説明

カーボンブラック、その製造方法およびその使用

本発明は、CTAB表面積100〜160m2/g、1.60より大きい四分位比およびFP指数>0を有するカーボンブラックに関する。前記カーボンブラックはファーネス反応器中で製造され、その際、反応帯域の最初の3分の1でカーボンブラック原料の60〜90質量%を、且つ前記カーボンブラック原料の残量を上流で少なくとも1つの別の箇所で反応器中に噴射し、且つ付加的に燃料を、前記カーボンブラック原料に最初に衝突する際に前記燃料の90〜100質量%が蒸発しており、且つ前記カーボンブラック原料に衝突する5ms前に前記燃料の80〜99質量%が蒸発しているように導く。前記カーボンブラックは、ゴム混合物において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンブラック、その製造方法ならびにその使用に関する。
【0002】
通常カーボンブラックは、顔料、充填剤、補強性充填剤として、および数多くの別の適用のために使用される。例えばカーボンブラックは補強性充填剤として、出発材料としてタイヤトレッドの接地面のために使用することができるゴム混合物において使用される。
【0003】
一般的にカーボンブラックの比表面積は、ゴム混合物におけるカーボンブラックの補強挙動に著しい影響を及ぼすことが公知である。その際、比表面積は高ければ高いほど、それだけタイヤトレッドの補強挙動および殊に摩耗挙動は良好である[G.Kraus,Angewandte Makromolekulare Chemie,Volume 60/61(1977),第215頁]。とは言っても高い比表面積は、ゴム混合物中でのヒステリシスが高くなるという欠点をもたらし、この結果、タイヤトレッドの転がり抵抗が高まる[W.M.Hess et al.,Rubber Chemistry and Technology,Volume 56,第390頁]。タイヤトレッドの比較的高い転がり抵抗は、比較的高い燃料消費およびそれに伴って高いエネルギー消費もしくは二酸化炭素排出をもたらす。これは経済的および生態学的な観点から所望されていない。
【0004】
それゆえ経済的および生態学的な観点から、所定の比表面積にてゴム混合物のヒステリシスおよびそれに伴ってタイヤトレッドの転がり抵抗を更に下げることが所望されている。これは所定の比表面積にて凝集体径分布の拡大によって達成できることが公知である[W.M.Hess et al.,Rubber Chemistry and Technology,第56巻,第390頁]。しかしながら凝集体径分布の拡大と同時に、該カーボンブラックのインキ強度(Tink strength)が減少される[C.J.Stacy et al.,Rubber Chemistry and Technology,第48巻,第538頁]。更にカーボンブラックの拡大された凝集体径分布が、殊に高負荷にてゴム混合物の摩耗挙動における損失およびそれに伴ってタイヤトレッドの摩耗挙動における損失を引き起こすことが公知である[W.M.Hess et al.,Rubber Chemistry and Technology,第56巻,第390頁]。それゆえ凝集体径分布の拡大は転がり抵抗にとって好ましいが、しかしながら一般に摩耗挙動の悪化につながる。
【0005】
US2005/0256249から、0.9より大きいΔD50/Mおよび2.3より大きい不均一性指数を有する炭素材料が公知である。
【0006】
EP0754735から、同じCTAB表面積を有する比較カーボンブラックと比べて、SSBR/BRゴム混合物中に混入した場合、より僅かな転がり抵抗と共に同じまたはより良好な横滑り挙動によって際立つファーネスブラックが公知である。それは慣例のカーボンブラック反応器中で、カーボンブラック原料と直接接触するカーボンブラック核が形成されるように燃焼室中で燃焼を導くことによって製造され得る。
【0007】
EP0754735から公知のカーボンブラックの欠点は、ゴム混合物における低すぎる摩耗抵抗と共に同時に低い転がり抵抗(損失係数 tan δ)である。
【0008】
EP0949303から、EP0754735からのカーボンブラックと比べて、大きい直径を有する凝集体の割合がより僅かな凝集体径分布を有するカーボンブラックが公知である。これはゴム混合物の改善された摩耗挙動を生み出す。カーボンブラック反応器は、カーボンブラック原料と直接接触するカーボンブラック核が形成され、且つ燃料空気およびカーボンブラック原料の供給が適切に高められるように運転される。
【0009】
EP0949303から公知のカーボンブラックの欠点は、低下したインキ強度、およびEP0754735からのカーボンブラックと比べて改善された摩耗抵抗と共に同時に低い転がり抵抗(損失係数 tan δ)を有するが、しかしながら、摩耗抵抗と転がり抵抗とのバランスが最適ではないことである。
