説明

カルボニル化合物の重合触媒

【課題】 生体毒性が低く、少量で、α位に水素原子が結合したカルボニル化合物から水酸基含有重合体を円滑に製造できる重合触媒、及び当該重合触媒を用いて水酸基を有する重合体を製造する方法の提供。
【解決手段】 下記の一般式(I);


(式中、Zは、置換基を有するかまたは有していない5〜11員環を示す。)
で表されるテトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸からなるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物の重合触媒、及び当該重合触媒を用いてα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物を重合する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボニル化合物の重合触媒および当該重合触媒を用いてカルボニル化合物を重合する方法に関する。より詳細には、本発明は、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物を重合するための、特定のテトラゾール誘導体とブレンステッド酸からなる重合触媒および当該重合触媒を用いて前記カルボニル化合物を重合する方法に関する。本発明の重合触媒を用いることによって、主鎖を形成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
水酸基を有する重合体は、水酸基に起因して、親水性、接着性などの特有の性質を有しており、そのような性質を活かして、例えば、機能性包装材料、機能性成形材料、各種シート、フィルム、繊維、各種コーティング剤、接着剤、界面活性剤、紙加工剤、機能性アロイ、機能性ポリマーブレンドなどのような各種用途に用いることができる。
【0003】
水酸基を有する重合体の製法としては、酢酸ビニルを重合してポリ酢酸ビニルを製造した後にそのポリ酢酸ビニルをケン化してポリビニルアルコールを製造する方法が従来から広く知られているが、それ以外にも、α位の炭素原子に結合した水素原子を有する脂肪族カルボニル化合物を重合して水酸基を有する重合体を製造する方法が従来から色々提案されている。特に、前記カルボニル化合物のなかでもアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合体を製造するための触媒については従来から色々検討されているが、未だ十分に満足のゆくものがない。
【0004】
例えば、アルカリ金属のアマルガムまたはアルカリ土類金属のアマルガムを触媒として用いてアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合体を製造する方法が知られている(特許文献1を参照)。しかし、この方法は、アマルガム触媒に含まれる水銀が生体に対する毒性が強く安全性に欠けるため、工業的には使用できない。
【0005】
また、カリウムtert―ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシドからなる強塩基性の触媒を使用してアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合体を製造する方法が知られている(特許文献2を参照)。しかしながら、この方法による場合は、アセトアルデヒド1モルに対してアルカリ金属アルコキシド触媒を0.01〜0.5モルという多量で用いる必要があり、それに伴って生成する重合体中に触媒が多く含まれるため、生成物からの触媒成分の除去に手間がかかると共に触媒の完全な除去が困難である。
【0006】
また、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅の有機金属錯体を触媒として使用してアセトアルデヒドを重合してポリビニルアルコール型のヒドロキシ基を有する重合体を製造することが知られている(特許文献3、非特許文献1を参照)。しかし、これらの文献に記載されている方法でアセトアルデヒドを重合する場合は、高価で酸素に不安定な有機金属錯体を使用する必要があるため経済的に不利である。
【0007】
さらに、リチウム金属の芳香族炭化水素付加物からなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合して水酸基を有する重合物を製造し、さらに生成した重合体を水素添加処理することで品質を改善する方法が知られている(特許文献4を参照)。しかし、この重合方法は、重合系に水分が存在しないように厳密に管理する必要があるため、重合の管理が難しく、経済的に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭45−15751号公報
【特許文献2】米国特許第3,422,072号明細書
【特許文献3】特公昭50−039118号公報
【特許文献4】特公昭45−005792号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Yamamoto,A.etal.,「Journal of Polymer Science:Polymer Letters Edition」,1978,Vol.16,p.7−12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生体毒性が低く、酸素および水分に安定で、しかも少量の使用で、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物から重合体、特に主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を円滑に製造することのできる重合触媒を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した重合触媒を使用して、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物を重合して重合体、特に主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、特定のテトラゾール誘導体にブレンステッド酸を組み合わせたものを触媒として用いて、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物を重合すると、触媒の少ない使用量で、重合体、特に主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を安全に製造できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I);
【0013】
【化1】

(式中、Zは、置換基を有するかまたは有していない5〜11員環を示す。)
で表されるテトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸からなる、下記の一般式(II);
【0014】
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。)
で表されるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合して、主鎖を形成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を製造するための重合触媒である。
【0015】
