説明

カラープロセス印刷方法

【課題】少なくとも白、藍、紅または黄の4色のインキを用いてグラビア印刷する際に、後で印刷される網点が前に印刷された2つ以上の網点が重なった点と点との間に来る場合でも、グラデーション部分を含む精密で綺麗な印刷物を容易に得ることができカラープロセス印刷方法を提供する。
【解決手段】基材表面に、少なくとも白、藍、紅または黄の4色のインキを用いてグラビア印刷することにより表刷りしてカラープロセス印刷する方法において、(1)基材表面に白色インキ2でべた刷りする工程、(2)藍色インキ3で印刷したのち紅色インキ4で印刷する工程、または紅色インキで印刷したのち藍色インキで印刷する工程、および(3)平均粒径90nm以下の黄色顔料5を含有する透明黄色インキを用いて印刷する工程を、この順序で経るカラープロセス印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷することにより表刷りしてカラープロセス印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は従来から、プラスチックフィルム、紙(厚紙、薄紙)、再生紙、不織布等の非導電性基材のほか、静電印刷方式以外ではアルミ箔、銅箔などの導電性基材や、これらの導電性基材を用いたラミネート、サンドされた基材等の様々の基材に精彩なイメージを滑らかな再現性をもって印刷でき、高級感のある印刷物が得られる印刷法として広く利用されているが、下地用インキをベタ刷りした基材に、カラー写真などのようにグラデーション部分を含む精密なイメージを表刷りする場合、でき上がりの印刷品質の面で種々問題があった。即ち、ベタ刷りした基材にグラビア印刷により表刷りする際には、例えば黄、紅または藍の各色インキをこの順に重ね刷りし、必要に応じてさらに文字、バーコード等を黒色インキなどで印刷されており、そのためベタ刷り表面を含め前に印刷された色インキ表面の状態が各色のインキの転移定着性を大きく左右することになる。そして、一般に前に印刷された色インキ表面が後で印刷されるインキを反発するので、後で印刷されるインキの転移定着性を確保することが困難であることが多い。また、ハイライト部を印刷する場合はベタ刷り表面が平滑であることが好ましいが、その一方でベタ部や網点面積率が90〜80%程度の網点部などで、網点同士がくっつき過ぎたり、離れ過ぎたりして、印刷面が不均一となり、印刷グレードが著しく損なわれるおそれがある。逆にベタ刷り表面が粗いと、シャドウ部でのインキ転移性は向上するが、ハイライト部ではインキが十分転移定着できなくなるおそれがあり、特に網点面積率が20%以下の網点部でインキが全く転移できないか、ないしは斑にしか転移できなくなり、写真を鮮明に再現することが困難となる場合があった。
【0003】
一方、グラビア印刷により表刷り印刷する際のインキの転移定着性を改善する一般的な方法として、バインダー樹脂、溶剤等のインキ組成を改良する方法のほか、インキ粘度を調整する、圧胴を変える、印圧を上げる、ドクターの掛け方を工夫する、印刷速度を調整するなどが提案されているが(例えば、非特許文献1参照)、必ずしも十分とはいえない。また、同様の目的には静電印刷方式も有効といわれているが(例えば、非特許文献2参照)、この方式の場合、特殊な装置が必要であったり、適用基材が制約されたりする上に、表面が平滑なプラスチックフィルムなどに印刷する場合に、ハイライト部でのインキの転移定着性が必ずしも満足できないという欠点もある。
【0004】
【非特許文献1】加工技術研究会編集「グラビア印刷便覧」(昭和56年7月25日発行)p.121〜122
【非特許文献2】「コンバーテック 1991.1」p.12〜16
【0005】
さらに本発明者が検討を重ねたところ、図1に模式的に示すように、白色インキでべた刷りした基材表面に、黄、紅、藍または黒の各色インキをこの順に重ね刷りする際、前に印刷された色インキ表面による反発に加えて、特に、版6上の藍色インキ層3の網点cが黄色インキ層5と紅色インキ層4とが網点で重なった点aとbとの間の位置に来る場合に、該aやbが高くなり立体障害となるため、べた刷りした白色印刷層に藍色インキ層の網点cが十分接触できず、転移不良が著しくなって、綺麗な印刷物を得ることが困難となるおそれが大きいことが明らかとなった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、背景技術における前記諸問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果見い出されたもので、その課題は、少なくとも白、黄、紅または藍の4色のインキを用いてグラビア印刷することにより表刷りしてカラープロセス印刷する方法において、特に、後で印刷される網点が前に印刷された2つ以上の網点が重なった点と点との間に来る場合でも、グラデーション部分を含む精密で綺麗な印刷物を容易に得ることができカラープロセス印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、前記課題は、
