説明

カード基材及びその製造方法

【課題】ハーフカット加工に起因するカード基材の反りの発生を抑制することが可能なカード基材を提供する。
【解決手段】本実施形態のカード基材(100)は、ICモジュール(12)が搭載された小型ICカード(200)を含んで構成するカード基材(100)であり、カード基材(100)には、小型ICカード(200)の外形形状を構成するためのハーフカット(201)及びスリット(202)が施されており、当該スリット(202)が施された箇所では、カード基材(100)と小型ICカード(200)とが切断されており、当該ハーフカット(201)が施された箇所では、カード基材(100)と小型ICカード(200)とがカード厚み中央部分で接続しており、当該接続部分(203)には、インレットシート(1)が含まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICモジュールが搭載された小型ICカードを含んで構成するカード基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるカード技術の発達により、各種の通信システムに用いられる情報記録媒体として、広範囲な用途に適用可能なICカードがある。このICカードには、専用の装置に接触させることで情報の書き込み処理、及び、読み出し処理が可能な接触型のICカードと、専用の装置に近接させるだけで情報の書き込み処理、及び、読み出し処理が可能な非接触型のICカードと、がある。
【0003】
また、接触型のICカードと非接触型のICカードとが組み合わされたICカードも普及しており、接触状態にて情報の書き込み処理、及び、読み出し処理を行う接触型のICモジュールと、非接触状態にて情報の書き込み処理、及び、読み出し処理を行う非接触型のICモジュールと、がそれぞれ搭載されたハイブリッド型のICカードや、接触状態、及び、非接触状態の何れの状態においても情報の書き込み処理、及び、読み出し処理を行う接触型及び非接触型兼用の1つのICモジュールが搭載されたコンビネーション型のICカードがある。
【0004】
また、近年では、JIS X6301規格で規定されたカード外形形状サイズよりも小さい外形形状サイズの小型ICカードがある。
【0005】
この小型ICカードは、図4に示すように、小型ICカード200'の外形形状サイズよりも大きい外形形状サイズ(例えば、JIS X6301規格に準拠したカード外形形状サイズ)のカード基材100'に対し、ハーフカット201'、スリット202'を施し、スリット202'が施された箇所で、カード基材100'と小型ICカード200'とが切断されており、ハーフカット201'が施された箇所で、カード基材100'と小型ICカード200'とがカード厚み中央部で接続した構造になっている。
【0006】
この図4に示すカード基材100'に含まれる小型ICカード200'を利用する場合には、カード基材100'と小型ICカード200'とが接続した接続部分203'(ハーフカット201'が施された箇所)を分離し、カード基材100'から小型ICカード200'を取り出すことになる。
【0007】
これにより、カード基材100'に含まれる小型ICカード200'を利用することが可能となる。なお、図4に示す小型ICカード200'を含むカード基材100'は、例えば、図5、図6に示す製造工程により作成される。以下、図5、図6を参照しながら図4に示すカード基材100'の製造方法について説明する。なお、カード基材100'を製造する際には、多面付けで行うことが一般的であるが、カード基材100'の製造方法を理解し易くするため、1つのカード基材100'を製造する場合を例に説明する。
【0008】
まず、プラスチックシート上に螺旋状のアンテナやコンデンサ等のアンテナパターン11'を形成し、該形成したアンテナパターン11'と、ICモジュール12'と、を電気的に接続し、インレットシート1'を形成する(ステップS'1;(a))。
【0009】
次に、インレットシート1'を覆うように、インレットシート1'の上下面からコアシート2'を積層し(ステップS'2;(b))、1回目の熱プレス処理を行い、インレットシート1'と、コアシート2'と、を融着する(ステップS'3;(c))。
【0010】
次に、コアシート2'の上下面からオーバーシート3'を積層し(ステップS'4;(d))、2回目の熱プレス処理を行い、コアシート2'と、オーバーシート3'と、を融着する(ステップS'5;(e))。
【0011】
これにより、図5(e)に示すように、インレットシート1'と、コアシート2'と、オーバーシート3'と、が一体化した積層シート4'が形成される。
【0012】
次に、金型を用いて、図6(f)に示すように、積層シート4'を所定のカード外形形状サイズ(例えば、JIS X6301規格に準拠したカード外形形状サイズ)に打ち抜き、所定のカード外形形状サイズのカード基材100'を形成する(ステップS'6;(f))。