(2) そして、本発明は、テトラゾール誘導体(I)が、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾールである前記(1)の重合触媒;
(3) α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)がα位の炭素原子に結合した水素原子を有する脂肪族アルデヒドまたは脂肪族ケトンである前記(1)または(2)の重合触媒;および、
(4) α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)が、アセトアルデヒドである前記(1)〜(3)のいずれかの重合触媒;
である。
【0016】
さらに、本発明は、
(5) 前記(1)〜(3)のいずれかの重合触媒を用いて、下記の一般式(II);
【0017】
【化3】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。)
で表されるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合することを特徴とする重合体の製造方法;
(6) 前記(1)〜(3)のいずれかの重合触媒を用いて、下記の一般式(II);
【0018】
【化4】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。)
で表されるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合し、次いで水素添加処理および脱アセタール処理の一方または両方を行うことを特徴とする重合体の製造方法;および、
(7) 主鎖を形成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を製造する方法である前記(5)または(6)の製造方法;
である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の重合触媒は、生体に対する毒性が低く、安全性に優れている。
本発明の重合触媒は、空気および水に対して安定であり、取り扱いが容易である。
本発明の重合触媒を用いて、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物を重合すると、少ない触媒量で、重合体、特に主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を円滑に製造することができる。
本発明の触媒を用いて得られる水酸基を有する重合体は、水酸基に起因して親水性、接着性などの特有の性質を有しており、そのような性質を活かして、例えば、機能性包装材料、機能性成形材料、各種シート、フィルム、繊維、各種コーティング剤、接着剤、界面活性剤、紙加工剤、機能性アロイ、機能性ポリマーブレンドなどのような各種用途に用いることができる
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例1で得られた重合体のIR測定によるスペクトルを示す図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた重合体の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【図3】図3は、実施例5で得られた重合体の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の重合触媒は、下記の一般式(I);
【0022】
【化5】

(式中、Zは、置換基を有するかまたは有していない5〜11員環を示す。)
で表されるテトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸からなる。
【0023】
上記の一般式(I)中、Zは置換基を有するかまたは置換基を有していない5〜11員環である。
ここで、前記した「5〜11員環」とは、環「Z」を形成している窒素原子「N」(NHに由来する窒素原子)を含めて5〜11個の原子から形成されていることを意味する。
本発明で用いるテトラゾール誘導体(I)では、テトラゾール環の5位の炭素原子に、5〜11員環である複素環Zが、窒素原子に隣接する炭素原子の位置で炭素−炭素結合をなして結合している。
複素環Zとしては窒素原子1個と炭素原子4〜10個からなる複素環、窒素原子2個と炭素原子3〜9個からなる複素環、窒素原子3個と炭素原子2〜8からなる複素環、窒素原子1個と酸素原子1個と炭素原子3〜9個からなる複素環、窒素原子1個と硫黄原子1個と炭素原子3〜9個からなる複素環などを挙げることができる。
より具体的には、複素環Zの例としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ヘキサメチレンイミン環、ヘプタメチレンイミン環、オクタメチレンイミン環、ノナメチレンイミン環、デカメチレンイミン環などの炭素数2〜10個のアルキレン基が1個の窒素原子に環状に結合している複素環、オキサゾリジン環などの1個の窒素原子と1個の酸素原子を有する複素環、チアゾリジン環などの1個の窒素原子と1個の硫黄原子を有する複素環、イミダゾリジン環などの2個の窒素原子を有する複素環などを挙げることができる。
そのうちでも、複素環Zは、ピロリジン環、ピペリジン環、オキサゾリジン環、チアゾリジン環、イミダゾリジン環であることが、テトラゾール誘導体(I)の入手容易性などの点から好ましい。
【0024】
複素環Zは置換基を有していてもまたは置換基を有していなくてもよい。
複素環Zが置換基を有する場合は、置換基の例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基;、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基;トリメチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルオキシ基などのシリルオキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などの2級アミノ基;フェニル基、1−ナフチル基などのアリール基;水酸基、ニトロ基、ハロゲン基や、複素環に縮合した縮合環などのアリール基などを挙げることができる。
複素環Zは、前記した置換基の1個または2個以上を有することができる。
【0025】
本発明で好ましく用いられるテトラゾール誘導体(I)の具体例としては、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール[別名、5−(2’−ピロリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール]、5−(4H,5H−オキサゾリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール、5−(2’−ピペリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール、5−(ベンゾ[c]−2’−ピペリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール、5−(4’−トリメチルシリルオキシ−2’−ピロリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール、5−(4’−トリイソプロピルシリルオキシ−2’−ピロリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール、5−(4’−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2’−ピロリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール、5−(4’−t−ブチルジフェニルオキシ−2’−ピロリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、テトラゾール誘導体(I)としては、入手容易性の点から、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール[別名、5−(2’−ピロリジニル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール]が好ましく用いられる。
