説明

カートリッジ式押出装置

【課題】充填物を押出して使い切ったカートリッジを新しいカートリッジと交換する際に、使い切ったカートリッジの取外しを容易にして、新しいカートリッジとの交換作業を簡便にすることができ、カートリッジの繰返しの交換によっても、カートリッジからの充填物の押出し量が不安定となることのないようにする。
【解決手段】 カートリッジ本体5とボディ3との螺合による装着状態において、両者を相対的に回転させて、ボディ3をカートリッジ本体5に対して相対的に前進させることにより、カートリッジ本体5内の押し子6を、押し棒14を介して前方に向けて摺動させ、カートリッジ本体5の押出口5aから充填物Wを押出すようにする。充填物Wが押出された使切り状態おいて、カートリッジ本体5とボディ3との螺合状態を開放することにより、カートリッジ本体5を、ボディ3の後端開口から引抜くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば歯冠修復治療に用いられる歯冠修復材料等の充填物が収容されたカートリッジ内の前記充填物を押出すためのカートリッジ式押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯冠修復治療の分野においては、天然歯に対する審美的な修復効果を得るために、レジン系材料からなる硬化性に優れた光硬化性組成物が歯冠修復材料として広く使用されている。
【0003】
このような歯冠修復材料は、多種多様な性状や色調のレジンペーストを円筒状のカートリッジ本体内に収容するとともに、カートリッジ本体の後端開口を押し子によって閉塞し、かつその前端の押出口を保護キャップによって被冠したカートリッジに保管されている。
治療時には、天然歯に対する性状や色調に応じたレジンペーストが収容されたカートリッジを選択して、それを押出装置に装着することにより、レジンペーストを、必要に応じてカートリッジ本体内から少量ずつ押出して使用されている。
また、カートリッジ本体内のレジンペーストを使い切ると、カートリッジを押出装置から取外して、新しいカートリッジに交換している。
【0004】
従来の押出装置としては、例えば前端開口部にカートリッジ本体の後端螺合部が螺合状態で装着される筒状の継手部材と、この継手部材の後端開口部から貫通状態で前後進可能に螺合される、外周面に螺子切りが施された押し棒とより構成されるとともに、この押し棒を、継手部材を介して、カートリッジ本体内に挿入して、カートリッジ本体に対して相対的に回転させて前進させ、かつその前端部でもって押し子を前方に向けて摺動させることにより、カートリッジ本体内に収容されたレジンペースト等の充填物を、カートリッジ本体前端に設けた押出口から押出すようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の押出装置では、レジンペーストをカートリッジ本体内から押出す際の押し棒の回転によって、継手部材が相対的に後方に移動し、レジンペーストを使い切ったときには、継手部材が押し棒の後端基部近くまで達するようになっているため、レジンペーストを使い切ったカートリッジを取外すためには、継手部材を押し棒に対して元の使い始めの位置まで戻す必要があり、特に、押し棒の1回転によるレジンペーストの押出し量が微量となるように、継手部材と押し棒との互いの螺子山のピッチを細かくした場合には、継手部材の戻しに要する時間が一層長くなり、これにより、新しいカートリッジとの交換作業に手間が掛かり、面倒であるという問題がある。
【0006】
また、前記した不具合を解消するために、押出装置として、継手部材に、押し棒との螺合部分を縮径させることにより、螺合状態を保持するロック機構を設けるとともに、このロック機構を、レジンペーストを使い切ったときに、継手部材を拡径状態に復径して半螺合状態に解除することにより、継手部材に対して、レジンペーストを使い切った位置から押し棒を、回転させることなく、半螺合状態のまま強制的に引き抜くことができるように構成したものがある(特許文献2参照)。
【0007】
しかし、特許文献2に記載の押出装置では、継手部材から押し棒を引き抜く際、それらの半螺合状態にある螺子山同士が擦れ合うため、数回の繰返し使用によって、互いの螺子山部分が磨耗して、継手部材と押し棒との間にがたつきが生じ、これにより、押し子に対する押し棒の押込み力が不均一になり易く、レジンペーストの押出し量が不安定になる。
