説明

カリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤

【課題】飲食品本来の香味に影響を与えることなくカリウム塩特有の不快味を改善し、さらに、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高め、飲食品のナトリウム量を減少する手段および食塩組成物を提供する。
【解決手段】キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物の少なくとも1種をカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品に含有させることにより、カリウム塩特有のエグ味や金属味等の不快味が改善され、さらに塩味及び呈味が増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呈味改善剤に関するものであり、特に、カリウム塩含有飲食品の持つ塩味を低下させることなく、更には飲食物本来のフレーバープロファイルを変えることなく、カリウム塩由来の金属味等の不快味を軽減する優れた呈味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)は、飲食物への塩味の付与により味を調え、あるいは保存性や物性の向上など、食品業界においては欠かすことのできない素材である。しかし食塩を過剰に摂取すると体内にナトリウムが多くたまり、それと共に血管の水分量が増加し、血圧が上昇する。つまり、高血圧の発症原因と食塩の過剰摂取が密接に結びついていることは今日では常識となっており、しかも他の合併症(心臓疾患、腎臓疾患など)を引き起こす原因になっていることも周知の事実であり、人口構成の高齢化に伴い摂取量の減少が望まれている。
【0003】
そのため近年、世界規模で食塩摂取取量を減らそうとした動きがあり、欧米では1日の目標摂取量を6gと推奨している。一方日本国内では、厚生労働省は、一日当りの食塩摂取量を10g以下とするように勧告しているが、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」では、WHOや欧米の基準を受けて食塩摂取量は1日6g以下にする方がより望ましいとされている。それに対し、近年の国民栄養調査の結果によれば、日本人は、食塩を1日に約11〜14g摂取していると報告されている。
【0004】
そこで、近年、飲食物中に含まれる食塩の量を減らす試み、具体的には、塩味・塩辛味を増強させることにより、用いる食塩の量を減らす試みがいくつか開示されている。飲食物本来の風味を阻害せずに塩味を増強させる方法としては、例えば、スピラントールを含有する組成物が塩味を増強することが知られている(特許文献1)。この手法によりナトリウム含量を減少させた場合、塩味をある程度増強させることはできるが、ベース全体の呈味の増強効果はみられないため、ナトリウム含量を減少させたことで生じる全体の呈味不足は補完できないことが指摘されていた。
【0005】
一方、飲食物のナトリウム量を減少させる方法としては、食塩中のナトリウムの一部を
塩味を有する塩化カリウムや塩化マグネシウムあるいは塩化カルシウムにより置き換え、ナトリウム量を相対的に減量する方法が提案されている(特許文献2)が、いずれも苦味又はエグ味、金属味など素材由来の不快味を有しており、その使用量、使用分野は大きく制限されている。
【0006】
塩化カリウムの呈味性を改良する目的で、塩化カリウムに無機塩や調味料、甘味料等を配合する試みも数多くなされている。塩化カリウムの呈味を改良する成分として、グルタミン酸塩、核酸系呈味物質(特許文献3、特許文献4)、クエン酸塩(特許文献5)、自己分解酵母(特許文献6)、粉末固形苦汁(特許文献7)、昆布エキス(特許文献8)、茶、ドクダミ、麦、グアバ、そば(特許文献9)、キノコ由来成分(特許文献10)等が知られている。また、塩化ナトリウムと塩化カリウムにバインダーを混合し顆粒化する技術(特許文献11)、塩化カリウムと繊維素系物質等を組み合わせて塩化カリウムの食感を改善する方法(特許文献12)等が提案されている。が、これらの場合もまだ独特の素材由来の不快味を有しており、その改善は強く望まれている。
【0007】
しかし、上記の従来技術は塩化カリウムと組み合わせる無機塩、調味料等が有している香味、不快味のため使用量が制限され、十分な塩化カリウムの呈味改善効果が得られない場合も多く、品質的に十分満足のできるカリウム含有飲食品の呈味改善剤は未だ開発されていない。
【0008】
【特許文献1】特公昭48−35465号公報
【特許文献2】特開昭59−198953号公報
【特許文献3】特開昭58−89160号公報
【特許文献4】特開昭58−94368号公報
【特許文献5】特開平6−189709号公報
【特許文献6】特開昭56−55177号公報
【特許文献7】特開昭59−198953号公報
【特許文献8】特開平6−7111号公報
【特許文献9】特開平6−335361号公報
【特許文献10】特開平7−115933号公報
【特許文献11】特開昭59−66858号公報
【特許文献12】特開昭61−282052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は飲食品本来の香味に影響を与えることなくカリウム塩特有の不快味を改善することであり、さらに、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高め、飲食品のナトリウム量を減少する手段および食塩組成物を提供することである。並びに食塩組成物の不快味の改善効果を有する呈味改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物の少なくとも1種をカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品に含有させることにより、カリウム塩特有のエグ味や金属味等の不快味が改善され、さらに塩味及び呈味が増強されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下のように構成される。
(1)キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤。
(2)キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物からなる群から選択される2種以上を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤。
(3)キナ酸を含有する組成物が、茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の呈味改善剤。
(4)キナ酸を含有する組成物が、コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られるキナ酸誘導体を含むコーヒー豆加水分解物からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の呈味改善剤。
(5)スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物又は植物精油が、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチ由来の抽出物又は精油であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の呈味改善剤。
(6)アリウム属植物抽出物が、シャロット及び/又はオニオンの抽出物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の呈味改善剤。
(7)アリウム属植物抽出物が、アリウム属植物から−20〜0℃でアルコール水溶液にて抽出されたものであることを特徴とする(1)、(2)又は(6)のいずれかの項に記載の呈味改善剤。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩組成物。
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
(10)カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品である(9)記載のカリウム塩含有飲食品。
(11)(1)〜(7)のいずれかに記載の呈味改善剤を添加することを特徴とするカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
(12)カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする(11)記載のカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
(13)(1)〜(7)のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品用香味料組成物。
(14)(13)に記載の香味料組成物を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
(15)カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする(14)のカリウム塩含有飲食品。
(16)カリウム塩と(1)〜(7)のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とする食塩組成物。
(17)(16)記載の食塩組成物を含有する飲食品。
