説明

カーボンナノチューブの剥離方法および剥離用吸引具

【課題】基板から確実にカーボンナノチューブを剥離でき、且つ基板上で生成されたカーボンナノチューブの形状および密度を維持することができるカーボンナノチューブの剥離方法を提供する。
【解決手段】表面にカーボンナノチューブCが生成された基板Kを連続的に導き当該カーボンナノチューブCの先端表面部に接着フィルム11を配置して接着層を形成した後、この連続的に導かれる接着層を回転ローラ式の吸引具2にて吸引することによりカーボンナノチューブCを基板Kから剥離させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの剥離方法および剥離用吸引具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、熱伝導性が非常に高く、放熱器と冷却対象物の接着用に用いられる。このようなカーボンナノチューブの用途により、従来の熱伝導性接着剤やシリコングリースを用いた場合に比べ、放熱器の高性能化を図ることができる。
【0003】
カーボンナノチューブを利用できる状態で得るには、カーボンナノチューブを基板上に生成させた後に、基板から剥離して回収する必要がある。カーボンナノチューブを剥離する具体的な方法としては、剥離用治具で基板からカーボンナノチューブを掻き落す、または酸などの薬剤でカーボンナノチューブを化学的に剥離させることが一般的である。しかし、前者では物理的な力によりカーボンナノチューブを損傷させるおそれがあり、後者ではカーボンナノチューブに不純物が残留するおそれがあった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、カーボンナノチューブの剥離にガス圧を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−91482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のガス圧を用いる方法では、基板から完全にカーボンナノチューブを剥離することはできないので、一部のカーボンナノチューブが基板上に残ることになる。また、基板上に生成させたカーボンナノチューブは、基板により形成されているので、基板から剥離されると型崩れが生じ、基板上でのカーボンナノチューブのブラシ形状、密度等をそのまま維持できなかった。
【0007】
そこで、本発明は、基板から確実にカーボンナノチューブを剥離でき、且つ基板上で生成されたカーボンナノチューブのブラシ形状および密度を維持することができるカーボンナノチューブの剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、表面にカーボンナノチューブが生成された基板を連続的に導き当該カーボンナノチューブの先端表面部に接着剤を配置して接着層を形成した後、この連続的に導かれる接着層を回転ローラ式の吸引具にて吸引することによりカーボンナノチューブを基板から剥離させる方法である。
【0009】
また、請求項2に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、基板の表面に生成されたカーボンナノチューブの先端表面部に接着剤を配置して接着層を形成した後、この接着層を吸引具にて吸引することにより、カーボンナノチューブを基板から剥離させる方法である。
【0010】
さらに、請求項3に係るカーボンナノチューブの剥離方法は、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの剥離方法において、接着層を吸引する際に、基板の裏面を吸引して保持する方法である。
【0011】
また、請求項4に係るカーボンナノチューブの剥離用吸引具は、請求項1乃至3のいずれかに記載のカーボンナノチューブの剥離方法に用いられる吸引具であって、
基板と平行な軸心回りで回転自在に設けられた紡錘形状の押さえローラにより構成し、
上記押さえローラに、その表面に開口する吸引用穴部を複数形成するとともに、当該押さえローラの内部に、上記各吸引用穴部に連通し且つ真空ポンプに接続し得る連通用空間部を形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