しかも、使用前のカートリッジ本体における前端の押出口に予め被冠されていた比較的小さな保護キャップも、使用毎の取外しによって紛失もしくは破損したりすることが多く、そのため、使用途中のカートリッジを保管する際に、充填物として歯冠修復材料のような光硬化性を有するレジンペーストを使用したものでは、遮光状態で保管しないと、レジンペーストが光を受けてカートリッジ本体の押出口内で硬化してしまい、次回のレジンペーストの押出しが困難になるため、新たなキャップを用意しておく必要があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭55−10311号公報
【特許文献2】特開2000−219282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の現状に鑑み、レジンペースト等の充填物を押出して使い切ったカートリッジを新しいカートリッジと交換する際に、使い切ったカートリッジの取外しを容易にして、新しいカートリッジとの交換作業を簡便にすることができるとともに、カートリッジの繰返し交換によっても、カートリッジからのレジンペースト等の充填物の押出し量が不安定となることのないカートリッジ式押出装置を提供することを課題とする。
【0010】
また好ましくは、カートリッジ本体の前端の押出口に被冠されていた保護キャップを紛失もしくは破損した場合にも、使用途中のカートリッジを装着したまま遮光状態で保管することができるようにしたカートリッジ式押出装置を提供することも併せて課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、「特許請求の範囲」の欄における各請求項に記載するように、次のような構成からなる発明によって解決される。
(1) 前端に押出口を有する筒状のカートリッジ本体と、このカートリッジ本体の内周面に密接して軸方向に摺動可能に内挿された押し子とを備えるカートリッジと、このカートリッジを内嵌しうる前後端が開口したボディと、このボディの後端開口から内部に挿入される押し部材とよりなり、前記押し部材を、ボディに保持させるとともに、前記カートリッジの後端外周面に雄ねじを設け、この雄ねじと螺合する雌ねじをボディの内周面に設けて、カートリッジを、ボディの前端開口から前記両ねじを螺合させて、ボディに内嵌し、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させることにより、前記押し部材の前端部で押し子を前方に向けて摺動させてカートリッジ内の充填物を押出口から押出しうるようにし、かつ前記充填物が押出された状態においては、前記両ねじの螺合状態が開放されて、カートリッジをボディの後端開口から引抜き可能としたことを特徴とするカートリッジ式押出装置とする。
【0012】
(2) 上記(1)項において、押し部材を、押し棒と、この押し棒の後端に一体に設けた摘み部とより構成し、前記押し棒をボディの後端開口から内部に挿入するとともに、前記摘み部をボディの後端に螺合手段または凹凸係合手段によって螺合または係合することにより、前記押し部材をボディに保持させる。
【0013】
(3) 上記(1)項または(2)項において、ボディの内周面に雌ねじを設けるとともに、その後端内周面には、雌ねじを設けない非螺合部を形成し、カートリッジをボディの前端開口から内嵌し、カートリッジの後端外周面に設けた雄ねじをボディの雌ねじに螺合させ、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させ、カートリッジの前記雄ねじを設けた部分が、ボディの前記非螺合部に位置したときに、前記雄ねじと雌ねじとの螺合状態が開放されて、カートリッジをボディの後端開口から引抜き可能とする。
【0014】
(4) 上記(1)項または(2)項において、押し部材における摘み部を、カートリッジの後端が遊嵌しうるキャップ状のものとし、カートリッジをボディの前端開口から内嵌し、カートリッジの後端外周面に設けた雄ねじをボディの雌ねじに螺合させ、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させ、カートリッジの前記雄ねじを設けた部分が、前記キャップ状の摘み部に位置して遊嵌状態となることにより、前記雄ねじと雌ねじとの螺合状態が開放されて、カートリッジをボディの後端開口から引抜き可能とする。
【0015】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端を押し部材に保持可能にする。
【0016】
(6) 上記(5)項において、カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端開口を、押し棒の後端部に形成したテーパ面部に圧入させることにより保持しうるようにする。
【0017】
(7) 上記(5)項において、カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端開口の内周面に形成した雌ねじを、押し棒の後端部外周面に形成した雄ねじに螺合させるか、またはカートリッジの前記雄ねじを、キャップ状の摘み部の内周面に形成した雌ねじに螺合させることにより保持しうるようにする。
