説明

カンチレバー

【課題】走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、レバー部面上に探針部を接着固定する際に、所望の位置への取付けが容易で、レバー長を一定にすることにより、レバー特性を均一にし、安定したAFM測定を可能にする。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーは、支持部1と、該支持部より延びたレバー部2と、該レバー部の自由端あるいは自由端近傍に接着固定された探針部5とを具備し、前記レバー部の自由端又は自由端近傍に、前記探針部をレバー部に位置決め固定するための探針部位置決め用ガイドとしての突起部3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy;以下SPMと略称する)に用いられるカンチレバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SPMに用いられるカンチレバーとしては多くの構成のものが知られているが、レバー部に探針部を接着固定した構成のカンチレバーの一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
上記特許文献1に開示されているカンチレバーは、図8に示すように、探針部71、梁部72、及び支持部79から構成されており、探針部71は、針状部71aと平板部71bとが一体に形成され、SPMのカンチレバーの先端に固定されて用いられるようになっている。詳細には、カンチレバーの梁部72の先端72aに固着される探針部71は、10μm以上の長さを有する針状部71aと、カンチレバー本体と接する面を有する平板部71bとからなり、当該針状部71aと平板部71bはダイヤモンド単結晶材料で一体的に形成され、かつ前記針状部71aの側面の中心線表面粗さが10nm以上であるものとなっている。
【0004】
そして、このカンチレバーは、探針部と梁部(レバー部)の固着に関して、レバー部の平面に、異種材の高アスペクト比の長尺ダイヤモンド針状部と一体的に形成した平板部の底面を接着することによりカンチレバーを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−292375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているカンチレバーにおいては、単結晶ダイヤモンドで一体的に形成された針状部71a及び平板部71bからなる探針部71を、レバー部先端72aに接着固定する際に、レバー部側面と探針部の平板部側面とが平行になるように搭載して接着する。このとき、レバー部の幅方向の位置決めについては、平板部側面をレバー部側面に合わせるため、比較的容易である。しかしながら、レバー部の長さ方向に対しては、目印となるようなものがないため、探針部の正確な位置決めは困難であり、探針部の所望の位置への取付けが特に難しい。すなわち、図中の矢印78で示すように、探針部の取付け位置がレバー部の長さ方向に動いてしまい、所望の位置に取り付けることが難しくなる。
【0007】
上記のように、探針部のレバー部への取付け位置のばらつきにより、実質的なレバー長は、作製されるカンチレバー毎に変化してしまい、均一ではなくなる。このため、共振周波数やバネ定数などのカンチレバーの機械的な特性が変わってしまう。したがって、作製されたれSPM用カンチレバーによっては、再現性のあるカンチレバー特性が得られないまま測定に用いられることになり、正確な測定が不可能であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、レバー部面上に探針部を接着固定する際に、所定の位置への取付けが容易で、レバー長を一定にすることにより、レバー特性を均一にし、安定したAFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)測定を可能にするSPM用カンチレバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係わる発明は、支持部と、該支持部より延びたレバー部と、該レバー部の自由端あるいは自由端近傍に接着固定された探針部とを具備するSPM用カンチレバーにおいて、前記レバー部の自由端先端又は自由端近傍に、前記探針部をレバー部に位置決め固定するための探針部位置決め用ガイドを備え、前記探針部位置決め用ガイドに沿って探針部をレバー部に接着固定することを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることにより、レバー部の所定位置に探針部を容易に接着固定することができるため、実質的なレバー長のばらつきを抑えて再現性のある安定したレバー特性を得ることができ、正確な測定を可能とするSPM用カンチレバーを実現することができる。
【0011】
請求項2に係わる発明は、請求項1に記載のSPM用カンチレバーにおいて、前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部上に設けられた突起部であり、前記探針部底面には該突起部と嵌合する凹部を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることにより、レバー部と探針部を凹凸部の嵌合で接着固定でき、常に探針部をレバー部の同じ位置に固定することができるため、レバー特性を安定させるとともに、接着が容易になり、コスト低減が可能となる。また、レバー部と探針部を別々のプロセスで作製することが可能になり、長い探針部や、レバー部材と異なる硬い探針部や導電性を有する探針部を容易に作製することができる。
