説明

カーボンナノチューブを含む非共有結合複合体

本発明は、正電荷及び/又は負電荷を含むカーボンナノチューブの使用であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面に共有結合しており、前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的であり、そして前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでいるものとする、カーボンナノチューブと荷電分子少なくとも1つ(但し、前記荷電分子はClとTFAと異なっている)との複合体の製造への前記使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含む非共有複合体、及び分子を細胞に運ぶための非共有複合体の使用に関する。
【0002】
機械的、熱的、化学的、及び電子的性質の例外的な組み合わせにより、単層カーボンナノチューブ(SWNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWNT)は、特異な材料として考えられており、特にナノテクノロジー、ナノエレクトロニクス、複合材料及び医化学の分野において、今後の応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、カーボンナノチューブ(CNT)が生理溶液中に溶解しないことを主な理由として、カーボンナノチューブの生物学的応用の可能性は、今まで全く検討されていない。
【0004】
カーボンナノチューブとDNA又はタンパク質等の種々の分子とのいくつかの非共有複合体は、従来技術に記載されている。ほとんどの場合において、前記分子と前記カーボンナノチューブとは、疎水的相互作用及び/又はπ−スタッキング相互作用により結合している。
【0005】
従って、ゼング(Zheng)ら[ネイチャー・マテリアル(Nature Mater.)2003年、第2巻、p.338−342]は、一本鎖DNA分子によるカーボンナノチューブの可溶化を記載しており、前記DNA分子は、π−スタッキング相互作用によりカーボンナノチューブの周りにらせん状に巻きついており、可溶性複合体を形成する。
【0006】
別の場合において、国際公開02/095099パンフレットは、π−スタッキング相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用及び疎水的相互作用によってカーボンナノチューブの側壁への分子(好ましくはタンパク質又はDNAを含む)の前記不可逆的な吸着から形成される複合体に関する。
【0007】
前記複合体に関連する1つの欠点は、複合体の解離が困難であり及び/又は確実に評価されていないことである。
【0008】
これらの複合体に関連するもう1つの欠点は、カーボンナノチューブが複合体から解離すれば、カーボンナノチューブそれ自体が水溶系に溶解せず、そして沈殿する疎水性凝集を形成することである。更に、機能化されていないカーボンナノチューブは、有毒であることがいくつか示されている(Warheit et al.(2004)Toxicological Sciences77:117−125;Lam et al.(2004)Toxicological Sciences77:126−134;Shvedova et al.(2003)Journal of Toxicology and Environmental Health,PartA66:1909−1926)。
【0009】
このような欠点は、生体系において、前記カーボンナノチューブに、複合化された分子を運ぶために使用される前記非共有複合体の能力を大幅に低下させる。
【0010】
更に、前記の複合体が細胞内へ浸透することができることは、証明されていない。
【0011】
従って、本発明の1つの目的は、カーボンナノチューブ及び目的の分子を含み、そして前記目的の分子を放出する傾向にある複合体を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、カーボンナノチューブを含む複合体を提供することであり、カーボンナノチューブがそれ自体溶解性である。
【0013】
本発明のさらなる目的は、カーボンナノチューブを含む生物学的に相性がよい複合体及び毒性のない複合体を提供することであり、前記複合体は、細胞へ浸透することが可能である。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、前記特性を示しているカーボンナノチューブを含む複合体を調製する方法を提供することである。
【0015】
本発明は、正電荷及び/又は負電荷を含むカーボンナノチューブの使用であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面に共有結合しており、前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的であり、そして前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでいるものとする、前記カーボンナノチューブと荷電分子少なくとも1つ(但し、前記荷電分子はClとTFAと異なっている)との複合体の製造への、前記使用に関する。
【0016】
また、本発明は、正電荷及び/又は負電荷を含む前記カーボンナノチューブの使用であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面において共有結合しており、前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的であり、そして前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでいる、前記カーボンナノチューブと約115より大きい分子量を有する荷電分子少なくとも1つとの複合体の製造への、前記使用に関する。
【0017】
また、本発明は、正電荷及び/又は負電荷を含んでいるカーボンナノチューブと荷電分子少なくとも1つとを含む複合体であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面において共有結合しており、
前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は少なくとも1つの正電荷を含んでおり(但し、前記荷電分子がClとTFAと異なるものとする)、
前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的である、前記複合体に関する。
【0018】
また、本発明は、正電荷及び/又は負電荷を含んでいるカーボンナノチューブと約115より大きい分子量を有する荷電分子少なくとも1つを含む複合体であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面において共有結合しており、そして、前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子が負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでおり、
前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電結合である、前記複合体に関する。
【0019】
用語「カーボンナノチューブ」は、円筒形に配列された炭素原子のみで構成された分子を意味し、前記円筒形は、所定の長さ及び直径によって特徴づけられている。前記カーボンナノチューブは、平面グラファィトを丸めることにより形成される円筒形グラファイトと似ている。前記円筒形側壁の炭素原子は、平面グラファイトと同様に、縮合ベンゼン環を形成するために配列されている。
【0020】
用語「電荷を担持している基」は、電荷少なくとも1つを担持している基を示している。前記電荷を担持している基は、正電荷のみ、負電荷のみ、又は両方の電荷を担持することができる。更に、前記電荷を担持している基は、負電荷よりも正電荷を多く含むことができる。つまり、その正味の電荷、又は全体的な電荷は、正電荷である。反対に、前記電荷を担持している基が正電荷よりも負電荷を多く含むことができる。つまり、その正味の電荷、又は全体的な電荷は、負電荷である。また、前記電荷を担持している基は、等しい量の正電荷及び負電荷を含むことができる。つまり、その正味の電荷、又は全体的な電荷は、中性である。
【0021】
用語「荷電分子」は、電荷少なくとも1つを担持している分子を示している。前記荷電分子は、正電荷のみ、負電荷のみ、又は両方の電荷を担持することができる。更に、前記荷電分子は、負電荷よりも正電荷を多く含むことができる。つまり、その正味の電荷、又は全体的な電荷は、正電荷である。反対に、前記電荷を担持している基が正電荷よりも負電荷を多く含むことができる。つまり、その正味の電荷、又は全体的な電荷は、負電荷である。また、前記荷電分子は、等しい量の正電荷及び負電荷を含むことができる。つまり、その正味の電荷、又は全体的な電荷は、中性である。
【0022】
本発明によれば、電荷を担持している基は、カーボンナノチューブの側壁に関連する前記炭素原子少なくとも1つを必要とする結合によって、前記カーボンナノチューブの表面に共有結合している。前記カーボンナノチューブは、前記電荷を担持している基によって、機能されていると考えることができる。
「TFA」は、トリフルオロ酢酸に関する。
本発明における複合体の結束性を維持する力は、本質的には、静電気力である。例えば、前記複合体の結束性は、前記電荷を担持している基及び前記荷電分子のそれぞれに属している異極性電荷によって、もう一方の電荷に働きかける引力によって維持されている。本発明における静電結合は、特に、イオン結合に関する。前記電荷を担持している基に属する1又は数個の電荷が、前記荷電分子に属する1又は数個の電荷とそれぞれ互いに作用しあうことができることは、当業者によって明らかであろう。電荷を担持している基、又は荷電分子が1つより多い電荷を含む場合には、すべての電荷が必ずしも、荷電分子、又は電荷を担持している基にそれぞれ属している電荷と作用しあうわけではないこともまた明らかであろう。
条件、例えばpHによって、前記カーボンナノチューブの電荷、前記電荷を担持している基の電荷、又は前記荷電分子の電荷は変化する。
【0023】
前記発明の好ましい実施態様によれば、前記定義された複合体が、水性溶媒に可溶であり、そして毒性がないことを特徴とする。
特に、前記複合体は、1・10−12〜1・10−2mol/l濃度で水中に溶ける。
水性溶媒は、特に、水、生理溶液、及び生体液、例えば血液、リンパ液又は細胞質を含む。
「毒性のない」ことによって、本発明の複合体は、細胞に対して、又は複合体を投与した個体に対して、本質的に有害性を生じないことを意味している。
特に、本発明の複合体は、1・10−2mol/lと同じ高濃度であっても毒性はない。
本発明の複合体を含む前記カーボンナノチューブは、好ましくは水性溶媒に可溶し、そして毒性がない。
前記複合体の溶解性は、前記荷電分子ばかりでなく、カーボンナノチューブの表面に共有結合している電荷を担持している基の存在にも起因している。
前記複合体の溶解性は、また、生物学的過程、特に細胞過程を害するカーボンナノチューブの疎水性凝集に起因する毒性を防ぐ。
前記複合体の溶解性及び毒性の欠如は、生体への、特に分子を細胞に運ぶ構成での前記複合体の投与を可能にする
【0024】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、前記複合体は、荷電分子と前記カーボンナノチューブの結合エネルギーが約90kJ/mol未満であり、特に約12kJ/molから約85kJ/molであり、より特には約20kJ/molから約70kJ/molであり、そして好ましくは約20kJ/molから約50kJ/molであることを特徴とする。
前記結合エネルギーは、25℃で示されている。
85kJ/molの結合エネルギーは、約10−15mol/lの解離定数に相当している。
70kJ/molの結合エネルギーは、約10−12mol/lの解離定数に相当している。
50kJ/molの結合エネルギーは、約10−9mol/lの解離定数に相当している。
特に、前記結合エネルギーは、共有結合に相当する結合エネルギー、概ね420kJ/molよりも小さい。
前記荷電分子と前記カーボンナノチューブの前記結合エネルギーは、細胞外生体液、例えば血液又はリンパ液中での前記複合体の結束性を可能にし、そして、細胞液、例えば細胞質中での前記荷電分子の放出を可能にする複合体の解離ができるものが好ましい。本発明の前記複合体の解離を、例えば、pHの変化によって引き起こすことができる。
前記複合体のさらなる好ましい実施態様によれば、前記カーボンナノチューブが正電荷又は負電荷のいずれかを含み、そして前記荷電分子がそれぞれ負電荷少なくとも1つ、又は正電荷少なくとも1つのいずれかを含む。
この実施態様によれば、前記カーボンナノチューブは、正電荷のみ又は負電荷のみのいずれかを含み、反対の電荷をそれぞれ含んでいる荷電分子との結合を容易にする。
【0025】
特に好ましい実施態様によれば、前記カーボンナノチューブは、同一の電荷を担持している基のみを含んでいる。
前記複合体のもう1つの好ましい実施態様によれば、前記カーボンナノチューブは、前記荷電分子の電荷当たり、約0.001〜約100電荷、特に、約1〜約20電荷を含んでいる。
従って、与えられる荷電分子及びカーボンナノチューブ間の相互作用の強さを、前記カーボンナノチューブの電荷密度を変更することによって調節することは可能である。故に、前記電荷密度を大きくすることによって、前記相互作用は強くなる結果となり、そして前記電荷密度を小さくすることによって、前記相互作用は弱くなる結果となる。
前記カーボンナノチューブと荷電分子との電荷比は、約0.001〜約100であり、特には約1〜約20である。約0.001より小さい電荷比においては、溶液中で遊離している前記荷電分子からの電荷が過剰量であり、これは前記カーボンナノチューブと相互作用しない荷電分子が過剰になりやすく、従って十分には複合しない。100より大きい電荷比においては、前記カーボンナノチューブ上の電荷が過剰量あり、従って前記荷電分子は、前記カーボンナノチューブ上で全てしっかりと複合しており、故に強く安定した複合体になりやすく、従って前記カーボンナノチューブ表面からの前記荷電分子の放出を困難にさせる。
【0026】
前記複合体のもう1つの好ましい実施態様によれば、前記カーボンナノチューブが、前記荷電分子の存在する又は存在しない有機溶媒及び/又は水性溶媒中において、実質的に無傷であり、そして可溶であり、及び前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面上に均一に分布している。
【0027】
用語「均一に分布している」は、前記荷電を担持している基が、本質的に前記カーボンナノチューブの表面に全てに分布しており、前記カーボンナノチューブの一部分、例えば前記カーボンナノチューブの先端部分に単純に集中していないことを意味している。更に、電荷を担持している基の数と前記カーボンナノチューブの炭素原子の数の比率があり、特に、前記カーボンナノチューブの約50〜約1000の炭素原子当たり1つの電荷を担持している基であり、より好ましくは前記カーボンナノチューブの約100の炭素原子当たり1つの電荷を担持している基である。
【0028】
用語「実質的に無傷であり」は、前記表面上の欠陥は極少量であり、そして前記カーボンナノチューブの先端の炭素原子を酸化し、カルボン酸にするために、前記カーボンナノチューブが脆くないことを意味する。
【0029】
特に、前記カーボンナノチューブは、水性溶媒中、特には生体液、例えば血液、リンパ液又は細胞質中に、それ自体で可溶している。従って、本発明の前記複合体の解離は、2つの水に可溶性の成分、前記荷電分子及び前記カーボンナノチューブを生じる。前記解離が細胞中で起こった場合、前記カーボンナノチューブは溶けたままであり、このことは細胞からカーボンナノチューブが廃棄されるのを助け、そしてカーボンナノチューブの凝集及び凝集に相当する細胞毒性を防ぐ。
【0030】
前記複合体のもう1つのさらなる実施態様によれば、前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ(SWNT)又は多層カーボンナノチューブ(MWNT)である。
前記単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、例えば、アジャヤン及びイイジマ(Ajayan,PM&Iijima S.Nature(1993)361:333−334;Rao CNR.et al.Chem.Phys.Chem.(2001)2:78−105)によって、定義されている。
前記多層カーボンナノチューブ(MWNT)は、例えば、イイジマ(Iijima S.Nature(1991)354:56−58;Rao CNR.et al.Chem.Phys.Chem.(2001)2:78−105)によって、定義されている。
【0031】
前記で定義された複合体のさらなる実施態様によれば、前記カーボンナノチューブが、下記の一般式:
[C]−X
(式中、Cは、実質的に一定の直径である実質的に円筒形であるカーボンナノチューブの表面の炭素であり、前記直径が約0.5〜約50nmであり、特に、SWNTにおいて約0.5〜5nmであり、MWNTにおいて約20〜約50nmであり、
Xは、同一又は異なる、1又は数個の官能基であり、但し、X基少なくとも1つが、電荷を担持している基少なくとも1つを含み、
nは約3・10〜約3・10の整数であり、
mは約0.001n〜約0.1nの整数であり、
カーボンナノチューブ表面cm当たり約2・10−11mol〜約2・10−9molの官能基Xが存在している)
で表される。
【0032】
前記カーボンナノチューブは、5より大きい直径に対する長さの比、及び0.2μm未満、好ましくは0.05μm未満の直径を有している。
置換カーボンナノチューブにおいて、前記表面の原子Cは、官能基と反応する。表層中のほとんどの炭素原子は、基底面炭素、例えばベンゼン環で構成されている炭素である。従来技術において、一般的に基底面炭素は、欠損部位にある基底面炭素、又はグラファイト層の先端炭素原子に類似の基底面炭素を除いては、相対的に化学攻撃に対して不活性であると考えられている。
【0033】
カーボンナノチューブの先端の炭素原子は、欠損部位にさらされた炭素原子及び先端炭素原子を含むことができる。
有利な実施態様によれば、本発明は機能化カーボンナノチューブを含む水溶液又は有機溶液に関し、前記カーボンナノチューブの長さ範囲の分布は機能化前の前記カーボンナノチューブの長さ範囲の分布と本質的に同じである。
前記カーボンナノチューブの長さは、約20nm〜約20μmの範囲内で有利に選ばれる。
カーボンナノチューブの表面(cm)当たりの官能基の分布、(有利なのは2・10−11mole〜2・10−9moleである)をDSC(示差走査熱量測定法)、TGA(熱重量分析)、滴定及び分光光度測定により、決定することができる。
その均質性を高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)により決定することができる。但し、分解能が、前記カーボンナノチューブ表面の電子密度及び電子を担持している前記官能基の電子密度を見るには十分であるものとし、標識原子、例えば15N、13C又はHが、官能基中に含まれるものとする。
カーボンナノチューブ表面(cm)当たりの官能基の分布範囲のより高い数値及びより低い数値に関与するパラメータは、カーボンナノチューブの曲率、反応時間、反応温度、試薬の化学安定性及び溶媒である。
官能基の量は、特には、カーボンナノチューブ1g当たり約0.4〜約1mmolの範囲であることが好ましい。
本発明の前記カーボンナノチューブは本質的には純粋であり、そして無定形炭素又は熱分解沈殿炭素(pyrolytically deposited carbon)、炭素粒子、又はフラーレンを含んでなく、そして、特には、カーボンナノチューブの生成において触媒として一般的に使用される金属、例えばFe、Ni、Coを含んでいない。
【0034】
前記で定義された複合体の好ましい実施態様において、Xが、2つの異なる官能基X及びXであり、そして前記カーボンナノチューブが下記の式:
[C]−[Xm1][Xm2
(式中、m及びmは、相互に独立し、約0.001n〜約0.1nの整数を示し、但し、X又はX少なくとも一方が、電荷を担持している基少なくとも1つを含むものとする)
で表されている。
【0035】
前記定義された複合体のもう1つの好ましい実施態様において、Xが、同一又は異なる、1又は数個の置換されたピロリジン環であり、但し、前記置換されたピロリジン環少なくとも1つが電荷を担持している基少なくとも1つによって置換されている、下記の一般式(I):
【化1】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、R及びR’は、相互に独立し、−H、又は式−M−Y−(Z)−(P)で表される基であり、aは0又は1であり、そしてbは0〜8の整数であり、好ましくは0、1又は2であり、Pは、bが1より大きい場合に同一又は異なる基であり、但し、R及びR’は同時に水素原子とすることはできないものであり、そして、
Mは、約1〜約100原子のスペーサー基、例えば−(CHγ−又は−(CH−CH−O)γ−CH−CH−を含む群から選択される基、γは1〜20の整数であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含み、
Yは、a=b=0の場合の反応基、例えば−OH、−NH、−COO−、−SH、−CHO、ケトン例えば−COCH、アジ化物、又はハロゲン化物を含む群から選択される基であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含み、
又は、a又はbが0と異なる場合に、反応基から誘導され、例えば−O−、−NH−、−COO−、−S−、−CH=、−CH−、−CC2k+1=、kは1〜10の整数であり、特には−CCH、又は−CHC2k+1−であり、kは1〜10の整数であり、特には−CHCH−を含む群から選択される基であり、
Zは、リンカー基、例えばa=1、及びb=0の場合に以下の式の1つの基であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含んでおり、P基少なくとも1つと結合する傾向があり、そして、必要な場合には前記P基を放出する傾向があり、
【化2】


