カーボン・ナノチューブが浸出したコーティングを用いる太陽熱受熱器
太陽熱受熱器には、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素と、吸熱要素の外面と表面で係合してこれを少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む第1のコーティングと、が含まれる。第1のコーティングに入射する太陽放射線を受けて吸収し、そして、熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーを第1のコーティングから吸熱要素へ伝達する。太陽熱受熱器装置の多層コーティングには、CNT浸出繊維材料を含む第1のコーティングと、第1のコーティング上に配設された環境コーティングと、が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、概略的には、電磁放射線を受け、吸収し、封じ込め、熱エネルギーに変換する太陽熱受熱装置に関する。
【0002】
(関連出願の記載)
本願は、2009年4月7日出願の米国仮特許出願第61/167,386号に基づいて合衆国法典第35巻(35 U.S.C.)第119条(e)により優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
太陽熱集熱器(solar thermal collector)は、様々な産業プロセス、発電及び温水利用に太陽放射線(solar radiation)からのエネルギーを用いるために開発されている。地球表面上に入射する太陽放射線は、出力密度が約1kW/m2であり、波長が紫外線の約200ナノメートル(nm)から赤外線(IR)の約2500nmまでの範囲にあると推定されている。太陽熱集熱器には、通常、受熱器(thermal receiver)上に太陽放射線を集める反射体(reflector)が含まれる。受熱器は、太陽放射線の光エネルギーを熱伝導流体の熱エネルギーに変換する。受熱器には、通常、例えば、紫外線(UV)領域や可視領域における短波の太陽放射線を良好に吸収する吸収体である吸熱体(thermal absorber)が含まれる。しかしながら、吸熱体の少なくともいくつかは、赤外線領域における長波の良好な放熱体でもあり、短波長の太陽放射線の吸収により十分に励起された場合、赤外線により熱を放射する。入射する太陽放射線は、最初に、高い割合で吸収されるが、吸熱体は、熱として高い割合で放射し、これにより、太陽エネルギーの効果的な集熱を低下させてしまう。
【0004】
太陽熱集熱器には、限定するものではないが、平板型太陽熱集熱器及び真空ガラス管ハウジングに収められる吸熱管など、いくつかの種類が開発されている。吸収体の表面は、地金、又は、太陽放射線スペクトル内(すなわち、約200nm〜2500nm)の放射線を吸収する選択的な吸収コーティング(selective absorber coating)でコーティングされた金属を含む。このような太陽光の選択的な吸収コーティング(例えば、0.92〜0.96の範囲の吸光係数と、例えば、0.07〜0.11の範囲の放射率とを有する)は、実質的に入射放射線の全てを吸収するが、通常、赤外線の波長で熱を放射する。このような太陽光の選択的な吸収コーティングの例には、高反射性の金属をベースとした極めて薄い黒色の金属酸化物コーティング(例えば、約0.5〜1ミクロンオーダー)、並びに、黒色クロム、黒色ニッケル、及びニッケルを伴う酸化アルミニウムなどガルバニック的に(galvanically)適用される選択的なコーティングが含まれる。太陽光の選択的な吸収コーティングでコーティングされた吸熱管は、通常、ガラス管又は真空ガラス管に入れられ、これにより、伝達による外気への熱損失を最小限にしている。しかしながら、これらのコーティングとともに通常用いられる真空ガラス管は、組み立て費用がかさみ、設置時に破損しやすい。多くの場合、直接的な熱放射線から真空シールを保護するために、例えば、シュラウドなどの追加部品が用いられるが、その結果、これは効率を約2%も減少させてしまう。このため、良好な吸光度特性及び低放射率特性を有する別の太陽熱受熱器が望ましい。本願発明は、このニーズを満たし、関連する利点をも提供するものである。
【発明の概要】
【0005】
ある態様において、本明細書で開示された実施形態は、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素;及び吸熱要素の外面と表面で係合し(in surface engagement with)、これを少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブが浸出した(以下、「カーボン・ナノチューブ浸出」又は「CNT浸出」という)繊維材料を含む第1のコーティングを備えた吸熱要素を含む太陽熱受熱器に関する。第1のコーティングに入射する太陽放射線を受けて吸収し、そして熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーを第1のコーティングから吸熱要素へ伝達する。
【0006】
ある態様において、本明細書で開示された実施形態は、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングと、第1のコーティング上に配設された環境コーティングと、を含む、太陽熱受熱装置用の多層コーティングに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】吸熱要素の外面上にCNT浸出コーティングを備えた例示的な太陽熱受熱器の外形図。
【図2】吸熱要素の外面上に溝を更に含む、図1に示される太陽熱受熱器の外形図。
【図3】CNT浸出コーティングの上に環境コーティング(environmental coating)を更に含む、図1に示される太陽熱受熱器の外形図。
【図4】本願発明の第4実施形態に準じて、吸熱要素の外面上に溝を更に含む、図3に示される太陽熱受熱器の外形図。
【図5】本願発明の実施形態に準じて、CNT浸出コーティングと一体化し(integrated into)、太陽熱受熱器の吸熱要素の外面に適用された低放射率セラミック環境コーティングの断面図。
