説明

カーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法並びにこれにより製造されたカーボンナノチューブ及び基板

【課題】カーボンナノチューブの分散性を改善する。
【解決手段】クラウンエーテルを有する重合体を基板にコーティングする段階; 基板にコーティングされたクラウンエーテルを有する重合体層を半乾燥状態に乾燥させる段階;及び、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを含む溶液を上記半乾燥状態の重合体層にコーティングする段階を含む、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法を提供する。本発明の方法により製造されたグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブはグアニジン基と水素結合可能な溶媒分子との水素結合により溶媒中に均一に分散される。また、グアニジン基はクラウンエーテルと選択的に結合され、こうした性質を利用してグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に一定の間隔で垂直に配列させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法並びにこれにより製造されたカーボンナノチューブ及び基板に関する。特に本発明は、カーボンナノチューブの分散性を改善するためカーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブをグアニジン基とクラウンエーテルとの結合を利用して基板に付着する方法、並びにこれにより製造されたカーボンナノチューブ及び基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes;CNTs)の分散はCNTsを利用する全ての前処理過程に必須的に要される。しかし、水あるいは陽性子性溶媒(protic solvent)にCNTsを分散する場合、炭素のみから成るCNTsは溶媒中に均一に分散されない。したがって、界面活性剤のような分散剤が使用される。即ち、CNTsは部分的にマイナス電荷を帯びるが、CNTsを均一に分散させるためには分散剤がCNTsを包囲してミセル(micelle)やインバースミセル(inverse micelle)を形成しなければならない。したがって、一定濃度以上の分散剤が使用されなければならない。分散剤としては非イオン系、陽イオン系、陰イオン系、高分子形態の分散剤など多様な分散剤が使用される。しかし、CNTsを包囲している分散剤はCNTsが利用される工程において不純物として作用する場合が多い。
【0003】
したがって、CNTs分散に使用される分散剤による後続工程における問題無しにCNTsを均一に分散させられる方法として、溶媒と直接作用できる官能基をCNTsに導入することになった。例えば、CNTsにカルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミン基を形成する方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1にはCNTsにカルボキシ基を形成する方法が、そして特許文献2及び特許文献3にはCNTsにアミン基を形成する方法が開示されている。CNTsに親水性官能基であるカルボキシ基(-COOH)が導入されるとカルボキシ基とH-O-Hの水分子との水素結合によりCNTsが水分子で包囲され、CNTsは分散剤無しでも水から一定の距離を維持しながら均一に分散される。アミン基もまた親水性官能基として水分子と水素結合し分散状態になるようにする。
【0005】
しかし、カルボキシ基またはアミン基の形成されたCNTsは、溶液中に金属陽イオンが存在する場合には金属陽イオンとカルボキシ基またはアミン基とのキレーション反応を起こしかねないので好ましくない。
【特許文献1】米国特許第6368569号明細書
【特許文献2】米国特許第6187823号明細書
【特許文献3】米国特許第6331262号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、カーボンナノチューブに溶液中に存在する金属陽イオンとキレーション反応を起こさないグアニジン基を形成する方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、カーボンナノチューブの分散性をより増大させるための方法としてカーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、上記グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、上記カーボンナノチューブが付着された基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一視点によると、カーボンナノチューブにカルボキシ基を形成する段階;及びカーボンナノチューブに形成されたカルボキシ基にグアニジン基を形成する段階;を含むカーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法を提供する。
【0012】
本発明の他視点によると、化1の部位(moiety)が少なくとも一つ以上結合したものを特徴とするカーボンナノチューブを提供する。
【化1】

【0013】
本発明の他視点によると、クラウンエーテルを有する重合体を基板にコーティングする段階; 基板にコーティングされたクラウンエーテルを有する重合体層を半乾燥状態に乾燥させる段階;及びグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが分散している溶液を上記半乾燥状態の重合体層にコーティングする段階;
を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の視点によると、クラウンエーテルを有する重合体とグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブとを反応させ、クラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を製造する段階;及び製造されたクラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を基板にコーティングする段階;を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法を提供する。
【0015】
また、本発明のさらに他の視点によると、クラウンエーテルを有する重合体を半乾燥したフィルムに製造する段階;及び上記半乾燥したフィルムにグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが分散している溶液をコーティングする段階;を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法を提供する。
【0016】
また、本発明のさらに他の視点によると、クラウンエーテルを有する重合体とグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブとを反応させ、クラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を製造する段階;及び製造されたクラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を半乾燥したフィルムに製造する段階;を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法を提供する。
【0017】
また、本発明の他の視点によると、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが分散している溶液に陽極酸化アルミニウム基板を陰極に沈漬して電気泳動あるいは電気メッキし、グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが陽極酸化アルミニウム基板の空隙に挿入され付着する方法を提供する。
【0018】
また、本発明の他の視点によると、基板;クラウンエーテルを有する重合体層;及び、化2の部位が少なくとも一つ以上結合されたカーボンナノチューブのコーティング層で成ることを特徴とするカーボンナノチューブが付着された基板を提供する。
【化2】