qは、1〜10の整数であり、又は、
a=1、及びb=1又は2の場合に、以下の式の1つで表され、
【化3】


qは、1〜10の整数であり、
Pは、有効基であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含み、前記機能化カーボンナノチューブの分光検出を可能にし、フルオロフォア、例えばFITC、キレート剤、例えばDTPA、又は生物学的作用を誘発する傾向がある活性分子、例えばアミノ酸、ペプチド、擬似ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、例えば酵素又は抗体、核酸、炭水化物又は薬であり、
あてはまる場合にはY、Z、又はP基少なくとも1つを、キャッピング基、例えばCHCO−(アセチル)、メチル、エチル、ベンジルカルボニル、又は保護基、例えばメチル、エチル、ベンジル、tert−ブチル、トリチル、3−ニトロ−2−ピリジルサルフェニル、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ベンゾイル(Bz)、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、フタルイミド、ジメチルアセタール、又は1,3−ジオキソランによって置換することができる)
の複合体である。
【0036】
置換ピロリジンを含むカーボンナノチューブを、ジョーガキラスら(Georgakilas et al.(2002)J.Am.Chem.Soc.124:760−761)の記載したアゾメチンイリドの1、3−双極子環状付加に基づく一般方法を使用することにより調製することができる。
前記ピロリジン環は、安定で、そして強固な環状分子であり、反応基が存在又は挿入することができる末端においてスペーサー基をもつことができる窒素原子が存在しているという利点を持っている。
【0037】
用語「Yは反応基である」は、Yはヘテロ原子を表しており、新しい共有結合を形成するための化学反応を行う準備があることを意味する。
用語「Mはスペーサー基」は、Mが前記カーボンナノチューブ上の前記ピロリジンを前記反応作用基Yから引き離す直鎖状有機鎖であることを意味する。
用語「Yは反応基から誘導される」は、Yが新しい共有結合を引き起こす化学反応によって修飾させられるヘテロ原子又は官能基であることを意味する。
−O−は前記反応基−OHからの誘導体であり、−NHは前記反応基−NHからの誘導体であり、−COO−は前記反応基−COOHからの誘導体であり、−S−は前記反応基−SHからの誘導体であり、−C=及び−CH−は前記反応基−CHOからの誘導体であり、−CC2k+1及び−CHC2k+1は、前記反応基のケトンからの誘導体であり、そして特には−CCH=及び−CHCH−は反応基−COCH−からの誘導体であることは、前記の説明から明らかである。
アジ化物に関しては、アジ化物は保護基である。
ハロゲン化物に関しては、相当する誘導基を−NH−、−O−、−S−、−COO−又はアジ化物とすることができる。
用語「Zはリンカー基である」は、ZがYに共有結合している化学物質であり、Pのカップリングを可能にし、そしてPのカップリングの条件において化学反応を妨害し、Pを放出することが可能であるが、Yから放出されることは可能ではないことを意味する。
好ましい実施態様によれば、Zは以下の式のリンカー基を意味する。
【化4】


qは、1〜10の整数である。
リンカー基Zは、Zが遊離しているか、又は−Y−に結合しているか及び/又は−Pに結合しているか、又は−Pから開裂しているか、そしてZが保護されているかどうかに依存する変化する形状で存在している。本発明の好ましいリンカー基の主要形状は以下の通りである。
遊離非保護型
【化5】

遊離保護型
【化6】


非保護Y結合型
【化7】


保護Y結合型
【化8】


非保護Y及びP結合型
【化9】


保護Y及びP結合型
【化10】


非保護Y及びP由来開裂結合型
【化11】


非保護Y及びP由来開裂結合型
【化12】


非保護P結合型
【化13】


保護P結合型
【化14】


遊離非保護型
【化15】


遊離保護型
【化16】


非保護Y結合型
【化17】


保護Y結合型
【化18】


Y及びP結合型
【化19】


P結合型
【化20】


マレイミドの遊離型
【化21】


Y結合マレイミド型
【化22】


Y及びP結合マレイミド型
【化23】


P結合マレイミド型
【化24】

【0038】
qは1〜10の整数であり、Qは保護基であり、そして−Y−はスペーサーMを介して本発明の機能化されたカーボンナノチューブに共有結合している。
【0039】
用語「Pは有効基である」は、Pが、Pを担持している前記カーボンナノチューブに新しい物理的、化学的又は生物学的特性を与えることができる基であることを意味する。
【0040】
本発明の用語「Pは前記カーボンナノチューブの分光検出を可能にすることができる」は、Pが基、例えば、蛍光顕微鏡検査法、又は核磁気共鳴又はFTIR(フーリエ変換赤外)分光等の分光技術によって同定されることを可能にする発色団であることを意味する。
【0041】
用語「生物学的作用を誘発する傾向がある活性分子」は、前記分子が、前記生体系の要素と特異的な相互作用を行うことにより、与えられる生体系の工程を修飾することができることを意味する。
「FITC」は、フルオロセイン・イソチオシアネートを示す。
【0042】
「DTPA」は、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物を示す。
【0043】
用語「擬似ペプチド」は、天然由来又は非天然由来のアミノ酸の鎖を示しており、前記鎖が少なくとも1つの結合、アミド結合とは異なる結合の化学的性質を含んでいる。
【0044】
用語「キャッピング基」は、反応性官能基Yを阻止することができ、そして化学反応によって取り除くことができない基を意味する。
【0045】
用語「保護基」は、反応性官能基を一時的に阻止することができ、そしてさらなる改善の目的で、反応作用基Yを遊離するために化学反応によって続いて取り除くことができる基を意味する。
【0046】
Pが存在している場合、Zの性質は2種類のカーボンナノチューブ、Pを放出することができるか、又はPを放出することができないものを生じさせる。
【0047】
もしPが存在している場合、用語「Pの放出」は、−M−Y−Z−P基において、開裂はZ基の右端で起こる可能性があることを意味する。
【0048】
前記開裂は前記Z基のこの端で起こる場合に、その後Pが放出される。
Zが以下の2つの分子の1つを表す場合、そしてPが存在している場合には、Pを放出することができる。なぜならば、左の分子については、開裂はS原子に隣接する結合で起こることができ、又右の分子については、Pは右端−COO−から放出されることができるからである。
【化25】