【0013】
これにより、図6(g)に示すように、カード基材100'の外形形状サイズに打ち抜かれたカード基材100'が形成される。
【0014】
次に、カード基材100'の外形形状サイズに打ち抜かれたカード基材100'に対し、小型ICカード200'の外形形状を構成するためのハーフカット201'、スリット202'を施す(ステップS'7;(h))。ハーフカット201'、スリット202'は、図4に示す形状を構成するように施す。
【0015】
これにより、図6(i)、図4に示すように、スリット202'が施された箇所で、カード基材100'と小型ICカード200'とが切断され、ハーフカット201'が施された箇所(図4(b)に示す接続部分203')で、カード基材100'と小型ICカード200'とがカード厚み中央部で接続しているカード基材100'が形成される。
【0016】
しかし、インレットシート1'の外形形状サイズは、小型ICカード200'の外形形状サイズよりも小さいのが普通であり、接続部分203'には、インレットシート1'が存在しない。このため、カード基材100'にハーフカット201'を施す際に発生する応力の影響で、カード基材100'に反りが発生してしまうことになる。
【0017】
その結果、ハーフカット201'を施した後の工程(例えば、ハーフカット201'を施したカード基材100'をスライドさせて、カード基材100'を堆積する工程、堆積したカード基材100'に印刷する工程、台紙にカード基材100'を貼る工程、カード基材100'を袋詰めする工程などがある)で、カード基材100'に発生した反りのために、カード基材100'が装置に引っかかり、搬送路から飛び出す、カード基材100'と小型ICカード200'とが分離されてしまう、カード基材100'の堆積物がズレて荷崩れを生じる、カード基材100'に印刷ができない、カード基材100'の袋詰めがスムーズにできない、など製造工程中に種々の不良を発生する原因となる。
【0018】
このようなことから、カード基材100'にハーフカット201'を施す際に、カード基材100'の反りを減少させることが望まれていた。
【0019】
なお、本発明より先に出願された技術文献として、ICカードの板状枠体(小型ICカードを除いたカード基材部分に相当)からICキャリア(小型ICカードに相当)を取り外す際において、不用意に板状枠体からICキャリアが取れることがなく、また板状枠体からICキャリアを取り外す際には、簡単な操作で取ることができる板状枠体付きICキャリアについて開示された文献がある(例えば、特許文献1参照)。
【0020】
上記特許文献1は、板状枠体と、板状枠体の内側に形成されたICモジュールを有するICキャリアと、が接続部によって接続された板状枠体付きICキャリアであって、ICキャリアの三方周縁にスリット部が形成され、接続部がICキャリアの一側縁に形成される構造を採用している。
【0021】
また、カード基体内に通常サイズとUIM(User IdentityModule Card)やUSIM(Universal Subscriber Identi ty Module Card)と呼ばれている小型ICカードが重畳して形成されて いるUIM用ICカードにおいて、目的のUIMを容易に折り取りできるICカードに ついて開示された文献がある(例えば、特許文献2参照)。
【0022】
上記特許文献2のICカードは、通常サイズUIM1の少なくとも1箇所の接続部と小型サイズUIM2の少なくとも1箇所の接続部が近接並行して設けられ、かつ通常サイズUIM1の接続部の剪断強度は小型サイズUIM2の接続部の剪断強度よりも弱くされている構造を採用している。
【0023】
また、データキャリアを、必要に応じて小さなサイズに切り取り可能にして、小さなサイズのデータキャリアを用いる機器でも使用できるデータキャリアについて開示された文献がある(例えば、特許文献3参照)。
【0024】
上記特許文献3のデータキャリアは、ICモジュールが埋設されたICモジュール埋設部を含む第1のカード基材部分と、ICモジュール埋設部を含まない第2のカード基材部分と、を有し、第1のカード基材部分と第2のカード基材部分との境界部分が切り取り可能に形成されている構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2002−170095号公報
【特許文献2】特開2006−318233号公報
【特許文献3】特開2004−326381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
なお、上記特許文献1〜3には、カードにハーフカット加工を施す点について開示されている。しかし、そのハーフカット加工に起因するカード基材の反りの発生については何ら記載も示唆もされていない。