【0019】
また、本発明の他視点によると、基板;及び、クラウンエーテルを有する重合体と化3の部位が少なくとも一つ以上結合されたカーボンナノチューブの反応による重合体層から成ることを特徴とするカーボンナノチューブが付着された基板を提供する。
【化3】

【0020】
さらに、本発明の他の視点によると、陽極アルミニウム基板(Anodized Aluminum Oxide)及び上記基板の空隙に挿入された化4で表示される部位を少なくとも一つ以上結合されたカーボンナノチューブから成るカーボンナノチューブが付着された基板を提供する。
【化4】

【発明の効果】
【0021】
本発明の方法によりグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが製造され、これはグアニジンと水素結合できる溶媒との水素結合により溶媒中に均一に分散される。また、電荷が分配されることのできる3個の窒素原子が存在するので均一な電荷分配による静電気的相互作用により溶媒中に均一に分散される。グアニジン基はクラウンエーテルと選択的に結合され、こうした性質を利用してグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に一定の間隔で垂直に配列させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0023】
本発明はカーボンナノチューブが溶媒中に均一に分散されるようカーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法に関するものである。本発明の方法によりグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブは別途の分散剤を使用しなくてもグアニジン基と水素結合可能な溶媒に均一に分散される。また、溶媒中に金属陽イオンが存在する場合にも、本発明のグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブは金属陽イオンとキレーション反応を起こさない。
【0024】
カーボンナノチューブの製造方法と壁(wall)の数に応じて分類できるが、壁数に応じて分類する場合単一壁(single walled)及び多重壁(multi walled)カーボンナノチューブがあり、製造方法により分類する場合CVD(chemical vapor deposition)法で形成されたカーボンナノチューブとアーク-ディスチャージ(arc-discharge)法で形成されたカーボンナノチューブがあり、各方法別に単一壁及び多重壁カーボンナノチューブを、即ち各々2種のカーボンナノチューブを形成することができる。本発明においてはこうしたカーボンナノチューブのいずれを使用してもよい。
【0025】
先ず、グアニジン基が形成されることのできる作用点を提供するようCNTsにカルボキシ基が形成される。CNTsにカルボキシ基を形成する反応は一般のものとして、例えば硝酸と硫酸が3:1の体積比で混合された混合酸に混合酸の体積:CNTs重量の比が8000:1となるようCNTsを添加して一定の温度に加熱しソニケーション(sonication)しながら反応させることによりCNTsに-COOH基が形成される。-COOH基の形成と同時に-OH基も附随的に形成される。この際、CNTsの量は±20%範囲で加減することができる。
【0026】
CNTsは安定した炭素同士の結合から成るので安定したC-C結合を解離させ、これに異なる官能基を導入するためには高い活性化エネルギーを必要とする。したがって、反応の際加熱、具体的には約50-60℃に加熱し、さらにソニケーションしながら約22-26時間、好ましくは24時間にかけて反応させる。温度が50℃より低いと反応に必要な活性化エネルギー状態に到達しないので反応が進まず、60℃を超過することは経済的でない。22時間未満で反応させる場合は、CNTsにおいてC-Cの結合が充分に解離されず解離されたC-C結合が酸化されないので好ましくなく、26時間を超過してもC-C結合の解離が促進されるわけではない。
【0027】
加熱及びソニケーションすることによりC-C結合の振動エネルギーが増加しC-C結合の解離が促進される。とりわけ、CNTsの末端部分あるいは欠陥(defect)部分においてC-C結合が解離される。CNTs表面には非偏在化されているπ電子らが存在するのでC-C結合が解離され易い。一方、CNTs末端部分の炭素は通常2〜3個の結合のみで、それ自体不安定な状態なので反応性が高くC-C結合が解離され易い。こうしたC-C結合の解離によりCNTsは一定の大きさに切断される。
【0028】
C-C結合が解離されながら結合していた電子らが一方へ偏りC、Cが形成されたり、あるいは電子らが両炭素に等しく分けられラディカルイオンが形成される。硝酸と硫酸自体も反応性が高く、解離された炭素イオンや炭素ラディカルもやはり不安定な状態として反応性が大変高い状態であるので反応が進まれ易い。したがって、C-C結合の解離されたCNTs部位に、酸化反応により-COOH基が形成され、また附随的に-OH基も形成される。酸化は使用された硝酸及び硫酸により行われるようになる。
【0029】
上記のように-COOHの形成されたCNTs(以下、「CNTs-COOH」という)は-COOHとグアニジン基を有する化合物のグアニジン基とのアミド形成あるいはペプタイド形成反応により-COOHにグアニジン基が結合される。CNTs-COOHにグアニジン基は次の反応メカニズムにより形成される。
【化5】

【0030】
このように上記化5により少なくとも一つ以上の化6の部位が結合されたカーボンナノチューブが形成され、結合される化6の部位の数は特に限定されるわけではないが、当量比で1:1〜1:2(カーボンナノチューブ:化6の部位)となることができる。カーボンナノチューブ:化6の部位が1:2で結合する場合はグアニジン基の当量数が過量添加されるかカップリング剤が過量添加される場合に発生することができる/しかねない。
【化6】