【0049】
Zが以下の分子を表している場合、そしてPが存在している場合、特に生理学的条件、例えば血清中の条件下、又は生理学的条件を再現する条件下、例えばpH7.4で0.15MNaCl、又はpH7.4でPBSにおいて、Pを放出することができない。
【化26】

【0050】
本発明のもう1つの実施態様によれば、本発明の機能化されたナノチューブは、MとYとの間、そしてYとZとの間において一般に開裂はない。
【0051】
前記定義された複合体のさらなる実施態様において、Xは、2つの異なる置換されたピロリジン環であり、但し、以下の一般式(I’):
【化27】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、R及びRは、異なっており、そして相互に独立し、−H、又は式−M−Y−(Z)−(P)の基であり、M、Y、Z、P、a及びbは、前記定義されたものと同じ意味であり、R及びR少なくとも1つが電荷を担持している基を含んでいる)
の前記ピロリジン環少なくとも1つを、電荷を担持している基少なくとも1つによって置換されるものである。
前記定義された複合体の好ましい実施態様において、前記複合体は、以下の一般式(II):
【化28】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、Aは荷電分子であり、そしてRは、式−M−W基であり、そして、
Mは、約1〜約100原子のスペーサー基、例えば−(CH)γ−、又は−(CH−CH−O)γ−CH−CH−を含む群から選択される基であり、γは1〜0の整数であり、
Wは、約1〜約400原子の電荷を担持している基、例えば−NH、又は−COOである)
で表されることを特徴とする。
【0052】
前記複合体の特に好ましい実施態様において、前記複合体は、以下の一般式(II’):
【化29】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、Aは、荷電分子であり、そして
は、−M−Y−(Z)−(P)基であり、M、Y、Z、P、a及びbは、前記定義されたものと同じ意味であり、特にRは、フルオロフォアを担持している基であり、そして
は、式−M−W基であり、Wは約1〜約400原子の電荷を担持している基、例えば、−NH、又は−COOである)
で表されることを特徴とする。
【0053】
いくつもの方法が、2つの異なるピロリジン環をもつカーボンナノチューブの機能化(ビス機能化カーボンナノチューブ)のために利用可能である。詳細は、実施例1A、1B、1Cにおいて報告されている。
【0054】
本発明のもう1つの特に好ましい実施態様において、前記荷電分子が、
2〜10のヌクレオチドを含む核酸、例えばRNA又はDNA、特にはプラスミド又は人工染色体、
2〜5000、好ましくは50〜5000のアミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、
炭水化物、特には正電荷の炭水化物、例えばグルコサミン又はキトサン、
放射性核種、及び
細胞毒の分子を含む群から選択されている。
【0055】
本発明の複合体は、一本鎖核酸又は二本鎖核酸をより特に含む。一本鎖核酸を担持している複合体は、アンチセンスDNAを細胞に運ぶために特に適している。二本鎖DNAを担持している複合体は、細胞を形質転換又はトランスフェクトするために特に適している。そして、二本鎖RNAを担持している複合体は、干渉RNAを細胞に運ぶために特に有用である。
【0056】
本発明の放射性核種を含む複合体は、イメージング又は治療目的のために特に有用である。
本発明の細胞傷害性分子を含む複合体は、悪性細胞を破壊する治療目的、特にガン治療の枠組みにおいて特に有用である。
【0057】
前記定義された複合体の、更にもう1つの特に好ましい実施態様において、前記複合体は、以下の式:
【化30】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、荷電分子であり、負電荷少なくとも1つを含む、例えばDNAである)
で表されることを特徴とする。
【0058】
このような複合体は、DNAによる細胞の形質転換又はトランスフェクションに特に適している。
【0059】
前記定義された複合体のもう1つの特に好ましい実施態様において、前記複合体は、以下の式:
【化31】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、荷電分子であり、負電荷少なくとも1つを含む、例えばDNAである)
で表されることを特徴とする。
【0060】
このような複合体は、更に、DNAによる細胞の形質転換又はトランスフェクションに特に適している。
【0061】
本発明のさらなるもう1つの特に好ましい実施態様において、前記複合体は、以下の式:
【化32】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、正電荷少なくとも1つを含む荷電分子である)
で表されることを特徴とする。
【0062】
例えば、前記カーボンナノチューブを、正荷電分子、例えば正荷電タンパク質を担持するために特に使用することができる。
【0063】
本発明のさらなるもう1つの特に好ましい実施態様において、前記複合体は、以下の式:
【化33】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、正電荷少なくとも1つを含む荷電分子である)
で表されることを特徴とする。
【0064】
例えば、前記DTPA置換カーボンナノチューブを、正電荷分子、例えば正電荷タンパク質を担持するために特に使用することができる。
本発明は、又、前記荷電分子を細胞内に運ぶための複合体の使用に関する。
従って、前記複合体を個体に投与することができ、そして前記複合体は、個々人の輸送流体、例えば血液又はリンパ液中で運ばれる間は会合された形態のままであり、そして、複合体が細胞膜を通過する間、その後、細胞に浸透するとすぐに、複合体は解離し、前記荷電分子を遊離させることができる。
【0065】
本発明の前記複合体は、エネルギー非依存性メカニズムによって細胞に浸透することができる。特には、前記浸透は、エンドサイトーシス及びファゴサイトーシス非依存性であることができる。
【0066】
本発明は、更に、薬剤学的に許容可能な担体と共に、前記複合体を活性物質として含む、医薬組成物に関する。
【0067】
前記医薬組成物は、遺伝薬剤又は免疫療法医薬品及びワクチン接種医薬品の製造に有用である。より具体的には、前記医薬組成物は、治療上のタンパク質の細胞への輸送、又は遺伝子治療又はDNAワクチンの枠において有用であり、治療の又は予防の核酸断片を運ぶために、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、アンモニウム機能化単層カーボンナノチューブ(SWNT−NH 1)、アンモニウム機能化多層カーボンナノチューブ(MWNT−NH 2)、そしてリジン機能化単層カーボンナノチューブ(SWNT−Lys−NH 3)を示す。
【0069】
【図2】図2A〜図2Dは、アミノf−MWNT(MWNT−NH 2)(濃度 2.5mg/mL)で処理したヒーラ(HeLa)細胞の超薄横断切片を示す。培養後、細胞は固定され、染色され、脱水され、エポン812レジン(Epon 812 resin)[商品名]に包埋された。超薄層(厚さ90nm)は、超ミクロトームで切断された。図2A(A)は細胞全体であり、図2B(B)及び図2C(C)は2つ続けて拡大したものである。図2D(D)は、細胞膜を横切っている多層カーボンナノチューブを示す。白い点の矢印は染色質を示し、白いダッシュの矢印はミトコンドリアを示し、白い細い矢印はゴルジ複合体を示し、中間の矢印は核膜を示し、白い太い矢印は液胞(vacuolum)を示す。
【0070】
【図3】図3A〜図3Fは、HeLa細胞のフローサイトメトリー分析結果であり、カーボンナノチューブの不存在下(図3A)そして各々0.01mg/mL(図3B)、0.1mg/mL(図3C)、1.0mg/mL(図3D)、10mg/mL(図3E)の濃度におけるSWNT−NH1で培養された場合を示す。6時間培養及び洗浄後、細胞を分析した。それぞれの独立した実験において、細胞をプロピジンアイオダイド(propidium iodide)(Y軸の相対強度)及びアネキシン(annexin)V−APC(X軸の相対強度)で染色した。機能化カーボンナノチューブの内在化をFACS法によりモニターし、前記SWNTに共有結合したフルオレセインプローブの前記細胞相対含有量を分析した(図3F)。連続の黒い線は、3.0mg/mLSWNT−FITCで処理後分析された細胞集団(12濃度)であり、灰色の領域は処理前の細胞集団である。細胞の95%より多くは、前記蛍光標識を内在化している。
【0071】
【図4】図4は、SWNT−NH1によるプラスミドDNAの送達及び発現を示す。CHO細胞中の総タンパク質(mg)当たりの相対発光量マーカー遺伝子(β−Gal)発現のレベル。異なる電荷比(SWNT−NH:DNA)で、3つの異なる培養時点で試験を行った。細胞分離及び細胞死を示す毒性は、この試験全体を通じて観察されなかった。SWNT−NH1及びプラスミドDNAをそれぞれCnt及びDとして図に示す。
【0072】
【図5】図5A〜図5Cは、第8〜10週齢のオスBALB/cマウスの肝臓(図5A)、肺(図5B)及び脾臓(図5C)中のルシフェラーゼの発現を示す。一群当たり3匹の動物に、50μgプラスミドDNA(pEGFP−Luc、Clontech)のみ、又はラピッドハイドロダイナミック注入法(rapid hydrodynamic injection protocol:Lecocq et al、Journal of Gene Medicine 5(2):142−156、2003)による、0.9%(w/w)NaCl水性緩衝液中の600μgSWNT−NH1のプレ複合体を投与した。組織は投与後16時間経過後集められ、そしてルシフェラーゼ発現はトロピックスラックスクリーン(Tropix LucScreen)アッセイキット及びバートルド9507照度計(Berthhold 9507 luminometer)を使用することにより分析を行った。
【0073】
【図6】図6AはプラスミドpEGFPLucの制限地図を模式的に示しており、図6BはプラスミドpCMVβの制限地図を模式的に示す。
【0074】
【図7】図7はプラスミドpRc/CMV−HBs(S)の制限地図を模式的に示す。
【0075】
【図8】図8A〜図8Fは、MWNT−NH:DNA(図8A〜図8C)及びSWNT−NH:DNA(図8D〜図8F)について6:1の電荷比で形成されたカーボンナノチューブ:DNA複合体のSEM画像を示す。
【0076】
【図9】図9は、MWNT−NH2で機能化されたセンサーチップのSEM画像を示す。
【0077】
【図10】図10は、プラスミドDNAとf−CNTとの相互作用のセンサグラムを示す。上図:プラスミドの濃度を増加することによるSWNT−Lys−NH3へのプラスミド結合のセンサグラムであり、それぞれの曲線は、一番低い曲線から一番高い曲線の順に、6.3μg/mL、12.6μg/mL、25.2μg/mL、50μg/mL、100μg/mLである。下図:プラスミドの濃度を増加することによるMWNT−NH2へのプラスミドDNAの結合のセンサグラムであり、それぞれの曲線は、一番低い曲線から一番高い曲線の順に、25.2μg/mL、50μg/mL、100μg/mLである。
【0078】
【図11】図11A〜図11Cは、機能化されたカーボンナノチューブの複合後のDNA凝縮を示す。SWNT−NH:DNA(図11A)、SWNT−Lys−NH:DNA(図11B)及びMWNT−NH:DNA(図11C)について2.5μg/mL free DNAのピコグリーン蛍光(PicoGreen fluorescence)パーセントとして示した、さまざまな電荷比でのf−CNTへ複合された2.5μg/mL DNAの凝縮。
【0079】
【図12】図12A〜図12Cは、f−CNT−DNA複合体の電気泳動の運動性を示す。全てのパネルにおいて、レーン1は0.2μg遊離DNAを示す。他の全てのレーンは、SWNT−NH:DNA(図12A)、SWNT−Lys−NH:DNA(図12B)及びMWNT−NH:DNA(図12C)における様々な+/−電荷比(レーン2は1:1、レーン3は6:1、レーン4は10:1)で、0.2μgDNAに複合されているf−CNTを含んでいる。OCは開環を示し、SCはスーパーコイルを示す。
【0080】
【図13】図13A〜図13Bは、様々な電荷比、SWNT−NH:DNA(図13A)、SWNT−Lys−NH:DNA(図13B)及びMWNT−NH:DNA(図13C)でのf−CNT:pDNAをもつ遺伝子送達を伴うヒト肺癌細胞(A549)におけるβ−galマーカー遺伝子の発現を示す(イムノメトリーアッセイの使用によるCNT不存在下における前記DNA対照を示している遺伝子発現レベル)。
【実施例】
【0081】
《実施例1》
カーボンナノチューブは、アゾメチンイリドの1、3−双極子環状付加に基づく方法を用いて共有結合的に修飾されている(Georgakilas et al.(2202)J.Am.Chem.Soc.124:760−761)。単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ(SWNT及びMWNT)の両方は、遊離アミノ末端トリエチレングリコール部分の窒素をもつピロリジン環で機能化された(図1)。カーボンナノチューブの周りの官能基(f)の量を、前記f−SWNT及び前記f−MWNTにおいて、それぞれ約0.55及び0.90mmol/gで計算した。リジンで機能化されたSWNTを、パンタロットら(Pantarotto et al.Chem.Biol.2003、10,961−966)の記載より、SWNT−NHから調製した。チューブの周りのアミノ基の量は、約0.92mmol/gで計算した。前記の正電荷分布は、水溶液中に高度に可溶化する物質であることを示している。
f−SWNT:DNA複合体の形成において、アミノ機能化された単層カーボンナノチューブは、6mg/mL濃度で脱イオン水において水和された。プラスミドDNA、pEGFP−Luc(図6A)、又はpCMVβ(図6B)、(いずれもClontech)は、1mg/mL濃度で脱イオン水において水和された。アリコートは、必要になるまで−20℃で冷凍貯蔵された。インビトロの研究のため、適当な容量のナノチューブを、300μLの総容量のオプティメム(optimem)で希釈した。pCMVβ3μgは、300μLのオプティメムを含む別のチューブに加えた。次に、希釈されたナノチューブを、DNAに滴下し、そして混合物を簡単にピペットで採取した。複合体は、使用前の10分間で形成されることができる。この工程は、試験されるそれぞれの電荷比において繰り返された。インビボの研究のために、ナノチューブ600μgを、0.9%NaCl 750μL中に希釈した。0.9%NaCl 750μL中に希釈されたpEGFP−Luc50μgを、ナノチューブに滴下し、そして混合物を簡単にピペットで採取した。この工程を三回繰り返し、すべての場合においてナノチューブとDNA比が2:1のものを作り出した。
【0082】
《実施例1A》
ビス機能化カーボンナノチューブの調製
第一手順を、以下の記載された反応工程で進行することができる。
【化34】