(18)飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする(17)記載の飲食品。
(19)(16)記載の食塩組成物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の減塩方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の呈味改善剤は飲食品本来の香味に影響をあたえることなくカリウム塩特有の金属味、エグ味等の不快味を改善し、塩味を増強することができるので、減塩食品等への使用が従来よりも容易になり、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔A〕キナ酸又はキナ酸を含有する組成物
本発明の呈味改善剤に使用するキナ酸(1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸)は、クランベリー果汁等に多く存在する他、クロロゲン酸等のキナ酸誘導体として植物中に広く分布し、植物から抽出等の方法により得ることができる。また、化学的に合成することも可能であり、試薬等として市販されている。本発明においては市販されているキナ酸をそのまま呈味改善剤として使用することが可能であるが、呈味改善剤として飲食品に使用することを考慮すると、果汁、茶、コーヒー等の可食性植物原料から得られるキナ酸を含有する組成物を使用するのが好ましく、特にキナ酸含有量が多く入手も容易な茶葉やコーヒー豆を原料とするのが好ましい。具体的には茶葉及びコーヒー豆から以下のように本発明の呈味改善剤を得ることができる。
【0014】
(1)キナ酸を含む茶葉抽出物
a)原材料
原材料の茶葉は、ツバキ科茶の樹(Camellia sinensis var.)の芽、葉、茎であり、品種、産地を問わず使用することができ、また、生であっても、前処理を施したものであってもよい。茶の前処理方法としては不発酵、半発酵、発酵があるが、いずれの処理方法によるものでもよい。不発酵茶としては緑茶(煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、抹茶、ほうじ茶等)、半発酵茶としてはウーロン茶、包種茶等、発酵茶としては紅茶が挙げられる。いずれの茶葉も原料として使用できるが、キナ酸の収率等の観点から紅茶葉を原料とするのが好ましい。
【0015】
b)抽出
原材料の茶葉を水及び/又は極性有機溶媒を用いて抽出する。
極性有機溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン等の溶媒が例示され、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができ、必要に応じて水との混合形態すなわち水溶液の形で使用される。抽出に用いる溶媒は人体への安全性と取扱性の観点から水またはエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2〜4の脂肪族アルコールが望ましく、特に水またはエタノールまたはこれらの混合物が最も望ましい。抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には茶葉の1〜30倍量(質量)が用いられ、好ましくは5〜20倍量が用いられる。抽出の温度及び時間は任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、10〜100℃にて1〜12時間、好ましくは1〜2時間が適当である。
茶葉等から抽出した抽出液は不溶物を除去し、必要に応じて濃縮した後、下記の精製処理を行う。
【0016】
c)精製
前記抽出工程で得られた抽出液を、活性炭、シリカゲル、合成吸着剤に例示される吸着剤に接触させて精製処理を行うことにより、本発明の呈味改善剤を得ることができる。
吸着剤の性状としては、比表面積が300〜600m2/g、細孔径が50〜300Åの多孔質体が好適である。活性炭、シリカゲル、合成吸着剤等の種類に限定されず使用することができる。
【0017】
特に、合成吸着剤の使用が好ましく、その例としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体系樹脂からなる合成吸着剤「ダイヤイオン(登録商標)HP」(三菱化学株式会社製)、アクリル酸エステル系樹脂の合成吸着剤「アンバーライト(登録商標)XAD−7」(ローム・アンド・ハース社製)などを挙げることができる。
これら吸着剤に接触させる方法は、バッチ式、カラム式のいずれでも良いが、商業的生産規模ではカラム方式の方が有利であり、好ましい処理条件は、空間速度SV=1である。
【0018】
吸着剤により精製処理して得られた抽出液はそのままで、或いは濃縮して本発明の呈味改善剤として使用できるが、作業性のよさを考慮すると、減圧濃縮や凍結乾燥などにより溶媒を除去し、粉末状として使用するのが好ましい。
【0019】
さらに以下に述べる精製処理を適用することによって、着色物質、カフェイン、ポリフェノール類、多糖類、たんぱく質、カルシウム、カリウム、ナトリウム等のミネラル成分、アミノ酸類などの前記吸着剤では除去できなかった夾雑物が除去されるため、より効果の高い呈味改善剤を得ることができる。
すなわち、茶葉を水で抽出処理して得た抽出液を吸着剤で精製処理して得られた精製物を、さらに以下に述べる(a)分離膜による処理、(b)有機溶媒添加による不溶物処理及び(c)陽イオン交換樹脂による処理から選択される1又は2以上の精製方法で処理することにより、さらに効果の高い呈味改善剤を得ることができる。
(a)〜(c)の精製方法は必要に応じていずれか1つを選択するか、或いは2以上を適宜組み合わせることができる。
【0020】
(a)分離膜による処理
膜(濾過)処理によって高分子である多糖類およびたんぱく質を除去して精製する方法である。膜の種類としては限外濾過膜、逆浸透膜、透析膜を利用できる。
【0021】
(b)有機溶媒添加による不溶物処理
抽出液またはその濃縮液に有機溶媒を添加して、析出する不溶物を除去することによって精製する方法である。
添加する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、アセトン等が例示され、これらの中でも安全性と取扱性の点からエタノールが好適である。添加量は特に限定されるものではないが抽出液または濃縮液に対して0.1〜10質量部が好適である。
【0022】
(c)陽イオン交換樹脂による処理
抽出液または濃縮液を陽イオン交換樹脂に接触させることによって精製する方法である。
本発明で使用する陽イオン交換樹脂の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂からなりスルホン酸基を交換基とする「アンバーライト(登録商標)IR120B」(ローム・アンド・ハース社製)や「ダイヤイオン(登録商標)SK1B」(三菱化学株式会社製)などが好適なものとして挙げられる。
【0023】
上述した(a)〜(c)の精製工程を経て得られた精製物は、そのままで呈味改善剤として使用できるが、作業性のよさを考慮すると減圧濃縮や凍結乾燥などにより溶媒を除去し、粉末状として使用するのが好ましい。
【0024】
(2)キナ酸を含むコーヒー豆加水分解物
a)原材料
原材料のコーヒー豆は、産地品種により制限されることなく任意の豆を用いることができる。生のコーヒー豆にはキナ酸はクロロゲン酸等の誘導体として多量に含まれているが、焙煎したコーヒー豆には焙煎時にクロロゲン酸類が加水分解されてキナ酸が生じている。従って、原材料が焙煎したコーヒー豆である場合は、焙煎コーヒー豆をそのまま又は粉砕して水及び/又は水溶性溶媒により抽出し、得られた抽出液を茶葉の場合と同様の精製工程に付することにより、本発明の呈味改善剤とすることができる。コーヒー生豆を用いる場合は、生豆の抽出により得られるクロロゲン酸等を含む抽出液を以下のように酵素又はアルカリを用いて加水分解する。
【0025】
b)酵素による加水分解
コーヒー生豆をそのまま又は粉砕して水及び/又は水溶性溶媒により抽出する。水溶性溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン等の溶媒が例示され、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができ、必要に応じて水溶液の形で使用される。抽出法は一般に用いられる条件で可能であり、特に限定されるものではないが、抽出溶媒の量はコーヒー豆の1〜30倍量が用いられ、好ましくは5〜20倍量が用いられる。抽出の温度及び時間は任意に定めることができ、特に限定されるものではないが、50〜100℃にて1〜24時間、好ましくは2〜8時間が適当である。抽出液は不溶物を除去した後、必要に応じて濃縮工程を経て、酵素分解される。得られた抽出液が水抽出液の場合はそのまま、水溶性溶媒を含む場合は濃縮等により水溶性溶媒の量を5%以下にした後、酵素処理を行うことが望ましい。
【0026】
酵素分解にはタンナーゼ又はクロロゲン酸エステラーゼが用いられる。利用できるタンナーゼの種類としては特に限定されるものではなく、麹菌などの糸状菌、酵母、細菌などの微生物、特に Aspergillus属や Penicillium属から産生されるタンナーゼを挙げることができるが、好ましくは Aspergillus属、特に好ましくは Aspergillus oryze から産生されるタンナーゼが用いられる。利用できるクロロゲン酸エステラーゼの種類についても特に限定されるものではなく、Aspergillus属、Penicillium属、Botrytis属などの糸状菌により産生されるものを挙げることができるが、好ましくは Aspergillus属、特に好ましくは Aspergillus japonics や Aspergillus niger から産生されるクロロゲン酸エステラーゼが用いられる。これらの酵素は、市販されており、例えばキッコーマン株式会社の製品により入手することができる。また、これらの酵素は各種の固定化方法により固定化したものを使用することで、更に高い効果を得ることも可能となる。
