説明

カラープリンタの色抜け判別用印刷方法および管理用印刷媒体

【課題】色抜けを簡単に判別することができる色抜け判別領域を備えた管理ラベルを提案すること。
【解決手段】管理ラベル10のラベル面10aには物品を管理するための管理色が印刷される色分け印刷領域11と色抜けを判別するための色抜け判別領域15が形成されている。色抜け判別領域15には、ブラックにより印刷される「NG」の文字を含む色抜け判別部18と、シアン、マゼンダ、イエローによって印刷される背景部19とが含まれ、色抜けがない正常状態では色抜け判別部18と背景部19の印刷色が灰色となり、[NG」の文字を目視により識別できないが、色抜けが発生すると、双方の印刷色が異なり、「NG」の文字が目視により判別可能な状態に浮かび上がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の色インクを用いてカラー印刷を行なうカラープリンタにおいて、色インクの色抜けを容易に判別できる色抜け判別用印刷方法に関する。また、その色抜け判別用印刷方法によって印刷された色抜け判別領域を備える管理ラベルなどの管理用印刷媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を複数の倉庫に分散して保管する際には、物品を梱包した段ボール箱の表面に物品名や保管先の倉庫名を印刷した管理ラベルが貼り付けられる。このような管理ラベルの見易い領域には、物品の仕分け担当者が保管先の倉庫を簡単に把握できるように、各倉庫に予め割り当てられた色が印刷されている。
【0003】
例えば、図4(a)に示すように、保管場所のA倉庫に赤色、B倉庫に青色、C倉庫に黄色、D倉庫に緑色が割り当てられている場合、ロール紙をA倉庫に保管するために用いられる管理ラベルには、A倉庫を示す赤色が印刷される。図4(b)に示す例では、管理ラベルの上下の縁部分70が色分け印刷領域になっており、ここに赤色が印刷されている。
【0004】
色分け印刷領域を備えた管理ラベルは、例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色の色インクを用いてカラー印刷を行うインクジェットプリンタによって印刷される。インクジェットプリンタは、各色インクをそれぞれ所定の割合で重ねて印刷することによって色分け印刷領域に各倉庫に割り当てられた色を印刷する。
【0005】
ここで、インクジェットプリンタにより管理ラベルを印刷する際に、インク切れなどの原因によって、使用されるべき色インクの一つが用いられずに色分け印刷領域が印刷されると、色分け印刷領域は正常に印刷された場合と同じように均一な色で印刷されていながら、本来印刷されるべき色とは異なる色が印刷されてしまう。すなわち、「色抜け」が発生する。
【0006】
図4(c)に示す例は、図4(b)に示した管理ラベルを印刷する際にマゼンダが色抜けした例であり、管理ラベルの縁部分70には、黄色が印刷されている。縁部分70に印刷されるべき赤色は、図5に示すように、マゼンダとイエローの色インクを用いて印刷されるので、マゼンダが色抜けすることによってイエローの色インクのみで印刷された結果、C倉庫を示す黄色になる。この色抜けした管理ラベルを見た仕分け担当者は、梱包されたロール紙を目的のA倉庫とは異なるC倉庫に仕分けしてしまう可能性が高い。
【0007】
他の色インクが色抜けした場合にも、同様の事態は発生する。図5を参照しながら説明すると、青色はシアンとマゼンダの色インクを用いて印刷されるので、シアンが色抜けすると、マゼンダの色インクのみで印刷されて、色分け印刷領域の色は赤色に誤認されやすくなる。また、緑色はシアンとイエローの色インクを用いて印刷されるので、イエローが色抜けすると、シアンの色インクのみで印刷されて、色分け印刷領域の色は青色に誤認されやすくなる。
【0008】
ここで、テストパターンを印刷することにより、各色インクがインクジェットヘッドのインク吐出口から正常に吐出されているか否かを確認する方法が、例えば、特許文献1に記載されている。しかし、印刷開始時等にテストパターンを印刷して色抜けがないこと確認しても、印刷途中で突然色抜けが起こった場合には、それを判別することはできない。
【0009】
