説明

カーボンブラックおよびカーボンナノファイバーを含有する導電性の熱可塑性樹脂

カーボンナノファイバーと粒子状の炭素化合物とを同時に使用する場合、良好な流動性と低い表面抵抗とが組み合わされた特性プロファイルを生じる相乗効果が現れる。この場合、さらに極めて良好な表面品質および高い靭性により優れた導電性の成形材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノファイバーおよび粒子形の炭素化合物を含有する熱可塑性樹脂に関する。
【0002】
導電性のプラスチックは数多くの適用のために必要とされており、その際、今日では次の適用が重要である:
− たとえば包装の際、エーロゾル、粉末または液体のための計量供給システムにおいて、およびたとえば安全性の理由から帯電を防止しなくてはならない電子部品、たとえばチップキャリアにおける静電荷の防止、
− 電気機器および電子部品の、たとえば自動車、EDP、通信およびコミュニケーション技術における電磁遮蔽、
− たとえばポリマーバッテリーまたは電極のための、自己導電性(self-conducting)プラスチックの電気化学的な可逆性の利用、
− 導電性の利用、たとえばケーブル中の電位差の制御、電流に依存するスイッチ部材、加熱素子またはプラスチック部材の静電塗装のため。静電塗装は近年、極めて多くの分野で、特に自動車産業において行われている。静電塗装の基本的な前提は、塗装すべき成形部材を帯電させることができることである。これは金属の場合には容易であるが、しかし通常の熱可塑性樹脂の場合、その導電性が低いために通常は、十分な程度に可能ではない。
【0003】
前記の適用の多くにおいて、たとえば特に静電荷の防止のために、静電塗装または電磁遮蔽では、たとえば金属化、金属の蒸着、導電性の塗料もしくはプライマーによる塗装もしくは下塗りにより、導電性の層を施与することによって要求される表面導電性を製造することができる。しかし導電性の表面の適用は、作業コストおよび価格が高く、付加的な欠陥個所を生じ、かつ全ての形状に問題なく適用することができるわけではなく、従って、この表面処理の代わりに使用することができる導電性プラスチックに対する強い要求が生じる。
【0004】
自動車分野における静電塗装の場合、たとえば静電塗装の前にプラスチック成形部材上に施与される、導電性添加剤を含有するいわゆるプライマーの使用により、必要とされる導電性が生じる。その際に生じる導電性の層は同時に塗料へのプラスチックの付着を促進する。この場合にも工程の簡易化および短縮、欠陥個所の低減および静電プライマーの節約によるコストの節約は、導電性プラスチックに対する需要の主な理由である。
【0005】
導電性の熱可塑性樹脂を製造するために通常は、たとえばポリアニリン、ポリ−パラ−フェニレン−ビニレンまたはポリチアフェンのような共役電子系を有する導電性の物質、たとえばカーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、金属繊維および粉末、金属化されたガラス繊維または導電性のポリマーを使用する。
【0006】
導電性以外に特に自動車分野における適用では、たとえば第一級の表面品質、高い靭性、わずかな密度、高い流動性および安価であるという高い要求もまた熱可塑性樹脂に課される。導電性添加剤として、熱可塑性樹脂のためにはしばしば種々に変性された炭素、たとえばカーボンブラック、炭素繊維、グラファイトまたはナノグラファイトを使用する。
【0007】
カーボンブラックおよび炭素繊維の使用により、必要とされる高い濃度に基づいてしばしば表面品質、靭性(たとえば部分結晶質の熱可塑性樹脂の場合に促進される結晶化により)および流動性(たとえばチキソトロピーによる)の劣化が生じる。というのも、要求される導電性のためには比較的高いカーボンブラック濃度が必要とされるからである(R.G. Gilg, "Russ fuer leitfaehige Kunststoffe"、Elektrisch leitende Kunststoffe、H.J. Mair、S. Roth編、第2版、Carl Hanser Verlag、1989年、ミュンヘン、ウィーン、第21〜36頁)。
【0008】
たとえばHyperion Catalysis社から提供されるカーボンナノファイバーを使用することにより、十分な導電性を達成するためには、比較的少量を添加する必要があるのみである(US−A5643502、WO−A01/36536)。しかしポリマーマトリックス中のカーボンナノファイバーの均一な分散は極めて困難である。というのも、ナノグラファイトは凝集体を形成する傾向があるからである。このことはナノグラファイトもしくはカーボンナノファイバーの使用を著しく限定し、かつ実質的にマスターバッチの使用を要求する。さらにナノグラファイトもしくはカーボンナノファイバーの入手性は高価で極めて高い製造工程により著しく制限されている。
【0009】
従って本発明の課題は、第一級の表面品質、高い靭性、低い密度、高い流動性を有する導電性の熱可塑性樹脂を製造することである。特に、自動車の内部および外部範囲における静電塗装のための適用にとって、および/または静電荷の防止のための適用にとって適切な成形材料を開発すべきである。
【0010】
導電性を生じるための種々に変性された炭素、たとえば粒子状の炭素化合物、たとえばカーボンブラックまたはグラファイト粉末または繊維状の炭素変態を含有する熱可塑性樹脂への添加剤の添加は文献において公知である。従って導電性カーボンブラックの製造および特性ならびに所望の導電性のために必要なカーボンブラックの濃度は以前から公知である(R.G. Gilg, "Russ fuer leitfaehige Kunststoffe"、Elektrisch leitende Kunststoffe、H.J. Mair、S. Roth編、第2版、Carl Hanser Verlag、1989年、ミュンヘン、ウィーン、第21〜36頁)。自動車分野における適用のための、静電塗装可能な熱可塑性樹脂の成形部材のための導電性を生じるための熱可塑性樹脂中でのカーボンブラックの使用はさらにUS−A5484838に記載されている。
【0011】
粒子状の炭素化合物以外に、カーボンナノファイバーを含む炭素繊維が、導電性添加剤として添加されていてもよい。US−A5643502にはカーボンナノファイバーの製造ならびに熱可塑性樹脂、たとえばポリアミド、ポリカーボネートまたはポリエステルへ混合してマスターバッチまたは成形材料とすることが記載されている。導電性の熱可塑性成形材料の製造のために、ナノグラファイトもしくはカーボンナノファイバー2〜5質量%が有利な範囲であり、これは導電性にも係わらず極めて良好な、耐衝撃性により優れている。WO−A01/36536には導電性の熱可塑性成形材料を製造するためのポリアミド−ポリフェニレンエーテルのブレンド中のカーボンナノファイバの使用が記載されている。
【0012】
意外なことに、カーボンナノファイバーおよび粒子状の炭素化合物を同時に使用する場合、良好な流動性が低い表面抵抗と組み合わされた特性プロファイルが得られることが判明した。その際、さらに極めて良好な表面品質および高い靭性により優れた導電性の成形材料が得られる。
【0013】
本発明による成形材料はたとえば静電塗装のため、または帯電を防止すべき適用における使用のために著しく適切である。
【0014】
本発明の対象は、
A)少なくとも1種の熱可塑性樹脂99.6〜10質量部、有利には99.5〜40質量部、さらに有利には99.0〜55質量部、
B)少なくとも1種のゴム弾性ポリマー0〜50質量部、有利には0〜35質量部、さらに有利には2〜35質量部、特に有利には5〜25質量部、
C)炭素繊維またはカーボンナノファイバー0.2〜10.0質量部、有利には0.5〜5.0質量部、特に有利には1.0〜3.0質量部、最も有利には1.5〜2.5質量部
D)導電性添加剤として適切な、少なくとも1種の粒子状の炭素化合物、有利にはカーボンブラックまたはグラファイト粉末0.2〜10.0質量部、有利には0.5〜8.0質量部、特に有利には1.0〜5.0、最も有利には1.5〜4.0質量部、
E)少なくとも1種の充填材および/または強化材0〜50質量部、有利には2〜40質量部、特に有利には5〜30質量部
を含有する組成物である。
【0015】
該組成物は本発明によれば成分Aとしてたとえばポリオフィンのような熱可塑性樹脂、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルおよび/またはポリオキシメチレンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリウレタンを含有する。有利には該組成物は成分Aとして、ポリカーボネート、ポリアミド、たとえばポリアミド6またはポリアミド6,6、ポリエステル、たとえばポリアルキレンテレフタレート、たとえばポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートの群からの少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含有する。本発明によれば有利には2種類以上の熱可塑性樹脂からなる混合物もまた成分Aとして使用することができる。特に有利であるのは、ポリカーボネートおよびポリエステルを含有する混合物、たとえばポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートブレンドまたはポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートブレンドである。
【0016】
有利には成分Aとしてポリアミドを使用する。本発明によるポリアミドは種々の方法で製造することができ、かつ著しく異なった成分から合成され、かつ特別な適用事例では単独で、または加工助剤、安定剤、高分子のブレンド相手(たとえばエラストマー)あるいはまた強化材料(たとえば鉱物質の充填材またはガラス繊維)と組み合わせて、特別に調節された特性の組合せを有する加工材料にすることができる。その他のポリマー、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ABSの成分とのブレンドもまた適切であり、その際、場合により1種類以上の相容化剤を使用することができる。ポリアミドの特性はエラストマーの添加により、たとえば強化したポリアミドの耐衝撃性に関して改善することができる。多数の組合せの可能性により、極めて異なった特性を有する多数の製品が可能になる。
【0017】
ポリアミドを製造するために多数の方法が公知であり、その際、所望の最終製品に応じて異なったモノマー成分、種々の連鎖調節剤を所望の分子量の調節のために、または後に意図される後処理のための反応性の基を有するモノマーもまた使用することができる。
【0018】
技術的に関連する、ポリアミドのための製造方法は多くの場合、溶融物中での重縮合により進行する。この範囲でラクタムの加水分解による重合もまた重縮合と理解する。
【0019】
有利なポリアミドは、ジアミンおよびジカルボン酸および/または少なくとも5の環構成成分を有するラクタムまたは相応するアミノ酸から出発して製造することができる部分結晶質のポリアミドである。
【0020】
出発生成物として脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸、たとえばアジピン酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族および/または芳香族ジアミン、たとえばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体のジアミノ−ジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス−アミノメチル−シクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、たとえばアミノカプロン酸もしくは相応するラクタムが考えられる。上記のモノマーの複数からなるコポリアミドが包含される。
【0021】
特に有利にはカプロラクタム、とりわけ有利にはε−カプロラクタムを使用する。
【0022】
さらに多くの場合、PA6、PA66およびその他の脂肪族および/または芳香族ポリアミドもしくはコポリアミドをベースとし、ポリマー鎖中のポリアミド基あたり3〜11のメチレン基が生じる化合物が特に適切である。