【0027】
酵素分解の条件は特に限定されるものではないが、好ましくは30〜50℃で1〜48時間、更に好ましくは35〜45℃で2〜24時間が適当である。
コーヒー豆抽出物を酵素にて加水分解処理し、不溶物を除去後、加水分解処理物を吸着剤と接触させて精製し、キナ酸を含むコーヒー豆加水分解物を得る。吸着剤に接触させることにより、未反応のクロロゲン酸、副生成物のカフェー酸、或いはカフェイン等の夾雑物を除去することにより精製される。吸着剤の種類としては、高分子樹脂系吸着剤であれば特に限定されるものではなく、例えばアンバーライトIR(オルガノ株式会社)のような陽イオン交換樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤ダイヤイオンHP(三菱化学株式会社)などが挙げられ、特に好ましくはダイヤイオンHP−20が用いられる。これら樹脂に接触させる方法はバッチ式、カラム式いずれでも良いが、生産規模ではカラム方式の方が一般的である。
【0028】
得られた液状組成物はそのままで本発明の呈味改善剤として使用できるが、好ましくは減圧濃縮、凍結乾燥などにより溶媒を除去し、粉末状として目的の呈味改善剤を得る。得られた呈味改善剤には、キナ酸のほか、単糖類、アミノ酸等が含まれており、キナ酸、単糖類の含有率はそれぞれ約30〜50質量%、20〜40質量%である。キナ酸と他の成分の相乗効果により優れた呈味改善剤効果を有しているものと考えられる。
【0029】
c)アルカリによる加水分解
アルカリ加水分解を行う場合は、コーヒー豆を微粉砕し、これにアルカリ水溶液を加えて60〜90℃で10〜60分間加熱攪拌する。アルカリ水溶液としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液が用いられ、好ましくは水酸化カルシウムが用いられる。加水分解後、反応液に、塩酸、硫酸、蓚酸、リン酸などの酸を加えて中和処理する。
【0030】
中和処理した加水分解液をイオン交換膜電気透析装置にかけ、中和により生成した塩を除去する。脱塩は陰イオン交換膜分画分子量100〜300、好ましくは100相当膜を用いて行うのが望ましく、また、陽イオン交換膜は特に制限なく使用できる。
【0031】
上記の加水分解処理を行って得られた液状組成物はそのままで呈味改善剤として使用できるが、好ましくは減圧濃縮、凍結乾燥などにより水を除去し、粉末状として目的の呈味改善剤を得る。
なお、こうした粉末状のキナ酸を含む茶葉抽出物からなる呈味改善剤中のキナ酸、単糖類の含有率はそれぞれ約5〜35質量%、1〜40質量%であり、一方、粉末状のキナ酸を含むコーヒー豆加水分解物からなる呈味改善剤中のキナ酸、単糖類の含有率はそれぞれ約30〜50質量%、20〜40質量%である。
【0032】
〔B〕スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油
(1)原材料
本発明の呈味改善剤に使用するスピラントール(N−イソブチル−2,6,8−デカトリエンアミド)とは、キク科オランダセンニチ(Spilanthes acmella)、キバナオランダセンニチ(Spilanthes acmella var. oleracea)等に含まれる辛味成分である。スピラントールは前記植物から採取、精製することにより得られる他、化学的に合成することも可能である。本発明ではいずれの方法により得られたスピラントールであっても使用でき、また、純度が高いものである必要はない。他の成分の味やにおいが飲食品の香味に影響を与えない場合は、スピラントールを含有する植物の抽出物や精油等を精製することなく使用してもよい。安全性の観点からは食経験のある植物から得られる抽出物又は精油を使用することが好ましく、また、供給、価格等の実用性の観点から、スピラントール含量の多いオランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの抽出物又は精油を使用するのが特に好ましい。
【0033】
(2)製造方法
スピラントールは、例えば、スピラントール含量の高いオランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの全草又は花頭から抽出又は蒸留により採取することができる。抽出による採取法を例示すると、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの花頭を乾燥・粉砕した後、有機溶媒で抽出してスピラントールを含有する抽出液を得る。抽出に使用する有機溶媒は特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、安全性の観点から特にエタノールが好ましい。得られた抽出液から溶媒を留去し、スピラントール含有抽出物が得られる。
【0034】
得られたスピラントール含有抽出物はそのまま本発明の呈味改善剤として使用できるが、抽出物に含まれているスピラントール以外の成分が飲食品の香味に与える影響が問題となるような場合には、さらに蒸留等の精製方法によりスピラントール含量を高めて使用することが好ましい。精製方法としては分子蒸留、薄膜蒸留、各種クロマトグラフィー等を挙げることができ、これらの精製方法を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、よりスピラントール含量の高い呈味改善剤を得ることができる。
【0035】
〔C〕アリウム属植物抽出物
(1)原材料
本発明で用いられるアリウム属植物とは、アリウム属に属する植物であれば特に限定されるものではなく、ガーリック、オニオン、シャロット、ネギ、ニラ、ワケギ、アサツキ、リーク及び行者ニンニク等が例示される。好ましくはガーリック(Alliumsativum L.)、オニオン(Allium capa L.)及びシャロット(Allium ascalonicum L.)が用いられ、さらに好ましくはシャロット(Allium ascalonicum L.)及び/又はオニオン(Allium capa L.)が用いられ、最も好ましくはシャロット(Allium ascalonicum L.)が用いられる。上記アリウム属植物は単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの植物は生のまま細断されるか、或いは目的に応じて乾燥や加熱処理を経て抽出されることもあるが、好ましくは生のまま細断し、遅滞なく冷却し、抽出することが望ましい。
【0036】
(2)製造方法
本発明におけるアリウム属植物の抽出温度は特に限定されることはないが、好ましくは抽出原料が凍結しない可及的低い温度で行われ、−20℃〜0℃が適当である。さらに好ましくは−15℃〜0℃、最も好ましくは−15℃〜−5℃である。アリウム属植物は、溶媒の存在下では−20℃程度では凍結しないが、抽出温度が−20℃より低く、植物中の細胞が凍結破壊される場合は収率は上がるものの好ましくない成分までも抽出されるためか香味的に劣る傾向にある。抽出温度が0℃を越えると植物中の酵素反応が活発になり香味をコントロールすることが困難となる傾向がある。
【0037】
本発明のアリウム属植物の抽出で用いられるアルコール性溶媒は、分子内に一つ以上の水酸基をもち上記抽出温度で液体であれば特に限定されるものではなく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価のアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが例示され、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価のアルコールが用いられ、最も好ましくはエタノールが選択される。上記アルコール類は水溶液の形で使用することができ、好ましくは30〜95%水溶液、より好ましくは50〜90%の水溶液、最も好ましくは60〜85%の水溶液で用いられる。30%未満の場合は、低温で抽出した場合に溶媒が抽出中に凍ってしまう可能性があり、95%を越えた場合は抽出時間が長くなる傾向がある。
【0038】
本発明におけるアリウム属植物の抽出時間は、任意に設定され特に限定されるものではないが、低温で抽出する場合は、好ましくは8〜96時間で行われ、さらに好ましくは24〜84時間、最も好ましくは48〜72時間で行われる。8時間未満であれば抽出効率が低くなる可能性があり、96時間以上抽出に費やすことは経済上好ましくない。
【0039】
(D)呈味改善剤の使用
本発明の呈味改善剤はカリウム塩や、カリウム塩含有飲食品に特に制限なく使用することができ、特に食塩代替品として広く用いられている塩化カリウムの呈味改善に好適である。呈味改善剤をカリウム塩に直接添加する場合は、粉末化した呈味改善剤をカリウム塩と混合した混合粉末として、或いはカリウム塩と呈味改善剤を共に水に溶解して水溶液としてもよく、水溶液にさらにデキストリン等の賦形剤等を加えて噴霧乾燥により粉末化した組成物としてもよい。カリウム塩と食塩、天然塩、にがり等の混合物に呈味改善剤を添加することもできる。
カリウム塩を使用した減塩食品等のカリウム塩含有飲食品に呈味改善剤を使用する場合は、当該飲食品の製造過程において適宜、呈味改善剤を添加することができ、既にカリウム塩を含有している飲食品に呈味改善剤を添加してもよく、上記の呈味改善剤とカリウム塩を混合した組成物を飲食品に添加してカリウム塩含有飲食品としてもよい。