【0027】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ハーフカット加工に起因するカード基材の反りの発生を減少することが可能なカード基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0029】
<カード基材>
本発明にかかるカード基材は、
ICモジュールが搭載された小型ICカードを含んで構成するカード基材であって、
前記カード基材には、前記小型ICカードの外形形状を構成するためのハーフカット及びスリットが施されており、当該スリットが施された箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとが切断されており、当該ハーフカットが施された箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとがカード厚み中央部で接続しており、当該接続部には、前記インレットシートが含まれていることを特徴とする。
【0030】
<カード基材の製造方法>
また、本発明にかかるカード基材の製造方法は、
ICモジュールが搭載された小型ICカードを含んで構成するカード基材の製造方法であって、
前記ICモジュールを実装したインレットシートの上下面に、コアシート、オーバーシートを積層し、前記インレットシート、前記コアシート、前記オーバーシートと、が一体化した積層シートを形成する積層シート形成工程と、
前記積層シートに、前記カード基材の外形形状を構成するための打ち抜き加工を施し、前記カード基材を形成する打抜工程と、
前記打抜工程と同時もしくは後に、前記小型ICカードの外形形状を構成するためのハーフカット及びスリットを施し、当該スリットを施した箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとが切断されており、当該ハーフカットが施された箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとがカード厚み中央部分で接続しているカード基材を形成するハーフカット及びスリット加工工程と、を有し、
前記積層シート形成工程は、
前記小型ICカードの外形形状よりも大きい形状のインレットシートを用いて、前記積層シートを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ハーフカット加工に起因するカード基材の反りの発生を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態におけるカード基材100の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態のカード基材100の製造方法を説明するための第1の図である。
【図3】本実施形態のカード基材100の製造方法を説明するための第2の図である。
【図4】本発明と関連するカード基材100'の構成例を示す図である。
【図5】本発明と関連するカード基材100'の製造方法を説明するための第1の図である。
【図6】本発明と関連するカード基材100'の製造方法を説明するための第2の図である。
【図7】反りを測定する際のカード基材100の構成例を説明するための図である。
【図8】反りを測定するカード基材100のパターン構成例を示す図である。
【図9】反りの試験結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
<本実施形態のカード基材100の概要>
まず、図1を参照しながら、本実施形態のカード基材100の概要について説明する。
【0034】
本実施形態におけるカード基材100は、ICモジュール12が搭載された小型ICカード200を含んで構成するカード基材100である。
【0035】
本実施形態のカード基材100には、小型ICカード200の外形形状を構成するためのハーフカット201及びスリット202が施されており、当該スリット202が施された箇所では、カード基材100と小型ICカード200とが切断されており、当該ハーフカット201が施された箇所では、カード基材100と小型ICカード200とがカード厚み中央部で接続しており、当該接続部分203には、インレットシート1が含まれている。
【0036】
これにより、ハーフカット加工に起因するカード基材100の反りの発生を減少することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態のカード基材100について詳細に説明する。
【0037】
<小型ICカード200を含むカード基材100の構成>
まず、図1を参照しながら、本実施形態におけるカード基材100の構成例について説明する。
