説明

カーボネートコポリマー

【課題】医療デバイスおよび医療デバイスのコーティングの形成のための増強された特性を有するポリマーを提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の環状モノマーを芳香族環状カーボネートの存在下で重合させてコポリマーを形成する工程;および得られたコポリマーを回収する工程を包含する、方法。上記方法により生成されたコポリマー、上記コポリマーを含有する医療デバイス、薬物送達デバイス、およびデバイスのコーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイス(例えば、縫合糸、ステープル、クリップ、吻合リング、骨プレートおよび骨ねじ、薬学的に活性な成分の徐放および/または制御放出のためのマトリックスなど)の製造において特に有用な、ポリマー組成物を提供する。いくつかの実施形態において、これらのポリマー組成物は、医療デバイスのためのコーティングとして利用され得る。
【背景技術】
【0002】
ラクチドおよび/またはグリコリドおよび/または関連化合物のポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらから作製された外科手術用デバイスは、当業者の知識の範囲内である。さらに、他の特許は、ラクチドまたはグリコリドと、他のモノマー(カプロラクトンまたはトリメチレンカーボネートが挙げられる)とのコポリマーから調製された、外科手術用デバイスを開示する。例えば、特許文献1および特許文献2は、外科手術用物品、特に、外科手術用縫合糸を作製する際に有用な、ε−カプロラクトンとグリコリドとのコポリマーを開示する。さらに、特許文献3は、外科手術用縫合糸のコーティングとしての、高分子量カプロラクトンポリマーの利用に関し、一方で、特許文献4は、グリコリドとトリメチレンカーボネートとを共重合させることにより調製されるトリブロックコポリマーから製造された、外科手術用物品を開示する。
【0003】
生体吸収性ポリマーの特性は、使用されるコモノマー(存在する場合)の性質および量、ならびに/またはポリマーを調製する際に使用される重合手順にかなり依存して異なり得る。医療デバイスおよびそのコーティングの形成において使用するためのこのようなポリマーの選択は、種々のポリマーの特性(ポリマーの引張強度などの物理的特性、ならびに強度の損失および/または分解が起こるまでの時間の長さなどが挙げられる)によって影響を受け得る。
【特許文献1】米国特許第4,605,730号明細書
【特許文献2】米国特許第4,700,704号明細書
【特許文献3】米国特許第4,624,256号明細書
【特許文献4】米国特許第4,429,080号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体吸収性ポリマーから形成された現在の医療デバイスおよびそのコーティングは、満足に働き得るが、医療デバイスおよび医療デバイスのコーティングの形成のための増強された特性を有するポリマーに関して、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
方法であって、
少なくとも1種の環状モノマーを芳香族環状カーボネートの存在下で重合させて、コポリマーを形成する工程;および
得られたコポリマーを回収する工程、
を包含する、方法。
【0006】
(項目2)
上記少なくとも1種の環状モノマーが、環状エステルおよび環状カーボネートからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【0007】
(項目3)
上記少なくとも1種の環状モノマーが、グリコリド、L(−)−ラクチド、D(+)−ラクチド、メソ−ラクチド、p−ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される環状エステルを含有する、項目1に記載の方法。
【0008】
(項目4)
上記少なくとも1種の環状モノマーが、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルトリメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチロールプロパンモノカーボネート、4,6−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、および1,3−ジオキセパン−2−オン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される環状カーボネートを含有する、項目1に記載の方法。
【0009】
(項目5)
上記芳香族環状カーボネートが、式
【0010】
【化10】

の芳香族環状カーボネートであり、該式において、Rは、ベンゼンを含む芳香族であり、Zは、COOを含み、そしてnは、約1〜約30の数である、項目1に記載の方法。
【0011】
(項目6)
上記芳香族環状カーボネートが、式
【0012】
【化11】

の芳香族環状カーボネートである、項目1に記載の方法。
【0013】
(項目7)
上記芳香族環状カーボネートが、式
【0014】
【化12】

の芳香族環状カーボネートであり、該式において、mは、約1〜約30の数である、項目1に記載の方法。
【0015】
(項目8)
上記少なくとも1種の環状モノマーを上記芳香族環状カーボネートの存在下で重合させる工程が、該環状モノマーおよび該芳香族環状カーボネートを、約170℃〜約185℃の温度まで、約4時間〜約6時間にわたって加熱する工程を包含する、項目1に記載の方法。
【0016】
(項目9)
上記少なくとも1種の環状モノマーを上記芳香族環状カーボネートの存在下で重合させる工程が、該環状モノマーおよび該芳香族環状カーボネートを、約175℃〜約180℃の温度まで、約4.25時間〜約4.75時間にわたって加熱する工程を包含する、項目1に記載の方法。
【0017】
(項目10)
上記コポリマーを、約100℃〜約120℃の温度まで、約25時間〜約35時間の範囲の時間にわたって加熱する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
【0018】
(項目11)
上記コポリマーを、約107℃〜約113℃の温度まで、約28時間〜約32時間の範囲の時間にわたって加熱する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
【0019】
(項目12)
項目1に記載の方法によって生成されたコポリマー。
【0020】
(項目13)