簡単には、カーボンナノチューブ(100mg)及びパラホルムアルデヒド(150mgを24時間毎3回)をDMF100mL中に懸濁する。 Boc−NH−(CHCHO)−CHCH−NHCHCOOH約150mg及びZ−NH−(CHCHO)−CHCH−NHCHCOOH167mg(モル比1:1)を添加し、前記反応物を125℃で72時間加熱した。加熱を停止し、そして有機相を、遠心分離及びPTFEフィルター(0.22μm)でのろ過により、未反応物質から分離した。ろ液を蒸発し、そして褐色の残留物をDCM中に溶解し、水で一度洗浄し、NaSOで乾燥する。前記溶媒を蒸発し、生成物をメタノール/ジエチルエーテルから数回再沈殿する。前記機能化カーボンナノチューブをTEM及びH−NMRにより明らかにする。
【0083】
《実施例1B》
ビス機能化カーボンナノチューブの調製
第二手順を、以下に記載された反応スキームで進行することができる。
【化35】

簡単には、カーボンナノチューブ(100mg)及びパラホルムアルデヒド(150mgを24時間毎3回)をDMF100mL中に懸濁する。Boc−NH−(CHCHO)−CHCH−NHCHCOOH、約150mg及びPht−NH−(CHCHO)−CHCH−NHCHCOOH、165mg(モル比1:1)を添加し、前記反応物は125℃で72時間加熱される。加熱を止められ、そして有機相を、遠心分離及びPTFEフィルター(0.22μm)でのろ過により、未反応物質から分離した。ろ液を蒸発し、そして褐色の残留物をDCM中に溶解し、水で一度洗浄し、NaSOで乾燥する。前記溶媒を蒸発し、前記生成物をメタノール/ジエチルエーテルから数回再沈殿する。前記機能化カーボンナノチューブをTEM及びH−NMRにより明らかにする。
第一手順及び第二手順でのBoc保護基の開裂を、以下に記載された方法により行うことができる。ジオキサン中の4MのHCl溶液をビス機能化カーボンナノチューブ(5mg)に添加し、そして混合物を常温で5時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、生成物をメタノール/ジエチルエーテルから数回再沈殿する。機能化カーボンナノチューブをTEM及びH−NMRにより明らかにする。定量カイザーテスト:0.35mmol/gの遊離NH
【0084】
第一手順(実施例1A)において、Z及びBoc保護基の同時開裂を以下のプロトコルにより行うことができる。TFA/TMSOTf/p−クレゾール(325:87:42.5 μL/μL/mg)溶液(400μL)をビス機能化カーボンナノチューブ(5mg)に添加し、そして混合物を常温で12時間撹拌する。生成物をジエチルエーテル中で直接に沈殿し、そしてメタノール/ジエチルエーテルからの再沈殿により数回洗浄する。機能化カーボンナノチューブの特性をTEM及びH−NMRにより明らかにする(TMSOTf、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォン酸塩)。定量カイザーテスト:0.70mmol/gの遊離NH
【0085】
前記Z/Bocの計画は、完全に直交していない。実際には、前記カーボンナノチューブ側壁上の前記アミノ基の部分を保護する前記Boc基に影響を及ぼさないで前記Z基を取り除くことは可能ではない。
【0086】
第二手順(実施例1B)においては、フタルイミド保護基の開裂を以下のように行う。エタノール(10mL)中のヒドラジン(36.5μL、752μmol)をビス機能化カーボンナノチューブ(9.4mg)に添加し、そして混合物をアルゴン下、常温で16時間撹拌する。前記溶媒を除去し、メタノールを添加し、フタルヒドラジドを除去するために溶液を遠心分離する。前記生成物をメタノール/ジエチルエーテルから数回再沈殿する。機能化カーボンナノチューブの特性をTEM及びH−NMRにより、明らかにする。定量カイザーテスト:0.6mmol/gのNH
【0087】
選択的に再び保護されれば、前記のそれぞれのピロリジン環に相当する反応基を当業者に公知の方法に従って置換することができる。
【0088】
《実施例1C》
ビス機能化カーボンナノチューブの調製
第三手順において、ビス機能化カーボンナノチューブをフルオレセインイソチオシアネートと反応することができる。この方法は、以下の反応工程に示されている。
【化36】

