説明

カルボシランモノマーを含有する歯科用組成物

少なくとも2つのSi−アリーレン結合、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分、皆無のSi−O結合、および好ましくは少なくとも2つのケイ素原子の構造的特徴を含むカルボシランモノマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カルボシランモノマーおよびカルボシランモノマーを含む歯科用組成物。
【背景技術】
【0002】
硬化に際した歯科用組成物の容積収縮は、複合材中に高応力および微小破壊をもたらすことがよく知られている。このような欠陥は、複合材料の臨床破壊をもたらすかもしれない。したがって卓越した現行材料の物理特性を維持しながら、低下した容積収縮を有する歯科用複合材を開発することが重要である。
【0003】
現行の市販の(メタ)アクリレートベースの複合材は、重合に際して2〜4%の容積収縮を示す。目標は、圧縮強さおよび粘度などのその他の望ましい物理特性を維持しながら、収縮を2%未満に低下させることである。(メタ)アクリレートベースの複合材に添加するための重合収縮を低下させる多くのタイプの成分が開発されているが、それらをベースにする複合材は、概してミネソタ州セントポールの3M社(3M Company(St.Paul、MN))から商品名フィルテック(FILTEK)Z250の下に入手できるものなどの市販の製品と比べて、物理特性の低下を被る。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,159,601号明細書
【特許文献2】米国特許第4,603,215号明細書
【特許文献3】米国特許第3,220,972号明細書
【特許文献4】米国特許第3,715,334号明細書
【特許文献5】米国特許第3,419,593号明細書
【特許文献6】米国特許第3,775,452号明細書
【特許文献7】米国特許第4,288,345号明細書
【特許文献8】米国特許第4,421,903号明細書
【特許文献9】米国特許第4,705,765号明細書
【特許文献10】米国特許第4,530,879号明細書
【特許文献11】米国特許第4,510,094号明細書
【特許文献12】米国特許第4,600,484号明細書
【特許文献13】米国特許第4,652,274号明細書
【特許文献14】米国特許第4,642,126号明細書
【特許文献15】国際公開第00/38619号パンフレット
【特許文献16】国際公開第01/92271号パンフレット
【特許文献17】国際公開第01/07444号パンフレット
【特許文献18】国際公開第00/42092号パンフレット
【特許文献19】米国特許第5,076,844号明細書
【特許文献20】米国特許第4,356,296号明細書
【特許文献21】EP−0373384号明細書
【特許文献22】EP−0201031号明細書
【特許文献23】EP−0201778号明細書
【特許文献24】米国特許第5,545,676号明細書
【特許文献25】欧州特許出願第173567号明細書
【特許文献26】米国特許第4,071,424号明細書
【特許文献27】米国特許第4,772,530号明細書
【特許文献28】米国特許第4,954,414号明細書
【特許文献29】米国特許第4,874,450号明細書
【特許文献30】米国特許第5,055,372号明細書
【特許文献31】米国特許第5,057,393号明細書
【特許文献32】米国特許第4,695,251号明細書
【特許文献33】米国特許第4,503,169号明細書
【特許文献34】米国特許第6,387,981号明細書
【特許文献35】米国特許第6,572,693号明細書
【特許文献36】国際公開第01/30305号パンフレット
【特許文献37】国際公開第01/30306号パンフレット
【特許文献38】国際公開第01/30307号パンフレット
【特許文献39】国際公開第03/063804号パンフレット
【特許文献40】米国特許出願第10/847,782号明細書
【特許文献41】米国特許出願第10/847,781号明細書
【特許文献42】米国特許出願第10/847,803号明細書
【特許文献43】米国特許第6,624,211号明細書
【特許文献44】米国特許第3,927,116号明細書
【非特許文献1】H.N.ベック(Beck)ら、J.Chem.Eng.Data、8、453(1963年)
【非特許文献2】D.C.ワッツ(Watts)ら、Meas.Sci.Technol.、2、788〜794(1991年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって(メタ)アクリレートベースの歯科用組成物に添加できる、収縮低下を提供する新しい成分がなおも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(メタ)アクリレートベースの歯科用組成物で使用するためのカルボシランモノマーを提供する。カルボシランモノマー(すなわちカルボシラン含有モノマー)は、好ましくは次の構造的特徴を含む。少なくとも2つのSi−アリーレン結合、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分、皆無のSi−O結合、および好ましくは少なくとも2つのケイ素原子。特定の実施形態では、カルボシランモノマーは、芳香族シランとエチレン性不飽和構成単位との反応から形成される。これらの材料を含む歯科用組成物は、典型的に硬化時により低い容積収縮を有する。また得られる硬化複合材は、現行の複合材と比べて潜在的により高い耐汚染生を有する。
【0007】
組成物はまた、光活性フリーラジカル源(好ましくは青色光によって活性化されるもの)などの重合開始剤系を含むことができる。特定の実施形態では、歯科用組成物はまた、充填材系、好ましくは組成物総重量を基準にして80重量%までの充填材系も含む(好ましくは無機充填材を含む)。その他の任意の成分としては、例えば、着色剤、着香剤、薬剤、安定剤、粘度調整剤、希釈剤、流れ制御添加剤、抗菌剤、チキソトロープ剤、およびポリマー増粘剤が挙げられる。
【0008】
所望の効果のために、ここで列挙する各成分の様々な組み合わせを使用できる。
【0009】
一実施形態では、本発明は、式I、
【化1】

(I)
(式中、
Arはアリーレン基であり、
各Aは独立して脂肪族、脂環式、芳香族基、またはそれらの組み合わせであり、
各Rは独立して脂肪族基、脂環式基、またはそれらの組み合わせであって、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含み、二環式基を含むことができ、
各Qは独立して単結合、もしくは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、またはそれらの組み合わせであって、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含み、二環式基を含むことができ、
各R’は独立して水素またはメチルであり、
nは少なくとも2である)
を有するカルボシラン含有モノマーを含む、歯科用組成物を提供する。
【0010】
定義
「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定すると、材料が単独で、またはその他のモノマーの存在下のいずれかで、20℃以上の結晶性融点を示すことを意味する。観察された吸熱のピーク温度を結晶性融点とする。結晶相は複数の格子を含み、その中で材料は立体配座をとり、その中には隣接する化学部分にそれから材料が構築される高度に規則正しいレジストリがある。格子内の充填配列(短距離秩序配向)は、その化学的および幾何学的双方の側面において高度に規則的である。結晶性成分は「半結晶性状態」にあってもよく、その中でポリマー鎖の長いセグメントは、20℃以上において、非晶質および結晶性双方の状態または相で出現する。したがってここで「結晶性」成分は、半結晶性材料を包含する。
【0011】
