説明

カルボン酸エステルの製造方法

カルボン酸またはカルボン酸無水物またはこれらの混合物と、アルコールとを、1もしくは複数の反応器からなる反応装置中で反応させることによりカルボン酸エステルを製造する方法であって、反応水をアルコールと水との共沸混合物として蒸気と一緒に留去し、該蒸気を少なくとも部分的に凝縮させ、凝縮液を水相と有機相とに分離し、かつ該有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する方法。返送すべき有機相から、たとえばアルコールよりも沸点の低い成分を、蒸発させ、および/または留去することにより、アルコールよりも沸点の低い成分を少なくとも部分的に除去する。反応装置中で、アルコールよりも沸点の低い副生成物が富化することが回避される。排出流によるアルコールの損失を最小化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸、またはカルボン酸無水物、またはこれらの混合物と、アルコールとの反応によりカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、またはマレイン酸のエステルは、ラッカー樹脂中で、塗料の成分として、および特にプラスチックの可塑剤として幅広く使用されている。
【0003】
カルボン酸とアルコールとの反応によりカルボン酸エステルを製造することは公知である。この反応は、自触媒反応または触媒反応、たとえばブレンステッド酸もしくはルイス酸により実施することができる。触媒反応の種類とは無関係に、原料(カルボン酸およびアルコール)と生成物(エステルおよび水)との間には、常に温度に依存した平衡が生じる。
【0004】
内部のカルボン酸無水物とアルコールとの反応は、2つの工程で進行する:無水物からモノエステルへのアルコール分解は通常、迅速かつ完全に行われる。反応水の形成下でのモノエステルからジエステルへのその後の反応は可逆的であり、かつ緩慢に進行する。この第二工程は、反応速度を決定する工程である。
【0005】
平衡をエステル(もしくは多塩基酸の場合には、完全エステル)側にシフトさせるためには通常、共留剤が使用され、この共留剤によって反応水がバッチから除去される。原料(アルコールまたはカルボン酸)の一つが、形成されるエステルよりも低い沸点を有しており、かつ水と混和ギャップを形成する場合には、原料を共留剤として使用し、かつ水を分離した後に再びバッチへ返送することができる。高級脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、または二塩基もしくは多塩基カルボン酸のエステル化の場合には、通常、使用されるアルコールが共留剤である。
【0006】
EP−A1186593は、ジカルボン酸もしくはポリカルボン酸またはこれらの無水物とアルコールとの反応によるカルボン酸エステルの製造方法を記載しており、その際、反応水は共沸蒸留によりアルコールと一緒に除去される。共沸蒸留により反応から除去される液体量は、完全に、または部分的にアルコールによって再び補充される。
【0007】
使用されるアルコールを共留剤として使用する場合、通常は、反応器からの蒸気を少なくとも部分的に凝縮し、凝縮液を水相と、実質的にエステル化のために使用されるアルコールからなる有機相とに分離し、かつ該有機相を少なくとも部分的に反応器に返送する。もちろん、エステル化反応の場合には、所望のエステル以外に種々の副生成物が生じる。特に、アルコールよりも沸点が低い副生成物は、有機相と一緒に反応器へ返送され、かつ特に連続的な方法実施の場合には、反応装置中で富化する場合がある。
【0008】
アルコールより沸点の低い副生成物は主として、使用されるアルコールから水を分離することによって形成されるオレフィンからなっていることが判明した。高いオレフィン濃度は、使用されるエステル化触媒を損傷するか、かつ/または製造されるエステル生成物の品質を損ない、特に望ましくない変色につながりうる。アルコールより沸点の低い副生成物が反応装置中で富化することを回避するために、有機相を完全に反応器に返送するのではなく、部分流を排出することが教示される。しかし排出流と共に、エステル化反応のために使用されるアルコールの著しい割合が失われる。
【0009】
従って本発明は、排出流によるアルコールの損失を最小化するという課題に基づいている。
【0010】
従って本発明の対象は、カルボン酸またはカルボン酸無水物またはこれらの混合物と、アルコールとを、1もしくは複数の反応器からなる反応装置中で反応させることによりカルボン酸エステルを製造する方法であって、反応水をアルコールと水との共沸混合物として蒸気と共に留去し、該蒸気を少なくとも部分的に凝縮させ、凝縮液を水相と有機相とに分離し、かつ該有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する方法において、返送される有機相から、アルコールよりも沸点の低い成分(以下では「低沸点成分」とも称する)を少なくとも部分的に除去することを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法である。
【0011】
「反応装置」とは、1の反応器または複数の反応器の配列であると理解される。複数の反応器は有利には直列に接続されている。「反応装置への返送」とは、有機相が反応装置の少なくとも1の任意の反応器へ導通されることを意味している。本発明による方法は、不連続的に、または連続的に実施することができるが、しかし有利には連続的に実施される。低沸点成分は、使用されるアルコールから水の分離により誘導されるオレフィンを含有するか、もしくはほぼオレフィンからなっている(通常、オレフィンの異性体混合物)。
