説明

カード型電子機器

【課題】ICカードにおいて、ICチップから発せられる熱を効率良くICカード外部に伝え放熱を行うことにある。
【解決手段】金属製のケースに覆われたICカードにおいて、発熱体であるICチップ11は能動面が露出するような実装方法で、かつ前記金属製のケース12に対向するように配置される。前記ICチップの能動面は実装されるプリント配線板13の下にあるバネ性のスペーサ15の弾力によって前記金属製のケースと直に接する構造で、電気的、熱的導通がとれている構成とする。
【効果】発熱体であるICチップから直接金属製のケースへと熱を伝えるため、効率良く熱をICカード外部へ伝えることが可能となる。またICカード内のモジュールと金属製のケースとが密に接する構造となるため、前記モジュールのガタつきを抑えることが可能となり、高信頼性につながる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカード型電子機器に関し、特に半導体集積回路(以下、「ICチップ」という)を実装し、金属製のケースに覆われた構造を持つカード型電子機器の放熱構造にかかわるものである。
【0002】
【従来の技術】ICチップは動作することにより電力が消費されて熱が発生し、ICチップ自体の温度が上昇する。温度上昇がICチップの動作限界温度を越えると、ICチップの動作に支障をきたすことになる。更にその結果、そのICチップが実装されたカード型電子機器としても正常に機能を果たさなくなる。従って、ICチップから発せられる熱を効率良く外部に伝達し、ICチップ自体の温度上昇を抑えることにより、カード型電子機器自体の信頼性も上がることになる。その意味からもカード型電子機器に組み立てられた状態においてICチップ自体の放熱効果が得られる構造を提供することが重要となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】出願人はカード型電子機器の放熱構造に関し、特願平7−139537号において図2のような構造を提案している。図2において、21は発熱体であるICチップであり、22は封止材(モールド)でベアチップであるICチップ21を封止している。23はICチップが実装されるプリント配線板である。24は金属製のケース、25は熱伝導の良い充填材、26はサーマルビア、27はICチップの能動面と同電位のフラットなパターンであり、このパターンは基板の両面(ICチップの実装面及び金属製のケースとの対向面)に設けられ、サーマルビアを介してつながれている。発熱体であるICチップ21はCOB(Chipon Board)実装され、プリント配線板23のICチップ21の能動面と相対向する面にはICチップ21の基板と同電位のサーマルビア26が設けられている。ICチップ21の実装されるプリント配線板23のICチップ21の実装面下、及びその反対面にはサーマルビア26が接続されるパターン27が設けられている。このパターン27は金属製のケース24と対向する位置にも設けられており、金属製のケース24とパターン27との間には熱伝導の良い充填材25が充填され、ICチップ21から発せられた熱はプリント配線板23に設けられているサーマルビア26を介して充填材25から金属製のケース24に伝わり、金属製のケース24からカード型電子機器外部に熱を逃がすことによって内部の温度上昇を抑えている。この方法ではICチップから発せられた熱をプリント配線板に設けられたサーマルビア、熱伝導の良い充填材を介して金属製のケースに伝達しているが、ICチップ等、電子回路の実装密度が増しプリント配線板が多層化されて厚くなった場合には、サーマルビアが長くなり熱抵抗が増して効率良く熱を逃がすことができなくなってしまう場合もあった。さらに図3に示す様にプリント配線板23と金属製のケース24との間に電子部品28が配置された場合は、プリント配線板23と金属製のケース24との間に充填される充填材25の量が多くなり、充填物質が厚くなることで熱抵抗が増えてしまい熱伝導率が悪くなってしまうという場合もあった。