「非結晶性」という用語は、明瞭なパターン、格子構造、または長距離秩序を形成しない(すなわち非晶質の)、無作為に配向した原子、イオン、または分子から構成される材料を意味する。非結晶性材料は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定すると、20℃以上で結晶性融点を示さない。
【0012】
「硬化性」という用語は、例えば加熱して溶剤を除去する、加熱して重合を引き起こす、化学架橋、放射線重合または架橋などによって、硬化または固化できる材料を指す。
【0013】
「アリーレン」という用語は、ここでの用法では炭素環式芳香族環または環系を含み、芳香族環は酸素、窒素、イオウ、またはアルキレン基、またはそれらの組み合わせによって任意に架橋でき、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシ基、またはそれらの組み合わせで任意に置換される。アリーレン基の例としては、アルキルおよび/またはアルコキシ基で任意に置換された、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、フルオレニレン、インデニレン、ジフェニレンエーテルが挙げられる。
【0014】
「含む」という用語およびその活用形は、これらの用語が説明および特許請求の範囲に現れる場合、限定的意味を有さない。
【0015】
ここでの用法では、単数形(「a」、「an」、「the」)、「少なくとも1つの」、および「1つ以上」は、同義的に使用される。したがって例えば単数形の(「a」)カルボシラン含有モノマーを含む歯科用組成物は、「1つ以上」のカルボシラン含有モノマーを含む歯科用組成物を意味するものと解釈できる。同様に単数形の(「a」)充填材を含む組成物は、「1つ以上」のタイプの充填材を含む組成物を意味するものと解釈できる。
【0016】
またここでは、終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0017】
上の本発明の概要は、開示される各実施形態または本発明の各実行について述べることを意図しない。続く説明は、例示的な実施形態をより詳しく例示する。本願明細書全体にわたり数カ所で、実施例一覧を通じて指針が提供され、その実施例は様々な組み合わせで使用できる。各例で、列記された一覧は代表的な群としてのみ役立ち、排他的一覧として解釈すべきではないものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、(メタ)アクリレートベースの歯科用組成物で使用するためのカルボシランモノマーを提供する。カルボシランモノマー(すなわちカルボシラン含有モノマー)は、好ましくは次の構造的特徴を含む。少なくとも2つのSi−アリーレン結合、少なくとも1つのケイ素原子、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分、皆無のSi−O結合、および好ましくは少なくとも2つのケイ素原子。「アリーレン」という用語は、ここでの用法では炭素環式芳香族環または環系を含む。カルボシランモノマーは、好ましい多官能性官能基のために、重合でき、任意に架橋できる。
【0019】
顕著に、これらの芳香族カルボシランモノマーは、例えば単純なヒドロシリル化(hydrosilation)の手順を使用して調製できる。出発原料(例えば芳香族シランおよび(メタ)アクリレート官能性オレフィン)の広い入手可能性は、カルボシランモノマーの構造、構築、および官能基に対する幅広い制御を可能にする。この化学的性質を通じて、好ましくは一段階で、重合性官能基(好ましくは(メタ)アクリレート官能基)があるモノマー材料を調製することが可能である。
【0020】
カルボシランモノマーおよびその調製
カルボシランモノマーは、典型的に多官能基を含む。モノマー材料の分子量および粘度は、単に反応で使用する構成単位を変化させることによって容易に制御できる。カルボシラン材料の数平均分子量は、広範囲にわたり変化しても良い。好ましくは分子量は1000g/mol未満である。
【0021】
好ましいカルボシランモノマーは、好ましくはフリーラジカル機序によって硬化性(例えば重合性および/または架橋性)である。このようなカルボシラン材料は、好ましくは次の構造的特徴を含む。少なくとも2つのSi−アリーレン結合、少なくとも1つのケイ素原子、少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分、および皆無のSi−O結合。好ましくはカルボシランモノマーは2つ以上、より好ましくは少なくとも2つの官能基を有する。
【0022】
好ましいクラスのカルボシランモノマーは、式I、
【化2】

(I)
(式中、
Arはアリーレン基であり、
各Aは独立して脂肪族、脂環式、芳香族基、またはそれらの組み合わせであり、
各Rは独立して脂肪族基、脂環式基、またはそれらの組み合わせであって、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含み、二環式基を含むことができ、
各Qは独立して結合、または脂肪族基、脂環式基、芳香族基、またはそれらの組み合わせであって、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含み、二環式基を含むことができ、
各R’は独立して水素またはメチルであり、
nは少なくとも2である(好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、さらにより好ましくは2〜3))
を有する。
【0023】
「アリーレン」という用語は、ここでの用法では炭素環式芳香族環または環系を含み、そこでは芳香族環は酸素、窒素、イオウ、またはアルキレン基、またはそれらの組み合わせによって任意に架橋でき、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシ基、またはそれらの組み合わせで任意に置換される。アリーレン基の例としては、アルキルおよび/またはアルコキシ基で任意に置換された、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、フルオレニレン、インデニレン、ジフェニレンエーテルが挙げられる。
【0024】
好ましくはArは、ハロゲン、アルキル基(好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する)、またはアルコキシ基(好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する)、またはそれらの組み合わせによって任意に置換された、環系中に6〜14個の炭素原子を有するアリーレン基である。
【0025】
好ましくは各Aは独立して1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基、1〜6個の炭素原子を有する脂環式基、6〜14個の炭素原子を有する芳香族基、またはそれらの組み合わせである。より好ましくは各Aは独立して1〜6個の炭素原子(より好ましくは1〜3個の炭素原子)を有する脂肪族基である。
【0026】
好ましくは各Rは独立して1〜10個の炭素原子を有する脂肪族基、3〜10個の炭素原子を有する脂環式基、またはそれらの組み合わせである。より好ましくは各Rは独立して2〜10個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0027】
好ましくは各Qは独立して1〜10個の炭素原子を有する脂肪族基、3〜10個の炭素原子を有する脂環式基、6〜10個の炭素原子を有する芳香族基、またはそれらの基の組み合わせであり、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含む。より好ましくは各Qは独立して(C1〜C3)アルキレン、オキシ(C1〜C3)アルキレン基、または(C3〜C9)脂環式基である。
【0028】
カルボシランモノマーは、好ましくは優れた物理特性を維持しながら、硬化前の組成物容積を基準にして、2.0%以下の総重合収縮容積(典型的に1.4%〜2.0%の収縮)を示す歯科用複合材に調合できる。