【0026】
本発明の重合触媒は、上記したテトラゾール誘導体(I)およびブレンステッド酸から構成される。ここで、本発明における「ブレンステッド酸」とは、プロトンを与える性質を有する化合物をいう。
本発明では、ブレンステッド酸として、プロトンを与える性質を有する化合物のいずれもが使用でき、特に限定されない。ブレンステッド酸の代表例は、有機酸および無機酸であり、本発明では有機酸および無機酸のいずれもが使用できる。
本発明で使用し得る無機酸の具体例としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素;硫酸、硝酸、次亜塩素酸、過塩素酸、硼酸、燐酸、過マンガン酸、重クロム酸などのオキソ酸;タングストリン酸およびモリブドリン酸などのヘテロポリ酸またはその水和物などを挙げることができる。また、本発明で使用し得る有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、酪酸、安息香酸、メチル安息香酸、クロロ安息香酸、メトキシ安息香酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸などのカルボン酸;フェノール、クレゾール、クロロフェノール、ヒドロキノン、ブロモフェノール、メトキシフェノール、シアノフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノールおよびペンタフロロフェノールなどのフェノール類などを挙げることができる。
本発明では、ブレンステッド酸として、前記した有機酸および無機酸のうちの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、本発明では、ブレンステッド酸として、酢酸、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素の1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0027】
本発明の重合触媒は、反応活性の点から、テトラゾール誘導体(I)1モルに対して、ブレンステッド酸を、ブレンステッド酸が供与できるプロトンの量が0.001〜100モル、特に0.01〜10モルになる範囲の量で含有することが好ましい。
ブレンステッド酸の割合が前記範囲よりも少ないと十分な触媒活性が得られず、一方ブレンステッド酸の割合が前記範囲よりも多いと重合体が有している水酸基の脱水反応などの望ましくない副反応が優先的に進行し易くなる。
【0028】
本発明の重合触媒の形態としては、(a)テトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸を単にそのまま混合したもの、(b)テトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸を溶媒(例えば、水、DMFなど)に溶解させて0〜40℃の温度下で撹拌した後に溶媒を減圧下などで留去したもの、(c)テトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸を溶媒(例えば、水、DMFなど)に溶解させて0〜40℃の温度で撹拌して得られる溶媒をそのまま含む生成物、(d)テトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸を少量のカルボニル化合物(重合基質)中に溶解したものなどのいずれであってもよい。
【0029】
本発明の重合触媒は、触媒活性の阻害などが生じない限り、テトラゾール誘導体(I)およびブレンステッド酸と共に、必要に応じて、他の成分を含有することができる。本発明の重合触媒が含有する他の成分としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化第四級アンモニウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化第四級アンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化第四級アンモニウムなどを挙げることができる。これらの成分は、反応したカルボニル化合物(II)が重合体へと変化する選択性の向上に寄与する。
【0030】
本発明では、上記した重合触媒を用いて、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(以下「α水素含有カルボニル化合物」ということがある)を重合する。
本発明で用いる当該α水素含有カルボニル化合物は、カルボニル基の炭素原子に隣接するα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物であって、下記の一般式(II);
【0031】
【化6】

で表されるカルボニル化合物(II)(アルデヒド類および/またはケトン類)である。
【0032】
上記の一般式(II)で表されるカルボニル化合物(II)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。
1、R2および/またはR3が1価または2価の炭化水素基である場合には、場合により、当該炭化水素基中にエーテル型酸素原子などを有していてもよい。
【0033】
1、R2および/またはR3が1価の炭化水素基である場合の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基などを挙げることができる。
1、R2および/またはR3がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、直鎖状または分岐鎖状のペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基などの炭素数1〜10の鎖状または分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
また、R1、R2および/またはR3がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基などを挙げることができる。
1、R2および/またはR3がアラルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基などを挙げることができる。
また、R1、R2および/またはR3がアリール基である場合の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などを挙げることができる。
1、R2および/またはR3がアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、ノネニル基、デセニル基などを挙げることができる。
【0034】
1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって2価の炭化水素基を形成している場合の具体例としては、カルボニル化合物(II)中のカルボニル基の炭素原子と一緒になって炭素数1〜10のシクロアルカン構造(例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造など)を形成するエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基などの炭素数2〜9のアルキレン基;カルボニル化合物(II)中のカルボニル基の炭素原子と一緒になって炭素数3〜10のシクロアルケン構造(例えばシクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロペンタジエン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘキサジエン構造、シクロオクテン構造、シクロオクタジエン構造、シクロノネン構造、シクロデセン構造など)を形成する炭素数2〜9の2価の炭化水素基、カルボニル化合物(II)中のカルボニル基の炭素原子と一緒になって炭素数5〜10の橋かけ環式炭化水素構造(例えばビシクロ[2.1.0]ペンタン構造、ノルボルネン構造、ノルボルナン構造、ビシクロ[3.2.1]オクタン構造、アダマンタン構造など)を形成する炭素数4〜9の2価の炭化水素基;カルボニル化合物(II)中のカルボニル基の炭素原子と一緒になって炭素数8〜10の縮合多環式炭化水素構造(例えば1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン構造、1,2−ジヒドロペンタレン構造、2,3−ジヒドロインデン構造など)を形成する炭素数7〜9の2価の炭化水素基などを挙げることができる。
【0035】
また、上記の一般式(II)で表されるカルボニル化合物(II)において、R1、R2および/またはR3が置換基を有する1価または2価の炭化水素基である場合は、置換基として、例えば、塩素、臭素などのハロゲン、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などを挙げることができる。
【0036】
上記の一般式(II)で表されるカルボニル化合物(II)の代表例は、α位の炭素原子に結合した水素原子を有する炭素数2〜20のアルデヒドまたはケトンであり、具体例としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒドなどの炭素数2〜12の脂肪族飽和アルデヒド、シクロプロパンカルボキシアルデヒド、シクロブタンカルボキシアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドなどの脂環式アルデヒド、テトラヒドロフラン−2−カルボキシアルデヒド;2−フェニルアセトアルデヒド、2−クロロアセトアルデヒド、2,2’−ジクロロアセトアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、エチルメチルケトン、プロピルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトンなどの脂肪族飽和ケトン、メチルビニルケトン、メシチルオキシド、メチルヘプテノンなどの不飽和ケトン、フルオロアセトン、クロロアセトン、フェニルアセトン、2,4−ペンタンジオン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、シクロデカノン、2−ノルボルナノン、2−アダマンタノン、ベンジルアセトン、1−インダノン、2−インダノン、α−テトラロン、β−テトラロン、7−メトキシ−2−テトラロン、アセトフェノン、プロピオフェノン、3,4−ジメチルアセトフェノン、2−クロロアセトフェノンなどのケトン類を挙げることができる。
上記したカルボニル化合物(II)のなかでも、入手容易性の観点から、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンが好ましく用いられ、アセトアルデヒドがより好ましく用いられる。
【0037】
α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を、テトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸からなる重合触媒を用いて重合する。
カルボニル化合物(II)を重合する際の重合触媒の使用量は、カルボニル化合物(II)1モルに対して、テトラゾール誘導体(I)の使用割合が0.001〜50モル、更には0.01〜25モル、特に0.1〜10モルとなる量であることが好ましい。
重合触媒の使用量が少なすぎると、カルボニル化合物(II)の重合が円滑に行われず、一方重合触媒の使用量が多すぎると、脱水反応などの望ましくない副反応が生じ易い。
また、カルボニル化合物(II)を重合する際の水の量(水の添加量)は、カルボニル化合物(II)の質量に基づいて、0〜90質量%であることが好ましく、0〜50質量%であることがより好ましい。
水を添加することによって脱水反応などの望ましくない副反応が抑制されるが、水の添加量が多すぎると重合反応が円滑に行われなくなり易い。
【0038】
テトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸からなる重合触媒を用いてカルボニル化合物(II)を重合するに当たっては、重合を、溶媒を用いずに行ってもよいしまたは溶媒中で行っても良い。
溶媒中で行う場合は、溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの脂環式エーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;水などを用いることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量に特に制限はないが、反応混合液全体の体積に基づいて、通常、溶媒の割合が0.5〜95体積%、特に1〜90体積%であることが好ましい。
【0039】
カルボニル化合物(II)を重合させる際の反応温度は、−30〜100℃の範囲であることが好ましく、0〜40℃の範囲であることがより好ましい。前記範囲の反応温度を採用することにより、カルボニル化合物(II)の重合反応が適度な時間内に進行し、しかも触媒の失活や脱水反応のような副反応を抑制することができる。
重合反応時間は、通常、0.1時間〜30日間の範囲であることが好ましく、0.5時間〜7日間の範囲であることがより好ましい。
重合時の反応圧力には特に制限はなく、常圧から加圧の範囲で実施可能であり、通常、0.1〜1.0MPaで反応が行われる。
【0040】
カルボニル化合物(II)の重合反応は、攪拌型反応槽、循環型反応槽などを用いて、連続方式またはバッチ方式で行うことができる。
反応終了後における、反応混合物からの重合体の分離、重合体の精製は、通常の方法で行うことができ、例えば、再沈殿またはクロマトグラフィーで精製することにより目的とする重合体が得られる。前記した精製操作は、単独で行ってもよいし、または組み合わせて行ってもよい。
前記した精製操作に加えて、必要に応じて、触媒の分離操作を行う。触媒の分離には、蒸発法、薄膜蒸留法、層分離法、抽出法、吸着法などの分離方法を採用することができ、これらの分離方法は単独で行ってもよいし、または複数を組み合わせて行ってもよい。
【0041】
本発明の重合触媒を用いて得られる重合体は、使用するカルボニル化合物(II)の種類などに応じて、淡黄色から暗赤色の粘稠な油脂状、粉体状、または固体状を呈している。