【0013】
請求項3に係わる発明は、請求項1に記載のSPM用カンチレバーにおいて、前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部上に設けられた当てつけ面部であることを特徴とするものである。
【0014】
このような構成とすることにより、常にレバー部自由端から同じ位置に探針部を接着固定させることができるため、レバー特性を安定させることができ、また、探針部の接着時に液状の接着剤上を滑って、レバー部上から探針部が落下することが無くなるため、作製されるSPM用カンチレバーは、レバー特性を安定に、かつ容易に形成することが可能となる。また、探針部の底面に凹部のような加工を施さなくても良いので、より容易に探針部を作製できて、コスト削減にもつなげることができる。
【0015】
請求項4に係わる発明は、請求項1に記載のSPM用カンチレバーにおいて、前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部に設けられた段差部であることを特徴とするものである。
【0016】
このような構成とすることにより、探針部をレバー部に形成された段差部に当て付けて接着固定することができるので、常に探針部を同じ位置に配置することができるとともに、容易に接着することができる。また、探針部側に突起部と合致する凹部などの加工を施さなくても済むので、容易に探針部を形成でき、その接着固定を行うことができる。
【0017】
請求項5に係わる発明は、請求項1に記載のSPM用カンチレバーにおいて、前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部に設けられた窪み部であることを特徴とするものである。
【0018】
このような構成とすることにより、窪み部に探針部を合わせ込みながら接着することで、所望の位置に探針部を確実に固定できる。また、窪み部内にのみ接着剤が納まり固定されるため、接着剤がレバー部表面に広がることがなく、レバー特性をより均一にしてSPM用カンチレバーを作製することができる。また探針部における接着剤等による重量増加を、レバー部へ窪み部を作製することで相殺できる効果もあり、レバー特性の共振周波数を低下することなく、探針部とレバー部とを接合することができる。
【0019】
請求項6に係わる発明は、支持部と、該支持部より伸びたレバー部と、レバー部に接着固定された探針部とを具備するSPM用カンチレバーにおいて、レバー部自由端側壁部に、該自由端側壁部を探針部位置決め用ガイドとして、探針部が接着固定されていることを特徴とするものである。
【0020】
このような構成とすることにより、レバー部自由端側壁部に探針部を押し付けるようにして接着することで、探針部が常に同じ位置に接着固定することが可能となり、レバー特性を安定させるとともに、接着が容易になりコスト低減が可能となる。また、探針部がレバー部先端に設置されるため、SPM装置での探針部先端を探しやすい配置となる。
【0021】
請求項7に係わる発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のSPM用カンチレバーにおいて、前記探針部は台座部を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
このような構成とすることにより、探針部を直接ハンドリングしなくてすみ、探針部の破壊や異物付着や化学的変化の可能性をなくすることができるため、より安全に接着作業を行なうことができる。また、探針部が細線のようにハンドリングできないほど細長い構造である場合でも、台座部を利用することにより初めて接着作業が可能となる。また、探針部底面よりも大きな面積をもつ台座部を利用すれば、接着面積を増やすことができ、接着強度をより強くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、SPM用カンチレバーにおいて、探針部をレバー部自由端あるいは自由端近傍に接着固定する際に位置決めが容易となり、探針部先端位置がレバー部自由端あるいは自由端近傍で、しかもレバー中心軸を通るように探針部を接着固定することが可能となる。
【0024】
さらに、探針部に台座部を備えることにより、接着面積を広くできるため接着強度が増加し、レバー部から接着した探針部を剥がれにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わるカンチレバーの第一の実施の形態を説明する図である。
【図2】本発明に係わる第二の実施の形態を説明する図である。
【図3】本発明に係わる第二の実施の形態の変形例1を説明する図である。
【図4】本発明に係わる第二の実施の形態の変形例2を説明する図である。
【図5】本発明に係わる第三の実施の形態を説明する図である。
【図6】本発明に係わる第四の実施の形態を説明する図である。
【図7】本発明に係わる第五の実施の形態を説明する図である。
【図8】従来例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0027】
(第一の実施の形態)
