説明

カーペット用或はタイルカーペット用再生バッキング材及びカーペット用或はタイルカーペット用再生バッキング材の製造方法

【課題】カーペット用或はタイルカーペット用再生バッキング材、及び当該カーペット用或はタイルカーペット用再生バッキング材の製造方法を提供する。
【解決手段】使用済みのカーペット或はタイルカーペットのバッキング材から産出された塩ビを主体とする合成樹脂を含むチップ状或は細片状の小片(ペレット)10を集合させ、加熱処理を施しながら加圧処理を行いつつ所定の厚みと幅とを有する長尺状のシート状物14に成型する再生タイルカーペット用のバッキング材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット用或はタイルカーペット用再生バッキング材に関するものであり、又当該カーペット用或はタイルカーペット用再生バッキング材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーペットタイルが広く使われるようになって十余年が経過し、更新の時期を迎えている。一方、廃棄物の処理は年々困難になってきており、特に塩化ビニル樹脂系製品は燃やした場合ダイオキシン発生の問題を伴い、その廃棄は一層困難であるため、回収した使用済みのタイルカーペットの再利用が社会的課題となってきている。米国などは洗浄して表面のカーペット層を再度染色して模様を施し、再利用しているが、一度汚れたカーペット層の汚れを充分に落とすことは難しく、染色の色合いは必然的に濃い色に限定されてくるのが実情である。
【0003】
タイルカーペットの再利用技術としては、例えば、特許文献1〜2記載の技術がある。
これらの技術は、カーペット層を実質的に刈り取って除去することにより得られた廃材の表面または裏面に表面化粧樹脂層を形成するものである。
【0004】
カーペット層を実質的に刈り取って除去する理由は、カーペット層が存在すると、その面に接着剤や粘着材が適用できないからである。そのため、これらの技術においてはカーペット層を実質的に刈り取ってしまう必要があったのである。
しかし、カーペット層の刈り取り工程が必要となるためコストアップの原因となる。
【0005】
また、特許文献3〜5に記載されている回収タイルカーペットを微細に粉砕し、比重分離法等によりカーペット層と塩化ビニル裏打ち層を分離する方法も一般に行われているが、常温で柔らかいタイルカーペットを粉砕するには多くのエネルギーを必要とし、粉砕時の騒音も大きい。
【0006】
更に、特許文献6には、マイナス30℃以下に冷凍することにより容易に破砕出来る裏打ち層を用いたタイルカーペットを作ろうということも提案されているが、既に市場に出回っている軟質塩化ビニルを裏打ち層とするタイルカーペットに適用するには冷凍温度を極度に低くする必要がある。
【0007】
これらの技術はいずれもタイルカーペットの塩化ビニル裏打ち層は、混ざり物が少ない状態で回収できれば再利用できると言う発想に基づいている。従って、ナイロン繊維は取り除いて廃棄するか、もしくは焼却すると言うことが前提であり、刈り取ったり、微粉砕してでもタイルカーペットから除去すると言う考え方であった。しかし、これらの方法では粉砕されたカーペットの毛屑を完全に除去するには至らず、回収された塩化ビニール裏打ち層に混入して、その品質を低下させる原因となっている。
【0008】
繊維屑は衣類の屑が再利用できずに大量に滞貨になっているので、今更タイルカーペットからの回収繊維を利用しようと言うのは無理なこととも考えられるが、素材がナイロンに限定されており、微粉砕されておらずに繊維としてのある程度の長さを保持しているものが回収できれば、再利用の道が開けてくるものと考える。
【0009】
また、タイルカーペットの製造時には、耳バリが大量に発生するが、この耳バリは、形状が特異であるために文献7でも解決は難しかった。
この耳バリは、タイルカーペットの寸法精度を上げるために、一旦カーペット層と塩化ビニル裏打ち層を貼り合せた広幅長尺のシートを作り、タイルカーペットの形状のパンチで打ち抜く時に発生する生産工程上に大量に発生する副生物である。