また、色分け印刷領域に印刷する色を4色の色インクの原色に限定することが考えられる。原色のみで印刷すれば、色抜けした場合には色分け印刷領域に管理ラベルの地色が表れるので、色抜けを判別することは容易にできる。しかし、4色より多くの色分けができないので、現実的ではない。
【特許文献1】特開平9−66650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、図6に示すような、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各色インクでそれぞれ印刷される4つ印刷領域を備えた色見本75を管理ラベルの所定の領域に印刷するようにして、この色見本75から色抜けを判別することが考えられる。色見本75によれば、4つの印刷領域のうちの少なくとも一つの印刷領域が印刷されていない場合には、色抜けしていることを判別できる。
【0011】
しかし、4つに区画された小さな印刷領域を見て、それぞれの印刷領域に正常な印刷が行なわれているか否かを確認することは面倒であり、手間がかかる。また、イエローの色インクによる黄色の印刷は、小さい面積では視認性が低いので、その色抜けを判別することは容易ではない。すなわち、色見本75を印刷する色抜け判別用印刷方法では、簡単かつ正確に色抜けを判別することが難しいという問題がある。
【0012】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、色抜けを簡単に判別することができるカラープリンタの色抜け判別用印刷方法を提供することにある。また、色抜けを判別することが容易な管理用印刷媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明のカラープリンタの色抜け判別用印刷方法は、カラープリンタを用いて、印刷媒体の表面における予め定めた印刷領域に、文字、図形、記号などを一色の色インクで印刷して、色抜け判別部を形成し、前記カラープリンタを用いて、この印刷領域における色抜け判別部の背景部が当該色抜け判別部と同一の印刷色となるように、前記一色の色インクとは異なる複数色の色インクを重ねて印刷し、前記色抜け判別部の印刷色と前記背景部の印刷色とが異なる場合には、これら色抜け判別部および背景部を印刷するために用いる少なくとも一つの色インクが印刷されなかったと判別可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、色抜け判別部の文字、図形、記号などの印刷色が背景部の印刷色と異なる場合には、少なくとも一つの色インクが色抜けしていると判別できる。文字、図形、記号によって色抜けを判別できるので、その判別が容易であり、判別を迅速に行なうことができる。また、イエローの色インクにより印刷された黄色のような視認性の低い印刷領域を確認する必要がないので、色抜けの判別を正確に行なうことができる。
【0015】
本発明において、前記色抜け判別部を、前記一色の色インクを用いる代わりに、前記複数色の色インクを重ねて印刷することにより形成し、前記背景部を、前記複数色の色インクを用いる代わりに、前記一色の色インクを印刷することにより形成することもできる。
【0016】
本発明において、前記一色の色インクをブラックとした場合には、前記複数色の色インクとして、シアン、マゼンダ、イエローの3色の色インクを用いればよい。また、前記色抜け判別部および前記背景部の印刷色が黒色または同一明度の灰色となるように、これらの部分を形成すればよい。
【0017】
本発明において、前記印刷媒体の表面色は白色であることが好ましい。このようにすれば、色抜け判別部を形成する色インクが色抜けした場合には、色抜け判別部に表面色の白色が表れるので、色抜け判別部を背景部から目視により識別しやすい。
【0018】
本発明において、前記印刷領域として少なくとも第1および第2印刷領域を形成し、前記第1印刷領域を第1の色インク群を用いて印刷し、前記第2印刷領域を第2の色インク群を用いて印刷し、前記第2の色インク群に含まれる少なくとも一つの色インクを、前記第1の色インク群に含まれる色インクとは異なるものとすることができる。このようにすれば、1の印刷領域に形成した色抜け判別部および背景部では色抜けが判別できない色インクがある場合でも、他の印刷領域に形成した色抜け判別部および背景部の印刷状態から、その色インクの色抜けを判別することができる。