本発明に係わる第一の実施の形態を図1に示す。図1(A)は本実施の形態に係るカンチレバーの横方向から見た一部断面で示す全体図、図1(B)は図1(A)に示したカンチレバーをB方向から見た図、図1(C)は図1(A)に示したカンチレバーをC方向から見た図を示す。本実施の形態は、探針部をレバー部に接着固定する際の探針部位置決め用ガイドとして、レバー部上に突起部を有するものである。
【0028】
図1において、1は単結晶シリコンウエーハを加工して作製した支持部、2は支持部1より伸びたシリコン製レバー部、3はレバー先端部に形成した突起部、5は円錐状のシリコン製探針部、6はエポキシ樹脂接着剤である。
【0029】
ここで、突起部3は、レバー部の幅の中心線(レバー中心軸)4上のレバー自由端近傍にレバー部材と同様にシリコン製でレバー部2と一体的に形成されている。突起部3の表面上での大きさは探針部底面よりも小さく、好ましくは半分以下であり、また突起部3の高さは探針部5よりも小さく、好ましくは半分以下が望ましい。さらに突起部3の形状は円柱あるいは角柱でもよいが、好ましくは円錐あるいは角錐形状が望ましい。
【0030】
一方、探針部5は別体で形成されるとともに、その底面に、レバー部2に形成された突起部3に合致する凹部が形成されている。そして、探針部5は、エポキシ樹脂接着剤6を介してレバー部上の突起部3に探針部底面に形成された凹部を嵌合してレバー部2に接着固定されている。
【0031】
本実施の形態では、突起部3の材料はシリコンで作製した例を示したが、シリコンに限らず、シリコン酸化膜やダイヤモンドやカーボンといった材料でも使用できる。
【0032】
このように、レバー部2上の突起部3と探針部底面の凹部とを嵌合させて探針部5をレバー部2上に接着固定することにより、探針部5をレバー部2に装着する際の位置決めが容易となる。そのため、レバー部2の所望の位置に探針部5を接着固定できるとともにレバー長のばらつきが低減されて、共振周波数やバネ定数などのカンチレバー特性を常に安定させることができ、正確且つ安定したAFM測定が可能となる。
【0033】
(第二の実施の形態)
本発明に係わる第二の実施の形態を図2に示す。図2(A)は、この実施の形態に係るカンチレバーの横方向から見た一部断面で示す全体図、図2(B)は図2(A)に示したカンチレバーをB方向から見た図、図2(C)は図2(A)に示したカンチレバーをC方向から見た図を示す。本実施の形態は、探針部をレバー部に接着固定する際の探針部位置決め用ガイドとして当てつけ面部を有するものである。
【0034】
図2において、101は単結晶シリコンウエーハを加工して作製した支持部、102は支持部101より伸びたシリコン製レバー部、103及び104はレバー部自由端及び自由端近傍に形成されたシリコン製当てつけ面部、106は円錐状のシリコン製探針部であり、107はエポキシ樹脂接着剤である。
【0035】
ここで、当てつけ面部103と104は直交し、レバー部の自由端先端部の2辺のエッジに形成されている。当てつけ面部103と104の高さはSPM(AFM)使用の妨げにならない高さが良く、探針部106の高さ以下であり、好ましくは探針部106の長さ(高さ)の半分以下が望ましい。また、当て付け面部の厚さは、共振周波数特性を著しく低下させない厚さ、例えば1μm以下が望ましい。
【0036】
そして、探針部106は、当てつけ面部103及び104に沿うように押し当てて、レバー部の中心軸105上のレバー部先端にエポキシ樹脂接着剤107にて接着固定される。
【0037】
このように、レバー部上の自由端の2辺にわたって探針部当てつけガイド用の当てつけ面部を形成することにより、探針部先端がレバー軸中心に容易に配置することができるため、共振周波数やばね定数などのカンチレバー特性を常に安定させることが可能となる。
【0038】
なお、本実施の形態では、レバー部の自由端先端部の2辺に当てつけ面部を形成した例を示したが、当てつけ面部は2辺に限定されず、少なくともレバー部自由端の1辺に形成されていれば良い。この場合、探針部先端の位置合わせができる上、レバーの作製をより容易に作製することが可能となる。また、当てつけ面部を3辺に設けると、カンチレバーの作製は難しくなるものの、探針部位置決め制御が一層容易になる。
【0039】
また本実施の形態では、直交した2辺の当てつけ面部の例を示したが、直交した2辺に限らず、図3に示すようにレバー部面上に、探針部の位置決めができるような角度をもたせて2辺の当てつけ面部108,109を形成しても良い。この場合も、探針部先端がレバー中心軸上に容易に配置できるため、共振周波数やばね定数などのカンチレバー特性を常に安定させることが可能となる。
【0040】
また、図4に示すように上記当てつけ面部は平面形状のものに限らず、例えば円錐状探針部の場合、その外側面の形状に沿った曲面を有する当てつけ面部110を形成すると、円錐状の探針部が当てつけ面部と接する長さを多くして接着できるため、より探針部の位置決めをし易くなると同時に、強固に接着することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、当てつけ面部はシリコンで作製した例を示したが、その材料としては、シリコンに限らずシリコン酸化膜やダイヤモンドやカーボンといった材料でも使用できる。
【0042】
(第三の実施の形態)