上記カーボンナノチューブの剥離方法および剥離用吸引具によると、基板の表面に生成されたカーボンナノチューブの先端表面部に接着層を形成した上で、この接着層を吸引するので、基板から確実にカーボンナノチューブを剥離でき、且つ基板上で生成されたカーボンナノチューブのブラシ形状および密度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係るカーボンナノチューブの剥離装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】同剥離装置における剥離部分を説明する要部切欠側面図である。
【図3】同剥離装置における吸引具の正面図である。
【図4】同剥離装置における吸引具の断面図である。
【図5】同剥離装置における遮蔽ロールの斜視図である。
【図6】図4に示すA−A断面図である。
【図7】図4に示すB−B断面図である。
【図8】図7に示すC−C断面図である。
【図9】本発明の実施例2に係るカーボンナノチューブの剥離装置の概略構成を示す斜視図である。
【図10】同剥離装置における吸引具の側面図である。
【図11】剥離装置におけるカーボンナノチューブに接着層を形成するまでの動作を説明する側面図である。
【図12】同剥離装置におけるカーボンナノチューブを吸引具で吸引するまでの動作を説明する側面図である。
【図13】同剥離装置におけるカーボンナノチューブを吸引具で吸引して基板から剥離する動作を説明する側面図である。
【図14】同剥離装置におけるカーボンナノチューブを吸引具から回収する動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るカーボンナノチューブの剥離装置について、具体的に示した実施例に基づき説明する。
本実施例1においては、ステンレス製の箔材(20〜300μm程度の厚さ)で、所定幅で長いもの、つまり帯状のものを基板とし、この基板の表面(上面)において等密度でブラシ形状に生成されたカーボンナノチューブを連続的に剥離する装置について説明する。
【0015】
この剥離装置には、図1に示すように複数のローラが具備されており、具体的には、上記基板Kが巻き付けられた巻出しロール6と、この巻出しロール6と同一水平面上で且つ平行に配置されて当該巻出しロール6から引き出された後にカーボンナノチューブCが剥離された基板Kを巻き取る巻取りロール7と、基板Kの上方に配置されて当該基板Kから剥離したカーボンナノチューブCを巻き取る製品回収ロール8とが設けられている。なお、図示しないが、巻出しロール6および巻取りロール7には、それぞれ駆動装置が設けられており、両ロール6,7の回転により基板Kが移送される。以下、巻出しロール6と巻取りロール7の間において、巻出しロール6側を後側、巻取りロール7側を前側とし、この前後方向と水平面上で直交する方向を左右方向として説明する。
【0016】
上記剥離装置1は、上記巻出しロール6と巻取りロール7の間における基板Kの上面に設けられるとともに当該基板Kに生成されたカーボンナノチューブCの先端表面部に接着フィルム(接着剤の一例である)11を連続的に配置していく接着フィルム配置具3と、この接着フィルム配置具3の前側における基板Kの上下面に設けられるとともにカーボンナノチューブC上に配置した接着フィルム11を連続的に加熱して溶かし込むことでカーボンナノチューブCの先端表面から所定厚さで接着層を形成させるホットロールプレス4と、このホットロールプレス4の前側における基板Kの上面に押し付けるように配置されてカーボンナノチューブCを吸引して基板Kから剥離する回転ローラ式の吸引具2と、この吸引具2に押し付けられた基板Kの水平度を維持するために当該吸引具2の下方で且つ基板Kの下面に配置されて当該基板Kを下面側から支持する剥離用台座5とから構成される。
【0017】
上記接着フィルム配置具3は、接着フィルム11を排出する溝が下端部に形成された本体部12を有し、この当該本体部12の内部には、図示しないが、接着フィルム11を巻き付けて収納するロールと、駆動して接着フィルム11を上記溝から排出するために上記ロールを駆動するモータとが具備されている。また、上記ホットロールプレス4は、基板Kの上方および下方にそれぞれ配置されて基板Kを加熱する加熱ローラ14を有する。
