説明

カリウムアイオノマー配合樹脂組成物からなる発泡成形体

【課題】環境負荷の無い水による発泡で均質微細なセル形成がなされ、無害で緩衝性、帯電防止性に優れ、且つ、高周波による熱融着特性に優れた発泡成形体を提供する。
【解決手段】エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー5〜50重量部を前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体以外の他の熱可塑性樹脂又はエラストマー100重量部に配合した組成物であって、水分、又は発泡時に水分を発生し得る物質、を含有するものを水発泡させて成る発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウムアイオノマー配合樹脂組成物からなる発泡成形体に関し、より詳細には、熱可塑性樹脂又はエラストマーにエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを配合した組成物で水分を所定量含有するものを水発泡させて成る発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送や保管時における損傷を避けるために、商品を緩衝性に優れた発泡ポリスチロール、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂成形容器に収容したり又は発泡樹脂フィルムにより包装することは広く行われている。
特に、商品が電子部品等である場合、その梱包には僅かな傷付きをも避ける必要があるところからこのような発泡樹脂容器やフィルムが使用されているが、発泡ポリスチロールや発泡ポリウレタンからなる汎用品を用いた場合は、帯電による塵芥の付着や静電気スパーク発生等の不都合の発生が問題であった。
このため帯電防止剤を配合した発泡樹脂の利用が試みられたが、帯電防止剤が経時的にブリードアウトし電子部品を汚染する新たな不都合を生じ、広く採用されるまでには至らなかった。
【0003】
上記のような不都合を回避するための対策として、緩衝性、帯電防止性に優れ、然も被包装物を汚染することのない発泡樹脂材料が検討され、既に幾つかの材料が提案されている。
例えば、特許文献1には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーとオレフィン重合体との樹脂組成物にアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の化学発泡剤とジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等の架橋剤を加えて発泡させた非帯電性架橋発泡体の発明が開示されている。
又、特許文献2には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを化学発泡剤で発泡させてなる独立気泡型発泡フィルムの発明が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平4−296338号公報
【特許文献2】特開平8−113661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記カリウムアイオノマー又はそれとオレフィン重合体との組成物よりなる発泡体は、カリウムアイオノマー自体が非帯電性を有することもあって、何れも緩衝性、帯電防止性に優れ、夫々上述した用途に好適に使用することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2の発泡体はその製造、即ち、発泡成形に何れもアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の化学発泡剤を用いる。
これら化学発泡剤は、それ自体可燃性で燃焼時に有害ガスを発生し、更に、酸などとの接触により直ちに分解する等、その取扱が難しい欠点がある。
更に、発泡ガスは一酸化炭素、炭酸ガス等を多く含有する。
【0007】
近年、このような化学発泡剤、特に多くは有害、又は危険物質である有機系化学発泡剤や、例え無機系でそれ自体は比較的安全な物質であっても発泡ガスとして、フロン系ガス、軽質炭酸水素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素等のガスを放出するものは環境負荷上の観点から敬遠され、環境負荷の無い発泡剤又は発泡方法が強く求められるようになって来ている。
【0008】
本発明者等は、上記の見地から被収容物又は被包装物に対し無害で、緩衝性、帯電防止性に優れ、且つ、発泡成形に際し有害な化学発泡剤を使用せず、且つ、例え、発泡体内の気泡ガスが外気に開放された場合でも環境に影響を与えない発泡成形体を開発すべく鋭意研究した結果、カリウムアイオノマーを特定量比で含有する樹脂組成物であって、該組成物中に所定量の水分を含有するものを水発泡させて得られた発泡成形体が上記要件を全て充足することを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0009】
従って、本発明の目的は、環境負荷の無い水による発泡で均質微細なセル形成がなされ、無害で緩衝性、帯電防止性に優れた発泡成形体を提供するにある。
又、本発明の他の目的は、高周波による熱融着特性に優れた発泡成形体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂又はエストラマー(但し、下記カリウムアイオノマーを除く)100重量部に対してエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー5〜50重量部及び水分を含有する組成物を水発泡させて成る発泡成形体が提供される。
【0011】
本発明の発泡成形体は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体カリウムアイオノマーを特定量配合した樹脂(又はエラストマー)組成物で水分を含むものを水発泡させて得たものである点が構成上の顕著な特徴である。
【0012】
本発明のこの発泡成形体は、環境負荷が無く、然も均質で微細なセル形成がなされるため緩衝性、帯電防止性に優れる。
更に、高周波による熱融着特性にも優れる。
【0013】
本発明の発泡成形体は、前記カリウムアイオノマーを構成するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸含有量が1〜35重量%であることが好ましい。