基材表面に、少なくとも白、藍、紅または黄の4色のインキを用いてグラビア印刷することにより表刷りしてカラープロセス印刷する方法において、(1)基材表面に白色インキでべた刷りする工程、(2)藍色インキで印刷したのち紅色インキで印刷する工程、または紅色インキで印刷したのち藍色インキで印刷する工程、および(3)平均粒径90nm以下の黄色顔料を含有する透明黄色インキを用いて印刷する工程を、この順序で経ることを特徴とするカラープロセス印刷方法、
によって達成される。
【0008】
以下、本発明のカラープロセス印刷方法について、実施の形態を含め、詳細に説明する。
〈インキ〉
本発明のカラープロセス印刷方法は、少なくとも白、藍、紅または黄の4色のインキを用いる。
前記各色のインキは、通常、顔料、バインダー樹脂、添加剤、溶剤等から構成される。以下、これらの各成分について順次説明する。
【0009】
本発明に使用される白色、紅色または藍色のインキに使用される顔料としては、従来からグラビア印刷インキに使用されている各種の顔料を使用することができ、特に制約されるものではなく、また白色、藍色または紅色の顔料と共に、体質顔料や他の色調の顔料を適量併用して、色合い等を調整してもよい。
【0010】
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化アンチモン、リトポン等を挙げることができる。これらの白色顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
白色顔料の平均粒径は、特に制約されるものではなく、従来からグラビア印刷に使用されている範囲内で、適宜に選定することができる。
【0011】
また、前記藍色顔料としては、例えば、紺青、群青、金属酸化物系ブルー等の無機顔料や、フタロシアニン系等の有機顔料等を挙げることができる。これらの藍色顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
藍色顔料の平均粒径は、特に制約されるものではなく、従来からグラビア印刷に使用されている範囲内で、適宜に選定することができる。
【0012】
また、前記紅色顔料としては、例えば、モリブデンレッド、カドミウムレッド、弁柄、硫化セリウム等の無機顔料や、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾキレート系、ジアゾ縮合系、β−ナフトール系、ナフトールAS系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ベリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系等の有機顔料を挙げることができる。これらの紅色顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
紅色顔料の平均粒径は、特に制約されるものではなく、従来からグラビア印刷に使用されている範囲内で、適宜に選定することができる。
【0013】
本発明のカラープロセス印刷方法は、黄色インキとして、平均粒径が90nm以下、好ましくは50〜80nmの黄色顔料を含有する透明黄色インキを用いる点に特徴を有する。黄色顔料の平均粒径の前記上限値は、黄色インキとしたときの透明性を十分確保する観点から定められ、また下限値は、黄色インキとしたときに前に印刷された紅色ないし藍色のインキ層をある程度遮蔽できるとともに、入手容易性ないし製造容易性を勘案して定められる。
本発明のカラープロセス印刷方法では、前記工程(2)の後に、前記工程(3)で黄色インキによる印刷が行われ、この場合も、前に印刷された藍色インキと紅色インキとが網点で重なった点と点との間の位置に黄色インキの網点が来たときに、前記重なった点による立体障害を生じうることになるが、前記平均粒径の黄色顔料を使用することにより、得られる黄インキに必要な透明性を確保でき、その結果工程(3)を藍色インキで印刷する場合より目立たないため、視覚的には綺麗な印刷物を得ることができる。