【0010】
更に、本願発明者等は、当該特許文献7の技術を改良する為に特許文献8に開示された様な技術を特許出願した。この技術は当該カーペットの当該カーペット層と塩化ビニル等の裏打ち層とを効率良く分離する方法或いは装置を提供するものであるが、当該裏打ち層に関しては、回収した当該裏打ち層を更に別工程で細かく破砕する必要があり、工数の増加や処理コストの増加が問題となっており、更には、当該裏打ち層の破砕に際しても騒音が発生すると言う問題も依然として残っていた。
【0011】
更に、特許文献9はカーペットタイルの製造時にカットアウト部を設けることを提案しているが、このカットアウト部を用いて自在なデザインを実現しようとするものであって、使用済みになったカーペットタイルの再生再資源化を目的とするものではない。
【0012】
【特許文献1】特開2000−220281号公報
【特許文献2】特開2000−220282号公報
【特許文献3】実開昭59―132581号公報 1頁
【特許文献4】実開昭59―132582号公報 1頁
【特許文献5】特開平8―312117号公報 2頁 段落0005
【特許文献6】特開平9―173197号公報 3頁 段落0018
【特許文献7】特開2004−168023号
【特許文献8】特開2005−144076号
【特許文献9】特表2003−516874号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した様に、従来から使用済みのカーペット或はタイルカーペットを再利用するために当該カーペット或は当該タイルカーペットをその構成成分、つまり、パイル層、或はカーペット層と称される繊維形成層と当該繊維形成層の裏面に当接されている塩化ビニル樹脂を主体とする裏打ち材と称されるバッキング層とを相互に分離してそれぞれ個別に再利用を図ることが検討されてきている。
【0014】
その内、特に当該バッキング層に関しては、使用済みのカーペット或はタイルカーペットから適宜の方法で分離された当該バッキング層は、塩ビで構成されているので、一般的には、所定の温度条件下で溶融させた後、成形加工工程に於いて、適宜の厚みと面積を有するシート状に成形する方法が採用されている。例えば、ミキシングロールやバンバリーミキサーで加熱混錬した後、カレンダーロール等で圧延して所定の巾と厚さを有するシートを連続的に得る方法等が良く用いられているが、厚み等の精度は出るものの、いずれの機械設備も高価であり、再生カーペットタイル等の厚み精度は若干犠牲にしても安価な工程を必要とする場合にはオーバースペックであった。
【0015】
その他、当該バッキング層を適宜の刃体を使用して薄い膜状のシートにスライスするとか、適宜の研磨装置を使用して粉状に破砕する方法によって当該バッキング層を当該カーペットから分離し、得られた粉状物或いはシート状物を同様に溶融する方法も採用されている。
【0016】
然しながら、係る従来の当該バッキング層の再生処理では、スライスする工程或は研磨する工程が複雑で然も騒音が激しく、粉塵の飛散を伴う事から作業環境が劣悪であり、且つ時間とエネルギーの消費が大きく、再生処理に要するコストが高騰するものであり、経済的ではなく、更には、大型の溶融装置を使用するので、当該バッキング層を溶融する場合でも時間とエネルギーの消費が大きくコスト高となる欠点があった。
【0017】