【0018】
(8) 上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、ボディの前端開口に、遮光用キャップを着脱可能に設けるとともに、この遮光用キャップをもって、ボディから露出するカートリッジの外周を被包可能にする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
請求項1記載の発明によれば、カートリッジ内の充填物が押出された使切り状態において、カートリッジとボディとの螺合状態が開放されて、カートリッジを、ボディの後端開口から引抜き可能としてあるため、使い切ったカートリッジの取外しが容易となり、新しいカートリッジの交換作業を簡便にすることができる。
また、特許文献2における発明のように、カートリッジの交換時において、押し部材を引抜く際に、半螺合状態にある螺子山同士が擦れ合うような現象も生じることもなく、カートリッジ本体内の押し子に対する押し部材の押込み力を常に均等に作用させることができ、特許文献2に記載の発明のような螺子山部分の磨耗を原因とするレジンペーストの押出し量が不安定になることもない。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、押し部材を、押し棒と、この押し棒の後端に一体に設けた摘み部とより構成し、押し棒をボディの後端開口から内部に挿入するとともに、摘み部をボディの後端に螺合手段または凹凸係合手段によって螺合または係合することにより、押し部材をボディに保持させるようにしてあるため、ボディの後端開口からの押し棒の挿入後に、押し部材をボディの後端に容易に保持させることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、ボディの内周面に雌ねじを設けるとともに、その後端内周面には、雌ねじを設けない非螺合部を設け、カートリッジをボディの前端開口から内嵌し、カートリッジの後端外周面に設けた雄ねじをボディの雌ねじに螺合させ、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させ、カートリッジの雄ねじを設けた部分が、ボディの非螺合部に位置したとき、すなわち充填物使切り状態おいて、雄ねじと雌ねじとの螺合状態が開放されるようにしてあるため、カートリッジをボディの後端開口から容易に引抜くことができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、押し部材における摘み部を、カートリッジの後端が遊嵌しうるキャップ状のものとし、カートリッジをボディの前端開口から内嵌し、カートリッジの後端外周面に設けた雄ねじをボディの雌ねじに螺合させ、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させ、カートリッジの前記雄ねじを設けた部分が、前記キャップ状の摘み部に位置して遊嵌状態となることにより、前記雄ねじと雌ねじとの螺合状態が開放されるようにしてあるため、カートリッジをボディの後端開口から容易に引抜くことができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端が、押し部材に保持しうるようにしてあるため、摘み部による押し棒のボディ内からの引抜きと同時に、カートリッジを簡単にかつ容易に引抜くことができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端開口を、押し棒の後端部に形成したテーパ面部に圧入させることにより保持しうるようにしてあるため、前記請求項5と同様の効果を得ることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端開口の内周面に形成した雌ねじを、押し棒の後端部外周面に形成した雄ねじに螺合させるか、またはカートリッジの前記雄ねじを、キャップ状の摘み部の内周面に形成した雌ねじに螺合させることにより保持しうるようにしてあるため、前記請求項5と同様の効果を得ることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、ボディの前端開口に、遮光用キャップを着脱可能に設けるとともに、この遮光用キャップでもって、ボディから露出するカートリッジの外周を被包可能にしてあるため、使用前に、予めカートリッジ本体の前端の押出口に被冠または被着されていた保護キャップまたはアルミ箔等の被覆材を紛失もしくは破損した場合にも、使用途中のカートリッジをボディに装着したまま、遮光状態で保管することができる。