本発明により得られる重合体の赤外線吸収スペクトルは、O−H、メチルC−H、メチレンC−H、C=Oに相当するところに大きな吸収を示す。また水素核磁気共鳴スペクトルでは、これらに加えて、アセタールメチンC−H、−CH=CH−に相当するピークが現れる。
上記の点から、本発明の重合触媒を用いて得られる重合体は、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合したポリビニルアルコール型の主鎖構造を有する多価アルコールであって、水酸基の一部がアセタール化され、また末端に基:−CH=CH−CHOを有しているものと考えられる。本発明により得られる重合体が着色して原因としては、アセタールメチンC−Hや不飽和二重結合の存在が考えられる。
本発明により得られる重合体は、重合体の主鎖を構成する炭素原子に親水性の水酸基を有していることにより、水やアルコールに容易に溶解し、その一方でジクロロメタンやベンゼンのような極性の低い溶媒には溶解しにくい。
【0042】
本発明により得られる重合体は、そのまま使用してもよいし、または無色化や着色低減のための脱色処理を行ってもよい。
本発明により得られる重合体の着色を減少させるためには、水素添加処理および脱アセタール処理が有効である。
重合体の着色を減少させるに当たっては、水素添加処理および脱アセタール処理のうちの一方のみを行ってもよいし、または両方を行ってもよい。
水素添加処理と脱アセタール処理の両方を行う場合には、水素添加処理を行った後に脱アセタール処理を行ってもよいし、脱アセタール処理を行った後に水素添加処理を行ってもよい。そのうちでも、水素添加処理を先に行うことが、着色の低減効果が大きい点から好ましい。
【0043】
水素添加処理としては、慣用されている種々の方法を採用することができる。例えば、Cr,Ni,Co,Pt,Pdなどの水素活性化作用を示す金属の存在下で水素処理する方法、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を用いて処理する方法などがある。水素添加処理して得られる重合体は、一般に無色であり、着色しているとしても極く僅かに黄味がかっているだけである。水素添加処理した後の重合体の水素核磁気共鳴スペクトルでは、−CH=CH−に相当するピークが減少している。
脱アセタール処理は、例えばJIS K6728「ボリビニルブチラール試験方法」第5章第5節第2項に従って行うことができるが、これに限定されるものではない。脱アセタール処理後の重合体の水素核磁気共鳴スペクトルでは、アセタールメチンC−Hのピークが著しく減少する。
【0044】
上記によって得られる水酸基を有する重合体(着色の低減処理を行っていない重合体および着色の低減処理を行った重合体)は、例えば、粘度調整剤、接着剤、界面活性剤、紙加工剤、機能性アロイ、各種コーティング剤などの種々の用途に使用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
以下の実施例および比較例では、アセトアルデヒドの転化率(重合体の収率)および重合体の分子量は以下の方法で求めた。
【0046】
(1)アセトアルデヒドの転化率:
反応溶液の一部および内部標準物質としてメシチレンを重クロロホルムに溶解して、核磁気共鳴装置(JEOL製「JNM−ECP500」)を用いてプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定し、アセトアルデヒドのアルデヒドプロトンとメシチレンの芳香環プロトンに由来するピークの面積比からアセトアルデヒドの転化率を算出した。
【0047】
(2)重合体の分子量の測定方法:
重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。詳細な測定な条件は以下のとおりである。
<測定条件>
装置 :max302(vidcotek社製)
カラム:α6000+3000(東ソー社製)(カラム温度:60℃)
移動相:DMF+10mM LiBr(流速:0.8 mL/分)
分析時間:40分
検出器: RI
濾過 :0.45μmフィルター
濃度 :0.1wt/vol%
注入量:100μL
標品 :ポリスチレン
解析 :Empower(Water社製の解析ソフト)
【0048】
(3)重合体の構造分析:
重合体の構造分析は、赤外線分光装置(日本分光製「FT/IR−4200」)を用いて赤外線吸収(IR)スペクトルを測定すると共に、核磁気共鳴装置(JEOL製「JNM−ECP500」)を用いて1H−NMRを測定することにより行った。
【0049】
また、下記の実施例および/または比較例において重合触媒の調製に用いた含窒素複素環化合物の構造を以下に示す。
【0050】
【化7】

【0051】
また、下記の実施例および/または比較例で用いた化合物(試薬)の入手先および内容を以下に示す。
《1》5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール:
東京化成工業株式会社より購入した特級試薬をそのまま使用。
《2》プロリン:
東京化成工業株式会社より購入した特級試薬をそのまま使用。
《3》ピロリジン:
東京化成工業株式会社より購入した特級試薬をそのまま使用。
《4》プロリノール:
東京化成工業株式会社より購入した特級試薬をそのまま使用。
《5》α,α−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)プロリノール:
東京化成工業株式会社より購入した特級試薬をそのまま使用。
《6》(2−tert−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン)トリフルオロ酢酸塩:
アルドリッチ社より購入した特急試薬をそのまま使用。
《7》酢酸:
関東化学株式会社から購入した特級試薬をそのまま使用。
《8》塩酸:
関東化学株式会社から購入した特級試薬をそのまま使用。
《9》臭化水素酸:
関東化学株式会社から購入した特級試薬をそのまま使用。
《10》ヨウ化水素酸:
関東化学株式会社から購入した特級試薬をそのまま使用。
【0052】
《実施例1》
(1) 窒素雰囲気下で、シュレンクフラスコ(容量300mL)に水1mLを入れ、これに5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール700mg(5.0mmol)および酢酸300mg(5.0mmol)を添加して水に溶解させ、室温下で1時間攪拌した後、減圧下で水を留去して重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加した後、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ11%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、黄色の粉末状固体からなる重合体0.31gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を上記した方法でGPCにより測定したところ、Mnは200、Mwは1100であった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行った。その赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