【0019】
また、本発明を適用可能なカラープリンタとしてはインクジェットプリンタがある。インクジェットプリンタは使用される色インク毎に独立したインクタンクおよびインクノズル群を備えているので、インクタンクの取り付けの不具合やインクノズル群の目詰まりなどにより色抜けした場合に、適切に対応することができる。
【0020】
次に、本発明の管理用印刷媒体は、上述のカラープリンタの色抜け判別用印刷方法により形成された前記色抜け判別部および前記背景部を備えた色抜け判別領域と、前記色分け判別部および前記背景部の形成に用いられる色インクのうちの少なくとも一つを用いて印刷された色分け印刷領域とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明の管理用印刷媒体は、色分け印刷領域の印刷に用いられる各色インクの色抜けを判別できる色抜け判別領域を備えている。従って、管理用印刷媒体を見た者は、色分け印刷領域に印刷された色が、色抜けのない適切な色か否かを知ることができる。よって、色分け印刷領域に色抜けした色が印刷されている場合でも、適切に対応することができる。
【0022】
本発明において、さらに、前記色分け印刷領域に印刷された色に対応する管理用文字情報が印刷されている文字印刷領域を有していることが好ましい。このようにすれば、色抜けによって色分け印刷領域に色抜けした色が印刷されている場合でも、管理用文字情報に基づいてその管理内容を知ることができるので、正確な管理が行なえる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカラープリンタの色抜け判別用印刷方法によれば、色抜け判別部の文字、図形、記号などの印刷色が背景部の印刷色とは異なり、目視により識別できる場合には、少なくとも一つの色インクが色抜けしていると判別できる。文字、図形、記号によって色抜けを判別できるので、その判別が容易であり、判別を迅速に行なうことができる。また、イエローの色インクにより印刷された黄色のような視認性の低い印刷領域を確認する必要がないので、色抜けの判別を正確に行なうことができる。
【0024】
また、本発明の管理用印刷媒体は、色分け印刷領域の印刷に用いられる各色インクの色抜けを判別できる色抜け判別領域を備えている。従って、管理用印刷媒体を見た者は、色分け印刷領域の印刷色が正しい色であるか否かを知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
(管理ラベル印刷システム)
図1は、本発明の方法によって管理ラベルを印刷する管理ラベル印刷システムの一例を示す概略構成図である。管理ラベル印刷システム1は、データ管理サーバ2と、このデー
タ管理サーバ2にネットワーク3を介して接続されたコンピュータ4と、このコンピュータ4にケーブル6で接続されたインクジェットプリンタ5を備えている。インクジェットプリンタ5は、ブラック、シアン、マゼンダおよびイエローの4色の色インクによりフルカラー印刷を行うカラープリンタである。コンピュータ4は、データ管理サーバ2にアクセスして管理ラベル10に印刷する印刷データを生成するとともに、インクジェットプリンタ5を駆動制御して、管理レベル10のラベル面10aに印刷データを印刷する。
【0027】
データ管理サーバ2は、保管する物品の情報として、物品名、物品の総数量、物品の保管期間、各物品の管理責任者等が登録されている物品データベース21を備えている。また、保管場所の情報として、倉庫名、各倉庫に割り当てられた色(管理色)の色名、各倉庫の空きスペース等の情報が登録されている保管場所データベース22を備えている。
【0028】
コンピュータ4は、データ管理サーバ2にアクセスして印刷データを生成する印刷データ生成手段41と、インクジェットプリンタ5を駆動制御して生成された印刷データを印刷させるデータ印刷制御手段42とを備えている。また、印刷データ生成手段41には、インクジェットプリンタ5により印刷された管理ラベル10に色抜けが発生しているか否かを目視により識別可能な色抜け判別領域15を形成するための印刷データを生成する色抜け判別用印刷データ生成手段43が含まれている。
【0029】
