説明

カーボンナノホーン集合体、およびその製造方法

【課題】4種類のカーボンナノホーン集合体を作り分けること。
【解決手段】ガス雰囲気中におけるレーザーアブレーションによってカーボンナノホーン集合体を生成する際に、ガスの種類として、ヘリウム、窒素、アルゴン、乾燥空気のいずれかを用い、圧力を1気圧で一定にしてガス流量を制御した。これにより、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル型のカーボンナノホーン集合体をそれぞれ個別に作り分けでき、さらに粒径も制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノホーン集合体、およびその製造方法に関するものであり、特に4種類の異なる形態のカーボンナノホーンを容易に作り分けることができる製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノウォールなどのカーボンナノ構造体が注目されていて、電池の電極材、電子デバイス、ガスの吸着体など様々な用途に応用が期待されている。カーボンナノホーンは、グラフェンシートを円錐状に丸めた構造を有している。
【0003】
特許文献1〜3には、カーボンナノホーンが球状に集合した形態であるカーボンナノホーン集合体が示されており、カーボンナノホーン集合体は、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中におけるグラファイトをターゲットとしたレーザーアブレーションによって生成することができることが示されている。カーボンナノホーン集合体は、その比表面積が広い構造と、フッ素ガスを容易に吸着・離脱可能な特性から、安全で経済的、効率的で、しかも簡便にフッ素ガスを貯蔵することができる貯蔵体して期待されている。
【0004】
カーボンナノホーン集合体は、現在、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル型の4種類の形態が知られている。図7は、それら4種類の形態のカーボンナノホーン集合体を撮影したTEM像である。図7のように、種型は球状の表面に角状の突起がほとんどみられない、あるいは全くみられない形状、つぼみ型は球状の表面に角状の突起が多少みられる形状、ダリア型は球状の表面に角状の突起が多数みられる形状、ペタル型は球状の表面に花びら状の突起がみられる形状である。これらの形態の違いは、黒鉛化度の違いを反映したものと考えられる。
【0005】
特許文献2には、不活性ガス雰囲気中におけるレーザーアブレーションによってカーボンナノホーン集合体を生成する際に、不活性ガスの種類と圧力によって、つぼみ型とダリア型のカーボンナノホーン集合体を作り分けできることが示されている。また、カーボンナノホーン集合体の粒径については、不活性ガス雰囲気の温度によって制御できることが示されている。また、種型のカーボンナノホーン集合体についても、不活性ガスのガス種と圧力によって作り分けできることが知られている。
【0006】
特許文献3には、ペタル型のカーボンナノホーン集合体の製造方法が示されている。特許文献3によると、不活性ガス雰囲気中におけるレーザーアブレーションによってカーボンナノホーン集合体を生成する際に、ターゲット表面をレーザー光が走引する速度、レーザー光の強度、雰囲気ガスの種類と圧力、を制御することによって、ペタル型のカーボンナノホーン集合体と、その他の形態のカーボンナノホーン集合体とが混合したカーボンナノホーン集合体を生成可能であることが示されている。そして、生成したカーボンナノホーン集合体を酸化処理してペタル型以外のカーボンナノホーン集合体を燃焼することで、ペタル型のカーボンナノホーン集合体のみを作製可能であることが示されている。他にも、不活性ガスの圧力を2気圧以上とすることによって、ペタル型のカーボンナノホーン集合体を生成可能であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−64004
【特許文献2】特開2003−20215
【特許文献3】WO2008/093661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の製造方法では、4種類のカーボンナノホーン集合体の作り分けが難しく、作り分けには、製造装置を高圧から高真空までに対応させる必要があり、製造装置にコストがかかる点が問題であった。特に特許文献3の方法では、ペタル型と他の型は完全に作り分けができず、その混合割合を制御できるのみであり、ペタル型のみを残すために後処理が必要である。そのため、製造工程が増大してしまう。
【0009】
また、従来の製造方法では、粒径を制御するためには加熱装置が必要となる。しかし、加熱による制御では、粒径を大きくすることはできても、小さくすることは難しく、特に粒径が50nm以下のカーボンナノホーン集合体は製造することができなかった。
【0010】