【0014】
本発明に使用される黄色顔料としては、色調の面で特に制約されるものではなく、従来からグラビア印刷インキに使用されている各種の黄色顔料を使用することができるが、例えば、黄鉛、カドミウムイエロー、ビスマスイエロー等の無機顔料や、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾキレート系、ジアゾ縮合系、ベンズイミダゾロン系、β−ナフトール系、ナフトールAS系、イソインドリン系、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、アントラキノン系等の有機顔料を挙げることができ、特に好ましい黄色顔料は、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー13)(平均粒径65nm)である。これらの黄色顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明に使用される黄インキ中の黄色顔料の濃度は、特に制限されるものではないが、通常、5〜20重量%、好ましくは8〜10重量%である。
【0015】
さらに、本発明のカラープロセス印刷方法においては、前記工程(3)に続き、必要に応じて、例えば黒色インキを用いて、文字やバーコードなどを印刷することもできる。
本発明に使用される黒色顔料としては、従来からグラビア印刷に使用されている適宜の黒色顔料を使用することができ、特に制約されるものではなく、例えば、カーボンブラック、金属酸化物系ブラック等を挙げることができる。これらの黒色顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、黒色顔料の場合も、体質顔料や他の色調の顔料を適量併用して、色合い等を調整してもよい。
黒色顔料の平均粒径は、特に制約されるものではなく、従来からグラビア印刷に使用されている範囲内で、適宜に選定することができる。
【0016】
前記した各色の顔料と共に使用される体質顔料としては、従来からグラビア印刷に使用されている適宜の体質顔料を使用することができ、特に制約されるものではなく、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、シリカ、ホワイトカーボン等を挙げることができる。これらの体質顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
体質顔料の平均粒径は、特に制約されるものではなく、従来からグラビア印刷に使用されている範囲内で、適宜に選定することができる。
なお、本発明において、前記各色の顔料と共に、染料や天然色素を1種以上併用することもできる。
【0017】
本発明に使用されるバインダー樹脂としては、従来からグラビア印刷インキに使用されている各種のバインダー樹脂を使用することができ、特に制約されるものではないが、例えば、ロジンまたはその塩、多価アルコール変性ロジンまたはその塩等のロジン類;フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂またはその塩等のフェノール樹脂類;石油樹脂、ロジン変性石油樹脂またはその塩の石油樹脂類;アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂またはその塩等のアルキド樹脂類;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂類;硝化綿、酢酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンジアジパミド等のポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメチルメタクリレート、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のアクリル系樹脂;環化ゴム等を挙げることができ、これらのバインダー樹脂は、ワニスの形で使用することもできる。前記バインダー樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なお、本発明においては、所望により、バインダー樹脂として、熱硬化性、光硬化性などの反応性を有するものを使用することもできる。