【0023】
本発明により製造されるポリアミドはその他のポリアミドおよび/またはその他のポリマーとの混合物中でも使用することができる。
【0024】
該ポリアミドに通常の添加剤、たとえば離型剤、安定剤および/または流動性調整剤を溶融物中で添加するか、または表面上に施与することができる。
【0025】
同様に有利には成分Aとして部分芳香族のポリエステルを使用することができる。本発明による部分芳香族のポリエステルは、ポリアルキレンテレフタレートの誘導体の群から選択されており、有利にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートの群から選択され、特に有利にはポリブチレンテレフタレート、とりわけ有利にはポリブチレンテレフタレートである。
【0026】
部分芳香族のポリエステルとは、芳香族分子部分以外に、脂肪族分子部分も有する材料であると理解する。
【0027】
本発明の意味でのポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性の誘導体(たとえばジメチルエステルまたは無水物)および脂肪族、脂環式もしくは芳香族脂肪族のジオールからなる反応生成物およびこれらの反応生成物の混合物である。
【0028】
有利なポリアルキレンテレフタレートはテレフタル酸(またはその反応性の誘導体)および2〜10の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式ジオールから公知の方法により製造することができる(Kunststoff-Handbuch、第VIII巻、第695頁以降、Karl-Hanser-Verlag、Muenchen、1973年)。
【0029】
有利なポリアルキレンテレフタレートはジカルボン酸に対して少なくとも80モル%、有利には90モル%のテレフタル酸基および、ジオール成分に対して少なくとも80モル%、有利には少なくとも90モル%のエチレングリコール−および/またはプロパンジオール−1,3−および/またはブタンジオール−1,4−基を有する。
【0030】
有利なポリアルキレンテレフタレートはテレフタル酸基以外に、8〜14の炭素原子を有するその他の芳香族ジカルボン酸または4〜12の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の基、たとえばフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸の基を20モル%まで含有していてよい。
【0031】
有利なポリアルキレンテレフタレートはエチレン−もしくはプロパンジオール−1,3−もしくはブタンジオール−1,4−グリコール基以外に、3〜12の炭素原子を有するその他の脂肪族ジオールまたは6〜21の炭素原子を有する脂環式ジオール、たとえばプロパンジオール−1,3、2−エチルプロパンジオール−1,3、ネオペンチルグリコール、ペンタン−ジオール−1,5、ヘキサンジオール−1,6、シクロヘキサン−ジメタノール−1,4、3−メチルペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3および−1,6,2−エチルヘキサンジオール−1,3、2,2−ジエチルプロパンジオール−1,3、ヘキサンジオール2,5、1,4−ジ(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンの基を20モル%まで含有していてよい(DE−A2407674、2407776、2715932)。
【0032】
ポリアルキレンテレフタレートは比較的少量の、たとえばDE−A1900270およびUS−A3692744に記載されているような、三価もしくは四価のアルコールまたは三塩基性もしくは四塩基性のカルボン酸を組み込むことによって分岐してもよい。有利な分岐剤のための例はトリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタンおよび−プロパンおよびペンタエリトリットである。
【0033】
酸成分に対して分岐剤を1モル%より多く使用しないことが適切である。
【0034】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(たとえばそのジアルキルエステル)およびエチレングリコールおよび/またはプロパンジオール−1,3および/またはブタンジオール−1,4から単独で製造されているポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレン−およびポリブチレンテレフタレート)、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に有利である。
【0035】
有利なポリアルキレンテレフタレートは、少なくとも2種類の上記の酸成分および/または少なくとも2種類の上記のアルコール成分から製造されているコポリエステルでもあり、特に有利なコポリエステルはポリ−(エチレングリコール/ブタンジオール−1,4)−テレフタレートである。
【0036】
ポリアルキレンテレフタレートはそのつど25℃でフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1の質量比)で測定して、一般に約0.4〜1.5、有利には0.5〜1.3の固有粘度を有する。
【0037】
本発明により製造されるポリエステルはその他のポリエステルおよび/または別のポリマーのとの混合物中でも使用することができる。
【0038】
ポリエステルに通常の添加剤、たとえば離型剤、安定剤および/または流動性調整剤を溶融物中で添加するか、または表面上に施与することができる。
【0039】
同様に有利には成分Aとして本発明によればポリカーボネートまたはポリカーボネートの混合物を使用することができる。
【0040】
有利なポリカーボネートは、一般式(I)
HO−Z−OH (I)
[式中、
Zは、1もしくは複数の芳香族基を有する、6〜30の炭素原子を有する二価の有機基である]のビスフェノールをベースとするホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートである。
【0041】
式I(a)
【0042】
【化1】

[式中、
Aは単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12−アリーレンであり、該基にその他の芳香族の、場合によりヘテロ原子を有する環が縮合していてもよく、
または式(II)もしくは(III)
【0043】
【化2】

の基であり、
BはそのつどC〜C12−アルキル、有利にはメチル、ハロゲン、有利には塩素および/または臭素であり、
xはそのつど相互に無関係に0、1または2であり、
pは1または0であり、かつ
およびRはそれぞれのXに関して個々に選択可能であり、相互に無関係に水素またはC〜C−アルキル、有利には水素、メチルまたはエチルであり、
は炭素であり、かつ
mは4〜7の整数、有利には4または5を表すが、ただしその際、少なくとも1の原子X、RおよびRは同時にアルキルである]のビスフェノールは有利である。
【0044】
一般式(I)により記載されるビスフェノールのための例は次の群に属するビスフェノールである:ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、インダンビスフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシドおよびα,α′−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン。
【0045】
前記のビスフェノールの芳香族環においてたとえばアルキル化またはハロゲン化することにより得られる前記のビスフェノールの誘導体もまた一般式(I)により記載されるビスフェノールの例である。
【0046】
一般式(I)により記載されるビスフェノールの例は、特に以下の化合物である:ヒドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p/m−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(つまりビスフェノールA)、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、α,α′−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(つまりビスフェノールM)、α,α′−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンおよびインダンビスフェノール。
【0047】
特に有利なポリカーボネートはビスフェノールAをベースとするホモポリカーボネート、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンをベースとするホモポリカーボネートおよび両方のモノマーのビスフェノールAおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンをベースとするコポリカーボネートである。
【0048】
一般式(I)により記載される前記のビスフェノールは公知の方法により、たとえば相応するフェノールおよびケトンから製造することができる。
【0049】
前記のビスフェノールおよび該ビスフェノールを製造するための方法はたとえばH. Schnellによる著書"Chemistry and Physics of Polycarbonates"、Polymer Reviews、第9巻、第77〜98頁、Interscience Publishers、New York、London、Sidney、1964年およびUS−A3028635に記載されている。
【0050】
1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびその製造はたとえばUS−A4982014に記載されている。
【0051】
インダンビスフェノールおよびその製造はたとえばUS−A3288864、JP−A60035150およびUS−A4334106に記載されている。インダンビスフェノールはたとえばイソプロペニルフェノールまたはその誘導体またはイソプロペニルフェノールの二量体またはその誘導体から、有機溶剤中、フリーデル・クラフツの触媒の存在下で製造することができる。
【0052】
ポリカーボネートは公知の方法により製造することができる。ポリカーボネートを製造するための適切な方法はたとえばビスフェノールからホスゲンを用いて相界面法(phase interface process)により、またはビスフェノールからホスゲンを用いて均質な相中での方法、いわゆるピリジン法により、またはビスフェノールから炭酸エステルを用いて溶融エステル交換法により製造することである。これらの製造方法はたとえばH. Schnell、"Chemistry and Physis of Polycarbonates"、Polymer Reviews、第9巻、第31〜76頁、Interscience Publishers、New York、London、Sidney、1964年に記載されている。上記の製造方法は、D. Freitag、U. Grigo、P. R. Mueller、H. Nouvertne、"Polycarbonates"、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第11巻、第二版、1988年、第648〜718頁およびU. Grigo, K. KircherおよびP. R. Mueller、"Polycarbonate"、Becker、Braun、Kunststoff-Handbuch、第3/1巻、Polycarbonate、Polyacetale、Polyester、Celluloseester、Carl Hanser Verlag、Muenchen、Wien、1992年、第117〜299頁およびD. C. Prevorsek、B. T. DebonaおよびY. Kesten、Corporate Research Center、Allied Chemical Corporation、Morristown、New Jersey 07960、"Synthesis of Poly(estercarbonate) Copolymers"、Journal of Polymer Science、Polymer Chemistry Edition、第19巻、第75〜90頁(1980年)に記載されている。