【0021】
【化13】

を有する、項目1に記載の方法によって生成されたコポリマーであって、該式において、
Wは、エステルおよびカーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
Aは、芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、
xは、約1〜約200の数であり、そして
yは、約1〜約200の数である、
コポリマー。
【0022】
(項目14)
Wが、上記コポリマーの総重量の約15重量%〜約75重量%を構成し、そして
Aが、該コポリマーの総重量の約20重量%〜約75重量%を構成する、
項目13に記載のコポリマー。
【0023】
(項目15)

【0024】
【化14】

を有する、項目1に記載の方法によって生成されたコポリマーであって、該式において、
Wは、エステルおよびカーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
xは、約1〜約200の数であり、そして
yは、約1〜約200の数である、
コポリマー。
【0025】
(項目16)

【0026】
【化15】

を有する、項目1に記載の方法によって生成されたコポリマーであって、該式において、
Wは、エステルおよびカーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
xは、約50〜約150の数であり、そして
yは、約50〜約150の数である、
コポリマー。
【0027】
(項目17)
項目1に記載の方法によって生成されたコポリマーを含有する、医療デバイス。
【0028】
(項目18)
項目1に記載の方法によって生成されたコポリマーを含有する、薬物送達デバイス。
【0029】
(項目19)
項目1に記載の方法によって生成されたコポリマーを含有する、医療デバイスのためのコーティング。
【0030】
(項目20)

【0031】
【化16】

を有するコポリマーであって、該式において、
Wは、環状エステルおよび環状カーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
xは、約1〜約200の数であり、
yは、約1〜約200の数であり、そして
Aは、式
【0032】
【化17】

の芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、式(I)において、Rは、ベンゼンを含む芳香族であり、Zは、COOを含み、そしてnは、約1〜約30の数である、
コポリマー。
【0033】
(項目21)
Wが、グリコリド、L(−)−ラクチド、D(+)−ラクチド、メソ−ラクチド、p−ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルトリメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチロールプロパンモノカーボネート、4,6−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、および1,3−ジオキセパン−2−オン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、そして
Aが、式
【0034】
【化18】

からなる群より選択される芳香族環状カーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、該式において、mは、約1〜約30の数である、
項目20に記載のコポリマー。
【0035】
(項目22)
Wが、上記コポリマーの総重量の約15重量%〜約75重量%を構成し、そしてAが、該コポリマーの総重量の約20重量%〜約75重量%を構成する、項目20に記載のコポリマー。
【0036】
環状モノマーおよび芳香族環状カーボネートを含有するコポリマー組成物が提供される。このコポリマーは、ある実施形態において、この芳香族環状カーボネートにより開始される開環重合反応によって生成され得る。得られるコポリマーは、医療デバイス、薬物送達デバイス、および/または医療デバイスのためのコーティングを製造する際に利用され得る。
【0037】
(要旨)
環状モノマーおよび芳香族環状カーボネートを含有する、コポリマー組成物が提供される。このコポリマーは、ある実施形態において、芳香族環状カーボネートにより開始される開環重合反応によって、生成され得る。ある実施形態において、このようなコポリマーを生成するための方法は、少なくとも1種の環状モノマーを芳香族環状カーボネートの存在下で重合させてコポリマーを形成する工程、および得られたコポリマーを回収する工程を包含する。
【0038】
ある実施形態において、本開示のコポリマーは、式
【0039】
【化19】

を有し得る。この式において、Wは、環状エステルおよび環状カーボネートを含む環状モノマーから得られる誘導体であり、xは、約1〜約200の数であり、yは、約1〜約200の数であり、そしてAは、式
【0040】
【化20】

の芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、この式において、Rは、ベンゼンを含む芳香族であり、Zは、COOを含み、そしてnは、約1〜約30の数である。
【0041】
得られるコポリマーは、医療デバイス、薬物送達デバイス、および/または医療デバイスのためのコーティングを製造する際に利用され得る。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、医療デバイスおよび医療デバイスのコーティングの形成のための増強された特性を有するポリマーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(詳細な説明)
本明細書中に記載される組成物は、医療デバイス、薬物送達デバイス、および/または医療デバイスのコーティングの形成のために有用である。これらの組成物は、環状モノマーを、環内に芳香族基を有する環状カーボネートの存在下で重合させることによって形成される、コポリマーを含有する。本開示のコポリマーを形成する際に使用するために適切な環状モノマーは、望ましい特性(適切な反応条件下での合理的な反応速度が挙げられる)を有する。得られるコポリマーは、生体適合性であり、これらのコポリマーを、医療デバイスおよびそのコーティング、ならびに薬物送達デバイスの製造のために適切にする。
【0044】
本開示に従って調製されたコポリマーは、少なくとも1種の環状モノマーを、このコポリマーの第一の成分として含有する。適切な環状モノマーとしては、例えば、ラクトンなどの環状エステル、および環状カーボネートが挙げられる。適切な環状エステルとしては、小さい環(ある実施形態において、5員環、他の実施形態において、6員環、および他の実施形態において、7員環)を有する環状エステルが挙げられ得る。いくつかの実施形態において、適切な環状エステルは、α−炭素に隣接するヘテロ原子(例えば、酸素)を有し得る。適切な環状エステルとしては、グリコリド、L(−)−ラクチド、D(+)−ラクチド、メソ−ラクチド、p−ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
適切な環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルトリメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチロールプロパンモノカーボネート、4,6−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、1,3−ジオキセパン−2−オン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
ある実施形態において、本開示のコポリマーは、その環内に芳香族基を有する環状カーボネートを含有する。このような芳香族基を有する環状カーボネートとしては、例えば、環内に芳香族基を有するオリゴマー環状カーボネート(本明細書中で時々、「芳香族環状カーボネート」、「芳香族環状オリゴマーカーボネート」と称される)およびその誘導体が挙げられる。このような芳香族環状オリゴマーカーボネートとしては、例えば、Odian,「Principles of Polymerization」第3版、John Wiley & Sons,Inc.569−573頁(その全開示が、本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態において、芳香族環状オリゴマーカーボネートは、以下の式
【0048】
【化21】