【0018】
本発明に使用される添加剤としては、従来からグラビア印刷インキに使用されている各種の添加剤を使用することができ、特に制約されるものではないが、例えば、分散剤、消泡剤、フィラー、滑剤、帯電防止剤、濡れ性改善剤、流動性調整剤、粘度調整剤、耐磨耗性改善剤、柔軟性付与剤、乾燥性調整剤、裏移り防止剤、硬化剤等を挙げることができる。
【0019】
本発明に使用される溶剤としては、従来からグラビア印刷インキに使用されている各種の溶剤を使用することができ、特に制約されるものではないが、例えば、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル等のエステル類;3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アロマフリーの石油系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
前記溶剤のうち、アルコール類、エステル類等の、沸点が、好ましくは60〜120℃、特に好ましくは80〜100℃の範囲にある溶剤を含むものが望ましい。
【0021】
また、本発明に使用される各色のインキの粘度は、希釈用溶剤で希釈後の値として、ザーンカップ #3で測定した場合、好ましくは10〜40秒、特に好ましくは15〜30秒の範囲にあることが望ましい。
【0022】
本発明に使用される各色インキの調製法としては、顔料、バインダー樹脂、添加剤、溶剤等を均一に分散できる限り、特に制約されるものではないが、より具体的には、顔料、バインダー樹脂、添加剤、溶剤等を、ボールミル、アトライター、サンドミル等を用いて攪拌する方法等を挙げることができる。各色インキの調製に当たっては、顔料、バインダー樹脂、添加剤、溶剤等を一度に混合しても、また顔料、バインダー樹脂、添加剤、一部の溶剤等を混合してインキベースとしたのち、これに希釈用溶剤を添加し混合してもよいが、後者の方法が好ましい。
【0023】
本発明のカラープロセス印刷方法に使用される各色の印刷インキの代表的な組成としては、希釈用溶剤を添加前のインキベースについては、例えば、下記の組成を挙げることができる。
白色インキ(計100重量部):
白色顔料20〜40重量部、バインダー樹脂10〜30量部、溶剤40〜70重量部。藍色インキ(計100重量部):
藍色顔料5〜20重量部、バインダー樹脂10〜30量部、溶剤50〜85重量部。
紅色インキ(計100重量部):
紅色顔料5〜20重量部、バインダー樹脂10〜30量部、溶剤50〜85重量部。
黄色インキ(合計100重量部):
黄色顔料5〜20重量部、バインダー樹脂10〜30量部、溶剤50〜85重量部。
黒色インキ(計100重量部):
黒色顔料5〜20重量部、バインダー樹脂10〜30量部、溶剤50〜85重量部。
【0024】
〈印刷方法〉
本発明のカラープロセス印刷方法は、(1)基材表面に白インキでべた刷りする工程、(2)藍色インキで印刷したのち紅色インキで印刷する工程、または紅色インキで印刷したのち藍色インキで印刷する工程、および(3)黄色インキとして平均粒径90nm以下の黄色顔料を含有する透明黄色インキを用いて印刷する工程を、この順序で経ることを特徴とする。
以下、本発明のカラープロセス印刷方法について、より具体的に説明する。
【0025】
本発明のカラープロセス印刷方法が適用される基材としては、従来からグラビア印刷が適用されている適宜の基材を使用することができ、特に制限されるものではないが、例えば、プラスチック(フィルムないしシート)、紙(厚紙、薄紙)、再生紙(厚紙、薄紙)、アルミニウム(箔ないしシート)、銅(箔ないしシート)、ステンレススチール(箔ないしシート)や、これらの材料の2種以上を含むラミネート材ないしサンド材等を挙げることができる。
これらの基材には、ベタ刷り層の密着性を改善するため、放電処理、塗装・塗布、薬品処理、サンドブラスト処理等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0026】
(1)工程における白色インキによるべた刷りの回数は、基材の表面状態や色、印刷されるイメージの内容等に応じて適宜選択され、単層でも多層でもよい。
