説明

カーテンウォール、及びカーテンウォールの水密構造

【課題】等圧空間を形成する態様であっても高い断熱性を得ることができるカーテンウォール、及び該カーテンウォールの水密構造を提供する。
【解決手段】横枠及び縦枠が枠状に組み合わされて形成される枠体と、枠体により区画される枠内に配置されるガラスパネルと、を有し、隣接する縦枠間には、複数のシール材が配置され、隣接する横枠間にはシール材が配置され、横枠間には横枠空間が形成され、縦枠間には少なくとも2つの縦枠空間が、見込方向に並列されて形成され、横枠空間が外気に連通されるように、片又はシール材は非シール部を有し、縦枠空間のうち最も室外側に配置される縦枠空間は横枠空間に連通しており、それ以外の他の縦枠空間が、最も室外側に配置された縦枠空間に直接又は他の縦枠空間を介して連通するように、片又はシール部材が非シール部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外周に並列されるカーテンウォール、及び該カーテンウォールの水密構造に関し、水密性と断熱性をいずれも向上させることのできるカーテンウォール、及びカーテンウォールの水密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンウォールは、予め組み立てておいたカーテンウォールユニットを建物躯体に金具により取り付けて外壁を形成するものである。従って、施工性に優れ、これに加えて、近年におけるガラス基調の外観への要望にも対応できることから、新築及び建て替えビル等への採用が増加している。
【0003】
カーテンウォールでは、隣接するカーテンウォールユニット間や、部材の接合部等において水密性を得ることが重要な要素の1つとなっている。そのための態様の1つとして、各接合部を完全にシールするのではなく、一部を積極的に外気に開放し、接合部に形成された空間を外部と等圧にする技術がある。これによれば、外部と等圧にされた空間では外部との差圧がほとんどないので、差圧に起因する外部からの水の吸い込みを防止することができる。
【0004】
このような等圧空間の利用自体は一般的であり、例えば特許文献1や特許文献2等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−297877号公報
【特許文献2】特許第3640332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の上記した態様のカーテンウォールでは等圧とするために外気を導入するに際し、当該等圧とされた空間の温度も外気と近いものとなっており、断熱性がどうしても低下してしまう問題があった。等圧とされた空間をさらに他の部材で覆い、その間に断熱材を設けるという態様もあるが、部品点数が多くなり、施工の手間や部材自体の観点からコストがかかるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、等圧空間を形成する態様であっても高い断熱性を得ることができるカーテンウォール、及び該カーテンウォールの水密構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
請求項1に記載の発明は、カーテンウォールユニット(10)が建物の外周部に縦横に配置されて形成されるカーテンウォール(1)であって、カーテンウォールユニットは、横枠(14、15)及び縦枠(12、13)が枠状に組み合わされて形成される枠体(11)と、枠体により区画される枠内に配置されるガラスパネル(40)と、を有し、隣接するカーテンウォールユニットの組み合わされる縦枠間には、複数のシール材(20〜25)が配置され、隣接するカーテンウォールユニットの組み合わされる横枠間にはシール材(26〜29)が配置され、横枠間には、シール材及び横枠の片により囲まれる横枠空間(D、E、F)が形成され、縦枠間には、シール材及び縦枠の片により囲まれる少なくとも2つの縦枠空間(A、B、C)が、見込方向に並列されて形成され、横枠空間が少なくとも1か所で外気に連通されるように、片又はシール材が非シール部(29a)を有し、縦枠空間のうち最も室外側に配置される縦枠空間(A)は横枠空間に連通しており、最も室外側に配置される縦枠空間以外の他の縦枠空間(B、C)が、最も室外側に配置された縦枠空間に直接又は他の縦枠空間を介して連通するように、片又はシール材が非シール部(21a、22a)を備えているカーテンウォールである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーテンウォール(1)において、縦枠(12、13)間には、シール材及び縦枠の片により囲まれた3つの縦枠空間(A、B、C)が、見込方向に並列されて形成され、縦枠空間を連通するための非シール部(21a、22a)は、いずれも見込方向に重ならない位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、カーテンウォールユニットが建物の外周部に縦横に配置されて形成されるカーテンウォールにおけるカーテンウォールユニット間に備えられる水密構造であって、隣接するカーテンウォールユニットの組み合わされる縦枠間に配置される複数のシール材(20〜25)と、隣接するカーテンウォールユニットの組み合わされる横枠間に配置されるシール材(26〜29)と、を有し、横枠間には、シール材及び横枠の片により囲まれる横枠空間(D、E、F)が形成され、縦枠間には、シール材及び縦枠の片により囲まれる少なくとも2つの縦枠空間(A、B、C)が、見込方向に並列されて形成され、横枠空間が少なくとも1か所で外気に連通されるように片又はシール材が非シール部(29a)を有し、縦枠空間のうち最も室外側に配置される縦枠空間(A)は横枠空間(D)に連通しており、最も室外側に配置される縦枠空間以外の他の縦枠空間(B、C)が、最も室外側に配置された縦枠空間に直接又は他の縦枠空間を介して連通するように、片又はシール材が非シール部を備えている、カーテンウォールの水密構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、等圧設計を採用し、水密性能を得ることができるとともに、等圧空間における室内側の空気の入れ替えを抑制することが可能となり、断熱性に優れたカーテンウォール、及びカーテンウォールの水密構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態に係るカーテンウォールの一部を示す室外視斜視図である。
【図2】図1にII-IIで示した断面図である。
【図3】図1にIII-IIIで示した断面図である。
【図4】縦枠空間の配置及び連通の態様を説明する図である。
【図5】横枠空間及び縦枠空間の連通の態様を説明する図である。
【図6】変形例を説明する図5に相当する図である。
【図7】第二実施形態に係るカーテンウォールのうち、図2に相当する図である。
【図8】第二実施形態に係るカーテンウォールの横枠空間及び縦枠空間の連通の態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0015】
図1に第一実施形態に係るカーテンウォール1が具備された建物の外観を示した。図1からわかるように、建物外壁の一態様であるカーテンウォール1は、複数のカーテンウォールユニット10、10、…が建物躯体に上下左右に並列されて取り付けられることにより形成される。図1では、わかり易さのため、水平方向及び垂直方向に隣接する合計4つのカーテンウォールユニット10、10、…のみを実線で示し、他のカーテンウォールユニット10、10、…は破線で示した。
【0016】
各カーテンウォールユニット10は、枠体11、及び該枠体11により区画された枠内に配置されるガラスパネル40を備えている。また、隣接するカーテンウォール10、10、…間には、シール材20、21、22、23、24、25、26、27、28、29が設けられている(図2、図3参照)。
図2には、図1にII-IIで示した線に沿った断面図(水平断面図)、図3には図1にIII-IIIで示した線に沿った断面図(垂直断面図)をそれぞれ表した。いずれも隣接するカーテンウォールユニット10、10との連結部分に注目した図であり、図2では、紙面の上が室内側、紙面の下が室外側である。図3では、紙面左が室外側、紙面右が室内側である。以下、各部材について説明する。
【0017】
枠体11は、縦枠12、縦枠13、及び横枠である上横枠14、下横枠15が矩形枠状に組み合わせられて構成されている。詳しくは、図1からよくわかるように、縦枠12、13、上横枠14、下横枠15により枠状が形成されて枠体11となる。そして、左右方向では左右に隣接するカーテンウォールユニット10、10の縦枠12と縦枠13とが連結される。また、上下方向では上下に隣接するカーテンウォールユニット10、10の上横枠14と下横枠15とが連結される。
【0018】
図2を参照しつつ、縦枠12、13の態様について説明する。