【図6】本願発明の実施形態に準じて、反射防止膜を更に含む、図5の、一体化した低放射率セラミック環境コーティングの断面図。
【図7】本願発明の実施形態に準じて、CNT浸出コーティング上に適用された低放射率金属環境コーティングの断面図。
【図8】本願発明の実施形態に準じて、図7に示される一体化した低放射率金属環境コーティング上に適用された反射防止膜の断面図。
【図9】本願発明の実施形態に準じて、図5に示される一体化したコーティング上に適用されて積層された一体化低放射率サーメット(cermet)環境コーティングの断面図。
【図10】本願発明の実施形態に準じて、反射防止膜を更に含む、図9に示される積層された一体化低放射率サーメット環境コーティングの断面図。
【図11】本願発明の実施形態に準じて、太陽熱受熱器の吸熱要素の外面上に適用されて一体化した低放射率のサーメットCNT浸出環境コーティングの断面図。
【図12】本願発明の実施形態に準じて、反射防止膜を更に含む、図11に示される一体化した低放射率のサーメットCNT浸出環境コーティングの断面図。
【図13】本願発明の実施形態に準じて、アニュラス(annulus)を備えた太陽熱受熱器の断面図。
【図14】本願発明の実施形態に準じて、図2に示される第2実施形態で説明されるような溝を更に含む、図13に示される太陽熱受熱器の断面図。
【図15】本願発明の例示的な実施形態に準じて、CNT浸出炭素繊維材料を生成する処理を示す図。
【図16】CNT浸出繊維材料を含むコーティングの反射率のデータを示す図。
【図17】太陽熱受熱器のコーティングにおいて使用される繊維材料に浸出したCNTsの走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
【図18】例示的な太陽熱受熱器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明は、1つには、第1のコーティングを有する吸熱要素を組み込んだ太陽熱受熱器に対するものであり、第1のコーティングは、約200nmにおける紫外線(UV)から約2500nmにおける赤外線(IR)の広範なスペクトル域での電磁放射線を吸収する働きをする、カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維材料を含んでいる。CNT浸出繊維材料のCNTsは、熱の良導体であり、光エネルギーを取り入れて熱に変換するための導管として機能する。CNTsには、最も高い熱伝導性を有するものがあり、約6,600Wm-1K-1まで示すことがある、あらゆる材料として知られている(Berber et al. Phys. Rev. Lett. 84(20):4613-4616, (2000))。
【0009】
さらに、第1のコーティングの繊維材料自体は、予測可能な配列を備えた複数の浸出CNTsを組織化する骨格を提供して、CNTの配向性を最適化する。CNTsは、拡大縮小が可能な量で制御可能に配列された配置で繊維材料基材上に作られ、表面積の大きい太陽熱受熱器パネルが得られる。「無規律な(loose)」CNTの複合材料では実現が困難なCNT配向性の制御により、光から熱への変換が増進される。高い熱伝導性と結びついたCNT配列の制御により、熱が、吸熱要素に向かってCNTの長さに沿って効率的かつ一方向に伝導され、そして、その発熱体から、発電などの様々な用途で使用する熱伝導流体へと伝導される。
【0010】
本願発明の太陽熱受熱器は、多数の従来型太陽熱集熱器の構成に用いることができる。例えば、太陽熱受熱器は、スイミングプールの暖房装置などの低機能の暖房用途や、作物乾燥などの農業利用に用いられるものなど、比較的低温で作動する。本願発明の太陽熱受熱器は、発電(例えば、蒸気発生)で用いられる温度など、高温を使用する用途にも用いられる。本願発明の太陽熱受熱器は、平板構造に加えて、パラボラ構造でも構成される。
【0011】
本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、例えば、約0.92から約0.99の範囲の吸光係数を有する。さらに、本願発明の太陽熱受熱器の放射率は、約0.01から約0.11の範囲である。本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、UVからIRまでのスペクトル帯における殆ど全ての入射放射線を吸収できる一方、発熱体とそれ以降の熱伝達流体に伝達して、熱的な赤外線放射を抑制する。適切なナノチューブ密度により、垂直に配列された複数の単層CNTsは、ほぼ完全黒体として振る舞うことが示されている(Mizuno et al. Proc. Natl, Acad. Sci. 106:6044-6047(2009))。黒体吸収体を生成する1つの手段は、光の反射を抑制することであり、これは、物体の屈折率が空気の屈折率に近づいたときに達成される。反射率を最小化するというこの解決法は、以下のフレネルの法則から明白である。
【数1】
ここでRは反射率であり、nは物体の屈折率であり、n0は空気の屈折率である。繊維材料上におけるCNTの密度は、本明細書で後述する連続処理において調節可能である。CNTの密度を調節することにより、CNT浸出繊維材料は、空気の屈折率n0に近似する屈折率nを表すように変化する。
【0012】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料を有する本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、黒体様物体(black-body-like object)として振る舞い、黒体放射の形で高い熱放射率を示す。ある実施形態において、このエネルギー損失は、CNTsから吸熱要素へ熱エネルギーを導くことにより、低減され、あるいは防止される。そして、次に、吸熱要素は、例えば、発電に用いられる熱伝達流体を加熱する。また、システムの放射率の低減は、例えば、発熱体の周囲に真空ガラス・チャンバーを使用したり、反射防止膜などのような更なるコーティング材を使用するなど、当該技術分野において知られた方法によっても達成できる。
