説明

カーテンフック

【課題】カーテンライナーに容易且つ確実に固定されると共に、固定された場合にカーテンに凹凸を生じさせないカーテンフックの提供。
【解決手段】このカーテンフック30は、カーテンに取り付けられる本体31と、カーテンレールに引っ掛けられるフック32と、フック32を本体31に対してスライドさせるスライド機構33とを有する。本体31は、前方軸部34及び後方軸部35を有し、カーテンライナーを挟持する。後方軸部35の先端部53は、鏃状に形成されている。後方軸部35の対向面51は、滑らかに膨出した曲面である。後方軸部35の背面52は、平坦面である。先端部53は、左右方向に張り出す張出面54と左右方向に真っ直ぐに延びる水平面55とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンをカーテンレールに懸架するためのカーテンフックの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーテンはカーテンフックを介してカーテンレールに引っ掛けられる。カーテンフックは、カーテンレールに対してスライド自在に取り付けられている。したがって、カーテンは、カーテンレールに吊り下げられた状態となり、その状態でカーテンレールに沿ってスライドされるようになっている。
【0003】
図11は、従来のカーテンフック1の構造を示す斜視図である。
【0004】
同図が示すように、カーテンフック1は、係合部2及びカーテン支持部3を備えている。カーテン支持部3がカーテンを支持し、係合部2がカーテンレールに係合するようになっている。これにより、カーテンは、カーテン支持部3を介してカーテンレールに懸架される。
【0005】
カーテン支持部3は、従来から同図が示すようなクリップ構造を有する(例えば、特許文献1〜特許文献10参照)。そして、かかる構造を有するカーテン支持部3がカーテンに設けられたカーテンライナー(「芯地」とも称される。)を挟持することによって、カーテンは、カーテンフック1に支持されるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−317851号公報
【特許文献2】特開2007−130497号公報
【特許文献3】特開2006−346057号公報
【特許文献4】特開2006−101977号公報
【特許文献5】特開2006−68490号公報
【特許文献6】特開2006−68323号公報
【特許文献7】特開2005−329032号公報
【特許文献8】特開2005−296329号公報
【特許文献9】特開2004−229949号公報
【特許文献10】特開2004−187726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般にカーテンライナーは、カーテン支持部3が挿入されるポケットを備えている。カーテン支持部3は本体部4と挟持片5とを有し、挟持片5がカーテンライナーに設けられたポケットに挿入される。これにより、カーテン支持部3がカーテンライナーを挟持し、その結果、カーテンがカーテンフック1に支持されるようになっている。
【0008】
ところで、前述のように、カーテンフック1はカーテンを支持するものであるから、カーテンフック1はカーテンから容易に脱落することが防止されなければならないという要請がある。すなわち、カーテンフック1は、カーテンに挿入しやすく、しかもカーテンから抜脱しにくいものであることが要請される。カーテンフック1がカーテンの付属部品として販売されることがあるが、そのような場合にはなおさらにその要請が強い。
【0009】
また、カーテンフック1が商品としてのカーテンに取り付けられた状態で当該カーテンが出荷される場合もある。そのような場合においては仮にカーテンフック1がカーテンから脱落したとしても実質的には問題はないが、ユーザーが商品を開封したときにカーテンフック1が乱雑に散らばっているという状況は好ましくなく、カーテンフック1が確実にカーテンに係合することができるものであるならば、商品としてのカーテンのクオリティが向上する。
【0010】
さらに、上記カーテンライナーは複数のポケットを有し、これらが並設される。上記カーテン支持部3の挟持片5は、各ポケットに挿入される。各ポケットに挟持片5が挿入されると、カーテンライナーに沿って連続して凹凸が形成されることになる。そのため、カーテンの見栄えが低下すると共に、カーテンをカーテンレールに係合させる作業も困難になるという問題もある。