縦枠12は、図2にその断面が表れているように、左右方向(見付方向)に並列され、室内外方向(見込方向)に延在する片12a、片12cを有している。片12a、及び片12cの見込方向室外側端部を渡すように片12bが設けられている。
また、片12cには、見込方向に並列され、隣接するカーテンウォール10の方向に向かって延在する片12d、片12eが配置されている。片12d、片12eの先端は、後述するシール材20、21を固定することができるように構成されている。
【0019】
また、片12a、片12cの見込方向室外側には、上記した片12bを1つの片として含み、ガラスパネル40の側端部を受け入れるガラスパネル取り付け部12fが備えられている。さらに、ガラスパネル取り付け部12fのうち、隣接するカーテンウォール10側には、見込方向に並列された2つのシール材取り付け部12g、12hが設けられている。
【0020】
縦枠13も図2にその断面が表れているように、見込方向に延在する片13aを有している。片13aの見込方向室外側端部には、隣接するカーテンウォールユニット10に向けて延在する片13bが設けられている。
また、片13aには、見込方向に並列され、隣接するカーテンウォール10の方向に向かって延在する片13d、片13eが配置されている。
【0021】
また、片13aの見込方向室外側には、上記した片13bを1つの片として含み、ガラスパネル40の側端部を受け入れるガラスパネル取り付け部13fを備えている。さらに、ガラスパネル取り付け部13fのうち、隣接するカーテンウォール10側には、見込方向に並列された2つのシール材取り付け部13g、13hが設けられている。
【0022】
本実施形態では、上記のように左右の縦枠でその断面形状が異なる態様としているが、これに限定されるものではなく、両縦枠が対称である断面形状であってもよい。
【0023】
次に図3を参照しつつ、上横枠14、及び下横枠15について説明する。
上横枠14は、図3にその断面が表れているように、見込方向に延在する片14aを有している。片14aの見込方向室外側には、ガラスパネル40の上端部を受け入れるガラスパネル取り付け部14bを備えている。また、片14aには、該片14aのうち隣接するカーテンウォール10側に突出するように設けられ、凹部を具備する被嵌合部14cが配置されている。当該被嵌合部14cの凹状の開口部先端には後述するシール材26、27を取り付ける部位が形成されている。また被嵌合部14cのうち室外側に面する片の長手方向(図3の紙面奥/手前方向)中央には凹状の内外を連通する切り欠き(非シール部)14dが設けられている。
【0024】
下横枠15も図3にその断面が表れているように、見込方向に延在する片15aを有している。片15aの見込方向室外側には、ガラスパネル40の下端部を受け入れるガラスパネル取り付け部15bを備えている。また、片15aには、該片15aのうち隣接するカーテンウォール10側に突出するように設けられ、凸状である嵌合部15cが配置されている。さらに、ガラスパネル取り付け部15bのうち、隣接するカーテンウォール10側には、見込方向に並列された2つのシール材取り付け部15d、15eが設けられている。
【0025】
ガラスパネル40は、複層ガラスパネルであり、枠体11により区画された内側にシール材等を介して固定される。詳しくはガラスパネル40のうち、側端部は縦枠12のガラスパネル取り付け部12f及び縦枠13のガラスパネル取り付け部13fに固定される(図2参照)。また、その上端部は上横枠14のガラスパネル取り付け部14bに、下端部は下横枠15のガラスパネル取り付け部15bに固定される(図3参照)。
【0026】
シール材20は、図2にその断面が表れているように、縦枠12の片12eの先端部に固定され、縦枠12に沿って延在する長いシール材である。
シール材21も図2にその断面が表れており、縦枠12の片12dの先端部に固定され、縦枠12に沿って延在する長いシール材である。シール材21は後で説明するように、長手方向下端部でシールがされない状態を形成する部位である非シール部(例えば切り欠き)を有する。
シール材22は、図2にその断面が表れているように、縦枠12のシール材取り付け部12gに固定され、縦枠12に沿って延在するシール材である。シール材22は、後述するように、シール材24と組してその接触部をシールするが、長手方向上端部でシールがされない状態を形成する部位である非シール部(例えば切り欠き)を有する。
シール材23は、図2にその断面が表れているように、縦枠12のシール材取り付け部12hに固定され、縦枠12に沿って延在するシール材である。シール材23は、後述するように、シール材25と組してその接触部をシールする。