【0018】
上記吸引具2には、図2〜図4および図6〜図8に示すように、表面に開口する吸引用穴部23が複数形成されるとともに当該各吸引用穴部23に連通する連通用空間部25が内部に形成された押さえローラ21が具備され、また連通用空間部25には、後述する右側の固定軸31を介して真空ポンプ33が接続されている。この真空ポンプ33により、連通用空間部25を負圧にして吸引用穴部23からカーボンナノチューブCの接着層を吸引し得る。
【0019】
上記押さえローラ21は、内部に上記連通用空間部25が形成された円筒形状の円筒芯部24と、この円筒芯部24の外周に設けられて上記吸引用穴部23が複数形成された紡錘形状の吸引部22とから構成される。また、この円筒芯部24は、図4に示すように、当該連通用空間部25と上記吸引用穴部23を連通させる穴部27が複数形成された円筒面部26と、この円筒面部26の左右両端面に取り付けられた円形の蓋部28と、これら両蓋部28のそれぞれ中心位置に形成されたボス部29と、これらボス部29にブッシュ部30を介して挿入されて上記円筒芯部24を回転自在に支持する固定軸31とから構成される。一方、上記吸引部22は弾性材料で構成され、例えばシリコンゴムが用いられている。このため、吸引部22の基板Kに押し付けられる部分では、紡錘形状が当該押付力により変形して基板Kに沿った平面形状となる。また、この押さえローラ21は、図示しないが、両固定軸31を固定するブラケットにより支持される。なお、右側の固定軸31の中心を軸方向に貫通させており、上記真空ポンプ33は、この固定軸31の右端面の上記貫通穴に配管32を介して接続されている。
【0020】
一方、上記連通用空間部25には、上記円筒芯部24の内周面に沿って且つ当該円筒芯部24の所定の穴部27を塞ぐように遮蔽ロール41が配置されている。すなわち、図2に示すように右方向からの側面視において、円筒芯部24の上端を0°として時計回りを正とした場合、円筒芯部24の−180°〜0°〜+120°にかけての300°の範囲で上記穴部27を常に遮蔽するように遮蔽ロール41が配置されている。具体的には、遮蔽ロール41は、図4〜図8に示すように、円筒芯部24の内周面に面するように設けられるとともに外径が当該円筒芯部24の内径よりも小さい円筒形状であって右方向からの側面視において+120°〜+180°の範囲[右下側(4時の方向)から下側(6時の方向)にかけての60°の範囲]で開口が形成された開口円筒部42と、この開口円筒部42の左右端面に取り付けられるとともに当該開口円筒部42の開口に合わせた扇形の切欠きを有する側板部43とから構成される。なお、上記開口円筒部42の左右方向の幅は、上記連通用空間部25の左右方向の幅より小さいため、上記両側板部43は上記蓋部28に接していない。しかし、上記開口円筒部42の右方向からの側面視における+180°および+120°のそれぞれの位置では、円筒芯部24の円筒面部26に摺動する長手シール材44が左右方向に取り付けられるとともに、上記両側板部43における扇形の切欠きの縁では、上記蓋部28に摺動する側板シール材45が取り付けられている。つまり、図5に示すように、遮蔽ロール41は、中心軸が左右方向と平行になるように配置された円筒体から、右方向からの側面視において扇形(60°の範囲)にくり抜いた形状であり、このくり抜きにより形成された開口の縁に、円筒芯部24に摺動するシール材44,45が取り付けられている。したがって、これらシール材44,45および遮蔽ロール41により気密が確保される。また、遮蔽ロール41は、側板部43により固定軸31の外周部に取り付けられていることから、円筒芯部24や吸引部22が回転しても、遮蔽ロール41は回転することなく常に一定の位置にある。
【0021】
以上より、上記真空ポンプ33で上記連通用空間部25を負圧にしても、遮蔽ロール41の内部および右方向からの側面視における+120°〜+180°の範囲でのみ負圧にすることができる。言い換えれば、上記範囲でのみ、吸引具2による吸引が行われる。これにより、上記吸引具2では、+120°〜+180°の範囲でカーボンナノチューブCを吸引し、+120°の位置で当該カーボンナノチューブCを引き離すことができる。