【0011】
加えて、カーテン支持部3の挟持片5がカーテンライナーに挿入された状態では、カーテンフック1は、挟持片5の軸方向(同図において参照符号Nで示される方向)を中心として回転しやすく、不安定になってしまうことがある。そのため、カーテンフック1がカーテンに取り付けられた状態で当該カーテンをカーテンレールに引っ掛ける作業がしづらくなることもあった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、カーテンライナーに確実に安定的に固定されると共に、固定された場合であってもカーテンライナーに大きな凹凸を生じさせないカーテンフックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明に係るカーテンフックは、カーテン本体にカーテンライナーが取り付けられることによって吊下用ポケットが形成されたカーテンをカーテンレールに懸架するためのカーテンフックである。このカーテンフックは、一対の軸部を有する本体と、フックとを備えている。一対の軸部は、それぞれ基端及び先端を有する。各軸部は、基端同士が連続し先端同士が前後方向に当接するように互いに対向配置され且つ上下方向(すなわち前後方向に直交する方向)に延びている。一方の軸部が先端側から上記吊下用ポケットに上記上下方向上向きに挿入されることによって当該一対の軸部が協働して上記カーテンライナーを挟持する。上記フックは、他方の軸部の先端側から基端側へスライド可能な状態で当該他方の軸部に嵌合する基部及び当該基部に設けられ、上記カーテンレールに係合することによって上記本体及びカーテンを吊り下げる鍵部を有する。また、このフックは、スライド機構を介して上記他方の軸部に取り付けられており、このスライド機構は、上記フックが上記他方の軸部の先端側から基端側へスライドすることを許容し且つ基端側から先端側へスライドすることを規制する。
【0014】
上記スライド機構は、上記他方の軸部に形成され、上記上下方向に延びる係合溝を備えるスライドベースと、上記基部に形成された、上記係合溝に嵌め合わされる係合突起を備えるスライダと、上記上下方向に沿って上記スライドベースに並設され、上記上下方向及び前後方向の双方に直交する左右方向に対称に張り出す複数の逆止片と、上記スライダの左右の縁部に設けられ、上記逆止片に係合し得る一対の係止爪とを有する。上記逆止片は、上記他方の軸部の先端側から基端側に向かって漸次左右方向に拡がる傾斜面及び当該傾斜面に連続して左右方向に沿って延びる当接面とを備えている。上記一対の係止爪は、互いに近接して上記当接面に当接すると共に上記スライダが上記スライドベースに対してスライドしたときに上記傾斜面に沿って互いに離反することができるように弾性変形可能に形成されている。
【0015】
上記一方の軸部の上記他方の軸部と対向する対向面は、当該他方の軸部の方に滑らかに膨出されている。当該一方の軸部の先端部は、鏃状に形成されている。当該一方の軸部の上記対向面と背中合わせの反対側の面は、平坦面に形成されている。
【0016】
この構成によれば、フックが本体の他方の軸部に取り付けられる。具体的には、フックの基部が他方の軸部の先端側から当該他方の軸部に嵌め込まれる。このとき、スライド機構が設けられているから、フックは、他方の軸部の先端側から基端側へのみ(すなわち、上下方向下向きにのみ)スライドすることができる。一方の軸部がカーテンの吊下用ポケットに上下方向上向きに挿入されると、カーテン本体は、一対の軸部に挟み込まれ、カーテンは、下方から支えられるようにしてフックに引っ掛けられる。そして、フックの鍵部がカーテンレールに係合することによって、カーテンはカーテンレールに懸架されることになる。
【0017】
一方の軸部の対向面が他方の軸部の方に滑らかに膨出しており、且つ一方の軸部の先端部が鏃状に形成されているから、当該一方の軸部が上記吊下用ポケットに容易に挿入される。しかも、一対の軸部が確実にカーテンライナーを挟持することができる。さらに、吊下用ポケットに一旦挿入された一方の軸部は、容易に抜けることはない。また、一方の軸部の対向面に対して反対側の面が平坦面であるから、当該一方の軸部が吊下用ポケット内で不安定に転がることが防止されるし、カーテンライナーが設けられた部分に大きな凹凸が形成されることもない。
【0018】