又、前記カリウムアイオノマーの中和度は50%以上であることが好ましい。
【0014】
更に、発泡成形体の発泡倍率は2〜10倍であることが好ましい。
又、前記カリウムアイオノマーを構成するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体であること、前記他の熱可塑性樹脂又はエラストマーがオレフィン系重合体樹脂又はエラストマーであること、前記熱可塑性樹脂又はエラストマーとカリウムアイオノマーとから成る組成物の発泡の際に於ける有効水分含量が1000ppm〜5重量%であることが好ましい。
更に、前記発泡成形体の形状はフィルム又はシート状であって良い。
【0015】
本発明によれば、又、前記フィルム状又はシート状の発泡成形体が少なくとも一層積層されてなる積層シートが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発泡成形体は、均質で微細なセルが形成されていることにより緩衝性、成形加工性に優れ、容器や包装フィルム、シート等種々の成形体を作製でき、且つ、その容器やフィルム、シート等は被収容物や被包装物を傷つけることがない。
又、帯電防止性に顕著に優れ、乾燥雰囲気中で擦られても埃の付着や静電気スパーク等の静電気障害を起こし難く、且つ、汚染物質等のブリードが生じない。
このため、特に電子部品等を収容又は包装するための容器やフィルム、シートとして好適である。
更に、本発明の発泡成形体、特にフィルム状又はシート状の発泡成形体は熱融着性に優れ、従って、熱接着による成形加工が容易で二次加工性に富む。
【0017】
又、水発泡で形成されるため、化学発泡剤の使用が皆無又は例え併用する場合も極少量の使用で済み、環境負荷が殆ど無く、安全性も高い。
発泡ガスが一酸化炭素や二酸化炭素、フロン、炭化水素ガス等でないため、例え、成形体が壊されてもこのようなガスが外部に漏れ出すことがない等数多くの利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について更に詳細且つ具体的に説明する。
本発明は、熱可塑性樹脂(又はエラストマー)にエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを配合した組成物で、水分(又は発泡時に水分を発生し得る物質)を含有するものを水発泡させて成る発泡成形体、及び本発明のフィルム又はシート状発泡成形体を少なくとも一層積層してなる積層体の発明からなる。
【0019】
本発明でカリウムアイオノマーの樹脂成分として用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体に於ける不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等を例示することができる。
これらの中では、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0020】
本発明に於いて、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸のみならず、他の単量体が共重合されたものであって良い。
このような他の単量体としては、不飽和カルボン酸エステル、ビニルエステル、一酸化炭素等を挙げることが出来る。
不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル等、又、ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を夫々例示することができる。
【0021】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン含有量が65〜99重量%、好ましくは70〜98重量%、不飽和カルボン酸含有量が1〜35重量%、好ましくは2〜30重量%、他の単量体が0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%である。
本発明に於いてエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は一種類のみの共重合体で無くても良く、2種以上の共重合体の混合物であっても良い。
上記混合物から成る場合、該混合物平均組成としてエチレン含有量が65〜99重量%、好ましくは70〜98重量%、不飽和カルボン酸含有量が1〜35重量%、好ましくは2〜30重量%、他の単量体が0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0022】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーに於ける中和度(平均)は、40モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。
中和度が上記範囲より小さいカリウムアイオノマーを用いると、発泡成形体の帯電防止性が充分でなくなる。
本発明のアイオノマーとしては、その成形加工性、得られる発泡成形体の機械強度等の観点から190℃、2160g荷重に於けるメルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分、特に0.5〜5g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0023】
本発明に於いて、カリウムアイオノマーに組み合わせで配合される他の熱可塑性樹脂又はエラストマーとしては、前記カリウムアイオノマーと組成物を形成し得る樹脂又はエラストマーである限りに於いて特に限定されるものではなく、ポリオレフィン(PO)系樹脂又はエラストマー、ポリスチレン(PS)系樹脂又はエラストマー、ポリエステル(PET)系或いはポリエーテル系樹脂又はエラストマー、ポリウレタン系樹脂又はエラストマー、ポリアミド系樹脂又はエラストマー、その他の樹脂又はエラストマー等を挙げることが出来る。
【0024】
本発明で用いるポリオレフィン(PO)系の樹脂又はエラストマーは、オレフィンの単独重合体及び2種以上のオレフィン同士の共重合体、オレフィンと不飽和カルボン酸又はこれらのアイオノマー、不飽和カルボン酸エステル等の極性単量体との共重合体等から成る樹脂又はエラストマーを総称するものであって、高結晶性、低結晶性、或いは非結晶性であって良い。
【0025】
このようなポリオレフィン系の樹脂又はエラストマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の単独重合体及び2種以上のオレフィン同士の共重合体から成る樹脂又はエラストマーを例示することが出来る。