のものであり得、この式において、Rは、ベンゼンなどの芳香族基であり;Zは、COOなどであり得;nは、約1〜約30の数であり得;そしてこの環状カーボネートの残りの部分は、約1個〜約30個、ある実施形態においては、約2個〜約15個の炭素原子を有し得、そして例えば、ラクトン(ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、プロピオラクトンおよびこれらの組み合わせが挙げられる)ならびに他の環状エステル(例えば、ジオキサノン、グリコリド、ラクチド、ビスフェノールA、およびこれらの組み合わせ)などの環状エステルから誘導される環状カーボネートを含み得る。
【0049】
ある実施形態において、芳香族環状カーボネートは、以下の式
【0050】
【化22】

の芳香族環状カーボネートであり得る。
【0051】
他の実施形態において、芳香族環状カーボネートは、ビスフェノールA誘導体(ビスフェノールA、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる)から誘導される、環状オリゴマーカーボネートを含み得る。このような化合物の例としては、以下の式
【0052】
【化23】

の化合物が挙げられる。この式において、mは、約1〜約30の数である。
【0053】
本開示のコポリマーは、環状モノマーと芳香族環状カーボネートとを、当業者の知識の範囲内の任意の方法またはプロセスを利用して化合させることによって、形成され得る。ある実施形態において、本開示のコポリマーは、環状モノマーを、芳香族環状カーボネートにより開始される開環重合反応に供することによって得られ得る。このような重合反応の結果は、環状モノマーからのエステル誘導体および/またはカーボネート誘導体と、芳香族環状オリゴマーカーボネートからの芳香族カーボネート誘導体との両方を含み得る。従って、いくつかの実施形態において、得られるコポリマーは、以下の式
【0054】
【化24】

のコポリマーであり得る。この式において、Wは、環状モノマーから得られる誘導体(ある実施形態において、エステルまたはカーボネート)であり;Aは、芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり;xは、約1〜約200(ある実施形態において、約50〜約150)の数であり、そしてyは、約1〜約200(ある実施形態において、約50〜約150)の数である。
【0055】
ある実施形態において、芳香族環状オリゴマーカーボネートが上記式IIの構造を有する場合、得られるコポリマーは、以下の構造
【0056】
【化25】

を有し得る。この式において、W、x、およびyは、上で定義されたとおりである。
【0057】
他の実施形態において、芳香族環状オリゴマーカーボネートが上記式IIIの構造を有する場合、得られるコポリマーは、以下の構造
【0058】
【化26】