【0010】
EP1783178から、カーボンブラック原料を最初のステップで供給し、且つ高温ガスの流と合一し、そうして本質的にカーボンブラックから成る前駆物質を反応流中で形成し、次に更なるカーボンブラック原料をこの前駆物質に供給し、そうして反応流をそれに伴って部分的に急冷し、引き続き反応流全体を完全に急冷するファーネスブラック法が公知である。EP1783178における高温ガスの流は、燃料と酸化媒体、例えば空気との反応からの燃焼ガスとして発生してよく、その際、空気対燃料の比率は、1:1(化学量論比)〜無限に変化させてよい。該燃料は固体、液状またはガス状であってよい。
【0011】
本発明の課題は、ゴム混合物において高い摩耗抵抗(低い摩耗)と低い転がり抵抗とからの良好なバランスを有するカーボンブラックを提供することである。
【0012】
本発明の対象は、CTAB表面積が100〜160m2/g、好ましくは100〜149m2/g、特に有利には100〜144m2/g、極めて有利には105〜140m2/gであり、四分位比が1.60より大きく、好ましくは1.65〜2.30、特に有利には1.70〜2.30、極めて有利には1.75〜2.30、殊に有利には1.80〜2.30、非常に有利には1.85〜2.25であり、且つFP指数が>0、好ましくは>0.5、特に有利には>1.0、極めて有利には>1.5であることを特徴とするカーボンブラックである。
【0013】
該FP指数は、方程式FP指数=インキ強度−(65+(1.057g/m2*CTAB−(0.002745g2/m4*CTAB*CTAB−(25.96g/cm3*COAN−(0.201g/m2*(NSA−CTAB))+6.57502−847817*EXP(−6.94397*(四分位比))に従って算出される。
【0014】
該CTAB値は、ASTM D−3765−04に従って測定される。
【0015】
該NSA値は、ASTM D−6556−04に従って、次のパラメータ:相対圧力:10.4.4項を用いて測定される。
【0016】
該COAN値は、ASTM D−3493−06に従って、次のパラメータ:油:パラフィン;終点決定法:手法Aを用いて測定される。
【0017】
該インキ強度は、D−3265−06に従って、次のパラメータ:Hoover Muller Paste Preparation,Erichsen−tint−tester−filmドローダウン法を用いて測定される。
【0018】
該四分位比は、凝集体径分布から算出される。
【0019】
その際、該凝集体径分布はISO規格 15825、第1版、2004年11月1日に従って決定され、その際、次の変更が適用される:
ISO規格 15825の4.6.3項の補足:最頻値は質量分布曲線(mass distribution curve)に関する。
【0020】
ISO規格 15825の5.1項の補足:Brookhaven Instruments Corporation,750 Blue Point Rd.,Holtsville,NY,11742にて全て入手可能な装置BI−DCP Particle Sizerおよび関連評価ソフトウェアdcplw32,Version3.81が使用される。
【0021】
ISO規格 15825の5.2項の補足:超音波制御装置GM2200、音響変換器UW2200、ならびにソノトロードDH13Gが使用される。超音波制御装置、音響変換器およびソノトロードは、Bandelin electronic GmbH & Co.KG,Heinrichstrasse 3−4,D−12207 Berlinにて入手可能である。その際、超音波制御装置により次の値が調整される:パワー(%)=50、サイクル=8。これは100ワットの調整された定格電力および80%の調整されたパルスに相当する。
【0022】
ISO規格 15825の5.2.1項の補足:超音波時間は4.5分に定められる。
【0023】
ISO規格 15825の6.3項に記載された定義とは異なり"界面活性剤(Surfactant)"は次のように定義される:"界面活性剤"は、Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Industriestrasse 25,CH−9471 Buchs SG,Switzerlandにて入手可能である、Fluka社のNonident P40 Substitute型のアニオン性界面活性剤である。
【0024】
ISO規格 15825の6.5項に記載されたスピン液(Spinfluessigkeit)の定義とは異なり、スピン液は次のように定義される:該スピン液の製造のために、Fluka社の界面活性剤Nonident P40 Substitute0.25g(6.3項)が脱イオン水(6.1項)により1000mlに補充される。引き続き、該溶液のpH値はNaOH溶液0.1モル/lで9〜10に調整される。該スピン液は、その製造後に最大1週間使用することができる。