そこで本発明の目的は、4種類のカーボンナノホーン集合体を容易に作り分けすることができる製造方法を実現することである。また、他の目的は、粒径が50nm以下のダリア型カーボンナノホーン集合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、ガス雰囲気中に置かれた炭素源にレーザー光を照射して炭素源を蒸発させ、カーボンナノホーンが球状に集合したカーボンナノホーン集合体を製造する方法において、前記ガス雰囲気の圧力を一定とし、ガス流量の制御によってカーボンナノホーン集合体の形態および粒径を制御することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0012】
炭素源は、たとえばグラファイトなどである。
【0013】
レーザー光は高出力であることが必要であるため、炭酸ガスレーザーを用いるのが好ましい。
【0014】
雰囲気ガスの圧力は、1気圧とするのがよい。製造装置を低コストとすることができ、容易に圧力制御可能なためである。また、ガス温度は室温とすることが簡便でよい。加熱装置を必要とせず、製造コストを低減することができる。ただし、温度の制御によって粒径を制御するようにしてもよい。
【0015】
ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、空気、などを用いることができ、他の不活性ガスを用いてもよい。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、ガス流量とガスの種類とによってカーボンナノホーン集合体の形態および粒径を制御することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、空気のいずれかを用いることを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0018】
第4の発明は、第2の発明または第3の発明において、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル型の4種のカーボンナノホーン集合体の形態をそれぞれ個別に作り分けすることを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0019】
ここでいう「個別に作り分け」とは、目的とするある1種のカーボンナノホーン集合体を製造する場合に、生成したカーボンナノホーン集合体の全体に対して、目的とする1種のカーボンナノホーン集合体が90%以上含まれているように製造することをいう。
【0020】
第5の発明は、第4の発明において、ガスとしてアルゴンまたは窒素を用い、ガス流量を制御することによってダリア型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0021】
ここで「ダリア型のカーボンナノホーン集合体のみを製造する」とは、ダリア型のカーボンナノホーン集合体を製造する場合に、生成したカーボンナノホーン集合体の全体に対して、ダリア型のカーボンナノホーン集合体が90%以上含まれているように製造することをいう。以下の第6〜9の発明における「〜のみを製造する」も上記と同様の意味である。
【0022】
第6の発明は、第4の発明において、ガスとして窒素を用い、ガス流量を制御することによってダリア型で粒径が50nm以下のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0023】
第7の発明は、第4の発明において、ガスとしてヘリウムを用い、ガス流量を制御することによってつぼみ型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0024】
第8の発明は、第4の発明において、ガスとしてヘリウムを用い、ガス流量を制御することによって種型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0025】
第9の発明は、第4の発明において、ガスとしてアルゴンまたは空気を用い、ガス流を制御することによってペタル型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0026】
第10の発明は、第1の発明から第9の発明において、圧力は、1気圧とすることを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0027】
第11の発明は、第1の発明から第10の発明において、ガスの温度は、室温とすることを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法である。
【0028】
第12の発明は、ダリア型で粒径50nm以下のカーボンナノホーン集合体である。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によると、ガス流量の制御によって異なる形態のカーボンナノホーン集合体を簡易に作り分けることができ、第2の発明のように、ガス流量とガス種の両方を制御することによって、さらに作り分けが容易となる。
【0030】
特に、第3の発明のように、ガス種として、ヘリウム、窒素、アルゴン、空気を用いることができる。また、第4の発明のように、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル型の4種類の異なる形態のカーボンナノホーン集合体をそれぞれ個別に作り分けることが可能となる。