図1のスペクトルにみるように、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1680cm-1および1718cm-1に、アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動2968cm-1および2937cm-1に観測され、また水酸基に帰属できるO−H伸縮振動が3421cm-1に、飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動が1119cm-1に観測されたことから、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体が生成していることが確認された。
(6)上記(3)で得られた重合体について1H−NMR(溶媒:重DMSO)測定を行った。その1H−NMRスペクトルを図2に示す。
図2のスペクトルにみるように、アルデヒド基のプロトン(9.6ppm)、アセタール基のメチンプロトン(5.2ppm)および共役―CH=CH−(7.4ppm)にそれぞれ帰属できるピークが観測されたことから、上記(3)で得られた重合体は、更に不飽和アルデヒド基およびアセタール基を有することが確認された。なお、3.7ppmのピークは水によるものである。
【0053】
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)において、酢酸300mg(5.0mmol)の代わりに、塩酸(濃度35質量%)1.0mL(塩化水素として5.0mmol)を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ49%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、茶色の粉末状固体からなる重合体2.67gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を上記した方法でGPCにより測定したところ、Mnは300、Mwは1100であった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1682cm-1および1720cm-1アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2937cm-1および2972cm-1に観測され、また水酸基に帰属できるO−H伸縮振動が3421cm-1付近に、飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動が1105cm-1に観測されたことから、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体が生成していることが確認された。
【0054】
《実施例3》
(1) 実施例1の(1)において、酢酸300mg(5.0mmol)の代りに、臭化水素酸(濃度47質量%)1.4mL(臭化水素として5.0mmol)を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ92%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、茶色の粉末状固体からなる重合体2.20gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を上記した方法でGPCにより測定したところ、Mnは300、Mwは1500であった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1686cm-1および1719cm-1アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2935cm-1および2972cm-1に観測され、また水酸基に帰属できるO−H伸縮振動が3404cm-1付近に、飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動が1141cm-1に観測されたことから、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体が生成していることが確認された。
【0055】
《実施例4》
(1) 実施例1の(1)において、酢酸300mg(5.0mmol)の代りに、ヨウ化水素酸(濃度57質量%)1.7mL(ヨウ化水素として5.0mmol)を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ9%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、茶色の粉末状固体からなる重合体2.28gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を上記した方法でGPCにより測定したところ、Mnは300、Mwは900であった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1684cm-1および1719cm-1アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2928cm-1および2961cm-1に観測され、また水酸基に帰属できるO−H伸縮振動が3415cm-1付近に、飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動が1124cm-1に観測されたことから、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体が生成していることが確認された。
【0056】
《実施例5》
(1) 実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で、水を添加せずにアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)のみを添加した後、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ10%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、黄茶色の粉末状固体からなる重合体0.02gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を上記した方法でGPCにより測定したところ、Mnは200、Mwは1100であった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1664cm-1および1713cm-1アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2928cm-1および2961cm-1に観測され、また水酸基に帰属できるO−H伸縮振動が3429cm-1に、飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動が1124cm-1に観測されたことから、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体が生成していることが確認された。
【0057】
《実施例6》