フックは、本体に対して上下方向にスライドすることができるから、カーテンの丈寸法に対応してカーテンレールに対する一方の軸部の高さが調整される。すなわち、カーテンの丈寸法が変化しても、カーテンが常に一定の高さに配置される。しかも、フックの基部が本体の他方の軸部に挿入されたときは、他方の軸部のスライドベースに設けられた係合溝と基部のスライダに設けられた係合突起とが嵌め合わされるので、フックは本体に対してがたつくことなく装着される。また、フックが本体に対して上下方向上向きにスライドすることが規制されるから、カーテンが他方の軸部に引っ掛けられたときに当該カーテンの重量により他方の軸部が相対的に上下方向下向きに移動することが規制される。すなわち、カーテンが下方にずれてしまうことがない。このようなスライド規制は、スライダの係止爪がスライドベースの逆止片に当接することによって、基部が他方の軸部に対して上下方向下向きにのみスライドすることから実現されており、したがって、当該スライド規制を実現する構造がきわめて簡単であるという利点がある。しかも、基部が上下方向下向きに移動する際には、上記係止爪が弾性変形して当接面との当接が容易に解除されるから、フックを作業者が意図的にスライドさせる動作もきわめて簡単である。
【0019】
(2) 上記一方の軸部の先端部は、当該一方の軸部の先端から左右方向に対称に張り出す張出面と、当該張出面に連続し、左右方向に延びる水平面とを備えており、上記張出面は、左右方向に湾曲して凹面を形成しているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、一方の軸部は、より一層容易に吊下用ポケットに挿入することができ、しかも抜けにくくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カーテンフックをカーテンライナーに挿入する作業がきわめて容易であり、しかも、カーテンライナーが確実に挟持され、カーテンが安定的に懸架される。しかも、カーテンライナーに大きな凹凸が生じることがなく、カーテンの見栄えが向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0023】
1.<概略構成及び特徴点>
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るカーテンフック30の斜視図である。
【0025】
一般にカーテンは、カーテン本体と、帯状に形成されたカーテンライナーとを有する。カーテンライナーは、カーテン本体の上縁部に重ねて縫い合わせられる。カーテンライナーがカーテン本体に重ね合わされることによって当該カーテンを吊り下げるための吊下用ポケットが形成される。カーテンは、本実施形態に係るカーテンフック30(図1参照)を介してカーテンレールに引っ掛けられる。カーテンフック30は、後に詳述されるように上記吊下用ポケットに挿入されると共にカーテンレールに係合され、これにより、カーテンがカーテンレールにスライド自在に懸架されるようになっている。
【0026】
カーテンフック30は、上記吊下用ポケットに挿入される本体31と、上記カーテンレールに係合するフック32とを備えている。フック32は、後述されるスライド機構33を介して本体31に取り付けられている。本実施形態に係るカーテンフック30の特徴とするところは、(1) 本体31が上記吊下用ポケットに挿入され易く且つ抜け落ちにくいように、その形状が工夫されている点、(2) 本体31が上記吊下用ポケットに挿入された状態で安定して配置されるように、その形状が工夫されている点、及び(3) 上記スライド機構33によってカーテンの高さ調整がきわめて簡単に且つ容易に行われるようになっている点である。
【0027】
2.<本体の構成>
【0028】
図2は、上記本体31の斜視図である。図3ないし図6は、それぞれ、図2におけるIII−矢視図(側面図)、IV−矢視図(平面図)、V−矢視図(背面図)、VI−矢視図(底面図)である。
【0029】
本体31は、樹脂から構成されている。図2が示すように、本体31は、前方軸部34(他方の軸部)及び後方軸部35(一方の軸部)を備えている。前方軸部34及び後方軸部35は、それぞれ細長棒状に形成されている。前方軸部34及び後方軸部35は一体的に形成されており、前方軸部34の基端36と後方軸部35の基端37とは連続されている。前方軸部34及び後方軸部35は、前後方向に対向するように配置されている。前方軸部34の先端38と後方軸部35の先端39とが前後方向に当接している。本明細書において「前後方向」とは、前方軸部34と後方軸部35とが対向する方向(図3において矢印40の方向)である。したがって、前方軸部34は前後方向前側に配置されており、後方軸部35は前後方向後側に配置されている。