【0031】
CNTs-COOHとグアニジン基を有する化合物(以下、「グアニジン反応物」という)を非活性雰囲気、これに限定するわけではないが窒素あるいはアルゴン雰囲気において反応させる。この際、-COOHとグアニジン基がアミン形成反応するようカップリング剤を添加する。グアニジン反応物としては、これに限定されるわけではないが、下記化7のグアニジン、化8のシアノグアニジンまたは化9のグアニジンチオシアナイドが使用されることができる。
【0032】
グアニジン反応物とCNTs-COOHは2:1当量比で反応するので、これに鑑みてグアニジン反応物とCNTs-COOHを反応させる。例えば、上記当量比に比してグアニジン反応物の量がCNTs-COOHより多くカップリング剤が残ると、未反応グアニジン反応物とカップリング剤の反応により副産物が生成されかねない。
【化7】

【化8】

【化9】

【0033】
カップリング剤としては1-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-3-エチル-カルボイミドヒドロクロリド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、蓚酸または蓚酸クロリドが使用されることができる。
【0034】
グアニジン基の形成は、CNTs-COOH、グアニジン反応物及びカップリング剤を溶媒中で25℃〜50℃において攪拌しながら6〜10時間にかけて反応させて行う。反応温度が25℃より低いと反応に必要な活性化エネルギーが提供されないので好ましくなく、50℃を超過すると反応に必要な活性化エネルギーが増加し反応が速くなりはするが、分子が解離(dissociation)されかねないので好ましくない。反応時間が6時間未満であると分子らの反応に必要な活性化エネルギーが提供されないので好ましくなく、10時間を超過すると分子同士の反応において過反応(over reaction)が起こり、副反応物が生成されることもあり、所望の分子の安定性も劣るので好ましくない。
【0035】
カップリング剤は一種の触媒として作用するものなので、一般的な触媒の使用量で使用されることができる。例えば、本発明においてカップリング剤は1当量のCNTs-COOHに対して0.4〜0.5当量で使用されることができる。カップリング剤が0.4当量未満で使用されるとカルボニル基の活性化が低調でグアニジン基の形成されたCNTsの収率が低調で、0.5当量を超過すると非経済的である。グアニジン基形成の際溶媒にはジクロロメタンが使用される。
【0036】
CNTsにカルボキシ基及びグアニジン基を導入するにあたって、CNTsの洗浄、反応の中和、濾過、分離、不純物の除去など反応において一般に付随する工程はこの技術分野において通常のもので、必要に応じて任意に行うことができる。
【0037】
グアニジン基は炭素中心に単一結合で二つののNHが、そして二重結合で一つのNHが結合された物質として、pKaまたはpH値の大きい塩基性官能基である。グアニジン基は電荷密度が高いか高密電子対を有し、電荷が分配されることのできる3個の窒素原子が存在するので、従来のカルボキシ基またはアミン基の形成されたCNTsより電荷がより均一に分配され溶媒中により効果的に分散される。また、グアニジン基は溶液のpH変化に応じて電荷を帯びるようにする場合3個の窒素に電荷が均一に分配されて存在することができるので相互同志の静電気的相互作用により水溶液などに均一に分散される。酸性溶液中グアニジン基の電荷分配を下記化10に示した。
【化10】