【0025】
ISO規格 15825の6.6項に記載された分散液の定義とは異なり、分散液は次のように定義される:該分散液の製造のために、エタノール200ml(6.2項)、およびFluka社の界面活性剤Nonident P40 Substitute0.5g(6.3項)が脱イオン水(6.1項)により1000mlに補充される。引き続き、該溶液のpH値はNaOH溶液0.1モル/lで9〜10に調整される。該分散液は、その製造後に最大1週間使用することができる。
【0026】
ISO規格 15825の7項の補足:もっぱら造粒カーボンブラックのみが使用される。
【0027】
ISO規格 15825の8.1項、8.2項、8.3項における指示書は、まとめると次の指示書によって置き換えられる:該造粒カーボンブラックは、めのう乳ばち中で容易に粉砕される。次いでカーボンブラック20mgが、円筒エッジ小フラスコ30ml(直径28mm、高さ75mm、壁厚1.0mm)中で分散液20ml(6.6項)と混ぜられ、且つ冷却浴(16℃+/−1℃)中で4.5分の間で(5.2.1項)超音波(5.2項)により処理され、且つそれに伴って該分散液中で懸濁される。超音波処理後に、サンプルは5分以内に遠心分離機中で測定される。
【0028】
ISO規格 15825の9項の補足:入力されるべきカーボンブラックの密度の値は1.86g/cm3である。入力されるべき温度の温度は、10.11項に従って決定される。該スピン液のタイプについては、オプション"水性"が選択される。それに伴って該スピン液の密度については0.997(g/cc)の値、該スピン液の粘度については0.917(cP)の値が生じる。光散乱補正は、ソフトウェアdcplw32において選択可能なオプションにより行われる:ファイル:carbon.prm;Mie-Correction。
【0029】
ISO規格 15825の10.1項の補足:遠心分離機速度は11000r/分に定められている。
【0030】
ISO規格 15825の10.2項の補足:エタノール0.2cm3(6.2項)の代わりに、エタノール0.85cm3(6.2項)が注入される。
【0031】
ISO規格 15825の10.3項の補足:正確に15cm3のスピン液(6.5項)が注入される。引き続き、エタノール0.15cm3(6.2項)が注入される。
【0032】
ISO規格 15825の10.4項の指示書は完全に省かれる。
【0033】
ISO規格 15825の10.7項の補足:データ記録の開始直後に、遠心分離機中の該スピン液をドデカン0.1cm3の層で覆う(6.4項)。
【0034】
ISO規格 15825の10.10項の補足:測定曲線が基準線に1時間以内に再び達しない場合、測定はちょうど1時間の測定時間の後に中断される。遠心分離機回転数を変更しての再始動は行われない。
【0035】
ISO規格 15825の10.11項の補足:測定温度を調べるための該指示書に記載された方法の代わりに、コンピュータプログラムに入力されるべき測定温度Tが次のように調べられる:
T=2/3(Te−Ta)+Ta、
その際、Taは測定前の測定室の温度を表し、且つTeは測定後の測定室の温度を表す。温度差は4℃を超えるべきではない。
【0036】
凝集体径分布の粒子>150nmのフラクションは、20質量%より小さく、好ましくは14質量%より小さく、特に有利には10質量%より小さくてよい。
【0037】
該フラクション>150nmは、150nmより大きいストークス径を有する凝集体の質量割合を表し、且つ同様に上記ISO規格 15825に従った凝集体径分布から得られる。
【0038】
ΔD50値および最頻値とからの比率は1.0より大きく、有利には1.05より大きく、極めて有利には1.10以上であってよい。
【0039】
ΔD50値および最頻値は、同様に上記ISO規格 15825に従った凝集体径分布から得られる。
【0040】
インキ強度は110より大きく、好ましくは114より大きく、特に117より大きく、極めて有利には120より大きくてよい。
【0041】
COAN値は90〜130cm3/100gであってよい。
【0042】
カーボンブラックは、ガスブラック、チャネルブラック、ランプブラックまたはファーネスブラックであってよい。
【0043】
本発明によるカーボンブラックは表面変性および後処理されていなくてよい。
【0044】
本発明によるカーボンブラックのpH値は>5であってよい。
【0045】
