説明

カード搬送用ローラ及びそれを用いたカードリーダライタ

【課題】 カードリーダライタにおいて、規定のカードに対しては、ローラ乗り上げによる搬送ムラを軽減して、かつ、十分な押圧を加えて搬送する事ができ、規定より薄い規定外のカードが投入された場合でも搬送可能な、安価で耐久性のあるカード搬送用ローラ及び、それを用いたカードリーダライタを提供する。
【解決手段】 駆動ローラ2とこれに対向する押圧ローラ1でカードを挟持して搬送する、一対のカード搬送用ローラであって、駆動ローラ2と押圧ローラ1は間隙Xを空けて配置され、押圧ローラ1の円周面には第1の溝と、第1の溝の底部に設けた第2の溝で構成される溝4が形成され、溝4には弾性部材3を嵌め込んだ構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ローラと互いに円周面が対向する様に配置した押圧ローラからなる、カードを挟持して搬送するカード搬送用ローラと、これを用いたカードリーダライタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICカードや磁気カード等のカード状の媒体を引き込んでデータ処理を行う、自走式のカードリーダライタでは、対向する一対のカード搬送用ローラ、すなわち駆動ローラと押圧ローラでカードを挟み込み、駆動ローラをモータなどで回転させてカードを搬送する方式が一般的である。この場合、対向する一対のカード搬送用ローラでカードを確実に挟み込み、かつ、カードの端部が対向するローラの間隙を通過して、カードに乗り上げる様に変位する時の振動による搬送ムラを軽減させるために、カードの厚さに合わせて対向するローラの間隙を適切に設定する必要がある。
【0003】
一般的なカード搬送用ローラでは、駆動ローラは、軸受けにゴム硬度が80°〜90°のウレタン系やシリコン系のゴムを一体成形したものが多く用いられている。押圧ローラには、カードに傷などが付き難い様に、ポリアセタールなどの樹脂が多く用いられる。
【0004】
図3は、従来のカード搬送用ローラを説明する図であり、図3(a)は側面図、図3(b)は図3(a)の中心部分を搬送方向から見た断面図である。駆動ローラ21と押圧ローラ11は互いに対向する位置にあり、規定のカード5の厚みより狭い間隙Xを空けて配置される。
【0005】
一般にカードリーダライタでは運用システム毎に使用するカードの厚みは規格などで規定されており、例えばクレジットカードやキャッシュカードを扱うシステムでは、JISX6301により厚さ0.68mm〜0.84mmのカードを規定のカードとして使用する。
【0006】
この場合、規定より厚い規定外のカードに対しては、装置投入口などの厚さ方向の開口寸法を制限してカードの投入を未然に防ぐ方策が採られている。一方、規定よりも薄い規定外のカードの場合は、投入口などで制限する事が困難であるため、故意、または誤ってカードが投入される可能性があるが、規定のカードの厚みに合わせて設定した搬送用ローラの間隔では、十分な押圧を加える事ができないためカードが搬送できなくなるという懸念があった。
【0007】
上記の課題を解決するために、搬送するカードの厚さを検出して、能動的にローラ間の間隙を調節する機構を持たせる方法が知られており、例えば特許文献1に開示されている。
【0008】
また、対向するローラの一方にローラよりも大径の軟らかいゴムなどからなる軟質部を接着固定して、規定より薄い規定外のカードに対しては軟質部がわずかに屈曲変形しつつカードに当接して搬送し、規定のカードを搬送する場合は、軟質部がローラと同径まで屈曲変形する構造などが提案されており、この様な装置は、例えば特許文献2に開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−12498号公報
【特許文献2】実登2571835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、カードの厚さを検出して、能動的にローラ間の間隙を調節する構造ではカードの厚みを検出する検出手段とローラ間隔を調整する調整手段が別途必要となり、構造が複雑で製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