【0053】
溶融エステル交換法は特に、H. Schnell、"Chemistry and Physics of Polycarbonates"、Polymer Reviews、第9巻、第44〜51頁、Interscience Publishers、New York、London、Sidney、1964年ならびにDE−A1031512、US−A3022272、US−A5340905およびUS−A5399659に記載されている。
【0054】
ポリカーボネートを製造する際に有利には不純物の度合いが低い原料および助剤を使用する。特に溶融エステル交換法により製造する際には使用されるビスフェノールおよび使用される炭酸誘導体はできる限りアルカリイオンおよびアルカリ土類イオンを有していないほうがよい。このような純粋な原料はたとえば、炭酸誘導体、たとえば炭酸エステルおよびビスフェノールを再結晶、洗浄または蒸留させることにより得られる。
【0055】
本発明により適切なポリカーボネートは有利には、たとえば超遠心分離または散乱光測定により測定することができる、10000〜200000g/モルの分子量の質量平均(Mw)を有する。特に有利には12000〜80000g/モル、とりわけ20000〜35000g/モルの分子量の質量平均を有する。
【0056】
本発明によるポリカーボネートの平均分子量はたとえば公知の方法で連鎖停止剤の相応する量により調整することができる。連鎖停止剤は単独で、または種々の連鎖停止剤の混合物として使用することができる。
【0057】
適切な連鎖停止剤はモノフェノールであってもモノカルボン酸であってもよい。適切なモノフェノールはたとえばフェノール、p−クロロフェノール、p−t−ブチルフェノール、クミルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、ならびに長鎖のアルキルフェノール、たとえば4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールまたはアルキル置換基中に合計して8〜20の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、たとえば3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチル−ヘプチル)−フェノールまたは4−(3,5−ジメチル−ヘプチル)−フェノールである。適切なモノカルボン酸は安息香酸、アルキル安息香酸およびハロゲン安息香酸である。
【0058】
有利な連鎖停止剤はフェノール、p−t−ブチルフェノール、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールおよびクミルフェノールである。
【0059】
連鎖停止剤の量は、そのつど使用されるビスフェノールの合計に対して有利には0.25〜10モル%である。
【0060】
本発明により適切なポリカーボネートは公知の方法で分岐されていてもよく、かつしかも有利には三官能性もしくは三官能性より多くの分岐を組み込むことにより分岐されていてもよい。適切な分岐剤はたとえば3以上のフェノール性の基を有するか、または3以上のカルボン酸基を有するものである。
【0061】
適切な分岐剤はたとえばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ヘプタン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5′−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、ヘキサ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェニル)−テレフタル酸エステル、テトラ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−メタン、テトラ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノキシ)−メタンおよび1,4−ビス−(4′,4″−ジヒドロキシトリフェニル)−メチルベンゼンならびに2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、塩化トリメシン酸およびα,α′,α″−トリス−(4−ヒドロキシフェノール)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンである。
【0062】
有利な分岐剤は1,1,1−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0063】
場合により使用される分岐剤の量は使用されるビスフェノールのモルに対して、有利には0.05モル%〜2モル%である。
【0064】
分岐剤はたとえば相界面法によりポリカーボネートを製造する場合、ビスフェノールおよび連鎖停止剤と共にアルカリ性の水相中に装入するか、または有機溶剤中に溶解して炭酸誘導体と一緒に添加することができる。エステル交換法の場合、分岐剤は有利にはジヒドロキシ芳香族化合物またはビスフェノールと一緒に供給する。
【0065】
溶融エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際に有利に使用される触媒は文献公知のアンモニウム塩およびホスホニウム塩である(たとえばUS−A3442864、JP−A14742/72、US−A5399659およびDE−A19539290を参照のこと)。
【0066】
コポリカーボネートもまた使用することができる。本発明の意味でのコポリカーボネートは特にその分子量の質量平均(Mw)が有利に10000〜200000g/モル、特に有利には20000〜80000g/モル(光散乱測定または超遠心分離により予め検定することによりゲルクロマトグラフィーにより測定)であるポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーである。ポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマー中の芳香族カーボネートの構造単位の含有率は有利には75〜97.5質量%、特に有利には85〜97質量%である。ポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマー中のポリジオルガノシロキサン構造単位の含有率は有利には25〜2.5質量%、特に有利には15〜3質量%である。ポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーはたとえば有利にP=5〜100、特に有利にはP=20〜80の平均重合度を有するα,ω−ビスヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンから出発して製造することができる。
【0067】
ポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーはポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーと、通常のポリシロキサン不含の、熱可塑性ポリカーボネートとの混合物であってもよく、その際、この混合物中のポリジオルガノシロキサン構造単位の全含有率は有利には2.5〜25質量%である。
【0068】
このようなポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーは、ポリマー鎖中に一方では芳香族カーボネート構造単位(1)および他方ではアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン(2)
【0069】
【化3】

[式中、
Arは同一もしくは異なった二官能性の芳香族基であり、かつ
RおよびRは同一もしくは異なっており、かつ線状のアルキル、分枝鎖状のアルキル、アルケニル、ハロゲン化された線状のアルキル、ハロゲン化された分枝鎖状のアルキル、アリールまたはハロゲン化されたアリール、有利にはメチルを表し、かつ
nは有利に5〜100、特に有利には20〜80の平均重合度を有する]を含有することにより特徴付けられる。
【0070】
アルキルは前記の式(2)中で有利にはC〜C20−アルキルであり、アルケニルは前記の式(2)中で有利にはC〜C−アルケニルであり、アリールは前記の式(2)中で有利にはC〜C14−アリールである。ハロゲン化された、とは前記の式中で部分的に、もしくは完全に塩素化、臭素化もしくはフッ素化されていることを意味する。
【0071】
アルキル、アルケニル、アリール、ハロゲン化されたアルキルおよびハロゲン化されたアリールの例はメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ビニル、フェニル、ナフチル、クロロメチル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチルおよびクロロフェニルである。
【0072】
このようなポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーおよびその製造はたとえばUS−A3189662、US−A3821325およびUS−A3832419に記載されている。
【0073】
有利なポリジオルガノシロキサン−ポリカーボネート−ブロックコポリマーはたとえば、α,ω−ビスヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンをその他のビスフェノールと一緒に、場合により分岐剤を通常の量で併用して、(たとえばH.Schnell、"Chemistry and Physis of Polycarbonates"、Polymer Reviews、第9巻、第31〜76頁、Interscience Publishers、New York、London、Sidney、1964年に記載されているように)たとえば2相界面法により反応させることによって製造することができる。この合成の原料として使用されるα,ω−ビスヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンおよびその製造はたとえばUS−A3419634に記載されている。
【0074】
ポリカーボネートに通常の添加剤、たとえば離型剤、安定剤および/または流動性調節剤を溶融物中で添加するか、または表面上に施与することができる。有利には使用されるポリカーボネートはすでに離型剤を配合の前に本発明による成形材料のその他の成分と共に含有している。
【0075】
成分Aとして本発明によれば、明らかに種々の熱可塑性樹脂からなる組合せ、たとえば有利にはPC/ポリアルキレンテレフタレート、PC/PBT、PC/PET、PBT/PA、PET/PA、PBT/PS、PET/PS、PA/PSもまた使用することができる。特に有利であるのはPC/ポリアルキレンテレフタレートの混合物、たとえばPC/PBTおよびPC/PETである。最も有利であるのはPC/ポリアルキレンテレフタレートからなる混合物、たとえばPC/PBTおよびPC/PETであり、その際、PC:ポリアルキレンテレフタレートの質量比は3:1〜1:3の範囲、有利には1:1〜1:2.5の範囲である。
【0076】
成分B)として該組成物は本発明によれば−5℃未満、有利には−15℃未満、好ましくは−30℃未満、最も有利には−50℃未満のガラス転移温度を有し、しばしば耐衝撃性変性剤、エラストマーまたはゴムともよばれるゴム弾性ポリマーまたは2種類以上の異なったゴム弾性ポリマーからなる混合物を含有する。
【0077】