【0013】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料を有する本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、ほぼ全ての入射光を吸収する固有の太陽光選択材料として振る舞う一方、極めて低い放射率を有し、更なるコーティングを不要とする代わりに、熱エネルギーを吸熱要素へ伝達し、そして吸熱要素から様々な用途で使用する熱伝達流体へ効率的に伝達する。
【0014】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素が含まれる。受熱器は、吸熱要素の外面と表面で係合して、これを少なくとも部分的に覆う第1のコーティング内に、カーボン・ナノチューブ浸出(「CNT浸出」)材料を含む。CNT浸出繊維材料の第1のコーティングには、限定するものではないが、CNT浸出繊維材料と、複合材料を形成するマトリックス内のCNT浸出繊維材料と、が含まれる。第1のコーティングのCNT浸出繊維材料に入射した太陽放射線は、吸収され、封じ込められて、熱エネルギーに変換される。変換された熱エネルギーは、吸熱要素の外面上における第1のコーティングのCNT浸出繊維材料から吸熱要素の内面に伝達され、その後、内面から熱伝達流体などの物質へ伝達される。
【0015】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、表面上に複数の溝を有する吸熱要素が含まれる。1つの実施形態において、溝は、サイズ及び深さがミクロン(pm)オーダーである。溝は、吸熱要素の外周に沿うらせん状に配置され、外面上において、吸熱要素の一端から他端まで延びる単一の溝を形成する。このような溝は、例えば、CNT浸出繊維トウを収容して、CNT浸出繊維材料と吸熱要素との間の接触表面積を大きくすることができる。理論に拘束されるものではないが、このような表面積の増大により、吸熱要素の外面へ熱をより効率的に伝達させることが可能となる。同様の方法で、吸熱要素の内面上においても表面積を増大させることができ、熱伝達流体への熱伝達の効率性を高めることが可能となる。
【0016】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングを覆う、又はこれと一体化した、低放射率の環境コーティングが含まれる。第1のコーティングと一体化した場合、環境コーティングはマトリックス材として機能し、複合材料の構造体である第1のコーティングを提供する。環境コーティングにより、その外面に入射する(少なくとも紫外線から可視領域における)電磁放射線は、吸収及び熱エネルギーへの変換を行う第1のコーティングのCNT浸出繊維材料上へと伝達されることになる。環境コーティングは、外部環境に戻る、CNT浸出コーティングによる熱エネルギーの放射を効果的に低減するために、低放射率特性を有する。環境コーティングは、第1のコーティングのCNT浸出繊維材料がシステムの作動温度で熱エネルギーを放射するスペクトルに応じて、特に、赤外線スペクトルにおいて、低放射率を有してもよい。
【0017】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングにより少なくとも部分的に覆われる吸熱要素を囲むアニュラスが含まれる。1つの構成において、アニュラスは、CNT浸出コーティングから半径方向に離間している。例示的な実施形態において、アニュラスには、アニュラス及びCNT浸出コーティング間に配設されるエアポケット(air pockets)又はエアギャップが含まれる。別の実施形態において、アニュラスは真空排気されて、エアギャップが真空状態に保たれる。アニュラスは、1以上の反射防止膜及び低放射率コーティングでコーティングされ、外面及び内面の一方又は両方に適用され得る。アニュラスは、CNT浸出コーティングに対向する内面に適用される赤外線反射防止膜を更に有する。
【0018】
本明細書では、用語「繊維材料」とは、基本的な構成要素として繊維を有するいかなる材料も指す。この用語には、繊維、フィラメント、ヤーン、トウ(tow)、テープ、織物及び不織布、パイル(pile)、マット(mat)などが包含される。さらに、繊維材料の組成物には、限定するものではないが、ガラス、炭素、金属、セラミック、有機物などのあらゆる種類のものがある。
【0019】
本明細書では、用語「巻き取り可能な寸法」とは、繊維材料をスプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、繊維材料の有する少なくとも1つの寸法をいう。「巻き取り可能な寸法」の繊維材料は、本明細書に後述されるように、CNT浸出のための1回分の処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。市販の巻き取り可能な寸法の炭素繊維材料である例示的な繊維材料の1つのとしては、800テックス(1テックス=1g/1,000m)又は620ヤード/ポンドの寸法を有するAS4 12k炭素繊維のトウ(Grafil, Inc., Sacramento, CA)が挙げられる。特に、工業用の炭素繊維のトウは、例えば、5、10、20、50及び100ポンド(高重量のスプール用で、通常、3k/12Kのトウ)のスプールで入手されるが、より大きなスプールには特注を必要とする。本願発明の処理は、5〜20ポンドのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールの使用も可能である。さらに、例えば、100ポンド以上の極めて長大な巻き取り長を、取り扱いが容易な寸法、例えば、50ポンドのスプール2つに分割する前処理工程を組み込むこともできる。
【0020】
本明細書では、用語「カーボン・ナノチューブ」(単数ではCNT、複数ではCNTs)とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、二層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)などのフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のうちのすべてをいう。CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は開口端を有していてもよい。CNTsには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0021】