【0038】
したがって、グアニジン基の形成されたCNTs(以下、「CNTs-CO-(NH)NH」という)は、グアニジン基と溶媒の相互作用による水素結合または電荷分離によるCNTs-CO-(NH)NHの静電気的相互作用による電荷的な反発力のため、ある程度の距離でCNTsが溶媒分子と、またCNTsとの相互作用距離を維持するので均一に分散された状態で存在するようになる。
【0039】
即ち、上記グアニジン基の形成されたCNTsはグアニジン基と水素結合が可能な如何なる溶媒、例えば水(例、deionized water(脱イオン水)または3rd distilled water(3次蒸留数)またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールのような陽性子性溶媒に一定の間隔で均一に分散されながら存在する。
【0040】
CNTsにグアニジン基が形成されたか否かはFT-IR、ラマンあるいはXPS分析により確認することができる。一方、グアニジン基はクラウンエーテル分子と選択的に結合し、こうした性質を利用してグアニジン基の形成されたCNTsを基板に一定の間隔で均一に垂直配列されるよう付着させることができる。
【0041】
したがって、本発明は上記のように少なくとも一つ以上の化6の部位が結合されたCNTsが付着されることを特徴とする基板を提供する。
【0042】
下記に本発明によりグアニジン基の形成されたCNTsを基板に付着させる方法を詳しく説明する。環形のクラウンエーテル分子と三脚形態のグアニジンは立体同士が鍵と錠の関係のように相応し、静電気的相互作用による影響においても大変相応することができるので選択的に結合される。
【0043】
即ち、クラウンエーテルとグアニジン基の分子認知(molecular recognition)現象によるエーテル分子の酸素の非共有電子対とグアニジン分子の水素との静電気的相互作用による水素結合及び寸法効果によって、クラウンエーテルとグアニジンは外部の駆動力(driving force)無しでも自発的に結合される。クラウンエーテルとグアニジン基が一体化した結合状態を示す分子モデル写真を図1a及び図1bに示した。
【0044】
グアニジン基の形成されたCNTsを基板に一定の間隔で付着させる方法において基板としては、銅、アルミニウムまたはニッケル金属板またはクラウンエーテル基を有する重合体フィルムまたはクラウンエーテルとグアニジンの結合物を有する重合体フィルムが使用されることができる。グアニジン基の形成されたCNTsを金属基板に付着させる場合に、CNTs-CO-(NH)NHのグアニジン基とクラウンエーテルが反応できるようにCNTs-CO-(NH)NHを基板に付着させる前に基板にクラウンエーテルを有する重合体をコーティングする。または、クラウンエーテルを有する重合体とCNTs-CO-(NH)NHを反応させクラウンエーテルとグアニジン結合物を有する重合体を形成し、これを基板にコーティングすることによりCNTsが垂直配列された基板を製造することができる。クラウンエーテルを有する重合体フィルムに付着したCNTsまたはCNTs-CO-(NH)NHのグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有する重合体フィルムは可撓性(flexible)が要される電子機器、例えば表示装置などに使用されることができる。
【0045】
クラウンエーテルを有する重合体はクラウンエーテルと重合体を溶媒に分散させ常温(約20〜25℃)において約2-5時間にかけて攪拌しながら反応させて形成する。反応時間が2時間未満であると、重合の際高分子と称され得る質量範囲でなくオリゴマーやそれに相応する程度の質量を有する物質が形成されるので好ましくなく、反応時間が5時間を超過すると非経済的である。
【0046】
クラウンエーテルとしては、これに限定するわけではないが、例えば下記化11の18-メンバークラウン-エーテル、化12のジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル及び化13のジベンゾ-24-メンバークラウン-エーテルが使用されることができる。
【化11】