なお、管理ラベル10は、長尺状の剥離紙10cの表面に一定の間隔で剥離可能な状態で貼り付けられている。印刷後には剥離紙10cから管理ラベル10が剥離され、物品が梱包された段ボール箱の側面などに貼り付けて使用される。管理ラベル10のラベル面10aの印刷内容にしたがって、物品が梱包された各段ボール箱が複数の倉庫に分散して保管される。
【0030】
印刷データ生成手段41は、物品データベース21および保管場所データベース22から必要な情報を関連付けて抽出して、印刷データを生成する。生成された印刷データには、梱包される物品の物品名、梱包される数量、倉庫での保管期間、物品を管理する管理責任者、および保管場所の倉庫名、これらの情報を特定するためのバーコードの情報および保管先の倉庫毎に割り当てられた管理色の色名が含まれている。
【0031】
データ印刷制御手段42は、ラベル面10aの文字印刷領域13に物品名、数量、保管期間、管理責任者、倉庫名を印刷する。また、文字印刷領域13の下にバーコード14を印刷する。さらに、色名に対応する色を、色分け印刷領域11に印刷する。
【0032】
色抜け判別用印刷データ生成手段43は、矩形の印刷領域に、ブラックの色インクを用いて「NG」の文字16および矩形の印刷領域の輪郭部分17からなる色抜け判別部18を形成する。また、「NG」の文字16の背景に、シアン、マゼンダ、イエローの3色の色インクを重ねて印刷することにより背景部19を形成する。色抜け判別部18と背景部19は、それらを目視では判別できないように、それらの印刷色が同一の灰色となるように形成される。色抜け判別用印刷データ生成手段43は、データ印刷制御手段42によって印刷データの印刷が行なわれる毎に、ラベル面10aに色抜け判別領域15を形成する。
【0033】
(管理ラベル)
図2は管理ラベル印刷システム1によって印刷された管理ラベル10のラベル面10aの構成例を示す説明図であり、(a)は色抜けのない場合を示し、(b)はシアンが色抜けした場合の例を示してある。
【0034】
図2(a)を参照して説明すると、管理ラベル10のラベル面10aは長方形をしてお
り、その地の色は例えば白色である。ラベル面10aの上下の縁部分には、仕分け担当者が保管先の倉庫を把握し易いように、各倉庫に割り当てられた管理色が印刷された帯状の色分け印刷領域11が形成されている。ラベル面10aの中央部分には、物品名や倉庫名などの管理用文字情報が印刷された文字印刷領域13が形成されている。文字印刷領域13と下側の色分け印刷領域11との間には、バーコード14の印刷領域と、管理ラベル10に色抜けがあるか否かを判別するための色抜け判別領域15が形成されている。
【0035】
文字印刷領域13には、梱包される物品の物品名、梱包される数量、倉庫での保管期間、物品を管理する管理責任者、および保管場所の倉庫名が印刷される。バーコード14は、これらの情報を特定するためのものである。色抜け判別領域15は矩形の印刷領域であり、この領域には、ブラックの色インクを用いて印刷された「NG」の文字を含む色抜け判別部18と、「NG」の文字の背景部19とが含まれている。背景部19は、シアン、マゼンダ、イエローの3色の色インクを重ねて印刷することにより形成される。
【0036】
ここで、色抜けがない管理ラベル10では、その色分け印刷領域11に、保管先の倉庫に割り当てられた管理色が印刷される。例えば、図4(a)で示した例と同様に、A倉庫に赤色、B倉庫に青色、C倉庫に黄色、D倉庫に緑色の管理色が割り当てられる。この場合には、A倉庫に保管される段ボール箱に貼付される管理ラベル10の色分け印刷領域11には赤色が印刷される。また、色抜けがない管理ラベル10の色抜け判別領域15には、単色の灰色が印刷される。
【0037】
これに対して、図2(b)に示すシアンが色抜けした場合の管理ラベル10Aでは、色分け印刷領域11の印刷色が、A倉庫に割り当てられている管理色の赤色ではなく、C倉庫に割り当てられている管理色である黄色に変わってしまう。シアンが色抜けした結果、イエローの色インクのみによって印刷されるからである。この場合、色抜け判別領域15における背景部19の印刷色が緑色に変わり、色抜けが発生したことを示す印刷色が灰色の「NG」の文字16が背景部19から目視により識別可能な状態で浮き出ることになる。
【0038】