【0026】
これらオレフィン重合体としてより具体的には、高、中、或いは低密度のポリエチレン、メタロセン触媒重合ポリエチレンを含む線状低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体等の低結晶性もしくは非結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体もしくはエチレン・プロピレン・ジエン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどを例示出来る。
【0027】
又、オレフィンと不飽和カルボン酸エステルの共重合に於ける不飽和カルボン酸エステル成分としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等を例示できる。
またオレフィンと不飽和カルボン酸との共重合における不飽和カルボン酸としてはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0028】
共重合体中に於ける不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル成分の割合は例えば1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%であって良い。
より具体的な共重合体の例としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体とナトリウム、マグネシウム、亜鉛等の1価又は2価金属イオンで中和したアイオノマー(但しカリウムアイオノマーは除く)から成る樹脂又はエラストマーを例示することが出来る。
更に、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体も用いることが出来る。
【0029】
本発明で用いるポリスチレン(PS)系の樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・アクリルニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリルニトリル共重合体、アクリレート・スチレン・アクリルニトリル共重合体、アクリルニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体等から成る樹脂又はエラストマーを例示できる。
【0030】
又、ポリエステル(PET)系或いはポリエーテル系樹脂又はエラストマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオキシメチレン(ポリアセタール)等から成る樹脂又はエラストマーを例示できる。
【0031】
ポリウレタン系樹脂又はエラストマーとしては、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン等の各種熱可塑性ポリウレタン類から成る樹脂又はエラストマーを例示でき、ポリアミド系樹脂又はエラストマーとしては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン61、ナイロン11、ナイロン12、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等から成る樹脂又はエラストマー等を例示できる。
【0032】
本発明における発泡成形体は、軟質のもののほか、硬質のものも製造され得るが、その硬軟程度調節は、上記熱可塑性樹脂の種類と配合量を選択するか、軟質の発泡成形体の場合は後記のような架橋剤を配合する必要はないが、硬質発泡成形体にする場合には、例えば、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3のような架橋剤を適量(通常樹脂組成物100重量部に対し0.1〜5重量部程度)添加し、架橋発泡させて製造してもよい。
これらの熱可塑性樹脂又はエラストマーの内では、オレフィン系重合体樹脂又はエラストマーが好ましく、中でも、特に発泡成形体が軟質の場合、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン類、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマーが好ましく、発泡成形体が硬質の場合、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンの他、低密度、線状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマーと前記架橋剤との併用が好ましく使用される。
【0033】
本発明の発泡成形体に用いる樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂又はエラストマー100重量部に対し、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体カリウムアイオノマー5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部、を混合し、場合によっては架橋剤を配合して樹脂組成物とし、これを雰囲気中でカリウムアイオノマーの吸湿により水分を吸収させ所定含水量の樹脂組成物とする。
場合によっては水分、水蒸気を添加して該樹脂組成物を所定の含水量、即ち、発泡時に1000ppm(0.1重量%)〜5重量%、好ましくは5000ppm(0.5重量%)〜4重量%の有効水分含有状態となるように調製する。
ここに有効水分含有量とは、発泡条件下に於いて水発泡に有効に寄与できる水分の量を云う。
【0034】
樹脂組成物の発泡時に於ける水分含有量が上記上限を超えるようになると発泡剤としての作用を充分に奏し難くなって、充分な発泡が起こらず、均質で微細な発泡セルを形成することが出来なくなる。
又、下限値を下回る場合も充分な発泡が起こら無い。
本発明の発泡成形体の発泡前の組成物は熱可塑性樹脂又はエラストマーとカリウムアイオノマーに水を添加して製造してもよいが、カリウムアイオノマーは、それ自体可成り強い吸湿性を示すため本発明では、大気湿度がある程度高い場合は、特に水分を添加しなくとも熱可塑性樹脂又はエラストマーとカリウムアイオノマーの混合物あるいはカリウムアイオノマーを大気中に放置することによって上記本発明の規定範囲内の水分含有量に調整することが可能である。
【0035】
本発明の発泡成形体は、上記の範囲の水分を含有する樹脂組成物を水発泡させて製造する。