本明細書で、「長さが均一」という場合、反応器において成長するCNTsの長さについて言及するものである。「均一な長さ」は、約1ミクロンから約500ミクロンの間における様々なCNT長さに対して、全てのCNTの長さが±約20%以内の許容誤差となるような長さをCNTsが有していることを意味する。極めて短い長さ、例えば、1〜4ミクロンなどでは、この誤差は、全てのCNTの長さの±約20%から±約1ミクロンまでの範囲内、すなわち、CNTの全長の約20%よりも若干大きくなる。
【0022】
本明細書で、「分布が均一」とは、繊維材料におけるCNTsの密度が不変であることをいう。「均一な分布」は、CNTsで覆われる繊維の表面積の割合として定義される被覆率の誤差が±約10%となる場合の繊維材料上の密度をCNTsが備えていることを意味する。これは、直径8nmの5層CNTでは、1平方マイクロメートル当たり±1500のCNTsに相当する。この形状ではCNTsの内部空間を充填可能と仮定している。
【0023】
本明細書では、用語「浸出する」とは結合することを意味し、用語「浸出」とは結合処理を意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及び/又はファンデルワールス力の介在による物理吸着などが含まれ得る。例えば、ある実施形態において、CNTsは、繊維材料に直接結合される。結合は、例えば、CNTが、バリア・コーティング、及び/又はCNTs及び炭素繊維材料間にはさまれて配設された遷移金属ナノ粒子を介して繊維材料へ浸出するなど、間接的であってもよい。本明細書に開示されたCNT浸出繊維材料において、カーボン・ナノチューブは、前述のように、直接的又は間接的に繊維材料に「浸出する」ことが可能である。CNTが繊維材料に「浸出する」具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0024】
本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のdブロックにおけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属」には、遷移金属元素ベースの塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物など)も含まれる。
【0025】
本明細書では、用語「ナノ粒子」若しくはNP(複数ではNPs)、又はその文法的な同等物とは、NPsは球形である必要はないが、球の等価直径が約0.1から約100ナノメートルの間のサイズの粒子をいう。遷移金属NPsは、特に、繊維材料上においてCNTを成長させる触媒として機能する。
【0026】
本明細書では、用語「マトリックス材」とは、CNT浸出繊維材料をランダム配向などの特定の配向性で組織化する機能を果たすバルク材をいう。マトリックス材に対してCNT浸出繊維材料の有する物理的及び/又は化学的性質のある部分が付与されることにより、マトリックス材にとってCNT浸出炭素繊維材料の存在は有益となる。ある実施形態において、マトリックス材は、CNTsによる太陽光放射線の吸収に基づいて生成される熱を保持しておくのに有用な環境コーティングとして作用する。ある実施形態において、マトリックス材はセラミックである。ある実施形態において、マトリックス材は、赤外線を反射してCNTsに戻し、環境への熱損失を抑制する。
【0027】
本明細書では、用語「材料滞留時間」とは、巻き取り可能な寸法の繊維材料に沿った各ポイントが、本明細書で説明されるCNT浸出処理の間、CNTの成長状態にさらされる時間をいう。この定義には、複数のCNTの成長チャンバーを用いる場合の材料残留時間が含まれる。
【0028】
本明細書では、用語「ラインスピード」とは、本明細書で説明されるCNT浸出処理により、巻き取り可能な寸法の繊維材料を送り込むことができるスピードをいい、この場合、ラインスピードは、CNTの(1つの又は複数の)チャンバー長を材料残留時間で除して算出される速度である。
【0029】
ある実施形態において、本願発明は、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素を含む太陽熱受熱器;及び、吸熱要素の外面と表面で係合し、これを少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む第1のコーティングを提供し、それにより、第1のコーティングに入射する太陽光放射線を受けて吸収し、そして、熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーを第1のコーティングから前記吸熱要素へ伝達する。
【0030】
本願発明の太陽熱受熱器は、当該技術分野で知られている低・中・高温用途で運転可能である。高温の受熱器は、多くの発電用途、例えば、蒸気タービンの駆動に用いられる。高温用途は、約400℃より高い温度を利用するあらゆる用途である。低温用途には、例えば、プール暖房又は作物乾燥が含まれる。このような温度は、大気温度よりも約10〜100℃高い。約100℃〜400℃の温度を利用するあらゆる用途は、中温用途と考えられる。中温用途の例としては、例えば、パラボリック・トラフ型又は集光型の太陽光発電所が含まれる。
【0031】
太陽熱受熱装置は、第1の端部及び第2の端部を有する吸熱要素と、前記第1の端部で吸熱要素に流入し前記第2の端部で吸熱要素から流出する熱伝達流体と、を有する。吸熱要素は内面上又は外面上に溝を有し、これによって吸熱要素の外側で第1のコーティングと、又は吸熱要素の内側で熱伝達流体と接触する表面積が拡大する。発熱体の第1及び第2の端部は、熱伝達流体の受熱器までの輸送に用いられる。受熱器自体は、既存のシステムに組み入れて構成され、パラボラ型及び平板型の受熱器に包含可能である。
【0032】