【0031】
また、第5の発明のように、ガスとしてアルゴンまたは窒素を用いれば、ガス流量の制御によってダリア型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することができ、特に第6の発明のように、ガスとして窒素を用いれば、ガス流量の制御によってダリア型で粒径50nm以下のカーボンナノホーン集合体のみを製造することができる。
【0032】
また、第7の発明のように、ガスとしてヘリウムを用いれば、ガス流量の制御によってつぼみ型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することができる。
【0033】
また、第8の発明のように、ガスとしてヘリウムを用いれば、ガス流量の制御によって種型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することができる。
【0034】
また、第9の発明のように、ガスとしてアルゴンまたは空気を用いれば、ガス流量の制御によってペタル型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することができる。
【0035】
また、第10、11の発明のように、圧力は1気圧、温度は室温とすることができ、より簡易にカーボンナノホーン集合体を製造することができる。
【0036】
また、第12の発明のように、ダリア型のカーボンナノホーン集合体において、粒径が50nm以下の構造は、従来知られていない新規なものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】製造放置の構成を示した図。
【図2】ガス流量およびガス種と、カーボンナノホーン集合体の形態および粒径との関係を示した図。
【図3】得られたカーボンナノホーン集合体のTEM像。
【図4】得られたカーボンナノホーン集合体のTEM像。
【図5】カーボンナノホーン集合体のX線回折の測定結果を示したグラフ。
【図6】カーボンナノホーン集合体の電子エネルギー損失分光の測定結果を示したグラフ。
【図7】4種類のカーボンナノホーン集合体の形態を示したTEM像。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
まず、実施例1のカーボンナノホーン集合体の製造方法に用いる製造装置の構成を説明する。図1は、その製造装置の構成を示した図である。製造装置は、アクリル製のチャンバー10を有しており、内部にレーザーアブレーションのターゲットであるグラファイト11が配置されている。チャンバー10には圧力計12が接続されていて、チャンバー10内部の圧力を計測可能としている。また、チャンバー10は突出部13を有し、突出部13の先端はZnSeからなるレンズ14が設けられている。チャンバー10の外部には炭酸ガスレーザー装置21が配置され、そのレーザー光はレンズ14によって集光されてグラファイト11に照射される。レーザー光の出力は3.5kWで連続光である。また、グラファイト11表面でのレーザー光のスポット径は0.5〜5mm程度である。
【0040】
突出部13にはチャンバー10内部にガスを供給する供給管15が接続されており、供給管15はガスボンベ(図示しない)に接続されている。使用するガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、空気のいずれかであり、他の不活性ガスを用いることもできる。供給管15にはガス流量計16が挿入されており、供給管15を流れるガスの流量を計測可能である。ガス流量は、ガスボンベのバルブによって制御可能であり、供給管15に流量調整用の弁を設けてもよい。供給管15から突出部13に導入されたガスは、レーザー光の照射方向と同一の方向に向かってチャンバー10内に流入する。レーザー光の照射方向(すなわちグラファイト11に向かう方向)とガスの流入方向が一致しているため、効率的なカーボンナノホーン集合体の生成が可能となっている。
【0041】
また、チャンバー10には排気管17が接続されており、排気管17には真空排気ポンプ18が接続されている。これによりチャンバー10内のガスを排気可能としている。また、排気管17には圧力調整弁19が設けられており、圧力調整弁19によって排気量を調整することで、チャンバー10内の圧力を制御することが可能となっている。また、排気管19のチャンバー10近傍にはフィルタ20が挿入されており、チャンバー10内で生成され、ガス流に乗って排気管17に流れ込むカーボンナノホーン集合体はフィルタによって捕獲、回収される。
【0042】
製造装置は加熱装置を備えず、室温中に置かれているため、チャンバー10内のガス温度も室温に保持される。
【0043】
次に、この製造装置を用いたカーボンナノホーン集合体の製造方法について説明する。
【0044】
まず、チャンバー10内にグラファイト11を配置して封をし、真空排気ポンプ18によって真空引きした後、ガスボンベのバルブを開いてヘリウム、窒素、アルゴン、乾燥空気のいずれかのガスをチャンバー10内に導入し、チャンバー10内のガス雰囲気の圧力を1気圧、室温とした。また、ガスの流量を5、20、50L/minのいずれかに制御した。供給管15から突出部13に導入されたガスは、グラファイト11方向に向かってチャンバー10内に流入し、その後排気管15内に流入して排出される。