従って、本発明の目的は、上記した当該カーペット或はタイルカーペットのリサイクル処理に際して、使用済みの当該カーペット或はタイルカーペットから分離したバッキング層から、簡易な工程及び簡易な装置を使用して安価で且つ効率的に製造可能であり、且つ従来の方法により得られた再生カーペット用のバッキング層に比べて、良好な特性を有する再生カーペット用のバッキング層を得ると共に、当該再生カーペット用のバッキング層を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記した目的を達成するため、基本的に以下に記載されたような技術構成を採用するものである。即ち、本発明に於ける第1の態様としては、所定の厚みと所定の単位面積を有する塩化ビニル系合成樹脂を主体とする樹脂層からなるタイルカーペット用のバッキング材であって、当該樹脂層は、その層内の略全領域に亘って複数の短繊維状のガラス繊維が互いにランダムな方向に配列されて混入されている事を特徴とする再生タイルカーペット用のバッキング材であり、又本発明に於ける第2の態様としては、使用済みのカーペット或はタイルカーペットのバッキング材から産出された合成樹脂を含むチップ状或は細片状の小片(ペレット)を集合させ、加熱処理を施しながら加圧処理を行いつつ所定の厚みと幅とを有する長尺状のシートに成型する事を特徴とする再生タイルカーペット用のバッキング材の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、基本的には上記した様な技術構成を採用しているので、以下に示す様な作用効果を発揮する事が可能である。
(1)細片状の小片(ペレット)を直接集合させ加熱処理を施しながら加圧処理を行いつつ所定の厚みと幅とを有する長尺状のシート状に成型する再生タイルカーペット用のバッキング材の製造方法であるから、大型のシート製造装置を必要とせず、安価な設備費でシート化できる。
(2)当該貯留域に或る当該小片(ペレット)を一定巾、一定厚さにしき並べて順次加熱領域に送出して加熱加圧圧縮し、当該小片(ペレット)の合成樹脂を溶融して長尺状のシート状にする工程であるのでシートとしての厚み精度には若干の難点が避けられないが、
【0020】
当該長尺状のシートに巣があるときは同質の合成樹脂からなるゾル状物質をもって穴埋めする工程を併設することにより、カーペットが表層材料である場合に限り許容されるものであること。
(3)大型のシート製造装置を用いないので加熱混練工程を経ることが無く、加熱せん断力が働かないので、塩ビの再使用に不可欠な熱安定剤の追加を不要とすること。
【0021】
(4)カーペットタイルの裏打ち材はその製造者ごとに配合と加工条件が異なり、再使用に先立って加工条件を特定しなくてはならなかったが、細片状の小片(ペレット)を熱可塑性の性能だけを利用する本出願のシート化工程では面倒な加工条件特定の前作業を著しく簡便化できること。
(5)熱可塑性の性能だけを利用する本出願のシート化工程では製造者ごとの加工条件を選ばない為、収集されたカーペットタイルが製造者ごとに分別さえされていれば、全ての製造者の使用済みカーペットタイルが再びカーペットタイルとして容易に蘇るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の具体的な態様に於ける構成の例を図面を参照しながら詳細に説明する。
即ち、図1は本発明にかかる第1の態様の1具体例の構成の例を示す図であって、図中、所定の厚みと所定の単位面積を有する塩化ビニル系合成樹脂を主体とする樹脂層30からなるタイルカーペット用のバッキング材32であって、当該樹脂層30は、その層内の略全領域に亘って複数の短繊維状のガラス繊維31が互いにランダムな方向に配列されて混入されてはいるが、当該短繊維状のガラス繊維群の内、その多くの当該短繊維状のガラス繊維は、その長手方向軸線が当該バッキング材の厚み方向と直交する平面に略平行となる様に当該樹脂層内に配列混入されているものであり、更には、その多くが当該樹脂層30の所定の一方向に対して略平行状に配列されている再生タイルカーペット用のバッキング材32が示されている。
【0023】
又、当該ガラス繊維は、当該バッキング材中で、部分的に相互に比較的に蜜に集合している部分があり、当該部分が当該バッキング材中に部分的に散在している事も見受けられる。
本発明に於ける当該具体例に於ける当該短繊維状のガラス繊維は、その長さが0.1mm乃至20mmの範囲に含まれている事が望ましい。
【0024】