本発明に係わる第三の実施の形態を図5に示す。図5(A)は、本実施の形態に係るカンチレバーの横方向から見た一部断面で示す全体図、図5(B)は図5(A)に示したカンチレバーをB方向から見た図、図5(C)は図5(A)に示したカンチレバーをC方向から見た図を示す。本実施の形態は、探針部をレバー部に接着固定する際の探針部位置決め用ガイドとして、レバー部の自由端側に段差部を有するものである。
【0043】
図5において、201は単結晶シリコンウエーハを加工して作製した支持部、202は支持部201より伸びたシリコン製レバー部、203はレバー部202の自由端側に形成された段差部、204は円錐状のシリコン製探針部、206はエポキシ樹脂接着剤である。
【0044】
ここで、レバー部の自由端先端にレバー部面より一段低い面を形成して段差部203としている。この段差部203の深さはレバー厚以下であり、好ましくはレバー厚の半分程度が望ましい。また段差部203の面積は探針部204が安定して接着できる面積を有し、探針部204を接着固定した際、探針部底面がレバー部自由端を越えない面積であることが望ましい。
【0045】
そして、レバー部202の段差部203に探針部204を当て付けるように配置し、エポキシ樹脂接着剤206によりレバー部202に探針部204を接着固定するものである。
【0046】
このように、レバー部上に形成された段差部203に、探針部204を当てつけて接着することにより、探針部の接着における位置決めを容易にでき、またレバー部自由端から探針部先端までの距離を一定に保つことができる。すなわち、レバー長を一定に保つことができるため、共振周波数やばね定数などのカンチレバー特性を常に安定させることが可能となる。
【0047】
(第四の実施の形態)
本発明に係わる第四の実施の形態を図6に示す。図6(A)は、この実施の形態に係るカンチレバーの横方向から見た一部断面で示す全体図、図6(B)は図6(A)に示したカンチレバーをB方向から見た図、図6(C)は図6(A)に示したカンチレバーをC方向から見た図を示し、レバー部の自由端側に窪み部を設けて、その窪み部を探針部位置決め用ガイドとして探針部を設置することを特徴とする。
【0048】
図6において、301は単結晶シリコンウエーハを加工して作製した支持部、302は支持部301より伸びたシリコン製レバー部、303はレバー部302の自由端側に形成された窪み部、304は円錐状のシリコン製探針部である。探針部304は窪み部303に設置されており、エポキシ樹脂接着剤305で接着されている。
【0049】
ここで、窪み部303はレバー中心軸305上に形成されており、その深さはレバー厚の半分以下が望ましく、また窪み部の底面積は探針部底面の大きさよりも大きく、探針部304をレバー部302に対して垂直に接着できることが望ましい。そして、探針部304を窪み部303にエポキシ樹脂接着剤305を介して埋め込むことで位置決めをし、接着固定している。
【0050】
このように、レバー部上に形成された窪み部303に、探針部304を埋め込みながら設置することにより、探針部304の接着固定における位置決めを容易にでき、またレバー部自由端から探針部先端までの距離を一定に保つことができる。すなわち、レバー長を一定に保つことができるため、共振周波数やばね定数などのレバー特性を常に安定させることが可能となる。さらに、窪み部303があるためにエポキシ接着剤305があふれてレバー部表面に広がることを防げるため、より容易に安定した共振周波数特性をもつカンチレバーを作製できる。
【0051】
(第五の実施の形態)
本発明に係わる第五の実施の形態を図7に示す。図7(A)は、本実施の形態に係るカンチレバーの横方向から見た一部断面で示す全体図、図7(B)は図7(A)に示したカンチレバーをB方向から見た図、図7(C)は図7(A)に示したカンチレバーをC方向から見た図を示す。本実施の形態は、レバー部自由端側壁部に、該側壁部を探針部位置決め用ガイドとして、探針部を直接接着して固定するものである。
【0052】
図7において、401は単結晶シリコンウエーハを加工して作製した支持部、402は支持部401より伸びたシリコン製レバー部、404は円錐状のシリコン製探針部、405はシリコン製台座部である。
【0053】
ここで、探針部404は台座部405を介してレバー部の自由端403の側壁部に設置されており、探針部404はレバー部中心軸407を通るようにエポキシ樹脂接着剤406で接着固定されている。
【0054】
このように、レバー部自由端側壁部に探針部404を台座部405を介して接着することで、探針部404の接着固定における位置決めを容易にでき、またレバー部自由端から探針部先端までの距離を一定に保つことができる。すなわち、レバー長を一定に保つことができるため、共振周波数やばね定数などのカンチレバー特性を常に安定させることが可能となる。さらに、探針部404がレバー部先端に設置されるため、SPM(AFM)装置での探針部先端を探しやすい配置となる。
【0055】
本実施の形態では探針部404に台座部405を設けたものを示したが、それに限らず角柱や角錐形状の探針部であれば、台座部なしで直接レバー部側壁部に接着固定することも可能であることは言うまでもない。
【0056】
なお、上記各実施の形態では、探針部の形状として円錐形状のものを用いたが、これには限定されず、探針部としては三角錐、四角錘、円柱の形状のものを用途に応じて選択して用いることができる。また、 探針部の長さや太さといった寸法に関しても、測定用途によって選ぶことができる。また、探針部の材料に関しても、シリコンだけでなくダイヤモンドなども用いることができ、またカーボン細線を探針先端に形成した探針部を用いてもよい。