【0029】
歯科用組成物中のカルボシランモノマーの総量は、組成物の総重量を基準にして、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%である。カルボシランモノマーの総量は組成物の総重量を基準にして、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、最も好ましくは40重量%以下である。
【0030】
スキーム1は、カルボシラン含有材料調製のための一般手順を概説する。
【0031】
スキーム1はビス(ジメチルシリル)−アリーレンを使用して示されるが、アリーレンジシラン反応物質中でメチル以外の置換基を使用できる。同様にスキーム1は、メタクリレート官能性オレフィン反応物質を使用して示されるが、アクリレート、ならびにその他のエチレン性不飽和化合物が使用できる。好ましくは反応物質の1つは、(メタ)アクリレート(すなわちアクリレートまたはメタクリレート)部分を含む。
【0032】
スキーム1
【化3】

スキーム1では、Ar、n、およびQは上で定義される。スキーム1はメタクリレート官能性オレフィン反応物質を示すが、アクリレート、ならびにその他のエチレン性不飽和化合物が使用できる。
【0033】
スキーム1で示されるように、ヒドロシリル化反応を通じて多官能性芳香族シランと(メタ)アクリレート官能性エチレン性不飽和化合物とを反応させて、モノマー生成物がもたらされる。
【0034】
典型的に開始芳香族シランおよび(メタ)アクリレート官能性エチレン性不飽和出発原料およびヒドロシリル化触媒を溶剤中において、典型的に室温で共に反応させる。次にシリカゲルを通過させる濾過によって触媒を除去して生成物を得ることができ、または生成物は結晶化または沈殿を通じて得ることができる。
【0035】
反応で使用されるヒドロシリル化触媒は、ケイ素結合水素原子とオレフィン二重結合含有化合物との付加反応を触媒するあらゆる化合物であることができる。本発明の組成物のために適切なヒドロシリル化触媒の例としては、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、および白金、およびそれらの有機金属化合物などの後期遷移元素の多くが挙げられる。好ましい触媒は、超微粒子白金金属などの金属白金を含有するもの、活性炭またはアルミナなどの超微粒子キャリア上の白金金属、および塩化白金酸などの白金化合物、(特許文献1)で述べられるものなどの白金オレフィン錯体、(特許文献2)で述べられるものなどの白金アルキン錯体、(特許文献3)で述べられるものなどの塩化白金酸とアルコール、エーテル、アルデヒド、およびそれらの混合物からなるクラスから選択されるメンバーとの反応生成物、および(特許文献4)で述べられるものなどのエタノール溶液中の炭酸水素ナトリウム存在下における塩化白金酸とテトラビニルシクロテトラシロキサンとの反応生成物である。特に好ましい触媒は、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、および(特許文献8)で述べられるものなどの塩化白金酸と特定の不飽和有機シリコン化合物とによって調製される錯体である。これらの触媒の一具体例は、塩化白金酸とsym−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。別の特に好ましい触媒は、(特許文献9)で述べられるものなどの水素化ケイ素または水素化シロキサンと、白金(0)または白金(II)錯体との間の反応によって得られるコロイドヒドロシリル化触媒である。なおも別の特に好ましい触媒は、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)で述べられるような(η4−1,5−シクロオクタジエン)ジアリール白金および(η5−シクロペンタジエニル)トリ脂肪族白金錯体など、化学線によって活性化されるものである。
【0036】
触媒は有効量、すなわちヒドロシリル化反応を触媒するのに十分な量で存在すべきである。触媒が、総組成物100万重量部あたりわずかに1重量部の金属(例えば白金)を提供するのに十分な量で存在する場合に、満足のいく結果が得られるかもしれない。他方、総組成物1,000重量部あたり1から10重量部程に高い金属(例えば白金)を提供するのに十分な触媒量もまた、使用してもよい。しかし一般に、総組成物100万重量部あたり100から200重量部の金属(例えば白金)を提供するのに十分な量の触媒を用いることが好ましい。
【0037】
シラン出発原料は、(非特許文献1)で開示されるように、典型的にハロゲン化芳香族化合物とクロロ−ジメチルシラン(またはその他のクロロ−アルキルシラン)との間のグリニャール反応を通じて調製できる。
【0038】
エチレン性不飽和(メタ)アクリレート成分は、好ましくは1つのオレフィン基および少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含有する。好ましいこのような化合物としては、アリルメタクリレート、2−(5/6−メタクリロイルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−エテン、および(2−アリルオキシエチル)メタクリレートが挙げられる。
【0039】
好ましいモノマーを下の表1に列挙する。
【0040】
【表1】

【0041】
二次重合性材料
ここで開示されるカルボシランモノマー以外の追加的な重合性成分が、本発明の歯科用組成物に添加できる。これらの重合性成分としては、口腔環境での使用に適する十分な強度および加水分解安定性を有する硬化材料を形成できる、1つ以上の硬化性有機樹脂が挙げられる。好ましくは少なくともいくつかの二次重合性成分は、エチレン性不飽和を含み付加重合を起こすことができる。適切な二次重合性成分は、好ましくは少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む(すなわち少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む)。
【0042】
本発明の二次重合性成分は、硬化性樹脂の一部であることができる。これらの樹脂は、概して、硬化して、例えばアクリレート−官能性材料、メタクリレート−官能性材料、ビニル官能性材料、およびそれらの混合物をはじめとするポリマー網目状組織を形成できる熱硬化性材料である。典型的に硬化性樹脂は、1つ以上のマトリックス形成オリゴマー、モノマー、ポリマー、またはそれらの配合物から作られる。
【0043】
硬化性樹脂の1つのクラスは、フリーラジカル活性官能基と共に重合性成分を有する材料を含む。材料の例としては、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するオリゴマー、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