を有し得る。この式において、W、x、およびyは、上で定義されたとおりである。
【0059】
得られるコポリマーは、ランダム構成であっても、ブロック構成であっても、交互構成であってもよい。もちろん、1種以上の環状モノマーが使用されて、本開示のコポリマーを形成し得ることが理解されるべきである。このコポリマーがブロックコポリマーである場合、このコポリマーは、AB、ABA、ABAB、ABC、ABCBA、BABA、BACAB、ABCDなどの任意のブロック構成を有し得る。
【0060】
本開示のコポリマーを形成するための方法は、当業者の知識の範囲内であり、本開示のコポリマーを形成するために利用される環状モノマーおよび芳香族環状オリゴマーカーボネートに依存して変動し得る、標準的な反応条件を利用し得る。環状モノマーおよび芳香族環状カーボネートは、任意の適切な量で、任意の順序で化合されて、本開示のコポリマーを形成し得る。いくつかの実施形態において、環状モノマーおよび芳香族環状オリゴマーカーボネートは、オクタン酸スズなどの触媒の存在下で、時々、窒素ガスなどの不活性雰囲気下で化合され得る。
【0061】
いくつかの場合において、重合は、減圧下で(例えば、約1トル(約133.3Pa)未満の圧力で)行われることが望ましくあり得る。いくつかの実施形態において、環状モノマーおよび芳香族環状カーボネートを、約170℃〜約185℃の適切な温度、ある実施形態においては、約175℃〜約180℃、いくつかの場合においては、約178℃の温度まで加熱することが望ましくあり得る。これらのモノマーは、約4時間〜約6時間、ある実施形態においては、約4.25時間〜約4.75時間の適切な時間にわたって、重合され得る。
【0062】
この時間の後に、溶融したコポリマーが得られ得る。必要ではないが、いくつかの実施形態において、本開示のコポリマーは、約100℃〜約120℃、ある実施形態においては約107℃〜約113℃の温度まで、約25時間〜約35時間、ある実施形態においては約28時間〜約32時間の時間にわたって加熱することにより、さらなる熱処理に供され得る。いくつかの場合において、この第二の熱処理は、減圧中で、ある実施形態においては約1トル(約133.3Pa)未満の圧力で行われることが望ましくあり得る。
【0063】
環状モノマーから得られる誘導体(ある実施形態においては、エステルまたはカーボネート)は、本開示のコポリマーの総重量の約75重量%まで、ある実施形態においては、本開示のコポリマーの総重量の約15重量%〜約75重量%、他の実施形態においては、本開示のコポリマーの総重量の約30重量%〜約50重量%を構成し得る。従って、芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体は、本開示のコポリマーの総重量の約85重量%まで、ある実施形態においては、本開示のコポリマーの総重量の約25重量%〜約85重量%、他の実施形態においては、本開示のコポリマーの総重量の約50重量%〜約70重量%を構成し得る。
【0064】
さらに、本開示のコポリマーは、他の生体適合性ポリマーが本開示のコポリマーの生分解性特性を望ましくなく妨害しない限り、他の生体適合性ポリマーと組み合わせられ得る。本開示のコポリマーとこのような他のポリマーとのブレンドは、標的化された薬物送達のための望ましい正確な放出プロフィール、または構造的移植物のために望ましい正確な速度の生分解性を設計する際に、より大きい融通性を与え得る。このようなさらなる生体適合性ポリマーの例としては、他のポリカーボネート;ポリエステル;ポリオルトエステル;ポリアミド;ポリウレタン;ポリ(イミノカーボネート);ポリ酸無水物;およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態において、本開示のコポリマーは、脂肪酸成分と組み合わせられ得る。この脂肪酸成分は、脂肪酸または脂肪酸塩、あるいは脂肪酸エステルの塩を含有する。適切な脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、そして約12個より多い炭素原子を有する高級脂肪酸が挙げられる。適切な飽和脂肪酸の例としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびラウリン酸が挙げられる。適切な不飽和脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が挙げられる。さらに、脂肪酸のエステル(例えば、トリステアリン酸ソルビタンまたは硬化ヒマシ油)が使用され得る。
【0066】
適切な脂肪酸塩としては、C以上の脂肪酸(特に、約12個〜22個の炭素原子を有する脂肪酸)の多価金属イオン塩、およびその混合物が挙げられる。ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、および亜鉛塩が挙げられる、脂肪酸塩が、本開示のいくつかの実施形態において有用であり得る。特に有用な塩としては、市販の「食品等級」のステアリン酸カルシウムが挙げられ、これは、約3分の1のC16脂肪酸および3分の2のC18脂肪酸、ならびに少量のC14脂肪酸およびC22脂肪酸の混合物からなる。
【0067】
本開示のコポリマーと組み合わせられ得る適切な脂肪酸エステルとしては、乳酸ステアロイルのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、または亜鉛塩;乳酸パルミチルのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、または亜鉛塩;乳酸オレイルのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、バリウム塩、または亜鉛塩であり、2−乳酸ステアロイルカルシウム(例えば、商標VERVの下でAmerican Ingredients Co.,Kansas City,MO.から市販されている2−乳酸ステアロイルカルシウム)が特に有用である。利用され得る他の脂肪酸エステル塩としては、乳酸ステアロイルリチウム、乳酸ステアロイルカリウム、乳酸ステアロイルルビジウム、乳酸ステアロイルセシウム、乳酸ステアロイルフランシウム、乳酸パルミチルナトリウム、乳酸パルミチルリチウム、乳酸パルミチルカリウム、乳酸パルミチルルビジウム、乳酸パルミチルセシウム、乳酸パルミチルフランシウム、乳酸オレイルナトリウム、乳酸オレイルリチウム、乳酸オレイルカリウム、乳酸オレイルルビジウム、乳酸オレイルセシウム、および乳酸オレイルフランシウムからなる群より選択されるものが挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、本開示のコポリマーを蝋と組み合わせることが望ましくあり得る。利用され得る適切な蝋としては、ポリエチレン蝋、エチレンコポリマー蝋、硬化炭化水素蝋、硬化植物油、蜜蝋、カルナウバ蝋、パラフィン、微結晶蝋、キャンデリア、鯨蝋、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
他の実施形態において、ω−6脂肪酸(アラキドン酸が挙げられる)が、本開示のコポリマーと組み合わせられ得る。
【0070】