【0022】
さらに、図1および図2に示すように、左右方向の幅が押さえローラ21と略同一で長辺となる長方形状の剥離案内板49が、上記押さえローラ21の+120°の位置で下端(長辺)側が接するように配置されている。この剥離案内板49の配置角度は、押さえローラ21の+120°の位置での接線と略同一であるため、この剥離案内板49で確実にカーボンナノチューブCを吸引具2から引き離すことができる。
【0023】
ところで、上記吸引具2による押付力を受ける剥離用台座5は、この押付力で変形しないように十分な厚みを有するものである。また、薄い基板K(上述の通り箔材である)が上記吸引具2で上方に吸引されることによる変形を防止するため、上記剥離用台座5は、その内部を負圧にすることで基板Kを下方に吸引し、当該基板Kを保持し得るような構造である。具体的に説明すると、剥離用台座5には、上面の吸引具2による押付力を直接受ける範囲で吸引保持用穴部51が複数形成されており、内部に当該吸引保持用穴部51と連通する連通用空間部52が形成されている。また、この剥離用台座5には、上記連通用空間部52に配管53を介して真空ポンプ54が接続されている。
【0024】
上記構成において、基板Kに生成されたカーボンナノチューブCの剥離方法について説明する。
巻出しロール6から引き出された基板Kは、巻取りロール7で巻き取られて、両ロール6,7に設けられた駆動装置により、一定の速度で移送される。また、両ロール6,7間では、張力および剥離用台座5により、基板Kは移送されながら水平に保持されている。この両ロール6,7間の基板Kに着目し、カーボンナノチューブCの剥離について後側(上流側)から順に説明する。
【0025】
カーボンナノチューブCの先端表面部には、図1に示すように、接着フィルム配置具3により、基板Kの移送速度に合わせて接着フィルム11が連続的に配置される。そして、接着フィルム配置具3の前側のホットロールプレス4でカーボンナノチューブC上の接着フィルム11が連続的に加熱により溶かし込まれ、カーボンナノチューブCの先端表面から所定厚さで接着層が形成される。
【0026】
次に、接着層が形成されたカーボンナノチューブCは、剥離用台座5上において、上から押さえローラ21で押し付けられる。このとき、吸引部22は押付力により変形し、基板Kに沿った平面形状となる。また、右方向からの側面視において、円筒芯部24の上端を0°として時計回りを正とした場合、円筒芯部24の+180°〜+120°の範囲で吸引用穴部23からカーボンナノチューブCが上方に吸引される。一方、基板Kは剥離用台座5で下方に吸引保持されるので、基板KからカーボンナノチューブCが基板Kから剥離される。ここで、円筒芯部24の+120°の位置では、遮蔽ロール41で妨げられて吸引部22による吸引が行われず、カーボンナノチューブCを押さえローラ21から引き離すことができる。また、この位置では、吸引部22は基板Kに接しておらず、紡錘形状に戻るので、カーボンナノチューブCを吸引部22の左右側から引き離しやすくなる。さらに、この位置における接線上に配置された剥離案内板49により、確実にカーボンナノチューブCを押さえローラ21から引き離すことができる。
【0027】
そして、押さえローラ21から引き離されたカーボンナノチューブCは、製品回収ロール8により巻き取られて回収される。
このように、剥離用台座5で基板Kを下方に吸引保持しながら吸引具2でカーボンナノチューブCを上方に吸引するので、基板Kが薄い場合であっても、カーボンナノチューブCを剥離することができる。また、吸引したカーボンナノチューブCを吸引具2から引き離す位置においては、吸引具2の形状が紡錘形状に戻るとともに、遮蔽ロール41により吸引が妨げられるので、カーボンナノチューブCを基板Kから確実に剥離することができる。さらに、剥離前のカーボンナノチューブCの先端表面部に接着層を形成させているので、基板K上でのカーボンナノチューブCのブラシ形状および密度を維持して、カーボンナノチューブCを剥離することができる。
【0028】