一方、本発明の当該具体例に於いては、当該短繊維状のガラス繊維が塩ビからなる合成樹脂材中に多数含まれていることから、以下に示す様な寸法安定特性を有している。
即ち、当該タイルカーペットにあっては、施工する場合及び施工後の品質維持の為、その縦横両方向の寸法は例えば500mm×500mmに厳密に設定されており、係る寸法は施工段階から使用段階に至るまで温度に対する伸縮が少ないことが好ましいとされている。
【0025】
又、使用中に当該寸法が伸縮すると床面に隙間が出来たり、当該タイルカーペットの縁端部が突き上げて変形する事になる。
従って、当該タイルカーペットは、施工時から使用中に於いてまで、その寸法の温度変化に対する安定性が高い事を強く求められている。
【0026】
本発明に於ける、当該バッキング材の寸法安定性としては、例えば、サンプルとして縦横両方向の目標寸法が139mm×139mmに設定されたタイルカーペットの縦方向と横方向の寸法の変化を、所定の低温時、例えば6℃と所定の高温時、例えば95℃でそれぞれ測定し、当該温度変化に際した当該寸法の伸び或は縮みを低温時の寸法を基準としてこれを低温時の当該寸法と比較して、その伸びの変化比率を測定してこれを寸法安定率として表した。
【0027】
本発明においては、以下に示す実験結果に基づいて測定した当該寸法安定率は、±0.2%以下である事が好ましい事が判明した。
次に、本発明に係る当該バッキング材を製造する場合の一具体例を、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
即ち、図2に示す様に、本発明に係る当該バッキング材の製造方法は、基本的には、使用済みのカーペット或はタイルカーペットのバッキング材から産出された塩ビを主体とする合成樹脂を含むチップ状或は細片状の小片(ペレット)を集合させ、加熱処理を施しながら加圧処理を行いつつ所定の厚みと幅とを有する長尺状のシート状に成型する事を特徴とするものである。
【0029】
又、本発明に於ける当該バッキング材の製造方法に於いては、当該合成樹脂は塩化ビニル系合成樹脂である事が望ましい。
更に、本発明に於ける当該バッキング材の製造方法に於いては、当該小片(ペレット)には、ガラス繊維が予め含まれている事が好ましい具体例である。
本発明に於いては、当該小片(ペレット)は、最大径(縦、横、高さ或は外接円径)が15mm以下である事が好ましい。
【0030】
一方、本発明に於いては、当該長尺状に形成されたシートを所定の寸法或は所定の形状を有する様に切断するものである。
即ち、図2には、本願発明に於ける当該バッキング材32を製造する為の装置1の一具体例の構成を示すものであって、予め用意された当該複数の小片(ペレット)10をホッパー等からなる適宜の貯留装置1に貯留し、そこから、当該小片(ペレット)10を順次適宜のコンベア手段3を使用して排出しつつ、適宜の厚み調整手段11等を介して、当該小片(ペレット)群を一定巾、一定厚さにしき並べて順次適宜の加熱加圧手段4を介して所定の温度に加熱した後、適宜の加熱・加圧領域5に送出して加熱加圧圧縮し、当該小片(ペレット)10の合成樹脂を溶融して所定の厚みを有する長尺状のシート14を形成するものである。
【0031】
尚、本発明に於いては、当該形成された長尺状のシート14に巣があるときは同質の合成樹脂からなるゾル状物質をもって穴埋めする様に修正工程6を設ける事も望ましい。
又、本発明の上記バッキング材の製造工程に際して、当該加熱溶融された当該合成樹脂を一方向に移動させながら加圧する事によって、当該小片(ペレット)10に予め含まれているガラス繊維の多くが当該バッキング材用のシート14の表面に対して略平行に配列されつと同時に当該シート14の長手方向に対しても略平行状に配列されるので、上記した様な作用効果が発揮される。
【0032】
一方、本発明に於ける当該小片(ペレット)10を用意する為の小片(ペレット)製造工程20について以下に説明する。