【0038】
本実施形態のカード基材100は、小型ICカード200を含んで構成している。
【0039】
カード基材100は、インレットシート1と、コアシート2と、オーバーシート3と、を有して構成する。
【0040】
小型ICカード200は、小型ICカード200の外形形状サイズよりも大きい外形形状サイズ(例えば、JIS X6301規格に準拠したカード外形形状サイズ)のカード基材100に対し、ハーフカット201、スリット202を施し、スリット202が施された箇所で、カード基材100と小型ICカード200とが切断されており、ハーフカット201が施された箇所で、カード基材100と小型ICカード200とが接続した構造になっている。
【0041】
この図1に示すカード基材100に含まれる小型ICカード200を利用する場合には、カード基材100と小型ICカード200とが接続した接続部分203(ハーフカット201が施された箇所)を分離し、カード基材100から小型ICカード200を取り出すことになる。
【0042】
<小型ICカード200を含むカード基材100の層構成>
次に、カード基材100を構成する各層の構成について説明する。
【0043】
<インレットシート1>
インレットシート1は、プラスチックシート上に螺旋状のアンテナやコンデンサ等のアンテナパターン11を形成し、該形成したアンテナパターン11と、ICモジュール12と、が電気的に接続するように実装する。これにより、アンテナパターン11と、ICモジュール12と、が実装されたインレットシート1を形成することになる。尚、アンテナパターン11の外周は、小型ICカード200の外形よりも小さいサイズに設ける。小型ICカード200の外形形状に打ち抜くスリット202及びハーフカット201線上には、インレットシート1の基材であるプラスチックシートのみが存在することになる。
【0044】
プラスチックシートは、アンテナパターン11を形成する絶縁性を有する基材であり、適用可能な材質としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、PET、アニールPET、PEN、PET−G等の樹脂が挙げられる。なお、プラスチックシートを構成する材質は、耐熱性のあるポリエステル、ポリイミド系樹脂を適用することが好ましい。
【0045】
本実施形態のインレットシート1の外形形状サイズは、小型ICカード200の外形形状サイズよりも大きくしている。これにより、カード基材100と小型ICカード200とがカード厚み中央部で接続する接続部分203に、インレットシート1が含まれることになる。
【0046】
<アンテナパターン11の材質>
アンテナパターン11を形成する材質としては、銅、アルミニウム、金、銀、鉄、錫、ニッケル、亜鉛、チタン、タングステン、ハンダ、合金等が適用可能である。なお、プラスチックシート上にアンテナパターン11を形成する手法としては、エッチング法や、印刷法(スクリーン印刷法、オフセット印刷法)が適用可能である。また、巻き線法でアンテナパターン11を形成することも可能である。
【0047】
<ICモジュール12>
ICモジュール12は、ICチップを含んで構成する。ICモジュール12の構成は特に限定せず、公知のICモジュール12が適用可能である。例えば、ICチップを補強するための封止樹脂や、補強板等を用いてICモジュール12を構成することも可能である。
【0048】
<コアシート2>
コアシート2は、小型ICカード200本体の中心部分となる基材である。コアシート2に適用可能な材質としては、一般用ポリスチレン樹脂、耐衝撃用ポリスチレン樹脂、アクリルニトリルスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、PET、PEN、PET−G、ポリアセタール樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファルド樹脂等の熱可塑性樹脂、アロイ系樹脂、ガラス繊維の添加による強化樹脂等の従来からICカード本体の中心部分となるカード基材に適用可能な公知の樹脂が挙げられる。コアシート2を構成する材質は、ICカード基材を構成することが可能な材質であれば、特に限定せず、ICカードの製品仕様に応じて公知の材質を任意に選択して適用することが可能である。なお、塩化ビニル、PET−G等は、自己融着を行う特性を有することから、ラミネートの際に、接着剤や接着剤シートが不要となるため好ましい。
【0049】
<オーバーシート3>
オーバーシート3は、小型ICカード200本体の外側部分を構成する基材である。オーバーシート3に適用可能な材質としては、上述したコアシート2に適用可能な樹脂が挙げられる。オーバーシート3を構成する材質は、ICカード基材を構成することが可能な材質であれば、特に限定せず、小型ICカード200の製品仕様に応じて公知の材質を任意に選択して適用することが可能である。なお、オーバーシート3は、小型ICカード200本体の表面部分を構成するため、オーバーシート3の上面に対して印刷が通常施されることになる。