本発明の対象は、反応器軸に沿って燃焼帯域、反応帯域および中断帯域を含有するファーネスブラック反応器中での、燃焼帯域における酸素を含有するガス中での燃料の燃焼による高温廃ガスの流の生成および燃焼帯域から反応帯域を貫く中断帯域中への廃ガスの導通、反応帯域における高温廃ガス中へのカーボンブラック原料の混入および中断帯域における水の噴霧によるカーボンブラック形成の停止による、本発明によるカーボンブラックの製造方法において、カーボンブラック原料60〜90質量%、好ましくは75〜85質量%を反応帯域の最初の3分の1で、且つ該カーボンブラック原料の残量を上流で少なくとも1つの別の箇所で反応器中に噴射し、且つ燃料を、カーボンブラック原料に最初に衝突する際に該燃料の90〜100質量%、好ましくは99〜100質量%が蒸発し、且つ該カーボンブラック原料に衝突する5ms前に該燃料の80〜99質量%、好ましくは90〜99質量%、特に有利には92〜98質量%が蒸発しているように導くことを特徴とする方法である。
【0046】
燃料噴霧器として、純粋な圧力噴霧器(一成分噴霧器)のみならず内部混合または外部混合を有する二成分噴霧器も使用することができる。本発明による燃料の誘導は、噴霧の際に獲得される液滴径、これらの液滴がカーボンブラック原料に衝突するまでの滞留時間および反応温度を互いに適合させるように条件を選択することによって、純粋な圧力噴霧器(一成分噴霧器)のみならず内部混合または外部混合を有する二成分噴霧器を用いても達成することができる。殊に二成分噴霧器および液体燃料の使用によって液滴径は、流量とは無関係に幅広い領域内で調節することができ、且つそれに伴ってカーボンブラック原料に衝突するまでの燃料の滞留時間および反応時間に適合させることができる。
【0047】
液滴径分布は、最適な方法によって決定することができる。様々な商業的ノズルメーカーが、これらの測定をサービスとして提供しており、例えばDuesen-Schlick GmbH,Hutstrasse 4,D−96253 Untersiemau/Coburg,Deutschland (www.duesen-schlick.de)がある。処理における液滴の滞留時間および反応温度は、コンピュータ補助による流体力学的なシミュレーション計算を手かがりして決定することができる。例えばFluent社(Fluent Deutschland GmbH,Birkenweg 14a,64295 Darmstadt)の商業的ソフトウェア"Fluent",Version 6.3は、使用されるファーネス反応器を表示し、且つ測定される液滴径分布を含む供給される全ての処理流の入力後に、基礎となる化学モデルを用いて燃料液滴の滞留時間および蒸発速度および反応温度を算出することが可能である。
【0048】
燃料は、液状または部分的に液状および部分的にガス状であってよい。
【0049】
カーボンブラック原料は半径方向ランスによって噴射され得る。2〜32、好ましくは4〜16、特に有利には4〜8の半径方向ランスが使用され得る。
【0050】
カーボンブラック原料は、液状または部分的にガス状または部分的に液状および部分的にガス状であってよい。
【0051】
液状のカーボンブラック原料は、圧力、蒸気、圧縮空気またはガス状のカーボンブラック原料によって噴霧され得る。
【0052】
液状のカーボンブラック原料として、液状の脂肪族または芳香族の、飽和または不飽和の炭化水素またはこれらの混合物、コールタールからの留出物または石油留分の接触分解に際してもしくはナフサまたは軽油の接触によるオレフィン製造に際して発生する残油が使用され得る。
【0053】
ガス状のカーボンブラック原料として、ガス状の脂肪族の、飽和または不飽和の炭化水素、これらの混合物または天然ガスが使用され得る。
【0054】
空気過剰を特徴付ける測定値として、頻繁にいわゆるK因子が使用される。K因子は、燃料の化学量論的燃焼に必要とされる空気量対実際に該燃焼に供給される空気量の比率である。1のK因子は、つまり化学量論的燃焼を意味する。空気過剰の場合、K因子は1より小さい。その際、公知のカーボンブラックの場合のように、K因子は0.2から0.9の間で適用され得る。有利には、0.6から0.8の間のK因子を用いて処理され得る。上記方法は、特定の反応器形状に制限されていない。それどころか様々な反応器タイプおよび反応器サイズに適合され得る。
【0055】
カーボンブラック原料の噴霧器として、純粋な圧力噴霧器(一成分噴霧器)のみならず内部混合または外部混合を有する二成分噴霧器も使用され得、その際、噴霧媒体としてガス状のカーボンブラック原料が使用され得る。
【0056】
液状のカーボンブラック原料の噴霧のために二成分噴霧器が使用され得る。一成分噴霧器の場合、流量の変化は液滴径の変化も生じさせる一方で、二成分噴霧器の場合、液滴径は流量とはほぼ無関係に影響を及ぼされ得る。
【0057】