【0012】
反応器は、液相中での化学反応を実施するために適切な、任意の反応器であってよい。
【0013】
反応器として、逆混合されない反応器、たとえば攪拌式反応器または内部構造物を備えた滞留式反応器、しかし有利には逆混合される反応器、たとえば攪拌反応器、ループリアクタ、ジェットループリアクタ、またはジェットノズルリアクタが適切である。しかしまた、連続して逆混合が行われる反応器と、逆混合が行われない反応器とからなる組み合わせを使用することもできる。
【0014】
場合により複数の反応器を多段の装置にまとめることもできる。このような反応器はたとえば、内部に組み込まれた多孔板を有するループリアクタ、カスケード式反応器、中間供給部を有する管型反応器、または攪拌式反応塔である。
【0015】
別の方法実施では、反応を反応蒸留塔中で実施することができる。これらの塔は、それぞれの段階における反応溶液の高い滞留時間により優れている。たとえば有利には、たとえば棚段塔の高く積まれたトレーにおいて、高い液体「ホールドアップ」を有する塔を使用することができる。
【0016】
有利には攪拌容器型反応器を使用する。攪拌容器型反応器は多くの場合、金属材料からなっており、その際、特殊鋼が有利である。反応バッチは有利には攪拌機により、または循環ポンプにより強力に混合することができる。
【0017】
本発明による方法を1の反応器中でのみ運転することができるとしても、できる限り完全な反応のためには、複数の反応器、たとえば攪拌反応器を互いに接続して反応器のカスケードの形にすることが有利である。個々の反応器を反応混合物が順次貫流し、その際、第一の反応器の排出流が第二の反応器へ、第二の反応器の排出流が第三の反応器へ等と供給される。反応器のカスケードはたとえば2〜10段を含んでいてもよく、その際、4〜6段が有利である。
【0018】
反応の間に、アルコールと水との混合物が共沸混合物として反応混合物から留去される。反応の間に、さらにアルコールが反応器もしくは反応装置の個々の反応器に後供給される。有利には規定の量のアルコール流をそれぞれの反応器に供給する。流量の調整は、それぞれの反応器中で周期的に測定される反応混合物の酸価に依存して行うことができる。
【0019】
蒸気の凝縮もしくは部分的な凝縮のために、全ての適切な凝縮器を使用することができる。これは任意の冷媒で冷却することができる。空冷式および/または水冷式の凝縮が有利であり、その際、空冷式が特に有利である。
【0020】
得られた凝縮液は、水相と有機相とへの相分離に供される。通常、このために凝縮液を相分離器(デカンター)に通し、ここで機械的な沈殿により2つの相に分離され、これらの相を別々に除去することができる。水相は分離され、かつ場合により後処理の後で廃棄処理するか、またはストリッピング水としてエステルの後処理の際に使用することができる。
【0021】
カスケードの個々の攪拌容器からの蒸気は合され、かつ一緒に本発明による低沸点成分の分離に供することができる。つまり、カスケードの複数の容器から生じた蒸気を効果的に処理するためには、低沸点成分の分離のために1の凝縮器と、1の装置のみで十分でありうることが示された。
【0022】
場合によりカスケードのその都度の複数の容器を1つのサブユニットにまとめることができ、この場合には、その都度、このサブユニットは凝縮器および低沸点成分を分離するための装置と接続されている。さらに、それ以外に、カスケードのそれぞれの容器を凝縮器と結合する可能性が存在する。
【0023】
本発明により処理される、返送すべき有機相は、カスケードの任意の反応器に導通するか、またはカスケードの複数の反応器に分割することができる。しかし、本発明により処理される、返送すべき有機相は、カスケードの最後の反応器を通過しないことが有利である。有利には、本発明により処理される、返送される有機相をもっぱら、または主としてカスケードの第一の反応器に導通する。
【0024】
有機相を反応装置へ返送するためには種々の可能性が存在する。1つの可能性は、有機相を、場合により加熱した後で、液状の反応混合物へとポンプで輸送することである。
【0025】
しかし、方法を熱的に最適化するためには、有利には、返送される有機相がその中で少なくとも蒸気の一部に対して向流で案内されるカラム(いわゆる返送アルコール塔)を介して有機相を反応装置へ返送する。有利には、有機相を塔頂で、または上部の領域で返送アルコール塔に導入する。返送アルコール塔の排出される凝縮液は、返送されて反応装置に到達し、反応器カスケードを使用する場合には、有利には第一の反応器に到達する。返送アルコール塔を介した有機相の返送は、返送される有機相が予熱され、かつ相分離後に有機相中に残留している、もしくはその熱力学的な溶解性によって有機相中に溶解している水の痕跡が除去されるという利点を有している。返送アルコール塔は、たとえば棚段塔、規則充填体を有する充填塔、または不規則充填体を有する充填塔であってよい。分離段の数は少なくても一般に十分である。たとえば2〜10の理論分離段を有する塔が適切である。
【0026】
反応器カスケードを使用する場合、蒸気は有利には返送アルコール塔を介して少なくとも第一の反応器を離れる。1もしくは複数の、または全てのその他の反応器は、同様に返送アルコール塔のための蒸気排出部を有していてよい。
【0027】