【0089】
簡単には、アミノ機能化カーボンナノチューブ(定量カイザーテストで測定される遊離NHの量に相当する7mg、4.2μmol)を、DMF200μLに可溶化する。DMF200μL中のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(4.9mg、12.6μmol)溶液を添加し、そして前記溶液を常温で一晩撹拌する。溶媒を除去し、そして生成物をメタノール/ジエチルエーテルから数回沈殿する。カイザーテストは陰性である。前記機能化カーボンナノチューブをTEM及びUV−Visにより明らかにする。
【0090】
第三手順のために、前記Boc保護基の開裂を以下のように行うことができる。ジオキサン中の4MのHCl溶液をビス機能化カーボンナノチューブ(5mg)に添加し、そして混合物を室温で5時間撹拌する。前記溶媒を減圧下で除去し、生成物をメタノール/ジエチルエーテルから数回再沈殿する。前記機能化カーボンナノチューブをTEMにより明らかにする。定量カイザーテスト:0.35mmol/gのNH
【0091】
《実施例2》
細胞内に透過する機能化カーボンナノチューブの能力を調べた。
以前に、発明者らは、蛍光プローブ(FITC)で標識したカーボンナノチューブで、細胞と相互作用し、そして細胞内へ摂取されるカーボンナノチューブを視覚化することができた。透過型電子顕微鏡(TEM)を使用する別の実験的なアプローチを、カーボンナノチューブの局在化が起こっている特定の細胞内区画を同定するために、今回行なった。
【0092】
HeLa細胞を37℃でDMEM培地を用い培養し、80%密集度を超えて増殖した後、2.5mg/mL濃度のアミノ遊離f−SWNT及びf−MWNT(図1)を細胞に添加した。ナノチューブを1時間細胞と相互作用させ、そして前記細胞を、その後洗浄し、固定し、染色し、脱水し、エポン812レジン(Epon 812 resin)[商品名]に包埋した。前記ポリマーは、その後ダイアモンド超ミクロトームを使用し約90nmの超薄層に切断し、そしていくつかの薄片をTEMで分析した。
【0093】
より正確には、SWNT及びMWNT[カーボンナノテクノロジー社(Carbon Nanotechnology、Inc.)及びナノストラクチャー・アンド・アモルファスマテリアルズ社(Nanostructured&Amorphous Materials、Inc.)からそれぞれ得られた]は、ジョーガキラスら(Georgakilas et al.(2202)J.Am.Chem.Soc.124:760−761)の記載により機能化した。HeLa細胞(1.25×10)を、75%密集度まで37℃及び5%COでDMEM培地を使用し16ウエルプレートに培養した。細胞を、その後f−SWNT−NH及びf−MWNT−NH溶液(PBS中の2.5mg/mL)で2時間培養し、PBSで2回洗浄し、カコジレイト緩衝液(0.075Mカコジレイトナトリウム、1mMCaCl、1mMCaCl、4.5%スクロース、pH7.3)中のグルタルアルデヒドで、常温で2時間固定した。カコジレイト緩衝液中のピクリン酸の1/10飽和溶液の10容量/容量%の量を、その後それぞれのウエルに添加し、そして4℃で一晩中培養した。蒸留水を使用し検体を15分間3回洗浄し、その後常温で2時間カコジレイト緩衝液の1%OsO溶液で処理した。細胞を蒸留水で注意深くすすぎ、そして4℃で一晩、水溶液中の2%酢酸ウラニル溶液で後固定した。数回洗浄後、前記細胞を10分間、70%及び90%エタノールでそれぞれ乾燥し、そして20分間無水エタノールで2回乾燥した。未使用のエポン812レジン[商品名]の量をEMS(電子顕微鏡科学)技術データシートによって提案されているように調製し、そしてそれぞれのウエルに分配した。前記プレートを3日間65℃でオーブンに貯蔵した。それぞれのレジンブロックを、その後プラスチック支持体から除去し、そして切断した。ダイアモンドナイフ超薄切片法をもつレイクハートジャング・ウルトラカットE・ウルトラマイクロトーム45°(Reichert−Jung Ultracut−E ultramicrotome[商品名]45°)を前記レジンに包埋された前記細胞を切断するために使用した。90nmの厚さ値を選択した。3つの連続薄片をフォームバーグリッド(formvar grid)に置き、75kVでエレクトロニックトランスミッション顕微鏡(electronic transmission microscope Hitachi600)で観察した。画像を異なるレベルの倍率でAMT高感度カメラにより撮影した。
【0094】
図2A〜図2Dは、前記f−MWNTと培養したHeLa細胞を示している。異なる細胞区画を図2A中の白い矢印により示している。様々なナノチューブが細胞内において明らかに見え、それに続く倍率(図2B及び図2C)は、前記f−MWNTの細胞内局在化の高解像度の視野を可能にする。HeLa細胞との相互作用の同じパターンが、SWNTにおいて見られた。大変興味深いことに、前記ナノチューブのいくつかの核内での局在が、確かにサンプルのすべてに常に観察された。しかしながら、カーボンナノチューブの細胞内移動、カーボンナノチューブの核転座の効率及びメカニズムを議論するためには、より詳細な研究が必要とされる。前記の細胞切片の注意深い観察も、前記細胞膜バリアの横断工程の間における、ナノチューブ観察を可能にする。図2Dは細胞膜との相互作用、そして取り込まれているf−MWNTを示している。見られるナノチューブは直径約20nm及び長さ200nmを有している。細胞の取り込みの形式は、まだ明らかではないが、チューブの半剛体及び細長い形状はエンドサイトーシスの過程を除外している。このことは、エンドサイトーシスメカニズムを含むエネルギー依存性の細胞過程の典型的な阻害物質であるアジ化ナトリウム又は2,4−ジニトロフェノールによる、細胞の前培養によっても確認された。カーボンナノチューブは、受動的メカニズムを介して前記細胞に入る可能性がある。それらはナノニードレス(nanoneedles)のように振る舞うように思われ、細胞死を起こさないで細胞膜に穴を開ける。実際、これは他のカチオン巨大分子、例えばペプチド及びデンドリマーと対比すると、一般的に細胞溶解の原因となる細胞膜の不安定化の原因となる(Rittner et al.(2003)Mol Ther.5:104−14;Boas and Heegaard(2004)Chem.Rev.Soc.33:43−63)。
【0095】
そして、異なる濃度での前記カーボンナノチューブの細胞毒性は、フローサイトメトリーにより評価された。この実験では、フルオレセインイソチオシアネートで誘導したアミノf−SWNT又はf−SWNTを、細胞と培養した。
【0096】
簡単には、FACSによって細胞の生存を分析するために、10%(v/v)ウシ胎仔血清を添加したDMEMの、指数増殖中のHeLa細胞を、異なる濃度(0.01−10mg/mL)のf−SWNT−NH及びf−MWNT−NH溶液と6時間培養した。すすぎ、そして37℃で5分間トリプシンで剥離させ、1000tr/minで遠心分離し、アネキシン(annexin)V緩衝溶液で3回洗浄した。100μLの同じ緩衝液及びアネキシンV−FITC0.5μLを前記の細胞に添加し、そして暗所で15分間培養した。その後、プロピジウムヨウ化物染色溶液(50μg/mL)5μLを添加した。前記分析をサイトフルオリメトリー・ファックスキャリバー(cytofluorimetry FACSCalibur)を使用し行った。機器を494nm及び647nm励起波長で操作した。セルクエスト(CellQuest)[商品名]ソフトウェアをデータ分析に使用した。サンプル当たり最少40,000イベントを分析した。また、HeLa細胞を引例6に記載の異なる濃度でSWNT−FITCと培養した。
【0097】
図3A〜図3Eは、アミノf−SWNTの0.01mg/mL〜10mg/mL濃度の範囲における、細胞動態を示す。1mg/mLまでは、細胞の80%は生きており、そしてナノチューブの最高濃度においては、生存率は50%に減少することがわかった。アミノ機能化CNTは、以前研究されたSWNT−FITCよりも、より少ない毒性であることを見出すことができる。更に、前記機能化カーボンナノチューブが細胞内にあることを証明するために、後者の実験では、SWNT−FITC(3mg/mL)で培養され、そしてFACS方法で可視化した(図3F)。95%より多い細胞が、蛍光的に標識されたナノチューブを取り込んでおり、このデータは、細胞表面への強い親和性そして続いて細胞内在化を示すことを示唆している。前記のデータは図2A〜図2Dで示される電子顕微鏡観察と相関しており、ナノチューブと細胞との強い相互作用を示している。
【0098】
従って、アミノ機能化カーボンナノチューブの細胞に入り、核に達する高い能力は、プラスミドDNAの送達のために活用される。
【0099】
CHO細胞(ATCC)を、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(すべてGibcoから)を添加したF12−K培地で、96ウエル組織培養ディシュ(Corning−Costar)中に90%密集度に増殖させた。培地を除去し、そして前記f−SWNT:DNA複合体50μLをそれぞれの条件で、3つのウエルに添加した。30、90、又は180分間後、トランスフェクション培地を除去し、新鮮な培地に置き替えた。対照として、3つのウエルをオプティメム50μL中のDNA0.25μgでトランスフェクションした。細胞を48時間培養し、その後集菌した。β−ガラクトシダーゼ活性を、トロピックス・ガラクトライト・プラスキット(Tropix Galactolight Plus kit)及びバートルド(Berthold)9507照度計を使用し、メーカーの取扱説明書に従い、測定した。
【0100】
図4は、ナノチューブと遺伝子をコードしているプラスミドDNAとの相互作用後に得られたCHO細胞中のマーカー遺伝子(β−Gal)発現のレベルを示す。他の非ウィルス遺伝子送達ベクターと同じで、SWNT表面でのアミノ基とDNA骨格のリン酸基との間の電荷比は、得られた遺伝子発現のレベルの決定要素であると考えられる。f−SWNT:DNA電荷の2:1と6:1(+/−)との間の比は、DNAのみと比較すると、5〜10倍高い遺伝子発現のレベルを提供する。細胞毒性はこの実験を通じて観察されず、たとえ、前記f−SWNT:DNAとCHO細胞との培養時間が3時間でも観測されなかった。
【0101】
《実施例3》
本発明によるアミノ機能化されたSWNTとプラスミドDNA複合体を、生体内の遺伝子送達の研究に使用した。
【0102】
簡単には、すべての実験動物の研究は、事前の許可及びUK Home Officeにより示されている規制下で行われた。第8〜10週齢のオスBALB/cマウスを、イソフルレン吸入により麻酔した。50μgDNAを含むナノチューブ:DNA複合体1.5mL、対照として生理食塩中1.5mL中のDNA50μgを投与した。ラコックら(Lecocq et al.(2003)J.Gene Med.5:142−156)の記載のラピッドハイドロダイナミック注入(rapid hydrodynamic injection)によって、マウスの尾静脈を介して注入された。その後、マウスを16時間後に安楽死させ、肺、肝臓及び脾臓を回収した。組織を−80℃、一晩で凍結し、融解し、そして、25mMTris−HCl、pH7.8、2mMDTT、2mMEGTA、10%グリセロール、1%Triton X−100(すべてSigmaから)を含む溶解緩衝液中においてホモジェナイズした。ルシフェラーゼ活性をトロピックスラックスクリーン(Tropix LucScreen)アッセイキット及びバートルド(Berthold)9507照度計を使用し決定した。検体はピアスBCAアッセイキット(Pierce BCA Assay kit)を使用し、総タンパク量を補正した。実験は、グループ当たり3匹の動物を使用し、すべてのアッセイは、4回の検体の検査を行なった。
【0103】
結果を図5A〜図5Cに示しているが、尾静脈ハイドロダイナミック(tail vein hydrodynamic)投与の後に、アミノ機能化SWNTとプラスミドDNAとの相互作用は生体内の遺伝子発現レベルを妨げないことを示している。DNAがf−SWNTと複合化した場合、すべての3つの組織におけるルシフェラーゼ遺伝子発現レベルは、24時間前投与で緩やかな(肝臓組織発現においては統計的に有意ではない)アップレギュレーションを示した。興味深いことに、肺及び脾臓組織中の発現データから、前記f−SWNT:DNAのルシフェラーゼ発現においては2〜3倍の増大があり、プラスミドのみのDNA投与と比較してDNAの生体分布の変化を示している。より重要にもかかわらず、特にこれはカーボンナノチューブを使用し行われた最初の生体内の遺伝子送達研究であるので、チューブは3つの組織中のいずれかにおいて遺伝子発現を下方制御するとは全く思われない。一方、先端の投与プロトコルにもかかわらず、すべての動物は遺伝子送達システムに副作用がないことを示した。遺伝子送達ベクターシステムの要素としてカーボンナノチューブにより提供することができる遺伝子発現の効率及び強化を最適化及び評価するために、更なる研究が必要である。本研究において報告されているデータは、新規ナノチューブベースの遺伝子送達ベクターシステムを巧に処理するための要素として使用されるカーボンナノチューブの最初の例を構成している。使用された機能化ナノチューブは、エンドソーム非依存性メカニズムであると思われ、細胞中で相互作用し、そして細胞中に取り込まれることができることを示している。細胞障害試験は、典型的な遺伝子導入への適用で使用される濃度より高い、10mg/mL濃度まで、機能化ナノチューブが細胞に許容されることを示している(本遺伝子送達実験において、使用される最も高いナノチューブ濃度は3mg/mLであった)。更に、DNAのみと比較してより高いDNA取り込み及びインビトロの遺伝子発現を容易にするため、f−SWNTをプラスミドDNAと相互作用した。レベルは市販の遺伝子トランスフェクション試薬ほど高くはないが、それらは最適化できることを示している。更に興味深いことに、尾静脈ハイドロダイナミック(tail vein hydrodynamic)投与による生体内の遺伝子発現は障害されることなく、そしてすべての動物に寛容であった。従って、機能化カーボンナノチューブを、更に遺伝子送達ベクターの構築のための新規なナノチューブとして探索することができ、好ましい生体内の細胞障害性の許容レベル及び生体内の副作用効果の徴候もないことを示し、そして、遺伝子発現の有益なレベルを維持している。
【0104】
《実施例4》
HBsAgをコードしたプラスミド(pRc/CMV−HBs、図7)と複合化したアミノ機能化SWNT(SWNT−NH 1)をマウスにおけるワクチン実験に使用した。
【0105】
簡単には、6週〜8週齢のBalb/cマウス6匹の4つのグループにおいて、最初に対照実験を行い、マウスは筋肉内(IM)注射によって、それぞれ:
−PBS;
−pRc/CMV−HBs(S)(10μg/マウス);
−pRc/CMV−HBs(S)(100μg/マウス);
−HBsが挿入されていないプラスミド(100μg/マウス);
を免疫された。
【0106】
前記免疫遺伝子をPBS100μLに懸濁する。それぞれのマウスは、それぞれの後脚の脛骨の筋肉に、1回の両側の注入(50μL)を受けた。
【0107】
pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT複合体の実験において、各種の負電荷/正電荷比でf−SWNTに吸着されたプラスミドの投与は、それぞれの免疫ルート、及びそれぞれのプラスミドの量において行われた。pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT複合体の3つの負電荷/正電荷比(1:1、1:2、及び1:6)を使用する。
【0108】
従って、6週〜8週齢のマウス、Balb/c6匹の9つのグループは、それぞれ:
−PBS
−pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT 負電荷/正電荷 1:1
(10μg/マウスのプラスミド)、
−pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT 負電荷/正電荷 1:2
(10μg/マウスのプラスミド)、
−pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT 負電荷/正電荷 1:6
(10μg/マウスのプラスミド)、
−pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT 負電荷/正電荷 1:1
(100μg/マウスのプラスミド)、
−pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT 負電荷/正電荷 1:2
(100μg/マウスのプラスミド)、
−pRc/CMV−HBs(S)/f−SWNT 負電荷/正電荷 1:6
(100μg/マウスのプラスミド)、
−f−SWNTのみ(1:6比の投与量に相当する量)、
−f−SWNTに複合化したHBsが挿入されていないプラスミド(対照実験に基づいて作られた1つの負電荷/正電荷比)、
を免役された。
【0109】
マウスは、それぞれの前脛骨筋(anterior musculus tibialis)に、PBS50μLに懸濁した5又は10μgプラスミドDNAの1回の両側筋肉内(IM)注射を受ける。対照マウスは、HBsが挿入されていない100μgプラスミドを含む2×PBS50μLをIM注射された。
【0110】
あるいは、前記と同様のプロトコルを、尾の付け根の皮下(SC)注射(10若しくは100μgのプラスミド、又は各種のf−SWNTとの複合体を含む、PBS200μL)を用いて、繰り返すことができる。
【0111】
誘導された細胞応答を、投与後10日で分析し(3マウス)、一方、液性反応を10週間後に調べた(3マウス)。抗体反応の経過を調べるために、血清検体を、10週の期間にわたり、免疫原の投与後15日毎に集める。動物は細胞応答を検査するため、10週後に安楽死する。
【0112】