また、ローラに軟質部を設けた場合、比較的安価に規定より薄い規定外のカードの搬送力を確保できるが、規定のカードを搬送した時に軟質部の屈曲部に応力が集中し、軟質部に亀裂などを生じ易くなる。
【0012】
本発明の課題は、カードリーダライタにおいて、規定のカードに対しては、ローラ乗り上げによる搬送ムラを軽減して、かつ、十分な押圧を加えて搬送する事ができ、規定より薄い規定外のカードが投入された場合でも搬送可能な、安価で耐久性のあるカード搬送用ローラ及びそれを用いたカードリーダライタを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、モータなどで駆動される駆動ローラと、前記駆動ローラと互いに円周面が対向する様に押圧ローラを配置し、前記駆動ローラと前記押圧ローラでカードを挟持して搬送する一対のカード搬送用ローラであって、前記押圧ローラは樹脂などの材料で形成され、回転軸を中心に自由に回転可能に支持され、更に軸部分は規定のカードを挟時した時にカードを前記駆動ローラに押し付ける方向にバネなどで押圧が加えられる様に構成する。
【0014】
前記押圧ローラの円周面には、搬送方向と平行で、前記押圧ローラの円周面を周回する第1の溝が設けられ、溝の幅に丁度収まる幅で前記押圧ローラの円周面から突出する面を有する様に、ゴムなどの弾性部材を、例えばリング状に加工して嵌め込んで構成する。この時、該第1の溝の幅は押圧ローラの幅よりも十分に狭い幅とする事が、規定のカードを挟持した時に十分な押圧を加えるために好ましい。また、押圧ローラに配する弾性部材の断面は、規定よりも薄い規定外のカードを搬送した時に弾性変形した反発力により得られる接触面を最大限確保するために、角形とする事が好ましい。
【0015】
前記駆動ローラの円周面と前記押圧ローラの前記弾性部材が配された部分以外の円周面とは、カードを挟持しない状態で、例えば、規定のカードの厚みに対して半分程度の間隔の間隙を空けて配置する事が特性上好ましい。また、前記弾性部材の前記押圧ローラの円周面から突出する面は、カードを挟持しない状態で前記駆動ローラに接する様に弾性部材の厚みと第1の溝の深さを設定する事が好ましい。
【0016】
更に、前記第1の溝の底に、前記第1の溝の幅よりも狭い幅を有する第2の溝を設け、規定のカードを前記一対のカード搬送用ローラで挟持した時、前記押圧ローラに配した弾性部材の突出した部分が、前記第1の溝内に押し潰されて圧縮変形した時の応力を逃がす作用をして、弾性材料に加わる応力を軽減する事で劣化を抑える事ができる。第2の溝の代わりに第1の溝の断面積を大きくする構造、具体的には溝の幅を弾性部材の幅よりも大きくする構造が考えられるが、弾性材料が蛇行したり、よじれたりして、複雑な応力が加わり劣化を助長するため好ましくない。
【0017】
本発明によれば、駆動機構を有する駆動ローラと、カードを押圧する機構を備えた押圧ローラが、互いの円周面でカードを挟持して搬送するカード搬送用ローラであって。前記押圧ローラの円周面に、前記カードの搬送方向と平行で前記押圧ローラの円周面を周回する第1の溝と、前記第1の溝の底部に前記押圧ローラの回転軸方向の幅よりも狭い幅を有する第2の溝を設けてなり、前記第1の溝には前記押圧ローラの円周面から突出する面を有する様に弾性部材が配されてなることを特徴とするカード搬送用ローラが得られる。
【0018】
本発明によれば、前記駆動ローラの円周面と前記押圧ローラの円周面は、前記カードの厚みよりも狭い間隔を有し、前記弾性部材の前記押圧ローラの円周面から突出する面と、前記駆動ローラの円周面が接する様に配置されてなることを特徴とするカード搬送用ローラが得られる。
【0019】