ラベル面10aに「NG」の文字16が目視により識別可能な状態で現れているので、この色抜けした管理ラベル10Aを見たラベル作成者や仕分け担当者は、当該管理ラベル10Aに色抜けがあることを容易に判別することができる。
【0039】
なお、仕分け担当者が管理ラベル10Aに色抜けがあると分かれば、そこに印刷されている管理色を無視して、文字印刷領域13に記載されている倉庫名に基づいて、梱包されたロール紙をA倉庫に仕分けすることができるので、物品が誤った保管先に保管されることがない。
【0040】
(色抜け判別領域の構成)
次に、図3を参照して、ラベル面10aの色抜け判別領域15について詳細に説明する。本例の色抜け判別領域15は、「NG」の文字16および矩形枠状の輪郭部分17からなる色抜け判別部18と、この色抜け判別部18以外の色抜け判別領域15の領域からなる背景部19とを備えている。
【0041】
ブラックの色インクを用いて印刷される色抜け判別部18では、印刷色が面積階調による灰色となるように、「NG」の文字16および矩形枠状の輪郭部分17が印刷される。シアン、マゼンダ、イエローの3色の色インクを重ねて印刷することにより形成される背景部19も、印刷色が面積階調によって灰色となるように、印刷される。色抜け判別部18の印刷色の灰色と背景部19の印刷色の灰色とは、同一の明度になるように規定されている。この結果、色抜けがない場合には、色抜け判別領域15の全体の印刷色が同一の灰
色となり、このような色抜け判別領域15の印刷状態80においては、色抜け判別部18の「NG」の文字16を目視で識別することはできない。
【0042】
ここで、ブラックが色抜けすると、「NG」の文字16が印刷されず、ラベル面10aの地の白色がそのまま残こった印刷状態81になる。この結果、「NG]の文字が、印刷色が灰色の背景部19から白抜き状態で浮かび上がる。よって、「NG」の文字を目視により識別することができ、色抜け状態で管理ラベル10が印刷されたことを知ることができる。
【0043】
シアンが色抜けした場合には、「NG」の文字16は灰色で印刷されるが、背景部の印刷色が灰色ではなく赤色となった印刷状態82になり、「NG」の文字が背景部から目視により識別できる。すなわち、シアン、マゼンダ、イエローを用いて、印刷色が灰色となるように印刷されるはずの背景部19が、シアンが色抜けしたために、マゼンダとイエローのみの混色の結果として、赤色の印刷色に変わるからである。
【0044】
マゼンダが色抜けした場合には、「NG」の文字は灰色で印刷されるが、背景部の印刷色が灰色ではなく緑色となった印刷状態83になり、この場合にも「NG」の文字が背景部から目視により識別できる。シアン、マゼンダ、イエローを用いて灰色に印刷されるはずの背景部19が、マゼンダが色抜けしたために、シアンとイエローのみの混色の結果として、緑色の印刷色に変わるからである。
【0045】
イエローが色抜けした場合には、「NG」の文字は灰色で印刷されるが、背景部の印刷色が灰色ではなく青色となった印刷状態84になり、この場合にも「NG」の文字が背景部から目視により識別できる。シアン、マゼンダ、イエローを用いて灰色に印刷されるはずの背景部19が、イエローが色抜けしたために、シアンとマゼンダのみの混色の結果として青色になるからである。
【0046】
以上説明したように、本例の管理ラベル印刷システム1によって印刷された管理ラベル10においては、その管理色の印刷に用いられるブラック、シアン、マゼンダ、イエローの色インクのうちの少なくとも一つの色インクが色抜けしても、色抜け判別領域15に「No Good」を意味する「NG」の文字16が目視により識別できる状態で浮かび上がる。従って、管理ラベル10を見たラベル作成者および仕分け担当者は印刷された管理ラベル10に色抜けがあることを直ちに知ることができ、色抜けの回復処理などの対処を迅速に行うことができる。
【0047】
また、色抜け判定部18が画数の少ない簡潔な「NG」の2文字16を用いて形成されているので、色抜け判別部18および背景部19を形成する印刷領域を小さくしても、色抜けした際に背景部19から浮き上がる文字を確認することが容易にできる。
【0048】
