説明

カルベン誘導体を用いたポリ乳酸の製造方法

本発明は、カルベン誘導体の触媒作用によるポリ乳酸の製造方法である。カルベン誘導体は式(I)に示されるカルベン二酸化炭素化合物である。その式中、点線は任意に選択される二重結合を表す。X1はS又はNから選択される。X2はC又はNから選択される。R1、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、ハロゲン原子、アダマンタン、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。R3、R4は、水素、ハロゲン原子、シアン基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。又は、R3とR4とは3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキル又はシクロアルケニルを形成する。又は、R3とR4とはベンゼン環を形成する。又は、R2とR3とは無置換の五員又は六員N-複素環を形成する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子材料分野に属し、具体的には、カルベン誘導体、即ちカルベン二酸化炭素化合物を用いた触媒作用によるポリ乳酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、ポリラクチドとも言い、資源の再生が可能である農作物由来の全生分解性の環境に優しい材料として、既に全世界の人々に広く注目され研究されている。
【0003】
最近、ポリ乳酸の製造方法が多く研究され、その中で、ラクチドで開環重合を行うことが多く研究された一つの方法である。ラクチドの開環重合のための触媒については以前、金属を含む触媒を用いて、ラクチドに開環重合を行い、ポリラクチドを製造した。例えば、CN1814644、CN1814645及びUS5235031、US5357034、US4045418、US4057537、US3736646である。但し、このような方法は反応時間が長く、且つ作られたポリラクチドは金属残留物を除去し難いので、生物医薬やマイクロ電子などの分野に応用できない。その後にConnorら(Fredrik Nederbengら、Angewandte Chemie International Edition,2001,40,2712-2715)は有機触媒のみで開環重合を行い、且つ第3級アミンを触媒として試みた。その後、有機リン、二元機能アミンチオ尿素、グアニジン系、アミジン系及びN-複素環式カルベン系の触媒が現れ、そのうち、N-複素環式カルベン系触媒は、研究において最も飛躍的な有機触媒になった。
【0004】
N-複素環式カルベン系触媒の活性中間体は相応なN-複素環式カルベンであり、それらは非常に強い求核活性を有し、開環重合を触媒する時、ラクチド単体に攻撃し、開環となり、開始剤の存在で重合反応を開始させ、ポリ乳酸が得られる。但し、N-複素環式カルベンは非常に活性であり、空気や水に対して非常に敏感であり、空気中での寿命はたった数秒のみで、直接それを用いて触媒重合を行うのは操作し難い。それゆえ、N-複素環式カルベン前駆体又はN-複素環式カルベン化合物を用いて活性化をしてから触媒重合を行うことが提案された。
【0005】
例えば、Connorら(Eric F.Connorら.Journal of the American Chemical Society,2002,124,914-915;Gregory W.Nyceら.Journal of the American Chemical Society,2003,125,3046-3056)はN-複素環式カルベン前駆体のイミダゾリウム塩を触媒として、まず、強塩基ブチルアルコールカリウムの作用で、相応なN-複素環式カルベンを生成し、そして、ラクチド単体を加え、同一系中で直接に触媒重合を行い、ポリ乳酸が得られる。この方法の欠点は、N-複素環式カルベンが不安定で、分離し難いので、N-複素環式カルベンの生成及びラクチドの開環重合は同一系中で行い、この系中の強塩基がN-複素環式カルベンの生成を促進すると共に、環状化合物の開環を招き、又は重合体の分解を生じる。従って、重合過程が複雑となり、且つ制御し難くなり、残留の塩基や塩は重合体及びその材料の性能と外観に悪い影響を及ぼす。
【0006】
上述の欠点を克服するため、安定なN-複素環式カルベンを製造した。例えば、N-複素環式カルベンと小分子H-CCl3、H-C6F5、H-ORなどとを生成した化合物をラクチド開環重合の触媒とする。重合条件を制御することによって、H-CCl3、H-C6F5、H-ORなどの小分子物質を除去し、N-複素環式カルベンを遊離させ、触媒重合反応を行う(Gregory W.Nyceら.Chemistry-A European Jourmal,2004,10,4073-4079;Szilard Csihonyら.Journal of the American Chemical Society,2005,127,9079-9084)。但し、除去された小分子物質は反応系に残留し、重合反応の妨げになる一方、重合系及び生成物ポリ乳酸中に不純物を引き込み、且つ前記重合反応は希溶液の中で限定して行われるので、その大規模化の応用も制限される。
【0007】
上記方法での欠点を克服するため、構造が安定で、使い易く、重合過程をうまく制御でき、且つ安全で無残留である触媒を導入する必要がある。カルベン二酸化炭素化合物の合成は近年関連報告があった (J.D.Holbreyら,Chemical Communications,2003,28-29;H.A.Duongら,Chemical Communications,2004,112-113)。Voutchkova(A.M.Voutchkovaなど,Journal of the American Chemical Society 2005,127,17624-17625)は二置換カルベン二酸化炭素化合物をカルベンの転移試薬としてカルベンの金属複合物を製造する方法、即ち、カルベン二酸化炭素化合物が空気や水に対して安定で、また、CO2を脱出してカルベンを形成することができるという特徴を利用して、カルベンと金属ロジウム、ルテニウム及び鉛の複合物を製造した。その後、Tudoseらは上記の方法で作られたカルベン金属複合物を用いて触媒されるSuzuki-Miyauraカップリング反応、オレフィン複分解反応及びシクロプロパン化反応を行った(A.Tudoseら,Tetrahedron Letters,2006,47,8529-8533;A.Tudose達,Journal of Organometallic Chemistry,2006,691,5356-5365)。但し、最近でも未だ、カルベン二酸化炭素化合物を触媒とする関連報告は出ていない。カルベン二酸化炭素化合物をN-複素環式カルベンの転移試薬としてカルベン金属配合物を製造することのみに留まり、カルベン二酸化炭素化合物をラクチド開環重合の触媒とする報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CN1814644
