工程、ポストベイク工程を行った。
【0061】
[2−1.着色層形成用基板作製]
[実施例1]と同様であるので説明を省略する。
【0062】
[2−2.着色層形成工程]
[実施例1]と同様であるので説明を省略する。
【0063】
[2−3.減圧加熱乾燥工程]
上記着色層形成用塗工液を着弾させたカラーフィルタ用基板を基板下方および基板上方に加熱機構を備えた減圧加熱乾燥装置内に配置し減圧加熱乾燥した。
基板と下方加熱ステージとのギャップはSUS製の5mmピンを用いて設定した。また、基板と上方加熱部とのギャップは80mmに設定した。加熱は下方加熱部のみを使用し、温度を30℃に設定した。減圧圧力は10Pa、減圧保持時間70secに設定した。尚、設定減圧圧力到達時間は15secであった。尚、この時の基板温度は30℃であった。
プリベイク後の減圧乾燥装置内を観察した結果、上方加熱部の周囲に結露が発生した。着色層形成用塗工液は、先端の直径が12μmの針で5mgの圧力にて表面を触針しても傷が入らない程度に固化し、混色しない状態であったが、結露した溶剤が再付着した痕跡があった部位では混色していた。
【0064】
[2−4.ポストベイク工程]
[実施例1]と同様であるので説明を省略する。
【0065】
[2−5.着色層形状検査工程]
上記ポストベイク後のカラーフィルタ用基板の着色層を、Micromap社三次元非接触表面形状計測装置micromap557を用いて測定した。測定は、カラーフィルタ用基板の中央部および額縁部の着色層形成領域(1画素)、すなわち170μm×510μmの範囲における表面形状を計測した。
カラーフィルタ用基板の中央部および額縁部の画素断面形状について比較した結果、形状は同じであった。しかし、結露した溶剤の再付着に起因した混色および色ムラがあり、良質なカラーフィルタ用基板は作製出来なかった。
【0066】
[3.上方加熱温度と下方加熱温度]
図11は、上方加熱温度と下方加熱温度毎の結露発生状況及び着色層欠陥状況の結果を示す図である。
【0067】
図11の結露発生状況の結果を参照すると、上方加熱温度が25℃以下では結露が発生し、30℃以上では結露の発生が無い。
また、上方加熱部と下方加熱部が25℃以下の場合、着色層に変形が生じ、上方加熱部または下方加熱部のいずれかが100℃を超える場合、着色層表面にクラックの欠陥が生じる。
【0068】
以上の結果から、結露を防止するには結露が発生する部位の温度を30℃以上100℃以下にすることが望ましい。
また、着色層の変形やクラック等の表示に影響を及ぼすといった欠陥を防止するには基板温度を30℃以上100℃以下にすることが望ましい。
【0069】
(9.その他)
以上詳細に説明したように、減圧加熱装置の上方に加熱部を設け着色層からの気化成分の結露を抑制するので、結露が滴下して着色層へ再付着することを防止することができる。従って、混色や色ムラ等の欠陥を防止することができ、カラーフィルタ製造における歩留まりの向上に効果がある。
また、加熱部は容器内の温度低下を防止して結露を抑制するだけではなく、加熱部が着色層を加熱することにより、着色層の乾燥時間を短縮することができる。
【0070】
尚、減圧乾燥装置に加熱部を設けるものとして説明したが、減圧部を備えない乾燥装置に加熱部を設けた場合であっても、気化成分の結露を防止することができる。但し、減圧環境下で加熱した場合には、乾燥時間の短縮や均一膜厚の着色層形成を実現することができる。特に、面付け周縁部では、他の部分より膜厚が大きくなりがちであるが、減圧環境下で加熱乾燥及び加熱硬化させることにより、面付け周縁部の着色層の表面形状を改善することができる。
また、インクの吐出は、インクジェットヘッドに限られず、例えば、ディスペンサ等を用いることもできる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかるカラーフィルタ製造装置及び製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】カラーフィルタ製造装置1の構成図
【図2】インク受容層にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図
【図3】開口部にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法を示す図
【図4】減圧加熱装置8の構成図
【図5】減圧加熱装置8による乾燥処理を示す図
【図6】チャンバ41内の温度分布81を示すグラフ
【図7】減圧加熱装置8aの構成図
【図8】減圧加熱装置8aによる乾燥処理を示す図
【図9】チャンバ41内の温度分布83を示すグラフ
【図10】表示装置91を示す図
【図11】上方加熱温度と下方加熱温度毎の結露発生状況及び着色層欠陥状況の結果を示す図
【符号の説明】
【0073】
1………カラーフィルタ製造装置
2………制御部
3………基板
4………吸着テーブル
5………インクジェットヘッド
6………移動部
7………アライメントカメラ
8、8a………減圧加熱装置
9………減圧部
10、10−1、10−2………加熱部
21、31………遮光層
22………インク受容層
23………光
24………フォトマスク
25………非着色域
26………着色域
27、32………インク