さらに、管理ラベル10のラベル面10aには文字印刷領域13が含まれているので、色抜けがあった場合でも、そこに印刷されている管理用文字情報に基づいて物品を正確に仕訳して各倉庫に保管するなどの処理を行なうことができる。
【0049】
また、色見本を印刷しておいて、全ての色インクが使用されているか否かを判断する場合には、4色の色インク51〜54のそれぞれについて印刷状態を確認しなければないので面倒であり、イエローのような視認性の低い色インクが正常に用いられているか否かを判別することが困難である。これに対して、本例によれば、色抜け判別領域15に現れる「NG」の文字16のみに着目するだけで色抜けを判別できるので、その判別が容易であり、判別を迅速に行なうことができる。
【0050】
(その他の実施の形態)
本例では、色抜け判別部18にブラックの色インクを用い、背景部19にシアン、マゼンダ、イエローの3色の色インクを用いている。これとは逆に、色抜け判別部18にシアン、マゼンダ、イエローの3色を用い、背景部19にブラックの色インクを用いることもできる。また、色抜けがない正常な印刷状態における色抜け判別部18および背景部19の印刷色を、灰色ではなく黒色とすることもできる。
【0051】
さらに、色抜け判別部18および背景部19に用いる色インクは、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色の色インクに限定されるものではなく、形成される色抜け判別領域15も1つの領域に限定されるものではない。
【0052】
例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの4色の色インクに加えて、ライトシアン、ライトマゼンダの2色の色インクを用いて管理ラベル10の印刷を行なう場合には、第1の色抜け判別領域として、上記の例のような色抜け判別領域15を形成するとともに、次のような第2の色抜け判別領域を形成すればよい。すなわち、第2の色抜け判別領域において、ブラックの色インクを用いて、印刷色が灰色の色抜け判別部を形成し、ライトシアン、ライロマゼンダ、イエローの3色の色インクを用いて、印刷色が灰色の背景部を形成すればよい。これら6色の色インクのうちの少なくとも1つの色インクが色抜けした場合には、第1および第2の色抜け判別領域のうちの少なくとも一方の色抜け判別領域に「NG」の文字16が浮き上がるので、各色インクの色抜けを判別することができる。
【0053】
さらに、一色の色インクによって形成される色抜け判別部18の印刷色と、一色の色インクとは異なる色の複数の色インクを組み合わせて形成される背景部19の印刷色とを同色にすることができる色インクの組み合わせがあれば、そのような色インクを用いて色抜け判別領域15を形成することができる。
【0054】
また、上記の例ではカラープリンタとしてインクジェットプリンタ5を用いているが、これ以外の形式のカラープリンタを用いて管理ラベルを印刷する場合にも本発明を適用できる。例えば、レーザプリンタやサーマルプリンタを用いる場合にも同様に適用可能である。
【0055】
さらに、上記の例では色抜け判別部18に「NG」の文字16を用いているが、一目で正常な印刷が行なわれていないことを識別できるような記号や図形を用いればよい。
【0056】
さらにまた、上記の例では管理用印刷媒体として、裏面に粘着層が形成されたラベルシールを用いているが、タグ、荷札、バンド等のその他の印刷媒体を用いることも可能である。例えば、病院等の医療機関に入院している患者の手首に巻き付ける医療用のリストバンドにおいて、患者の血液型やアレルギー性物質に対応するように予め割り当てた色を印刷する色分け印刷領域を備えているものに対して本例の色抜け判別領域15を形成するようにすれば、医療ミスを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を適用した管理ラベル印刷システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明を適用した管理ラベルのラベル面の構成を示す説明図である。
【図3】色抜け判別領域の構成を示す説明図である。
【図4】従来の管理ラベルを示す説明図である。
【図5】色抜けした場合の印刷状態を示すための説明図である。
【図6】従来の色見本の印刷例である。
【符号の説明】
【0058】