本発明によれば、返送される有機相から、アルコールよりも沸点の低い成分を少なくとも部分的に除去する。この場合、オレフィン/アルコール、もしくはオレフィンと水との共沸混合物/アルコールと水との共沸混合物の間の沸点の違いを利用する。沸点の順序を、以下に1−ノネン/1−ノナノールもしくはこれらと水との共沸混合物の例により示す:
【0028】
【表1】

【0029】
方法の1実施態様では、アルコールと水との共沸混合物を含有する蒸気は不完全に凝縮され、その際、アルコールよりも沸点の低い成分は、凝縮されていない蒸気中で富化し、かつ凝縮されなかった蒸気と共に排出することができる。該凝縮液を水相と、実質的にアルコールからなる有機相とに分離し、かつ該有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する。
【0030】
蒸気の不完全な凝縮は、凝縮器中の温度を適切に選択することにより、たとえば温度および/または冷媒の流量を選択することにより行うことができる。蒸気の不完全な凝縮のためには、蒸気をたとえば塔底もしくは側方での供給流として、塔に導通することもできる。凝縮していない蒸気は、後方の冷却器で凝縮し、かつたとえば熱の利用に供給することができる。
【0031】
この実施態様では、アルコールと低沸点成分との分離を水の存在下で行う。この分離はアルコールと水との共沸混合物と、オレフィンと水との共沸混合物との沸点に違いに基づいたものである。前記の表に示されているように、これらの共沸混合物間の沸点の相違は顕著ではないため、分離段の数が少ないと、不完全な分離が可能であるにすぎない。さらに、アルコールと水との共沸混合物と、オレフィンと水との共沸混合物以外に、さらにアルコール、オレフィン等を含有する複雑な混合物が形成されうる。アルコールと水との共沸混合物の沸点は通常、オレフィンの沸点よりも低いので、この実施態様では低沸点成分の不完全な分離が達成されるにすぎない。従って、凝縮されなかった蒸気は依然として、エステル化反応のために失われた大量のアルコールを含有している。
【0032】
従って、方法のもう1つの有利な実施態様では、アルコールと水との共沸混合物を含有する蒸気を、少なくとも部分的に凝縮し、特に実質的に完全に凝縮し、かつ該凝縮液を水相と有機相とに分離する。有機相の少なくとも一部を、アルコールよりも沸点の低い成分を蒸発させる、および/または留去することによって処理し、こうして処理した有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する。蒸発させた、もしくは留去した低沸点成分を、後方の冷却器中で凝縮し、かつたとえば熱の利用に供給することができる。
【0033】
この実施態様では、アルコールと低沸点成分との分離を水がほとんど存在しないで行う。アルコールおよびオレフィンは通常、沸点の違いが大きいので(上記の表を参照のこと)、低沸点成分を十分に分離するためには、単蒸留または少ない分離段の数を用いた蒸留で多くの場合は十分である。
【0034】
反応装置中での低沸点成分の富化を回避するためには、単に有機相の一部を反応装置へ返送する前に処理するだけで十分であることが判明した。従って適切な実施態様では、有機相の一部を変えずに反応装置へ返送し、かつ有機相の他方の部分を、アルコールより沸点の低い成分を蒸発させる、および/または留去することにより処理し、かつこうして処理した有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する。有利には、相分離の際に生じる全ての有機相の少なくとも20%、特に全ての有機相の25〜60%、たとえば30〜40%を処理する。
【0035】
アルコールよりも沸点の低い成分の蒸発もしくは留去は、このために適切な任意の装置で、たとえば任意の構造の蒸留塔または蒸発器、たとえば攪拌式蒸発器、斜め管式(Schraegrohr)蒸発器、自然循環型もしくは強制循環型の垂直管式蒸発器、上昇薄膜式蒸発器、流下薄膜式蒸発器、水平管式蒸発器、ローベルト蒸発器、ヘルベルト蒸発器、浸液型蒸発器、スパイラル式蒸発器、プレート式蒸発器、サムベイ蒸発器、または類似の装置で行うことができる。塔もしくは蒸発器の塔底生成物は、少なくとも部分的に反応装置へ返送される。
【0036】
塔として、たとえば棚段塔、規則充填体を有する充填塔、または不規則充填体を有する充填塔が適切である。有利には塔頂凝縮液の一部を、場合により相分離および連行された水相の分離の後で、返送流として塔へ返送する。塔頂凝縮液の他方の部分は、方法から排出する。
【0037】
多くの場合、放圧蒸発が適切である。このために、有機相の少なくとも一部を放圧容器へと放圧し、その際、アルコールよりも沸点の低い成分を少なくとも部分的に蒸発させ、かつ蒸発していない液相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する。放圧の際の圧力差は、たとえば500ミリバール未満、有利には200ミリバール未満の最終圧力に対して少なくとも500ミリバールである。場合により有機相を放圧の前に間接的な熱交換によって加熱する。適切な熱交換器はたとえばシェルアンドチューブ(多管式)熱交換器、二重管式熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル式熱交換器、フィンチューブ熱交換器などである。放圧前の有機相の温度は、アルコールもしくはオレフィンの沸点に従って、および放圧の際の差圧に従って定められる。有利には、低沸点成分を放圧の際にほぼ完全に蒸発させる温度で十分である。