つまり、本発明のバッキング材の製造方法に有っては、当該小片(ペレット)10を用意する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、当該使用済みカーペット或は使用済みタイルカーペットを当該カーペット層と当該バッキング層に分離処理する以前に、予め当該バッキング層に所定の間隔で所定の深さを有するスリットを形成しておく工程と、当該使用済みカーペット或はタイルカーペットに所定の外力を印加して、少なくとも当該使用済みカーペット或はタイルカーペットのカーペット層を破壊或は切断する工程を含んでいるものであっても良い。
【0033】
本発明に係る当該バッキング材の製造方法を更に詳細に説明するならば、その一具体例としては、例えば、
パイルからなるカーペット層と合成樹脂を含むバッキング層とで構成されている使用済みのカーペット或はタイルカーペットから当該カーペット層と当該バッキング層とを分離するに際し、当該バッキング層をチップ状或は細片状の小片(ペレット)に分割切断する工程、
【0034】
当該小片(ペレット)を集合させて所定の貯留域に貯留する工程、
当該貯留域に或る当該小片(ペレット)を順次加熱領域に送出して加熱し、当該小片(ペレット)の合成樹脂を溶融する工程、
当該溶融された当該合成樹脂成分を加圧圧縮する工程、
【0035】
当該合成樹脂成分を加圧圧縮後、所定の厚みを有する長尺状のシートに成形する工程、及び、
当該長尺状シートを所定の寸法と所定の形状を有する部材に切断或は型抜きする工程とから構成されているバッキング材の製造方法である。
又、当該成形工程は、押し出し式成形方法、カレンダーロール式成形方法を含んでいるもので有っても良い。
【0036】
又、本発明に於いては、当該各小片(ペレット)に含まれる当該合成樹脂は、当該合成樹脂を構成する化学成分の組成は、実質的に同じである様に選択する事も望ましい具体例である。
以下に、本発明に於けるカーペット用再生バッキング材の製造方法及びそれに関連する装置の構成に関する一具体例を、図2を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
図2は、本発明に係る当該バッキング材の製造方法を実現する為のバッキング材の製造装置1の一具体例の構成を説明する側面図である。
適宜のペレット製造工程20に於いて、カーペットタイルから剥がしとつた裏打ち材から形成された複数個の小片(ペレット)10を適宜の輸送手段を用いて貯留工程を構成する適宜の貯留手段2に集め、当該貯留手段2の下部に設けられた、好ましくは適宜の厚み調整手段11を有するゲート部15を通ってコンベア3上に均一にしき並べ、加熱・加圧工程を経てシート状成型体16に形成した。本実施例では小片(ペレット)10の粒形を10〜15mmφとした。
【0038】
ゲート部15は巾方向の均一性を実現する目的で幅方向に数片に分割されており、当該シート状成型体16のコンベア3からの高さ、つまり厚みは、当該厚み調整手段11によって適宜に調整可能に設計されている。本実施例ではコンベア3からの高さは15〜20mmに初期設定し、加熱・加圧工程を経てシート状成型体16に形成された厚みを測定しながら幅方向に数片に分割されたゲートの高さを調節した。一方、貯留手段2の底部にはコンベアを介して振動装置17が設置されておりこれにより、小片(ペレット)10が目詰まりを起こさずにコンベア3上にスムーズに排出される。コンベア3によって搬送された小片(ペレット)10は、次の加熱工程を形成する適宜の加熱手段4を通過して、140〜160℃に加熱される(加熱温度は製造者の配合条件による物性によって変化調節する)。
【0039】
当該加熱されたシート状成型体16は、次に加熱・加圧工程を形成する適宜の加熱・加圧手段5に入り、加圧されて一定の厚さのシート状物14に加工される。本発明のシート状物加工工程において、当該シート状物14の厚さの均一性をもたらす要因は、(1)コンベア3の定常的運転速度、(2)数片のゲートの高さ調節、(3)振動装置の安定的運転及び(4)小片(ペレット)10の粒形と粒度分布に依存しているから、上記した具体例の装置でも、一般のシート化加工工程、例えばカレンダーロール、押し出し機等に比較して厚み精度は良くないが、表層がカーペットのようにスムーズサーフェスでないものが表面材であるカーペットタイルという表面が比較的疎な材料の裏打ち材としては充分な厚み精度を実現できるものである。