フリーラジカル活性官能基を有する硬化性樹脂のクラスでは、本発明で使用するための適切な重合性成分は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有して付加重合を起こすことができる。このようなフリーラジカルエチレン性不飽和化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[l−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[l−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、およびトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートなどのモノ−、ジ−またはポリ−(メタ)アクリレート(すなわちアクリレートおよびメタクリレート)と、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、およびジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド(すなわちアクリルアミドおよびメタクリルアミド)と、ウレタン(メタ)アクリレートと、ポリエチレングリコールのビス−(メタ)アクリレート(好ましくは分子量200〜500)と、ベッチャー(Boettcher)らに付与された(特許文献13)中のものなどのアクリル化モノマーの共重合性混合物と、ザドール(Zador)らに付与された(特許文献14)ものなどのアクリル化オリゴマーと、スチレン、フタル酸ジアリル、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、およびフタル酸ジビニルなどのビニル化合物が挙げられる。その他の適切なフリーラジカル重合性化合物としては、例えばグッゲンベルガー(Guggenberger)らに付与された(特許文献15)、ワインマン(Weinmann)らに付与された(特許文献16)、グッゲンベルガー(Guggenberger)らに付与された(特許文献17)、グッゲンベルガー(Guggenberger)らに付与された(特許文献18)で開示されるようなシロキサン−官能性(メタ)アクリレート、および例えばフォック(Fock)らに付与された(特許文献19)、グリフィス(Griffithら)に付与された(特許文献20)、ワーゲンクネヒト(Wagenknechtら)に付与された(特許文献21)、レイナーズ(Reiners)らに付与された(特許文献22)、およびレイナーズ(Reiners)らに付与された(特許文献23)で開示されるようなフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。所望ならば、2種以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物が使用できる。
【0045】
二次重合性成分はまた、単一分子中に水酸基およびフリーラジカル活性官能基を含有してもよい。このような物質の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、グリセロールモノ−またはジ−(メタ)アクリレートと、トリメチロールプロパンモノ−またはジ−(メタ)アクリレートと、ペンタエリトリトールモノ−、ジ−、およびトリ−(メタ)アクリレートと、ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、またはペンタ−(メタ)アクリレートと、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(BisGMA)が挙げられる。適切なエチレン性不飽和化合物はまた、ミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich、(St.Louis,MO))などの多種多様な市販元からも入手できる。所望ならば、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用できる。
【0046】
上に列挙した成分は、典型的に結晶化不可能(すなわち非晶質)である。二次重合性成分はまた、結晶性成分を含むことができる。この結晶性成分は、重合および/または架橋できる反応性基を有しても有さなくてもよい。好ましくは結晶性成分は重合性である。好ましくは結晶性成分は(オリゴマーをはじめとする)ポリマーである。より好ましくは結晶性成分は、重合性ポリマー材料である。歯科用組成物で使用するのに適した(オリゴマーをはじめとする)二次結晶性ポリマーは、結晶性主鎖(すなわち直鎖)またはペンダントの(すなわち側鎖)セグメントを有することができる。好ましい材料はまた、重合および/または架橋できる反応性基も含有する。特に好ましいのは、少なくとも2つの反応性官能基がある非カルボシラン結晶性オリゴマーまたはプレポリマーである。
【0047】
結晶性主鎖または主鎖セグメントを有する適切な二次結晶性材料の例としては、(ポリカプロラクトンをはじめとする)ポリエステル、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリシラン、ポリアミド、(好ましくは例えばC2〜C3の低級オレフィンから形成された)ポリオレフィン、およびポリウレタンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
好ましい二次結晶性材料は、第一級ヒドロキシル末端基を含有する飽和直鎖脂肪族ポリエステルポリオール(特にジオール)である。本発明の歯科用組成物中の非カルボシラン結晶性成分として有用な市販される物質の例としては、ペンシルベニア州フィラデルフィアのイノレックス・ケミカル(Inolex Chemical Co.(Philadelphia,PA))から商品名レキソレズ(LEXOREZ)の下に入手できるいくつかの樹脂が挙げられる。本発明の組成物に有用なその他のポリエステルポリオールの例は、ニューヨーク州ヒックスビルのルコ・ポリマー社(Ruco Polymer Corp.(Hicksville,NY))から商品名ルコフレックス(RUCOFLEX)の下に入手できるものである。本発明で有用なポリカプロラクトンの例としては、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.(Midland,MI.))から商品名トーン(TONE)0230、トーン(TONE)0240、およびトーン(TONE)0260の下に入手できるものが挙げられる。特に好ましい材料は、例えば2−イソシアナトエチルメタクリレート、塩化メタクリロイル、または無水メタクリル酸と反応させたポリカプロラクトンジオールなどの(例えば第一級ヒドロキシル末端基を通じて)変性されて、重合性不飽和官能基が導入された飽和直鎖脂肪族ポリエステルポリオールである。
【0049】
二次重合性成分の総量は、組成物の総重量を基準にして、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、および最も好ましくは40重量%以下である。
【0050】
重合開始剤系
本発明の組成物は、樹脂系(例えばカルボシラン含有モノマーおよび(メタ)アクリレート成分)を硬化する(例えば重合および/または架橋する)のに適した重合開始剤系、すなわち1種の重合開始剤または2種以上の重合開始剤の混合物を任意に含むことができる。重合開始剤系は、好ましくは例えば熱および/または放射線などの多様なやり方で活性化されてもよいフリーラジカル重合開始剤を含む。したがって例えば重合開始剤系は、熱重合開始剤(例えばアゾ化合物および過酸化物)または光重合開始剤を含むことができる。
【0051】
好ましくは重合開始剤系は、1つ以上の光重合開始剤を含む。より好ましくは重合開始剤系は、300nm〜1200nmのスペクトル領域内で活性の少なくとも1つの光重合開始剤を含み、適切な波長と強度の光への曝露に際して、フリーラジカル重合および/またはエチレン性不飽和部分の架橋を促進できる。このような多種多様な光重合開始剤が使用できる。光重合開始剤は好ましくは樹脂系中に可溶性である。好ましくは光重合開始剤は十分に保存安定性があり望ましくない着色がなく、典型的な歯科業務および技工所条件下での保管および使用を可能にする。可視光光重合開始剤が好ましい。
【0052】
適切な重合開始剤(すなわち重合開始剤系)の1つのタイプが(Palazzottoら)に付与された(特許文献24)で述べられ、それは三成分または三元光重合開始剤系を含む。この系は例えばジアリールヨードニウム塩などのヨードニウム塩を含み、それは単塩(例えばCl−、Br−、I−、またはC25SO3−などのアニオンを含有する)または金属錯塩(例えばSbF5OHまたはAsF6−を含有する)であることができる。所望ならばヨードニウム塩の混合物が使用できる。この三元光重合開始剤系中の第2の成分は増感剤であり、それは400nm〜1200nmの波長範囲内で吸光できる。この三元光重合開始剤系中の第3の成分は、(第1の重合開始剤系で述べられるアミノアルデヒドおよびアミノシランまたはその他のアミンをはじめとする)アミン、(ホスホルアミドをはじめとする)アミド、(チオエーテルをはじめとする)エーテル、(チオ尿素をはじめとする)尿素、フェロセン、スルフィン酸およびそれらの塩、フェロシアン化物の塩、アスコルビン酸およびその塩、ジチオカルバミン酸およびその塩、ザンセートの塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、およびテトラフェニルボロン酸の塩をはじめとする電子供与体である。