カーボンブラック原料として、カーボンブラック油およびガス状の炭化水素、例えばメタンが同時に使用される場合、該ガス状の炭化水素はカーボンブラック油とは別個に固有の一式のガスランスによって高温廃ガスの流中に噴射され得る。
【0058】
本発明によるカーボンブラックは、充填剤、補強性充填剤、UV安定剤、導電性カーボンブラックまたは顔料として使用され得る。本発明によるカーボンブラックは、ゴム、プラスチック、印刷用インキ、別のインキ、インクジェットインキ、トナー、ラッカー、ペイント、紙、ビチューメン、コンクリートおよびその他の建築材料中で使用され得る。本発明によるカーボンブラックは、冶金学における還元剤として適用され得る。
【0059】
本発明によるカーボンブラックは、ゴム混合物における補強性カーボンブラックとして使用され得る。
【0060】
本発明の更なる対象は、少なくとも1つのゴム、有利には少なくとも1つのジエンゴム、特に有利には少なくとも天然ゴム、および少なくとも1つの本発明によるカーボンブラックを含有することを特徴とするゴム混合物である。
【0061】
本発明によるカーボンブラックは、使用されるゴムの量に対して10〜150phr(parts per hundred rubber)、有利には20〜100phr、特に有利には30〜90phr、極めて有利には30〜80phrの量で使用され得る。
【0062】
本発明によるゴム混合物は、シリカ、好ましくは沈降シリカを含有してよい。本発明によるゴム混合物は、オルガノシラン、例えばビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは(メルカプトオルガニル)アルコキシシランを含有してよい。
【0063】
本発明によるゴム混合物は、ゴム助剤を含有してよい。
【0064】
本発明によるゴム混合物の製造のために、天然ゴム以外に合成ゴムも適している。有利な合成ゴムは、例えばW.Hofmann,Kautschuktechnologie,Genter Verlag,Stuttgart 1980にて記載されている。それらは中でも
− ポリブタジエン(BR)、
− ポリイソプレン(IR)、
− スチレン/ブタジエン共重合体、例えばエマルジョンSBR(E−SBR)または溶液SBR(L−SBE)であり、好ましくは、ポリマー全体に対して1〜60質量%、特に有利には2〜50質量%のスチレン含有率を有する、
− クロロプレン(CR)、
− イソブチレン/イソプレン共重合体(IIR)、
− ブタジエン/アクリロニトリル共重合体であり、好ましくは、ポリマー全体(NBR)に対して5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%のアクリロニトリル含有率を有する、
− 部分水素化または完全に水素化されたNBRゴム(HNBR)、
− エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)
− エチレン/プロピレン共重合体(EPM)または
− 付加的に官能基、例えばカルボキシ基、シラノール基またはエポキシ基を有する上述のゴム、例えばエポキシ化NR、カルボキシ官能化NBRまたはシラノール−(−SiOH)もしくはシロキシ官能化(−Si−OR)SBR、
ならびにこれらのゴムの混合物を包含する。
【0065】
LKWタイヤトレッドの製造のために、殊に天然ゴムならびにジエンゴムとのこの混合物が使用され得る。
【0066】
PKWタイヤトレッドの製造のために、殊にSBRゴムならびにその他のジエンゴムとのこの混合物が使用され得る。
【0067】
本発明によるゴム混合物は、ゴム工業において公知である、更なるゴム助剤、例えば反応促進剤、老化防止剤、熱安定剤、光保護剤、オゾン化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着性付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物ならびに活性化剤、例えばジフェニルグアニジン、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、アルコキシ末端ポリエチレングリコールまたはヘキサントリオールを含有する。
【0068】
該ゴム助剤は、中でも使用目的に応じた通常の量で使用され得る。通常の量とは、例えばゴムに対して0.1〜50phrの量であってよい。
【0069】
架橋剤として、硫黄、有機硫黄供与体またはラジカル形成剤を用いてよい。そのうえ本発明によるゴム混合物は加硫促進剤を含有してよい。
【0070】
適した加硫促進剤のための例は、メルカプトベンズチアゾール、スルフェンアミド、グアニジン、チウラム、ジチオカルバメート、チオ尿素およびチオカーボネートであってよい。
【0071】
加硫促進剤および架橋剤は、ゴムに対して0.1〜10phr、有利には0.1〜5phrの量で使用され得る。