【0050】
<小型ICカード200を含むカード基材100の製造方法>
次に、図2、図3を参照しながら、本実施形態のカード基材100の製造方法について説明する。なお、カード基材100を製造する際には、多面付けで行うことが一般的であるが、カード基材100の製造方法を理解し易くするため、1つのカード基材100を製造する場合を例に説明する。
【0051】
まず、プラスチックシート上に螺旋状のアンテナやコンデンサ等のアンテナパターン11を形成し、該形成したアンテナパターン11と、ICモジュール12と、が電気的に接続するように実装し、インレットシート1を形成する(ステップS1;(a))。
【0052】
次に、インレットシート1を覆うように、インレットシート1の上下面からコアシート2を積層し(ステップS2;(b))、1回目の熱プレス処理を行い、インレットシート1と、コアシート2と、を融着する(ステップS3;(c))。
【0053】
次に、コアシート2の上下面からオーバーシート3を積層し(ステップS4;(d))、2回目の熱プレス処理を行い、コアシート2と、オーバーシート3と、を融着する(ステップS5;(e))。
【0054】
これにより、図2(e)に示すように、インレットシート1と、コアシート2と、オーバーシート3と、が一体化した積層シート4が形成される。
【0055】
次に、金型を用いて、積層シート4を所定のカード外形形状サイズ(例えば、JIS X6301規格に準拠したカード外形形状サイズ)に打ち抜き、所定のカード外形形状サイズのカード基材100を形成する(ステップS6;(f))。
【0056】
これにより、図3(g)に示すように、カード基材100の外形形状サイズに打ち抜かれたカード基材100が形成される。
【0057】
カード基材100の外形形状サイズに打ち抜く工程と同時もしくは後に、カード基材100に対し、小型ICカード200の外形形状を構成するためのハーフカット201、スリット202を施す(ステップS7;(h))。ハーフカット201、スリット202は、図1に示す形状を構成するように施す。
【0058】
これにより、図3(i)、図1に示すように、スリット202が施された箇所で、カード基材100と小型ICカード200とが切断されており、ハーフカット201が施された箇所(図1(b)に示す接続部分203)で、カード基材100と小型ICカード200とがカード厚み中央部で接続しているカード基材100が形成される。ハーフカット201の深さは、カード厚み中央部で50μm〜300μm程度の間隔の接続部分が残るようにカットする。ハーフカット201は、インレットシート1まで刃が届かず、オーバーシート3とコアシート2との厚みの途中までに刃が達している。インレットシート1に刃が達していないので、ハーフカット201の応力を緩和することができる。
【0059】
なお、本実施形態のカード基材100を構成するインレットシート1の外形形状サイズは、小型ICカード200の外形形状サイズよりも大きくしている。このため、小型ICカード200の外形形状を構成するためのハーフカット201、スリット202を施す部分には、インレットシート1が含まれることになる。その結果、ハーフカット201の加工に起因する応力をインレットシート1が緩和し、カード基材100の反りを減少することができる。その結果、より平滑化したカード基材100を得ることがでる。
【0060】
また、小型ICカード200を含むカード基材100の製造工程中の反りに起因する種々の不良(例えば、カード基材100が装置に引っかかり、搬送路から飛び出す、カード基材100と小型ICカード200とが分離されてしまう、カード基材100の堆積物がズレて荷崩れを生じる、カード基材100に印刷ができない、カード基材100の袋詰めがスムーズにできないなど)の発生を予防することができる。
【0061】
なお、ハーフカット加工、スリット加工をカード基材100に施す際に、カード基材100の反りの発生を減少する方法としては、ハーフカット加工やスリット加工を施す際の諸条件(ハーフカット201やスリット202を施す刃の角度や、刃の厚さ等)や、カード基材100の材質を調整することで対処することも考えられる。しかし、ハーフカット加工やスリット加工を施す際の諸条件をカード基材100の製品仕様に応じて任意に調整するのは困難であると共に、製造環境によっては、カード基材100の反りの発生を減少できない場合も考えられる。このため、本発明者らは、カード基材100の反りの発生を減少するために、様々な改良を試み、鋭意研究を重ねた結果、カード基材100を構成する既存のインレットシート1の外形形状サイズを小型ICカード200の外形形状サイズよりも大きくすることで、上述した問題点を解消することを見出した(従来は、インレットシート1の外形形状サイズは、小型ICカード200の外形形状サイズよりも小さいのが普通であった)。これにより、既存の製造方法を変更することなく、既存のインレットシート1を用いてカード基材100の反りの発生を減少することができる。