【0030】
図2ないし図4が示すように、前方軸部34は、上下方向に延びている。本明細書において「上下方向」とは、上記前後方向と直交する方向(図3において矢印41の方向)である。図2及び図6が示すように、前方軸部34は、基板42とスライドベース43とを備えている。本実施形態では、基板42及びスライドベース43は一体的に形成されている。スライドベース43は、一対の係合溝44、45を備えている。各係合溝44、45は、スライドベース43の右側及び左側に対称に設けられており、スライドベース43に沿って上下方向に延びている。係合溝44、45は、スライドベース43の上端及び下端まで延びている。
【0031】
図2及び図4が示すように、スライドベース43は、前板46を備えている。この前板46は、スライドベース43に上記係合溝44、45が設けられた結果、スライドベース43の前面側に形成された平板状の部材である。この前板46は、複数の逆止片47を備えている。これら逆止片47は、上下方向(図3において矢印41の方向)に沿って並設されている。各逆止片47は、対を成して左右方向に対称に張り出すように設けられている。本明細書において「左右方向」とは、上記前後方向及び上記上下方向の双方に直交する方向であって、図4において矢印48の方向である。本実施形態では、上下方向に沿って13対の逆止片47(26個の逆止片47)が設けられている。
【0032】
各逆止片47は、図2及び図4が示すように、傾斜面49と当接面50とを備えている。各傾斜面49は、前板46の左右の側面から左方向及び右方向に張り出している。左方向に張り出した傾斜面49は、前方軸部34の先端38側から基端36側に向かって漸次左方向に拡がるように傾斜している。また、右方向に張り出した傾斜面49は、前方軸部34の先端38側から基端36側に向かって漸次右方向に拡がるように傾斜している。さらに、当接面50は、各傾斜面49に連続している。具体的には、各当接面50は、各傾斜面49の下縁(前方軸部34の基端36側の縁部)に連続し、左右方向(矢印48の方向)に真っ直ぐ延びている。要するに、上記前板46は、左右に張り出した「たけのこ」状に形成されている。
【0033】
図2、図3及び図5が示すように、後方軸部35は、前方軸部34の後方に配置され、上下方向に延びている。後方軸部35は、略L字状に形成されており(図3参照)、前述のように、基端37が前方軸部34の基端36と連続し、先端39が前方軸部34の先端38と当接している。本体31が樹脂により構成されているから、後方軸部35は、前後方向(図3において矢印40の方向)に沿って弾性的に変形することができる。この後方軸部35は、先端39側からカーテンの吊下用ポケットに挿入されるようになっている。これにより、後方軸部35は、前方軸部34と共にカーテンライナーを挟み込むことができる。つまり、本体31は、カーテンライナーを挟持するクリップを構成している。
【0034】
図7は、後方軸部35の要部拡大斜視図である。
【0035】
図2、図3及び図7が示すように、後方軸部35の対向面51は滑らかな曲面に形成されており、後方軸部35の背面52は、平坦面に形成されている。ここで、上記対向面51は、前方軸部34の基板42と対向する面である。また、上記背面52は、上記対向面51と背中合わせの反対側の面、すなわち、後方軸部35の後面である。上記対向面51は、円弧状の曲面に形成されていてもよい。また、この対向面51の頂部(すなわち、前方軸部34と当接する部分)が平面に形成されていてもよい。要するに、上記対向面51は、前方軸部34の方に滑らかに膨出していればよい。
【0036】
図5及び図7が示すように、後方軸部35の先端部53は、鏃状に形成されている。すなわち、この先端部53は、左右方向に張り出す張出面54と水平面55とを備えている。張出面54は、上記対向面51に連続して一体的に形成されており、左方向及び右方向に対称に張り出している。図7が示すように、この張出量dは、左右端においてもっとも大きく、上記対向面51の頂部においてゼロである。また、水平面55は、張出面54の縁部に連続し、左右方向に真っ直ぐに延びて当該後方軸部35に連続している。つまり、この張出面54及び水平面55により、後方軸部35の左右の縁部に段差が形成されている。さらに、本実施形態では、上記張出面54は、左右方向の内側に湾曲されている。これにより、張出面54は凹面に形成されている。張出面54が凹面であることの利点については後述される。