【0040】
尚、図2中、19は当該加熱・加圧手段5の下部に設けられた支持部である。
しかしながら、小片(ペレット)10を敷き並べて加熱・加圧してシート状に加工する本発明は貯留工程近辺でのコンベア3の定常的運転速度、数片のゲートの高さ調節、振動装置の安定的運転及び小片(ペレット)の粒形と粒度分布の若干のばらつきにより、小片(ペレット)10の敷き並べに欠損部が生じ、巣が出来ることがあり、それが製品の重大な欠陥になる事がある。
【0041】
これを補う方法として、同質のゾルにより巣の部分を修正する修正手段6からなる補正工程があり、このゾルはカーペット原反の目止めの役割を兼務する。当該ゾルによる補正工程を経たシート状物14は、欠損部を補正されているのでシートとしての機能が満たされており、新規のカーペットタイルの裏打ち材としての性質を充分に備えたシートになっている。
【0042】
この段階で、本発明に於ける当該カーペット用或はタイルカーペット用のバッキング材の製造が完了する事になる。
次に、本発明に於ける当該カーペット用或はタイルカーペット用のバッキング材を用いて再生カーペット或は再生タイルカーペットを製造する方法或はその装置の具体例としては、その後に、当該シート状物14は、再加熱・ラミネート手段7から構成された再加熱・ラミネート工程に入り、ゾルは加熱されてゲル化し、適宜の供給手段13から供給される別途に形成された新規のカーペット層9が当該シート状物14の一面に供給され、そこでラミネートされることによって切断前のカーペットタイル18の形状が完成する。その後は適宜の切断装置8からなる切断工程を経て適宜の寸法に切断され、使用済みカーペットタイルから再生された裏打ち材をバッキングとした新しいカーペットタイル12に生まれ変わるのである。
【0043】
此処で、上記した本発明に係るバッキング層の寸法安定特性を、ガラス繊維を含まない従来のバッキング層と比較した結果を示す。
即ち、表1及び表2は、上記した実施例に基づいて製造された再生バッキング層から縦方向及び横方向の目標寸法が139mm×139mmに設定した再生バッキング層サンプルを4種類切り出して寸法安定化特性試験を行った結果を示すものであり、表3及び表4は、使用済みのタイルカーペットから分離された従来のバッキング層(短繊維状のガラス繊維を含まない)から上記したと同様の目標寸法を有する従来例サンプルを4種類切り出し、それぞれについて、上記と同様の作成し寸法安定化特性試験を行った結果を示すものである。
【0044】
本発明に於いて実施した寸法安定特性試験は、上記各サンプル40を、6℃の低温雰囲気中に所定の時間例えば1昼夜放置させた後、図3に示す様に、当該各サンプル40の4つの縁部のそれぞれの長さ(B)(mm)を測定した。
即ち、各表中、「上」の欄は、図3の当該サンプル40に於ける上側縁部の長さを測定した測定値を示し、「下」は、同サンプル40の下側縁部の長さの測定値を示す。
【0045】
同様に「左」は、同左側縁部の、又「右」は、同右側縁部の長さの測定値をそれぞれ示している。
次に、同じ各サンプル40を95℃の高温加熱板上に例えば10分間放置させた後、図3に示す様に、当該各サンプル40の4つの縁部のそれぞれの長さ(A)(mm)を測定した。
【0046】
上記各サンプルの長さの測定は、図3に示す様な各サンプルの縁部4箇所の各頂点にそれぞれノギスを当てるか、当該各縁部からノギスの測定用爪部の深さを考慮して、若干当該サンプルの内部に入った位置にノギスを当てて測定したものである。
そして、当該各サンプル40に付いて高温時と低温時に於ける長さの差C(=A−B)を求め伸び或は縮みの程度を算出した。
【0047】
次いで、上記Cの値を低温時の長さBで割り算し(C/B)、当該各サンプル40の4つの縁部のそれぞれに於ける伸び率F(%)を算出した。