特に、充填物が光硬化性材料の場合には、カートリッジの前端の押出口を、遮光状態に維持することができ、カートリッジ本体の押出口における充填物の硬化を防止することができるため、次回の充填物の押出しを円滑に行うことができる。
発明の具体的な内容は、次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態を示すカートリッジ式押出装置の縦断面図であり、ボディから遮光用キャップを取外して、押し部材をボディに保持させるとともに、カートリッジをボディに装着した状態を示す。(実施例1)
【図2】図1に示すカートリッジ式押出装置の分解斜視図である。
【図3】カートリッジの縦断面図である。
【図4】ボディに押し部材を保持させるとともに、遮光用キャップを取付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示す状態を一部拡大して示す縦断面図である。
【図6】カートリッジ内からの充填物の押出し状態を示す縦断面図である。
【図7】カートリッジ内からの充填物押出し後の使切り状態を示す縦断面図である。
【図8】カートリッジ内からの充填物押出し後の使切り状態において、カートリッジと押し部材を一体として、ボディから取外した状態を示す分解縦断面図である。
【図9】本発明に係る第二実施形態を示すカートリッジ式押出装置において、カートリッジ内からの充填物の押出し状態を示す縦断面図である。(実施例2)
【図10】図9に示すカートリッジ式押出装置において、カートリッジ内からの充填物押出し後の使切り状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態を示すカートリッジ式押出装置の縦断面図であり、ボディから遮光用キャップを取外して、押し部材をボディに保持させるとともに、カートリッジをボディに装着した状態を示し、図2は、図1に示すカートリッジ式押出装置の分解斜視図、図3は、カートリッジの縦断面図、図4は、ボディに押し部材を保持させるとともに、遮光用キャップを取付けた状態を示す斜視図、図5は、図4に示す状態を一部拡大して示す縦断面図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、本発明のカートリッジ式押出装置(以下、「押出装置」とも略記する)1は、カートリッジ2と、このカートリッジ2を内嵌しうる前後端が開口したボディ3と、このボディ3の内部に挿入される押し部材4とより構成される。
【0030】
カートリッジ2は、図2、図3に示すように、前端が段付き状に縮径されて押出口5aが設けられた筒状のカートリッジ本体5と、このカートリッジ本体5の内周面に密接して軸方向に摺動可能に内挿された押し子6とを備えている。
押し子6は、カートリッジ本体5の内周壁面との摩擦抵抗の小さなポリエチレンなどの比較的軟質の合成樹脂やポリアミドなどの合成樹脂により形成されているとともに、側面視断面H形状からなる肉厚の円板状をなし、その後面中央部には、凹部7が設けられている。
ボディ3の軸方向の長さは、カートリッジ本体5の長さとほぼ等しい長さ、換言すれば、ボディ3内に、カートリッジ本体5がほぼ収容可能な長さを有している。
【0031】
カートリッジ本体5の前端には、カートリッジ本体5内に収容されるレジンペースト等の充填物Wの乾燥や光重合による硬化等を防止するための保護キャップ8が着脱可能に被冠されている。
充填物Wは、カートリッジ本体5の後端開口5bから内部に収容され、その後、押し子6が内挿される。
カートリッジ本体5の後端は、拡径され、その後端外周面5cには、雄ねじ9が設けられている。
【0032】
ボディ3は、図2に示すように、例えばテーブル等に載置した場合の転がりを防止するために、外周面の一部が拡径されて断面六角形状の転動防止部3aが形成された円筒状であり、その前後端は、それぞれ段付き状に縮径されて、前端縮径部3bと後端縮径部3cとが形成されている。
【0033】
前端縮径部3bの外周面には、図4、図5に示すように、有底円筒状の遮光用キャップ10が外嵌状態で被冠されている。
遮光用キャップ10の後端開口10a側の内周面は、段付き状に拡径されて、遮光用キャップ10の外周面とボディ3の外周面とが同一面となるように形成されている。
【0034】
ボディ3の後端縮径部3cの外周面には、雄ねじ11が設けられている。
ボディ3の内周面3dには、カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9と螺合する雌ねじ12が設けられている。
ボディ3の内周面3dのうち、その後端内周面3eには、前記雌ねじ12を設けない非螺合部13が形成されている。