上記実施例1においては、遮蔽ロール41が押さえロールの連通用空間部25に配置されたものとして説明したが、遮蔽ロール41を配置しない構成であってもよい。この場合でも、剥離案内板49により、吸引具2の+120°でカーボンナノチューブCを引き離すことができる。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の実施例2に係るカーボンナノチューブの剥離装置を図9および図13に基づき説明する。
上記実施例1に係るカーボンナノチューブの剥離装置においては、連続的に基板からカーボンナノチューブを剥離するのに対し、本実施例2に係る剥離装置にあっては、一枚の基板ごとにカーボンナノチューブを剥離するものである。なお、本実施例2に係るカーボンナノチューブも、実施例1と同様に、基板の表面において等密度でブラシ形状に生成されたものである。
【0030】
以下、実施例2に係るカーボンナノチューブの剥離装置について説明するが、実施例1と異なる箇所に着目して説明するとともに、実施例1と同一の構成部材については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0031】
この剥離装置でカーボンナノチューブの剥離を行う基板には、図11に示すように、予め基板Kの表面に生成されたカーボンナノチューブCの先端表面部に接着剤(液状またはフィルム状)63を配置した後(図11(a)参照)基板Kを加熱する。なお、本実施例2では一枚の基板KごとにカーボンナノチューブCを剥離するので、基板Kの加熱には、実施例1で示したホットロールプレス4を用いずに、一枚の基板Kごとに加熱するホットプレス64を用いてもよい(図11(b)参照)。これにより、実施例1と同様の接着層をカーボンナノチューブCに形成させておく(図11(c)参照)。上記剥離装置61は、このように接着層が形成されたカーボンナノチューブCを基板Kから剥離するものである。
【0032】
すなわち、上記剥離装置61は、基板Kが配置されるとともに当該基板Kを下方に吸引保持する剥離用台座5と、この剥離用台座5に配置された基板Kを上方から押し付けて基板K上のカーボンナノチューブCを吸引して剥離する吸引具62と、この吸引具62を昇降させる昇降装置とから構成される。
【0033】
剥離用台座5は、実施例1と同じ構成であるから説明を省略し、実施例1と異なる構成である吸引具62について説明する。
この吸引具62は、表面(下面)に開口する吸引用穴部76が複数形成されるとともに当該各吸引用穴部76に連通する連通用空間部73が内部に形成された押さえ体71が具備され、この連通用空間部73に真空ポンプ78が接続されている。この真空ポンプ78により、連通用穴部73を負圧にして吸引用穴部76からカーボンナノチューブCの接着層を吸引し得る。
【0034】
上記押さえ体71は、実施例1での押さえローラ21とは異なり、図9および図10に示すように、略直方体であって、下面は下向きに凸の緩やかな円筒面である。また、この押さえ体71は、内部に上記連通用空間部73を有するとともに当該連通用空間部73と上記吸引用穴部76を連通させる穴部74が下面に複数形成された直方体形状の押圧部72と、この押圧部72の下面に取り付けられるとともに上記吸引用穴部76が上記穴部74と連通するように複数形成されて下面が円筒面形状の吸引部75とから構成される。また、上記吸引部75は弾性材料で構成され、例えばシリコンゴムが用いられる。このため、吸引部75の基板Kに押し付けられる部分では、円筒面形状が当該押付力により変形して基板Kに沿った平面形状となる。一方、押圧部72の上面に配管77を介して真空ポンプ78が接続されており、この配管77には、上記連通用空間部73を大気に開放し得る開放弁79が設けられている。なお、本実施例2に係る吸引具62は、実施例1で示した遮蔽ロール41が配置されていないので、吸引部75の下面に形成された全ての吸引用穴部76から吸引が行われる。
【0035】
上記昇降装置は、図示しないが、上記押さえ体71の上面にロッド部の下端が接続されて垂直に配置された電動シリンダーと、この電動シリンダーを制御する操作部とから構成される。
【0036】
上記構成において、基板Kに生成されたカーボンナノチューブCの剥離方法を図12〜図14に基づき説明する。