【0045】
次に、炭酸ガスレーザー装置21を用いてレーザー光をグラファイト11に照射した。これによりグラファイト11が蒸発し、カーボンナノホーン集合体が生成される。生成したカーボンナノホーン集合体は、ガス流に乗って排気管17に流入し、フィルタ10によって捕獲、回収される。
【0046】
図2は、上記製造方法によって得られたカーボンナノホーン集合体の形態および粒径とガス流量およびガスの種類との関係を示した図である。また、図3、4は、得られたカーボンナノホーン集合体のTEM像を示した図である。
【0047】
図2、3のように、ガスとしてヘリウムを用いた場合には、ガス流量5、20L/minにおいてつぼみ型のカーボンナノホーン集合体が得られ、ガス流量50L/minにおいては種型のカーボンナノホーン集合体が得られた。また、つぼみ型カーボンナノホーン集合体の粒径は、ガス流量5L/minのときは30〜70nm程度、ガス流量20L/minのときは80〜120nm程度であった。また、種型のカーボンナノホーン集合体の粒径は、50〜140nm程度であった。
【0048】
また、図2、図3のように、ガスとして窒素を用いた場合には、ガス流量5、20、50L/minのいずれの場合においても、ダリア型のカーボンナノホーン集合体が得られた。また、ダリア型カーボンナノホーン集合体の粒径は、ガス流量5L/minのときは20〜50nm程度、ガス流量20L/minのときは30〜70nm程度、ガス流量50L/minのときは75〜110nm程度であった。
【0049】
また、図2、図3のように、ガスとしてアルゴンを用いた場合には、ガス流量5L/minではペタル型のカーボンナノホーン集合体が得られ、ガス流量20、50L/minではダリア型のカーボンナノホーン集合体が得られた。ガス流量5L/minでのペタル型カーボンナノホーン集合体の粒径は、80〜120nm程度であった。また、ダリア型カーボンナノホーン集合体の粒径は、ガス流量20L/minのときは70〜100nm程度、ガス流量50L/minのときは110〜150nm程度であった。また、図3のように、粒径が小さくなるほど、カーボンナノホーン集合体中のカーボンナノホーンの配向性が強くなることが示唆される。
【0050】
また、図2、図4のように、ガスとして乾燥空気を用いた場合には、ガス流量5、20L/minのいずれの場合においても、ペタル型のカーボンナノホーン集合体が得られた。粒径は5L/minのときは130〜210nm程度、20L/minのときは100〜150程度であった。なお、空気を用いてガス流量50L/minとした場合には、カーボンナノホーン集合体は得られなかった。また、ヘリウム、窒素、アルゴンを用いた場合にはガス流量が大きいほどカーボンナノホーン集合体の粒径が大きくなる傾向にあったが、乾燥空気の場合には逆にガス流量が大きいほど粒径が小さくなる傾向にある。これは、乾燥空気中の酸素による酸化の影響であると考えられる。
【0051】
ガス流量およびガスの種類と、得られるカーボンナノホーン集合体の形態との関係をまとめると、以下の通りである。
【0052】
種型カーボンナノホーン集合体は、ヘリウムを用いてガス流量を40〜70L/minとすることで得られる。
【0053】
つぼみ型カーボンナノホーン集合体は、ヘリウムを用いてガス流量を5〜30L/minとすることで得られる。
【0054】
ダリア型カーボンナノホーン集合体は、窒素を用いてガス流量を5〜50L/minとするか、または、アルゴンを用いてガス流量を20〜50L/minとすることで得られる。
【0055】
ペタル型カーボンナノホーン集合体は、アルゴンを用いてガス流量を5〜10L/minとするか、または、乾燥空気を用いてガス流量を5〜20L/minとすることで得られる。
【0056】
以上のように、実施例1のカーボンナノホーン集合体の製造方法によると、ガスの種類とガス流量を制御することによって、種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル型の4種類の異なる形態のカーボンナノホーン集合体を、それぞれ個別に作り分けできることがわかった。特に、ガスとして窒素を用い、ガス流量を5L/minとした場合に、粒径50nm以下のダリア型カーボンナノホーン集合体が得られていることは特筆すべきである。従来のカーボンナノホーン集合体の製造方法では、粒径を50nm以上に大きくする制御は可能であったが、粒径を50nm以下に小さくする制御はできていなかった。しかし、実施例1の製造方法によって粒径を小さくする制御も可能となったことで、粒径50nm以下のダリア型カーボンナノホーン集合体という、従来知られていない構造のカーボンナノホーン集合体を生成することができた。
【0057】
上記のようなカーボンナノホーン集合体の形態および粒径の制御が可能となる理由として、ガス流量とガスの種類によってレーザープルームの形状が異なること、ガスの種類によって原子量あるいは分子量、熱拡散率が異なり、その結果レーザープルームの冷却速度に違いが生じていること、が挙げられる。
【0058】