なお、この非螺合部13には、前記雄ねじ9と螺合しない雌ねじは設けられていてもよい。
【0035】
押し部材4は、図2に示すように、押し棒14と、この押し棒14の後端に一体に設けた摘み部15とより構成されている。
押し棒14は、円柱状をなし、その前端には、段付き状に縮径されて、カートリッジ2における押し子6の凹部7に嵌入される突起部14aが突設されている。
この突起部14aは、前方に向けて漸次縮径され、円錐台状をなしている。
押し棒14の後端部は、段付き状に拡径されて、後方に向けて漸次拡径されたテーパ面部14bに形成されている。
【0036】
なお、本実施形態では、テーパ面部14bの外径は、カートリッジ本体5における後端開口5bの内径よりも小さな段階から漸次大きくなるような緩やかな勾配で段付き状態に拡径したが、この拡径状態を急勾配とする場合には、前記テーパ面部14bを、押し棒14の外周面に対して段付き状に形成しなくてもよい。
【0037】
摘み部15は、カートリッジ本体5の後端外周面5cが遊嵌しうるキャップ状をなし、その内周面15aには、ボディ3の後端縮径部3cの外周面に設けられた雄ねじ11と螺合する雌ねじ16が設けられている。
【0038】
なお、前記したカートリッジ2、ボディ3、押し部材4及び遮光用キャップ10は、例えば、合成樹脂やアルミニウム等の薄肉な軽合金素材から形成されている。
【0039】
ボディ3の前端縮径部3bの基部外周面には、図5に示すように、環状凹溝17が設けられている。
遮光用キャップ10の段付き状に拡径された後端開口10a側の内周面には、環状突条18が設けられている。
ボディ3の前端縮径部3bに遮光用キャップ10を被冠する場合には、前記環状突条18を環状凹溝17に弾性的に係合させることにより、遮光用キャップ2がボディ3の前端部に着脱可能に安定よく係止されるようになっている。
【0040】
本発明のカートリッジ式押出装置1は、図1、図2に示すように、ボディ3から遮光用キャップ10を取外して、ボディ3の前後端開口に、カートリッジ2と押し部材4を装着する場合、ボディ3へのカートリッジ2と押し部材4の装着は、いずれを先に行ってもよい。
【0041】
ボディ3に押し部材4を保持させて装着するには、押し部材4の押し棒14を、ボディ3の後端開口から内部に軸線上に沿って前端開口に向けて遊嵌状態で挿入するとともに、摘み部15の内周面15aに設けた雌ねじ16を、ボディ3の後端縮径部3cの外周面に設けた雄ねじ11と螺合させることにより、押し部材4をボディ3の後端部に保持させる。
また、ボディ3にカートリッジ2を装着するには、ボディ3の前端開口から、カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9を、ボディ3の内周面3dに設けた雌ねじ12に螺合させて、カートリッジ2をボディ3に内嵌させる。
このとき、カートリッジ本体5に内挿されている押し子6の凹部7に、押し棒14の突起部14aが嵌入される。
【0042】
なお、ボディ3に押し部材4を装着する場合、本実施形態では螺合手段をもって保持させるようにしたが、他の手段としては、例えばボディ3の後端縮径部3cの外周面と摘み部15の内周面15aとの嵌合面に凹凸部を形成して、互いに凹凸係合可能にし、この凹凸係合手段により、押し部材4をボディ3に保持させるようにしてもよい。
【0043】
次に、本発明のカートリッジ式押出装置1による充填物Wの押出し状態を説明する。
図6は、カートリッジ2内からの充填物Wの押出し状態を示す縦断面図、図7は、カートリッジ2内からの充填物押出し後の使切り状態を示す縦断面図、図8は、カートリッジ2内からの充填物押出し後の使切り状態において、カートリッジ2と押し部材4を一体として、ボディ3から取外した状態を示す分解縦断面図である。
【0044】
図6に示すように、ボディ3をカートリッジ本体5に対して相対的に回転させて前進させることにより、カートリッジ本体5内の押し子6が、ボディ3と共に前進する押し部材4における押し棒14の前端部14aで押されて前方に向けて摺動し、カートリッジ本体5内の充填物Wが、押出口5aから押出される。
【0045】
ボディ3を、カートリッジ本体5に対して相対的に更に回転させて前進させることにより、図7に示すように、カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9の部分が、ボディ3の雌ねじ12が設けられていない後端内周面3eの非螺合部13に位置すると、前記雄ねじ9とボディ3内周面に設けた雌ねじ12との螺合状態が開放される。
すなわち、カートリッジ本体5内の充填物Wが押出されて、実質的に使切り状態となったときには、前記両ねじ9,12の螺合状態が開放されると同時に、カートリッジ本体5の後端開口5bが押し棒14の後端部に形成したテーパ面部14bに圧入されて、押し棒14の後端部にカートリッジ本体5の後端部が圧入状態をもって保持されるようになっている。