【0004】そこで、本発明はこの熱抵抗を可能な限り小さくでき、高放熱のカード型電子機器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、以下に各構成について説明する。本発明の請求項1に記載のカード型電子機器は、金属製のケースと、能動面を形成する第1の面が前記ケースと接触するように実装される半導体集積回路と、を有することを特徴とする。このような構成をとることにより、発熱体である半導体集積回路(ICチップ)は能動面が金属製のケースに対向して配置され、さらにICチップの能動面と金属製のケースとは直接接する(接触する)構造となっている。従って、発熱体であるICチップから発せられた熱はICチップから金属製のケースへ直接伝えられるため外部までの熱伝達距離も短くなり、極めて効率良くカード型電子機器外部へ熱を伝達させられることになる。また、電子回路の密度が増し、プリント配線板が多層化されてもプリント配線板は熱伝達の経路に含まれないため、放熱の効率に影響を与えることはない。
【0006】また、請求項2に記載のカード型電子機器では、上述の内容に加えて、前記第1の面と相対向する前記金属製のケースの面には、前記第1の面に接触可能な凸部を有することを特徴とする。このような構成をとることにより、例えば電子回路の密度が増して実装される電子部品が多くなり、プリント配線板と金属製のケースとの間に電子部品を配置せざるを得なくなった場合でも、プリント配線板と金属製のケースとの間の距離が大きくなるが、その距離間を凸部でまかなえるため放熱の効率が悪くなることはない。
【0007】また、請求項3に記載のカード型電子機器では、上述のいずれかの内容に加えて、前記金属製のケースは接地電位に設定され、前記金属製のケースと前記ICチップの接地用パッドとを接触させることにより電気的に接続してなることを特徴とする。このように金属製のケースを接地電位に設定すれば、ケースから接地電位がとれるため、ICチップの接地となる電極については金属製のケースに接触させればよく、接続精度が要求されない。
【0008】請求項4に記載のカード型電子機器は、金属製のケースと、能動面を形成する第1の面と相対向する第2の面が前記ケースと接触するように実装される半導体集積回路と、を有することを特徴とする。このような構成をとることにより、請求項1と同様に発熱体であるICチップから発せられた熱がICチップから金属製のケースへ直接伝えられるため外部までの熱伝達距離も短くなり、極めて効率良くカード型電子機器外部へ熱を伝達させられることになる。また、電子回路の密度が増し、プリント配線板が多層化されてもプリント配線板は熱伝達の経路に含まれないため、放熱の効率に影響を与えることはない。また、ICチップは能動面とは反対の面が金属製のケースに対向して配置されるために、ICチップの能動面に形成された電極等、ボンディングエリアを気にすることなく、ICチップとケースとを比較的簡易に接触させることができる。
【0009】また、請求項5に記載のカード型電子機器は、上述の内容に加えて、前記第2の面に対向する前記金属製のケースの面には、前記第2の面に接触可能な凸部を有することを特徴とする。このような構成をとることにより、例えば電子回路の密度が増して実装される電子部品が多くなり、プリント配線板と金属製のケースとの間に電子部品を配置せざるを得なくなった場合でも、プリント配線板と金属製のケースとの間の距離が大きくなるが、その距離間を凸部でまかなえるため放熱の効率が悪くなることはない。
【0010】また、請求項3に記載のカード型電子機器では、上述のいずれかの内容に加えて、前記金属製のケースは、接地電位に設定されてなることを特徴とする。このようにすることにより、ICチップは接地電位に設定されることになるので、ICチップに対する外的なノイズ対策が図れることになる。
【0011】請求項7記載のカード型電子機器は、ベアチップの状態である半導体集積回路と、前記半導体集積回路が実装された基板と、少なくとも前記半導体集積回路の実装面側を覆い前記半導体集積回路の実装されている位置に凸部を有する金属製のケースと、前記基板の半導体集積回路が実装されている面の反対の面に前記半導体集積回路と前記凸部とが接触するように押圧力を加えることが可能な弾性力のあるスペーサ−と、を有することを特徴とする。このような構成をとることにより、スペーサ−の弾力によって金属製のケースに押し付けられている構造のため、ICチップと金属製のケースとは確実に接触される構造となり、その結果電気的、熱的導通を損なうこともない。また、金属製のケースに何らかの応力がかかった場合も、その応力はスペーサにて吸収されることにより、ICチップ自体は保護され、高信頼性につながる。またリワーク性も良い。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例である。パーソナルコンピュータの機能を、ICカードサイズのカード型電子機器(以下、「カード」という)に集積する場合を例として取り上げた。図1は前記カードの断面図を示す。