(1) 実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で、水10mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加した後、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ33%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、黄茶色の粉末状固体からなる重合体0.02gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を上記した方法でGPCにより測定したところ、Mnは200、Mwは1000であった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1659cm-1アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2968cm-1に観測され、また水酸基に帰属できるO−H伸縮振動が3417cm-1に、飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動が1124cm-1に観測されたことから、主鎖を構成する炭素原子に水酸基が結合した重合体が生成していることが確認された。
【0058】
《比較例1》
(1) 実施例1の(1)において、酢酸を添加しなかった以外は実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ4.1%であった。
(3) 上記(2)で7日間の反応後の反応溶液を、ジエチルエーテル(300mL)に投入したが、沈殿物は生じず重合体を得ることができなかった。
【0059】
《比較例2》
(1) 実施例1の(1)において、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール70mg(0.50mmol)の代わりに、プロリン57.6mg(0.50mmol)を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ36%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、黒色の粉末状固体からなる重合体0.04gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体は、DMFに溶解しなかったため、GPCによる数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定を行うことができなかった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1676cm-1および1720cm-1に、アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2930cm-1に観測されたが、水酸基に帰属できるO−H伸縮振動(3400cm-1付近)および飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動(1087〜1124cm-1)が観測されなかったことから、上記(3)で得られた重合体は、水酸基を持たないことが確認された。
【0060】
《比較例3》
(1) 実施例1の(1)において、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール70mg(0.50mmol)の代わりに、ピロリジン35.6mg(0.50mmol)を用いた以外は実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ19%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、黒色の粉末状固体からなる重合体1.4gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体は、DMFに溶解しなかったため、GPCによる数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定を行うことができなかった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1657cm-1に、アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2925cm-1に観測されたが、水酸基に帰属できるO−H伸縮振動(3400cm-1付近)および飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動(1087〜1124cm-1)が観測されなかったことから、上記(3)で得られた重合体は、水酸基を持たないことが確認された。
【0061】
《比較例4》
(1) 実施例1の(1)において、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール700mg(5.0mmol)の代わりに、プロリノール510mg(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ39%であった。
(3) 上記(2)で得られた7日間の反応後の反応溶液をジエチルエーテル(300mL)に投入して重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収して30℃で減圧乾燥して、黒色の粉末状固体からなる重合体0.24gを得た。
(4) 上記(3)で得られた重合体は、DMFに溶解しなかったため、GPCによる数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定を行うことができなかった。
(5) 上記(3)で得られた重合体についてIR測定を行ったところ、カルボニル基に帰属できるC=O伸縮振動が1676cm-1および1720cm-1アルキル基に帰属できるC−H伸縮振動が2920cm-1に観測されたが、水酸基に帰属できるO−H伸縮振動(3400cm-1付近)および飽和第2級アルコールに帰属できるC−O伸縮振動(1087〜1124cm-1)が観測されなかったことから、上記(3)で得られた重合体は、水酸基を持たないことが確認された。
【0062】
《比較例5》
(1) 実施例1の(1)において、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール700mg(5.0mmol)の代わりに、α,α−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)プロリノール2630mg(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ52%であった。
(3) 上記(2)で7日間の反応後の反応溶液を、ジエチルエーテル(300mL)に投入したが、沈殿物は生じず重合体を得ることができなかった。
【0063】
《比較例6》
(1) 実施例1の(1)において、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾール700mg(5.0mmol)および酢酸300mg(5.0mmol)の代わりに、(2−ter−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン)トリフルオロ酢酸塩1350mg(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして重合触媒を調製した。
(2) 重合触媒を収容した上記(1)のシュレンクフラスコに、0℃で水1mLおよびアセトアルデヒド78.6g(1780mmol)を添加し、フラスコを加熱してフラスコの内温を室温(25℃)まで上昇させて室温下で攪拌しながら7日間反応させた。反応開始(フラスコの内温が室温に到達した時点)から7日後の反応溶液の一部(0.1mL)を採取して、上記した方法でアセトアルデヒドの転化率を測定したところ23%であった。