【0040】
また、本発明の呈味改善剤は塩化カリウム等の食塩代替品として使用されるカリウム塩の他、グルタミン酸カリウム、クエン酸カリウム等を含有する飲食品に添加し、カリウム化合物の金属味やエグ味等の不快味を軽減し、呈味性を改善することができる。
【0041】
本発明の呈味改善剤のカリウム塩への添加量は、塩化カリウム等による食塩の代替率、カリウム塩の添加濃度、他の食品原材料等に応じて適宜設定すればよく、特に制限はない。キナ酸又はキナ酸を含有する組成物の場合はカリウム塩に対し、キナ酸量として20〜10000ppm、好ましくは200〜5000ppmの添加量が適当であり、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油の場合はカリウム塩に対し、スピラントール量として、1〜5000ppm、好ましくは10〜2000ppmの添加量が適当であり、アリウム属植物抽出物の含量はカリウム塩に対し、抽出物固形分として2〜40000ppm、好ましくは200〜10000ppmの添加量が適当である。
【0042】
本発明の呈味改善剤を飲食物に直接添加する場合は、飲食品に含まれるカリウム塩の含有量に応じて必要な量の呈味改善剤を添加するが、一般的には、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物の場合は飲食物中のキナ酸量が0.1ppm〜10ppm、好ましくは1ppm〜5ppmとなるように添加するのが適当であり、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油の場合は飲食物中のスピラントール量が5ppb〜1000ppb、好ましくは50ppb〜500ppbとなるように添加するのが適当であり、アリウム属植物抽出物の場合は飲食物中の抽出物固形分量が0.01ppm〜200ppm、好ましくは1ppm〜50ppmの添加量が適当である。キナ酸含有抽出物、スピラントールとアリウム属植物抽出物の比率には特に制限はなく、任意の割合で配合して使用することができる。
呈味改善剤の添加量が多くなると呈味改善剤自体の香味が感じられるようになるため、一般的にはそれ以下の添加量で使用するが、呈味改善剤自体の香味が問題にならないような場合は、上記添加量を超えて使用しても差し支えない。
【0043】
本発明のキナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油及びアリウム属植物抽出物はそれぞれ単独で呈味改善剤として使用することができるが、2種以上を呈味改善剤として併用することもでき、この場合はそれぞれの呈味改善効果が相まって、単独で使用する場合よりも高い効果を示す。2種以上を併用する場合の配合比率は一般に、キナ酸/スピラントール=1/1〜100/1、アリウム属抽出物/スピラントール=1/1〜1000/1、キナ酸/アリウム属抽出物=1/1〜1/10が好ましい。
【0044】
本発明の呈味改善剤は、他の香料成分と任意に組み合わせて、飲食物用の香味料の形態でカリウム塩含有飲食品に使用することもできる。組み合わせる香料成分は特に制限はなく、例えばアセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、アントラニル酸メチル、イオノン、イソオイゲノール、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸3−ブテニル、イソチオシアン酸4−ペンテニル、イソチオシアン酸ベンジル、イソチオシアン酸3−メチルチオプロピル、イソチオシアネート類、インドール及びその誘導体、γ−ウンデカラクトン、エステル類、エチルバニリン、エーテル類、オイゲノール、オクタノール、オクタナール、オクタン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケトン類、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l−メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、脂肪酸類、脂肪族高級アルコール類、脂肪族高級アルデヒド類、脂肪族高級炭化水素類、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、チオエーテル類、チオール類、デカナール、デカノール、デカン酸エチル、テルピネオール、リモネン、ピネン、ミルセン、タピノーレン、テルペン系炭化水素類、γ−ノナラクトン、バニリン、パラメチルアセトフェノン、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ピペロナール、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、フェノールエーテル類、フェノール類、フルフラール及びその誘導体、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、l−ペリラアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、d−ボルネオール、マルトール、N−メチルアントラニル酸メチル、メチルβ−ナフチルケトン、dl−メントール、l−メントール、酪酸、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル、ラクトン類、リナロオール等の合成或いは天然由来の香料の他、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどシトラス系精油類、アップル、バナナ、グレープ、メロン、ピーチ、パイナップル、ストロベリーなどフルーツ系の精油或いは回収フレーバー、ミルク、クリーム、バター、チーズ、ヨーグルトなど乳系の抽出香料、緑茶、紅茶、コーヒー、ココアなど嗜好品系の回収フレーバー、ペパーミント、スペアミントなどミント系の精油、アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アンゼリカ、ウイキョウ、ウコン、オレガノ、オールスパイス、オレンジノピール、カショウ、カッシア、カモミール、カラシナ、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェー、クチナシ、クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サッサフラス、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シナモン、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、スペアミント、セイヨウワサビ、セロリー、ソーレル、タイム、タマリンド、タラゴン、チャイブ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニンジン、バジル、パセリ、ハッカ、バニラ、パプリカ、ヒソップ、フェネグリーク、ペパーミント、ホースミント、ホースラディッシュ、マジョラム、ミョウガ、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、ローズ、ローズマリー、ローレル、ワサビなどから得られる香辛料抽出物、アイスランドモス、アカヤジオウ、アケビ、アサ、アサフェチダ、アジアンタム、アジョワン、アズキ、アスパラサスリネアリス、アップルミント、アーティチョーク、アニス、アボカド、アマチャ、アマチャズル、アミガサユリ、アミリス、アーモンド、アリタソウ、アルカンナ、アルテミシア、アルニカ、アルファルファ、アロエ、アンゴスツラ、アンゴラウィード、アンズ、アンズタケ、アンゼリカ、アンバー、アンバーグリス、アンブレット、イカ、イカリソウ、イグサ、イースト、イタドリ、イチゴ、イチジク、イチョウ、イノコヅチ、イランイラン、イワオウギ、インペラトリア、インモルテル、ウィンターグリーン、ウォータークレス、ウコギ、ウコン、ウスバサイシン、ウッドラフ、ウニ、ウメ、ウーロンチャ、エゴマ、エノキダケ、エビ、エビスグサ、エリゲロン、エルダー、エレウテロコック、エレカンペン、エレミ、エンゴサク、エンジュ、エンダイブ、欧州アザミ、オウレン、オオバコ、オカゼリ、オキアミ、オーク、オークモス、オケラ、オスマンサス、オポポナックス、オミナエシ、オモダカ、オリガナム、オリス、オリバナム、オリーブ、オールスパイス、オレンジ、オレンジフラワー、カイ、カイニンソウ、カカオ、カキ、カサイ、カシューナッツ、カスカラ、カスカリラ、カストリウム、カタクリ、カツオブシ、カッシー、カッシャフィスチュラ、カテキュ、カニ、カーネーション、カノコソウ、カモミル、カヤプテ、カラシ、カラスウリ、カラスビシャク、ガラナ、カラムス、ガランガ、カーラント、カリッサ、カリン、カルダモン、ガルバナム、カレー、カワミドリ、カンゾウ、ガンビア、カンラン、キウィーフルーツ、キカイガラタケ、キキョウ、キク、キクラゲ、キササゲ、ギシギシ、キダチアロエ、キナ、キハダ、キバナオウギ、ギボウシ、ギムネマシルベスタ、キャットニップ、キャラウェイ、キャロップ、キュウリ、キラヤ、キンミズヒキ、グァバ、グァヤク、クコ、クサスギカズラ、クサボケ、クズ、クスノキ、クスノハガシワ、グーズベリー、クチナシ、クベバ、クマコケモモ、グミ、クミン、グラウンドアイビー、クララ、クラリセージ、クランベリー、クリ、クルミ、クリーム、グレインオブパラダイス、クレタディタニー、グレープフルーツ、クローバー、クローブ、クロモジ、クワ、クワッシャ、ケイパー、ゲットウ、ケード、ケブラコ、ゲルマンダー、ケンチュール、ケンポナシ、ゲンノショウコ、コウジ、コウダケ、コウチャ、コウホネ、コカ、コガネバナ、コクトウ、コクルイ、ココナッツ、ゴシュユ、コショウ、コスタス、コストマリー、コパイパ、コーヒー、コブシ、ゴボウ、ゴマ、コーラ、コリアンダー、コルツフート、ゴールデンロッド、コロンボ、コンサイ、コンズランゴ、コンフリー、サイプレス、魚、サクラ、サクランボ、ザクロ、サケカス、ササ、ササクサ、サーチ、サッサフラス、サフラン、サポジラ、サボテン、サラシナショウマ、サルサパリラ、サルシファイ、サルノコシカケ、サンザシ、サンシュユ、サンショウ、サンタハーブ、サンダラック、サンダルウッド、サンダルレッド、シイタケ、ジェネ、シソ、シダー、シトラス、シトロネラ、シヌス、シベット、シマルーバ、シメジ、シャクヤク、ジャスミン、ジャノヒゲ、ジャボランジ、シュクシャ、ジュニパーベリー、ショウガ、ショウユ、ショウユカス、ジョウリュウシュ、ショウロ、シロタモギタケ、ジンセン、シンナモン、酢、スイカ、スイセン、スギ、スターアニス、スターフルーツ、スチラックス、スッポン、スッポンタケ、ズドラベッツ、スネークルート、スパイクナード、スプルース、スペアミント、スベリヒユ、スローベリー、セイボリー、セキショウ、セージ、ゼドアリー、セネガ、ゼラニウム、セロリー、センキュウ、センタウリア、センゲン、セントジョーンズウォルト、センナ、ソース、ダイオウ、ダイズ、タイム、タケノコ、タコ、タデ、ダバナ、タマゴ、タマゴタケ、タマリンド、ダミアナ、タモギタケ、タラゴン、タラノキ、タンジー、タンジェリン、タンポポ、チェリモラ、チェリーローレル、チェリーワイルド、チガヤ、チコリ、チーズ、チチタケ、チャイブ、チャービル、チャンパカ、チュベローズ、チョウセンゴミシ、チラータ、ツクシ、ツケモノ、ツタ、ツバキ、ツユクサ、ツリガネニンジン、ツルドクダミ、ディアタング、ティスル、ディタニー、ディル、デーツ、テンダイウヤク、テンマ、トウガラシ、トウキ、ドウショクブツタンパクシツ、ドウショクブツユ、トウミツ、トウモロコシ、ドクダミ、トチュウ、ドッググラス、トマト、ドラゴンブラッド、ドリアン、トリュフ、トルーバルサム、トンカ、ナギナタコウジュ、ナシ、ナスターシャム、ナッツ、ナットウ、ナツメ、ナツメグ、ナデシコ、ナメコ、ナラタケ、ニアウリ、ニュウサンキンバイヨウエキ、ニンジン、ネズミモチ、ネットル、ネムノキ、ノットグラス、バイオレット、パイナップル、ハイビスカス、麦芽、ハコベ、バジル、ハス、ハスカップ、パースカップ、パセリ、バター、バターオイル、バターミルク、バーチ、ハチミツ、パチュリー、ハッカ、バックビーン、ハッコウシュ、ハッコウニュウ、ハッコウミエキ、パッションフルーツ、ハツタケ、バッファローベリー、ハトムギ、ハナスゲ、バナナ、バニラ、ハネーサックル、パパイヤ、バーベリー、ハマゴウ、ハマスゲ、ハマナス、ハマボウフウ、ハマメリス、バラ、パルマローザ、バンレイシ、ヒキオコシ、ヒシ、ピスタチオ、ヒソップ、ヒッコリー、ピーナッツ、ヒノキ、ヒバ、ピプシシワ、ヒメハギ、ヒヤシンス、ヒラタケ、ビワ、ビンロウ、フェイジョア、フェネグリーク、フェンネル、フジバカマ、フジモドキ、フスマ、フーゼルユ、プチグレイン、ブチュ、ブドウ、ブドウサケカス、フトモモ、ブナ、ブナハリタケ、ブラックキャラウェイ、ブラックベリー、プラム、ブリオニア、プリックリーアッシュ、プリムローズ、プルネラ、ブルーベリー、ブレッドフルーツ、ヘイ、ベイ、ヘーゼルナッツ、ベチバー、ベーテル、ベニバナ、ペニーロイヤル、ペパーミント、ヘビ、ペピーノ、ペプトン、ベルガモット、ベルガモットミント、ペルーバルサム、ベルベナ、ベロニカ、ベンゾイン、ボアドローズ、ホアハウンド、ホウ、ホウキタケ、ホウショウ、ボウフウ、ホエイ、ホオノキ、ホースミント、ホースラディッシュ、ボタン、ホップ、ポピー、ポプラ、ポポー、ホホバ、ホヤ、ボルドー、ボロニア、マイタケ、マグウォルト、マシュマロー、マジョラム、マスティック、マソイ、マタタビ、マチコ、マツ、マツオウジ、マッシュルーム、マツタケ、マツブサ、マツホド、マテチャ、マメ、マリーゴールド、マルバダイオウ、マルメロ、マレイン、マロー、マンゴー、マンゴスチン、ミカン、ミシマサイコ、ミソ、ミツマタ、ミツロウ、ミート、ミモザ、ミョウガ、ミルク、ミルテ、ミルフォイル、ミルラ、ミロバラン、ムギチャ、ムスク、ムラサキ、メスキート、メドウスィート、メハジキ、メープル、メリッサ、メリロット、メロン、モウセンゴケ、モニリアバイヨウエキ、モミノキ、モモ、モロヘイヤ、ヤクチ、ヤマモモ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユッカ、ユリ、ヨウサイ、ヨロイグサ、ライオンズフート、ライチ、ライフエバーラスティングフラワー、ライム、ライラック、ラカンカ、ラカンショウ、ラズベリー、ラタニア、ラディッシュ、ラブダナム、ラベンダー、ラングウォルト、ラングモス、ランブータン、リキュール、リーク、リツェア、リナロエ、リュウガン、リョウフンソウ、リョクチャ、リンゴ、リンデン、リンドウ、ルー、ルリジサ、レセダ、レモン、レモングラス、レンギョウ、レンゲ、レンブ、ローズマリー、ロベージ、ローレル、ロンゴザ、ワサビ、ワタフジウツギ、ワームウッド、ワームシード、ワラビ、ワレモコウなどから得られる天然香料などが例示され、適宜選択して使用される。
【0045】
本発明の呈味改善剤を添加する対象飲食品は、カリウムを含有する飲食品であれば特に限定はなく、呈味性の改善を求めるすべての飲食品へ添加することができる。例えば、(1)菓子類等、(2)パン類、麺類、ご飯類等、(3)漬物類等、(4)魚介類を用いた加工飲食物等、(5)畜肉を用いた加工飲食物等、(6)調味料等、(7)その他、などが挙げられる。以下、本発明に係る飲食物を例示する。
【0046】
(1)菓子類等
菓子類としては、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類などが挙げられる。
【0047】
(2)パン類、麺類、ご飯類等
パン類、麺類、ご飯類としては、パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などが挙げられる。
【0048】
(3)漬物類等
漬物類としては、例えば、糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、及び、それらの漬物の素などが挙げられる。
【0049】
(4)魚介類を用いた加工飲食物等
魚介類としては、例えば、サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などが挙げられる。それらを用いた加工飲食物としては、例えば、缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などが挙げられる。
【0050】
(5)畜肉を用いた加工飲食物等
畜肉としては、例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などが挙げられる。それらを用いた加工飲食物としては、例えば、カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスの具、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類、肉団子、角煮、畜肉缶詰などが挙げられる。
【0051】
(6)調味料等
調味料としては、例えば、食卓塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などが挙げられる。
【0052】
(7)その他
その他、チーズ、バターなどの乳製品、野菜、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類、持ち帰り弁当の具や惣菜類、トマトジュース、スポーツ飲料などにも適用可能である。
【0053】
本発明の呈味改善剤は、特に減塩の目的で食塩の塩化カリウムによる代替率を高めたいにも関わらず、塩化カリウムのエグ味等の呈味性の点で代替率が制限されているような飲食品に好適であり、上記飲食品の中でも特に、かまぼこ、ハム、パン、塩干物、漬物、梅干、醤油、だし、魚醤、みそ、ソース、スープ、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、調味食品、スナック菓子等への使用が好ましい。
【0054】
なお、本発明の呈味改善剤を使用すると、塩化カリウムに限らず、カリウム含有飲食品、例えば、グルタミン酸カリウム、クエン酸カリウム等が含有されている飲食品であっても、それらの金属味やエグ味等の不快味を軽減し、呈味性を改善することができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の記載に限定され
るものではない。
【0056】
〔製造例1〕<生コーヒー豆由来のキナ酸含有組成物>
コーヒーの生豆500gを微粉砕した後、70質量%エタノール水溶液5000mlを加え、それを2時間加熱還流した。液を冷却後、遠心濾過器で固液分離し、濾液をエタノール含量5重量%以下まで減圧濃縮し、クロロゲン酸エステラーゼ(キッコーマン社製)1000単位を加え40℃、3時間攪拌した。遠心分離により不溶物を取り除いた後、その処理液を、合成吸着剤(前掲「ダイヤイオン HP−20」)1000mlを充填したカラムに通導し、溶出してきた液を凍結乾燥することにより、生コーヒー豆由来のキナ酸含有組成物(以下「キナ酸含有組成物(1)」と記す)26.6gを得た。
なお、クロロゲン酸エステラーゼの1単位は30℃の水中において5−カフェオイルキナ酸を1分間に1マイクロモル加水分解する酵素量である。なおこの組成物中には、キナ酸は32%含まれている。
【0057】
〔製造例2〕<紅茶葉由来のキナ酸含有組成物>