本発明による成分B)は一般に少なくとも2、有利には3の以下のモノマーからなるコポリマー、有利にはグラフトコポリマーである:スチレン、アクリルニトリル、ブタジエン、アルコール成分として1〜18の炭素原子を有するアルコールのアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、1,3−ブタジエン、イソブテン、イソプレンおよび/またはクロロプレン。成分D)のこのようなポリマーはたとえばMethoden der Organischen Chemie(Houben-Weyl)、第14/1巻、Georg Thieme-Verlag、Stuttgart、1961年、第392〜406頁およびC. B. Bucknall、Thoughened Plastics、Appl. Science Publishers、London、1977年に記載されている。グラフトコポリマーの場合、核上に少なくとも1の外側の外被がグラフトされる。
【0078】
成分B)として有利に使用されるグラフトコポリマーはたとえば1,3−ブタジエン、イソプレン、n−ブチルアクリレート、スチレンおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートのグラフト幹上のスチレン、アクリルニトリルおよび/またはメチルメタクリレートのグラフト反応により、有利には1,3−ブタジエン、イソプレン、n−ブチルアクリレート、スチレンおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートのグラフト幹上のアクリルニトリル、スチレンおよび/またはメチルメタクリレートのグラフト反応により得られる。
【0079】
本発明により特に有利であるのは、メチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートとスチレンとの混合物を1,3−ブタジエンベースのグラフト幹上に、または1,3−ブタジエンとスチレンとの混合物からなるグラフト幹上にグラフトするグラフトコポリマーであり、これはMBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)−ゴムともよばれる。本発明によれば同様に、1,3−ブタジエンベースのグラフト幹または1,3−ブタジエンとスチレンとからなる混合物からなるグラフト幹上にアクリルニトリルまたはアクリルニトリルとスチレンとからなる混合物がグラフトされるグラフトコポリマーも特に有利であり、これはABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)−ゴムともよばれる。
【0080】
有利には成分B)として、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートが1,3−ブタジエン、イソプレン、n−ブチルアクリレート、スチレンおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートからなるグラフト幹上にグラフトされるグラフトコポリマーもまた使用する。
【0081】
グラフト幹上にグラフトされるモノマー混合物は明らかに付加的な反応性の基、たとえばエトキシ基もしくはグリシジル基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基および/またはアミド基、エチレン性二重結合を有する官能化されたモノマー、たとえばアシルアミド、メタクリルアミド、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、有利にはマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートを有していてもよい。
【0082】
本発明によれば架橋したモノマー、たとえばジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジヒドロジシクロペンタジエンアクリレートおよび/または1,3−ブタジエンもまたグラフト幹へ、および/または外側の外皮へ共重合することができる。
【0083】
さらに、少なくとも2つの重合性二重結合を有する、いわゆるグラフト架橋性モノマーもまた使用することができ、その際、二重結合を重合の際に種々の速度で重合することができる。有利には通常のモノマーと同様の速度で二重結合を重合し、これに対してその他の二重結合は明らかにより遅く重合し、その結果、ここから一定の割合でゴム中で二重結合が生じる。もう1つの相のグラフトの際に、この二重結合の部分がグラフトモノマーと反応し、従ってグラフトされた相は部分的に化学的にグラフト幹に結合する。たとえばここではエチレン性不飽和カルボン酸エステル、たとえばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレートまたはUS−A4148846に挙げられた化合物が挙げられる。
【0084】
さらに成分B)は有利には、−5℃未満のガラス転移温度を有するアクリレートをベースとするグラフト幹とのグラフトポリマー(このようなグラフトポリマーは一般にアクリレートゴムともよばれ、かつ当業者に公知である)または2種類以上の異なったグラフトポリマーの混合物、あるいはビニル芳香族化合物およびジエンをベースとする弾性のブロックポリマー、特に2もしくは3ブロックコポリマーまたは該ブロックポリマー2種類以上の混合物、あるいはグラフトポリマーと弾性ブロックポリマーとからなる混合物を含む。
【0085】
上記の同様に成分B)として有利に使用することができるアクリレートゴムは有利には、実質的に少なくとも2の以下のモノマーから得られる、ゴム弾性特性を有するグラフトコポリマーを含む:アルコール成分中に1〜18の炭素原子を有する(メタ)−アクリル酸エステル、クロロプレン、ブタジエン−1,3、イソプロペン、スチレン、アクリルニトリル、エチレン、プロピレンおよびビニルアセテート、その際、グラフト幹は少なくとも1の(メタ)アクリル酸エステルを含有しており、つまり同様にMethoden der Organischen Chemie(Houben-Weyl)、第14/1巻、Georg Thieme-Verlag, Stuttgart、1961年、第393〜406頁およびC. B. Bucknall、Thoughened Plastics、Appl. Science Publishers、London、1977年に記載されているようなポリマーである。
【0086】
有利なポリマーB)は部分的に架橋しており、かつ5質量%を超える、有利には20質量%、好ましくは40質量%を超え、特に60質量%を超える含有率を有する。
【0087】
成分B)として有利なアクリレートゴムは
B.1)グラフトモノマーとしての少なくとも1種の重合性のエチレン性不飽和モノマーをベースとするグラフト幹を成分Bに対して95〜5質量%、有利には10〜80質量%
B.2)グラフト幹として、<−10℃、有利には<−20℃のガラス転移温度を有するアクリレートゴムを成分Bに対して5〜95質量%、有利には20〜90質量%。特に有利にはB.2)はB.2)に対して40質量%までのその他のエチレン性不飽和モノマーを含有していてもよいアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルからなるポリマーを含有する
を含有するグラフトコポリマーである。
【0088】
D.2に記載されたアクリレートゴムは有利にはアクリル酸アルキルエステルまたはメタアクリル酸アルキルエステルからなるポリマーであり、これは場合によりD.2に対してその他の重合性のエチレン性不飽和モノマーを40質量%まで含有している。有利なアクリル酸エステルまたはメタ−アクリル酸エステルにはC〜C−アルキルエステル、特にメチル−、エチル−、ブチル−、n−オクチル−および2−エチルヘキシル−エステル、ならびにハロゲンアルキルエステル、有利にはハロゲン−C〜C−アルキルエステル、たとえばクロロ−エチルアクリレート、ならびにこれらのモノマーの混合物が属する。
【0089】
アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸エステルは、有利には1〜18の炭素原子を有する一価のアルコールを有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルである。特に有利であるのはメタクリル酸メチルエステル、−エチルエステルおよび−プロピルエステル、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレートおよびt−ブチルメタクリレートである。
【0090】
グラフト幹D.1のグラフトモノマーは有利にはスチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンもしくはメチル環置換されたスチレン、(メタ)アクリル酸−C〜C−アルキルエステル、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、無水マレイン酸、C〜C−アルキル−もしくはフェニル−N−置換されたマレイミドからなる群の少なくとも1種のモノマー、有利には2もしくは3種類のモノマーまたはこれらの混合物から選択されている。
【0091】
特に有利なグラフトコポリマーB)は、
B.1)次のものからなる混合物5〜95質量部、有利には10〜80質量部、特に30〜80質量部:
B.1.1 メチルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンもしくはメチル環置換されたスチレンまたはこれらの化合物の混合物50〜99質量%、有利には65〜90質量%および
B.1.2 メチルメタクリレート、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、無水マレイン酸、C〜C−アルキル−もしくは−フェニル−N−置換されたマレイミドまたはこれらの化合物の混合物1〜50質量%、有利には35〜10質量%が、
B.2)−10℃未満、有利には−20℃未満のガラス転移温度を有するアルキルアクリレートベースのポリマー5〜95質量部、有利には20〜90質量部、特に20〜70質量部
上にグラフトされたグラフトコポリマーを含み、その際、B.1)およびB.2)からなる質量部の合計は100である。
【0092】
特に、
α グラフト幹D.1として、少なくとも1種の(メタ)−アクリル酸エステルをグラフトポリマーDに対して10〜70質量%、有利には15〜50質量%、特に20〜40質量%、または混合物に対してアクリルニトリルまたは(メタ)アクリル酸エステルを10〜50質量%、有利には20〜35質量%と、混合物に対してスチレンを50〜90質量%、有利には65〜80質量%とからなる混合物10〜70質量%、有利には15〜50、特に20〜40質量%の、
β アルキル基中に1〜8の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキルアクリレート、有利にはn−ブチルアクリレートおよび/またはメチル−n−ブチルアクリレートおよび/または2−エチル−ヘキシルアクリレート、特に単独のアルキルアクリレートとしてn−ブチルアクリレート70〜100質量%、その他の共重合性モノエチレン性不飽和モノマー、たとえばブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリルニトリル、メチルメタクリレートまたはビニルメチルエーテルまたはこれらの混合物0〜30質量%、有利には0〜15質量%、共重合性の多官能性、有利には二官能性および三官能性の、架橋を生じるモノマー0〜5質量%からなるグラフト幹B.2)をグラフトコポリマーB)に対して30〜90質量%、有利には50〜85質量%、特に60〜80質量%、その際、質量の記載はグラフト幹の全質量に対するものである、
上でのグラフト反応により得られるグラフトコポリマーB)が有利である。
【0093】
アクリレートゴムをベースとする有利なグラフトポリマーB)はたとえば(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび/またはスチレンおよび/またはアクリルニトリルによりグラフトされた幹B.2)である。n−ブチルアクリレートベースのアクリレートゴムがグラフト幹B.2)として特に有利である。
【0094】
アクリレートゴムをベースとする特に有利なグラフトポリマーB)は特に、グラフトの全質量に対してポリスチレン単位を5質量%未満、有利にはポリスチレン単位を1質量%未満含有し、特に有利にはポリスチレン単位を含有していないものである。
【0095】
成分B)は種々のグラフトコポリマーの混合物であってもよい。
【0096】
グラフト幹βのゲル割合は一般に少なくとも20質量%、有利には40質量%(トルエン中で測定して)であり、かつグラフト度Gは一般に0.15〜0.55である。