【特許文献2】CN1814645
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術課題は新型のカルベン化合物を用いた触媒作用によるポリ乳酸の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の技術課題を解決するため、本発明の構想は以下の通りである。
(1)新型のカルベン誘導体、即ちカルベン二酸化炭素化合物は、N-複素環上の置換基が異なることにより、2配位の脱カルボキシル化(脱CO2)の温度が異なり、重合系原位置生成カルベンの温度によってカルベン誘導体の構造を設計し、脱カルボキシル化の温度を制御し、さらに温度制御により重合過程を制御する。
(2)カルベン二酸化炭素化合物は、重合条件下で加熱して脱カルボキシル化を行い、相応なN-複素環式カルベンを形成し、且つCO2は系から放出され、カルベンの他に、系には他の化合物は残留しない。
(3)アルコール系開始剤の存在で、N-複素環式カルベンはラクチドの開環重合を触媒することによって、ポリ乳酸が得られる。
【0011】
本発明は、研究によって以下のことが発見された。カルベン二酸化炭素化合物の複素環上の置換基の異なりにより2配位の脱カルボキシル化の温度に影響を及ぼす。ラクチドの開環重合反応は、重合生成物の性状要求及び重合反応装置のプロセス条件により適当な温度及び温度変化範囲を確定する必要があり、重合反応は一定の温度範囲内で有効に行うことを保証し、即ち、すべてのカルベン二酸化炭素化合物の脱カルボキシル化の温度はラクチドの開環重合反応を行うことに適用するのではない。カルベン二酸化炭素化合物は開環重合反応温度範囲内で順調に脱カルボキシル化を行い、活性触媒を形成し、触媒反応を行うことを保証するため、本発明は、異なる構造の置換基を含有するカルベン二酸化炭素化合物に対して熱重量分析測定を行い、各種構造のカルベン二酸化炭素化合物の脱カルボキシル化の温度及び脱カルボキシル化の速度を把握し、適当な触媒を一組選別し、カルベン二酸化炭素化合物の脱カルボキシル化の温度をラクチドの開環重合反応温度に合理的に適合させ、適当な反応温度で開環重合反応を有効に触媒する。従って、反応温度を制御することによって、カルベン二酸化炭素化合物で触媒されるラクチドの制御可能な開環重合を実現した。
【0012】
ポリ乳酸の末端構造と分子量の制御可能な分布では、例えば、狭い分子量分布は開始剤として開環重合反応に活発な水素を含有する化合物(R-O-H)を加えて解決でき、その開始されたポリ乳酸の末端構造はそれぞれR-O-と-OHである。ラクチド単体と開始剤との割合は得られるポリ乳酸の目標分子量を決定する。開始剤を有する条件下で、N-複素環式カルベンで触媒されるラクチド開環重合はリビング重合であり、得られたポリ乳酸は狭い分子量分布を達成できる。
【0013】
本発明の技術方案は以下の通りである。
【0014】
ポリカルベン二酸化炭素化合物を用いた触媒作用によるポリ乳酸の製造方法であって、前記カルベン二酸化炭素化合物の構造は式(I)に示される。
【化1】

【0015】
その式中、点線は任意に選択される二重結合を表す。X1はS又はNから選択される。X2はC又はNから選択される。R1、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、ハロゲン原子、アダマンタン、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。R3、R4は、水素、ハロゲン原子、シアン基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。又は、R3とR4とは3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキル又はシクロアルケニルを形成する。又は、R3とR4とはベンゼン環を形成する。又は、R2とR3とは連結され、無置換の五員又は六員N-複素環を形成する。
【0016】
式(I)に示すカルベン二酸化炭素化合物の具体的な構造は、式(II)、式(III)、式(IV)又は(V)で表示できる。
【化2】

【0017】
式(II)では、R1、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、ハロゲン原子、アダマンタン、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。R3、R4は、水素、ハロゲン原子、シアン基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。又は、R3とR4とは3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルケニルを形成する。又は、R3とR4とはベンゼン環を形成する。
【0018】
式(III)では、R1、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、ハロゲン原子、アダマンタン、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。R3、R4は、水素、ハロゲン原子、シアン基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。又は、R3とR4とは3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキルを形成する。
【0019】
式(IV)では、R1は、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、ハロゲン原子、アダマンタン、フェニル基、及び置換フェニル基中の一種から選択される。R3、R4は、水素、ハロゲン原子、シアン基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。又は、R3とR4とは3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルケニルを形成し、又は、R3とR4とはベンゼン環を形成する。
【0020】