紅茶葉100gに蒸留水1000gを加え、それを30分間、常温(15〜30℃)で抽出した。抽出液を遠心濾過器で固液分離し、濾液900gを得た。その濾液に活性炭30gを加え、1時間攪拌して精製処理を行った。その後、活性炭を除去し、濃縮後、濃縮液140gを得た。濃縮液を、陽イオン交換樹脂(前掲「ダイヤイオン SK1B」)100mlを充填したカラムに供し、空間速度SV=2で送液して精製処理を行った(再精製処理1回目)。通過液を濃縮し約40gにした後、95%エタノール52.5g、活性炭2gを加え、撹拌及び冷却後、不溶物を濾過した(再精製処理2回目)。得られた濾液78gを凍結乾燥することにより、紅茶葉抽出物(以下「キナ酸含有組成物(2)」と記す)4.7gを得た。なおこの組成物中には、キナ酸は16%含まれている。
【0058】
〔製造例3〕<粗スピラントール>
オランダセンニチの花頭乾燥品10kg(約5mmに粉砕したもの)に99容量%エタノール100kgを加え75℃〜還流温度で5時間抽出した。抽出液を40℃まで冷却後、遠心分離装置により固液分離し、その抽出液を減圧下20kgまで濃縮した。濃縮液に活性炭0.2kg加え1時間攪拌後、珪藻土を加え加圧ろ過し活性炭を除去し、さらに減圧下で濃縮し0.43kgのオランダセンニチ濃縮物を得た。この濃縮物に蒸留水2kgを加え、酢酸エチル2kgで3回抽出した。抽出した酢酸エチル層をまとめ珪藻土を加え加圧ろ過後、減圧で濃縮することにより0.31kgのオランダセンニチ粗抽出物を得た。収率3.1%。スピラントール含量12.4%。上記オランダセンニチ粗抽出物100gを脂肪酸トリグリセライド100gと混合し、減圧薄膜蒸留装置を使用し、真空度:3〜5Pa、蒸発面温度:110〜150℃で蒸留し、留出液33.3gを得た。収率33%。スピラントール含量:38.0質量%。
【0059】
〔製造例4〕<精製スピラントール>
オランダセンニチの花頭乾燥品300gを95容量%エタノール3200gで1時間還流抽出した。抽出液を冷却し固液分離した後、珪藻土を加えろ過した。濾液を減圧濃縮によりエタノールを留去後、水300gを加え、ヘキサン300mlで3回抽出した。抽出したヘキサン層を合わせ減圧濃縮によりヘキサンを留去し粗抽出物8.4gを得た。収率2.8%(スピラントール含量9.5%)。粗抽出物8.4gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g、Φ5cm)により分画(n−ヘキサン:酢酸エチル=8:2で溶出)し、スピラントール画分(Rf値=0.2〜0.3 n−ヘキサン:酢酸エチル=7:3)を分取し、溶媒を減圧下留去することにより、2.76gの粗スピラントール画分1を得た。続いてその粗スピラントール画分1を減圧下(0.1mmHg)でクーゲルロー蒸留装置を用いて単蒸留精製(180℃)し、0.98gの粗スピラントール画分2を得た。収率0.33%(スピラントール含量41.9%)。さらにその粗スピラントール画分2 0.98gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g、Φ5cm)により分画(n−ヘキサン:酢酸エチル=95:5〜90:10で溶出)し、スピラントール画分(Rf値=0.2 n−ヘキサン:酢酸エチル=7:3)を分取し、溶媒を減圧下留去することにより、精製スピラントール0.52gを得た。収率0.17%。スピラントール含量98質量%。スピラントールの構造はプロトン及びカーボン13NMRを測定し既知の文献データと比較することにより確認した。
【0060】
〔製造例5〕<シャロット抽出物>
特開2002−186448号公報に記載の方法により、シャロットを−12℃で76%(v/v)エタノール水溶液を用いて抽出し、抽出液から溶媒を除去したシャロットエキス(固形物含量24%)を得た。
【0061】
製造例1〜5により得られた呈味改善剤を用いて、カリウム塩又はカリウム塩含有飲食品に対する呈味改善効果を調べた。なお、以下の試験例において官能評価の採点基準は表1に記載したものを用いた。
【0062】
〔表1〕評価の基準
+++:非常に効果あり(対照と比較し、習熟パネル8名以上/10名が効果を認識)
++ :効果あり (対照と比較し、習熟パネル5名以上/10名が効果を認識)
+ :やや効果あり (対照と比較し、習熟パネル3名以上/10名が効果を認識)
− :効果/変化なし(対照と比較し、習熟パネル3名未満/10名が効果を認識)
【0063】
[試験例1]塩化カリウム組成物(1)
塩化カリウム40kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、製造例1のキナ酸含有組成物を最終粉末中でのキナ酸含量が4%となるように加えてキナ酸含有組成物を含む塩化カリウム水溶液を調製した。その水溶液を、入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥してキナ酸を4%含有する塩化カリウム粉末38kgを得た(本発明品1)。この粉末を塩化カリウム濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウム1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品1は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。
【0064】
[試験例2]塩化カリウム組成物(2)
製造例3の粗スピラントール10g、加工澱粉20g、デキストリン70gを150gの水に加えて乳化し、これを噴霧乾燥してスピラントール粉末を得た。この粉末0.5gを塩化カリウム100gに添加し、均一に混合して塩化カリウム混合粉末を得た(本発明品2)。その粉末を塩化カリウム濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウム1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品2は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。また発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0065】
[試験例3]食塩組成物(1)
塩化カリウム20kg、自然塩20kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、製造例2のキナ酸含有組成物を最終粉末中のキナ酸含量が4%になるように加えて、キナ酸含有組成物を含む塩化カリウムと食塩の混合水溶液を調製した。その水溶液を入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して塩化カリウムと食塩の混合粉末38kgを得た(本発明品3)。その粉末を塩化カリウムと食塩の合計の濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウムと食塩混合物の1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品3は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。
【0066】
[試験例4]食塩組成物(2)
塩化カリウム20kg、自然塩20kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、製造例2のキナ酸含有組成物を最終粉末中のキナ酸含量が4%、製造例4の精製スピラントールを最終粉末中のスピラントール含量が2%、製造例5のシャロット抽出物を最終粉末中の抽出物固形分が4%になるように加えて、キナ酸含有組成物、精製スピラントール及びシャロット抽出部を含む塩化カリウムと食塩の混合水溶液を調製した。その水溶液を入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して塩化カリウムと食塩の混合粉末38kgを得た(本発明品4)。その粉末を塩化カリウムと食塩の合計の濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウムと食塩混合物の1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品4は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。
【0067】
[試験例5]塩化カリウム水溶液
0.75質量%の塩化カリウム水溶液に、製造例1〜5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例1、2)、スピラントール(製造例3、4)、抽出物固形分(製造例5)の塩化カリウム水溶液中の含量がそれぞれ表2に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2から明らかなように、塩化カリウム水溶液に各呈味改善剤を添加することにより呈味改善効果がみられた。また複数の呈味改善剤を併用することで、改善効果は更に高まった。
【0070】
[試験例6]うどんつゆ
処方1の減塩うどんつゆに、製造例2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のうどんつゆ中の含量がそれぞれ表3に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0071】
(処方1)
品名 配合量(g)
水 914.0
食塩 1.0
塩化カリウム 1.0
砂糖 2.0
みりん 20.0
うすくち醤油 60.0
カツオブシ香料(小川香料社製) 1.0
MSG 1.0
合計 1000.0