【0037】
3.<フックの構成>
【0038】
図8は、上記フック32の斜視図である。図9は、上記フック32の要部拡大斜視図であり、図10は、上記フック32の断面図である。
【0039】
フック32は、樹脂から構成されている。図1及び図8が示すように、フック32は、ブロック状に形成された基部56と鍵部57とを備えており、これらは一体的に形成されている。
【0040】
基部56は、コア58(スライダ)と一対の係止爪59、60とを備えている。コア58の外形形状は略立方体である。ただし、コア58は貫通孔61を備えている。この貫通孔61は矩形状を呈し、コア58を上下方向に貫通している。そして、この貫通孔61に連続するように切欠溝62が設けられている。この切欠溝62は、コア58の後面63(すなわち、本体31の上記前板46と対向する面)の中央に設けられている。この切欠溝62は、コア58の上面から下面まで上下方向に真っ直ぐに形成されている。このように貫通孔61及び切欠溝62が設けられることにより、コア58の左側及び右側に一対の係合突起64、65が形成されている。
【0041】
上記係止爪59、60は、それぞれ、コア58の上面の左右の端縁に設けられており、上方に突出している。これら係止爪59、60は、細長の平板状に形成されており、コア58と一体的に形成されている。係止爪59、60は、それぞれ、その先端同士が接近するように傾斜している。各係止爪59、60は、弾性変形が可能である。各係止爪59、60が弾性的に起伏することによって両者の先端同士が近接した姿勢(第1姿勢)と離反した姿勢(第2姿勢)との間で姿勢変化自在となっている。
【0042】
コア58は、上記前方軸部34のスライドベース43に嵌め込まれるようになっており、このスライドベース43に沿ってスライドすることができるようになっている。具体的には、コア58は、上方からスライドベース43に嵌め込まれることによって、上記前板46が上記貫通孔61に挿通され、上記係合突起64、65が上記係合溝44、45に挿通される。これにより、コア58は、スライドベース43とがたつくことなく嵌合し、スライドベース43に対してスライドするスライダとして機能する。
【0043】
コア58がスライドベース43に嵌め込まれると、上記係止爪59、60の先端同士は常時において近接しているから(図8参照)、当該係止爪59、60は、図1が示すようにスライドベース43に設けられた逆止片47の当接面50に当接する。すなわち、係止爪59、60が第1姿勢となって、上記当接面50に当接する。このため、コア58が上方へスライドすることが規制される。この状態でコア58が下方へスライドされると、係止爪59、60は、上記逆止片47の傾斜面49に相対的に押圧され、左右方向外側へ弾性的に変位する。すなわち、係止爪59、60が第2姿勢に変位し、係止爪59、60の先端が傾斜面49に当接する。コア58がさらに下方へスライドされ、係止爪59、60が当該傾斜面49を通過すると、係止爪59、60は再び第1姿勢に弾性的に復帰し、上記当接面50と隣り合う当接面50に当接する。つまり、逆止片47及び係止爪59、60はいわゆるラチェット機構を構成しており、したがって、コア58は、前方軸部34の先端38側から基端36側へのみスライドすることができるようになっている。
【0044】
上記鍵部57は、図1が示すように、略U字状に湾曲された細長の棒状部材からなる。この鍵部57は上記コア58と共に一体的に形成されている。したがって、この鍵部57が上方からカーテンレールに係合することによって当該カーテンフック30がカーテンレールに引っ掛けられることになる。鍵部57の形状はこのような略U字状に限定されるものではないが、カーテンレールに対して上方から下方へ引っ掛けることができる形状であることが好ましい。
【0045】
4.<スライド機構の構成>
【0046】
上記フック32は、上記スライド機構33を介して上記前方軸部34に設けられている。このスライド機構33が設けられることによって、前述のように、コア58が前方軸部34の先端38側から基端36側へのみスライドすることができるようになっている。その結果、フック32は、前方軸部34に対して先端38側から基端36側へのみスライドすることが許容され、基端36側から先端38側へのスライドが規制される。
【0047】