抗−HBsの液性免疫反応をヨーン(Yoon et al.,1999,J Korean Med.Sci.14:187−92)の記載により、測定する。簡単には、IM及びSC免疫マウスの血清中の抗−HbsIgG抗体産生をELISA法により測定する。ELISAプレートを、0.05M 炭酸塩−重炭酸塩緩衝(pH9.6)中に溶解した1μg/mL HBVプレS2抗原(a.a.120−145、Sigma、H−7395、USA)で、4℃、一晩コートした。ブロッキングは、ブロッキング溶液(0.05%Tween20−PBSに0.5%BSAを溶解)200μLで、37℃、2時間プレートをインキュベートすることにより行った。マウス血清を抗体緩衝液(0.05%Tween20−PBSの0.5% BSA溶液)中で1:50から1:1600に2倍段階希釈し、そして希釈された血清100μLを、プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。抗体緩衝液に1:1000に希釈したセイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson Immuno−Research Laboratories Inc、West Grove、PA)を二次抗体として使用し、前記プレートを、更に37℃1時間インキュベートした。洗浄後、最後の反応は、ウエルあたり、基質溶液(10%クエン酸リン酸緩衝液pH5、+0.04%H + 90%の72mLジメチルスルホキシドを含む溶液+グリセロール18mL+3,3’,5,5’−テトラメチレンベンジジン300mg)150μLを、37℃、15分間添加することにより、視覚化された。反応を0.25M HClで停止し、そして450nmで吸光度を測定した。データは、ODが0.2の希釈の逆数に相当する抗体価として表わす。
【0113】
脾臓のCTLの頻度の決定は、クイサら(Kwissa et al.、2003、J.Mol.Med.81:91−101)に記載に従い行われる。簡単には、脾臓を無菌的に取り出し、そして貯蔵した。単細胞の懸濁液は、滅菌したメッシュスクリーン(100μm)に、組織を静かに通過させることにより調製した。赤血球をトリス緩衝塩化アンモニウムで溶解し、残った細胞を50μMβ−メルカプトエタノール、100IU/mLゲンタマイシン及び25mMHEPES添加RPMI1640(完全培地、CM)で、よく洗浄した。脾細胞は、FACS解析及びエリスポット(Elispot)アッセイのために、いずれかを直接、使用された。次に、脾臓細胞(1×10/mL)を、5μg/mLのHBsAg由来の合成L結合S28−29IPQSLDSWWTSLペプチド、又はD結合S201−209WGPSLYSILペプチドとRPMI−1640培地で1時間インキュベートする。その後、5μg/mLのブレフェルジンA(brefeldin A:sigma 15870)を添加し、そして培養物を、更に4時間インキュベートした。細胞を集菌し、そして表面をフィコエリトリン標識抗CD8モノクロナール抗体で染色した。表面を染色された細胞を、細胞内のIFNγの染色前に、リン酸緩衝液中の2%パラホルムアルデヒドで固定した。固定された細胞を透過緩衝液(Hank平衡塩類溶液、0.5%ウシ血清アルブミン、0.5%サポニン、0.05%アジ化ナトリウム)中で再懸濁し、そして常温で30分間、フルオレセインイソチオシアネート標識抗IFNγモノクロナール抗体と培養し、そして透過緩衝液で3回洗浄した。染色された細胞を、0.1質量/容量%アジ化ナトリウムを添加したリン酸緩衝液/0.3質量/容量%ウシ血清アルブミンで再懸濁した。CD8IFNγCTLの頻度をフローサイトメトリー分析により決定する。
【0114】
エリスポット(Elispot)IFNγは、以下のように行なう。ニトロセルロースマイクロプレート(Millipore、Molsheim、France)を、ラット抗マウスIFNγ(R4.6A2、PharMingen、Le Pont de Claix、France)でコートし、そして次に、洗浄し、10%FCSのCMを満たした。エフェクター細胞の複製アリコート(1×10脾細胞/ウエルを新たに単離した)をヒトrIL2(Boehringer Mannheim)30U/mLを加えたCM−10%FCSを含む前記のウエルに添加した。エフェクター細胞を10μg/mL HBsAg由来、合成L−結合S28−29IPQSLDSWWTSLペプチド又はD−結合S201−209WGPSLYSILペプチドと培養した。37℃で20時間後、ビオチン化ラット抗マウスIFNγ mAb(XMG1.2、PharMingen)を加え、一晩インキュベーションした。洗浄後、アルカリフォスファターゼ標識エクストラアビジン(ExtrAvidin:sigma)を添加し、そしてウエルを室温で1時間培養した。最後に、アルカリフォスファターゼ標識基質(Bio−Rad Laboratories、Hercule、CA)を30分間添加した。Spotを形成した細胞をコンピューターアシスト・ビデオイメージアナライザー(computer−assisted video image analyzer:Zeiss−Kontron、Jena、Ggermany)を用いて計測した。
【0115】
《実施例5》
本実施例において、真核細胞にDNAをトランスフェクトする、複合化された機能化カーボンナノチューブ(f−CNT)の能力を検証した。
【0116】
原料及び方法
総則
図1に示している、アンモニウム機能化単層カーボンナノチューブ(SWNT−NH 1)、アミノ機能化多層カーボンナノチューブ(MWNT−NH 2)、及びリジンにより機能化単層カーボンナノチューブ(SWNT−Lys−NH 3)は、実施例1に記載されている方法により調製した。
【0117】
アンモニウム機能化単層カーボンナノチューブ(1)及びアンモニウム機能化多層カーボンナノチューブ(2)を、6mg/mL及び6.6mg/mL濃度で、それぞれ脱イオン水に溶解した。リジン機能化単層カーボンナノチューブ(3)は、3.3mg/mL濃度で脱イオン水に溶解した。すべての溶液を、超音波処理槽(bath sonicator:80W、EMscope Laboratories、UK)中で、室温1分間、超音波処理し、その後、使用時まで4℃で貯蔵した。使用前に、ナノチューブ溶液をもう一度簡単に超音波処理した。これらの研究に使用されるプラスミドは、pCMV−Bgal(BD−Clontech、U.K.)、7.2kb、真核細胞発現ベクターであった。高度に精製されたスーパーコイルDNAの大量精製(gigaprep)は、バヨウ・バイオラボ(Bayou Biolabs、LA、USA)により調製した。ストック溶液は、1mg/mL濃度で脱イオン水により調製した。アリコートを使用まで−80℃で冷凍保存した。
【0118】
f−CNT:DNA複合体
機能化カーボンナノチューブ(f−CNT):DNA複合体を調製するために、適当な量のそれぞれの型のナノチューブを、総容量200μLの脱イオン化された水で希釈し、その後、それぞれの濃度のf−CNT用に、50μLずつの4つのアリコートに分割した。前記ナノチューブの型及び必な電荷比に応じて、f−CNT濃度は16.5μg/mLから300μg/mLの範囲とした。次に、同じ容量の5μg/mLDNA溶液を、3つの前記f−CNTアリコートに添加し、その後、素早く10回ピペッティングすることより混合し、250ng/mLの最終DNA濃度を作成した。50μL脱イオン化された水を、ナノチューブのみの対照として、それぞれのグループの第4のf−CNTアリコートに添加した。複合体は、使用前に室温、30分間で形成させることができた。前記の工程は、試験されるそれぞれの電荷比で繰り返しされ、相当する濃度で条件当たり、ナノチューブのみのサンプルに加え、3つのサンプルを作成した。
【0119】
走査電子顕微鏡
SEMを使用し、プラスミドと複合化されたSWNT−NH1及びMWNT−NH2の像を取得する。画像の作成は、前記6:1(CNT:DNA)電荷比の複合体サンプル、又は同じ濃度のナノチューブのみのサンプル30μLを、SEMスタブ(stub)に置くことによって実行し、そして金のコーティング前に室温で乾燥させた。この工程は、20mAで2分間、エミテックK550スパッタ−・コーター(Emitech K550 Sputter Coater)で行なった。画像の作成は、20−25KV間の加速電圧でFEIフィリップスXL30(FEI/Philips XL 30)走査電子顕微鏡(Eindhoven、The Netherlands)の下で実施した(それぞれの像も参照)。像を補足し、そしてデジタル化し保存した。
【0120】
表面プラズモン共鳴
BIAcore3000システム、センサーチップCM5、界面活性剤P20、N−ヒドロキシサクシニミド(NHS)及びN−エチルN’−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)を含むアミンカップリングキットは、BIAcore(Uppsala、Sweden)のものである。すべてのバイオセンサー試験は、泳動バッファーとしてHBS(20mM HEPES、20mM酢酸ナトリウム、140mM酢酸カリウム、3mM酢酸マグネシウム、0.02%界面活性剤P20、pH7.3)で実行した。ナノチューブの固定化は、ナノチューブ(酢酸緩衝液中の100μg/mL、pH4.0)35μLをEDC/NHSで活性化したセンサーチップCM5の表面に注入することによって行なった。これを、マトリックスの活性化されたフリーの部位を飽和させるために、続いて20μLエタノールアミン塩酸塩pH8.5を注入した。チップ上に非共有結合的に固定化されているナノチューブを除去するために、100mMHPO溶液を使用した。すべての結合実験は、25℃、30μL/minの一定流速で行なった。pCMV−BGalを前記泳動バッファー中に溶解した。各種の濃度のプラスミド(6.3から100μg/mL)を90秒間注入し、そして2分間の解離フェイズを続けた。すべての実験において、センサーチップを15μLの3MMgClで再生した。速度パラメータは、BIAeval3.1ソフトフェアを使用し計算した。分析は、簡易ラングミュア結合モデルを用いて行った。特異結合プロファイルは、チャンネルコントロールから応答シグナルを引いた後、得られた。それぞれのモデルの適合性は、カイ二乗値、及び理論モデルと比較した残留分布のランダム性によって判断した。
【0121】
f−CNT:DNA複合体のためのピコグリーンアッセイ(PicoGreen assay)
f−CNTとの複合化した後のDNAの近接性の程度を、二本鎖DNA結合試薬であるピコグリーン(PicoGreen:Molecular Probes、OR、U.S.A.)によって評価した。簡単には、カーボンナノチューブ:DNA複合体を、脱イオン化された水で10倍希釈し、250ng/mLの最終DNA濃度を作成した。次に、サンプル100μLをコースター96ウエルスペシャルオプティクスブラックプレート(CoStar 96−well special optics black プレート:Coming、NY、USA)の3つのウエルに添加した。本研究で使用されるプラスミド、pCMV−Bgalは、そもそもスーパーコイルの状態であり、アッセイキットを含まれるコントロールよりむしろ、前記プラスミドを用いて1000ng/mL〜31.25ng/mLの範囲の標準曲線を作成した。2xTE緩衝液(20mMTris/HCl/2mMEDTA、pH7.5)中のピコグリーン試薬100μLを、それぞれのウエル中に添加し、そして、プレートを3分間暗所でインキュベートし、その後、ワラックビクター(Wallac Victor:Wallac、UK)マルチウエルプレートリーダーを用いて、それぞれ485nm及び530nmの励起及び放射波長で測定した。測定される波長において、カーボンナノチューブのみでも自己蛍光を発するため、カーボンナノチューブのみの第2の標準曲線を作成し、バックグラウンドの蛍光を定量化した。その後、これをそれぞれのサンプルから引いた。パーセント遊離DNAは、それぞれの複合体のバックグラウンド補正されたPicoGreenカウントを、pBgal250ng/mLのみのバックグラウンド補正された測定値(100%遊離DNAを示す)で割ることによって決定した。データを3つのサンプルの平均で示し、プラス又はマイナスの標準偏差を示す。
【0122】
電気泳動運動性移動アッセイ(Electrophoretic Motility Shift Assay)
異なる電荷比の3つの型のカーボンナノチューブに複合化されているDNA(pBgal)0.2μg、又は対照としての遊離DNA0.2μgを、臭化エチジウムを含むTAE緩衝液中の1%アガロースゲルに添加した。ゲルを90Vで2時間、泳動し、その後UVPゲルドキュメンテーションシステム(UVP Gel Documentation System:Upland、CA、USA)を使用し、紫外光の下で撮影した。それぞれの検体は、2検体ずつ泳動した。
【0123】
遺伝子導入実験
A549細胞(ATCC、Middlesex、UK)を96ウエルプレートにほぼ密集するまで、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM(すべてInvitrogen/Gibco、Paisley、UK)で培養した。複合体は、無血清DMEMで0.75μgのpCMV−BGalを希釈し、そして、75μLの無血清DMEM中で適当量のSWNT−NH1、MWNT−NH2又はSWNT−Lys−NH3を希釈することにより形成し、DNA0.75μgを有する目的の電荷比を作成した。DNA溶液は、迅速なピペッティングにより、f−CNTと混合し、そして30分間で安定化させた。完全培地を前記A549細胞から取り除き、そして各種のf−CNT:DNA複合体150μLに置換した。コントロールとして、培地のみで処理した細胞、又はDNA0.75μgを含む培地で処理した細胞を、使用した。細胞を37℃で90分間、複合体と培養し、そして、次にトランスフェクション培地を除去し、完全培地に置き換えた。細胞を48時間置き、PBS中で1回洗浄し、溶解し、そしてトロピックス・ガラクトライト・プラスキット(Tropix Galactolight Plus kit:Applied Biosystems、CA、U.S.A.)及びルマットLB(Lumat LB)9507照度計(Berthold、Technologies、Bad Wildbad、Germany)を使用しβ−ガラクトシダーゼの発現を分析した。データは、DNAのみの群を引いた後、3つのサンプルの平均として示し、平均のプラス/マイナスの標準偏差を示した。
【0124】
結果
プラスミドDNAとf−CNTとの相互作用の後に形成される複合体を視覚化するために、SWNT−NH1とMWNT−NH2との両方を走査電子顕微鏡(SEM)によりβ−gal発現プラスミドの存在下(図8A〜8F)で、分析した。
5μg/mL濃度のプラスミドDNAと複合化されている水溶液中の180μg/mL濃度のSWNT−NH1(6:1電荷比を生じる)が、生体内での遺伝子発現のピークレベルを作り出すことを、前記の観察は(実施例2)は証明した。本実験において、SEMにより得られる複合体の物理的特性及び形態特性を調べるために、前記と同じ条件を使用した。同じDNA濃度と複合化される場合、利用可能な機能化アミノ基(0.90mmol/g NH)の使用量が相違するので、MWNT−NH2を99μg/mL濃度で可溶化し、同等の電荷比を作成した。カーボンナノチューブ:DNA複合体を6:1の電荷比で形成した場合、塊状の構造の非常に鮮明な像が、前記SEMサンプルグリッド(図8A〜8F)を通じて観察された。
【0125】
MWNT−NH:DNA複合体は4μmより大きい凝集体を形成し、平面格子構造をもっていた。DNA凝縮体は、ナノチューブの中に埋められているナノチューブを有する凝結物様の平面構造を形成する(図8A〜8C)。塊のような前記凝結物様のブロックを分離するエッジを定義しているウエル(well)なしに、DNAは非常によりタイトに密集しているように見える。f−SWNTの周りの直径1〜4μmのほとんどバラバラの凝集体粒子の形成によっても明らかなように、MWNT−NH:DNA複合体のSEMの画像は、異なる構造的特徴を示している。この場合において、単層カーボンナノチューブは、個別のチューブを連結する球状のDNA束状構造を有する並列格子を形成するように思われ、それらの末端は、複合体の端から伸びているように見ることができる。MWNT−NH:DNAの場合に観察された凝結物様の格子というよりも、SWNT−NH:DNA複合体は球体構造であることを十分定義することによって特徴づけられる。それらは、前記カチオンナノチューブの周りの凝縮したプラスミドDNAによって実現する様々な構造によるものであると発明者は信じている。前記の相違は、MWNT−NHの表面上のより大きいカチオン電荷密度、及びDNAをナノチューブ自身とより密接に結びつくことを可能にしている増加した表面領域の両方に帰することができる。
【0126】
機能化カーボンナノチューブ及びプラスミドDNAの間の親和性を定量化する試みにおいて、それらの相互作用を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。この研究において、SWNT−Lys−NH3に相当するf−CNTの2型も使用した(図1)。チューブ上のNH基及びチップの金表面のカルボキシル基(順にカルボジイミド及びN−ヒドロキシスクシニイミドで活性化した)の間の安定なアミド結合を形成することによって、図1のナノチューブをセンサーチップ上に固定化した。第1ステップの後に酸洗浄処理を続け、すべての試薬及び過剰なカーボンナノチューブを除去した。前記のナノチューブの共有結合による固定化は、センサグラム応答の明らかな増加によって証明された。
【0127】
SWNT−NH1及びSWNT−Lys−NH3の両方の場合において、固定されたチューブの量は、100mMリン酸で丁寧な洗浄後に、著しく減少した。これは、センサーチップ上に一定量のナノチューブが非特異的に結合しているためとすることができる。共鳴ユニットの著しい減少は検出されなかったので、酸処理はMWNT−NH2には影響しなかった。ナノチューブを有するセンサーチップの機能性をより明らかにするために、前記センサーチップのSEM分析を行なった。前記の技術を用いて、チップ表面へ共有結合されたナノチューブを可視化することができた。図9は、前記センサーチップチップ表面を被覆するカルボキシメチル化デキストランの上部のWNT−NH2のSEM画像を鮮明に示している。チューブは、直径20nmと70nmとの間であり、それらは単一体として存在する。