【0038】
本発明による方法は原則として、反応水をアルコールとの共沸混合物として蒸留により分離する全てのエステル化に応用することができる。
【0039】
本発明による方法では、酸成分としてカルボン酸またはカルボン酸無水物を使用する。多塩基性のカルボン酸の場合、部分的に無水物の化合物を使用することもできる。同様に、カルボン酸と無水物とからなる混合物を使用することも可能である。
【0040】
酸は、炭素環式、複素環式、飽和もしくは不飽和を含む脂肪族であっても、ヘテロ芳香族を含む芳香族であってもよい。
【0041】
適切なカルボン酸には、少なくとも5個の炭素原子、特に5〜20個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸、たとえばn−ペンタン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、2−エチル酪酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、イソヘプタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、n−ノナン酸、2−メチルオクタン酸、イソノナン酸、n−デカン酸、イソデカン酸、2−メチルウンデカン酸、イソウンデカン酸、トリシクロデカンカルボン酸およびイソトリデカン酸が挙げられる。
【0042】
さらに、脂肪族C4〜C10−ジカルボン酸もしくはその無水物、たとえばマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、コルク酸、トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸が適切である。炭素環式化合物のための例は次のものである:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(ヘキサヒドロフタル酸無水物)、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物。
【0043】
適切な芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物の例は次のものである:フタル酸、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、またはナフタリンジカルボン酸およびこれらの無水物。
【0044】
適切な芳香族トリカルボン酸(もしくは無水物)の例は、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、またはトリメシン酸。適切な芳香族テトラカルボン酸もしくはその無水物の1例は、ピロメリット酸およびピロメリット酸無水物である。
【0045】
特に有利には本発明による方法で、無水フタル酸をカルボン酸成分として使用する。
【0046】
本発明による方法では、有利には4〜13個の炭素原子、特に9〜13個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは線状の脂肪族アルコールを使用する。アルコールは一価であり、かつ第二級であっても第一級であってもよい。
【0047】
使用されるアルコールは、種々の供給源に由来するものであってよい。適切な原料はたとえば脂肪アルコール、アルフォール(Alfol)法からのアルコール、または飽和もしくは不飽和アルデヒドの水素化、特にその合成がヒドロホルミル化工程を含むものにより得られたアルコールまたはアルコール混合物である。
【0048】
本発明による方法で使用されるアルコールは、たとえばヒドロホルミル化またはアルドール縮合およびその後の水素化により製造されたn−ブタノール、イソブタノール、n−オクタノール(1)、n−オクタノール(2)、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デシルアルコール、またはトリデカノールである。アルコールは、純粋な化合物として、異性体化合物の混合物として、または異なった炭素数を有する化合物の混合物として使用することができる。このようなアルコール混合物の有利な例は、C9/C11−アルコール混合物である。
【0049】
有利な使用アルコールは、異性体のオクタノール、ノナノール、またはトリデカノールの混合物であり、この場合、後者は相応するブテンオリゴマー、特に線状ブテンのオリゴマーから、ヒドロホルミル化、およびその後の水素化により得られるものでもよい。ブテンオリゴマーの製造は、原則として、3つの方法により実施することができる。工業的にたとえばゼオライトまたは担体に担持させたリン酸が使用される酸性触媒反応によるオリゴマー化により、極めて分岐したオリゴマーが得られる。線状ブテンを使用する場合には、たとえば実質的にジメチルヘキセンからなるC8−フラクションが生じる(WO92/13818)。同様に世界的に実施されている方法は、可溶性のNi錯体によるオリゴマー化であり、これはDIMERSOL法として知られている(B.Cornils、W.A.Herrmann、Applied Homogenous Catalysis with Organometallic Compounds、第261〜263頁、Verlag Chemie、1996年)。さらに、ニッケル固相触媒を用いたオリゴマー化、たとえばOCTOL法(Hydrocarbon Process、Int.Ed.(1986)65(2.セクション1)、第31〜33頁)またはWO95/14647またはWO01/36356に記載の方法を使用する。