式(V)では、R1、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、1〜10個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、ハロゲン原子、アダマンタン、フェニル基、及び置換フェニル基中の同一であるか又は異なる基から選択される。R3は、水素、ハロゲン原子、シアン基、ヒドロキシル基、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、1〜4個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、フェニル基、及び置換フェニル基中の一種から選択される。又は、R2とR3とは連結され、無置換の五員又は六員N-複素環を形成する。
【0021】
前記置換フェニル基は、一置換、二置換又は三置換であり、置換基は同一であるか又は異なっていてもよく、置換基は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、1〜5個の炭素原子を有し、且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基中の一種又は多種に置換されたアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基及びシアン基から選択される。
【0022】
前記ポリ乳酸の製造方法は、溶液重合方法を用いてもよく、具体的には、カルベン二酸化炭素化合物、開始剤及びラクチド単体をモル比1:0.2〜5:2〜10000で有機溶剤に混合させることを含み、好ましくは1:0.5〜3:100〜500、特に好ましくは1:0.5〜2:100〜300である。反応温度は-50℃〜250℃であり、好ましくは50℃〜180℃であり、特に好ましくは60℃〜150℃である。反応時間は3秒〜120時間であり、好ましくは0.2〜24時間であり、特に好ましくは0.2〜15時間である。
【0023】
前記ポリ乳酸の製造方法は、バルク重合方法を用いてもよく、具体的には、カルベン二酸化炭素化合物、開始剤及びラクチドをモル比1:0.2〜5:2〜10000で混合させることを含み、好ましくは1:0.5〜3:100〜500、特に好ましくは1:0.5〜2:100〜300である。反応温度は-50℃〜250℃であり、好ましくは50℃〜180℃であり、特に好ましくは60℃〜150℃である。反応時間は3秒〜120時間であり、好ましくは0.2〜24時間であり、特に好ましくは0.2〜15時間である。
【0024】
溶液重合法及びバルク重合法では、前記開始剤はアルコール系化合物であってもよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第3級ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、エチレングリコール、グリコール又はペンタエリトリトールであり、好ましくは、ブタノール、ベンジルアルコール及びフェニルエタノールである。前記ラクチド単体が左旋ラクチド、右旋ラクチド、メソラクチド又はラセミラクチド、若しくは左旋ラクチドと右旋ラクチドとの間の任意割合での混合物である。それらの反応を停止するステップは、弱酸(例えば、ギ酸、エタン酸、希塩酸など)、酸素、水、CS2又はCO2を加え、好ましくは、ギ酸、エタン酸、水又はCS2を加えるものである。
【0025】
溶液重合法では、使用する有機溶剤は、シクロヘキサン、ヘキサン、エーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルベンゼン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシドであってもよく、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルベンゼン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルムであり、特に好ましくはテトラヒドロフラン、メチルベンゼンである。ラクチドの初期反応濃度は0.01mol/L〜10mol/Lであり、好ましくは0.5mol/L〜5mol/Lであり、特に好ましくは0.5mol/L〜3mol/Lである。反応は不活性ガスの中で行ってもよく、前記不活性ガスでは好ましくは、アルゴンガス又は窒素ガスである。反応生成物では好ましくは溶剤に沈殿して、例えば、メタノール、エタノール又は水の中で精製する。
【0026】
バルク重合では、反応は不活性ガスの中又は真空の中で行ってもよい。前記不活性ガスでは好ましくは、アルゴンガス又は窒素ガスである。前記真空は、反応器中の圧力が4〜20mmHgである。反応生成物では好ましくは良溶剤で溶解した後、溶剤に沈殿して、例えば、メタノール、エタノール又は水の中で精製する。前記良溶剤は、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロホルム、メチルベンゼン、ベンゼン、アセトン又はテトラヒドロフランであり、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフランである。
【0027】
本発明は、前記カルベン二酸化炭素化合物がポリ乳酸を製造するための触媒を製造することにおける用途を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のカルベン誘導体を用いた触媒作用によるポリ乳酸の製造方法では、触媒としてカルベン二酸化炭素化合物を用いて、異なる置換基を含有するカルベン二酸化化合物の脱カルボキシル化の温度が異なり、且つ異なる温度での脱カルボキシル化の速度が異なるので、開環重合によるポリ乳酸を製造する触媒として脱カルボキシル化の温度に適合するカルベン二酸化炭素化合物を選別でき、さらに脱カルボキシル化の温度を制御することによってラクチドの開環重合を制御することができる。CO2が脱出(脱離)した後に放出され、重合系に何らかの汚染物を持ち込まず、高効率で環境に優しいポリ乳酸の製造方法である。カルベン二酸化炭素化合物の構造は安定で、通常通りに保存でき、長期でも性質は変わらず、使い易く、厳しい実験条件下での作業は必要ない。また、溶液重合とバルク重合系の中で強い触媒活性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩の熱重量分析スペクトルである。
【図2】触媒として1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩を用いて作られたポリ乳酸の1H-NMRスペクトルである。
【図3】触媒として1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩を用いて作られたポリ乳酸のサイズ排除クロマトグラフィーにおけるスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0031】