【0046】
次いで、押し部材4の摘み部15を摘み持って、ボディ3の後端縮径部3cに設けられた雄ねじ11と、摘み部15の内周面15aに設けられた雌ねじ16との螺合が開放される向きに、押し部材4をボディ3に対して相対的に回転させることにより、押し部材4をボディ3から取外せば、カートリッジ本体5の後端部が押し棒14の後端部に圧入状態をもって保持されているため、図8に示すように、カートリッジ本体5を、押し部材4と共にボディ3の後端開口から容易に引抜くことができる。
【0047】
この場合、カートリッジ本体5と押し棒14とが圧入状態をもって保持されていなくても、ボディ3とカートリッジ本体5との螺合状態が開放されているため、押し部材4の引抜きに次いで、カートリッジ本体5を、ボディ3の後端開口から容易に引抜くことができる。
【0048】
なお、カートリッジ本体5内の充填物Wを一度に使い切ることなく、押出し作業を途中で中止して、ボディ3にカートリッジ本体5を装着したままの状態で保管する場合には、カートリッジ本体5の押出口5aに、保護キャップ8を元の状態に被冠すればよいが、この保護キャップ8を紛失または破損した場合にも、図6に示すように、ボディ3の前端縮径部3bに、仮想線で示す遮光用キャップ10を被冠して、ボディ3から露出するカートリッジ本体5の外周を被包することにより、遮光状態で保管することができる。
これにより、カートリッジ本体5の押出口5aにおける充填物Wの硬化を防止し、次回の充填物Wの押出しを円滑に行うことができる。
【実施例2】
【0049】
図9は、本発明の第二実施形態を示し、カートリッジ2内からの充填物Wの押出し状態を示す縦断面図、図10は、カートリッジ2内からの充填物押出し後の使切り状態を示す縦断面図である。
なお、図示の実施形態においては、前記第一実施形態と構成が重複する部分は同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態は、図9に示すように、ボディ3の内周面3dに設けられる雌ねじ12を、ボディ3の全長に亘って形成するとともに、ボディ3の後端縮径部3cに装着される押し部材4の摘み部15は、カートリッジ本体5の後端が遊嵌しうるキャップ状のものとしてある。
すなわち、摘み部15の内周面15aは、カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9が螺合することなく遊嵌しうるような遊嵌部19となっている。
【0051】
前記第一実施形態と同様に、カートリッジ本体5をボディ3の前端縮径部3bの開口から内嵌し、カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9をボディ3の雌ねじ12に螺合させ、ボディ3をカートリッジ本体5に対して相対的に回転させて前進させることにより、図10に示すように、カートリッジ本体5内の充填物Wが実質的に使切り状態となったときには、カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9の部分が、摘み部15の遊嵌部19に位置して遊嵌状態になると、前記雄ねじ9とボディ3の内周面3dに設けた雌ねじ12との螺合状態が開放されるようになっている。
【0052】
なお、この第二実施形態においては、カートリッジ本体5の後端開口5b側の内周面に雌ねじ20を形成するとともに、この雌ねじ20と螺合する雄ねじ21を、押し部材4における押し棒14の後端基部外周面に形成してある。
カートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9の部分が、摘み部15の遊嵌部19に位置したときに、カートリッジ本体5に設けた雌ねじ20を、押し棒14の後端基部外周面に設けた雄ねじ21に螺合させることにより、押し棒14のボディ3内からの引抜きと同時に、カートリッジ本体5を簡単にかつ容易に引抜くことができる。
【0053】
また、充填物Wの使切り状態におけるカートリッジ本体5の後端外周面5cに設けた雄ねじ9を設けた部分と、ボディ3の雌ねじ12との螺合状態が開放されたときに、カートリッジ2を押し部材4に保持させる場合の他の実施形態としては、カートリッジ本体5の前記雄ねじ9を、押し部材4におけるキャップ状の摘み部15の内周面に形成した雌ねじ(図示せず)に螺合させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 カートリッジ式押出装置(押出装置)
2 カートリッジ
3 ボディ
3a 転動防止部
3b 前端縮径部(前端開口)
3c 後端縮径部(後端開口)