本発明によれば、前記カード搬送用ローラを有することを特徴とするカードリーダライタが得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、規定のカードを扱うカードリーダライタにおいて、規定のカードに対しては、ローラ乗り上げによる搬送ムラを軽減して、かつ、十分な押圧を加えて搬送する事ができ、規定より薄い規定外のカードが投入された場合でも搬送可能な、安価で耐久性のある搬送用ローラ及びそれを用いたカードリーダライタの提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のカード搬送用ローラでは、押圧ローラは、カードに押し付けた際に傷などが付き難い様にポリアセタールなどの樹脂材料を用い、弾性材料を配するために円周面に搬送方向と平行で、円周面を周回する第1の溝と、第1の溝の底部に第2の溝を形成する。第1の溝は、規定のカードを挟持した時に押圧が均等に加えられる様に、押圧ローラの幅の30%以下で、また弾性材料を嵌め込んだ時、蛇行などを抑えるために、弾性材料が丁度収まる様な幅にするのが好ましい。
【0022】
第1の溝の底部に、第1の溝の幅よりも狭い幅で形成する第2の溝は、規定のカードを挟持した時に、弾性部材がカードとの接触面で押し潰されて圧縮変形した時に応力を逃がす作用をするため、断面形状は押圧ローラの外周方向に向かって開かれた形状が好ましく、第1の溝の底部を底辺とする三角溝や丸溝とするのが、設計、製造上好ましい。
【0023】
前記第1の溝と第2の溝で構成される溝とこれに配される弾性部材の構成は、押圧ローラに対して1本に限るものではなく、押圧ローラの幅や所望の搬送力を考慮して複数の溝を設けても本発明の目的に反しない。
【0024】
本発明のカード搬送用ローラでは、駆動ローラは、軸受けにゴム硬度が80°〜90°のウレタンゴムやシリコンゴムなどの一般的なゴム材を一体成形して形成するのが良い。また押圧ローラに形成した溝に配して使用する弾性部材には、ゴム硬度が60°〜70°の弾性があるニトリルゴム(NBR)やシリコンゴムで形成するのが良い。
【0025】
駆動ローラは、モータなどからの駆動力の伝達を容易にするため、軸は固定してカードとの接触面でカードを支持する。押圧ローラは軸部分が規定のカードを挟持した時、カード接触面から離れる方向に待避可能とし、待避方向に変位した時、カードに対して十分な押圧が加えられる様に板バネや棒バネ、コイルバネなどで懸架された構造とするのが良い。この時の押圧は、反りなど規格に許容される範囲で変形したカードでも矯正しながら搬送できる事を考慮し15N〜20Nとするのが良い。
【0026】
駆動ローラと押圧ローラのカードに接する対向部には、規定のカードがローラ間に送り出されてカードを挟み込む際に、押圧ローラが乗り上げて生じる搬送ムラをできるだけ小さくするために、予め規定のカードの厚みの40%〜50%の間隙を空けて対向する様に構成するのが特性上好ましい。
【0027】
弾性部材は、規定より薄い規定外のカードを挟持した時、弾性変形した反発力でカードを押し付ける事から、できるだけ接触面を大きく採れる様に断面が角形となる様に成形するのが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を用いて、本発明の実施の形態を詳述する。
【0029】
図1は、本発明による搬送用ローラを説明する図である。図1(a)は搬送方向の側面から見た配置図で駆動ローラ2と押圧ローラ1が互いに対向する位置にある。図1(b)は図1(a)の中心部分を搬送方向から見た断面図である。駆動ローラ2と押圧ローラ1はカードを挟持した時にカードに接する位置で対向して設置され、ローラ間はカードを挟持していない状態で、規定のカード5の厚みYよりも狭い間隔Xを空けて配置される。この時、押圧ローラは図示しない棒バネで懸架され、規定のカード5を挟持した時に間隔Xが厚みYまで変位してバネの反発力で規定のカード5を挟み込む。押圧ローラには溝4が形成され、弾性部材3が配されており押圧ローラ1の円周面から突出した面はカードを挟持しない時、駆動ローラ2に接している。
【0030】
図2は、本発明による搬送用ローラの作用を説明する概略断面図である。図2(a)はは規定のカード5を挟持した状態を表し、図2(b)は規定より薄い規定外のカード6を挟持した状態を表す。
【0031】
図2(a)において、押圧ローラ1は図示しない懸架手段により、規定のカード5の厚みXから間隙Yを差し引いた距離だけカードから離れる方向に変位する、この時発生する押圧により規定のカード5は駆動ローラ2に押し付けられ、十分な搬送力を得られる。この時、弾性部材3は押し潰されて、溝4の内側に押し込まれる。