以下の実施例によって本発明についてさらに説明できる。実施例は説明するためのものであるが、本発明を限定するものではない。本分野の全ての一般の技術者はこれらの実施例を理解でき、如何なる方式を用いても本発明を制限せず、本発明の主旨及び本発明の範囲を逸出しないように本発明に対して適当な改変及びデータ変換をしてもよい。以下の実施例に係るカルベン二酸化炭素化合物の構造を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明では提示されたカルベン二酸化炭素化合物の脱カルボキシル化の温度範囲は熱重量分析により得られ、設備及び測定条件は以下の通りである。熱重量/示差熱分析計(NETZSCHSTA449C)では、N2の保護下で、昇温速度は5℃/minであり、昇温範囲は50〜350℃である。1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩を例として、そのTG/DTGのスペクトルを図1に示す。
【0034】
実施例における反応変換率は1H-NMRにより測定される。測定装置及び測定条件は以下の通りである。核磁気共鳴分光学計(Bruker DRX500)では、d-CHCl3、d-DMSO又はd-CH3COCH3を溶剤とする。ポリ乳酸の数平均分子量及び分散度はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定される。実験条件は温度が25℃で、溶剤はTHF(HPLC)で、流速は1mL/minで、HPLCポンプはWaters515で、検出器はRI(Wyatt Optilab rEX)で、クロマトグラフィーカラムはHR3、HR4及びHR5 Styragelクロマトグラフィーカラムの三つ直列で、標本はポリスチレン(PS)で、Mw=900〜1.74×106g/molで、PDI<1.1である。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩(A)(29mg、75μmol)、ベンジルアルコール(5.4mg、50μmol)、L-ラクチド(1.44g、10mmol)を10mLのキシレンに溶解させ、N2の保護下で140℃に加熱し、30分間反応させる。ギ酸を加えて反応を停止させ、反応溶液をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.20gが得られた。変換率は86%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは18460で、分散度PDIは1.05である。作られたポリ乳酸の1H-NMRスペクトル及びSECスペクトルを図2及び図3に示す。
【0036】
[実施例2]
1,3-ジ(o-メチルフェニル)イミダゾリン-2-カルボン酸塩(J)(73.54mg、250μmol)、ベンジルアルコール(5.4mg、50μmol)、L-ラクチド(0.72g、12.5mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で130℃に加熱し、1時間溶融して反応させる。水を加えて反応を停止させ、反応生成物をクロロホルムで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体0.67gが得られた。変換率は95%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは32780で、分散度PDIは1.16である。
【0037】
[実施例3]
1-ブチル-3-メチルイミダゾール-2-カルボン酸塩(O)(18.21mg、100μmol)、ブタノール(7.41mg、100μmol)、D-ラクチド(5.76g、40mmol)を反応瓶に加え、真空にして、反応器内の圧力は7mmHgであり、50℃で60時間反応させる。希塩酸を加えて反応を停止させ、反応生成物をジクロロメタンで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体2.30gが得られた。変換率は54%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは24850で、分散度PDIは1.19である。
【0038】
[実施例4]
1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリン-2-カルボン酸塩(D)(32.6g、75mmol)、メタノール(1.6g、50mmol)、L-ラクチド(21.6g、150mmol)を反応瓶に加え、500mLのテトラヒドロフランで溶解させ、Arの保護下で40℃に加熱し、48時間撹拌して反応させる。安息香酸を加えて反応を停止させ、反応生成物を濃縮した後にメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体13.58gが得られた。変換率は63%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは432で、分散度PDIは1.00である。
【0039】
[実施例5]
1-フェニル-3-メチルイミダゾール-2-カルボン酸塩(Q)(16.2mg、75μmol)、ベンジルアルコール(10.8mg、100μmol)、D-ラクチド(2.88g、20mmol)を反応瓶に加え、真空にして、反応器内の圧力は7mmHgであり、0℃で5日間反応させる。水を加えて反応を停止させ、反応生成物をトルエンで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.3gが得られた。変換率は49%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは18750で、分散度PDIは1.08である。
【0040】
[実施例6]
1,3-ジメチルイミダゾール-2-カルボン酸塩(N)(14.01mg、75μmol)、エチレングリコール(1.86mg、30μmol)、D,L-ラクチド(2.16g、15mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で96℃に加熱し、2時間溶融して反応させる。CS2を加えて反応を停止させ、反応生成物をクロロホルムで溶解させ、さらにメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体2.10gが得られた。変換率は99%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは34900で、分散度PDIは1.28である。