(1)工程におけるべた刷り印刷は、(2)工程以降の各色の印刷のための下地層を形成することに主眼があり、基本的に塗装に近いプロセスとなる。したがって、使用される装置ないし器具も、ロール、ロールブラシ、カーテンフロー、ブレード、スプレーガン、エアートランスフォーマーや、静電塗装機、電着塗装機のほか、刷毛など、従来から塗装に使用されている装置ないし器具で十分である。
【0027】
前記(1)工程に続き、印刷されるイメージの内容に対応させて、(2)藍色インキで印刷したのち紅色インキで印刷する工程、または紅色インキで印刷したのち藍色インキで印刷する工程、および(3)透明黄色インキを用いて印刷する工程を、この順序で実施したのち、必要に応じてさらに、例えば黒色インキで、文字やバーコードなどを印刷(以下、この印刷工程を「付加印刷工程」という。)する。
【0028】
前記(2)工程、(3)工程および付加印刷工程に使用する印刷機としては、特に制限されるものではないが、グラビア版胴を備えた印刷機、平版グラビア輪転機、円筒版グラビア輪転機等、従来からグラビア印刷に使用されている適宜の印刷機を使用することができる。
【0029】
本発明においては、白色ないし黒色以外のカラーイメージの印刷は、原則として、藍色、紅色および黄色の3色のインキを用いて行うことが、本発明の効果を最大限に発現する観点から好ましい。但し、カラーイメージに黒色ないしそれに近い色調の部分があるときは、該カラーイメージを黒色インキを用いて印刷してもよいのは当然である。
また、付加印刷工程における文字やバーコードなどの印刷は、(2)工程および(3)工程で印刷されたイメージ以外の領域の白色べた刷り層に行うことが、本発明のカラープロセス印刷方法による利点を最大限に発揮させる観点から望ましく、止むを得ずイメージ領域に文字やバーコードなどを重ね刷りする場合は、極力印刷面積を小さくすることが望ましい。なお、文字やバーコードなどの印刷は、場合により、黒色インキ以外の有色インキを用いて行うこともできるのは当然である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のカラープロセス印刷方法によると、図2に模式的に示すように、(2)工程で印刷された藍色インキ層3と紅色インキ層4(または紅色インキ層3と藍色インキ層4)とが重なった網点aとbの間に、(3)工程で印刷された黄色インキ層5の網点cが来る場合、該網点cで網点aやbによる立体障害を生じるが、本発明では透明黄色インキを使用しており、該網点cが、図1に示すような藍色インキの網点cの場合に比べて、印刷画面で他の色の網点より目立たないため、カラー写真などのようにグラデーション部分を含む精密なイメージを表刷りする場合でも、全イメージ領域にわたり視認的に綺麗に印刷でき、また藍色ないし紅色の網点に該当する印刷層、および藍色網点と紅色網点とが重なった墨色の網点に該当する印刷層で、形状が良好となり、さらに不透明黄色インキを用いる場合のように白色化することがなく、黄色インキ印刷層を通して視認される色調が原画から期待される標準的な色調を確保できて、印刷されたイメージ全体として、極めて高品質の印刷物を得ることができる。したがって、本発明のカラープロセス印刷方法は、グラビア印刷によるカラープロセス印刷の高品質化および高級化に資するところが大である。
【実施例】
【0031】
実施例1
下記する成分を均一に混合して、白色、藍色、紅色、黄色および黒色の各色のインキベースを調製したのち、得られた各インキベース100重量部に、下記する組成の希釈用溶剤30重量部を添加して均一に混合することにより、印刷インキを調製した。
〈インキベース〉
−白色インキ(合計100重量部)−
白色顔料(計25重量部):
酸化チタン 25重量部
バインダー樹脂(計20重量部):
硝化綿 5重量部
ポリアミド樹脂(商品名ニューマイド838、ハリマ化成(株)製)
15重量部
添加剤(計5重量部):
ワックス 2重量部
消泡剤 1重量部
チタンキレート(硬化剤) 2重量部
溶剤(計50重量部):
酢酸エチル 15重量部
i−プロパノール 30重量部
エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル
5重量部
【0032】
−藍色インキ(合計100重量部)−
藍色顔料(計9重量部):
フタロシアニンブル− 9重量部
バインダー樹脂(計22重量部):
硝化綿 6重量部
ポリアミド樹脂(商品名ニューマイド838、ハリマ化成(株)製)
16重量部
添加剤(計6重量部):
ワックス 3重量部
消泡剤 1重量部