【0053】
三元光重合開始剤系で使用するのに適した増感剤の例としては、ケトン、クマリン染料(例えばケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族ポリ環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、およびピリジニウム染料が挙げられる。ケトン(例えばモノケトンまたはαジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、およびp−置換アミノスチリルケトン化合物が好ましい増感剤である。特に好ましい可視光増感剤の例としては、カンファキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7−テトラメチル−1.2−シクロヘプタンジオン、3,3,8,8−テトラメチル−1,2−シクロオクタンジオン、3,3,18,18−テトラメチル−1,2シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、および1,2−シクロヘキサンジオンが挙げられる。これらの内では、カンファキノンが最も好ましい増感剤である。
【0054】
さらに別のタイプの光重合開始剤としては、イング(Ying)の(特許文献25)で述べられるものなどのアシルホスフィンオキシドが挙げられる。適切なアシルホスフィンオキシドは、好ましくは一般式、(R42−P(=O)−C(=O)−R5(式中、各R4は個々に炭化水素基、好ましくはアルキル基、脂環式基、アリール基、およびアラルキル基であり、そのいずれもハロ−、アルキル−またはアルコキシ−基で置換でき、または2つのR4基が一緒になってリン原子と共に環を形成し、R5は炭化水素基、好ましくはS−、O−、またはN−含有5員環または6員環複素環式基、または−Z−C(=O)−P(=O)−(R42基(式中、Zは2〜6個の炭素原子を有するアルキレンまたはフェニレンなどの二価の炭化水素基を表す)である)のものである。適切なアシルホスフィンオキシドの例としては、例えばビス(2,4,6トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。任意に、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて第三級アミン還元剤を使用してもよい。本発明で有用な例示的な第三級アミンとしては、上述のものならびに4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチルおよびメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルが挙げられる。
【0055】
モノ−および全−ケトンもまた、光重合開始剤として使用できる。このような系の例についてはダート(Dart)らに付与された(特許文献26)で述べられる。
【0056】
なおも別のクラスの光重合開始剤としては、ホウ酸アニオンおよび相補的カチオン染料をはじめとするイオン染料−対イオン錯体重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤で有用なホウ酸アニオンは、概して式、B(R64−(式中、各R6は独立してアルキル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式、および飽和または不飽和複素環式基である)のものであることができる。カチオン性対イオンは、カチオン染料、第四級アンモニウム基、遷移金属配位錯体などであることができる。対イオンとして有用なカチオン染料は、カチオン性メチン、ポリメチン、トリアリールメチン、インドリン、チアジン、キサンテン、オキサジンまたはアクリジン染料であることができる。対イオンとして有用な第四級アンモニウム基は、トリメチルセチルアンモニウム、セチルピリジニウム、およびテトラメチルアンモニウムであることができる。その他の有機親和性カチオンとしては、ピリジニウム、ホスホニウム、およびスルホニウムが挙げられる。対イオンとして有用であるかもしれないカチオン性遷移金属配位錯体は、コバルト、ルテニウム、オスミウム、亜鉛、鉄、およびイリジウムと、ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチルフェナントロリン、2,4,6−トリ(2−ピリジル−s−トリアジン)などのリガンド、および関連リガンドとの錯体であることができる。
【0057】
ホウ酸塩光重合開始剤については、例えばゴットシャルケア(Gottschalkea)らに付与された(特許文献27)、アデア(Adair)らに付与された(特許文献28)、ゴットシャルケア(Gottschalkea)に付与された(特許文献29)、シャンクリン(Shanklin)らに付与された(特許文献30)、およびシャンクリン(Shanklin)らに付与された(特許文献31)で述べられる。
【0058】
好ましい可視光誘発重合開始剤としては、適切な水素供与体(例えば第1の重合開始剤系について上述したようなアミン)、および任意にジアリールヨードニウム単塩または金属錯塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジン、またはハロメチルオキサジアゾールと組み合わせたカンファキノンが挙げられる。特に好ましい可視光誘発光重合開始剤としては、例えばカンファキノンなどのα−ジケトンと追加的水素供与体、および任意に例えば塩化、臭化、ヨウ化ジフェニルヨードニウムなどのジアリールヨードニウム塩、または六フッ化リン酸塩との組み合わせが挙げられる。好ましい紫外線誘発重合開始剤としては、ベンジルおよびベンゾイン、アシロイン、およびアシロインエーテルなどのケトンが挙げられる。好ましい紫外線誘発重合開始剤としては、どちらもニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシアリティ・ケミカルズ社(Ciba Speciality Chemicals Corp.(Tarrytown,NY))からの商品名イルガキュア(IRGACURE)651の下に入手できる2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)が挙げられる。
【0059】
重合開始剤系は、所望の硬化(例えば重合および/または架橋)速度を提供するのに十分な量で存在する。光重合開始剤では、この量は、光源、放射エネルギーに曝露する層の厚さ、および光重合開始剤の吸光係数にある程度左右される。重合開始剤系は、組成物の重量を基準にして、好ましくは少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.03重量%、および最も好ましくは少なくとも0.05重量%の総量で存在する。重合開始剤系は、組成物の重量を基準にして、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、および最も好ましくは2.5重量%以下の総量で存在する。
【0060】
充填材系
本発明の組成物は、充填材系(すなわち1つ以上の充填材)を任意に含むことができる。充填材系で使用するための充填材は、樹脂系中への組み込みのために多種多様な従来の充填材から選択されてもよい。好ましくは充填材系は、例えば歯科用修復組成物で現在使用される充填材など、医療用途で使用される組成物への組み込みに適した1つ以上の従来の材料を含む。したがって本発明の組成物で使用される充填材系は、樹脂系に組み込まれる。
【0061】