【0128】
センサーチップ上への各種のチューブの固定化の後に、プラスミドDNA、pCMV−Bgalとそれらの相互作用を検討した。前記プラスミドを、注入される緩衝液(6.3〜100μg/mL)中において異なる濃度で使用した。それぞれの濃度において、結合曲線(association curve)及び解離曲線を簡易ラングミュア結合モデルを使用し別々に適合させた。SWNT−Lys−NH3及び前記MWNT−NH2とプラスミドの結合のセンサーグラムデータを図10にまとめた。前記フィッティングパラメータの分析は、SWNT−Lys−NH3、及びMWNT−NH2のそれぞれの見かけの平衡結合定数である4.45×10M及び2.36×10−1を、我々に計算させることを可能にする。
【0129】
SPR(共鳴ユニットとして示される応答)は、金表面上の100nmまでの流体相中の複合体の検出を可能にする。固定化されたカーボンナノチューブと前記プラスミドDNAとのすべての相互作用が、金表面(100nmの厚さ)の信号感受領域内で検出されるそれらの相互作用によって、一般的に示すことができるという仮定の下で、前記の2つの関与した要素の間の正電荷/負電荷比を計算することができる。RU値(1RU=1picogram/mm)の単純な変換は、SWNT−Lys−NH:DNA、及びMWNT−NH:DNA複合体のそれぞれの電荷比62.5:1及び11.5:1を示す。MWNT−NHは、SWNT−Lys−NHと比較してより多い量のDNAを凝縮することができる。電荷密度は両方の系において、ほぼ同じであるので、前記の相違は、2つの型のナノチューブの相対的大きさによるものであることは確実である。MWNTは、DNAと相互作用するための、より多くの利用可能な表面を提供する。SPRの研究から、f−CNTはプラスミドDNAと強い親和性を持っており、強いイオン相互作用によって安定される超分子複合体を形成すると結論づけることができる。塩化マグネシウムによるセンサーチップの再生工程中のプラスミドの完全解離によって確認されるように、静電相互作用は、完全に可逆的である。
【0130】
別の技術を前記f−CNT:DNAの研究のために使用した。ピコグリーン・ダイ・エクスクルージョン(PicoGreen dye exclusion)アッセイを、溶液中のナノチューブによるDNAの凝縮の程度を評価するために用いることができる。ピコグリーン蛍光は、二本鎖DNA塩基対間への挿入により約1000培増加する。DNAが凝縮した場合、前記色素はDNAと相互作用することを妨害される。従って、凝縮したDNAを同じ濃度の遊離DNAと比較した場合、蛍光の減少が観察される。
【0131】
この研究において記載されている3つすべての型のf−CNTの相互作用は、図11A〜図11Cにおいて示されているDNAとの電荷比の範囲にわたって評価された。複合体形成のあいだのプラスミドDNA濃度は2.5μg/mLで一定であり、一方、ナノチューブの濃度は8.25μg/mLから150μg/mLの範囲であり、それは、検討されるチューブの型と電荷比に依存している。3つのすべての場合において、f−CNTはDNAを明らかに凝縮することができる。SWNT−NH1(図11A)は、DNAの凝縮において、最少の効率のようである。電荷比1:1で、DNAの43%のみを凝縮し、6:1で58%に徐々に増加する。さらなる凝縮は、より高い電荷比において起こることはほとんどないようである。96%を超えるDNAが、電荷比1:1のMWNT−NH2(図11C)によって凝縮され、そして99%のDNAが電荷比6:1及びそれ以上の電荷比によって、凝縮される。MWNT−NHと同様の表面電荷負荷をもつSWNT−Lys−NH3の場合(図11B)において、約74%のDNAは電荷比1:1で凝縮されるようであり、6:1で85%まで徐々に増加し、10:1で最大凝縮に到達し、92%を超えるDNAが凝縮される。
【0132】
前記ピコグリーンデータは、前記のSEM像(図8)において見られたように、MWNT−NHと比較してSWNT−NHとの相互作用後のDNAの明らかに少ない凝縮パックの観察を確認する。これは、より低い電荷負荷効率(charge loading efficiency)、及び他の型のf−CNTと比較した場合に、SWNT−NH上で利用可能な正電荷への接近が比較的制限されていることによるものであると考えられている。同様に、MWNT−NHは、非常に効率良くDNAを凝縮するようである。
【0133】
次に、f−CNT:DNA複合体の移動を、アガロースゲル電気泳動及びEtBr(臭化エチジウム)排除によるDNA凝縮によって検討した(図12A〜図12C)。これらの検討において使用される前記プラスミドpCMV−βGalは高度に精製され、約85%はスーパーコイル化され、残りの15%はオープンサーキュラー型であった(レーン1、図12A)。f−CNTによるDNAの凝縮は、EtBr挿入を排除し、蛍光シグナルを消す。従って、前記f−CNT:DNA複合体に関与する凝縮されたDNAを観察することは可能ではない。一般的に、図12A〜図12Cで観察される前記蛍光バンドは、十分なEtBr挿入を可能にする遊離(複合化されていない)DNAから発生している。また、図12A〜図12Cもf−CNT:DNA電荷比の増加に伴い、遊離DNAバンドの蛍光強度の全体的な減少を示しており、これは、より高い程度のDNA凝縮を原因とする、EtBr挿入のための利用できるDNA塩基の低下によるものである。典型的には、このアッセイは、DNA移動度のシフトによって示されるように、DNA構造の異なる型の移動を検討するために使用されている。この場合においては、完全にDNAを凝縮することができると思われないSWNT−NHの場合(図12A)においてのみ、検討が可能であり、レーン2、3及び4において、遊離DNAの異なる構造(傷の入ったDNAを含む)が明らかである。
また、図12A〜図12Cのデータは以前の実験と著しく一致していることがわかる。SWNT−NH:DNAの場合において、強い蛍光シグナルは、1:1電荷比(図12A)に相当するレーン2中で観察され、多量の遊離DNAが存在していることを示している。電荷比が6:1まで増加するにつれて、蛍光強度の強い減少、及び前記遊離DNAバンドの上方へのシフトの増加が起こるが、前記+/−電荷比が10:1に更に増加しても、相違はほとんど見られない。複合化したDNAの量がこの範囲ではプラトーに達していることをピコグリーンデータは示していたので、これは予想されることである(図11Aも参照)。SWNT−NH:DNAの複合化と比較した場合、SWNT−Lys−NH3及びDNAの複合化(図12B)はより強いものであり、それは、遊離DNAバンドの総体的により弱い蛍光強度、及び電荷比の増加に伴う蛍光の漸進的な消失により観察されるものである。それは、挿入に利用可能な遊離DNA量が、更にもっと減少していることを示している。MWNT−NH 2の場合において、存在する遊離DNAの量がとても小さいために、前記1:1電荷比でかすかな蛍光シグナルのみを見ることができる(lane 2、図12C、また図11C参照)。同じレーンにおいて、検出されたかすかなスメアーは、前記MWNT−NH2と相互作用するDNAによるものであるが、完全に凝縮されていないものであると我々は信じており、いくらかのEtBr挿入を許し、またこれらの複合体の広く大量な分布を示している。より高いMWNT−NH:DNA比においては、DNAの全体の量は完全に凝縮されているので、蛍光バンドは消失する。
【0134】
f−CNTは前記ゲル中に存在する場合、前記遊離DNAバンドの位置の上方へシフトすることが見られるが、ナノチューブそれ自身の高いイオン強度のために、泳動バッファーの交代がほとんどの原因のようである。この移動は前記スーパーコイルのDNAの傷(nicking)のためであってもおこり、ナノチューブとの相互作用によるもの、又は混合工程中に維持するためのどちらでも、DNAをより開放した形に緩和させる原因となるけれども、高濃度のSWNT−NH1のみ(12 mg/mL)を、ブルーグリーン泳動バッファー(blue−green loading buffer)中で泳動したコントロール実験は、泳動バッファーのイオン強度がゲル中の分子移動における変化に関与することができることを示す、色素移動の明らかな遅延を証明した。
【0135】
最後に、形成される様々なf−CNT:DNA複合体の遺伝子導入の効率を検討した。データは、すべての3つの型の複合体は、すべての3つの図(図13A〜図13C)においてゼロの値に標準化されている、むき出しのDNAより高い効率でA549細胞をトランスフェクトすることができることを証明する。8:1の電荷比でDNAに複合される場合において、SWNT−NH1は遺伝子導入において最も効果があると思われ、SWNT−Lys−NH3は1:1の電荷比で最も効果があると思われる。興味深いことに、SWNT−NH1の場合は、前記の電荷比において、約30%のDNAは色素と相互作用するために遊離しており、そしてSWNT−Lys−NH3の場合は、同様に25%のDNAは遊離していることを、ピコグリーンのデータは示している。このデータは、f−CNTによるDNA凝縮の最適な程度が、より高いレベルの遺伝子発現を引き起こすことを示している。予想どおりに、MWNT−NH2の場合は、とても低い電荷比においてさえもDNAは完全に凝縮されるので、研究されるすべての電荷比及びDNA量にわたって、これらのナノチューブのトランスフェクション効率においてかなり違ってくるとは思われない。高い電荷比において95%のDNAを凝縮した、SWNT−Lys−NH3のトランスフェクション効率は、電荷比の増加とともに減少すると思われるが、同じ効果はMWNT−NH2のグループでは見られず、示したように、すべての電荷比にわたってトランスフェクション効率の同様のレベルを維持することに注意することが重要である。これは、単層ナノチューブより長くそして広い、多層ナノチューブの構造もまた重要な役割を果たすことができるという示唆であることができる。
【0136】
《実施例6》
水中で10と100μg/mLとの間の濃度のDTPAをもつ機能化カーボンナノチューブを、PBSバッファー中の0.1と1μMとの間の濃度でタンパク質と2時間混合する。タンパク質は、例えば、ストレプトアビジン、プロテインA、ウシ血清アルブミン、チトクロームCを含む。特に、7より大きい等電点をもつタンパク質が静電相互作用を完全に有効に利用できるために理想的である。前記複合体はTEM及びAFMによって特性を明らかにされ、そしてその後に細胞に供給される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電荷及び/又は負電荷を含むカーボンナノチューブの使用であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面に共有結合しており、前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的であり、そして前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでいるものとする、前記カーボンナノチューブと荷電分子少なくとも1つ(但し、前記荷電分子はClとTFAと異なっている)との複合体の製造への、前記使用。
【請求項2】
正電荷及び/又は負電荷を含む前記カーボンナノチューブの使用であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面において共有結合しており、前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的であり、そして前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでいる、前記カーボンナノチューブと約115より大きい分子量を有する荷電分子少なくとも1つとの複合体の製造への、前記使用。
【請求項3】
正電荷及び/又は負電荷を含んでいるカーボンナノチューブと荷電分子少なくとも1つとを含む複合体であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面において共有結合しており、
前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子は負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は少なくとも1つの正電荷を含んでおり(但し、前記荷電分子がClとTFAと異なるものとする)、
前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電的である、前記複合体。
【請求項4】
正電荷及び/又は負電荷を含んでいるカーボンナノチューブと約115より大きい分子量を有する荷電分子少なくとも1つを含む複合体であって、前記電荷が電荷を担持している基少なくとも1つによって担持され、前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面において共有結合しており、そして、前記カーボンナノチューブが正電荷を含む場合は、前記荷電分子が負電荷少なくとも1つを含んでおり、及び/又は前記カーボンナノチューブが負電荷を含む場合は、前記荷電分子は正電荷少なくとも1つを含んでおり、
前記カーボンナノチューブと前記荷電分子との結合が本質的に静電結合である、前記複合体。
【請求項5】
複合体が、水性溶媒に可溶であり、そして毒性がないことを特徴とする、請求項3又は4に記載の複合体。
【請求項6】
荷電分子と前記カーボンナノチューブの結合エネルギーが約90kJ/mol未満であり、特に約12kJ/molから約85kJ/molであり、より特には約20kJ/molから約70kJ/molであり、そして好ましくは約20kJ/molから約50kJ/molであることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブが正電荷又は負電荷のいずれかを含み、そして前記荷電分子がそれぞれ負電荷少なくとも1つ、又は正電荷少なくとも1つのいずれかを含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが、前記荷電分子の電荷当たり約0.001〜約100電荷、特に約1〜約20電荷を含む、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブが、前記荷電分子の存在する又は存在しない有機溶媒及び/又は水性溶媒中において、実質的に無傷であり、そして可溶であり、及び前記電荷を担持している基が前記カーボンナノチューブの表面上に均一に分布している、請求項3〜8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ(SWNT)又は多層カーボンナノチューブ(MWNT)である、請求項3〜9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブが、下記の一般式:
[C]−X
(式中、Cは、実質的に一定の直径で、実質的に円筒形であるカーボンナノチューブの表面の炭素であり、前記直径が約0.5〜約50nmであり、特に、SWNTにおいて約0.5〜5nmであり、MWNTにおいて約20〜約50nmであり、
Xは、同一又は異なる、1又は数個の官能基であり、但し、X基少なくとも1つが、電荷を担持している基少なくとも1つを含み、
nは約3・10〜約3・10の整数であり、
mは約0.001n〜約0.1nの整数であり、
カーボンナノチューブ表面cm当たり約2・10−11mol〜約2・10−9molの官能基Xが存在している)
で表される、請求項3〜10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
Xが、2つの異なる官能基X及びXであり、そして前記カーボンナノチューブが下記の式:
[C]−[Xm1][Xm2
(式中、m及びmは、相互に独立し、約0.001n〜約0.1nの整数を示し、但し、X又はX少なくとも一方が、電荷を担持している基少なくとも1つを含むものとする)
で表されている、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
Xが、同一又は異なる、1又は数個の置換されたピロリジン環であり、但し、前記置換されたピロリジン環少なくとも1つが電荷を担持している基少なくとも1つによって置換されている、下記の一般式(I):
【化1】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、R及びR’は、相互に独立し、−H、又は式−M−Y−(Z)−(P)で表される基であり、aは0又は1であり、そしてbは0〜8の整数であり、好ましくは0、1又は2であり、Pは、bが1より大きい場合に同一又は異なる基であり、但し、R及びR’は同時に水素原子とすることはできないものであり、そして、
Mは、約1〜約100原子のスペーサー基、例えば−(CHγ−又は−(CH−CH−O)γ−CH−CH−を含む群から選択される基、γは1〜20の整数であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含み、
Yは、a=b=0の場合の反応基、例えば−OH、−NH、−COO、−SH、−CHO、ケトン例えば−COCH=、アジ化物、又はハロゲン化物を含む群から選択される基であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含み、
又は、a又はbが0と異なる場合に、反応基から誘導され、例えば−O−、−NH−、−COO−、−S−、−CH=、−CH−、−CC2k+1=、kは1〜10の整数であり、特には−CCH、又は−CHC2k+1−であり、kは1〜10の整数であり、特には−CHCH−を含む群から選択される基であり、
Zは、リンカー基、例えばa=1、及びb=0の場合に以下の式の1つの基であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含んでおり、P基少なくとも1つと結合する傾向があり、そして、必要な場合には前記P基を放出する傾向があり、
【化2】