【0072】
ゴムと充填剤、場合によってはゴム助剤および場合によってはオルガノシランとのブレンドは、通常の混合ユニット、例えばロール、内部混合機および混合押出機において実施され得る。通常、そのようなゴム混合物は内部混合機中で製造され得、その際、まず1つまたは複数の連続した熱機械混合ステップにおいて、ゴム、本発明によるカーボンブラック、場合によりシリカおよび場合によりオルガノシランおよびゴム助剤が100〜170℃にて混入され得る。その際、個々の成分の添加順序および添加時点は、得られる混合物特性に決定的な作用を及ぼし得る。次いで、そのようにして得られたゴム混合物は、通常、内部混合機中でまたはロールで40〜130℃、有利には50〜120℃にて架橋化学物質と混合され得、且つ後続の処理工程、例えば形状付与および加硫のためにいわゆる粗製混合物へと加工され得る。
【0073】
本発明によるゴム混合物の加硫は、80〜200℃、有利には130〜180℃の温度、場合によっては10〜200barの加圧下で行われ得る。
【0074】
本発明によるゴム混合物は、成形体の製造、例えば空気タイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、チューブ、ドライブベルト、コンベヤベルト、ロール被覆、タイヤ、靴底、シールリング、形材および減衰部材の製造に適している。
【0075】
本発明によるカーボンブラックは、良好な摩耗抵抗と共に同時にゴム混合物における良好な転がり抵抗の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】カーボンブラック反応器を示す図
【0077】
実施例
実施例1:(カーボンブラック製造):
本発明による一連のカーボンブラックを、図1に示されたカーボンブラック反応器中で製造する。
【0078】
図1はファーネス反応器を貫く縦断面を示す。該カーボンブラック反応器は燃焼室5を有し、該燃焼室内で、カーボンブラック油の熱分解のための高温処理ガスを過剰の空気酸素の供給下での燃料の燃焼によって作り出す。本発明によるカーボンブラックの製造のために、燃料としてカーボンブラック油を使用する。比較カーボンブラックの製造のために、燃料として天然ガスを使用する。
【0079】
燃焼空気の供給は、該燃焼室の円形の正面壁の上方に同心状に分布している複数の開口部2によって行う。燃料は軸状のバーナランス1によって燃焼室に導入する。該バーナランスは、本発明による処理操作の最適化のために軸方向に位置を変えることができる。燃焼室は円錐状に狭小箇所6に通じている。カーボンブラック原料は半径方向ランス3によって狭小箇所にもしくは狭小箇所より前で噴射する。該狭小箇所の横断後、反応混合物は反応室7に向かって拡大する。
【0080】
A、BおよびCは、油ランス3によって高温処理ガス中にカーボンブラック油を噴射するための様々な位置を表している。該油ランスのヘッドには適した噴霧ノズルが備え付けられている。各々の噴射位置には少なくとも4つの噴射器が該反応器の周囲にわたって分布している。
【0081】
中断帯域において、急冷水ランス4によって水を噴霧する。
【0082】
燃焼帯域、反応帯域および中断帯域は、図1の中でローマ数字I〜IIIによって表されている。それらの正確な軸状の広がりは、燃焼ランス、油ランスおよび急冷水ランスのそのつどの位置決めに依存する。
【0083】
使用した反応器の寸法は、次のリストから読み取られる:

燃焼室の最も大きい直径: 930mm
燃焼室から狭小箇所までの長さ: 1660mm
燃焼室の円錐部の長さ: 1300mm
狭小箇所の直径: 114mm
狭小箇所の長さ: 80mm
反応室の直径: 240mm
油ランスの位置1) A 40mm
B −215mm
C −500mm
急冷水ランスの最大位置1) 8250mm
1)入口から狭小箇所に向かって測定(+:進入後 −:進入前)
【0084】
本発明によるカーボンブラックの製造のために、燃料およびカーボンブラック原料として、92質量%の炭素含有率および6質量%の水素含有率を有するカーボンブラック油を使用する。比較カーボンブラックの製造のために、燃料として天然ガスおよびカーボンブラック原料として92質量%の炭素含有率および6質量%の水素含有率を有するカーボンブラック油を使用する。
【0085】
本発明によるカーボンブラックを製造するための反応器パラメータは第1表に列挙している。5つの異なるカーボンブラックを製造する(本発明によるカーボンブラック1〜4ならびに比較カーボンブラック5)。製造条件は、殊に狭小箇所においてもしくは狭小箇所の前で噴射されるカーボンブラック原料の量に関して異なる。
【0086】
製造したカーボンブラックは、特性決定およびゴム混合物中への組み込み前に通常の方法に従って湿式造粒する。
【0087】