充填材は、性質が微粒子または繊維性のいずれかであってもよい。微粒子充填材は概して20:1以下、およびより一般には10:1以下の長さ対幅比、またはアスペクト比を有すると定義されてもよい。繊維は20:1を超え、またはより一般には100:1を超えるアスペクト比を有すると定義できる。粒子の形状は、球型から楕円体、またはフレークまたはディスクなどのようにより平面的の範囲で変動できる。巨視的な特性は、充填材粒子形状、特に形状の均一性に高度に左右される。
【0062】
好ましい微粒子充填材は超微粒子であり、10μm未満の平均粒度(好ましくは直径)を有する。
【0063】
好ましいミクロンサイズの微粒子充填材は、少なくとも0.2μmから1μmまでの平均粒度を有する。ナノスケール粒子は、200nm(0.2μm)未満の平均一次粒度を有する、充填材は、単峰型または多峰型(例えば二峰性)粒度分布を有することができる。
【0064】
ミクロンサイズの粒子は、硬化後の摩耗特性を改善するために非常に効果的である。対照的にナノスケール充填材は、一般に粘度およびチキソトロピー調整剤として使用される。それらの小型サイズ、大表面積、および随伴水素結合のために、これらの材料は、集合して凝集網目状組織を構築することが知られている。このタイプの材料(「ナノスケール」材料)は、1000nm以下の平均一次粒度(すなわち最大寸法、例えば非凝集材料の直径)を有する。好ましくはナノスケール微粒子材料は、少なくとも2nm、および好ましくは少なくとも7nmの平均一次粒度を有する。好ましくはナノスケール微粒子材料は、大きさが50nm以下の、およびより好ましくは20nm以下の平均一次粒度を有する。このような充填材の平均表面積は、好ましくは少なくとも20m2/g、より好ましくは少なくとも50m2/g、および最も好ましくは少なくとも100m2/gである。
【0065】
充填材系は、無機物を含むことができる。それはまた、重合性樹脂に不溶性の架橋有機物を含むことができ、無機充填材で任意に充填される。充填材系は、好ましくは概して無毒であり口内で使用するのに適する。
【0066】
適切な充填材は、X線不透過性、X線透過性、または非X線不透過性であることができる。歯科用途で使用される充填材は、典型的に本来セラミックである。適切な無機充填材の例は、石英、窒化物(例えば窒化ケイ素)、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba、またはAlから誘導されるガラス、コロイドシリカ、長石、ボロケイ酸塩ガラス、カオリン、滑石、チタニア、および亜鉛ガラス、ジルコニア−シリカ充填材などの天然または合成材料、およびランドクレフ(Randklev)に付与された(特許文献32)で述べられるものなどの低モース硬度の充填材である。適切な有機充填材粒子の例としては、充填または非充填の微粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシドなどが挙げられる。好ましい充填材粒子は、石英、サブミクロンシリカ、およびランドクレフ(Randklev)に付与された(特許文献33)で述べられるタイプの非ガラス様微粒子である。これらの充填材の混合物、ならびに有機物および無機物からできた配合充填材もまた使用できる。
【0067】
充填材系と樹脂系との間の結合を増強するために、任意に充填材粒子表面をシラン−カップリング剤などの表面処理で処理してもよい。カップリング剤は、アクリレート、メタクリレートなどの反応性硬化基で官能性付与されてもよい。
【0068】
非共有結合構造を与えるために使用される充填材粒子は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、またはこれらの材料相互の、または炭素との混合物から構成されることができる。それらの合成された状態では、表面水酸基の存在のために、これらの材料は一般に親水性である。しかし材料はまた、この特性を変性するために、アルキルシランなどの適切な作用物質での処理によって変性されてもよい。例えば所望の特性次第で、充填材粒子表面を中性、疎水性、または反応性にしてもよい。その低価格、商業的入手可能性、および広範な入手できる表面特性のために、ヒュームドシリカが自立形特性を与えるのに好ましい化合物である。
【0069】
その他の適切な充填材は、チャン(Zhang)らに付与された(特許文献34)およびウ(Wu)らに付与された(特許文献35)ならびにチャン(Zhang)らの(特許文献36)、ヴィンディッシュ(Windisch)らの(特許文献37)、チャン(Zhang)らの(特許文献38)、およびウ(Wu)らの(特許文献39)で開示される。これらの参考文献で述べられる充填材成分としては、ナノサイズシリカ粒子、ナノサイズ金属酸化物粒子、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填材についてはまた、全て2004年5月17日に出願された、「ナノジルコニア充填材を含有する歯科用組成物(Dental Compositions Containing Nanozirconia Fillers)」と題された(特許文献40)、「ナノ充填材を含有する歯科用組成物および関連方法(Dental Compositions Containing Nanofillers and Related Methods)」と題された(特許文献41)、および「歯科用組成物の屈折率を調節するためのナノ粒子の使用(Use of Nanoparticles to Adjust Refractive Index of Dental Compositions)」と題された(特許文献42)でも述べられる。
【0070】
充填材系の総量は、組成物の総重量を基準にして、好ましくは50重量%を超え、より好ましくは60重量%を超え、および最も好ましくは70重量%を超える。充填材系が繊維を含む場合、繊維は組成物の総重量を基準にして20重量%未満の量で存在する。充填材系の総量は、組成物の総重量を基準にして、好ましくは95重量%以下、およびより好ましくは80重量%以下である。
【0071】
任意の添加剤
本発明の組成物は界面活性剤系、すなわち1種の界面活性剤または2種以上の界面活性剤混合物を含有してもよい。このような界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性であることができる。界面活性剤は、共重合性または非共重合性であることができる。
【0072】
組成物は、着色剤(例えば色調調節のために従来法で使用される顔料または染料)、着香剤、薬剤、安定剤(ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)など)、粘度調整剤、希釈剤、流れ制御添加剤、チキソトロープ剤、抗菌剤、ポリマー増粘剤などの任意の作用物質をさらに含んでもよい。所望ならば、これらの任意の添加剤の様々な組み合わせが使用できる。このような作用物質は、樹脂と共重合するように反応性官能基を任意に含む。
【0073】
任意の成分の総量は、組成物の総重量を基準にして、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは約2.5重量%以下、および最も好ましくは1.5重量%以下である。
【0074】
使用方法
上述のカルボシラン含有モノマーは、好ましくは不飽和基、特に(メタ)アクリレート基のラジカル重合を通じて、硬化性の歯科用組成物中で成分として使用できる。本発明の歯科用組成物は、例えば歯科用修復材または予備加工された補綴装置として使用できる。修復材の例としては、歯科用複合材およびアマルガムが挙げられる。予備加工された補綴装置の例としては、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー、ポスト、ピンなどが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物はまた、三次元形状、予備成形シート、アーチ型トレー、ロープ、ボタン、織布、または不織ウェブなどの多様な形に造形(例えば型込)できる。組成物は、例えば押出し加工、射出成形、圧縮成形、熱成形、真空成形、加圧成形、カレンダー掛け、およびローラーを使用したウェブ加工をはじめとする多様なやり方によって造形できる(第1の形状を形成できる)。典型的に半完成形状は、凹凸がある型を使用して形成される。造形品は、例えば歯科用クラウン、歯科用印象用トレー、および歯科矯正装置として使用できる。歯科矯正装置の例としては、舌固定器具、保隙装置、フック、ボタン、副子、および歯列矯正器基部が挙げられる。