チタンキレート(硬化剤) 2重量部
溶剤(計63重量部):
メチルシクロヘキサン 20重量部
酢酸エチル 14重量部
i−プロパノール 22重量部
エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル
7重量部
【0033】
−紅色インキ(合計100重量部)−
紅色顔料(計9重量部):
アゾレーキ 9重量部
バインダー樹脂(計22重量部):
硝化綿 6重量部
ポリアミド樹脂(商品名ニューマイド838、ハリマ化成(株)製)
16重量部
添加剤(計6重量部):
ワックス 3重量部
消泡剤 1重量部
チタンキレート(硬化剤) 2重量部
溶剤(計63重量部):
メチルシクロヘキサン 20重量部
酢酸エチル 14重量部
i−プロパノール 22重量部
エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル
7重量部
【0034】
−透明黄色インキ(合計100重量部)−
黄色顔料(計8重量部):
ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー13)(平均粒径65nm)
8重量部
バインダー樹脂(計22重量部):
硝化綿 6重量部
ポリアミド樹脂(商品名ニューマイド838、ハリマ化成(株)製)
16重量部
添加剤(計6重量部):
ワックス 3重量部
消泡剤 1重量部
チタンキレート(硬化剤) 2重量部
溶剤(計64重量部):
メチルシクロヘキサン 20重量部
酢酸エチル 15重量部
i−プロパノール 22重量部
エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル
7重量部
【0035】
〈希釈用溶剤(合計100重量部)〉
メチルシクロヘキサン 50重量部
酢酸エチル 30重量部
i−プロパノール 20重量部
【0036】
その後、得られた白色インキをポリプロピレン(OPP)フィルムの表面にベタ刷りして、乾燥後の膜厚が1μmのベタ刷り層を形成した。次いで、藍色インキ、紅色インキまたは透明黄色インキをこの順に用いて、レンガ壁を背景とし、かご、箱や布地と、多種類の野菜を配置したイメージを、ベタ刷り層の表面にグラビア印刷(印刷速度120m/分)した。
得られた印刷画面を目視したとき、印刷物全般にわたり原画に忠実に印刷できており、また100倍のルーペで拡大して観察した結果、印刷物全般にわたり、“ガサ付き”が認められず、滑らかで綺麗に印刷できることが確認された。
【0037】
比較例1
実施例1で用いた希釈後の透明黄色インキ、紅色インキまたは藍色インキをこの順に用いた以外は、実施例1と同様にして、グラビア印刷した。
得られた印刷画面を目視したとき、レンガ壁の印刷部分がやや白っぽくなり、また100倍のルーペで拡大して観察した結果、レンガ壁やキャベツの印刷部分に“ガサ付き”が認められ、印刷物全体としての印刷品質が不十分であった。
【0038】
評価例1
表面が滑らかな白色紙の表面に、実施例1で用いた希釈後の藍色インキ、紅色インキまたは透明黄色インキをこの順に用い、各色の網点を有する試験用圧胴を用いてグラビア印刷(印刷速度120m/分)して、評価用印刷物を得た。
得られた印刷画面を100倍のルーペで拡大して観察した結果、藍色ないし紅色の網点に該当する印刷層、および藍色網点と紅色網点とが重なった墨色の網点に該当する印刷層で、形状が良好となり、滑らかで綺麗に印刷できることが確認された。
【0039】
評価例2
実施例1で用いた希釈後の透明黄色インキ、藍色インキまたは紅色インキをこの順に用いた以外は、評価例1と同様にして、表面が滑らかな白色紙の表面にグラビア印刷して、評価用印刷物を得た。
得られた印刷画面を100倍のルーペで拡大して観察した結果、特に藍色ないし紅色の網点に該当する印刷層や、藍色網点と紅色網点とが重なった墨色の網点に該当する印刷層で、形状がやや崩れたり、着色部分が飛んだりするとともに、“にじみ”も認められ、印刷品質として不十分であった。
【0040】
評価例3
下記する不透明黄色インキベース100重量部に、実施例1で用いたものと同一組成の希釈用溶剤30重量部を添加して均一に混合することにより、不透明黄色印刷インキを調製した。その後、実施例1で用いた希釈後の透明黄色インキまたは上記で調製した不透明黄色インキを用いて、ポリプロピレン(OPP)フィルムの表面に、透明黄色インキ印刷層と不透明黄色インキ印刷層とが隣接するように、バーコーターを用いて印刷して、評価用黄色印刷物を得た。