【0097】
成分B)のグラフトコポリマーの平均粒径は有利には0.01〜2μm、好ましくは0.05〜1.0μm、特に有利には0.1〜0.08μm、殊に0.1〜0.4μmである。
【0098】
平均粒径はたとえばOsOおよびRuOにより処理した、本発明による成形材料の超薄層断面の電子顕微鏡写真(TEM)を用いて、粒子の代表的な量(約50)を測定することにより測定される。
【0099】
超遠心分離(W. Scholtan、H. Lange、Kolloid、Z.およびZ. Polymere 250(1972年)、第782〜796頁)により測定された平均粒径d50は、粒子のそのつどの50質量%の上および下に存在している直径である。グラフトポリマーB)の平均粒径d50は有利には0.1〜0.6μmである。
【0100】
グラフト幹B.2の含有率は25℃でジメチルホルムアミド中で測定する(M. Hoffmann、H. Kroener、R. Kuhn、Polymeranalytik I und II、Georg Thieme-Verlag、Stuttgart、1977年)。
【0101】
グラフト度Gはグラフトされたグラフトモノマー対グラフト幹の質量比であり、かつ無次元的である。
【0102】
アクリレートゴムをベースとするポリマーB)の架橋のために有利には1より多くの重合性二重結合を有するモノマーを共重合することができる。架橋性モノマーのための有利な例は、3〜8の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3〜12の炭素原子を有する不飽和の一価のアルコールまたは2〜4のOH基および2〜20の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、たとえばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ポリ不飽和複素環式化合物、たとえばトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート、多官能性のビニル化合物、たとえばジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン、あるいはまたトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。有利には架橋したモノマーはアリルメタクリレート、エチレングリコールジメチルアクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3のエチレン性不飽和基を有する複素環式化合物である。特に有利な架橋性モノマーは環式モノマーであるトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼン、トリシクロデセニルアルコールのアクリル酸エステルである。
【0103】
架橋性モノマーの量はグラフト幹B.2に対して有利には0.02〜5質量%、特に0.05〜2質量%である。
【0104】
少なくとも3のエチレン性不飽和基を有する環式の架橋性モノマーの場合、その量をグラフト幹B.2の1質量%未満に制限することが有利である。
【0105】
グラフトポリマーB)は公知の方法、たとえば塊状重合、懸濁重合、乳化重合または塊状−懸濁重合法により製造することができる。
【0106】
グラフト反応の場合、グラフトモノマーは公知のとおり必ずしも完全にグラフト幹上にグラフトされる必要はないので、本発明によればグラフトポリマーB)とは、グラフト幹の存在下にグラフトモノマーの重合によって得られる生成物であるとも理解される。
【0107】
グラフトポリマーB)は有利には圧縮された形で使用される。
【0108】
本発明による成分B)は、さらにゴム弾性特性を有するブロックポリマー、特にたとえば2ブロック(A−B)および3ブロック(A−B−A)コポリマーを含む。A−BおよびA−B−Aのタイプのブロックコポリマーは熱可塑性エラストマーの典型的な挙動を示しうる。A−BおよびA−B−Aのタイプの有利なブロックコポリマーは1もしくは2のビニル芳香族ブロック(特に有利にはスチレンベース)およびゴムブロック(特に有利にはジエン−ゴム−ブロック、最も有利にはポリブタジエン−ブロックまたはイソプレン−ブロック)を有し、特に場合により部分的に、もしくは完全に水素化されていても良い。
【0109】
A−BおよびA−B−Aのタイプの適切なブロックコポリマーはたとえばUS−A3078254、3402159、3297793、3265765および3594452およびGB−A1264741に記載されている。A−BおよびA−B−Aのタイプの典型的なブロックコポリマーの例は次のものである:ポリスチレン−ポリブタジエン(SBR)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(ε−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBR)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンおよびポリ(ε−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(ε−メチルスチレン)、ならびにこれらの水素化された誘導体、たとえばおよび有利には水素化されたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SEBS)および水素化されたポリスチレン−ポリイソプレン(SEP)である。耐衝撃性変性剤としての場合により水素化されていない前駆物質との混合物中での相応する水素化されたブロックコポリマーの使用はたとえばDE−A2750515、DE−A2434848、DE−A038551、EP−A0080666およびWO−A83/01254に記載されている。上記の刊行物の開示をここで明言をもって引用する。
【0110】
上記のブロックポリマーの混合物も同様に使用することができる。
【0111】
部分的に、もしくは完全に水素化されたブロックコポリマーは特に有利であり、とりわけ有利であるのは水素化されたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SEBS)および水素化されたポリスチレン−ポリイソプレン(SEP)である。
【0112】
A−BおよびA−B−Aのタイプのこのようなブロックポリマーは一連の製造元から、たとえばPhillips Petroleumから商品名SOLPRENEで、Shell Chemical Co.から商品名KRATONで、Dexcoから商品名VECTORで、およびKurarayから商品名SEPTONで市販されている。
【0113】
成分Bはさらに1種類以上のゴム変性グラフトポリマーを含む。ゴム変性グラフトポリマーBは、ビニルモノマーB.1、有利にはB.1.1およびB.1.2に記載したものからなり、ならびにビニルモノマー、有利にはB.1.1およびB.1.2に記載したものによりグラフトされたゴムB.2からなるランダム(コ)ポリマーを含む。Bの製造は公知の方法で、ラジカル重合により、たとえばUS−A3243481、US−A3509237、US−A3660535、US−A4221833およびUS−A4239863に記載されているような乳化重合、塊状重合または溶液重合または塊状−懸濁重合法により行う。特に適切なグラフトゴムは、US−A4937285に記載の、有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸とからなる開始剤系によるレドックス開始により得られるABSポリマーである。
【0114】
有利であるのは<10℃、有利には<−10℃のガラス転移温度を有する1もしくは複数のグラフト幹B.2 95〜5質量%、有利には80〜10質量%上の少なくとも1のビニルモノマーB.1 5〜95質量%、有利には20〜90質量%の1もしくは複数のグラフトポリマーである。
【0115】
有利なモノマーB.1.1はスチレン、α−メチルスチレン、ハロゲンもしくはアルキル環置換されたスチレン、たとえばp−メチルスチレン、p−クロロスチレン、(メタ)アクリル酸−C〜C−アルキルエステル、たとえばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートである。有利なモノマーB.1.2は不飽和のニトリル、たとえばアクリルニトリル、メタクリルニトリル、(メタ)アクリル酸−C〜C−アルキルエステル、たとえばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、不飽和カルボン酸の(無水物およびイミドのような)誘導体、たとえば無水マレイン酸およびN−フェニル−マレイミドまたはこれらの混合物である。
【0116】
特に有利なモノマーB.1.1はスチレン、α−メチルスチレンおよび/またはメチルメタクリレート、特に有利なモノマーB.1.2はアクリルニトリル、無水マレイン酸および/またはメチルメタクリレートである。
【0117】
特に有利なモノマーはB.1.1スチレンおよびB.1.2アクリルニトリルである。
【0118】
ゴム変性されたグラフトポリマーBのために適切なゴムB.2はたとえばジエンゴム、アクリレート−、ポリウレタン−、シリコーン−、クロロプレン−およびエチレン/ビニルアセテート−ゴムである。同様に上記の種々のゴムからなる複合材料もまたグラフト幹として適切である。
【0119】
有利なゴムB.2はジエンゴム(たとえばブタジエン、イソプレンなどをベースとする)またはジエンゴムの混合物またはジエンゴムのコポリマーまたはこれらとその他の共重合性ビニルモノマー(たとえばB.1.1およびB.1.2に記載したもの)との混合物であるが、ただしその際、成分B.2のガラス転移温度は10℃未満、有利には−10℃未満である。特に有利であるのは純粋なポリブタジエンゴムである。その他の共重合性モノマーは50質量%まで、有利には30質量%まで、特に20質量%まで(ゴムベースB.2に対して)ゴムベース中に含有されていてもよい。
【0120】
ポリマーBのB.2に記載した適切なアクリレートゴムは有利にはアクリル酸アルキルエステルからなり、場合によりB.2に対してその他の重合性のエチレン性不飽和モノマーを40質量%まで含有しているポリマーである。有利な重合性アクリル酸エステルにはC〜C−アルキルエステル、たとえばメチル−、エチル−、ブチル−、n−オクチル−および2−エチルヘキシルエステル、ハロゲンアルキルエステル、有利にはハロゲン−C〜C−アルキルエステル、たとえばクロロエチルアクリレートならびにこれらのモノマーの混合物が属する。
【0121】
アクリル酸エステル以外に場合によりグラフト幹B.2を製造するために使用することができる有利な「その他の」重合性のエチレン性不飽和モノマーはたとえばアクリルニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニル−C〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフト幹B.2として有利なアクリレートゴムは、少なくとも60質量%の含有率を有するエマルションポリマーである。
【0122】
B.2によるその他の適切なグラフト幹は、DE−A3704657、DE−A3704655、DE−A3631540およびDE−A3631539に記載されているような、グラフト活性箇所を有するシリコーンゴムである。
【0123】
グラフト幹B.2のゲル含有率は25℃で適切な溶剤中で測定される(M. Hoffmann、H. Kroemer、R. Kuhn、Polymeranalytik I und II、Georg Thieme-Verlag、Stuttgart、1977年)。
【0124】
平均粒径d50はその粒子のそのつど50質量%の上および下に存在する直径である。これは超遠心分離測定(W. Scholtan、H. Lange、Kolloid、Z. und Z. Polymere 250(1972年)、第782〜1796頁)により測定される。
【0125】
成分Bは、必要であれば、およびこのことにより成分B.2のゴム特性が損なわれない場合には、さらに少量の、B.2に対して通常は5質量%未満、有利には2質量%未満の架橋作用のあるエチレン性不飽和モノマーを含有していてもよい。このような架橋作用のあるモノマーのための例は3〜8の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3〜12の炭素原子を有する不飽和の一価のアルコール、または2〜4のOH基および2〜20の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、ポリ不飽和の複素環式化合物、多官能価のビニル化合物、たとえばアルキレンジオール−ジ(メタ)−アクリレート、ポリエステル−ジ(メタ)−アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリビニルシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリル−(メタ)−アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、トリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。
【0126】
有利な架橋性モノマーはアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3のエチレン性不飽和基を有する複素環式化合物である。
【0127】
ゴム変性されたグラフトポリマーBは塊状重合または溶液重合または塊状−懸濁重合により製造する場合には、B.1.1によるモノマー50〜99質量部、有利には60〜95質量部と、B.1.2によるモノマー1〜50質量部、有利には5〜40質量部とからなる混合物50〜99質量部、有利には65〜98質量部、特に有利には75〜97質量部を、ゴム成分B.2の1〜50質量部、有利には2〜35質量部、特に有利には2〜15質量部、とりわけ2〜13質量部の存在下でグラフト重合することにより得られる。
【0128】
グラフトされたゴム粒子の平均粒径d50は一般に0.05〜10μm、有利には0.1〜5μm、特に有利には0.2〜1μmの値を有する。
【0129】
塊状重合または溶液重合または塊状−懸濁重合法により得られた、生じたグラフトされたゴム粒子の平均粒径d50は(電子顕微鏡の撮影に基づいてカウントすることにより測定)一般に0.5〜5μm、有利には0.8〜2.5μmの範囲である。
【0130】
グラフトコポリマーは単独で、または相互の任意の混合物として成分B中に含有されていてもよい。
【0131】
成分Bは本発明によるポリマー組成物中で有利には0.5〜50質量部、特に有利には1〜40質量部およびとりわけ有利には1〜35質量部の量で含有されている。
【0132】
成分C)として該組成物は本発明によりカーボンナノファイバーを含有する。
【0133】
有利なカーボンナノファイバーは一般に、グラファイト層から形成されるチューブの形を有する。グラファイト層は円筒形の軸の周囲に同心円状で配置されている。
【0134】
カーボンナノファイバーは少なくとも5、有利には少なくとも100、特に有利には少なくとも1000の長さ対直径の比を有する。ナノファイバーの直径は一般に0.003〜0.5μmの範囲、有利には0.005〜0.08μmの範囲、特に有利には0.006〜0.05μmの範囲である。カーボンナノファイバーの長さは一般に0.5〜1000μm、有利には0.8〜100μm、特に有利には1〜10μmである。カーボンナノファイバーは中空の、円筒形の核を有し、その周囲にグラファイト層が表面上に巻き付いている。この中空は一般に、0.001〜0.1μmの直径、有利には0.008〜0.015μmの直径を有する。カーボンナノファイバーの一般的な実施態様では、ファイバーの壁は中空の周囲で、たとえば8のグラファイト層からなっている。この場合、カーボンナノファイバーは直径1000μmまで、有利には直径500μmまでの凝集体として複数のナノファイバーからなっていてもよい。凝集体はトリの巣の形を有していてもよいし、櫛ですいた糸または開いたネットの形を有していてもよい。
【0135】
カーボンナノファイバーの添加はモノマーの重合の前、重合の間またはその後で、成分A)の熱可塑性樹脂へと行うことができる。本発明によるナノファイバーの添加を重合後に行う場合、これは有利には押出機または混練機中の熱可塑性樹脂溶融物への添加により行う。混練機または押出機中での配合工程により特にすでに記載した凝集体が十分に、または完全に粉砕され、かつ熱可塑性樹脂マトリックス中にカーボンナノファイバーを分散させることができる。
【0136】
有利な実施態様ではカーボンナノファイバーを高濃度のマスターバッチとして、有利に成分A)として使用される熱可塑性樹脂の群から選択される熱可塑性樹脂に計量供給することができる。マスターバッチ中のカーボンナノファイバーの濃度は5〜50質量%の範囲、有利には8〜30質量%、特に有利には12〜22質量%の範囲である。マスターバッチの製造はたとえばUS−A5643502に記載されている。マスターバッチの使用により特に凝集体の粉砕を改善することができる。カーボンナノファイバーは成形材料もしくは成形体への加工により条件付けられて成形材料もしくは成形体中で本来使用されるよりも短い長さ分布を有する。
【0137】
カーボンナノファイバーはたとえばHyperion CatalysisまたはApplied Science Inc.から提供されている。カーボンナノファイバーの合成はたとえばUS−A5643502に記載されているように、たとえば炭素を含有するガスおよび金属触媒を含有する反応器中で行う。
【0138】
成分D)として該組成物は本発明により粒子形の炭素化合物、たとえば導電性を製造するために適切であり、かつ当業者から導電性カーボンブラックともよばれるカーボンブラックまたはグラファイト粉末を含有する。
【0139】
本発明によればグラファイト粉末は粉砕されたグラファイトである。当業者はグラファイトとはたとえばA. F. Hollemann、E. Wieberg、N. Wieberg、Lehrbuch der anorganischen Chemie、第91〜100版、第701〜702頁に記載されているような、炭素の変態であると理解する。グラファイトは重なって配置されている平坦な炭素層からなる。
【0140】
グラファイトは本発明によればたとえば粉砕することによって粉砕することができる。粒径は0.01〜1mmの範囲、有利には1〜300μmの範囲、最も有利には2〜20μmの範囲である。
【0141】
本発明による導電性カーボンブラックの場合、一次粒径は0.005〜0.2μm、有利には0.01〜0.1μmである。導電性カーボンブラックのジブチルフタレート吸着はカーボンブラック100gあたり40〜1000ml、有利にはカーボンブラック100gあたり90〜600mlである。カーボンブラック表面上には多数の酸素含有基、たとえばカルボキシル基、ラクトール基、フェノール基、キノイドのカルボニル基および/またはピロン構造が存在していてよい。
【0142】
導電性カーボンブラックはたとえばアセチレンから、合成ガスから、またはファーネス法から、油、キャリアガスおよび空気から製造することができる。製造法はたとえばR. G. Gilg、Russ fuer leitfaehige Kunststoffe、Elektrisch leitende Kunststoffe、H. J. Mair、S. Roth、第2版、Carl Hanser Verlag、1989年、Muenchen、Wien、第21〜36頁に記載されている。
【0143】
本発明によるカーボンブラックおよび/またはグラファイトの添加は、モノマーの重合の前、重合の間またはその後で成分A)の熱可塑性樹脂に対して行うことができる。本発明によるカーボンブラックおよび/またはグラファイトの添加を重合法の後で行う場合、これは有利にはたとえば押出機または混練機中の熱可塑性樹脂溶融物へ添加することにより行う。本発明によればカーボンブラックおよび/またはグラファイトは、成分A)として使用される熱可塑性樹脂の群から有利に選択される熱可塑性樹脂中で、高濃度のマスターバッチとしても計量供給することができる。カーボンブラックおよび/またはグラファイトまたはマスターバッチ中での濃度は5〜70質量%の範囲、有利には8〜50質量%、特に有利には12〜30質量%の範囲である。本発明によればカーボンブラックおよび/またはグラファイトはより良好な供給性のために、バインダー、たとえばワックス、脂肪酸エステルまたはポリオレフィンを添加することもできる。本発明によればカーボンブラックおよび/またはグラファイトは付加的なバインダーと共に、またはバインダーなしでたとえばプレス法または圧力法によりペレット化または造粒することができ、このことは同様により良好な供給性のために役立つ。
【0144】
有利な実施態様では複数のグラファイトからなる混合物、複数のカーボンブラックからなる混合物または少なくとも1のグラファイトおよび少なくとも1のカーボンブラックからなる混合物を成分Dとして使用することもできる。
【0145】
本発明による導電性カーボンブラックはたとえばAKZO Nobel社から名称Ketjenblackで、Cabot社から名称Vulcanで、またはDegussa社から名所Printexで購入することができる。
【0146】
本発明によるグラファイトは粉末として、たとえばVogel & Prenner Nachf.、Wiesbaden(ドイツ)から購入することができる。
【0147】
成分E)として熱可塑性成形材料は、たとえばタルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質のケイ酸、炭酸マグネシウム、白亜、長石、硫酸バリウム、ガラス球をベースとする充填材または強化材および/または炭素繊維および/またはガラス繊維をベースとする繊維状の充填材および/または強化材または2もしくは複数の異なった充填材および/または強化材からなる混合物を含有する。有利にはタルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質ケイ酸、炭酸マグネシウム、白亜、長石、硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性の粒状の充填材を使用する。本発明によればタルク、ウォラストナイト、カオリンおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物質の粒状の充填材が特に有利である。
【0148】
特に寸法安定性における等方性および高い熱的な寸法安定性が要求される適用のため、たとえば車体の外部部材のための自動車の適用においては有利には鉱物質の充填材、特に有利にはタルク、ウォラストナイトまたはカオリンを使用する。
【0149】
成分B)がブロックコポリマーである場合、ブレンドは鉱物質の充填材を有利には2.5〜34質量部の量で、特に有利には3.5〜28質量部の量で、最も有利には5〜21質量部の量で含有する。
【0150】
針状の鉱物質充填材が特に有利である。針状の鉱物質充填材とは本発明によれば、著しく際だった針状の特性を有する鉱物質充填材であると理解する。例として針状のウォラストナイトが挙げられる。有利には該鉱物は、2:1〜35:1、特に有利には3:1〜19:1、最も有利には4:1〜12:1の長さ:直径の比を有する。本発明による針状の鉱物の平均粒径は、CILAS GRANULOMETERにより測定して有利には20μm未満、特に有利には15μm未満、とりわけ有利には10μm未満、最も有利には5μm未満である。
【0151】
成分E)としてタルクをベースとする鉱物質の充填材もまた特に有利である。タルクをベースとする鉱物質の充填材として本発明の意味では、当業者がタルクと結びつける全ての粒子形の充填材が考えられる。同様に、市販されており、かつその製品の説明が特性的な特徴としてタルクの概念を含む全ての粒子形の充填材が考えられる。
【0152】
DIN55920により充填材の全質量に対して、50質量%以上、有利には80質量%以上、特に有利には95質量%以上およびとりわけ有利には98質量%以上のタルクの含有率を有する鉱物質充填材が有利である。
【0153】
タルクをベースとする鉱物質の充填材は表面処理されていてもよい。たとえばこれらはたとえばシランベースの接着剤系を有していてもよい。
【0154】