シール材24は、図2にその断面が表れているように、縦枠13のシール材取り付け部13gに固定され、縦枠13に沿って延在するシール材である。シール材24は、シール材22と組してその接触部をシールするが、長手方向上端部でシールがされない状態を形成する部位である非シール部(例えば切り欠き)を有する。
シール材25は、図2にその断面が表れているように、縦枠13のシール材取り付け部13hに固定され、縦枠13に沿って延在するシール材である。シール材25は、シール材23と組してその接触部をシールする。
【0027】
シール材26、27は、図3にその断面が表れているように、上横枠14の被嵌合部14cの凹状の開口部の両側に固定され、上横枠14の長手方向に沿って延在するシール材である。
シール材28は、図3にその断面が表れているように、下横枠15のシール材取り付け部15dに固定され、下横枠15の長手方向に沿って延在するシール材である。
シール材29は、図3にその断面が表れているように、下横枠15のシール材取り付け部15eに固定され、下横枠15の長手方向に沿って延在するシール材である。シール材29は、後述するように、その長手方向の一部にシールしない部位である非シール部(例えば切り欠き)を有する。
【0028】
ここで、上記したシール材20〜29は、シールがされない状態を形成する部位以外の部位では、シール材を挟んで一方と他方とにおいて気密及び水密をとることが可能とされている。
また、図2、図3からわかるようにガラスパネル取り付け部12f、13f、14b、15bにはそれぞれ断熱材45、46、47、48が備えられ、断熱性を向上させている。
【0029】
また、上記シール材の材質は特に限定されるものではなく、通常適用することができる各種シール用の部材を用いることができる。これには例えばゴム、ガスケット等を挙げることができる。
【0030】
以上のような各構成部材を有するカーテンウォールユニット10が縦横に組み合わされることによりカーテンウォール1が形成される。具体的に次の通りである。
図1、図2からわかるように、左右方向に隣り合うカーテンウォールユニット10、10では、縦枠12と縦枠13とが連結される。すなわち、縦枠12の片12eと縦枠13の片13eとがシール材20を介して密着される。また、縦枠12の片12dと縦枠13の片13dとがシール材21を介して密着される。さらに、シール材22とシール材24とが密着するとともに、シール材23とシール材25とが密着して配置される。
【0031】
これにより、隣り合う縦枠12、13間に少なくとも図2にA、B、Cで示した縦枠間の空間が形成される。縦枠空間Aは、縦枠12、13、シール材22、23、24、25により囲まれる空間である。縦枠空間Bは片12c、12d、13a、13b、13d、シール材21、22、24により囲まれる空間である。そして縦枠空間Cは、片12c、12d、12e、13a、13d、13e、シール材20、21により囲まれる空間である。従って、室外側から見込方向室内側に向けて縦枠空間A、B、Cが並列される形態となる。各空間の関係については後で説明する。
【0032】
一方、図1、図3からわかるように、上下方向に隣り合うカーテンウォールユニット10、10では、上横枠14と下横枠15とが連結される。すなわち、上横枠14の被嵌合部14cに、上側に隣接するカーテンウォールユニット10の下横枠15の嵌合部15cが嵌合される。このとき、嵌合部15cを挟むように2つのシール材26、27がシールする。
また、シール材28及びシール材29は、その下端部が下側に隣接するカーテンウォールユニット10の上横枠14の上面に密着する。
【0033】
これにより、上横枠14と下横枠15との間に少なくとも図3にD、E、Fで示した横枠間の空間が形成される。横枠空間Dは、上横枠14、下横枠15、シール材28、29により囲まれる空間である。横枠空間Eは片14a、被嵌合部14c、下横枠15及びシール材27、28により囲まれる空間である。横枠空間Fは被嵌合部14c、嵌合部15c、シール材26、27により囲まれる空間である。横枠空間D、E、Fと上記した縦枠空間A、B、Cとの関係については後で説明する。
【0034】
次に上記した縦枠空間A〜C及び横枠空間D〜Fの関係について説明する。図4は、縦枠空間A〜C及び横枠空間D〜Fの配置をカーテンウォール10の縦断面に表した図、図5は、シールされる部位や連通される部位の配置を模式的に表した図である。図2〜図5を参照しつつ説明する。
【0035】