吸熱要素は、通常、金属製のヒートパイプであるが、いかなる伝導材料も用いることができる。さらに、吸熱要素はパイプのような円筒状である必要はない。吸熱要素はいかなる形状であってよく、内面及び外面の表面積を向上させるために選択される。例えば、ある実施形態において、太陽熱受熱器の吸熱要素は、CNT浸出繊維材料を収容するように形成された溝を有する。CNT浸出繊維材料がCNT浸出繊維トウである場合、溝は、発熱体の外面にらせん状に配設され、溝内に巻き付けられたCNT浸出繊維トウと溝とが、溝の穴で接触する。ある実施形態において、CNT浸出繊維トウが使用される場合、トウは発熱体上に広げられてもよい。
【0033】
ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器が有するCNT浸出繊維材料には、炭素、金属、ガラス、セラミックなどから選択された材料を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維トウが含まれる。
【0034】
ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器は、前記第1のコーティング内で一体化して複合材料を形成する環境コーティングを更に含む。環境コーティングを形成するこのような材料は、限定するものではないが、セラミックマトリックスを含む。ある実施形態において、マトリックス材で形成される複合材料は、金属粒子を更に含む。金属粒子は、伝導経路を更に増加させて、CNT浸出材料により集熱された熱を分散するために用いられる。それらは、例えば、隣接するCNTs間で熱を伝達する導管として機能する一方、赤外線の反射体として機能する。
【0035】
ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器は、第1のコーティング上に配設される環境コーティングを更に含み、この環境コーティングには低放射率のコーティングが含まれる。このような実施形態において、環境コーティングには、CNT浸出繊維材料内で一体化したマトリックス型の環境コーティングも含まれる。ある実施形態において、環境コーティングには、例えば、銅などの金属が含まれる。
【0036】
本願発明の太陽熱受熱器は極めて低い放射率を示す。いかなる環境コーティングも、この目的に資する。加えて、ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器には、反射防止材料を含む環境コーティングが更に含まれる。これは、CNTs又は吸熱要素から放射された赤外線加熱を反射してCNTs及び発熱体に戻すために用いられ、環境への熱損失を抑制する。
【0037】
また更なる実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器には、第1のコーティング及び吸熱要素を、取り囲んでエアギャップを形成するアニュラスが含まれる。このギャップは空気を含むことができるか、あるいは、殆ど真空になることも可能である。
【0038】
本願発明の太陽熱受熱器は、発電システムと一体化して構成される。この点において、受熱器の全体設計は、当該技術分野で知られているものと表面的に同じにすることが可能である。
【0039】
ある実施形態において、本願発明は、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングを含む太陽熱受熱器のための多層コーティングと、第1のコーティング上に配設される環境コーティングと、を提供する。第1のコーティングには、セラミックスマトリックスが更に含まれ、また、第1のコーティングには、前述及び後述のように、金属粒子が更に含まれる。
【0040】
本願発明の多層コーティングには、前述及び後述のように、金属膜、反射防止膜、及び/又は低放射率のコーティングを含む環境コーティングが含まれる。
【0041】
当然のことではあるが、本願発明の図面及び説明は簡略化されて、本願発明の理解を明瞭にするために相応しい構成要素を図示する一方で、明確化のために、典型的な太陽熱受熱器及び集熱器に見られる他の多くの構成要素を除外している。しかし、このような構成要素は当該技術分野で周知であり、また、それらは、本願発明のさらなる理解を促すものではないので、このような構成要素についての検討は本明細書では行わない。本明細書における開示は、当業者に知られたこのような全ての変形及び変更に対してなされる。
【0042】
図1を参照すると、本願発明の第1実施形態に係る太陽熱受熱器100の外形図が図示されている。太陽熱受熱器100には、吸熱要素110、及び吸熱要素110の外面115の少なくとも一部に適用されるCNT浸出コーティング120が含まれる。
【0043】
1つの構成において、吸熱要素110は、熱伝達物質(例えば、熱伝達流体)をその内部に受け入れるのに適した中空の要素である。限定されないほんの一例として、熱伝達流体には、水、不凍液(例えば、水とグリコール)、空気、様々なガス、オイル、及び他の高温(高熱容量)流体が含まれる。例示的な実施形態において、吸熱要素110は、第1の端部112及び第2の端部114を有する金属製又は合金製吸熱管である。吸熱要素110は、外面115及びその反対側に内面117を有している。限定されないほんの一例として、吸熱要素110は、ステンレス鋼製、炭素鋼製、又はアルミニウム製である。当業者であれば、他の金属及び合金を用いることができる、ということを認識するであろう。内面117は、吸熱要素110内に存在し内面117と通常表面で係合する熱伝達物質を加熱するが、吸熱要素110の厚さ、及び吸熱要素110の材料特性は、外面115からその内面117へ熱を効率的に伝達するために選択される。例示的な構成において、吸熱管は、長さが約3メートル(m)、直径が約70ミリメートル(mm)、そして壁厚が約2mmである。本明細書で言及される吸熱要素110は管又は管状構造の形態をとるが、当然のことながら、吸熱要素110は、様々な幾何学的形態(ほんの一例として、円筒形、円錐形、多角形又は他の形状及び構成など)で構成されてもよい。
【0044】