図9に示すように、基板Kに生成されたカーボンナノチューブCには、上述の通り、予め先端表面部に接着層を形成させておく。
【0037】
まず、図12(a)に示すように基板Kを剥離用台座5に載置し、操作部により電動シリンダーを伸展させて、図12(b)に示すように押さえ体71を下降させる。そして、さらに電動シリンダーを伸展させることにより、基板Kに押さえ体71を押し付けて、図13(a)に示すように押さえ体71の円筒面形状の下面を平面形状まで変形させる。
【0038】
次に、剥離用台座5に具備された真空ポンプ54により基板Kを下方に吸引保持し、その後、吸引具62に具備された真空ポンプ78によりカーボンナノチューブCを上方に吸引する。これにより、カーボンナノチューブCは押さえ体71の下面に吸引される。
【0039】
そして、操作部により電動シリンダーを収縮させて押さえ体71を上昇させると、押さえ体71に吸引されたカーボンナノチューブCも上昇するが、基板Kは剥離用台座5により吸引保持されたままなので、図13(b)に示すようにカーボンナノチューブCは基板Kから剥離される。次に、剥離用台座5に具備された真空ポンプ54の作動を停止し、剥離用台座5から基板Kを取り去るとともに、カーボンナノチューブC回収用のトレイTを剥離用台座5に載置して、押さえ体71をトレイTの近くまで下降させる。その後、吸引具62に接続された真空ポンプ78の作動を停止し、開放弁79を開放して当該連通用空間部73内の圧力を大気圧または正圧にすることにより、図14に示すようにカーボンナノチューブCを押さえ体71から落下させて、トレイTで受けて回収する。
【0040】
このように、本実施例2に係るカーボンナノチューブCの剥離装置61は、実施例1と同様の効果を有し、さらに、一枚の基板KごとにカーボンナノチューブCを確実に剥離することができる。
【符号の説明】
【0041】
C カーボンナノチューブ
K 基板
T トレイ
1 剥離装置
2 吸引具
4 ホットロールプレス
5 剥離用台座
8 製品回収ロール
21 押さえローラ
22 吸引部
23 吸引用穴部
24 円筒芯部
25 連通用穴部
26 円筒面部
27 穴部
28 蓋部
30 ブッシュ部
31 固定軸
41 遮蔽ロール
42 開口円筒部
43 側板部
44 長手シール材
45 側板シール材
49 剥離案内板
51 吸引保持用穴部
52 連通用空間部
61 剥離装置
62 吸引具
63 接着剤
64 ホットプレス
71 押さえ体
72 押圧部
73 連通用空間部
74 穴部
75 吸引部
76 吸引用穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にカーボンナノチューブが生成された基板を連続的に導き当該カーボンナノチューブの先端表面部に接着剤を配置して接着層を形成した後、この連続的に導かれる接着層を回転ローラ式の吸引具にて吸引することによりカーボンナノチューブを基板から剥離させることを特徴とするカーボンナノチューブの剥離方法。
【請求項2】
基板の表面に生成されたカーボンナノチューブの先端表面部に接着剤を配置して接着層を形成した後、この接着層を吸引具にて吸引することにより、カーボンナノチューブを基板から剥離させることを特徴とするカーボンナノチューブの剥離方法。
【請求項3】
接着層を吸引する際に、基板の裏面を吸引して保持することを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの剥離方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のカーボンナノチューブの剥離方法に用いられる吸引具であって、
基板と平行な軸心回りで回転自在に設けられた紡錘形状の押さえローラにより構成し、
上記押さえローラに、その表面に開口する吸引用穴部を複数形成するとともに、当該押さえローラの内部に、上記各吸引用穴部に連通し且つ真空ポンプに接続し得る連通用空間部を形成したことを特徴とするカーボンナノチューブの剥離用吸引具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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