【0072】
【表3】

【0073】
表3から明らかなように、減塩うどんつゆに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物及びスピラントールを添加すると塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられ、また塩味増強効果もみられた。この効果はシャロット抽出物をさらに併用すると一層高まった。一方、うどんつゆ本来の風味である鰹節風味には悪影響を及ぼすことは見られなかった。また本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0074】
[試験例7]浅漬けの素(希釈品)
市販品の減塩浅漬けの素(希釈品)に、製造例2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)の浅漬けの素中の含量がそれぞれ表4に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
表4から明らかなように、減塩浅漬けの素に本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物及びスピラントールを添加すると塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられ、特にシャロット抽出物の併用により浅漬けの素本来の呈味である塩味、旨味などの増強効果もみられた。
【0077】
[試験例8]青ジソドレッシング
処方2の減塩青ジソドレッシングに、製造例2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のドレッシング中の含量がそれぞれ表5に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表5に示す。
【0078】
(処方2)
品名 配合量(g)
食酢 200.0
果糖ぶどう糖液糖 150.0
醤油 60.0
塩化カリウム 8.0
酒 20.0
シソ香料(小川香料社製) 1.0
水 〜
合計 1000.0

【0079】
【表5】

【0080】
表5から明らかなように、減塩青ジソドレッシングに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられた。一方、青ジソドレッシング本来の風味であるシソ風味には悪影響を及ぼすことは見られなかった。また発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0081】
[試験例9]イタリアンドレッシング
市販品の減塩イタリアンドレッシングに、製造例1、2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例1、2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のドレッシング中の含量がそれぞれ表6に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表6に示す。
【0082】
【表6】