1つの構成において、吸熱要素110は、例えば、熱伝達流体などの熱伝達物質が、第1の温度で第1の端部112に流入し、第1の温度よりも高い第2の温度で第2の端部114から流出する開放系(open system)である。別の構成では、吸熱要素110は、例えば、ヒートパイプなどの閉鎖系(closed system)であり、この場合、熱伝達流体は吸熱要素110内に保持される。図示された実施形態において、吸熱要素110は概して均一な外面115を有する。
【0045】
さらに図1を参照すると、CNT浸出コーティング120は、吸熱要素110の外面115に配設されている。このため、CNT浸出コーティング120は吸熱要素110の外面115を少なくとも部分的に覆っている。CNT浸出コーティング120は、吸熱要素110の外面115上に、張力を受けて巻き付けられ、それらの間のギャップを最小限にしつつ、吸熱要素110の外面115との効果的な表面係合又は接触を確立及び維持する。CNT浸出コーティング120は、入射する電磁放射線(通常、太陽放射線の形態)を受けて、熱又は熱エネルギーに変換する。変換された熱又は熱エネルギーは、吸熱要素110の外面115に伝達される。例示的な実施形態において、吸熱要素110の外面115は、CNT浸出コーティング120により殆ど完全に覆われる。別に実施形態において、外面115のうち予め設定された1以上の領域は、CNT浸出コーティング120で覆われずに残される。
【0046】
1つの構成において、CNT浸出コーティング120は、カーボン・ナノチューブを浸出させたガラスロープ又はガラス繊維の形態をとる。CNT浸出コーティングの他の実施例には、例えば、カーボン・ナノチューブを浸出させた炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボン・ナノファイバー(carbon nanofibers)、グラフェンなどのカーボン・ナノチューブ浸出繊維及び織物が含まれる。例示的な実施形態において、CNT浸出コーティング120は、厚さが約15ミクロン(pm)〜約1000pmの範囲である。CNT浸出コーティング120には、カーボン・ナノチューブ又は金属ナノ粒子でドープ(dope)した、耐熱サーメット、耐熱樹脂又は耐熱エポキシのマトリックスが任意に含まれ、これにより、CNT浸出コーティング120に構造的完全性がもたらされる。
【0047】
例示的な実施形態において、CNT浸出コーティング120は、カーボン・ナノチューブのその場成長技術を用いて、ガラス繊維状に製造される。例えば、ガラス繊維は、約5000〜750℃の所与の温度に維持された成長チャンバーを介して与えられる。炭素を含有する供給ガスは、その後、成長チャンバーに導入され、ここで、炭素ラジカルが解離し、触媒ナノ粒子の存在下で、ガラス繊維上におけるカーボン・ナノチューブの形成を開始する。このような技術の1つが、発明の名称を「ガス予熱法を用いた低温CNT成長(Low Temperature CNT Growth Using A Gas-Pre-heat Method)」という、2009年2月27日出願の米国仮出願第61/155,935号に説明されており、その出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。複合材料のカバー層、繊維(thread)若しくはロープの形態でカーボン・ナノチューブ浸出繊維が生成される他のこのような方法も使用されて、CNT浸出コーティング120が得られる。
【0048】
当該技術分野において知られているように、カーボン・ナノチューブをベースとした構造体の電磁放射線の吸光係数は、1つには、カーボン・ナノチューブの長さに加えて、その構造体のナノチューブ体積充填率に依存する。ナノチューブ体積充填率は、ナノチューブにより占められる構造体の全体積における割合を表す。例示的な実施形態において、CNT浸出コーティング120のナノチューブ体積充填率は、約0.5%〜約25%の範囲である。CNT浸出コーティング120におけるカーボン・ナノチューブ間の平均的間隔は、約2ナノメートル(nm)から約200nmに及ぶ。CNT浸出コーティング120のナノチューブ体積充填率は、そこでのカーボン・ナノチューブの選択的な配置により調整され、CNT浸出コーティング120により効果的に吸収される電磁放射線の範囲を制御する。CNT浸出コーティング120におけるナノチューブ間のギャップは、1以上の所与の波長を有する放射線を選択的に捕捉及び吸収するために用いられる。
【0049】
CNT浸出コーティングにおけるカーボン・ナノチューブが長くなるにつれて、(少なくとも可視光のスペクトルにおいて)電磁放射線の吸光係数も高くなる。CNT浸出コーティング120には、約10ミクロン〜約数百ミクロンの範囲の長さを有するカーボン・ナノチューブがある。
【0050】
当該技術分野において知られているように、カーボン・ナノチューブの熱伝導性は、その構造配置に依存している。特に、カーボン・ナノチューブは、長手軸に対して垂直な方向の熱伝導性と比較すると、長手軸の方向において、より高い熱伝導性を有する。このため、1つの構成において、CNT浸出コーティング120には、外面115に対してほぼ垂直に配列されたカーボン・ナノチューブ、外面115に対してほぼ平行に配列されたカーボン・ナノチューブ、及び、外面115に対して平行でも垂直でもなく配列されたカーボン・ナノチューブが含まれる。外面115にほぼ垂直なそれらのカーボン・ナノチューブは、外面115に入射する放射線から変換された熱を効果的に伝導する。外面115に対してほぼ垂直ではないそれらのカーボン・ナノチューブは、外面115に対して直接的には有効熱(sufficient heat)を一切伝導しない。しかし、外面115にほぼ垂直でないそれらのカーボン・ナノチューブは、CNT浸出コーティング120内におけるほぼ垂直なカーボン・ナノチューブへの熱経路を形成し、これにより、CNT浸出コーティング120から外面115へ伝達する全熱量を増加させる。このため、CNT浸出コーティング120におけるカーボン・ナノチューブの配列は調整されて、吸熱要素110へのCNT浸出コーティング120の熱伝導性は最大化される。
【0051】