qは、1〜10の整数であり、又は、
a=1、及びb=1又は2の場合に、以下の式の1つで表され、
【化3】


qは、1〜10の整数であり、
Pは、有効基であり、あてはまる場合には電荷を担持している基を含み、前記機能化カーボンナノチューブの分光検出を可能にし、フルオロフォア、例えばFITC、キレート剤、例えばDTPA、又は生物学的作用を誘発する傾向がある活性分子、例えばアミノ酸、ペプチド、擬似ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、例えば酵素又は抗体、核酸、炭水化物又は薬であり、
あてはまる場合にはY、Z、又はP基少なくとも1つを、キャッピング基、例えばCHCO−(アセチル)、メチル、エチル、ベンジルカルボニル、又は保護基、例えばメチル、エチル、ベンジル、tert−ブチル、トリチル、3−ニトロ−2−ピリジルサルフェニル、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ベンゾイル(Bz)、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、フタルイミド、ジメチルアセタール、又は1,3−ジオキソランによって置換することができる)
の、請求項11又は12に記載の複合体。
【請求項14】
Xは、2つの異なる置換されたピロリジン環であり、但し、前記ピロリジン環少なくとも1つを、電荷を担持している基少なくとも1つによって置換されるものとする、以下の一般式(I’):
【化4】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、R及びRは、異なっており、そして相互に独立し、−H、又は式−M−Y−(Z)−(P)の基であり、M、Y、Z、P、a及びbは、請求項13と同じ意味であり、R及びR少なくとも1つが電荷を担持している基を含んでいる)
の、請求項11〜13のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項15】
複合体が、以下の一般式(II):
【化5】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、Aは荷電分子であり、そしてRは、式−M−W基であり、そして、
Mは、約1〜約100原子のスペーサー基、例えば−(CH)γ−、又は−(CH−CH−O)γ−CH−CH−を含む群から選択される基であり、γは1〜0の整数であり、
Wは、約1〜約400原子の電荷を担持している基、例えば−NH、又は−COOである)
で表されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項16】
複合体が、以下の一般式(II’):
【化6】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、Aは、荷電分子であり、そして
は、−M−Y−(Z)−(P)基であり、M、Y、Z、P、a及びbは、請求項11と同じ意味であり、特にRは、フルオロフォアを担持している基であり、そして
は、式−M−W基であり、Wは約1〜約400原子の電荷を担持している基、例えば、−NH、又は−COOである)
で表されることを特徴とする、請求項14に記載の複合体。
【請求項17】
前記荷電分子が、
2〜10のヌクレオチドを含む核酸、例えばRNA又はDNA、特にはプラスミド又は人工染色体、
2〜5000、好ましくは50〜5000のアミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、
炭水化物、特には正電荷の炭水化物、例えばグルコサミン又はキトサン、
放射性核種、及び
細胞毒の分子を含む群から選択されている、請求項3〜16のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項18】
複合体が、以下の式:
【化7】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、荷電分子であり、負電荷少なくとも1つを含む、例えばDNAである)
で表されることを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項19】
複合体が、以下の式:
【化8】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、荷電分子を示し、負電荷少なくとも1つを含む、例えばDNAである)
で表されることを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項20】
複合体が、以下の式:
【化9】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、正電荷少なくとも1つを含む荷電分子である)
で表されることを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項21】
複合体が、以下の式:
【化10】


(式中、Tは、カーボンナノチューブであり、そしてAは、正電荷少なくとも1つを含む荷電分子である)
で表されることを特徴とする、請求項3〜17のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項22】
荷電分子を細胞内に運ぶための、請求項3〜21のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項23】
薬剤学的に許容可能な担体と共に、複合体、例えば請求項3〜21のいずれか1項と同じ意味である複合体を、活性物質として含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−501615(P2008−501615A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526268(P2007−526268)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006036
【国際公開番号】WO2005/121799
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505409247)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク (16)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(506410327)ユニバーシティ オブ ロンドン,ザ スクール オブ ファーマシー (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LONDON,THE SCHOOL OF PHARMACY
【出願人】(506411209)ウニヴェルシタ デリ ストゥディ ディ トリエステ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DEGLI STUDI DI TRIESTE
【Fターム(参考)】