なおさらなる実施形態において、リン脂質が、本開示のコポリマーと組み合わせられ得る。適切なリン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、モノアシルホスファチジルコリン(MAPC)、ジアシルホスファチジルコリン(DAPC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、プラスマロゲン、スフィンゴミエリン、セラミド、シリアチン、リン脂質基を有するポリマー、およびこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ホスホリルコリン基を有するコポリマーが、本開示の組成物に添加され得る。これらのコポリマーは、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のモノマー(メタクリレート(例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリロイルオキシエチルフェニルカルバメート、およびカルバミン酸フェニルメタクリロイルオキシエチル)が挙げられる)とのコポリマーである。
【0071】
いくつかの実施形態において、本開示のコポリマーはまた、1種以上の生物活性薬剤および/または医療薬剤と組み合わせられ得、これらの薬剤は、本開示のコポリマー中に保持されても、本開示のコポリマーから放出されてもよい。本明細書中で使用される場合、「医療薬剤」は、その最も広い意味で使用され、そして臨床用途を有する任意の物質または物質の混合物を包含する。その結果、医療薬剤は、それ自体が薬理学的活性を有しても有さなくてもよい(例えば、染料)。
【0072】
存在する医療薬剤の量は、選択される特定の医療薬剤に依存するが、いくつかの実施形態において、使用される量は、本開示のコポリマーを含有するデバイスまたはコーティングの、約0.01重量%〜約10重量%である。
【0073】
本開示のコポリマーと組み合わせられ得るかまたは混合され得る医療薬剤のクラスの例としては、抗菌薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心臓血管薬剤、診断剤、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、増殖因子、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作用性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫抑制薬、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、多糖類、および酵素が挙げられる。医療薬剤の組み合わせが使用され得ることもまた意図される。
【0074】
本開示のコポリマーと組み合わせられ得る適切な抗菌剤としては、トリクロサン(triclosan)(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしてもまた公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、および硫酸クロルヘキシジンが挙げられる)、銀およびその塩(酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク、および銀スルファジアジンが挙げられる)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン)、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン(例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン(pefloxacin)、エノキサシンおよびシプロフロキサシン)、ペニシリン(例えば、オキサシリンおよびピプラシル(pipracil))、ノンオキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、抗菌タンパク質およびペプチド(例えば、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシン(lactoferricin)B)が、本開示のブレンドまたはエマルジョン中に医療薬剤として含有され得る。
【0075】
本開示のコポリマーと組み合わせられ得る他の医療薬剤としては、局所麻酔薬;非ステロイド性抗受精剤;副交感神経様作用剤;精神療法剤;トランキライザ;うっ血除去薬;鎮静催眠薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗片頭痛薬;抗パーキンソン剤(例えば、L−ドパ);鎮痙薬;抗コリン作用性剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;心臓血管薬剤(例えば、冠状血管拡張薬およびニトログリセリン);アルカロイド;鎮痛薬;麻酔薬(例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど);非麻酔薬(例えば、サリチレート、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど);オピオイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン);抗癌剤;鎮痙薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤(例えば、ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど);プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬剤;エストロゲン;抗菌剤;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固薬;鎮痙薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン薬;ならびに免疫学的薬剤が挙げられる。
【0076】
本開示のコポリマーと組み合わせられ得る適切な医療薬剤の他の例としては、ウイルスおよび細胞、ペプチド(例えば、黄体化ホルモン放出ホルモンアナログ(例えば、ゴセレリンおよびエキセンジン(exendin)))およびタンパク質、アナログ、ムテイン、ならびにその活性フラグメント(例えば、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン))、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN)、エリスロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、組織プラスミノゲン賦活剤)、癌抑制因子、血液タンパク質、性腺刺激ホルモン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンおよび黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH))、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子または成長因子(例えば、神経発育因子、インスリン様成長因子);タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト;核酸(例えば、アンチセンス分子、DNAおよびRNA);オリゴヌクレオチド;ならびにリボザイムが挙げられる。
【0077】
画像化剤(例えば、ヨウ素または硫酸バリウム、あるいはフッ素)もまた、本開示のコポリマーと組み合わせられて、画像化設備(X線、MRI、およびCATスキャンが挙げられる)の使用による外科手術領域の可視化を可能にし得る。
【0078】