【0041】
[実施例7]
1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリン-2-カルボン酸塩(E)(32.6mg、75μmol)、フェニルエタノール(9.16mg、75μmol)、D-ラクチド(1.44g、10mmol)を反応瓶に加え、真空にして、反応器内の圧力は4mmHgであり、130℃で1時間反応させる。酸素を通して反応を停止させ、反応生成物をクロロホルムで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.2gが得られた。変換率は97%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは18600で、分散度PDIは1.35である。
【0042】
[実施例8]
1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩(B)(32.6mg、75μmol)、イソプロパノール(9.01mg、150μmol)、D-ラクチド(1.44g、10mmol)を5mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、Arの保護下で96℃に加熱し、12時間溶融して反応させる。水を加えて反応を停止させ、反応溶液をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.32gが得られた。変換率は92%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは8580で、分散度PDIは1.11である。
【0043】
[実施例9]
1-ブチル-3-メチルベンズイミダゾール-2-カルボン酸塩(M)(17.41mg、75μmol)、エタノール(1.73mg、37.5μmol)、D-ラクチド(8.64g、60mmol)を100mLのテトラヒドロフランに溶解させ、Arの保護下で50℃に加熱し、30時間反応させる。希塩酸を加えて反応を停止させ、反応生成物を濃縮した後にメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体6.20gが得られた。変換率は76%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは188750で、分散度PDIは1.38である。
【0044】
[実施例10]
1,3-ジブチルイミダゾール-2-カルボン酸塩(I)(16.81mg、75μmol)、ベンジルアルコール(10.8mg、100μmol)、D-ラクチド(1.44g、10mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で120℃に加熱し、2時間溶融して反応させる。CS2を加えて反応を停止させ、反応生成物をクロロホルムで溶解させ、さらにメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.15gが得られた。変換率は97%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは14210で、分散度PDIは1.32である。
【0045】
[実施例11]
1,3-ジ(o-メチルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩(G)(21.9mg、75μmol)、フェニルエタノール(12.21mg、100μmol)、L-ラクチド(1.44g、10mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で250℃に加熱し、20分間溶融して反応させる。希塩酸を加えて反応を停止させ、反応生成物をクロロホルムで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.1gが得られた。変換率は89%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは11960で、分散度PDIは1.48である。
【0046】
[実施例12]
1,3-ジシクロヘキシルイミダゾール-2-カルボン酸塩(C)(27.62mg、100μmol)、第3級ブタノール(14.81mg、200μmol)、D,L-ラクチド(7.2g、50mmol)を50mLのトルエンに溶解させ、Arの保護下で100℃に加熱し、30分間反応させる。エタン酸を加えて反応を停止させ、反応溶液をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体6.02gが得られた。変換率は85%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは26320で、分散度PDIは1.06である。
【0047】
[実施例13]
1,3-ジ-t-ブチルイミダゾール-2-カルボン酸塩(P)(6.72mg、30μmol)、ベンジルアルコール(16.21mg、150μmol)、D,L-ラクチド(3.46g、24mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で200℃に加熱し、3秒溶融して反応させる。酸素を通して反応を停止させ、冷却した後に反応生成物をトルエンで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体2.5gが得られた。変換率は76%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは18850で、分散度PDIは1.08である。
【0048】
[実施例14]
1,3-ビス(p-メチルフェニル)イミダゾール-2-カルボン酸塩(H)(29.21mg、100μmol)、プロパノール(3.00mg、50μmol)、D-ラクチド(43.2g、0.3mol)を1000mLのジメチルスルホキシドに溶解させ、Arの保護下で80℃に加熱し、30分間反応させる。CO2を通して反応を停止させ、反応溶液をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体39.2gが得られた。変換率は94%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは820で、分散度PDIは1.00である。
【0049】
[実施例15]