【0050】
本発明によるエステル化のために特に有利な原料は、異性体ノナノールの混合物または異性体トリデカノールの混合物であり、これらは線状ブテンからオクトール(Octol)法またはWO95/14647に記載の方法によりC8−オレフィンおよびC12−オレフィンへのオリゴマー化、およびその後のヒドロホルミル化および水素化により製造される。
【0051】
さらに、アルキレングリコールモノエーテル、特にエチレングリコールモノエーテル、たとえばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテル、およびポリアルキレングリコールモノエーテル、特にポリエチレングリコールモノエーテル、たとえばポリエチレングリコールモノメチルエーテルが適切である。
【0052】
特に有利なアルコールは、2−エチルヘキサノール、2−プロピルヘプタノール、イソノナノールの異性体混合物、デカノールの異性体混合物、およびC9/C11−アルコール混合物である。
【0053】
本発明によるエステル化は自触媒作用により実施してもよいし、またはエステル化触媒の存在下に実施してもよい。適切であるのは、エステル化触媒をルイス酸、たとえばチタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウムおよび亜鉛のアルコラート、カルボキシラート、およびキレート化合物、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、鉱酸、たとえば硫酸、リン酸、スルホン酸、たとえばメタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸、およびイオン性液体から選択する。
【0054】
適切であるのは、エステル化触媒を、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウムおよび亜鉛のアルコラート、カルボキシラート、およびキレート化合物から選択する。テトラアルキルチタネート、たとえばテトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−イソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−イソブチルチタネート、テトラ−sec−ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトラ−(2−エチルヘキシル)−チタネート、ジアルキルチタネート((RO)2TiO2、式中Rはたとえばイソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチルを表す)、たとえばイソプロピル−n−ブチルチタネート、チタン−アセチルアセトネートキレート、たとえばジ−イソプロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタネート、ジ−イソプロポキシ−ビス(エチルアセチルアセトネート)チタネート、ジ−n−ブチル−ビス(アセチルアセトネート)チタネート、ジ−n−ブチル−ビス(エチルアセトアセテート)チタネート、トリ−イソプロポキシド−ビス(アセチルアセトネート)チタネート、ジルコニウムテトラアルキレート、たとえばジルコニウムテトラエチレート、ジルコニウムテトラブチレート、ジルコニウムテトラブチレート、ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムカルボキシレート、たとえば二酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートキレート、たとえばジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、ジブトキシジルコニウム(ビス−アセチルアセトネート)、アルミニウムトリスアルキレート、たとえばアルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリスブチレート、アルミニウム−アセチルアセトネートキレート、たとえばアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)およびアルミニウムトリス(エチルアセチルアセトネート)。特に、イソプロピル−n−ブチルチタネート、テトラ(イソプロピル)オルトチタネート、またはテトラ(ブチル)オルトチタネートを使用する。
【0055】
適切なイオン性液体(ionic liquids)はたとえば1−(4−スルホブチル)−3−メチルイミダゾリウム−トリフレートおよび1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム−硫酸水素塩である。
【0056】
触媒濃度は、触媒の種類に依存する。有利に使用されるチタン化合物の場合、触媒濃度は反応混合物に対して0.005〜1.0質量%、特に0.01〜0.3質量%である。
【0057】
不連続的な方法実施の場合には、原料および触媒を同時に、または順次、反応器に充填することができる。触媒は、純粋な形で、または溶液として、有利には原料の1つに溶解して、開始時に、または反応温度に達した後で初めて添加することができる。カルボン酸無水物はしばしばアルコールと自触媒反応をする、つまり触媒なしで相応するエステルカルボン酸(半エステル)、たとえばフタル酸無水物からフタル酸モノエステルへと反応する。従って、触媒はしばしば第一の反応工程の後で初めて必要となる。