【化12】

【化13】

【0047】
上記化11ないし13のクラウンエーテルの分子の大きさは上記化7ないし9のグアニジンとの結合に適している。
【0048】
重合体としてはポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリチフェネス(polythiphenes)、ポリピロール、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)の混合物及びポリ(4-ビニルフェノール)から成る群から選択された伝導性重合体またはポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリスチレン(PS)またはこれらの誘導体が使用されることができる。上記重合体の誘導体は高分子の電子移動性(electron mobility)を増加させるためにドーパントなどが結合されたものをいい、これは本技術分野において一般的である。ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸) (PEDOT:PSS)の混合物はBaytron Pと称されBayer社が市販しているもので、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)が約4:6で混合されたものである。
【0049】
伝導性の大きい金属基板の場合には上記一般重合体を使用でき、伝導性の低調な金属基板にクラウンエーテルを有する重合体またはクラウンエーテルとグアニジン結合物を有する重合体をコーティングする場合には、上記一般重合体を使用してもよいが、伝導性重合体を使用する方が好ましい。クラウンエーテルを有する重合体フィルム自体が基板に使用されるか、あるいはCNTs-CO-(NH)NHのグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有する重合体のフィルムが利用される場合には、上記伝導性重合体が使用される。これは、CNTsが付着した組立体は電界放出素子(Field Emission Device)あるいは表示装置などの電子機器に使用されるため伝導性が要されるからである。
【0050】
金属基板自体の伝導性は金属基板の製造の際添加されるドーパントなどにより異なりかねなく、これは本技術分野の技術者に一般的に周知される事項であり、本技術分野の技術者は金属基板の伝導性及び電子機器が要する伝導性の程度に応じて必要な伝導性重合体を適切に選択して使用することができる。クラウンエーテルを有する重合体の製造の際溶媒としてはピリジンまたはピロリジンが使用されることができる。
【0051】
重合体とクラウンエーテルは重合体100重量部当たりクラウンエーテル10〜20重量部で反応させる。クラウンエーテル含量が10重量部未満であると重合体の側鎖(side chain)にクラウンエーテルが生成される比率が低下するのでコーティング時などに表面にクラウンエーテルが所望の間隔毎に望むとおり生成されないおそれがある。クラウンエーテル含量が20重量部を超過すると重合体の側鎖にクラウンエーテルが過度に形成されたり側鎖でない他の位置にクラウンエーテルが付着する確立が高くなるので好ましくない。
【0052】
クラウンエーテルを有する重合体は金属基板にコーティングされるか、CNTs-CO-(NH)NHと反応してクラウンエーテルとグアニジン結合物を有する重合体に製造されるか、あるいはフィルムに製造される。コーティング及びフィルムの製造はこの技術分野において周知される如何なる方法からでも行うことができ、特に限定されるわけではない。コーティングは本技術分野において一般的に知られている如何なるコーティング方法からでも行うことができ、これらに限定されるわけではないが、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、噴霧コーティング、フローコーティングまたはスクリーン印刷などの方法により行うことができる。フィルムは主に印刷法(Printing)で製造することができる。
【0053】
コーティングは金属基板の一面に約200〜1000μm程度の厚さになるよう行う。フィルムは約1mm〜2mm厚さのフィルムに製造される。CNTsの付着においてコーティング層及びフィルムの厚さは特に制限されないが、CNTs付着後電界放出素子や他電子機器(electronic device)に利用するためにはコーティング層の厚さやフィルムの厚さに応じて伝導度(conductivity)あるいは抵抗(resistance)に影響を及ぼすので上記厚さのコーティング層あるいはフィルムに形成することが好ましい。
【0054】
上記クラウンエーテルを有する重合体のコーティング層あるいはフィルムはB-段階の半乾燥状態となるよう乾燥させる。ここで半乾燥とは部分乾燥を意味するもので、これは約50〜80℃において約3〜10時間にかけて行うことにより形成することができる。
【0055】
その後、上記半乾燥した状態のコーティング層またはフィルムにCNTs-CO-(NH)NHが分散した溶液をコーティングする。CNTs-CO-(NH)NHが分散した溶液はCNTs-CO-(NH)NHを上記水またはアルコールなどの陽性子性溶媒に分散させて製造する。この際、溶液中CNTsに付着されているグアニジン基はコーティング層中のクラウンエーテルと反応するので、溶媒中にCNTs-CO-(NH)NHはクラウンエーテルを有する重合体重量の1/100〜1/500の量で分散されるが、こうした量に限定する理由は後述するとおりである。
【0056】
半乾燥状態のクラウンエーテルを有する重合体コーティング層またはフィルムにCNTs-CO-(NH)NHが分散している溶液をコーティングすることにより、クラウンエーテルとグアニジン基が結合してCNTsが基板に一定の間隔で垂直な配列を成しながら付着される。
【0057】
グアニジンとクラウンエーテルとの反応は自己組立による方式(分子認知方法)であり別途の外部条件を必要としない。したがって、クラウンエーテルを有する重合体コーティング層あるいはフィルムにCNTs-CO-(NH)NHが分散している溶液をコーティングすることによりクラウンエーテルとグアニジンが自発的に結合される。即ち、常温(例えば20〜25℃)及び中性pHにおいてクラウンエーテルとグアニジンは自発的に反応して結合される。
【0058】
また、CNTsが一定の間隔で垂直配列された基板は、グアニジン基の形成されたCNTsとクラウンエーテルを有する重合体を反応させグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有する重合体に製造した後、これを基板にコーティングすることにより、あるいはグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有する重合体をフィルムにして製造することができる。
【0059】
即ち、上記のように製造されたクラウンエーテルを有する重合体とCNTs-CO-(NH)NHを溶媒に添加し常温において20〜40分間攪拌して反応させることによりCNTsのグアニジン基とクラウンエーテルが結合され、グアニジンとクラウンエーテルの結合物を有する重合体が形成される。溶媒としてはピリジン、ピロリジン、メチレンクロリドなどが使用されることができる。この際、溶媒中にCNTs-CO-(NH)NHはクラウンエーテルを有する重合体重量の1/100〜1/500の量で使用することができる。CNTsはナノ単位の大きさを有するもので大変少ない重量にも多数のCNTsが含まれており、上記範囲の量で使用することにより重合体に結合されたクラウンエーテルと反応するのに充分である。また、電界放出素子に使用する場合にも放出地点密度(emission site density)の調節の際単位面積当たり過多なCNTが存在しても電子放出に良くない影響を与えかねないので、CNTs-CO-(NH)NHを上記範囲の量で使用することが好ましい。一方、CNTs-CO-(NH)NHが下限値より少量で使用されると配列されるCNTs数が少なくなるので電界放出素子または電子機器に使用する際最大の効果を奏せないこともあるので好ましくなく、上限値を超過すると表面に存在するクラウンエーテル数は限定されているのでクラウンエーテルと反応しないCNTsの浪費を招き非経済的である。
【0060】
その後、CNTs-CO-(NH)NHのグアニジンとクラウンエーテルの結合物を有する重合体を基板にコーティングし乾燥させることによりCNTsが一定の間隔で垂直に 配列された基板が製造される。コーティングは上記した方法と同一な方法で行うことができる。
【0061】
上記CNTs-CO-(NH)NHのグアニジンとクラウンエーテルの結合物を有する重合体を上記のようにフィルムに製造することによっても、CNTsが一定の間隔で垂直に配列された基板を製造することができる。
【0062】
また、CNTs-CO-(NH)NHを電気泳動または電気メッキ方式で陽極酸化アルミニウム(Anodized Aluminum Oxide;AAO)に形成された微細空隙に挿入させるようにして陽極酸化アルミニウム基板にCNTs-CO-(NH)NHが均一に配列されるよう付着することができる。陽極酸化アルミニウムは如何なる方法により製造された陽極酸化アルミニウムを使用してもよい。
【0063】
陽電荷を帯びたCNTsは陰極に設けられたAAOテンプレート(template)の深さ500nm〜700nm程度の空隙内に電気泳動または電気メッキにより挿入され、この際D.C.20〜50Vの電流を印加して10〜20分間行われる。AAOテンプレートを使用した電気泳動または電気メッキはpH3-5の酸性溶液中において行うことが、CNTs-CO-(NH)NHの電荷特性(charge character)が大きくなりAAOテンプレートに移動しやすいので特に好ましい。
【0064】
即ち、電気泳動あるいは電気メッキでAAO空隙にCNTsを挿入する場合、CNTsに極性官能基が存在しなければ電気泳動あるいは電気メッキの際電流を加えても CNTsが移動する程度及び強さが少なくなる。
【0065】
しかし、本発明のCNTs-CO-(NH)NHにおいて極性官能基であるグアニジン基はCNTsに電流を加える際基板であるAAOへより容易に移動できるばかりでなく本発明の方法で製造されたCNTs-CO-(NH)NHは従来の分散剤の使用の際分散剤で包囲されたCNTsより大きさも小さく、電荷的な面においても影響力が大きいのでAAOにCNTs-CO-(NH)NHを電気泳動あるいは電気メッキで付着させる場合AAOテンプレート(template)の微細気孔にCNTsが垂直に挿入される。
【0066】
また、グアニジン基が導入されたCNTsはpHの変化に応じて他形態の電荷を帯びるので、CNTsを付着させたい基板の種類に応じてpH値を変化させながらCNTsを付着させることができる。
【0067】
以下、実施例を通して本発明に対してより詳しく説明する。
【実施例1】
【0068】
40mgのMWNTs(Iljin Nanotech Co., Ltd.(Korea)社製造)を60MlのHSOと20mlのHNOの混合物に添加して50℃においてウルトラソニケーション(ultra-sonication)しながら24時間反応させた。ソニケーションは約30kHzで行った。反応が完了した溶液は強酸なので脱イオン水を使用して中性になるまで希釈してから減圧フィルターで濾過した。
【0069】
濾過紙としては0.5〜1μmの空隙の大きさを有するフィルターペーパーを使用した。pHが中性になるまで脱イオン水で数回希釈及び洗浄した。pHはリトマス紙で測定した。中和させた後MWNTs-COOH溶液を80℃において6時間にかけて乾燥させた。その後、乾燥したMWNTs-COOHにCOOH基が形成されたか否かをFT-IRで確認し、その結果を図2に示した。図2から分かるように、1700cm-1においてC=Oピークが、そして3300cm-1において0-Hピークがあらわれ、これからCNTsに-COOH基が形成されたことを確認した。
【実施例2】
【0070】
上記実施例1において製造された10mgのMWNTs-COOH、20mgのグアニジン及び5mlの2M濃度の蓚酸をアルゴン非活性雰囲気下においてジクロロメタンに溶解させアルゴン非活性雰囲気において50℃で約6時間にかけて反応させMWNTsに形成された-COOH基にグアニジン基を形成した。反応後、濾過して副産水を除去し下記化14に示された反応生成物であるMWNTs-CO-(NH)NHを得た。濾過紙としては0.5〜1μmの空隙の大きさを有するフィルターペーパーを使用した。
【化14】