さらに、酵素が、本開示のコポリマーに添加されて、これらのコポリマーの分解速度を増加させ得る。適切な酵素としては、例えば、ペプチドヒドロラーゼ(例えば、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GTP)など);糖鎖ヒドロラーゼ(例えば、ホスホリラーゼ、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、オリゴサッカラーゼなど);オリゴヌクレオチドヒドロラーゼ(例えば、アルカリホスファターゼ、エンドリボヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼなど)が挙げられる。いくつかの実施形態において、酵素が添加される場合、この酵素は、リポソームまたはミクロスフェアに含まれて、この酵素の放出速度を制御し得、これによって、本開示の生体適合性組成物の分解速度を制御する。酵素をリポソームおよび/またはミクロスフェアに組み込むための方法は、当業者に公知である。
【0079】
ある実施形態において、抗菌安定特性を提供し、本開示のコポリマー中の他の物質の分散を補助する界面活性剤(例えば、リン脂質界面活性剤)もまた、添加され得る。
【0080】
上記のように、本開示のコポリマーは、医療デバイス、薬物送達デバイス、または基材(例えば、医療デバイス)のためのコーティングを形成するために使用され得る。
【0081】
構造的医療デバイスとして、本開示のコポリマーは、最終的にインビボで非毒性残基に分解する所望の用途のために充分な、特定の化学的特性、物理的特性、および機械的特性を有する物理的形態を提供する。
【0082】
本開示のコポリマーは、非毒性である。上記のように、それらの特定の物理的性質(大部分は、これらのコポリマーが調製され得る環状モノマーおよび芳香族環状カーボネートの性質によって影響を受ける)に依存して、本明細書中のコポリマーは、種々の移植可能な医療デバイスおよびプロテーゼの全体または一部分の製造において使用され得る。本開示のコポリマーを利用して調製され得る外科手術用物品および医療物品としては、火傷包帯;ヘルニアパッチ;薬物を添加された包帯;筋膜代用品;肝臓の止血のためのガーゼ、布、シート、フェルトまたはスポンジ;人工移植片または代用品;帯具;整形外科用のピン、クランプ、ねじ、およびプレート;クリップ;ステープル;フック、ボタン、およびスナップ;骨代用品(例えば、下顎骨プロテーゼ);子宮内デバイス(例えば、殺精子デバイス);排液または試験のための管または毛細管;外科手術用器具;脈管の移植物または支持体;椎間板;腎臓および心肺機械のための体外配管;人工皮膚;カテーテル;組織工学用途のための足場;縫合糸;縫合糸コーティングなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。縫合糸に適用される場合、本明細書中のコポリマーを含有するコーティング組成物は、適切な潤滑性、結び目の結び特性、および結び目の安全特性を有する縫合糸を生じる。
【0083】
ある実施形態において、上記コポリマーはまた、任意の必要に応じた医療薬剤と組み合わせて、従来の押出し成型技術または射出成型技術を使用して融解加工され得るか、あるいはこれらの製品は、適切な溶媒に溶解し、続いてデバイスを形成し、引き続いてエバポレーションまたは抽出によって溶媒を除去することにより、調製され得る。例えば、本開示のコポリマーが医療デバイスを形成するために使用される場合、これらのデバイスは、当業者の知識の範囲内の温度および圧力での射出成型によって作製され得る。代表的に、射出成型装置のための供給物は、ペレット形態での、本開示のコポリマーの溶融ブレンドであり得る。このコポリマーは、加工の間の加水分解を回避する目的で、射出成型される場合に十分に乾燥しているべきである。成型後、本開示のコポリマーから調製された、得られた外科手術用デバイスは、従来の手順によって梱包および滅菌され得る。残留応力およびひずみを除去するために、これらのデバイスをなまして、このデバイスの形状を安定化し、そして部品の欠陥を減少または排除することが望ましくあり得る。なましは、この医療デバイスをそのガラス転移温度より高温(この温度において、鎖の可動性が最大である)まで再度加熱する工程、次いで、このデバイスをゆっくりと次第に冷却する工程を包含し得る。ポリマー構造体をなますための手順、条件および装置は、当業者の知識の範囲内である。
【0084】
本開示のコポリマーはまた、フィルムおよび/または発泡体に形成され得、これが次に、治癒を補助するために、創傷(例えば、切り傷、深い傷、潰瘍および火傷)に適用され得る。医療薬剤(例えば、創傷治癒剤および抗菌剤)が、損傷した組織の治癒を速めるために組み込まれ得る。この様式で、種々の増殖因子、成長因子、抗生物質および抗真菌剤が、本開示のコポリマーと組み合わせられ得る。
【0085】
他の実施形態において、本開示のコポリマーは、医療デバイスにコーティングとして塗布され得る。本開示のコポリマーでコーティングされ得る適切な医療デバイスとしては、上に記載された任意の医療デバイスが挙げられる。ある実施形態において、本開示のコポリマーでコーティングされ得る医療デバイスとしては、外科手術用針、ステープル、クリップおよび他のファスナー、薬物送達デバイス、ステント、ピン、ねじ、プロテーゼデバイス、移植可能なデバイス、創傷帯具、吻合リング、ならびに繊維性外科手術用物品(例えば、縫合糸、プロテーゼ靭帯、プロテーゼ腱、織布メッシュ、ガーゼ、包帯、成長マトリックス)などが挙げられる。本発明の組成物でコーティングされた繊維は、他の繊維(吸収性または非吸収性のいずれか)と一緒に編まれるかまたは織られて、メッシュまたは布を形成し得る。
【0086】
本開示のコポリマーは、必要に応じて上記添加剤のいずれかと組み合わせて、当業者の知識の範囲内の任意の技術を使用して、基材にコーティングとして塗布され得る。本開示のコポリマーが医療デバイスのためのコーティングとして使用される場合、このコーティングは、任意の公知の技術(例えば、押出し成形、成形および/または溶媒キャスティング)を使用して形成され得る。このコポリマーは、単独で使用されても、他の吸収性組成物とブレンドされて使用されても、非吸収性成分とブレンドされて使用されてもよい。
【0087】
1つの実施形態において、本開示のコポリマーは、この組成物を、このコーティングが塗布される任意のポリマーデバイスに対する非溶媒である溶媒中に溶解することによって、コーティングとして塗布され得る。次いで、本開示のコポリマーを含有する溶液が、医療デバイスをこの溶液中に浸漬することによってか、医療デバイスをブラシまたは他のアプリケータに通すことによってか、あるいはこの溶液を医療デバイスの表面に噴霧することによって、この医療デバイスに塗布され得る。本開示のコポリマーを溶解する際に使用するために適切な溶媒としては、揮発性溶媒(例えば、塩化メチレン、アセトン、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、テトラヒドロフラン(THF)、これらの組み合わせなど)が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、コーティング溶液で湿らされた医療デバイスは、引き続いて、この溶媒を気化させて除去するために充分な時間および温度で、乾燥オーブン内を通されるかまたは乾燥オーブン内に保持され得る。所望であれば、縫合糸コーティング組成物は、必要に応じて、さらなる成分(例えば、上に記載された医療薬剤または類似の添加剤(染料、抗生物質、防腐剤、増殖因子、成長因子、抗炎症剤などが挙げられる))を含有し得る。
【0088】
本開示のコポリマーがコーティングとして使用されるために任意の添加剤と組み合わせられる場合、コポリマーとさらなる物質との両方が同じ溶媒に可溶性である場合は、溶液としてコーティングされるために適切な量のコポリマーおよび任意の添加剤が溶媒に溶解され、そして医療デバイスに塗布され得る。例えば、本開示のコポリマーは、揮発性有機溶媒(例えば、アセトン、メタノール、酢酸エチルまたはトルエン)の希薄溶液中に可溶化され得、次いで、物品がこの溶液に浸漬されて、この物品の表面をコーティングし得る。必要に応じて高温で溶媒を蒸発させると、コポリマーおよび任意の添加剤のコーティングが医療デバイス上に残る。