タルクをベースとする本発明による鉱物質の充填材は有利には50μm未満、有利には10μm未満、特に有利には6μm未満およびとりわけ有利には2.5μm未満の粒径d97を有する。平均粒径d50として有利には10μm未満、好ましくは6μm未満、特に有利には2μm未満およびとりわけ有利には1μm未満を選択する。充填材Dのd97値およびd50値は沈降分析SEDIGRAPH D 5000により、またはふるい分析DIN66165により測定される。
【0155】
タルクをベースとする粒子形の充填材の平均アスペクト比(厚さに対する直径)は、完成した生成物の超薄層断面の電子顕微鏡写真および充填材粒子の代表的な量(約50)の測定に基づいて測定して、有利には1〜100、特に有利には2〜25およびとりわけ有利には5〜25の範囲である。
【0156】
充填材および/または強化材は場合によりたとえばシランベースの定着剤もしくは定着剤系により表面変性されていてもよい。しかし前処理は必ずしも必要なわけではない。特にガラス繊維を使用する場合、シランに加えてポリマー分散液、フィルム形成剤、分岐剤および/またはガラス繊維加工助剤を使用することもできる。
【0157】
一般に7〜18μm、有利には9〜15μmの繊維直径を有するガラス繊維もまた特に有利であり、連続糸として、または切断もしくは粉砕されたガラス繊維として添加することができ、その際、繊維はシランベースの適切なサイズ系および定着剤もしくは定着剤系を備えていてもよい。
【0158】
前処理のための慣用のシラン化合物はたとえば一般式
(X−(CH−Si−(O−C2r+14−k
[式中、置換基は次の意味を有する:
xは、NH−、HO−、
【0159】
【化4】

【0160】
qは、2〜10、有利には3〜4の整数、
rは、1〜5、有利には1〜2の整数、
kは、1〜3の整数、有利には1]を有する。
【0161】
有利なシラン化合物はアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランならびに置換基Xとしてグリシジル基を有する相応するシランである。
【0162】
シラン化合物は表面被覆のために鉱物質充填材に対して一般に0.05〜、有利には0.5〜1.5および特に0.8〜1質量%の量で使用される。
【0163】
粒子形の充填材は成形材料もしくは成形体へ加工することにより条件付けられて成形材料もしくは成形体中で、本来使用される充填材よりも小さいd97値またはd50値を有していてもよい。ガラス繊維は成形材料もしくは成形体へ加工することにより条件付けられて成形材料もしくは成形体中で本来使用されるよりも短い長さの分布を有する。
【0164】
この場合、完成品の粒径はたとえばポリマー混合物の薄層断面の電気顕微鏡写真を撮影し、かつ少なくとも25、有利には少なくとも50の充填材粒子を評価のために用いることによって測定することができる。
【0165】
成分F)として本発明による組成物はさらに、相容化剤を含有していてもよい。相容化剤は有利には極性基を有する熱可塑性ポリマーを使用する。本発明によれば、
F.1 ビニル芳香族モノマー、
F.2 C〜C12−アルキルメタクリレート、C〜C12−アルキルアクリレート、メタクリルニトリルおよびアクリルニトリルの群から選択される少なくとも1種のモノマーおよび
F.3 α,β−不飽和成分を含有する無水ジカルボン酸
を含有するポリマーを使用する。
【0166】
ビニル芳香族モノマーF.1としてスチレンが特に有利である。
【0167】
成分F.2のためにアクリルニトリルが特に有利である。
【0168】
α,ω−不飽和成分を含有する無水ジカルボン酸F.3のために特に有利であるのは無水マレイン酸である。
【0169】
有利には成分F.1、F.2およびF.3として前記のモノマーのターポリマーを使用する。従ってスチレン、アクリルニトリルおよび無水マレイン酸のターポリマーが有利に使用される。これらのターポリマーは特に機械的特性、たとえば引張強さおよび破断点伸びの改善のために貢献する。ターポリマー中の無水マレイン酸の量は、広い範囲で変動することができる。0.2〜5モル%の量は有利である。0.5〜1.5モル%の量は特に有利である。この範囲で引張強さおよび破断点伸びに関して特に良好な機械的特性が達成される。
【0170】
ターポリマーは自体公知の方法で製造することができる。
【0171】
適切な方法は、ターポリマーのモノマー成分、たとえばスチレン、無水マレイン酸またはアクリルニトリルを適切な溶剤、たとえばメチルエチルケトン(MEK)中で溶解することである。この溶液に1もしくは場合により複数の化学的開始剤を添加する。適切な開始剤はたとえば過酸化物である。続いて該混合物を高めた温度で数時間、重合させる。
【0172】
引き続き、溶剤および未反応のモノマーを自体公知の方法で除去する。ターポリマー中での成分0.1(ビニル芳香族モノマー)および成分D.2、たとえばアクリルニトリルモノマーの間の比率は有利には80:20〜50:50である。ターポリマーと成分B)のグラフトコポリマーとの混合性を改善するために、有利にはグラフトコポリマーB中のビニルモノマーB.1の量に相応するビニル芳香族モノマーF.1の量を選択する。
【0173】
本発明により使用することができる相容化剤Fのための例はEP−A785234およびEP−A202214に記載されている。本発明によれば特にEP−A785234に記載されているポリマーが有利である。
【0174】
相容化剤は成分D中で単独で、または任意の混合物として相互に含有されていてもよい。
【0175】
相容化剤として特に有利なもう1つの物質は、無水マレイン酸1モル%を含有する、質量比2.1:1でのスチレンおよびアクリルニトリルのターポリマーである。
【0176】
本発明によるポリマー組成物中での成分F)の量は有利には0.5〜30質量部、特に1〜20質量部、および特に有利には2〜10質量部である。最も有利には3〜7質量部の量である。
【0177】
さらに、本発明による組成物は成分G)として1もしくは複数の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーを含有していてもよい。
【0178】
成分G)のための適切なビニル(コ)ポリマーは、ビニル芳香族化合物、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸ならびに不飽和カルボン酸の誘導体(たとえば無水物およびイミド)の群からの少なくとも1種のモノマーのポリマーである。特に適切であるのは、
G.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換されたビニル芳香族化合物(たとえばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはメタクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル(たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート)50〜99質量部、有利には60〜80質量部および
G.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、たとえばアクリルニトリルおよびメタクリルニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸−(C11〜C)−アルキルエステル(たとえばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチル−アクリレート)および/または不飽和カルボン酸のイミド(たとえばN−フェニルマレイミド)1〜50、有利には20〜40質量部
からなる(コ)ポリマーである。
【0179】
(コ)ポリマーG)は樹脂状、熱可塑性およびゴム不含である。G1スチレンおよびG.2アクリルニトリルからなるコポリマーは特に有利である。
【0180】
(コ)ポリマーGは公知であり、かつラジカル重合により、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊状重合により製造することができる。(コ)ポリマーは有利には15000〜200000の平均分子量Mw(質量平均、光散乱または沈降により測定)を有する。
【0181】
ビニル(コ)ポリマーは成分E中で単独で、もしくは相互の任意の混合物として含有されていてもよい。
【0182】
成分Eはポリマー組成物中で有利には0〜30質量部、特に0〜25質量部および特に有利には0〜20質量部、とりわけ0.5〜10質量部の量で含有されている。
【0183】
成分A)、B)、C)、D)、E)、F)およびG)以外に、本発明による組成物はさらにたとえば防炎加工剤のような添加剤を含有していてもよい。付加的にポリアミド成形材料はさらに防火剤、たとえばリン化合物、有機ハロゲン化合物、窒素化合物および/または水酸化マグネシウム、安定剤、顔料、加工助剤、たとえば滑剤、核形成剤、ゴム弾性ポリマー(しばしば耐衝撃性変性剤、エラストマーまたはゴムとよばれる)、たとえばゴムまたはポリオレフィンなどを含有していてもよい。
【0184】
防炎加工剤として市販の有機化合物または相乗剤を含有するハロゲン化合物、または市販の有機窒素化合物または有機/無機リン化合物または赤燐が適切である。防炎性のための添加剤、たとえば水酸化マグネシウムまたはCa−Mg−炭酸塩水和物(たとえばDE−A4236122)もまた使用することができる。ハロゲン含有の、特に臭素化および塩素化された化合物としてたとえば次のものが挙げられる:エチレン−1,2−ビステトラブロモフタルイミド、エポキシ化テトラブロモビスフェノールA樹脂、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ペンタブロモポリアクリレート、臭素化されたポリスチレン。有機リン化合物としてWO−A98/17720に記載されているリン化合物、たとえばトリフェニルホスフェート(TPP)、オリゴマーを含むレゾルシノール−ビス−(ジフェニルホスフェート)(RDP)ならびにオリゴマーを含むビスフェノールAジフェニルホスフェート(BDP)、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェートおよびこれらの混合物が適切である。窒素化合物として特にメラミンおよびメラミンシアヌレートが考えられる。相乗剤としてたとえばアンチモン化合物、特に三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモン、亜鉛化合物、スズ化合物、たとえばスズ酸塩およびホウ酸塩または酸化鉄が適切である。炭素形成剤およびテトラフルオロエチレンポリマーを添加することができる。
【0185】
さらに水酸化マグネシウムはポリアミドのための防炎加工剤として有利であることが以前から証明されている。
【0186】
本発明による成形材料は通常の添加剤、たとえば熱分解に対する薬剤、熱架橋に対する薬剤、紫外光による損傷に対する薬剤、可塑剤、滑剤および離型剤、核形成剤、帯電防止剤、場合によりその他の安定剤を含有していてもよい。
【0187】
本発明による成形材料は、そのつどの成分を公知の方法で混合し、かつ200℃〜380℃の温度で、多くの場合、250℃〜350℃の温度で通常の装置、たとえば密閉式ニーダー、押出機、二軸スクリュー押出機中で溶融して配合するか、または溶融押出することによって製造される。溶融配合もしくは溶融押出工程では、その他の添加剤、たとえば強化材、安定剤、滑剤および離型剤、核形成剤およびその他の添加剤を添加することができる。
【0188】
酸化遅延剤および熱安定化剤のための例として、熱可塑性成形材料の質量に対して1質量%までの濃度での、立体障害フェノールおよび/またはホスファイト、ヒドロキノン、芳香族第二アミン、たとえばジフェニルアミン、これらの群の種々の置換された代表化合物およびこれらの混合物が挙げられる。
【0189】
成形材料として一般に2質量%までの量で使用されるUV安定剤として、種々の置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンが挙げられる。
【0190】
無機顔料、たとえば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄およびカーボンブラック、さらに有機顔料、たとえばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンならびに着色剤、たとえばニグロシンおよびアントラキノンを着色剤として、ならびにその他の着色剤を添加することができ、その際、有利には成形材料の機械的特性を著しく損なうことのない着色剤を使用すべきである。