【0058】
連続的な方法実施の場合、原料流および触媒流を反応器へ、もしくは反応器カスケードを使用する場合には、カスケードの第一の反応器へ供給する。この場合、反応器中での、もしくは個々の反応器中での滞留時間は、反応器の体積および原料の質量流量によって決定される。
【0059】
共留剤として役立つ、反応すべきアルコールは、化学量論的な過剰量で、有利には化学量論的に必要とされる量の30〜200%、特に有利には50〜100%の過剰量で使用することができる。
【0060】
反応温度は160℃〜270℃である。最適な温度は、原料、反応の進行状況、および触媒濃度に依存する。これらはそれぞれの個別ケースに関して、試験によって容易に確認することができる。温度が高ければ、反応速度が高まり、副反応、たとえばオレフィンの形成または着色した副生成物の形成が促進される。反応水を除去するためには、アルコールを反応混合物から留去できることが必要である。所望の温度または所望の温度範囲は、反応器中の圧力によって調整することができる。従って反応は、低沸点アルコールの場合には過圧で、および高沸点アルコールの場合には減圧下で実施することができる。たとえばフタル酸無水物と異性体ノナノールの混合物との反応の場合には、170℃〜250℃の温度範囲で、200ミリバール〜3バールの圧力範囲で実施する。
【0061】
カスケードの全ての反応器を同じ温度で運転することができる。しかし一般に、カスケードの第一の反応器から最後の反応器までの温度を高めていくことは有利であり、この場合、1の反応器を、(反応混合物の流れの方向に対して)上流に配置されている反応器と同じ温度で、またはこれより高い温度で運転する。有利には全ての反応器を実質的に同じ圧力で、特にほぼ周囲の圧力で運転することができる。
【0062】
反応の終了後に、実質的に所望のエステルおよび過剰のアルコールからなる反応混合物は、触媒および/またはその後続生成物以外に、少量のエステルカルボン酸および/または未反応のカルボン酸を含有している。
【0063】
このエステル粗混合物を後処理するために、過剰のアルコールを除去し、酸性化合物を中和し、触媒を分解し、かつその際に生じる固体の副生成物を分離する。この場合、未反応のアルコールの大部分を、標準圧力で、または真空で留去する。アルコールの最後の痕跡は、たとえば水蒸気蒸留により、特に120〜225℃の温度範囲で真空下に除去することができる。アルコールの分離は最初の後処理工程として、または最後の後処理工程として行うことができる。
【0064】
酸性物質、たとえばカルボン酸、エステルカルボン酸または場合により酸性触媒の中和は、塩基の添加により、たとえばアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、または水酸化物の添加により行うことができる。中和剤は、固体の形で、または有利には溶液として、特に水溶液として使用することができる。ここでしばしば1〜30質量%、有利には20〜30質量%の濃度の水酸化ナトリウムが使用される。中和剤は、滴定により測定される、化学量論的に必要とされる量と同量から4倍量まで、特に同量から2倍量までに相当する量で添加する。
【0065】
こうして多塩基性のカルボン酸、たとえばフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸と、アルコールとから製造されたエステルは、ラッカー樹脂中で、塗料の成分として、および特にプラスチックのための可塑剤として幅広く使用される。PVCのための適切な可塑剤は、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、およびジプロピルヘプチルフタレートである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による方法を実施するために適切な装置を示す図。
【0067】
本発明を、添付の図面と以下の実施例により詳細に説明する。
【0068】
図1は、本発明による方法を実施するために適切な装置を示す。この装置は、6つの攪拌反応器1、2、3、4、5および6からなるカスケードを含み、この場合、第一の反応器の排出流は第二の反応器へ、第二の反応器の排出流は第三の反応器へというように供給される。アルコール回収導管10を経由し、供給導管11、12、13、14、15および16を介して、アルコールが攪拌反応器1、2、3、4、5および6へと供給される。第一の反応器1には、導管8を介してエステル化触媒が添加される。導管7を介して、酸成分、たとえばフタル酸無水物(PSA)が第一の反応器1へ供給される。
【0069】
第一の反応器1の蒸発空間は、導管21を介して返送アルコール塔9と接続しており、この場合、第一の反応器1から上昇する蒸気は、導管21を介して留去され、かつ返送アルコール塔9からの返送流は、同様に導管21を介して再び第一の反応器1へ供給される。第2〜第6の反応器2、3、4、5、6からの蒸気排出流22、23、24、25、26は、蒸気回収導管30を介してまとめられ、かつ導管21を介して同様に返送アルコール塔9へと案内される。
【0070】