1-エチル-3-メチルイミダゾール-2-カルボン酸塩(F)(15.4mg、100μmol)、プロパノール(3.00mg、50μmol)、D-ラクチド(1.44g、10mmol)を1mLのジメチルスルホキシドに溶解させ、Arの保護下で20℃に加熱し、24時間反応させる。CO2を通して反応を停止させ、反応溶液をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体0.26gが得られた。変換率は18%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは8750で、分散度PDIは1.08である。
【0050】
[実施例16]
1,3-ビス(p-メチルフェニル)イミダゾリン-2-カルボン酸塩(K)(22.06mg、75μmol)、メタノール(12mg、375μmol)、L-ラクチド(0.72g、5mmol)を反応瓶に加え、30mLのテトラヒドロフランで溶解させ、Arの保護下で40℃に加熱し、48時間撹拌して反応させる。安息香酸を加えて反応を停止させ、反応生成物をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体0.39gが得られた。変換率は54%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは1250で、分散度PDIは1.16である。
【0051】
[実施例17]
1,3-ジブチル-3,4-ジクロロイミダゾール-2-カルボン酸塩(L)(29.21mg、100μmol)、ブタノール(7.41mg、100μmol)、D-ラクチド(5.76g、40mmol)を反応瓶に加え、真空にして、反応器内の圧力は7mmHgであり、250℃で、5時間反応させる。希塩酸を加えて反応を停止させ、反応生成物をジクロロメタンで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体5.5gが得られた。変換率は99%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは48780で、分散度PDIは1.48である。
【0052】
[実施例18]
1-t-ブチル-4,5-ジクロロチアゾール-2-カルボン酸塩(R)(7.6mg、30μmol)、ベンジルアルコール(16.21mg、150μmol)、D,L-ラクチド(3.46g、24mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で200℃に加熱し、3秒溶融して反応させる。酸素を通して反応を停止させ、冷却した後に反応生成物をトルエンで溶解させ、さらにエタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体2.5gが得られた。変換率は80%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは18800で、分散度PDIは1.28である。
【0053】
[実施例19]
1-(1-フェニルエチル)チアゾール-2-カルボン酸塩(S)(17.5mg、75μmol)、ベンジルアルコール(10.8mg、100μmol)、D-ラクチド(1.44g、10mmol)を反応瓶に加え、Arの保護下で120℃に加熱し、2時間溶融して反応させる。CS2を加えて反応を停止させ、反応生成物をクロロホルムで溶解させ、さらにメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.15gが得られた。変換率は97%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは13210で、分散度PDIは1.32である。
【0054】
[実施例20]
2,4,5-トリフェニル-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸塩(T)(25.6mg、75μmol)、イソプロパノール(9.01mg、150μmol)、D-ラクチド(1.44g、10mmol)を5mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、Arの保護下で96℃に加熱し、12時間溶融して反応させる。水を加えて反応を停止させ、反応溶液をメタノールに入れて、沈殿してから濾過し、且つ一定重量まで乾燥して、白色の固体1.32gが得られた。変換率は92%で、ポリ乳酸の数平均分子量Mnは8560で、分散度PDIは1.11である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法であって、
カルベン二酸化炭素化合物の構造は、式(I)に示されるものであり、
【化1】

ここで、その式中、
点線は任意に選択される二重結合を表し、
X1はS又はNから選択され、
X2はC又はNから選択され、
R1、R2は同一であるか又は異なると共に、R1、R2は、
水素、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜10個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
ハロゲン原子、
アダマンタン基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
R3、R4は同一であるか又は異なると共に、R3、R4は、
水素、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
又は、R3とR4とは連結され、3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキル、もしくは、シクロアルケニルを形成し、
又は、R3とR4と連結され、ベンゼン環を形成し、
又は、R2とR3とは連結され、無置換の五員又は六員N-複素環を形成する、
ことを特徴とする、カルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項2】
前記カルベン二酸化炭素化合物の構造は、式(II)に示されるものであり、
【化2】

ここで、その式中、
R1、R2は同一であるか又は異なると共に、R1、R2は、
水素、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜10個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアン基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
ハロゲン原子、
アダマンタン基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル、
からなる群から選択されるものであり、
R3、R4は同一であるか又は異なると共に、R3、R4は、
水素、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