図5は、実施例1の製造方法によって得られた4種類の異なる形態のカーボンナノホーン集合体についての、X線回折の測定結果を示したグラフである。4種類の形態ごとにピークの位置やピーク強度に違いが生じていることがわかる。
【0059】
図6は、実施例1の製造方法によって得られたカーボンナノホーン集合体について、電子エネルギー損失分光法により炭素のK殻吸収端近傍の内殻励起スペクトルを測定した結果を示したグラフである。4種類のそれぞれ異なる形態のカーボンナノホーン集合体について測定し、ダリア型については粒径50nmと100nmとでそれぞれ測定した。図6中には、1s軌道からπ*軌道への励起によるピーク位置と、σ*軌道への励起によるピーク位置とを縦軸に平行な直線で示している。図6のように、カーボンナノホーン集合体の形態の違いにより、電子状態にも違いが生じていることがわかる。特に、同じダリア型であっても粒径の違いによって電子状態にも違いがあることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のカーボンナノホーン集合体の製造方法によると、4種類のカーボンナノホーン集合体を作り分けることが可能となり、粒径も制御可能となるため、カーボンナノホーン集合体の形態や粒径の違いによる物性の違いなどを解析することが容易となる。たとえば、カーボンナノホーン集合体をフッ素ガス貯蔵体として利用する場合に、フッ素ガス貯蔵量のカーボンナノホーン集合体の形態依存性、粒径依存性を容易に解析することができるようになる。
【符号の説明】
【0061】
10:チャンバー
11:グラファイト
12:圧力計
13:突出部
14:レンズ
15:供給管
16:ガス流量計
17:排気管
18:真空排気ポンプ
19:圧力調整弁
20:フィルタ
21:炭酸ガスレーザー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス雰囲気中に置かれた炭素源にレーザー光を照射して前記炭素源を蒸発させ、カーボンナノホーンが球状に集合したカーボンナノホーン集合体を製造する方法において、
前記ガス雰囲気の圧力を一定とし、ガス流量の制御によってカーボンナノホーン集合体の形態および粒径を制御することを特徴とするカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項2】
ガス流量とガスの種類とによってカーボンナノホーン集合体の形態および粒径を制御することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項3】
前記ガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、空気のいずれかを用いることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項4】
種型、つぼみ型、ダリア型、ペタル型の4種のカーボンナノホーン集合体の形態をそれぞれ個別に作り分けすることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項5】
前記ガスとしてアルゴンまたは窒素を用い、ガス流量を制御することによってダリア型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項6】
前記ガスとして窒素を用い、ガス流量を制御することによってダリア型で粒径が50nm以下のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項7】
前記ガスとしてヘリウムを用い、ガス流量を制御することによってつぼみ型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項8】
前記ガスとしてヘリウムを用い、ガス流量を制御することによって種型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項9】
前記ガスとしてアルゴンまたは空気を用い、ガス流を制御することによってペタル型のカーボンナノホーン集合体のみを製造することを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項10】
前記圧力は、1気圧とすることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項11】
前記ガスの温度は、室温とすることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項12】
ダリア型で粒径50nm以下のカーボンナノホーン集合体。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30979(P2012−30979A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169079(P2010−169079)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンナノホーンを用いたフッ素貯蔵材料の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】