【実施例】
【0076】
続く実施例で、本発明の目的および利点をさらに例示するが、これらの実施例で述べられる特定の材料およびその量ならびにその他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するものではない。特に断りのない限り、全ての部および百分率は重量を基準とし、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。
【0077】
圧縮強さ(CS)試験方法
米国規格協会/米国標準協会(ANSI/ASA)規格No.27(1993年)に従って、試験サンプルの圧縮強さを測定した。サンプルを4mm(内径)ガラス管内に詰め(そして必要ならばサンプルを加熱して詰め込みを達成し)、管にシリコーンゴムプラグで栓をして、およそ0.28Mpaで5分間、軸方向に圧縮した。次に2つの対向して配置されたミネソタ州セントポールの3M社(3M Co.(St.Paul,MN)からのビジラックス(VISILUX)2500型青色光ガンへの曝露によってサンプルを90秒間光硬化し、続いてドイツ国クルツァー(Kulzer,Inc.(Germany))からのデンタカラー(Dentacolor)XSユニット内で180秒間照射した。硬化サンプルをダイヤモンド鋸で切断し、圧縮強さ測定のために長さ8mmの円柱状プラグを形成した。試験の前に、プラグを37℃で24時間蒸留水中に保存した。マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corp.(Canton,MA))からの10キロニュートン(kN)負荷セル付きインストロン(Instron)試験機、インストロン(Instron)4505上で、クロスヘッド速度1mm/分で測定を実施した。5個の硬化サンプルのシリンダーを調製して測定し、結果を5回の測定の平均としてMPaで報告した。
【0078】
直径引張り強さ(DTS)試験法
ANSI/ASA規格No.27(1993年)に従って、試験サンプルの直径引張り強さを測定した。CS試験法で述べられるようにして、サンプルをガラス管内で圧縮し硬化した。次に硬化サンプルをDTS測定のために厚さ2.2mmのディスクに切断した。ディスクを上述のように水中で保存し、インストロン社(Instron Corp.)からの10kN負荷セル付きインストロン(Instron)試験機、インストロン(Instron)4505上で、クロスヘッド速度1mm/分で測定した。5枚の硬化サンプルのディスクを調製して測定し、結果を5回の測定の平均としてMPaで報告した。
【0079】
重合収縮試験法
ワッツ(Watts)収縮試験手順を使用して、試験サンプルの重合収縮を測定した(非特許文献2)。3mmガラススライドを使用して試験を実施した。
【0080】
粘度試験法
デラウェア州ニューキャッスルのTAインストゥルメンツ(TA Instruments(New Castle,DE))からのAR 2000レオメータを使用して、試験サンプルの粘度を測定した。およそ1.2gのサンプルをステージ(25℃)と40mmアルミニウムプレートの間に入れた。段階的フロー手順に従って、ログ剪断応力ランプ1〜1000Paでプレートを回転させた(全部で10個のデータ点)。粘度結果を10個のデータ点の平均として、25℃におけるセンチポアズ(cP)で報告した。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例1
1,4−ビス−(ジメチル−[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]シリル)ベンゼン(p−PDA)の合成
ペンシルベニア州タリータウンのゲレスト(Gelest(Tulleytown,PA)からの1,4−ビス−ジメチルシリルベンゼン(5.00g、25.7mmol)、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からのアリルメタクリレート(6.49g、51.4mmol)、トルエン(20ml)、およびゲレスト(Gelest)からの白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液2滴の混合物を室温で17時間混和した。得られた混合物をシリカゲルカラムに挿入し、ヘキサン(80容積%)中の酢酸エチル(20容積%)混合物で溶出した。溶剤を蒸発させて、MW446.74および粘度136cPを有する無色油(7.80g)として生成物を得た。1H核磁気共鳴分光法(NMR)および赤外線分光法(IR)スペクトルによる油の特性決定は、p−PDA構造と一致した。
【0083】
実施例2
1,4−ビス−(ジメチル−[2−(5/6−メタクリロイルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−エチル]シリル)ベンゼン(p−PDN)の合成
1,4−ビス−ジメチルシリルベンゼン(3.77g、19.4mmol)、2−(5/6−メタクリロイルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)エテン(リック(Rick)らに付与された(特許文献44)の実施例14に従って調製された)(8.00g、38.8mmol)、トルエン(15ml)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液2滴の混合物を室温で24時間混和した。得られた混合物をシリカゲルカラムに挿入し、ヘキサン(70容積%)中の酢酸エチル(30容積%)混合物で溶出した。溶剤を蒸発させて、MW603.06および粘度7411cPを有する無色油(11.07g)として生成物を得た。1H NMRおよびIRスペクトルによる油の特性決定は、p−PDN構造と一致した。
【0084】
実施例3
1,3−ビス−(ジメチル−[2−(5/6−メタクリロイルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−エチル]シリル)ベンゼン(m−PDN)の合成
シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からのクロロジメチルシラン(40.10g、0.42mol)、乾燥テトラヒドロフラン(100ml)、および削り状マグネシウム(24.31g、0.13mol)混合物に、乾燥テトラヒドロフラン(65ml)中のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの1,3−ジブロモベンゼン(30.00g、0.13mol)溶液を1時間かけて滴下して添加した。完全な添加後、混合物を2時間還流した。次に真空下で溶剤を除去し、残留物をヘキサン(200ml)で希釈した。固形物をヘキサン(200ml)で2回洗浄し、濾過した。合わせたヘキサン溶液を真空下で濃縮して残留物を減圧下で蒸留し(2mmHg、267パスカルで47〜49℃)、1,3−ビス−ジメチルシリルベンゼンを無色油(17.41g)として得た。
【0085】
1,3−ビス−ジメチルシリルベンゼン(3.77g、19.4mmol)、2−(5/6−メタクロイルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)エテン(8.00g、38.8mmol)、トルエン(20ml)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液2滴の混合物を室温で17時間混和した。混合物をシリカゲルカラムに挿入し、ヘキサン(70容積%)中の酢酸エチル(30容積%)混合物で溶出した。溶剤を蒸発させて、分子量(MW)603.06および粘度3879cPを有する無色油(9.52g)として生成物を得た。1H NMRおよびIRスペクトルによる油の特性決定は、m−PDN構造と一致した。