スライド機構33は、上記スライドベース43と、上記コア58と、スライドベース43に設けられた逆止片47と、コア58に設けられた係止爪59、60とにより構成されている。すなわち、上記スライドベース43及びこれに設けられた逆止片47並びに上記コア58及びこれに設けられた係止爪59、60がスライド機構33の一部を兼ねている。なお、スライド機構33の機能については前述の通りであるから、その説明は、省略される。
【0048】
5.<カーテンフックの使用要領>
【0049】
本実施形態に係るカーテンフック30は、次のようにして使用される。
【0050】
まず、フック32が本体31の前方軸部34に取り付けられる。具体的には、基部56のコア58が前方軸部34の先端38側から当該前方軸部34に挿入され嵌合される。このとき、スライド機構33が設けられているから、フック32は、前方軸部34の先端38側から基端36側へのみ(すなわち、上下方向下向きにのみ)スライドすることができる。
【0051】
後方軸部35がカーテンの吊下用ポケットに上下方向上向きに挿入される。これにより、カーテンライナーが前方軸部34及び後方軸部35に挟み込まれ、カーテンは、下方から支えられるようにしてフック32に引っ掛けられる。そして、フック32の鍵部57がカーテンレールに引っ掛けられることによって、カーテンはカーテンレールに懸架されることになる。
【0052】
図1ないし図3が示すように、後方軸部35の対向面51が前方軸部34の方に滑らかに膨出しているから、前方軸部34及び後方軸部35は、確実にカーテンライナーを挟持することができる。また、後方軸部35の先端部が鏃状に形成されているから、作業者は、後方軸部35を上記吊下用ポケットに容易に挿入することができる。さらに、後方軸部35の先端部が鏃状に形成されているから、吊下用ポケットに一旦挿入された後方軸部35は、容易に抜けることはない。しかも、後方軸部35の背面52が平坦面であるから、後方軸部35が吊下用ポケットに挿入された状態で、後方軸部35が安定的に配置され、吊下用ポケット内で不安定に転がることが防止される。加えて、後方軸部35の背面52が平坦面であるから、後方軸部35が吊下用ポケットに挿入されたときに、カーテンに大きな凹凸が形成されることもない。
【0053】
フック32は、本体31に対して上下方向にスライドすることができるから、カーテンレールに対する後方軸部35の高さが調整される。すなわち、カーテン本体の長さ(丈寸法)が変化したとしても、カーテンが常に一定の高さに配置される。しかも、フック32の基部56が前方軸部34に挿入されたときは、前述のように、前方軸部34に設けられた係合溝44、45と基部56に設けられた係合突起59、60とが嵌め合わされることから、フック32は本体31に対してがたつくことなく装着される。したがって、カーテンも安定的に支持されることになる。
【0054】
また、上記スライド機構33により、フック32が本体31に対して上下方向上向きにスライドすることが規制されるから、カーテンが後方軸部35に引っ掛けられたときに当該カーテンの重量により前方軸部34がフック32に対して下向きに移動することが規制される。すなわち、カーテンが下方にずれてしまうことがない。このようなスライド規制は、フック32に設けられた係止爪59、60が本体31の逆止片47に当接することによって、基部56が前方軸部34に対して上下方向下向きにのみスライドすることが許容されていることから実現されており、したがって、当該スライド規制を実現する構造がきわめて簡単であるという利点がある。しかも、フック32が本体31に対してスライドする際には、上記係止爪59、60が弾性変形して本体31に設けられた逆止片47の当接面50との当接が容易に解除される。したがって、作業者が意図的にフック32をスライドさせる動作もきわめて簡単である。
【0055】
特に本実施形態では、後方軸部35の先端部53を構成する張出面54が左右方向に湾曲して凹面を形成しているから、作業者は、後方軸部35をより一層容易に吊下用ポケットに挿入することができるという利点があり、しかも、後方軸部35は、吊下用ポケットから抜けにくい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、カーテンに取り付けられるカーテンフックに適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカーテンフックの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るカーテンフックの本体の斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるIII−矢視図である。