【実施例3】
【0071】
上記実施例2において製造されたMWNTs-CO-(NH)NHの分散性を測定した。
分散性は官能基を有さないMWNTsとMWNTs-CO-(NH)NHの分散安定度及び分散状態をタービスカン(turbiscan)で測定し評価した。
【0072】
分散安定性は、粒子が溶媒において粒子同士あるいは溶媒と相俟って一定の間隔でどれだけ長時間安定した状態を維持するかを意味する。分散安定性は時間経過による透過率(transmittance)の平均値変化で評価した。
【0073】
分散状態は粒子が一定の時点において測定容器内にどれだけ均一な分散程度で分散されているかを示すもので、粒子が沈降したり凝固しない程度を示す指数である。分散状態は同一時間において測定した透過率の最大値と最小値の差で評価した。
【0074】
官能基を有さない5mgのMWNTsを100mlのD.I.水に30kHzでソニケーションして分散させた溶液に近赤外線(Near Infrared)を12時間にかけて照射し、タービスキャンで12時間にかけて1時間の間隔で写したグラフを図3に示し、これから官能基の形成されないMWNTsが数溶液中に分散された状態の分散安定度と分散状態を評価した。図3から分かるように、分散安定度は12時間にかけて28.82%の透過度変化率を示し、分散状態は12.66%の透過度変化率を示した。また、時間経過によってMWNTsが沈降したりMWNTs同士凝固して大粒子を形成した。
【0075】
グアニジン基の形成された5mgのMWNTsを100mlのD.I.水に30kHzでソニケーションして分散させた溶液に近赤外線(Near Infrared)を12時間にかけて照射し、タービスキャンで12時間にかけて1時間の間隔で写したグラフを図4に示した。図4から分かるように、透過率変化が大変微々しく図上では差が見られないが、数値で記述すると分散安定度は12時間にかけて4.974%の透過度変化率を示し、分散状態は1.205%の透過度変化率を示した。即ち、官能基の無いMWNTsの場合、最初と12時間経過による透過率の平均値の差が28.82%、そして同一時間において測定した透過率の最大値と最小値の差が12.66%であったが、MWNTs-CO-(NH)NHが分散している水溶液はこれらの値が各々より小さく、このことからMWNTs-CO-(NH)NHの分散安定度は5.79倍、そして分散状態は10.5倍増加し、より優れた分散性を示すことがわかる。
【実施例4】
【0076】
5gのポリスチレン重合体と1gのジベンゾ-18-クラウン-6-エーテルを500mlのピリジンに溶解し、室温においてマグネティック攪拌機により200rpmで攪拌しながら約5時間にかけて反応させた。反応物に500mlの脱イオン水を添加する。脱イオン水の添加により形成されたクラウンエーテルを有するポリスチレンは脱イオン水に、そして未反応物など副産物はピリジン溶媒に分散させる。脱イオン水とピリジンは密度が異なるので、これらの密度差を利用して分液漏斗で脱イオン水とピリジン溶媒を分離しクラウンエーテルを有するポリスチレンと未反応副産物を分離し、ピリジン溶媒は蒸留除去して下記化15のクラウンエーテルを有するポリスチレン重合体を得た。
【化15】