樹脂組成物の発泡成形は、上記水分含有樹脂組成物を、例えば、Tダイ押出発泡成形、キャスト押出発泡成形、インフレーション発泡成形、異形押出発泡成形等の工法により、成形機内で所定温度に加熱昇温させることにより、水が気化して発泡が行われる。
発泡温度は、樹脂組成物の組成、発泡倍率、含水量、その他条件により変化し、適宜設定されるが、通常160〜280℃、より好ましくは180〜220℃の範囲で実施される。
発泡操作を行う加熱時間も、樹脂組成、発泡倍率、含水量、加熱温度等を勘案して適宜設定されるが、一般に30秒〜1時間、好ましくは1〜10分である。
【0036】
本発明に於いて、発泡成形体の発泡倍率はその用途、所望性状等によって変化し適宜決定されるが、通常2〜10倍程度が好ましい。
本発明に於ける発泡は、通常、発泡剤としての水のみで充分であるが、用途、仕様に応じて、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような水酸基含有フィラー、吸水性ポリマー、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭酸ナトリウム等の化学発泡剤やプロパンガス、炭酸ガス等の発泡ガスの含浸を併用しても良い。
【0037】
又、発泡に際して、本発明の樹脂組成物に、各種の添加剤、例えば、整泡剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、有機又は無機の顔料、染料等を添加しても良く、更に、得られる発泡成形体の寸法安定性付与、耐熱性付与、増量等の目的で炭酸カルシウム(炭カル)、タルク等の無機フィラー、シリカ等のSi系フィラー、ガラス、セルロースやキトサン等の多糖類有機フィラーを添加しても良い。
【0038】
本発明の発泡成形体は各種の形状を取り得るが、典型的な成形体形状として発泡シートや発泡フィルムを挙げることが出来る。
発泡フィルムにする場合、その厚さは通常20μm〜2mmが好ましい。
【0039】
本発明の発泡シート又はフィルムは、勿論、単層で用いることができるが、引裂強度等の機械的強度特性のより強いものを要求する場合には、これを改善するため少なくとも一層から成る熱可塑性フィルム層と積層して用いると良い。
かかる熱可塑性重合体フィルムは通常の非発泡性フィルムであることが好ましく、例えば、高圧法ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはそのアイオノマーのようなオレフィン重合体もしくは共重合体、ポリエステル、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの一層もしくはそれ以上の層から成るフィルムを例示することが出来る。
特に、本発明の発泡シートの両面にスキン層として非発泡の樹脂フィルム層を積層したものが好適である。
また積層フィルムの厚さは30μm〜3mm程度が好ましい。
【0040】
本発明の発泡成形体は、既に述べた包装用の容器やフィルム、シート等の用途のほか、硬質のものは家具、ボード、パネル、間仕切り、天板、デスクエッジ、幅木、腰壁、ベンチ等の異形押出建材、雑貨シート等に好適であり、軟質のものは各種レザー、デスクエッジ、幅木、腰壁等に好適である。
【実施例】
【0041】
本発明を次の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
「実施例1」
エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含有量18重量%)中のメタクリル酸の80%がカリウムイオンで中和されているカリウムアイオノマー樹脂(MFR0.5g/10分)30重量部とエチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名 ハイミラン1650)70重量部とを混練機でブレンドしてシート状に形成し、それを温度23℃、相対湿度50%の湿潤雰囲気下に6日間放置し、該シート中の水分含有率を1.2重量%に調節した。
【0043】
このグレーンシート状組成物を細かく裁断し、Tダイ押出成形機に投入して押出し、厚さ1mm、幅150mmの発泡フィルムに発泡押出成形した(発泡成形条件:押出樹脂温度200℃)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂又はエストラマー(但し、下記カリウムアイオノマーを除く)100重量部に対してエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー5〜50重量部及び水分を含有する組成物を水発泡させて成る発泡成形体。
【請求項2】
前記カリウムアイオノマーを構成するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸含有量が1〜35重量%である請求項1記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記カリウムアイオノマーの中和度が50%以上である請求項1又は2記載の発泡成形体。
【請求項4】
発泡倍率が2〜10倍である請求項1乃至3の何れかに記載の発泡成形体。
【請求項5】
前記カリウムアイオノマーを構成するエチレン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体である請求項1乃至4の何れかに記載の発泡成形体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂又はエラストマーがオレフィン系重合体樹脂又はエラストマーである請求項1乃至5の何れかに記載の発泡成形体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂又はエラストマーに前記カリウムアイオノマーを配合した組成物の発泡の際に於ける有効水分含量が1000ppm〜5重量%である請求項1乃至6の何れかに記載の発泡成形体。
【請求項8】
前記発泡成形体がフィルム又はシート状である請求項1乃至7の何れかに記載の発泡成形体。
【請求項9】
請求項8に記載のフィルム又はシート状発泡成形体が少なくとも一層積層されてなる積層シート。

【公開番号】特開2007−138004(P2007−138004A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333334(P2005−333334)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】