縦枠空間Aのうち、シール材23、25が密着して形成された側、すなわち室外側のシールは、図4、図5からわかるように、カーテンウォールユニット10の上下方向全長に亘って縦枠空間Aを室外側から遮断している。一方、シール材22、24が密着して形成された側は、上記したようにその上端部でシールしていない部分である非シール部22aが設けられている。従って、図4、図5からわかるように縦枠空間Aと縦枠空間Bとは非シール部22aで連通している。
【0036】
縦枠空間Bのうち、シール材21によりシールされた側には、上記したようにその下端側でシールしていない部分である非シール部21aが設けられている(図4、図5参照)。従って、図4、図5からわかるように、縦枠空間Bと縦枠空間Cとは非シール部21aで連通している。
また、縦枠空間Bは、横枠空間Eとも連通している。さらに、横枠空間Eと横枠空間Fとは切り欠き(非シール部)14dを介して連通している。
【0037】
縦枠空間Cのうち、シール20によりシールされた側、すなわち室内側のシールは、図4、図5からわかるように、カーテンウォールユニット10の上下方向全長に亘って縦枠空間Cを室内側から遮断している。
【0038】
横枠空間Dのうち、シール材29によりシールされた側、すなわち室外側のシールは上記したように長手方向略中央でシールされていない部分である非シール部29aが設けられている(図5参照)。従って、図5からわかるように、横枠空間Dは室外に非シール部29aで連通している。一方、シール材28でシールされた側は左右方向全長に亘ってシールされている。
また、横枠空間Dは図5からわかるように、その長手方向両端において、左右の縦枠空間A、Aのそれぞれに連通するように形成されている。従って横枠空間Dは縦枠空間Aに連通している。
【0039】
以上より、横枠空間Dは室外と連通し、縦枠空間Aは横枠空間Dと連通する。さらに縦枠空間Bは縦枠空間Aと連通し、縦枠空間Cと横枠空間Eは縦枠空間Bと連通する。また、横枠空間Eは横枠空間Fに連通する。従って、縦枠空間A〜C、及び横枠空間D〜Fは最終的に室外と連通し、いずれの空間も圧力状態が同じ(等圧)となる。これにより、いわゆる等圧空間が形成され、室外側から室内側への差圧による水の吸い込みを防止することができ、水密性能を向上させることができる。
【0040】
ここで、上記した非シール部29a、22a、21aや切り欠き(非シール部)14dは、見込方向に連続しないように異なる位置に配置されている。従って、上記等圧空間が形成される際には図4には太い矢印、図5には破線で示したように、その圧力の伝達が長い経路により行われる。すなわち、室外側の圧力は、横枠空間D、横枠空間Dの両端、縦枠空間A、非シール部22a、縦枠空間B(横枠空間E、F)、非シール部21a、縦枠空間Cのように伝達される。
【0041】
かかる室外側からの縦枠空間C、横枠空間Fまでの連通は、このように長い経路により形成されているので、圧力は容易に伝達される一方で、ここに含まれる空気と、外気との入れ替わりは抑制される。従って、室内側である程、空気の入れ替わりが少なく、保温状態が維持され、断熱性能を向上させることが可能となる。
【0042】
以上のように、本実施形態のカーテンウォール1によれば、等圧空間が形成されることにより水密性能を向上させることができる。さらに、等圧空間において空気の入れ替わりが抑制されるように形成することにより断熱性を向上させることが可能となる。従って結露を防止することもできる。
【0043】
また、その構成はシール材の非シール部の形成位置を調整すればよいのみなので、簡易に行うことができる。例えば施工現場においておこなうことも容易である。
【0044】
このように、等圧とするに際し、これが長い経路によって行われればよいので、シール材の非シール部が見込方向に並ばないように形成されていればよく、上記した実施形態の他にも多くの非シール部の配置パターンを考えることが可能である。図6にその一例を示した。図6は、図5に相当する図である。図6の例では、シール材29に3か所の非シール部29a、29a、29aが設けられ、シール材22、24の非シール部22a’は、シール材22、24の長手方向中央に設けられている。また、シール材21の非シール部21a’は上端部近傍に配置されている。
かかる態様のカーテンウォールであっても上記効果を奏するものとなる。
【0045】