【0062】
<カード基材100の反りの試験>
次に、インレットシート1の外形形状サイズと、カード基材100に発生する反りと、の関係性を示す試験結果について説明する。但し、カード基材100の反りの測定方法は、JIS X6305−1に準拠した方法で行った。また、カード基材100は、JIS X6301 ID−1(未使用カード)に準拠したカード形状とした(幅;85.47〜85.90、高さ;53.92〜54.03、角の丸み;2.88〜3.48、厚さ;0.68〜0.84)。
【0063】
カード基材100を構成する各層の具体的な層厚を図7に示す。また、各層の組成を以下に示す。
コアシート2;PET−G(太平化学)
オーバーシート3;塩化ビニル(太平化学)
インレットシート1;アニールPET(帝人デュポンフィルム)
【0064】
本実施形態のカード基材100を構成するインレットシート1の厚み方向の位置は、カードの厚み方向の中心位置とする。
また、ハーフカット201の加工条件は、ハーフカット間隔(カード基材100と小型ICカード200とが厚み方向で切断されていない距離)が200μmとなるように、ハーフカット201の深さをカード基材100の上下面から299μmとした。
【0065】
本実施例では、図7(b)に示すインレットシート1の外形形状サイズを変更し、図8に示す以下のA〜Eのパターンのインレットシート1を用いて、上述した図2、図3に示す製造方法でカード基材100を作成し、その作成したカード基材100の反りについて測定した。
【0066】
パターンA;インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも1mm小さいパターン。
パターンB;インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも1mm大きいパターン。
パターンC;インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも2mm大きいパターン。
パターンD;インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも4mm大きいパターン。
パターンE;インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも6mm大きいパターン。
【0067】
A〜Eの各パターンの反りの試験結果を図9に示す。図9に示す試験結果は、各パターンのサンプルを4つ作成し、その4つのサンプルの測定結果を平均した結果を示す。また、加工前は、ハーフカット、スリット加工を施す前の状態時を示し、加工後は、ハーフカット、スリット加工を施した後の状態時を示す。
【0068】
図9に示す試験結果から明らかなように、インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも大きい場合に、カード基材100の反りが基準値(1850μm)以下となることが判明した。なお、基準値は、本発明のカード基材100を製造する際のカード基材100の反りに起因する種々の不良について問題が生じなかった経験値である。この基準値を超えてしまうと、上述した問題が発生する。
【0069】
また、図9に示す試験結果から明らかなように、インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも1mm大きいパターンの場合に、カード基材100の反りが最も小さく、インレットシート1の外形形状サイズが、小型ICカード200の外形形状サイズよりも大きくなるに従って、カード基材100の反りが大きくなることが判明した。
【0070】
これは、ハーフカット201の両側(内側と外側)で、剛性のあるインレットシート1が存在していると、カード基材100の反りの発生が減少するが、外側(カード基材100側)にあるインレットシート1が大きくなるに従い、インレットシート1よりも柔軟であるコアシート2、オーバーシート3にハーフカット工程時の変形の吸収が充分にできなくなると推測される。このため、インレットシート1の外形形状サイズを、小型ICカード200の外形形状サイズよりも1〜2mmの範囲で大きく設計することが好ましい。
【0071】
<本実施形態のカード基材100の作用・効果>
このように、本実施形態におけるカード基材100は、小型ICカード200の外形形状よりも大きな形状のインレットシート1を用いて構成する。これにより、小型ICカード200の外形形状を構成するためのハーフカット201、スリット202をカード基材100に施した場合、そのハーフカット201に起因するカード基材100の反りを減少できる。