【0077】
上記得られた化15の生成水を1mm厚の銅基板の一面に200ミクロン厚の薄膜でスピンコーティングした。これを50℃においてB-段階の半乾燥状態となるよう乾燥させた。
【0078】
その後、上記実施例2において製造された10mgのMWNTs-CO-(NH)NHを100mlのエタノールに分散させ、これを上記半乾燥状態のコーティング層に200μm厚でスピンコーティングしコーティング層中のクラウンエーテルとグアニジン基が反応して基板にMWNTsが一定の間隔で垂直に配列されるようにする。基板上にMWNTsが一定の間隔で垂直に配列された状態を図5に示した。
【実施例5】
【0079】
上記実施例4において製造された化15のクラウンエーテルを有する5gのポリスチレン重合体を500mlのピリジンに添加してマグネティック攪拌機により200rpmで攪拌し分散させた。その後、これに上記実施例2において製造されたMWNTs-CO-(NH)NH 10mgを添加してマグネティック攪拌機により100rpmで弱く攪拌しながら約30分間反応させた。反応の経過につれて図1bに示すようにMWNTsに付着されているグアニジン基がクラウンエーテル内に挿入され、グアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有するポリスチレン重合体が得られる。
【0080】
上記反応物に脱イオン水を添加するにつれて形成されたグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有するポリスチレン重合体は脱イオン水に、そして未反応物など副産物はピリジン溶媒に分散される。脱イオン水とピリジンは密度が異なるので、これらの密度差を利用し分液漏斗で脱イオン水とピリジン溶媒を分離しグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有するポリスチレン重合体と未反応副産物を分離し、ピリジン溶媒は蒸留除去することによりMWNTs-CO-(NH)NHのグアニジン基がクラウンエーテル内に挿入されグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有するポリスチレン重合体を得た。
【0081】
得られたクラウンエーテルとグアニジンの結合物を有する重合体を1mm厚のニッケル基板に200μm厚でスピンコーティングして70℃において乾燥させることにより、MWNTsが一定の間隔で均一に垂直配列された基板が得られる。
【実施例6】
【0082】
上記実施例4において製造された化15のクラウンエーテルを有するポリスチレン重合体を1.5mm厚のフィルムに製造し50℃においてB-段階半乾燥させた。その後、上記重合体フィルムに上記実施例2において製造された10mgのMWNTs-CO-(NH)NHを100mlのエタノールに分散させ、これを上記半乾燥状態のフィルムに200μm厚でスピンコーティングした。コーティング後、コーティング層中のクラウンエーテルとグアニジン基が反応して重合体フィルムにMWNTsが一定の間隔で垂直に配列された。
【実施例7】
【0083】
上記実施例5において製造されたグアニジン基とクラウンエーテルの結合物を有するポリスチレン重合体を1.5mm厚のフィルムに製造し、70℃において乾燥させることによりMWNTsが一定の間隔で垂直に配列された重合体フィルムが得られた。
【実施例8】
【0084】
直径が約600nmの空隙(pore)を有するAAOテンプレートを陰極に、Pt電極を陽極に、そして200mlの脱イオン水に実施例2において製造された10mgのMWNTs-CO-(NH)NHを溶解させた溶液を用いて、40VのD.Cを加え電気泳動を施した。電気泳動は約15分間行った。電気泳動によりMWNTs-CO-(NH)NHがAAOテンプレート上の空隙へ移動して挿入されMWNTs-CO-(NH)NHが空隙内に垂直に挿入された基板が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1a】ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテルとグアニジン間の分子認知状態を示す分子モデル写真である。
【図1b】図1aの3次元分子モデルを示す図である。
【図2】実施例1において製造されたカルボキシ基を有するカーボンナノチューブのFT-IRスペクトルを示す図である。
【図3】近IR分光法を利用した、官能基が形成されないカーボンナノチューブの分散状態を示すグラフである。
【図4】グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの分散状態を示すグラフである。
【図5】MWNTsが均一な間隔で垂直に配列された基板を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブにカルボキシ基を形成する段階と、
カーボンナノチューブに形成されたカルボキシ基にグアニジン基を形成する段階と
を含むカーボンナノチューブにグアニジン基を形成する方法。
【請求項2】
上記カルボキシ基を形成する段階は、硝酸と硫酸が3:1の体積比で混合された混合酸にカーボンナノチューブを添加し50〜60℃においてソニケーションしながら22〜26時間反応させることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記グアニジン基を形成する段階は、カルボキシ基が形成されたカーボンナノチューブ、グアニジン基を有する化合物及びカップリング剤を溶媒に添加し、非活性雰囲気下において25℃〜50℃で6〜10時間にかけて反応させることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記グアニジン基を有する化合物は、グアニジン、シアノグアニジン及びグアニジンチオシアナイドから成る群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記カップリング剤としては、1-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-3-エチル-カルボイミドヒドロクロリド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、蓚酸または蓚酸クロリドが使用されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
上記カップリング剤は、カルボキシ基の形成されたカーボンナノチューブ1当量に対して0.4〜0.5当量で使用されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
化1の部位が少なくとも一つ以上結合されることを特徴とするカーボンナノチューブ。
【化1】