図7は、第二実施形態に係るカーテンウォール101を説明するための図で、図2に相当する図である。また、図5に相当する図を図8に示した。カーテンウォール101では、上記第一実施形態に係るカーテンウォール1に対し、シール部材22、24が設けられておらず、縦枠空間Aと縦枠空間Bとが1つとなった縦枠空間A’が形成されている点で異なる。すなわち、カーテンウォール1では縦枠12、13間に3つの縦枠空間A、B、Cが形成されていたのに対し、カーテンウォール101では、縦枠12、13間に2つの縦枠空間A’、Cが形成されている。また、これにともない、シール材21の非シール部21aは、その長手方向上端に形成されている。
【0046】
カーテンウォール101では、カーテンウォール1に比べて、等圧を形成する空間の経路は短いので、断熱効果はカーテンウォール1の方が好ましいと考えられるが、従来のカーテンウォールに対しては、上記効果を奏するものとなる。
【0047】
以上、本発明のカーテンウォールによれば、水密性を保持しつつ、断熱性も向上させることが可能となる。本発明は、さらに断熱性を向上させることを目的に、付加的に断熱材を用いることを妨げるものではない。
【0048】
以上、現時点において、実践的でありかつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカーテンウォール及びカーテンウォールの水密構造もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0049】
1 カーテンウォール
10 カーテンウォールユニット
11 枠体
12、13 縦枠
14 上横枠(横枠)
15 下横枠(横枠)
20、21、22、23、24、25 シール材
26、27、28、29 シール材
40 ガラスパネル
A、B、C 縦枠空間
D、E、F 横枠空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンウォールユニットが建物の外周部に縦横に配置されて形成されるカーテンウォールであって、
前記カーテンウォールユニットは、横枠及び縦枠が枠状に組み合わされて形成される枠体と、前記枠体により区画される枠内に配置されるガラスパネルと、を有し、
隣接する前記カーテンウォールユニットの組み合わされる縦枠間には、複数のシール材が配置され、
隣接する前記カーテンウォールユニットの組み合わされる横枠間にはシール材が配置され、
前記横枠間には、前記シール材及び前記横枠の片により囲まれる横枠空間が形成され、前記縦枠間には、前記シール材及び前記縦枠の片により囲まれる少なくとも2つの縦枠空間が、見込方向に並列されて形成され、
前記横枠空間が少なくとも1か所で外気に連通されるように、前記片又は前記シール材が非シール部を有し、
前記縦枠空間のうち最も室外側に配置される縦枠空間は前記横枠空間に連通しており、
前記最も室外側に配置される縦枠空間以外の他の縦枠空間が、前記最も室外側に配置された縦枠空間に直接又は他の縦枠空間を介して連通するように、前記片又は前記シール材が非シール部を備えている、カーテンウォール。
【請求項2】
前記縦枠間には、前記シール材及び前記縦枠の片により囲まれた3つの縦枠空間が、見込方向に並列されて形成され、前記縦枠空間を連通するための前記非シール部は、いずれも見込方向に重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のカーテンウォール。
【請求項3】
カーテンウォールユニットが建物の外周部に縦横に配置されて形成されるカーテンウォールにおける前記カーテンウォールユニット間に備えられる水密構造であって、
隣接する前記カーテンウォールユニットの組み合わされる縦枠間に配置される複数のシール材と、隣接する前記カーテンウォールユニットの組み合わされる横枠間に配置されるシール材と、を有し、
前記横枠間には、前記シール材及び前記横枠の片により囲まれる横枠空間が形成され、前記縦枠間には、前記シール材及び前記縦枠の片により囲まれる少なくとも2つの縦枠空間が、見込方向に並列されて形成され、
前記横枠空間が少なくとも1か所で外気に連通されるように前記片又は前記シール材が非シール部を有し、前記縦枠空間のうち最も室外側に配置される縦枠空間は前記横枠空間に連通しており、前記最も室外側に配置される縦枠空間以外の他の縦枠空間が、前記最も室外側に配置された縦枠空間に直接又は他の縦枠空間を介して連通するように、前記片又は前記シール材が非シール部を備えている、カーテンウォールの水密構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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