【0057】
また、上記第1の実施の形態から第四の実施の形態では、探針部のみをレバー部に接着固定したものを示したが、これに限らず、上記第五の実施の形態に示したように、探針部に台座部を形成し、台座部を介して接着固定しても良いことは明らかであり、台座部の材料に関してもシリコンに限ったものではなく、ダイヤモンドや金属を代わりに用いても良い。
【0058】
また、例えば、ダイヤモンド単結晶を探針部に使用すると、SPM(AFM)装置で画像収得後も探針部先端が磨耗しにくいという利点があり、カーボンナノフアイバー(CNF)やカーボンナノチューブ(CNT)といったカーボン細線を用いた探針部を使用すると、シリコン製のものに比べ、より細長く成長形成させることができるため、高アスペクト比の探針部形状が得られるという利点がある。
【0059】
また、台座部にダイヤモンドを利用すると、接着固定時に当てつける際に、台座部が破損する可能性が減るという利点が得られる。
【0060】
また、台座部を用いた場合、探針部と台座部は別々に作製して、それぞれを接着剤で固定しても良いが、それらを一括形成しても良く、これにより探針部と台座部の接着によるずれをなくし、探針部の位置合わせがより正確になるという利点が得られる。
【0061】
さらに、接着剤としては、エポキシ樹脂接着剤だけでなくゲル状接着剤や銀ペーストなどの種類の接着剤も使用してもよい。また、加熱により強固に接着させることも可能である。
【0062】
また、レバー部材にはシリコンを用いたものを示したが、勿論シリコンでなくてもよく、絶縁膜の酸化膜あるいは窒化シリコン膜で形成してもよい。この場合は、エッチングなどで、突起部をレバー部自由端により形成し易いという利点が得られる。
【符号の説明】
【0063】
1,101,201,301,401;シリコン製支持部
2,102,202,302,402;シリコン製レバー部
3;レバー中心軸上の突起部
103;レバー部自由端エッジに形成した当てつけ面部
104;レバー部自由端近傍のレバー部側面に形成した当てつけ面部
108,109;レバー部自由端近傍のレバー部上面に形成した当てつけ面部
110;レバー部自由端近傍のレバー部上面に形成した湾曲状当てつけ面部
4,105,207,306;レバー中心軸
5,106,204,304,404;探針部
6,107,206,305,406;接着剤
203;レバー部自由端近傍の段差部
303;レバー部自由端近傍の窪み部
403;レバー部自由端
405;探針部底面の台座部
71;探針部
71a;針状部
71b;平板部
72;梁部
72a;梁部先端
78;矢印
79;支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、該支持部より延びたレバー部と、該レバー部の自由端あるいは自由端近傍に接着固定された探針部とを具備する走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、
前記レバー部の自由端先端又は自由端近傍に、前記探針部をレバー部に位置決め固定するための探針部位置決め用ガイドを備えている
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項2】
前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部上に設けられた突起部であり、前記探針部底面には該突起部と嵌合する凹部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項3】
前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部上に設けられた当てつけ面部である
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項4】
前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部に設けられた段差部である
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項5】
前記探針部位置決め用ガイドは、前記レバー部に設けられた窪み部である
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項6】
支持部と、該支持部より延びたレバー部と、該レバー部に接着固定された探針部とを具備する走査型プローブ顕微鏡用カンチレバーにおいて、
前記レバー部自由端側壁部に、該自由端側壁部を探針部位置決め用ガイドとして、探針部が接着固定されている
ことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。
【請求項7】
前記探針部は、台座部を有している
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡用カンチレバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−198061(P2012−198061A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61249(P2011−61249)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)