3d 内周面
3e 後端内周面
4 押し部材
5 カートリッジ本体
5a 押出口
5b 後端開口
5c 後端外周面
6 押し子
7 凹部
8 保護キャップ
9 雄ねじ
10 遮光用キャップ
10a 後端開口
11 雄ねじ
12 雌ねじ
13 非螺合部
14 押し棒
14a 突起部
14b テーパ面部
15 摘み部
15a 内周面
16 雌ねじ
17 環状凹溝
18 環状突条
19 遊嵌部
20 雌ねじ
21 雄ねじ
W 充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に押出口を有する筒状のカートリッジ本体と、このカートリッジ本体の内周面に密接して軸方向に摺動可能に内挿された押し子とを備えるカートリッジと、このカートリッジを内嵌しうる前後端が開口したボディと、このボディの後端開口から内部に挿入される押し部材とよりなり、前記押し部材を、ボディに保持させるとともに、前記カートリッジの後端外周面に雄ねじを設け、この雄ねじと螺合する雌ねじをボディの内周面に設けて、カートリッジを、ボディの前端開口から前記両ねじを螺合させて、ボディに内嵌し、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させることにより、前記押し部材の前端部で押し子を前方に向けて摺動させてカートリッジ内の充填物を押出口から押出しうるようにし、かつ前記充填物が押出された状態においては、前記両ねじの螺合状態が開放されて、カートリッジをボディの後端開口から引抜き可能としたことを特徴とするカートリッジ式押出装置。
【請求項2】
押し部材を、押し棒と、この押し棒の後端に一体に設けた摘み部とより構成し、前記押し棒をボディの後端開口から内部に挿入するとともに、前記摘み部をボディの後端に螺合手段または凹凸係合手段によって螺合または係合することにより、前記押し部材をボディに保持させた請求項1記載のカートリッジ式押出装置。
【請求項3】
ボディの内周面に雌ねじを設けるとともに、その後端内周面には、雌ねじを設けない非螺合部を形成し、カートリッジをボディの前端開口から内嵌し、カートリッジの後端外周面に設けた雄ねじをボディの雌ねじに螺合させ、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させ、カートリッジの前記雄ねじを設けた部分が、ボディの前記非螺合部に位置したときに、前記雄ねじと雌ねじとの螺合状態が開放されて、カートリッジをボディの後端開口から引抜き可能とした請求項1または2記載のカートリッジ式押出装置。
【請求項4】
押し部材における摘み部を、カートリッジの後端が遊嵌しうるキャップ状のものとし、カートリッジをボディの前端開口から内嵌し、カートリッジの後端外周面に設けた雄ねじをボディの雌ねじに螺合させ、ボディをカートリッジに対して相対的に回転させて前進させ、カートリッジの前記雄ねじを設けた部分が、前記キャップ状の摘み部に位置して遊嵌状態となることにより、前記雄ねじと雌ねじとの螺合状態が開放されて、カートリッジをボディの後端開口から引抜き可能とした請求項1または2記載のカートリッジ式押出装置。
【請求項5】
カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端を押し部材に保持可能にした請求項1〜4のいずれかに記載のカートリッジ式押出装置。
【請求項6】
カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端開口を、押し棒の後端部に形成したテーパ面部に圧入させることにより保持しうるようにした請求項5記載のカートリッジ式押出装置。
【請求項7】
カートリッジの雄ねじを設けた部分と、ボディの雌ねじとの螺合状態が開放されたときに、カートリッジの後端開口の内周面に形成した雌ねじを、押し棒の後端部外周面に形成した雄ねじに螺合させるか、またはカートリッジの前記雄ねじを、キャップ状の摘み部の内周面に形成した雌ねじに螺合させることにより保持しうるようにした請求項5記載のカートリッジ式押出装置。
【請求項8】
ボディの前端開口に、遮光用キャップを着脱可能に設けるとともに、この遮光用キャップをもって、ボディから露出するカートリッジの外周を被包可能にした請求項1〜7のいずれかに記載のカートリッジ式押出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−93553(P2011−93553A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248167(P2009−248167)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】