【0072】
また、小型ICカード200を含むカード基材100の製造工程中の反りに起因する種々の不良(例えば、カード基材100が装置に引っかかり、搬送路から飛び出す、カード基材100と小型ICカード200とが分離されてしまう、カード基材100の堆積物がズレて荷崩れを生じる、カード基材100に印刷ができない、カード基材100の袋詰めがスムーズにできないなど)の発生を予防することができる。
【0073】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、ICモジュール12を実装したインレットシート1を例に説明した。しかし、ICモジュール12のみが形成されたインレットシート1を用いて上述したカード基材100を形成し、小型ICカード200を含むカード基材100を構成することも可能である。
【0075】
また、小型ICカード200の外形形状を構成するハーフカット201やスリット202の形状は、図1に示す形状に限定せず、様々な形状のハーフカット201やスリット202をカード基材100に施すことが可能である。
【0076】
また、インレットシート1の厚み方向の位置は、カードの厚み方向の中心位置に限定せず、中止位置から上下にずらすことも可能である。
【0077】
また、本実施形態のカード基材100の層構成は、特に限定するものではなく、あらゆる層構成にてカード基材100を構成することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明にかかるカード基材は、各種交通機関での定期券、回数券、電話カード、特定領域への入退出用のカード、IDカード、免許証、パチンコ,遊園地,映画館などに使用されるカード、クレジットカード等の接触状態や非接触状態での通信処理が可能な情報記録媒体に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 カード基材
200 小型ICカード
201 ハーフカット
202 スリット
203 接続部分
11 アンテナパターン
12 ICモジュール
1 インレットシート
2 コアシート
3 オーバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICモジュールが搭載された小型ICカードを含んで構成するカード基材であって、
前記カード基材には、前記小型ICカードの外形形状を構成するためのハーフカット及びスリットが施されており、当該スリットが施された箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとが切断されており、当該ハーフカットが施された箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとがカード厚み中央部で接続しており、当該接続部分には、インレットシート基材が含まれていることを特徴とするカード基材。
【請求項2】
前記カード基材は、
ICモジュールが実装された前記インレットシートと、
前記インレットシートの上下面に積層されたコアシートと、
前記コアシートの上下面に積層されたオーバーシートと、を含んで構成し、
前記ハーフカットの深さは、前記コアシートの厚みの一部に達していることを特徴とする請求項1記載のカード基材。
【請求項3】
ICモジュールが搭載された小型ICカードを含んで構成するカード基材の製造方法であって、
前記ICモジュールを実装したインレットシートの上下面に、コアシート、オーバーシートを積層し、前記インレットシート、前記コアシート、前記オーバーシートと、が一体化した積層シートを形成する積層シート形成工程と、
前記積層シートに、前記カード基材の外形形状を構成するための打ち抜き加工を施し、前記カード基材を形成する打抜工程と、
前記打抜工程と同時もしくは後に、前記小型ICカードの外形形状を構成するためのハーフカット及びスリットを施し、当該スリットを施した箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとが切断されており、当該ハーフカットが施された箇所では、前記カード基材と前記小型ICカードとがカード厚み中央部分で接続しているカード基材を形成するハーフカット及びスリット加工工程と、を有し、
前記積層シート形成工程は、
前記小型ICカードの外形形状よりも大きい形状のインレットシートを用いて、前記積層シートを形成することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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