【表1】

【0088】
カーボンブラック原料に最初に衝突する5ms前の蒸発燃料5およびカーボンブラック原料に衝突する際の蒸発燃料の割合は、プログラム"Fluent",Version 6.3を用いてコンピュータ補助による流体力学的なシミュレーション計算によって算出する。
【0089】
製造したカーボンブラックのカーボンブラック分析による特性データは第2表に列挙している:
【表2】

【0090】
比較カーボンブラック1は、Evonik Deussa GmbHのCorax(R)N121である。比較カーボンブラック2は、Evonik Deussa GmbHのEcorax(R)1720である。比較カーボンブラック2は、EP0949303に記載の方法に従って製造される。比較カーボンブラック3は、Evonik Deussa GmbHのCorax(R)N220である。比較カーボンブラック4は、Evonik Deussa GmbHのCorax(R)N134である。
【0091】
実施例2(天然ゴムにおけるゴム技術的試験):
天然ゴム混合物のために使用した配合は、次の第3表に記載している。その際、単位phrは、使用される粗製ゴム100部に対する質量部を意味する。
【0092】
ゴム混合物およびそれらの加硫物を製造するための一般的な方法は、教本:"Rubber Technology Handbook",W.Hofmann,Hanser Verlag 1994に記載されている。
【0093】
【表3】

【0094】
天然ゴムSMR10 ML4=60〜70は、混合処理前に通常の方法に従ってロールミルで素練りされ、且つ素練り後に少なくとも24時間、しかしながらせいぜい一週間室温で中間貯蔵されるSMR10である。その際、素練りされたSMR10のML1+4(100℃)値は60〜70の範囲にある。ML1+4値は、DIN53523/3に従って測定される。
【0095】
Vulkanox(R)4020は、Lanxess AG社の老化防止剤6PPDである。Vulkanox(R)HSは、Lanxess AG社の老化防止剤TMQである。Protektor(R)G3108は、Paramelt B.V.社のオゾン防止ワックスである。Rhenogran(R)TBBS−80は、Rhein−Chemie GmbHの作用物質80%を含有するTBBSタイプの加硫促進剤である。
【0096】
ゴム混合物は、第4表における混合規則に応じて内部混合機中で製造する。
【0097】
【表4】

【0098】
第5表にはゴム試験のための方法をまとめている。
【0099】
【表5】

【0100】
第6表は、ゴム技術的試験の結果を示す。混合物の加硫時間は17分である。
【0101】
【表6】

【0102】
DIN摩耗(mm3)の値が高ければ高いほど、それだけゴム混合物の摩耗抵抗性は悪化している。従って、摩耗抵抗指数はそれぞれのカーボンブラックグループ内の各々のカーボンブラックについて次のように算出される:
摩耗抵抗指数=(グループ内の参照カーボンブラックのDIN摩耗/DIN摩耗)*100。
【0103】
グループ1内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック1、グループ2内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック3、グループ3内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック4およびグループ4内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック5である。
【0104】
従って摩耗抵抗指数>100は、該グループ内でのそれぞれの参照カーボンブラックを基準として、改善された摩耗抵抗を意味し、<100の値は摩耗抵抗が悪化したことを意味する。
【0105】
ニードル温度(Einstichtemperatur)(℃)の値が高ければ高いほど、それだけ発熱およびそれに伴ってゴム混合物中での動的応力によるヒステリシスが高まり、且つそれに伴って期待されるべき転がり抵抗が悪化する。従って、転がり抵抗指数はそれぞれのカーボンブラックグループ内の各々のカーボンブラックについて次のように算出される:
転がり抵抗指数=(グループ内の参照カーボンブラックのニードル温度/ニードル温度)*100。
【0106】
従って転がり抵抗指数>100は、該グループ内でのそれぞれの参照カーボンブラックを基準として、改善された且つそれに伴って低下された転がり抵抗を意味し、<100の値は転がり抵抗が悪化したことを意味する。
【0107】
第6表の結果から、バランスのとれた一般的なゴム技術的な特性プロファイルにて、本発明によるFP指数>0を有するカーボンブラックが、FP指数<0を有する比較カーボンブラックより摩耗抵抗および転がり抵抗に関して良好なバランスを示していることがわかる。