【0191】
核形成剤としてたとえばナトリウムフェニルホスフィネート、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素ならびに有利にはタルクを使用することができる。
【0192】
通常、1質量%までの量で使用される滑剤および離型剤は有利には、エステルワックス、ペンタエリトリットステアレート(PETS)、長鎖の脂肪酸(たとえばステアリン酸またはベヘン酸)、その塩(たとえばCaもしくはZnのステアリン酸塩)ならびにアミド誘導体(たとえばエチレン−ビス−ステアリルアミド)またはモンタンロウならびに低分子のポリエチレン−もしくはポリプロピレンワックスが有利である。
【0193】
可塑剤のための例としてフタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0194】
特に有利であるのはゴム弾性ポリマー(しばしば耐衝撃性改善剤、エラストマーまたはゴムともよばれる)の付加的な使用である。
【0195】
本発明の対象はさらに、組成物の製造方法、成形体、成形材料、半製品および成形部材を製造するための本発明による組成物の使用ならびにここから製造される成形体、成形材料、半製品および成形部材である。
【0196】
本発明による組成物の製造は自体公知の方法により、成分の混合によって行うことができる。個々の成分を前混合することが有利な場合がある。有利には成分A〜Eならびにその他の成分の混合は220〜330℃の温度で、成分を一緒に混練、押出またはロール練りすることにより行う。
【0197】
本発明による成形材料および成形体は1015〜10オームの範囲、有利には1014〜10オームの範囲、特に有利には1012〜10オームの範囲の表面抵抗を有する。
【0198】
本発明による組成物はあらゆる種類の半製品または成形部材を製造するための通常の方法により加工することができる。加工法のための例として、押出成形法および射出成形法が挙げられる。半製品のための例としてフィルムおよびプレートが挙げられる。
【0199】
成形部材は小部材または大きな部材であってもよく、かつ外部および内部の適用のために使用することができる。車両の構造、特に自動車分野のための大きな成形部材が有利である。特に本発明による成形材料から、静電塗装のために好適な車体の外部部材、たとえばフェンダー、リアスポイラー、エンジンボンネット、バンパー、積載面、積載面のためのカバー、自動車の屋根またはその他の車体部材を製造することができる。
【0200】
小さい部材の成形部材は有利にはエーロゾル、粉末もしくは顆粒のための供給装置のため、チップ担体のため、電気、包装もしくは医薬技術のための電子部品のための担体または包装のために適切である。
【0201】
押出成形によりたとえばフィルムへと加工される組成物は有利には包装工業中で、または裏面スプレー(back-spraying)のために使用される。
【0202】
実施例
成分A1:
約0.93cm/g(フェノール:1,2−ジクロロベンゼン=1:1中、25℃で測定)の固有粘度を有する線状ポリブチレンテレフタレート(Pocan B 1300、Bayer AG社(Leverkusen、ドイツ))の市販品。
【0203】
成分C1:
Hyperion Catalysis International社(Cambridge、MA 02138、USA)のカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブ。カーボンナノチューブはPBT(Pocan B 1300,Bayer AG(Leverkusen、ドイツ)社の市販品)中、カーボンナノファイバー15%の質量割合を有するマスターバッチとした。該マスターバッチは二軸スクリュー押出機を用いた配合により製造した。実施例の表では、全組成物に対するカーボンナノファイバーの実際の含有率を記載した。
【0204】
成分D1:
Cabot社(Suresnes-Cedex、フランス)のVulcan 72タイプの導電性カーボンブラック。導電性カーボンブラックはPBT(Pocan B 1300,Bayer AG(Leverkusen、ドイツ)社の市販品)中、導電性カーボンブラック25%の質量割合を有するマスターバッチとした。該マスターバッチは二軸スクリュー押出機を用いた配合により製造した。実施例の表では、全組成物に対する導電性カーボンブラックの実際の含有率を記載した。
【0205】
成分E1:
10μmの直径を有するシランを含有する化合物によりサイジングしたガラス繊維(CS 7967、Bayer Antwerpen N.V.社(アントワープ、ベルギー)の市販品)。
【0206】
添加剤として通常の安定剤、たとえば市販のホスファイト−および/またはホスファイトエステル安定剤および/またはホスホネート−および/またはホスホネートエステル安定剤、核形成剤および離型剤を使用した。
【0207】
配合はZSK32タイプの二軸スクリュー押出機(Werner und Pfleiderer)により260〜312℃の物質温度で行った。
【0208】
試験体をArburg 320-210-500のタイプの射出成形装置により250〜280℃の物質温度および70〜90℃の工具温度で射出した。
【0209】
本発明による成形材料の試験を次の方法により行った:
ビカーB:DIN ISO 306/B120による、シリコーン油中での熱変形安定性もしくは加熱変形温度、
アイゾット衝撃強さ:ISO 180方法1Uによる強度、
MVR:DIN/ISO 1133による、260℃および2.16kgでの流動性、
曲げ弾性率、曲げ強さおよび曲げ強さにおける周辺繊維伸び率:ISO178により測定、
表面抵抗:直径80mmおよび厚さ2mmを有する円板を用いたDIN IEC 60093(12.93)による。
【0210】
本発明による熱可塑性成形材料の組成および特性は第1〜2表から明らかになる。
【0211】
第1表からの例は、強化されていない熱可塑性樹脂に関して、カーボンナノファイバー(比較例2)ではたしかに良好な導電性を実現することができるが、しかし流動性は認容できないほど劣っていることを示す。導電性カーボンブラック単独(比較例3)では、同一の炭素含有率でたしかに認容可能な流動性が実現されるが、しかし表面抵抗は認容することができないほど高く、かつ添加剤が添加されていない熱可塑性樹脂(比較例1)にほぼ相応する。しかし導電性カーボンブラックおよびカーボンナノファイバーの組合せは、同一の炭素含有率では認容できるほど低い表面抵抗を、および同時に認容できるほど高い流動性を実現することができる(例1)。同時に導電性カーボンブラックとカーボンナノファイバーとの組合せからなる例1の場合の衝撃強さは、カーボンナノファイバーのみが使用される比較例2の場合よりも高い。例1は溶剤を含有する塗料系による静電塗装のために著しく好適であった。
【0212】
第2表からの例は、強化した熱可塑性樹脂に関して、カーボンナノファイバー(比較例5)ではたしかに良好な導電性を実現することができるが、しかし流動性は認容することができないほど劣っていることを示す。導電性カーボンブラック単独(比較例6)では同一の炭素含有率でたしかに認容することができる流動性を実現するが、しかし表面抵抗は認容することができないほど高く、かつ添加剤が添加されていない熱可塑性樹脂(比較例4)にほぼ相応する。しかし導電性カーボンブラックとカーボンナノファイバーとを組み合わせることにより、同一の炭素含有率で認容することができるほど低い表面抵抗および同時に認容することができるほど高い流動性を実現することができる(例2)。例2は溶剤を含有する塗料系による静電塗装のために著しく好適であった。
【0213】
【表1】

【0214】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種の熱可塑性樹脂99.6〜10質量部、
B)少なくとも1種のゴム弾性ポリマー0〜50質量部、
C)カーボンナノファイバー0.2〜10.0質量部、
D)少なくとも1種の粒子状の炭素化合物、有利にはカーボンブラックまたはグラファイト粉末0.2〜10.0質量部、
E)少なくとも1種の充填材および/または強化材0〜50質量部
を含有する組成物。
【請求項2】
A)少なくとも1種の熱可塑性樹脂99.0〜55質量部、
B)少なくとも1種のゴム弾性ポリマー5〜25質量部、
C)カーボンナノファイバー1.5〜2.5質量部、
D)カーボンブラックまたはグラファイトのような、導電性添加剤として適切な少なくとも1種の粒子状の炭素化合物1.5〜4.0質量部、
E)少なくとも1種の充填材および/または強化材5〜30質量部
を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
成分A)として少なくとも1種のポリエステルを含有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
成分A)としてポリアルキレンテレフタレートおよびポリカーボネートからなる混合物を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
成分A)として少なくとも1種のポリアミドを含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
成分B)として少なくとも1種のゴム弾性ポリマーを含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
カーボンナノファイバー(C)が少なくとも1000の長さ対直径の比を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
成分Dが0.1μm〜1mmの範囲の粒径を有するグラファイトである、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
成分Dが0.005μm〜0.2μmの一次粒径を有する導電性のカーボンブラックである、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
さらに成分F)として相容化剤を含有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
成形部材を製造するための請求項1から10までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項の記載により製造された成形部材。
【請求項13】
請求項11記載の静電塗装可能な成形部材。
【請求項14】
少なくとも2種類の熱可塑性材料からなり、該材料の少なくとも1種類は請求項1から10までのいずれか1項の記載に相応する組成を有する、複合成形部材。
【請求項15】
請求項14記載の静電塗装可能な成形部材。
【請求項16】
請求項13記載の成形部材から製造される静電塗装された成形部材。
【請求項17】
1013〜10Ωの表面抵抗を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の組成物および成形部材。
【請求項18】
1010〜10Ωの表面抵抗を有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の組成物および成形部材。
【請求項19】
260℃/2.16kgで測定して少なくとも10cm/分の溶融体積速度(MVR)を有する、充填材または強化材Eを0〜5%含有する、請求項3記載の組成物。
【請求項20】
260℃/2.16kgで測定して少なくとも5cm/分の溶融体積速度(MVR)を有する、充填材または強化材Eを5%より多く含有する、請求項3記載の組成物。

【公表番号】特表2006−510763(P2006−510763A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561230(P2004−561230)
【出願日】平成15年12月6日(2003.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013817
【国際公開番号】WO2004/056919
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【Fターム(参考)】