又は、R3とR4とは連結され、3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルケニルを形成し、
又は、R3とR4とは連結され、ベンゼン環を形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項3】
前記カルベン二酸化炭素化合物の構造は、式(III)に示されるものであり、
【化3】

ここで、その式中、
R1、R2は同一であるか又は異なると共に、R1、R2は、
水素、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜10個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
ハロゲン原子、
アダマンタン基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
R3、R4は同一であるか又は異なると共に、R3、R4は、
水素、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
又は、R3とR4とは連結され、3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルキルを形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項4】
前記カルベン二酸化炭素化合物の構造は、式(IV)に示されるものであり、
【化4】

ここで、その式中、
R1は、
水素、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜10個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、
ハロゲン原子、
アダマンタン基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
R3、R4は同一であるか又は異なると共に、R3、R4は、
水素、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
又は、R3とR4とは連結され、3〜8個の炭素原子を含有するシクロアルケニルを形成し、
又は、R3とR4とは連結され、ベンゼン環を形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項5】
前記カルベン二酸化炭素化合物の構造は、式(V)に示されるものであり、
【化5】

ここで、その式中、
R1、R2は同一であるか又は異なると共に、R1、R2は、
水素、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜10個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
ハロゲン原子、
アダマンタン基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
R3は、
水素、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜4個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
フェニル基、並びに、
置換フェニル基、
からなる群から選択されるものであり、
又は、R2とR3とは連結され、無置換の五員又は六員N-複素環を形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項6】
前記置換フェニル基は、一置換、二置換又は三置換であり、
その置換基は同一であるか又は異なっており、その置換基は、
1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、
1〜5個の炭素原子を有し、且つ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニル基及びシアノ基からなる群から選択される一種以上の置換基を持つアルキル基、
ハロゲン原子、
ヒドロキシル基、
アルコキシ基、又は、
シアノ基、
から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項7】
前記方法は、溶液重合方法を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項8】
前記方法は、カルベン二酸化炭素化合物、開始剤及びラクチド単体を、モル比1:0.2〜5:2〜10000で有機溶剤に混合することを含み、好ましくは、1:0.5〜3:100〜500、特に好ましくは、1:0.5〜2:100〜300であることを特徴とする請求項7に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項9】
前記方法の反応温度は、-50℃〜250℃であり、好ましくは50℃〜180℃であり、特に好ましくは60℃〜150℃であることを特徴とする請求項7に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項10】
前記方法の反応時間は3秒〜120時間であり、好ましくは0.2〜24時間であり、特に好ましくは0.2〜15時間であることを特徴とする請求項7に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項11】
前記開始剤はアルコール系化合物であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第3級ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、エチレングリコール、グリコール又はペンタエリトリトールであり、好ましくは、ブタノール、ベンジルアルコール及びフェニルエタノールであることを特徴とする請求項8に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項12】
前記ラクチド単体が、左旋ラクチド、右旋ラクチド、メソラクチド、もしくはラセミラクチド、又は、左旋ラクチドと右旋ラクチドとの間の任意割合での混合物であることを特徴とする請求項8に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶剤は、シクロヘキサン、ヘキサン、エーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、メチルベンゼン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、又はジメチルスルホキシドであり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルベンゼン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルムであり、特に好ましくは、テトラヒドロフラン、メチルベンゼンであることを特徴とする請求項8に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項14】