合された蒸気は、凝縮器31、たとえば空冷式凝縮器に供給される。凝縮器31から排出される混合相の流れは、相分離器32中で分離される。下方の水相は、導管42を介して除去される。上方の有機相は導管33を介して部分的に返送アルコール回収容器34に供給される。相分離器32からの有機相のもう一方の部分は、任意の熱交換器35中で加熱され、かつ放圧容器36中で放圧される。放圧に基づいて、有機相は、低沸点成分が富化された蒸気フラクションと、アルコールが富化された液状のフラクションとに分離する。蒸気フラクションは、後方冷却器37中で凝縮され、かつ利用に供される。液状のフラクションは、導管38を介して返送アルコール回収容器34に供給される。導管39を介して、粗エステル混合物の後処理の際に分離されるアルコールを、返送アルコール回収容器34に導通し、こうして同様に再使用に供することができる。導管40を介して返送アルコール回収容器34からのアルコールを、返送アルコール塔9の塔頂で、または上部の領域で供給し、ここで上昇する蒸気と向流で案内され、導管21を介して第一の反応器1へと返送される。
【0071】
実施例
例1:ジイソノニルフタレートの製造
ジイソノニルフタレート(DINP)2000g/hを連続的に製造するために、4つの攪拌反応器のカスケードを使用した。それぞれの反応容器にイソノナノールを計量供給し、イソノナノールは合計して1380g/hであった。第一の反応容器に、反応混合物に対して、イソプロピル−n−ブチルチタネート0.05質量%を供給する。さらに無水フタル酸(PSA)708g/hを、第一の反応容器に供給した。第一の反応器の返送アルコール塔を介して、イソノナノール混合物の循環返送流約1330g/hを返送流として返送アルコール塔へ返送することができる。
【0072】
第一の反応器からの蒸気を、その返送流が第一の反応器に返送された返送アルコール塔を介して留去する。第二〜第四の反応器からの蒸気排出流は、同様に返送アルコール塔を介して行った。
【0073】
エステル化からの蒸気は水冷式冷却器中で凝縮され、かつ該凝縮液を70℃の温度に冷却する。相分離器中で、有機相と水相とを標準圧力で分離した。水を排出した。有機相の一部(300g/h、イソノナノール約95%、イソノネン4%)を、アルコール回収容器を介して直接エステル化へ返送した。
【0074】
有機相149g/hを予熱装置により100℃に加熱し、かつ100ミリバールで運転されていた一段のフラッシュに導通した。このフラッシュからの蒸気相を、後方冷却器中で凝縮し(水約48%、イソノナノール23%、イソノネン29%)、かつ方法から排出する(7.3g/h、そのうち1.7g/hがイソノナノール)。フラッシュ(141.7g/h、イソノナノール97%)からの液状の、低沸点成分(イソノネン)が富化された相を、アルコール回収容器に導通し、かつここからエステル化に返送した。
【0075】
これによりDINP1kgあたり、0.85gのアルコールの損失が生じた(収率の0.12モル%に相当)。
【0076】
比較例1
DINPの連続的な製造を、例1と同様に行ったが、ただしこの場合、相分離器中で留去した有機相は、後処理しないでエステル化に返送した。イソノナノール循環流中のイソノネンの富化を回避するために、有機相の一部を方法から連続的に排出しなくてはならなかった。
【0077】
イソノナノール循環流中で5質量%を上回るイソノネン含有率は、生成物の品質の顕著な損失につながりうる。イソノナノール循環流中のイソノネン含有率を最大5質量%に限定するために、DINP 2000g/hを製造する際に、有機相 160g/hを排出しなくてはならなかったが、これは、DINP1kgあたり、76gのアルコールの損失に相応する(収率の9.93モル%)。
【0078】
例2:ジプロピルヘプチルフタレートの製造(低沸点成分の排出のために一段のフラッシュを使用)
PSAと2−プロピルヘプタノール(2−PH)とから、触媒としてのイソプロピル−n−ブチルチタネートの存在下に、ジプロピルヘプチルフタレート1280g/hを連続的に製造するために、4つの攪拌反応器のカスケードを使用した。エステル化からの蒸気を凝縮し、かつ該凝縮液を85℃の温度に冷却する。相分離器中で有機相および水相を標準圧力で分離した。水を排出した。
【0079】
有機相の一部を、予熱装置により120℃に加熱し、かつ80ミリバールに維持されていた放圧容器へと放圧した。放圧の際に形成される蒸気相を凝縮し(水0.1%、2−PH27.8%、デセン72.1%)、かつ方法から排出した(7.3g、そのうち2g/hが2−PH)。放圧からの、低沸点成分が富化された液相をアルコール回収容器に導通し、かつここからエステル化へ返送した。
【0080】
これによりジプロピルヘプチルフタレート1kgあたり、1.6gのアルコール損失が生じた(収率の0.23モル%に相応)。
【0081】
例3:ジプロピルヘプチルフタレートの製造(低沸点成分排出用の塔を使用)
PSAと2−プロピルヘプタノールとからのジプロピルヘプチルフタレート1280g/hの製造は、例2と同様に行った。しかし有機相の一部を予熱装置により130℃に加熱し、80ミリバールで運転されていた塔に導通した。この塔からの蒸気相を凝縮し(12.7g/h)、相分離器中で有機相と水相とに分離した。水相(2.1g/h、水99.9質量%、デセン0.1質量%)を廃棄処理した。有機相のほぼ半分を返送流として塔に導通し、他方を方法から排出した(5.2g/h、純粋なデセン)。
【0082】