【0089】
溶液として塗布される場合、利用される溶媒の量は、本開示のコポリマーを塗布するために利用される溶液(任意のさらなる医療薬剤またはアジュバントを含む)の重量の約85重量%〜約99重量%、ある実施形態においては、約90重量%〜約98重量%であり得る。いくつかの実施形態において、この溶媒は、本開示のコポリマーを塗布するために利用される溶液の約95重量%で存在し得る。
【0090】
本明細書中のコポリマーは、任意の型の医療デバイスに塗布され得るが、このコポリマーは、縫合糸のためのコーティングとして特に有用であり得る。縫合糸に塗布されるコポリマーの量は、この縫合糸の構造(例えば、モノフィラメントであるかマルチフィラメントであるか、この縫合糸のサイズ、およびこの縫合糸の組成)に大いに依存して変化する。マルチフィラメント縫合糸について、フィラメントの数および編組または縒りの硬さもまた、コーティングの量に影響を与え得る。
【0091】
コーティングは、モノフィラメント縫合糸とマルチフィラメント編組縫合糸との両方に塗布され得、これらの縫合糸もまた、いくつかの実施形態においては、生体吸収性であり得る。縫合糸(生体吸収性編組縫合糸を含む)のために利用される適切な生体吸収性のモノマーおよびポリマーとしては、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、カプロラクタム、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。このコーティングは、ベースの縫合糸基材の約0.5%〜約15%(w/w)、ある実施形態においては、ベースの縫合糸基材の約1%〜約5%(w/w)の量で存在し得る。コーティングの厚さは、多数の要因に依存するが、代表的には、1ミクロン未満の厚さから数ミリメートルの厚さまでであり得る。
【0092】
他の実施形態において、本開示のコポリマーおよび任意の添加剤が互いに完全には混和性ではない場合、またはこれらのコポリマーと添加剤とを組み合わせるために利用される任意の溶媒と完全には混和性ではない場合、エマルジョンが形成され得、そして医療デバイス(薬物送達デバイスが挙げられる)または医療デバイスのためのコーティングを形成するために、当業者に公知の任意の手段によって利用され得る。例えば、医療薬剤が本開示のコポリマーと組み合わせられるがこのコポリマーと適合性ではない場合、この医療薬剤は、溶液中に置かれ得、そして本開示のコポリマーは、別の溶液中に置かれ得、そしてこれらの2つの溶液が組み合わせられて、エマルジョンまたは懸濁物を形成する。界面活性剤、乳化剤または安定剤の形態の生体適合性分散剤が、このブレンドに添加されて、本開示のコポリマー全体への医療薬剤の分散を補助し得る。
【0093】
アジュバントが添加されて、上記コポリマーを安定化または保護し得る。このようなアジュバントとしては、非イオン性界面活性剤(これには、アルコールエトキシレート、グリセロールエステル、ポリオキシエチレンエステル、および脂肪酸のグリコールエステルが挙げられる)が挙げられる。好ましい非イオン性界面活性剤は、ステアリン酸、オレイン酸、および/またはラウリン酸のグリセロールエステル、ならびに脂肪酸のエチレングリコールエステルおよび/またはジエチレングリコールエステルである。
【0094】
本開示のコポリマーは、医療デバイスのためのコーティングとして利用される場合、このデバイスの表面特性(例えば、細胞およびタンパク質の接着、潤滑性、薬物送達、タンパク質またはDNAの送達など)を改善し得る。コーティングとして使用される場合、本開示のコポリマーは、細菌の接着/コロニー形成、デバイス自体によって引き起こされるかまたは増悪される感染を防止すること、およびデバイスの取り扱い特性を改善することにおいて、特に有用であり得る。
【0095】
他の実施形態において、特に、本開示のコポリマーが薬物送達デバイスとして医療薬剤を送達するために利用される場合、ボールミル、ディスクミル、サンドミル、磨耗機、ロータステータミキサー、超音波処理などのプロセスによって、この医療薬剤を本開示のコポリマーと混合することが望ましくあり得る。他の実施形態において、コポリマーおよび任意の必要に応じた添加剤は、融解ブレンドされ得、そして医療デバイスを形成またはコーティングするために使用され得る。本開示のコポリマーを作製および使用するための他の方法は、当業者に容易に明らかになる。
【0096】
医療薬剤が本開示のコポリマーと組み合わせられる場合、本開示のコポリマーは、医療薬物の部位特異的放出(この放出は、即時放出であっても、遅延放出であっても、徐放であってもよい)を提供するための薬物送達デバイスとして利用され得る。即時放出システムは、薬物用量を即座に提供する。遅延放出システムは、薬物の繰り返しの断続的な投薬を提供する。徐放システムは、延長した時間にわたる薬物のゆっくりとした放出を達成し、そして標的部位での治療有効濃度の薬物を維持するべきである。本明細書中のコポリマーと混ぜられる医療薬物は、代表的に、本明細書中のコポリマーから形成された医療デバイスおよび/またはこれらのコポリマーから形成された任意のコーティングからの、これらのコポリマーが分解する際の拡散によって、遅延放出治療または徐放治療を提供する。
【0097】
上に開示された特徴および機能、ならびに他の特徴および機能の種々のものあるいはこれらの代替例が、望ましくは、他の多くの異なるシステムまたは用途に組み合わせられ得ることが理解される。また、現在は予測されていないかまたは予期されていない代替例、改変、バリエーションまたは改善は、当業者によって後になされ得、これらはまた、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。特許請求の範囲において具体的に記載されない限り、請求項の工程または構成要素は、任意の特定の順序、数、位置、大きさ、形状、角度、色、または材料に関して、本明細書または他の任意の請求項によって示唆も明示もされないべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
少なくとも1種の環状モノマーを芳香族環状カーボネートの存在下で重合させて、コポリマーを形成する工程;および
得られたコポリマーを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の環状モノマーが、環状エステルおよび環状カーボネートからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の環状モノマーが、グリコリド、L(−)−ラクチド、D(+)−ラクチド、メソ−ラクチド、p−ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される環状エステルを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の環状モノマーが、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルトリメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチロールプロパンモノカーボネート、4,6−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、および1,3−ジオキセパン−2−オン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される環状カーボネートを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族環状カーボネートが、式
【化1】