1・管理ラベル印刷システム、2・データ管理サーバ、3・ネットワーク、4・コンピュータ、5・インクジェットプリンタ、6・ケーブル、10,10A・管理ラベル、10a・ラベル面、10c・剥離紙、11・色分け印刷領域、13・文字印刷領域、14・バーコード、15・色抜け判別領域、16・「NG」の文字、17・輪郭部分、18・色抜け判別部、19・背景部、21・物品データベース、22・保管場所データベース、41・印刷データ生成手段、42・データ印刷制御手段、43・色抜け判別用印刷データ生成手段、70・縁部分、75・色見本、80,81,82,83,84・印刷状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラープリンタを用いて、印刷媒体の表面における予め定めた印刷領域に、文字、図形、記号などを一色の色インクで印刷して、色抜け判別部を形成し、
前記カラープリンタを用いて、この印刷領域における色抜け判別部の背景部が当該色抜け判別部と同一の印刷色となるように、前記一色の色インクとは異なる複数色の色インクを重ねて印刷し、
前記色抜け判別部の印刷色と前記背景部の印刷色とが異なる場合には、これら色抜け判別部および背景部を印刷するために用いる少なくとも一つの色インクが印刷されなかったと判別可能であることを特徴とするカラープリンタの色抜け判別用印刷方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記色抜け判別部を、前記一色の色インクを用いる代わりに、前記複数色の色インクを重ねて印刷することにより形成し、
前記背景部を、前記複数色の色インクを用いる代わりに、前記一色の色インクを印刷することにより形成することを特徴とするカラープリンタの色抜け判別用印刷方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記一色の色インクはブラックインクであり、
前記複数色の色インクには、シアン、マゼンダ、イエローの各色の色インクが含まれており、
前記色抜け判別部および前記背景部の印刷色が黒色または同一明度の灰色となるように、これらの部分を形成することを特徴とするカラープリンタの色抜け判別用印刷方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記印刷媒体の表面色は白色であることを特徴とするカラープリンタの色抜け判別用印刷方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記印刷領域として少なくとも第1および第2印刷領域を形成し、
前記第1印刷領域を第1の色インク群を用いて印刷し、
前記第2印刷領域を第2の色インク群を用いて印刷し、
前記第2の色インク群に含まれる少なくとも一つの色インクを、前記第1の色インク群に含まれる色インクとは異なるものとすることを特徴とするカラープリンタの色抜け判別用印刷方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
カラープリンタとしてインクジェットプリンタを用いて、前記色抜け判別部および前記背景部を形成することを特徴とするカラープリンタの色抜け判別用印刷方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載のカラープリンタの色抜け判別用印刷方法により形成された前記色抜け判別部および前記背景部を備えた色抜け判別領域と、
前記色分け判別部および前記背景部に用いられる色インクのうちの少なくとも一つを用いて印刷された色分け印刷領域と、
を有することを特徴とする管理用印刷媒体。
【請求項8】
請求項7に記載の管理用印刷媒体において、
前記色分け印刷領域に印刷された色に対応する管理用文字情報が印刷されている文字印刷領域を有していることを特徴とする管理用印刷媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−44135(P2008−44135A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219350(P2006−219350)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】