【0013】11は発熱体であるICチップであり、本例では比較的熱量の多い中央演算処理装置(以下、「CPU」という)を例として示す。このCPUはベアチップ(封止されていない)の状態であり、COB実装されている。12は金属製のケースであり、外装として耐え得るようにある程度強度のあるもので、しかも熱伝導も比較的良い材質を利用するとよい。具体的には、例えばステンレス板を用いることが好ましい。13はCPU11が実装されるプリント配線板(以下、「第2基板」という)である。14はカードのメインボードとなるプリント配線板(以下、「第1基板」という)であり、15はバネ性のスペーサであり、16は他の電子部品、17はフレキシブルテープを示し、第2基板13と第1基板14とを電気的に接続している。カードは金属製のケース12で覆われており、CPU11はその能動面(第1の面)、すなわち電極の形成されている側の面が金属製のケース12側になるように実装されている。CPU11の能動面と金属製のケース12とは直に接する(接触する)構造であり、本例ではその間に接着剤等を介在させていない。接していることによって熱的に導通がとれている。また電気的にも接続をとることが可能である。例えば金属製のケースを静電気対策として接地電位に設定して、その接地電位に設定された金属製のケースとCPU11の接地電位用のパッドとを接するようにすれば、金属製のケースが接地電位として機能するため、簡単に接地電位を得ることができるとともに、接地電位が比較的広くとれ、配置に自由度が増すことになる。CPU11の能動面は金属製のケース12を介してアースに接続されている。発熱体からの熱は輻射および伝導により放熱される。放熱を効率よく行うためには、これらの放熱の経路の熱抵抗が小さくなるような構造とすることが必要であるが本発明では発熱体であるCPU11から直接金属製のケース12という伝導経路により熱を効率良く伝え金属製のケース12から輻射により放熱を行うものとする。図2に示す様に発熱体であるICチップ21からプリント配線板23に設けられたサーマルビア26を介して熱伝導の良い充填材25、そして金属製のケース24に伝導され金属製のケース24から輻射によって放熱されていたものが、本発明によれば発熱体であるCPU11から直に金属製のケース12に熱を伝導することができ、熱抵抗を極力抑えて放熱を行うことができる。図1では、金属製のケース12のCPU11の上部を凸状に記してあるが、CPU11と同じ実装面に他の電子部品が無い場合には金属製のケース12と第2基板13との間隙を少なくしてCPU11が直に金属製のケース12に接する構造を取ればよく、あえて金属製のケース12のCPU11上部を凸状にする必要はない。また、CPU11と同じ実装面に他の電子部品が実装される場合には図1のように金属製のケース12に高さ合わせのために凸部を形成することによって、CPU11と金属製のケース12の間に熱伝導の良い充填材、もしくは金属製の別部材を入れるよりも低熱抵抗でCPU11から発せられた熱をカード外部に逃がすことができる。また、例えば図1のように2枚のプリント配線板によりカードが構成されている場合、図に示すように2枚の基板を電気的に接続する手段、ここではフレキシブルテープを用いて電気的接続を取っている。フレキシブル基板を用いれば、プリント配線板間に外力がかかりプリント配線板間の距離が多少変化したとしても、その分の伸縮に充分対応がとれる。また一方の基板は、特にコネクタと接続され固定されているが、他方の基板はフリーな(コネクタとは接続されていない)構造にすればより効果的である。2枚のプリント配線板の間にバネ性、すなわち弾性力のあるスペーサを配置することにより、発熱体であるCPU11は常に金属製のケース12に押し付けられ、電気的、熱的に接続がとられ、放熱を効率良く行うことができる。なおここで用いるスペーサには、例えばコイルバネ、板バネ、シリコン樹脂等、バネ性を有するものを用いるとよい。前述の構造にすることにより、カード内のモジュールと金属製のケースとが密に接する構造となるため、内部のモジュールのガタつきを抑える効果も備えている。なお、本例ではスペーサーを2枚の基板間に配置したが、特に基板間である必要はなく、たとえ1枚の基板であってもその外を固定された状態で覆っているものがあれば、例えばケースを用いれば充分本例の構造をとることが可能となる。