尚、同表中、Dは、各サンプル40の4つの縁部に於ける長さの差C、つまり伸びの平均値であり、Rは、各サンプル40の4つの縁部に於ける伸びの範囲、つまりばらつきを示す値である。
【0048】
又、同表中、Gは各サンプル40の4つの縁部に於ける伸び率F(%)の平均値である。
一方、表3及び表4は、ガラス繊維を含まない塩ビのペレットを作成し、図2に示す装置を使用してシート化したものから、上記したと同様の目標寸法を有する比較サンプル41を4種類切り出し、上記と同様の試験を行って得た測定結果を示している。
【0049】
上記した測定結果から判断すると、ガラス繊維を含まない塩ビ製のバッキング層は、伸び率G(%)の平均値が0.4%から0.7%もあり、当該バッキング層としては、安定性に大きな問題を呈するのに対し、本発明に係るガラス繊維を含むバッキング層は、伸び率G(%)の平均値が±0.2%以下であり、特には、当該伸び率G(%)の平均値が±0.1%以下を示しており、当該バッキング層としては、極めて安定した寸法安定性を示す事が判明した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明のカーペット或はタイルカーペット用の再生されたバッキン材の一具体例の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明に使用されるカーペット用或はタイルカーペット用の再生バッキング材の製造方法を実現する装置の一具体例の構成を示す側面図であり、同時に本発明で製造された当該再生バッキング材を用いた再生カーペット或は再生タイルカーペットの製造装置の一具体例の構成を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明に於いて使用されるバッキング層のサンプルと測定部位を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1:再生バッキング材製造装置
2:貯留手段
3:コンベア
4:加熱手段
5:加熱・加圧手段
6:巣の部分修正手段
7:再加熱・ラミネート手段
8:切断装置
9:新規のカーペット層
10:小片(ペレット)
11:厚み調整手段
12:カーペットタイル
13:供給手段
14:シート状物
15:ゲート部
16:シート状成型体
17:振動装置
18:切断前のカーペットタイル
19:支持部
20:ペレット製造工程
30:合成樹脂層
31:ガラス繊維
32:バッキング層
40、41:サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みと所定の単位面積を有する塩化ビニル系合成樹脂を主体とする樹脂層からなるタイルカーペット用のバッキング材であって、当該樹脂層は、その層内の略全領域に亘って複数の短繊維状のガラス繊維が互いにランダムな方向に配列されて混入されている事を特徴とする再生タイルカーペット用のバッキング材。
【請求項2】
所定の厚みと所定の単位面積を有する塩化ビニル系合成樹脂を主体とする樹脂層からなるタイルカーペット用のバッキング材が使用済みカーペットタイルに使用されていた裏打ち材を含むものであって、当該樹脂層は、その層内の略全領域に亘って複数の短繊維状のガラス繊維が互いにランダムな方向に配列されて混入されている事を特徴とする請求項1に記載のバッキング材。
【請求項3】
当該短繊維状のガラス繊維は、その長さが0.1mm乃至20mmの範囲に含まれている事を特徴とする請求項1又は2に記載のバッキング材。
【請求項4】
当該短繊維状のガラス繊維群の内、その多くの当該短繊維状のガラス繊維は、その長手方向軸線が当該バッキング材の厚み方向と直交する平面に平行となる様に当該樹脂層内に配列混入されている事を特徴とする請求項1又は2に記載のバッキング材。
【請求項5】
当該バッキング材の90℃の温度変化に対して寸法安定性を示す寸法安定率が±0.2%以下である事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のバッキング材。