【請求項8】
クラウンエーテルを有する重合体を基板にコーティングする段階と、
基板にコーティングされたクラウンエーテルを有する重合体層を半乾燥状態に乾燥させる段階と、
グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが分散している溶液を上記半乾燥状態の重合体層にコーティングする段階と
を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法。
【請求項9】
クラウンエーテルを有する重合体及びグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを反応させクラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を製造する段階と、
製造されたクラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を基板にコーティングする段階と
を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法。
【請求項10】
クラウンエーテルを有する重合体を半乾燥されたフィルムに製造する段階と、
上記半乾燥されたフィルムにグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを含む溶液をコーティングする段階と、
を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法。
【請求項11】
クラウンエーテルを有する重合体及びグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを反応させクラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体を製造する段階と、
製造されたクラウンエーテルとグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブの結合物を有する重合体をフィルムに製造する段階と
を含むグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法。
【請求項12】
上記クラウンエーテルを有する重合体は、重合体100重量部当たりクラウンエーテル10〜20重量部を溶媒に分散させ、常温において2〜5時間攪拌することにより形成されることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
上記溶媒は、ピリジンまたはピロリジンであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記クラウンエーテルは、下記化2の18-メンバークラウン-エーテル、化3のジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル及び化4のジベンゾ-24-メンバークラウン-エーテルから成る群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項15】
上記重合体は、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリチフェネス(polythiphenes)、ポリピロール、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)の混合物、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリメチルメタクリレート及びポリスチレン及びその誘導体から成る群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
上記重合体は、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリチフェネス(polythiphenes)、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)の混合物及びポリ(4-ビニルフェノール)及びその誘導体から成る群から選択されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項17】
上記クラウンエーテルとグアニジンの結合物を有する重合体の製造段階は、溶媒にグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブをクラウンエーテルを有する重合体重量の1/100〜1/500で添加し、常温において20〜40分間反応させ行われることを特徴とする請求項9または11に記載の方法。
【請求項18】
上記溶媒は、ピリジン、ピロリジンまたはメチレンクロリドであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記コーティングは、200〜1000μm厚で行われることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項20】
上記フィルムは、厚さが1〜2mmであることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項21】
グアニジン基の形成されたカーボンナノチューブが分散している溶液に陽極酸化アルミニウム基板を陰極に沈漬し電気泳動あるいは電気メッキしてグアニジン基の形成されたカーボンナノチューブを基板に付着する方法。
【請求項22】
上記電気泳動あるいは電気メッキは、20〜50VのD.C.で10〜20分間行われることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
基板と、クラウンエーテルを有する重合体層と、化5の部位が少なくとも一つ以上結合されたカーボンナノチューブのコーティング層とから成ることを特徴とするカーボンナノチューブが付着された基板。
【化5】

【請求項24】
基板と、クラウンエーテルを有する重合体と化6の部位が少なくとも一つ以上結合されたカーボンナノチューブの反応による重合体層とから成ることを特徴とするカーボンナノチューブが付着された基板。
【化6】

【請求項25】
上記重合体層は、コーティング層またはフィルム層であることを特徴とする請求項23または24に記載のカーボンナノチューブが付着された基板。
【請求項26】
上記クラウンエーテルは、下記化7の18-メンバークラウン-エーテル、化8のジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル及び化9のジベンゾ-24-メンバークラウン-エーテルから成る群から選択されることを特徴とする請求項23または24に記載のカーボンナノチューブが付着された基板。
【化7】

【化8】

【化9】

【請求項27】
上記重合体は、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリチフェネス(polythiphenes)、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)の混合物、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリメチルメタクリレート及びポリスチレン及びその誘導体から成る群から選択されることを特徴とする請求項23または24に記載のカーボンナノチューブが付着された基板。
【請求項28】
陽極アルミニウム基板(Anodized Aluminum Oxide)及び上記基板の空隙に挿入された化10で表示される部位が少なくとも一つ以上結合されたカーボンナノチューブから成るカーボンナノチューブが付着された基板。
【化10】


【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−206568(P2006−206568A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142928(P2005−142928)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】