【0086】
実施例4
1,3,5−トリス−(ジメチル−[3−(メタクロイルオキシ)プロピル]シリル)ベンゼン(PTA)の合成
クロロジメチルシラン(47.30g、0.50mol)、乾燥テトラヒドロフラン(150ml)、および削り状マグネシウム(12.20g、0.50mol)の混合物を1時間撹拌し、それに続いて乾燥テトラヒドロフラン(100ml)中のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの1,3,5−トリブロモベンゼン(31.50g、0.10mol)を1時間かけて滴下して添加した。完全な添加後、混合物を4時間還流し、次に室温で17時間撹拌した。沈殿した固形物から溶液をデカントし、固形物をさらにヘキサン(200ml)で3回洗浄し、濾過した。合わせた有機溶液を真空下で濃縮して残留物を減圧下で蒸留し(0.2mmHg、27パスカルで65〜68℃)、1,3,5−トリス−ジメチルシリルベンゼンを無色油(12.01g)として得た。
【0087】
1,3,5−トリス−ジメチルシリルベンゼン(3.00g、11.9mmol)、アリルメタクリレート(4.50g、35.6mmol)、トルエン(15ml)、および白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液3滴の混合物を室温で48時間混和した。混合物をシリカゲルカラムに挿入し、ヘキサン(80容積%)中の酢酸エチル(20容積%)混合物で溶出した。溶剤を蒸発させて、MW631.05および粘度127cPを有する無色油(4.10g)として生成物を得た。1H NMRおよびIRスペクトルによる油の特性決定は、PTA構造と一致した。
【0088】
実施例5
1,4−ビス−(ジメチル−[3−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)プロピル]シリル)ベンゼン(p−PDE)の合成
1,4−ビス−ジメチルシリルベンゼン(2.86、15mmol)、ペンシルベニア州フィースタービルのモノマー・ポリマー&デジャック・ラブズ(Monomer−Polymer & Dajac Labs,Inc.(Feasterville,PA))からの2−アリルオキシエチルメタクリレート(5.00g、30mmol)、トルエン(15ml)、および白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液2滴の混合物を室温で24時間混和した。混合物をシリカゲルカラムに挿入し、ヘキサン(80容積%)中の酢酸エチル(20容積%)混合物で溶出した。溶剤を蒸発させて、MW534.85および粘度32cPを有する無色油(6.45g)として生成物を得た。1H NMRおよびIRスペクトルによる油の特性決定は、p−PDE構造と一致した。
【0089】
実施例6〜32
重合性組成物
重合性組成物(実施例6〜32)を次の一般手順に従って調製した。光重合開始剤/安定剤成分を最初にBisGMAに溶解し、得られた混合物と組成物のその他のモノマー成分(BisEMA−6、UDMA、TEGDMA、およびカルボシラン(実施例1〜5から選択される))とを合わせた。使用した光重合開始剤/安定剤成分の濃度(100部のBisGMA(すなわち樹脂)あたり、phr)は、CPQ(0.176phr)、EDMAB(1.55phr)、DPIHFP(0.517phr)、BHT(0.155phr)、およびベンゾトリアゾール(1.552phr)であった。混合したモノマー成分と充填材成分STZとをサウスカロライナ州ランドラムのフラックテック(Flakteck(Landrum,SC))からのねじ蓋を有するMAX 20プラスティック混合カップに量り入れ、次に蓋を閉めたカップを85℃のオーブンで30分加熱した。カップをフラックテック(Flakteck)からのDAC 150 FVスピードミキサーに入れて、3000rpmで1分間、回転混合を実施した。次にカップを85℃で30分間再加熱し、続いてさらにもう1分間3000rpmで混合して、最終混合組成物を得た。各実施例の成分の量を表1に示す。表1中のBisGMA重量は、光重合開始剤/安定剤成分の重量を含む。
【0090】
【表3】

【0091】
組成物特性評価
本願明細書で述べられる試験方法に従って、重合収縮、圧縮強さ、および直径引張り強さについて組成物サンプル(実施例6〜32)を評価した。結果を表2に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
ここで引用した特許、特許文献、および刊行物の完全な開示は、その内容全体を参照により個別に本願明細書に援用したものとする。本発明の範囲と趣旨を逸脱することなく、本発明の様々な修正と変更が可能であることは当業者には明らかである。本発明は、ここで述べる例示的な実施形態および実施例により不当な限定を受けず、このような実施例および実施形態は例示の目的のみで提示され、発明の範囲は冒頭に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのSi−アリーレン結合、および
少なくとも1つの(メタ)アクリレート部分を含み
Si−O結合を含まない、
重合性カルボシラン含有モノマーと、
前記カルボシラン含有モノマーとは異なる重合性(メタ)アクリレート成分と
を含む、
歯科用組成物。
【請求項2】
前記カルボシラン含有モノマーが少なくとも2つのケイ素原子を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記カルボシラン含有モノマーが、式I、
【化1】

(I)
(式中、
Arはアリーレン基であり、
各Aは独立して脂肪族、脂環式、芳香族基、またはそれらの組み合わせであり、
各Rは独立して脂肪族基、脂環式基、またはそれらの組み合わせであって、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含み、二環式基を含むことができ、
各Qは独立して単結合、もしくは脂肪族基、脂環式基、芳香族基、またはそれらの組み合わせであって、任意に1つ以上のO、Br、Cl、またはSi原子、またはそれらの組み合わせを含み、二環式基を含むことができ、
各R’は独立して水素またはメチルであり、
nは少なくとも2である)
を有する、請求項1または2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
充填材系をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
重合開始剤系をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
着色剤、着香剤、薬剤、安定剤、粘度調整剤、希釈剤、流れ制御添加剤、チキソトロープ剤、ポリマー増粘剤、抗菌剤、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
硬化前の組成物容積を基準にして2.0%以下の重合収縮を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
前記歯科用組成物中のカルボシランモノマーの総量が、前記組成物の総重量を基準にして1重量%〜60重量%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。

【公表番号】特表2008−506698(P2008−506698A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521602(P2007−521602)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024826
【国際公開番号】WO2006/019801
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】