【0083】
表6から明らかなように、減塩イタリアンドレッシングに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有のエグ味の呈味改善効果がみられた。一方、イタリアンドレッシング特有の酸味には悪影響を及ぼすことは見られなかった。
【0084】
[試験例10]コンソメスープ
処方3の減塩コンソメスープに、製造例2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のスープ中の含量がそれぞれ表7に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表7に示す。
【0085】
(処方3)
品名 配合量(g)
マルトース 1.000
コンソメ オイル 0.250
食塩 3.500
塩化カリウム 3.500
MSG 0.250
粉糖 1.250
乳糖 0.300
セロリ末 0.125
ペッパー末 0.075
チキンパウダー(小川香料社製) 3.750
オニオンエキスパウダー(小川香料社製) 2.500
水 〜
合計 1000.000

【0086】
【表7】

【0087】
表7から明らかなように、減塩コンソメスープに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有抽出物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられた。また、塩味、チキン風味の増強効果が一部みられた。一方、コンソメスープ本来の風味であるチキン風味には悪影響を及ぼすことは見られなかった。
【0088】
[試験例11]ラーメンスープ
処方4の減塩ラーメンスープに、製造例2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のスープ中の含量がそれぞれ表8に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表8に示す。
【0089】
(処方4)
品名 配合量(g)
粉末醤油 10.0
食塩 12.0
塩化カリウム 12.0
砂糖 8.0
調味料(アミノ酸等) 5.7
デキストリン 32.2
チキンエキスパウダー(小川香料社製) 8.0
ポークエキスパウダー(小川香料社製) 2.0
蛋白加水分解物 3.0
香辛料抽出物 3.1
ホタテエキスパウダー 3.0
合計 99.0

上記粉末20gをお湯500gに溶解する。

【0090】
【表8】



【0091】
表8から明らかなように、減塩ラーメンスープに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられた他、一部で塩味とチキン風味の増強がみられた。一方、ラーメンスープ本来の風味であるチキン風味には悪影響を及ぼすことはほとんど見られなかった。また本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0092】
[試験例12]豚汁
処方5の減塩豚汁に、製造例1、2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例1、2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)の豚汁中の含量がそれぞれ表9に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表9に示す。
【0093】
(処方5)
品名 配合量(g)
水 450.0
味噌 65.0
塩化カリウム 10.0
豚肉 150.0
豆腐 120.0
大根 105.0
ごぼう 75.0
人参 60.0
里いも 75.0
長葱 30.0
カツオブシエキス(小川香料社製) 4.0
コンブエキス(小川香料社製) 1.0
合計 1145.0

【0094】
【表9】

【0095】
表9から明らかなように、減塩豚汁に本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有のエグ味の呈味改善効果がみられた。また、塩味及び豚汁特有の旨味に関しても増強効果がみられた。
【0096】
[試験例13]ミネストローネ
処方6の減塩ミネストローネに、製造例1〜5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例1、2)、スピラントール(製造例3、4)、抽出物固形分(製造例5)のミネストローネ中の含量がそれぞれ表10に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表10に示す。
【0097】
(処方6)
品名 配合量(g)
トマトペースト 3.50
食塩 0.30
塩化カリウム 0.70
果糖ブドウ糖液 0.90
コーン油 0.84
ビーフエキス(小川香料社製) 0.80
MSG 0.40
チキンコンソメ 0.30
キサンタンガム 0.20
パプリカ色素 0.06
ホワイトペッパーパウダー 0.01
トマトシーズニングパウダー(小川香料社製) 0.20
オニオンソテー(小川香料社製) 0.10
ピザスパイスオイル(小川香料社製) 0.02
ベーコンシーズニングパウダー(小川香料社製) 0.05
水 〜
合計 100.00

【0098】
【表10】

【0099】
表10から明らかなように、減塩ミネストローネに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられた。また、ミネストローネ特有のトマト風味及び酸味に関しては増強効果が一部でみられた。一方、本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0100】
[試験例13]クリームシチュー
処方7の減塩クリームシチューに、製造例1、2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例1、2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のシチュー中の含量がそれぞれ表11に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表11に示す。
【0101】
(処方7)
品名 配合量(g)
無塩バター 25.0
パーム脂 25.0
小麦粉 50.0
牛乳 500.0
水 〜
ホワイトペッパーパウダー 0.3
チキンコンソメ 2.4
食塩 2.0
塩化カリウム 4.0
合計 1200.0

【0102】
【表11】

【0103】
表11から明らかなように、減塩クリームシチューに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有抽出物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられた。また、クリームシチュー特有のミルク風味や甘味に関しては増強効果が一部でみられた。
【0104】
[試験例14]ミートソース
処方8の減塩ミートソースに、製造例1、2、4、5の呈味改善剤を、キナ酸(製造例1、2)、スピラントール(製造例4)、抽出物固形分(製造例5)のミートソース中の含量がそれぞれ表12に記載した値となるよう添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表1の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表12に示す。
【0105】
(処方8)
品名 配合量(g)
食用油脂 20.0
玉ねぎみじん切り 200.0
人参ペースト 20.0
にんにくすりおろし 2.0
合挽き肉 60.0
トマトペースト 70.0
食塩 2.0
塩化カリウム 3.0
上白糖 15.0
MSG 2.0
ブラックペッパー 0.3
ナツメグパウダー 0.2
ローレルパウダー 0.1
トマトケチャップ 12.0
小麦粉 30.0
赤ワイン 20.0
水 〜
合計 750.0

【0106】
【表12】

【0107】
表12から明らかなように、減塩ミートソースに本発明の呈味改善剤であるキナ酸含有抽出物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられた。また、ミートソース特有のトマト風味に関しては増強効果がみられた。さらに、シャロット抽出物を併用するとミート風味にも増強効果がみられた。一方、本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の呈味改善剤は飲食品本来の香味に影響をあたえることなくカリウム塩特有の金属味、エグ味等の不快味を改善し、塩味を増強することができるので、減塩食品等への使用が従来よりも容易になり、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤。
【請求項2】
キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油、アリウム属植物抽出物からなる群から選択される2種以上を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤。
【請求項3】
キナ酸を含有する組成物が、茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
キナ酸を含有する組成物が、コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られるキナ酸誘導体を含むコーヒー豆加水分解物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項5】
スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物又は植物精油が、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチ由来の抽出物又は精油であることを特徴とする請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項6】
アリウム属植物抽出物が、シャロット及び/又はオニオンの抽出物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項7】
アリウム属植物抽出物が、アリウム属植物から−20〜0℃でアルコール水溶液にて抽出されたものであることを特徴とする請求項1、2又は6のいずれかの項に記載の呈味改善剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
【請求項10】
カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品である請求項9記載のカリウム塩含有飲食品。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかの項に記載の呈味改善剤を添加することを特徴とするカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
【請求項12】
カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項11記載のカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品用香味料組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の香味料組成物を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
【請求項15】
カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項14記載のカリウム塩含有飲食品。
【請求項16】
カリウム塩と請求項1〜7のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とする食塩組成物。
【請求項17】
請求項16記載の食塩組成物を含有する飲食品。
【請求項18】
飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項17記載の飲食品。
【請求項19】
請求項16記載の食塩組成物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の減塩方法。

【公開番号】特開2010−4767(P2010−4767A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165339(P2008−165339)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】