【0108】
実施例3(E−SBRにおけるゴム技術的試験):
E−SBR混合物のために使用した配合は、次の第7表に記載している。
【0109】
【表7】

【0110】
E−SBR Krynol(R)1712は、Lanxess AG社の油37.5phrで伸展されたE−SBRゴムである。
【0111】
加硫促進剤Vulkacit(R)CZ/EG−Cは、Lanxess AG社のCBSである。加硫促進剤Perkacit TBZTD−PDR−Dは、Flexsys N.V.のTBZTDである。
【0112】
ゴム混合物は、第8表における混合規則に応じて内部混合機中で製造する。
【0113】
【表8−1】

【0114】
【表8−2】

【0115】
第9表は、ゴム技術的試験の結果を示す。混合物の加硫時間は13分である。
【0116】
【表9】

【0117】
グループ5内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック1、グループ6内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック3、グループ7内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック4およびグループ8内での参照カーボンブラックは比較カーボンブラック5である。
【0118】
第9表の結果から、バランスのとれた一般的なゴム技術的な特性プロファイルにて、本発明によるFP指数>0を有するカーボンブラックがそのつどFP指数<0を有する比較カーボンブラックより摩耗抵抗および転がり抵抗に関して良好なバランスを示していることがわかる。
【符号の説明】
【0119】
1 バーナランス、 2 開口部、 3 半径方向ランス、 4 急冷水ランス、 5 燃焼室、 6 狭小箇所、 7 反応室、 I 燃焼帯域、 II 反応帯域、 III 中断帯域、 A〜C カーボンブラック油の噴射位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTAB表面積が100〜160m2/gであり、四分位比が1.60より大きく、且つFP指数が>0であることを特徴とするカーボンブラック。
【請求項2】
前記FP指数が>0.5であることを特徴とする、請求項1記載のカーボンブラック。
【請求項3】
凝集体径分布の粒子>150nmのフラクションが20質量%より小さいことを特徴とする、請求項1記載のカーボンブラック。
【請求項4】
反応器軸に沿って燃焼帯域、反応帯域および中断帯域を含有するファーネスブラック反応器中での請求項1記載のカーボンブラックの製造方法であって、前記燃焼帯域における酸素を含有するガス中での燃料の燃焼による高温廃ガスの流の生成および燃焼帯域から反応帯域を貫く中断帯域中への廃ガスの導通、前記反応帯域における高温廃ガス中へのカーボンブラック原料の混入および前記中断帯域における水の噴霧によるカーボンブラック形成の停止による製造方法において、カーボンブラック原料60〜90質量%を前記反応帯域の最初の3分の1で、且つ前記カーボンブラック原料の残量を上流で少なくとも1つの別の箇所で反応器中に噴射し、且つ燃料を、カーボンブラック原料に最初に衝突する際に前記燃料の90〜100質量%が蒸発し、且つ前記カーボンブラック原料に衝突する5ms前に前記燃料の80〜99質量%が蒸発しているように導くことを特徴とする、請求項1記載のカーボンブラックの製造方法。
【請求項5】
充填剤、補強性充填剤、UV安定剤、導電性カーボンブラックまたは顔料としての、請求項1記載のカーボンブラックの使用。
【請求項6】
ゴム混合物における補強性カーボブラックとしての、請求項1記載のカーボンブラックの使用。
【請求項7】
少なくとも1つのゴムおよび請求項1記載の少なくとも1つのカーボンブラックを含有することを特徴とするゴム混合物。
【請求項8】
前記ゴムがジエンゴムであることを特徴とする、請求項7記載のゴム混合物。
【請求項9】
前記ジエンゴムが天然ゴムであることを特徴とする、請求項8記載のゴム混合物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−540734(P2010−540734A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527384(P2010−527384)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061701
【国際公開番号】WO2009/043676
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】