【図4】図4は、図2におけるIV−矢視図である。
【図5】図5は、図2におけるV−矢視図である。
【図6】図6は、図2におけるVI−矢視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るカーテンフックの後方軸部の要部拡大斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係るカーテンフックのフックの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係るカーテンフックのフックの要部拡大斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係るカーテンフックのフックの断面図である。
【図11】図11は、従来のカーテンフックの斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
30・・・カーテンフック
31・・・本体
32・・・フック
33・・・スライド機構
34・・・前方軸部
35・・・後方軸部
36・・・基端
37・・・先端
38・・・基端
39・・・先端
43・・・スライドベース
44・・・係合溝
45・・・係合溝
47・・・逆止片
49・・・傾斜面
50・・・当接面
51・・・対向面
52・・・背面
53・・・先端部
54・・・張出面
55・・・水平面
56・・・基部
57・・・鍵部
58・・・コア
59・・・係止爪
60・・・係止爪
64・・・係合突起
65・・・係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテン本体にカーテンライナーが取り付けられることによって吊下用ポケットが形成されたカーテンをカーテンレールに懸架するためのカーテンフックであって、
基端同士が連続し先端同士が前後方向に当接するように互いに対向配置され且つ当該前後方向に直交する上下方向に延びる一対の軸部を有し、一方の軸部が先端側から上記吊下用ポケットに上記上下方向上向きに挿入されることによって当該一対の軸部が協働して上記カーテンライナーを挟持する本体と、
他方の軸部の先端側から基端側へスライド可能な状態で当該他方の軸部に嵌合する基部及び当該基部に設けられ、上記カーテンレールに係合することによって上記本体及びカーテンを吊り下げる鍵部を有するフックと、
上記フックが上記他方の軸部の先端側から基端側へスライドすることを許容し且つ基端側から先端側へスライドすることを規制するスライド機構とを備え、
上記スライド機構は、
上記他方の軸部に形成された、上記上下方向に延びる係合溝を備えるスライドベースと、
上記基部に形成された、上記係合溝に嵌め合わされる係合突起を備えるスライダと、
上記上下方向に沿って上記スライドベースに並設され、上記上下方向及び前後方向の双方に直交する左右方向に対称に張り出す複数の逆止片と、
上記スライダの左右の縁部に設けられ、上記逆止片に係合し得る一対の係止爪とを有し、
上記逆止片は、上記他方の軸部の先端側から基端側に向かって漸次左右方向に拡がる傾斜面及び当該傾斜面に連続して左右方向に沿って延びる当接面とを備えており、上記一対の係止爪は、互いに近接して上記当接面に当接すると共に上記スライダが上記スライドベースに対してスライドしたときに上記傾斜面に沿って互いに離反することができるように弾性変形可能に形成されており、
上記一方の軸部の上記他方の軸部と対向する対向面は、当該他方の軸部の方に滑らかに膨出されており、
当該一方の軸部の先端部は、鏃状に形成されており、
当該一方の軸部の上記対向面と背中合わせの反対側の面は、平坦面に形成されているカーテンフック。
【請求項2】
上記一方の軸部の先端部は、
当該一方の軸部の先端から左右方向に対称に張り出す張出面と、当該張出面に連続し、左右方向に延びる水平面とを備えており、上記張出面は、左右方向に湾曲して凹面を形成している請求項1に記載のカーテンフック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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