前記ラクチドの初期反応濃度は0.01mol/L〜10mol/Lであり、好ましくは0.5mol/L〜5mol/Lであり、特に好ましくは0.5mol/L〜3mol/Lであることを特徴とする請求項8に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項15】
前記方法における反応を不活性ガスの中で行い、不活性ガスはアルゴンガス又は窒素ガスであることを特徴とする請求項7に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項16】
前記方法における反応を停止するステップは、弱酸(例えば、ギ酸、エタン酸、希塩酸)、酸素、水、CS2又はCO2を加えるもの、好ましくは、ギ酸、エタン酸、水又はCS2を加えるものであることを特徴とする請求項7に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項17】
前記方法は反応生成物を溶剤に沈殿させることを含み、例えば、メタノール、エタノール又は水の中に沈殿させて精製することを特徴とする請求項7に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項18】
前記方法は、バルク重合法を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれ一項に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項19】
前記方法は、カルベン二酸化炭素化合物、開始剤及びラクチドを、モル比1:0.2〜5:2〜10000で混合させることを含み、好ましくは、1:0.5〜3:100〜500、特に好ましくは、1:0.5〜2:100〜300であることを特徴とする請求項18に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項20】
前記方法の反応温度は、-50℃〜250℃であり、好ましくは50℃〜180℃であり、特に好ましくは60℃〜150℃であることを特徴とする請求項18に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項21】
前記方法の反応時間は、3秒〜120時間であり、好ましくは0.2〜24時間であり、特に好ましくは0.2〜15時間であることを特徴とする請求項18に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項22】
前記開始剤はアルコール系化合物であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第3級ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、エチレングリコール、グリコール又はペンタエリトリトールであり、好ましくは、ブタノール、ベンジルアルコール又はフェニルエタノールであることを特徴とする請求項19に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項23】
前記ラクチドが、左旋ラクチド、右旋ラクチド、メソラクチド、もしくはラセミラクチド、又は、左旋ラクチドと右旋ラクチドとの間の任意割合での混合物であることを特徴とする請求項19に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項24】
前記方法における反応を不活性ガス中または真空中で行うことを特徴とする請求項18に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項25】
前記不活性ガスはアルゴンガス又は窒素ガスから選択されることを特徴とする請求項24に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項26】
前記真空は反応器中の圧力が4〜20mmHgであることを特徴とする請求項24に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項27】
前記方法における反応を停止するステップは、弱酸、酸素、水、CS2又はCO2を加えるもの、好ましくは、ギ酸、エタン酸、水又はCS2を加えるものであることを特徴とする請求項18に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項28】
前記方法は、反応生成物を良溶剤で溶解した後、例えば、メタノール、エタノール又は水のような貧溶媒中に沈殿させて精製することを更に含むことを特徴とする請求項18に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項29】
前記良溶剤は、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロホルム、メチルベンゼン、ベンゼン、アセトン又はテトラヒドロフランであり、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフランであることを特徴とする請求項28に記載のカルベン二酸化炭素化合物を用いたポリ乳酸の製造方法。
【請求項30】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルベン二酸化炭素化合物が、ポリ乳酸を製造するための触媒を製造するものであるという用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−501360(P2012−501360A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524173(P2011−524173)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073677
【国際公開番号】WO2010/022685
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(511053919)南京工▲業▼大学 (3)
【Fターム(参考)】