図2を参照すると、本願発明の別の実施形態による太陽熱受熱器200が図示されている。太陽熱受熱器200は、太陽熱受熱器100にほぼ類似するが、受熱器200は、外面115に形成された溝215を有する吸熱要素110を備えている。1つの構成において、溝215は、吸熱要素110の長さに沿って延びるらせん状の形態をとる。当業者であれば、らせん溝の機械加工は単純であり周知の製造処理であるということを認識するであろう。例示的な実施形態において、溝215は、約50pm〜約5000pmの範囲のサイズである。溝215により、CNT浸出コーティング120にさらされる吸熱要素110の外面115の表面積は効果的に増加する。そして、増加した表面積により、CNT浸出コーティング120から吸熱要素110の外面115への熱伝達の効率性が増大する。例示的な実施形態において、溝215は、CNT浸出繊維トウ120のCNT浸出コーティングと組み合わせたとき、特に効果的となる。溝215は、溝215の内面とCNT浸出コーティング120の1以上の個々の繊維の外面との間で接触面積を最大化するように形成される。例示的な実施形態において、溝215は、CNT浸出コーティング120のCNT浸出繊維とほぼ同じようなサイズ及び深さを有するように形成され、これにより、CNT浸出コーティング120のCNT浸出繊維を溝215内にぴったり合った状態で収容・固着(seat)させ、溝215とCNT浸出コーティング120との間の表面接触を最大にする。他の実施形態において、溝215は、CNT浸出コーティング120の複数のCNT浸出繊維を収容する。
【0052】
1つの構成において、溝215は、外面115上でらせん状に定められ、吸熱要素110の全長に沿って連続的に延びる単一の溝の形態をとる。別の実施形態において、溝215には、吸熱要素110の外面115上に定められる不連続の、又は分割された一連の溝が含まれる。このような溝215は、相互に長手方向に並べられて、吸熱要素110の周囲に巻き付けられた1以上のCNT浸出繊維の少なくとも一部を収容するように形成される。
【0053】
図3を参照すると、本願発明の別の実施形態による太陽熱受熱器300が図示されている。太陽熱受熱器300は、太陽熱受熱器100(図1)にほぼ類似する。1つの実施形態において、環境コーティング310は、CNT浸出コーティング120の上面に適用されて、CNT浸出コーティング120を保護するとともに、CNT浸出コーティング120及び環境コーティング310の組み合わせが有する反射及び放射特性を改善する。環境コーティング310のいくつかの実施形態は、図5〜12で模式的に図示されるとともに、本明細書に説明される。
【0054】
ここで図4を参照すると、本願発明の別の実施形態による太陽熱受熱器400が図示されている。太陽熱受熱器400は、太陽熱受熱器200(図2)にほぼ類似するが、太陽熱受熱器300(図3)に関して説明されたように、環境コーティング310を更に含んでいる。
【0055】
ここで図5を参照すると、1つの構成の太陽熱受熱器500において、環境からCNT浸出コーティング120を保護し、CNT浸出コーティング120からの熱エネルギーの放射を低減するために、CNT浸出コーティング120と一体化したセラミック環境コーティング510が示されている。環境コーティング510は、少なくとも太陽放射線を透過して、これにより、入射放射線はCNT浸出コーティング120に到達可能となる。さらに、環境コーティング510は、CNT浸出コーティング120により放射される赤外線放射などの熱放射を反射し、これにより、熱放射を反射してこれを再吸収のためにCNT浸出コーティング120へ戻す。このように、環境コーティング510は、低放射特性を有する。例示的な実施形態において、環境コーティング510には、液体として適用され、高温の硬化サイクルを介してガラスに変換されるセラミック(誘電体)ベースの材料が含まれる。別の実施形態において、環境コーティング510は、化学的蒸着処理又はプラズマ・スパッタリングを介して適用される。このようなコーティングの適用処理は当該技術分野において知られているので、更なる詳細については簡潔を期するために説明しない。1つの構成において、環境コーティング510はCNT浸出コーティング120及び吸熱要素110が高温(400℃〜500℃まで到達する)に耐えるように構成されている。別の構成において、環境コーティング510は疎水性となるように構成され、環境湿度からCNT浸出コーティング120を保護する。例示的な実施形態において、環境コーティング510は、約50nm〜約500nmの範囲の厚さを有する。環境コーティング510を形成するために用いられる材料の例には、アルミナ、二酸化ケイ素、二酸化セシウム、硫化亜鉛、窒化アルミニウム、及び酸化ジルコニウムが含まれる。
【0056】
ここで図6を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器600において、一体化したセラミック環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120は、更に反射防止膜615でコーティングされる。一体化した環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120による反射に起因した入射放射線量の損失は、その上に反射防止膜615を配置することにより低減される。このため、反射防止膜615は、下層で一体化した環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120の反射損失を効果的に低減し、CNT浸出コーティング120により吸収される入射放射線量を増大させる。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体、及びシリカベースのコーティングが含まれる。このような反射防止膜の使用は、当該技術分野において知られているので、更なる詳細については説明しない。
【0057】