28、33、45………着色層
29、34………保護層
41………チャンバ
51………気化成分
81、83………温度分布
91………表示装置
92………カラーフィルタ基板
93………アレイ基板
94………シール材
96………スペーサ
97………液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造装置であって、
前記基板を収容する容器と、
前記容器内の上方を加熱する上方加熱部と、
を具備し、
前記上方加熱部は、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とするカラーフィルタ製造装置。
【請求項2】
前記容器内の下方を加熱する下方加熱部を具備し、
前記上方加熱部または前記下方加熱部の少なくともいずれかは、加熱処理により前記着色層に含まれる溶媒成分を気化させることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項3】
前記容器内の減圧を行う減圧部を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ製造装置。
【請求項4】
基板にインクを付与して着色層を形成するカラーフィルタ製造方法であって、
前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、
前記容器内の上方を加熱する上方加熱ステップと、
を具備し、
前記上方加熱ステップは、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とするカラーフィルタ製造方法。
【請求項5】
前記容器内の下方を加熱する下方加熱ステップを具備し、
前記上方加熱ステップまたは前記下方加熱ステップの少なくともいずれかは、加熱処理により前記着色層に含まれる溶媒成分を気化させることを特徴とする請求項4に記載のカラーフィルタ製造方法。
【請求項6】
前記容器内の減圧を行う減圧ステップを具備することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のカラーフィルタ製造方法。
【請求項7】
基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥装置であって、
前記基板を収容する容器と、
前記容器内の上方を加熱する上方加熱部と、
を具備し、
前記上方加熱部は、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする乾燥装置。
【請求項8】
前記容器内の下方を加熱する下方加熱部を具備し、
前記上方加熱部または前記下方加熱部の少なくともいずれかは、加熱処理により前記着色層に含まれる溶媒成分を気化させることを特徴とする請求項7に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記容器内の減圧を行う減圧部を具備することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
基板にインクを付与して形成される着色層を乾燥する乾燥方法であって、
前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、
前記容器内の上方を加熱する上方加熱ステップと、
を具備し、
前記上方加熱ステップは、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする乾燥方法。
【請求項11】
前記容器内の下方を加熱する下方加熱ステップを具備し、
前記上方加熱ステップまたは前記下方加熱ステップの少なくともいずれかは、
加熱処理により、前記着色層に含まれる溶媒成分を気化させることを特徴とする請求項10に記載の乾燥方法。
【請求項12】
前記容器内の減圧を行う減圧ステップを具備することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の乾燥方法。
【請求項13】
基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造装置であって、
前記基板を収容する容器と、
前記容器内の上方を加熱する上方加熱部と、
を具備し、
前記上方加熱部は、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする表示装置の製造装置。
【請求項14】
基板にインクを付与して着色層が形成されたカラーフィルタを備える表示装置の製造方法であって、
前記基板を容器に収容する基板収容ステップと、
前記容器内の上方を加熱する上方加熱ステップと、
を具備し、
前記上方加熱ステップは、加熱処理により前記着色層からの気化成分の温度低下を抑制して前記気化成分の液化を防止することを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−180888(P2009−180888A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19077(P2008−19077)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】