【0014】また本例ではICチップ11の能動面をケース12と対向するようにCOB実装にて設けたが、能動面と反対の面(第2の面)すなわちICチップ裏面をケースと対向するように設けてもよい。この場合にはTAB実装やフェースダウン実装を行うことにより、容易に達成できる。またICチップ11とケース12との間に熱伝導性の良い部材を設けてもよい。この場合の部材は、接着機能を有している部材を用いると強度に固定できるという面で有効である。
【0015】
【発明の効果】以上、本発明によれば発熱体であるICチップから直接金属製のケースへと熱を伝えるため、効率良く熱をICカード外部へ伝えることが可能となる。またICカード内のモジュールと金属製のケースとが密に接する構造となるため、前記モジュールのガタつきを抑えることが可能となり、高信頼性につながる。さらに、発熱体であるICチップは金属製のケースに直に接合されるのではなく、バネ性のスペーサの弾力によって前記金属製のケースに押し付けられている構造のため、前記ICチップと前記金属製のケースとの電気的、熱的導通を損なうこともなく、前記金属製のケースに何らかの応力がかかった場合、前記応力は前記バネ性のスペーサにて吸収され高信頼性につながり、またリワーク性も良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のICカードの断面構造を示した図である。
【図2】本発明を導き出す前のICチップの放熱構造を示した図である。
【図3】本発明を導き出す前のICチップと他の電子部品との関係を示した図である。
【符号の説明】
11 CPU
12 金属製のケース
13 CPU11の実装されるプリント配線板
14 ICカードのメインとなるプリント配線板
15 バネ性のスペーサ
16 電子部品
17 フレキシブルテープ
21 発熱体であるICチップ
22 封止材(モールド)
23 プリント配線板
24 金属製のケース
25 熱伝導の良い充填材
26 サーマルビア
27 ベタパターン
28 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製のケースと、能動面を形成する第1の面が前記ケースと接触するように実装される半導体集積回路と、を有することを特徴とするカード型電子機器。
【請求項2】 前記第1の面と相対向する前記金属製のケースの面には、前記第1の面に接触可能な凸部を有することを特徴とする請求項1記載のカード型電子機器。
【請求項3】 前記金属製のケースは接地電位に設定され、前記金属製のケースと前記ICチップの接地用パッドとを接触させることにより電気的に接続してなることを特徴とする請求項1または2記載のカード型電子機器。
【請求項4】 金属製のケースと、能動面を形成する第1の面と相対向する第2の面が前記ケースと接触するように実装される半導体集積回路と、を有することを特徴とするカード型電子機器。
【請求項5】 前記第2の面に対向する前記金属製のケースの面には、前記第2の面に接触可能な凸部を有することを特徴とする請求項4記載のカード型電子機器。
【請求項6】 前記金属製のケースは、接地電位に設定されてなることを特徴とする請求項4または5記載のカード型電子機器。
【請求項7】 ベアチップの状態である半導体集積回路と、前記半導体集積回路が実装された基板と、少なくとも前記半導体集積回路の実装面側を覆い前記半導体集積回路の実装されている位置に凸部を有する金属製のケースと、前記基板の半導体集積回路が実装されている面の反対の面に前記半導体集積回路と前記凸部とが接触するように押圧力を加えることが可能な弾性力のあるスペーサーと、を有することを特徴とするカード型電子機器。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平10−24687
【公開日】平成10年(1998)1月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−182512
【出願日】平成8年(1996)7月11日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)