また、実施例1で用いた希釈後の藍色インキを用いて、別のポリプロピレン(OPP)フィルムの表面にバーコーターを用いて印刷して、評価用藍色印刷物を得た。
次いで、評価用黄色印刷物の両方の黄色インキ印刷層が評価用藍色印刷物の藍色インキ印刷層の下に位置するように重ねたとき、上の藍色インキ印刷層を通して見た色調は、不透明黄色インキ印刷層の領域で、透明黄色インキ印刷層の領域より色がやや薄くなった以外は、両方の黄色インキ印刷層ともほぼ原画から期待される標準的な色調を示した。これは、黄色インキ−藍色インキの順に印刷した場合、透明黄色インキと不透明黄色インキとで、印刷画面の色調に大きな差が生じないことを示すものであり、この結果はグラビア印刷の場合も同様となり、また藍色インキに代えて紅色インキを用いた場合も同様となる。 一方、評価用藍色印刷物の藍色インキ印刷層を評価用黄色印刷物の両方の黄色インキ印刷層の両方の下に位置するように重ねたとき、上の黄色インキ印刷層を通して見た色調は、不透明黄色インキ印刷層の領域で白色化が強くなり、原画から期待される本来の色調を確保できなくなるが、透明黄色インキ印刷層の領域では、原画から期待される標準的な色調と同等となった。これは、藍色インキ−黄色インキの順に印刷した場合、不透明黄色インキを用いると、印刷物の色調がかなり損なわれることを示すものであり、この結果はグラビア印刷の場合も同様となり、また藍色インキに代えて紅色インキを用いた場合も同様となる。
したがって、本発明のカラープロセス印刷方法において、藍色インキ−紅色インキ−黄色インキの順での印刷および紅色インキ−藍色インキ−黄色インキの順での印刷の双方の場合に、透明黄色インキを用いることにより、優れた印刷品質を確保できることが確認された。
【0041】
〈インキベース〉
−不透明黄色インキ(合計100重量部)−
黄色顔料(計8重量部):
ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー14)(平均粒径110nm)
8重量部
バインダー樹脂(計22重量部):
硝化綿 6重量部
ポリアミド樹脂(商品名ニューマイド838、ハリマ化成(株)製)
16重量部
添加剤(計6重量部):
ワックス 3重量部
消泡剤 1重量部
チタンキレート(硬化剤) 2重量部
溶剤(計64重量部):
メチルシクロヘキサン 20重量部
酢酸エチル 15重量部
i−プロパノール 22重量部
エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル
7重量部
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のカラープロセス印刷方法によると、カラー写真などのようにグラデーション部分を含む精密なイメージを表刷りする場合でも、印刷されたイメージ全体として視覚的に綺麗な印刷物を得ることができ、グラビア印刷の用途拡大および印刷品質の向上に資するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来のカラープロセス印刷方法による印刷物の模式縦断面図を示す図である。
【図2】本発明のカラープロセス印刷方法の1例による印刷物の模式縦断面図を示す図である。
【0044】
1 基材
2 白色インキ層
3 藍色インキ層
4 紅色インキ層
5 黄色インキ層
6 版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、少なくとも白、藍、紅または黄の4色のインキを用いてグラビア印刷することにより表刷りしてカラープロセス印刷する方法において、(1)基材表面に白色インキでべた刷りする工程、(2)藍色インキで印刷したのち紅色インキで印刷する工程、または紅色インキで印刷したのち藍色インキで印刷する工程、および(3)平均粒径90nm以下の黄色顔料を含有する透明黄色インキを用いて印刷する工程を、この順序で経ることを特徴とするカラープロセス印刷方法。
【請求項2】
透明黄色インキにおける黄色顔料が、平均粒径50〜80nmのジスアゾイエロー(ピグメントイエロー13)である、請求項1に記載のカラープロセス印刷方法。

【図1】
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【図2】
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