の芳香族環状カーボネートであり、該式において、Rは、ベンゼンを含む芳香族であり、Zは、COOを含み、そしてnは、約1〜約30の数である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族環状カーボネートが、式
【化2】

の芳香族環状カーボネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記芳香族環状カーボネートが、式
【化3】

の芳香族環状カーボネートであり、該式において、mは、約1〜約30の数である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の環状モノマーを前記芳香族環状カーボネートの存在下で重合させる工程が、該環状モノマーおよび該芳香族環状カーボネートを、約170℃〜約185℃の温度まで、約4時間〜約6時間にわたって加熱する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の環状モノマーを前記芳香族環状カーボネートの存在下で重合させる工程が、該環状モノマーおよび該芳香族環状カーボネートを、約175℃〜約180℃の温度まで、約4.25時間〜約4.75時間にわたって加熱する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コポリマーを、約100℃〜約120℃の温度まで、約25時間〜約35時間の範囲の時間にわたって加熱する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記コポリマーを、約107℃〜約113℃の温度まで、約28時間〜約32時間の範囲の時間にわたって加熱する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマー。
【請求項13】

【化4】

を有する、請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマーであって、該式において、
Wは、エステルおよびカーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
Aは、芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、
xは、約1〜約200の数であり、そして
yは、約1〜約200の数である、
コポリマー。
【請求項14】
Wが、前記コポリマーの総重量の約15重量%〜約75重量%を構成し、そして
Aが、該コポリマーの総重量の約20重量%〜約75重量%を構成する、
請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】

【化5】

を有する、請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマーであって、該式において、
Wは、エステルおよびカーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
xは、約1〜約200の数であり、そして
yは、約1〜約200の数である、
コポリマー。
【請求項16】

【化6】

を有する、請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマーであって、該式において、
Wは、エステルおよびカーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
xは、約50〜約150の数であり、そして
yは、約50〜約150の数である、
コポリマー。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマーを含有する、医療デバイス。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマーを含有する、薬物送達デバイス。
【請求項19】
請求項1に記載の方法によって生成されたコポリマーを含有する、医療デバイスのためのコーティング。
【請求項20】

【化7】

を有するコポリマーであって、該式において、
Wは、環状エステルおよび環状カーボネートからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、
xは、約1〜約200の数であり、
yは、約1〜約200の数であり、そして
Aは、式
【化8】

の芳香族環状オリゴマーカーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、式(I)において、Rは、ベンゼンを含む芳香族であり、Zは、COOを含み、そしてnは、約1〜約30の数である、
コポリマー。
【請求項21】
Wが、グリコリド、L(−)−ラクチド、D(+)−ラクチド、メソ−ラクチド、p−ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ジメチルトリメチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルトリメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチロールプロパンモノカーボネート、4,6−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、および1,3−ジオキセパン−2−オン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される環状モノマーから得られる誘導体であり、そして
Aが、式
【化9】

からなる群より選択される芳香族環状カーボネートから得られる芳香族カーボネート誘導体であり、該式において、mは、約1〜約30の数である、
請求項20に記載のコポリマー。
【請求項22】
Wが、前記コポリマーの総重量の約15重量%〜約75重量%を構成し、そしてAが、該コポリマーの総重量の約20重量%〜約75重量%を構成する、請求項20に記載のコポリマー。

【公開番号】特開2009−30051(P2009−30051A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181457(P2008−181457)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】