【請求項6】
使用済みのカーペット或はタイルカーペットのバッキング材から産出された塩ビを主体とする合成樹脂を含むチップ状或は細片状の小片(ペレット)を集合させ、加熱処理を施しながら加圧処理を行いつつ所定の厚みと幅とを有する長尺状のシート状に成型する事を特徴とする再生タイルカーペット用のバッキング材の製造方法。
【請求項7】
当該小片(ペレット)には、ガラス繊維が含まれている事を特徴とする請求項6に記載のバッキング材の製造方法。
【請求項8】
当該小片(ペレット)は、最大径(縦、横、高さ或は外接円径)が15mm以下である事を特徴とする請求項6又は7に記載のバッキング材の製造方法。
【請求項9】
パイルからなるカーペット層と合成樹脂を含むバッキング層とで構成されている使用済みのカーペット或はタイルカーペットから当該カーペット層と当該バッキング層とを分離するに際し、当該バッキング層をチップ状或は細片状の小片(ペレット)に分割切断する工程、
当該小片(ペレット)を集合させて所定の貯留域に貯留する工程、
当該貯留域に或る当該小片(ペレット)を一定巾、一定厚さにしき並べて順次加熱領域に送出して加熱加圧圧縮し、当該小片(ペレット)の合成樹脂を溶融して所定の厚みを有する長尺状のシート状にする工程、
とから構成されている事を特徴とするバッキング材の製造方法。
【請求項10】
当該バッキング材の製造方法は、当該長尺状のシート状形成工程の後に、当該長尺状のシートに巣があるときは同質の合成樹脂からなるゾル状物質をもって穴埋めする工程を更に含んでいる事を特徴とする請求項9に記載のバッキング材の製造方法。
【請求項11】
パイルからなるカーペット層と合成樹脂を含むバッキング層とで構成されている使用済みのカーペット或はタイルカーペットから当該カーペット層と当該バッキング層とを分離するに際し、当該バッキング層をチップ状或は細片状の小片(ペレット)に分割切断する工程、
当該小片(ペレット)を集合させて所定の貯留域に貯留する工程、
当該貯留域に或る当該小片(ペレット)を一定巾、一定厚さにしき並べて順次加熱領域に送出して加熱加圧圧縮し、当該小片(ペレット)の合成樹脂を溶融して所定の厚みを有する長尺状のシート状にする工程、
当該所定の厚みを有する長尺状のシートに新規のカーペット層を重ね合わせて、貼り付け成形する工程、及び、
当該新規のカーペット層を重ね合わせた長尺状シートを所定の寸法と所定の形状を有する部材に切断或は型抜きする工程とから構成されている事を特徴とするカーペット或はタイルカーペットの製造方法。
【請求項12】
当該カーペット或はタイルカーペットの製造方法は、更に当該長尺状のシート状にする工程の後に、当該長尺状のシートに巣があるときは同質の合成樹脂からなるゾル状物質をもって穴埋めする工程を設ける事を特徴とする請求項11に記載のカーペット或はタイルカーペットの製造方法。
【請求項13】
当該カーペットのバッキング材から当該小片(ペレット)を産出する工程は、当該使用済みカーペット或はタイルカーペットを当該カーペット層と当該バッキング層に分離処理する以前に、予め当該バッキング層に所定の間隔で所定の深さを有するスリットを形成しておく工程と、当該使用済みカーペット或はタイルカーペットに所定の外力を印加して、少なくとも当該使用済みタイルカーペットを伸張或いは破壊する或はタイルカーペットのバッキング層を破壊或は切断する工程を含んでいる事を特徴とする請求項4乃至10の何れかに記載のバッキング材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−95521(P2009−95521A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271036(P2007−271036)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(507140117)株式会社資源化研究所 (7)
【Fターム(参考)】