(3) 上記(2)で7日間の反応後の反応溶液を、ジエチルエーテル(300mL)に投入したが、沈殿物は生じず重合体を得ることができなかった。
【0064】
上記した実施例1〜6および比較例1〜6の結果を下記の表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
上記の表1にみるように、実施例1〜6では、テトラゾール誘導体(I)の範疇に含まれる5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾールとブレンステッド酸からなる重合触媒を用いて、水の存在下で、カルボニル化合物(II)の範疇に包含されるアセトアルデヒドを重合したことにより、水酸基(主鎖を構成する炭素原子に結合した水酸基)を有する重合体が得られている。
また、実施例5では、水を用いずに、それ以外は実施例1と同様にしてアセトアルデヒドを重合して、水酸基を有する重合体が得られている。
実施例6では、溶媒として水を10mL用いてアセトアルデヒドを重合したことで、脱水反応が抑制でき、水酸基含有量の多い重合体が得られている。
【0067】
それに対して、比較例1では、ブレンステッド酸を用いずに、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾールのみからなる触媒を用いてアセトアルデヒドを重合したことにより,重合体が得られていない。
また、比較例2、3および4では、プロリン、ピロリジンまたはプロリノールと、ブレンステッド酸(酢酸)からなる重合触媒を用いて、水の存在下で、アセトアルデヒドを重合したことにより、重合体は生成するが、当該重合体は水酸基を有していない。
比較例5ではα,α−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)プロリノールとジアリールプロリノールとブレンステッド酸(酢酸)からなる重合触媒を用い、比較例6では(2−ter−ブチル−3−メチル−4−イミダゾリジノン)トリフルオロ酢酸塩とブレンステッド酸(酢酸)からなる重合触媒を用いて、アセトアルデヒドを重合したが重合体が得られない。
【0068】
《実施例7》
実施例1で得られた重合体100mg、5%パラジウム炭素(N.E.ケムキャット社製、STDタイプ)80mgおよびメタノール5mLをオートクレーブに充填して、80℃、水素0.8MPaの加圧条件下で水素添加反応を実施した。10時間後に反応を停止し、触媒をセライトで濾別し、得られた溶液を3mLまで濃縮後、濃縮液をジエチルエーテル50mLに投入して沈殿を生じさせ、沈殿物を回収して30℃で減圧乾燥することによって、薄黄色の粉末状固体からなる重合体86mgを得た。
これにより得られた重合体の1H−NMRスペクトルを図3に示す。なお、3.5ppmのピークは水によるものである。
【0069】
図2のスペクトルと図3のスペクトルを比較すると、図3のスペクトルでは、図2のスペクトルに比べて、重合体の着色原因となるアルデヒド基、共役−CH=CH−基に帰属するピーク(6〜11ppm)が大きく減少していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の重合触媒は、生体毒性が小さく安全性に優れ、空気中に安定であって、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)から、水酸基、特に重合体の主鎖を構成する炭素原子に結合した水酸基を有する重合体を円滑に製造することができるので、α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)用の重合触媒として有効に使用することができ、また本発明の重合触媒を用いてα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合して得られる重合体を水素添加処理および/または脱アセタール処理することにより、着色原因となる官能基が低減していて無色や白色に近い、色調に優れる重合体が得られるので、本発明は、産業上での利用や開発に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I);
【化1】

(式中、Zは、置換基を有するかまたは有していない5〜11員環を示す。)
で表されるテトラゾール誘導体(I)とブレンステッド酸からなる、下記の一般式(II);
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。)
で表されるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合して、主鎖を形成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を製造するための重合触媒。
【請求項2】
テトラゾール誘導体(I)が、5−(ピロリジン−2−イル)−1H−1,2,3,4−テトラゾールである請求項1に記載の重合触媒。
【請求項3】
α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)が、α位の炭素原子に結合した水素原子を有する脂肪族アルデヒドまたは脂肪族ケトンである請求項1または2に記載の重合触媒。
【請求項4】
α位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)が、アセトアルデヒドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合触媒。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合触媒を用いて、下記の一般式(II);
【化3】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。)
で表されるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合することを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合触媒を用いて、下記の一般式(II);
【化4】

(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるか、或いはR1とR2が一緒になるか、R2とR3が一緒になるかまたはR1とR3が一緒になって置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を形成している。)
で表されるα位の炭素原子に結合した水素原子を有するカルボニル化合物(II)を重合し、次いで水素添加処理および脱アセタール処理の一方または両方を行うことを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項7】
主鎖を形成する炭素原子に水酸基が結合した重合体を製造する方法である請求項5または6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57014(P2013−57014A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196472(P2011−196472)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】