塔の塔底生成物をアルコール回収容器に導通し、かつここからエステル化に返送した。(127.1g/h、2−PH86%、デセン14%)。これにより、低沸点成分の排出によるアルコール損失が完全に回避された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸またはカルボン酸無水物またはこれらの混合物と、アルコールとを、1もしくは複数の反応器からなる反応装置中で反応させることによりカルボン酸エステルを製造する方法であって、反応水をアルコールと水との共沸混合物として蒸気と一緒に留去し、該蒸気を少なくとも部分的に凝縮させ、凝縮液を水相と有機相とに分離し、かつ該有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する方法において、返送すべき有機相から、アルコールよりも沸点の低い成分を少なくとも部分的に除去することを特徴とする、カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
蒸気を完全には凝縮しないで、アルコールよりも沸点の低い成分を、凝縮しなかった蒸気と一緒に排出し、凝縮液を水相と有機相とに分離し、かつ該有機相を少なくとも部分的に反応装置に返送する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
蒸気を少なくとも部分的に凝縮させ、凝縮液を水相と有機相とに分離し、アルコールよりも沸点の低い成分を蒸発させる、および/または留去することにより、該有機相の少なくとも一部を処理し、こうして処理した有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
有機相の一部をそのままで反応装置へ返送し、かつ該有機相の他方の部分を、アルコールよりも沸点の低い成分を蒸発させる、および/または留去することにより処理し、かつこうして処理した有機相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
有機相の少なくとも一部を、放圧容器へと放圧させ、その際、アルコールよりも沸点の低い成分を少なくとも部分的に蒸発させ、かつ蒸発していない液相を少なくとも部分的に反応装置へ返送する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
放圧の前に有機相を間接的な熱交換によって加熱する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
返送される有機相が少なくとも蒸気の一部に対して向流で案内される塔を介して有機相を反応装置へ返送する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
反応装置が、複数の反応器のカスケードを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
有機相をもっぱら、または大部分、カスケードの第一の反応器へ返送する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
反応を、エステル化触媒の存在下に行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
エステル化触媒が、ルイス酸、鉱酸、スルホン酸およびイオン性液体から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
エステル化触媒が、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウムおよび亜鉛のアルコラート、カルボキシラートおよびキレート化合物;三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート;硫酸、リン酸;メタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
エステル化触媒が、酸性イオン交換体、ゼオライト、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、チタン、ケイ素、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、モリブデンおよびマンガンの酸化物および/または水酸化物から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
カルボン酸が、少なくとも5個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸、脂肪族C4〜C10−ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸、およびこれらの無水物から選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
アルコールが、C4〜C13−アルコール、アルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエーテル、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512229(P2012−512229A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541389(P2011−541389)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067177
【国際公開番号】WO2010/076192
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】