【0032】
本実施例では、溝4の第1の溝は幅1.6mm、深さ0.85mmとし、その底部に設ける第2の溝は、幅0.6mm、深さ0.3mmの三角溝とし、押圧ローラ1に嵌め込んだ弾性部材3の断面は幅1.2mm、厚さ1.2mmとした。この構成とする事によりローラの円周面に垂直な断面積で比較した場合、第1の溝のみでは弾性部材の圧縮部で5.6%の圧縮応力が加わるが、第2の溝を設ける事により面積比で溝4の断面積の方が大きくなり、圧縮応力を軽減できる。
【0033】
図2(b)は規定より薄い規定外のカード6を挟持した状態を表し、押圧ローラ1はカードに接していないため、変位による押圧は発生しないが、弾性部材3は、溝4の第1の溝の底部で支えられ、規定より薄い規定外のカード6の厚み分だけ弾性変形して反発力が発生し、カードを駆動ローラ2に押し付ける方向に作用して、排出するに十分は搬送力を得られる。
【0034】
本実施例の搬送用ローラを用いてカードリーダライタを製造し検証を行った結果、例えば、規定のカードとしてクレジットカードを扱う装置とした時、規定のカードに対しては、ローラ乗り上げによる搬送ムラが少なく、かつ、十分な搬送力が確保されて、カードデータの読みとりや書き込みを良好に行う事ができた。また、規定より薄い規定外のカードとして厚み0.22mmのプリペイドカードを投入した場合でも、上位装置の判断で異種カードと判断して、排出動作を行えば安定して確実にカードを排出する事ができ、規定外のカードを誤って投入されても確実に排出できる事が確認できた。
【0035】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のカード搬送用ローラ及び、それを用いたカードリーダライタを用いる事により、クレジットカード、銀行カード、IDカードなどのカード処理を行うシステムに於いて、異種カードが投入されても対処可能なシステムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による搬送用ローラを説明する図。図1(a)は側面図、図1(b)は、図1(a)の中心部分の搬送方向から見た断面図。
【図2】本発明による搬送用ローラの作用を説明する概略断面図。図2(a)は規定のカードを挟持した状態を表す概略断面図、図2(b)は規定より薄い規定外のカードを挟持した状態を表す概略断面図。
【図3】従来の搬送用ローラを説明する図。図3(a)は側面図、図3(b)は、図3(a)の中心部分の搬送方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0038】
1、11 押圧ローラ
2、21 駆動ローラ
3 弾性部材
4 溝
5 規定のカード
6 規定外のカード
X 間隔
Y 厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構を有する駆動ローラと、カードを押圧する機構を備えた押圧ローラが、互いの円周面でカードを挟持して搬送するカード搬送用ローラであって、前記押圧ローラの円周面に、前記カードの搬送方向と平行で前記押圧ローラの円周面を周回する第1の溝と、前記第1の溝の底部に前記押圧ローラの回転軸方向の幅よりも狭い幅を有する第2の溝を設けてなり、前記第1の溝には前記押圧ローラの円周面から突出する面を有する様に弾性部材が配されてなることを特徴とするカード搬送用ローラ。
【請求項2】
前記駆動ローラの円周面と前記押圧ローラの円周面は、前記カードの厚みよりも狭い間隔を有し、前記弾性部材の前記押圧ローラの円周面から突出する面と、前記駆動ローラの円周面が接する様に配置されてなることを特徴とする、請求項1記載のカード搬送用ローラ。
【請求項3】
前記請求項1または2記載のカード搬送用ローラを有することを特徴とするカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−78911(P2009−78911A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250705(P2007−250705)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】