図7を参照すると、1つの構成の太陽入熱器700において、金属環境コーティング710がCNT浸出コーティング120の上に適用される。例示的な実施形態において、環境コーティング710は、少なくとも太陽放射線を透過する金属薄膜であり、これにより、入射放射線がCNT浸出コーティング120に到達できるようにする。さらに、再吸収のため、赤外線放射などの熱放射を、CNT浸出コーティング120から再びCNT浸出コーティング120へと反射させて戻すことにより、環境コーティング710は、低放射特性を有することになる。例示的な実施形態において、環境コーティング710は、化学的蒸着処理を介して、又はプラズマ・スパッタリング若しくはスプレーを介して適用される金属薄膜材料を含む。1つの構成において、環境コーティング710は、CNT浸出コーティング120及び吸熱要素110が高温(400℃〜500℃に到達する)に耐えるように構成される。別の構成において、環境コーティング710は、疎水性となるように構成される。例示的な実施形態において、環境コーティング710は、約1nm〜約250nmの範囲の厚さを有する。環境コーティング510を形成するために用いられる材料の例には、限定されるものではないが、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、タングステン(W)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co3O4)、二酸化モリブデン(MoO2)、酸化タングステン(WO)、酸化チタン(TiO)、窒化チタン(TiN)、鉄(Fe)、及び酸化鉄(Fe2O3)が含まれる。
【0058】
ここで図8を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器800において、金属環境コーティング710(図7)は、反射防止膜615で更にコーティングされている。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0059】
図9を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器900において、一体化したセラミック環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120(図5)は、金属コーティング710(図7)で更にコーティングされ、これにより、吸熱要素110上に積層したサーメット・コーティングを形成する。積層したサーメット・コーティングには、一体化したセラミック・コーティング510及びCNT浸出コーティング120を覆う金属コーティング710が含まれる。セラミック層510と金属層710の組み合わせにより、CNT浸出コーティング120にもたらされる耐環境性が効果的に増大し、また、再吸収のために熱放射を反射してCNT浸出コーティング120に戻すことで、下層のCNT浸出コーティング120からの熱放射損失が効果的に低減する。積層したサーメット層は、下層で一体化したセラミック・コーティング510及びCNT浸出コーティング120に対して、更なる構造的完全性をもたらす。
【0060】
ここで図10を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器1000において、図9の一体化したサーメット・コーティングは、反射防止膜615で更にコーティングされる。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0061】
ここで図11を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器1100において、一体化したセラミック環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120(図5)は、金属粒子1110でドープされている。1つの構成において、粒子1110は、コーティング710を特徴付ける金属を含み、コロイド分散、又は選択的なプラズマ・スパッタリング若しくはスプレーを介して適用される。粒径は数ミクロンから数ナノメートルの間である。したがって、このような構成により、金属粒子1110でドープされた、CNT浸出コーティング120及びセラミック製コーティング510の一体化した層が提供される。
【0062】
図12を参照すると、別の構成1200において、図11のコーティングの一体化した層は、反射防止膜615で更にコーティングされている。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0063】
ここで図13を参照すると、本願発明のまた別の実施形態による太陽熱受熱器1300が図示されている。太陽熱受熱器1300は、太陽熱受熱器300(図3)にほぼ類似している。太陽熱受熱器1300には、CNT浸出コーティング120でコーティングされた吸熱要素110を囲むアニュラス1310が更に含まれる。例示的な実施形態において、アニュラス1310は、ガラス製アニュラスの形態をとる。他の実施形態において、アニュラス1310は、入射電磁放射線(例えば、太陽放射線)を透過する他の材料(例えば、石英又は他のドープガラス(doped glass)材料)から作られてもよい。1つの構成において、アニュラス1310は、その外面、内面又はその両面が反射防止膜でコーティングされて、アニュラス1310を通って透過する入射放射線量を最大にする。例示的な実施形態において、反射防止膜には、対照的な屈折率が交互に現れる層を有する多重薄膜構造体が含まれる。層の厚さは、界面から反射されるビーム(光線)に相殺的干渉をもたらし、付随する透過ビームに建設的干渉をもたらすように選択される。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0064】
別の構成において、アニュラス1310は、外面、内面又はその両面が低放射率のコーティングで更に、又は代わりにコーティングされて、アニュラス1310からの放射による放射熱損失(radiation heat loss)を低減してもよい。例示的な実施形態において、低放射率のコーティングは、アニュラス1310に被着した薄膜金属又は金属酸化物層である。このような低放射率コーティングの限定されない例には、500から50nmの厚さを備えた、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)が含まれる。また別の構成において、アニュラス1310は、内面、外面又はその両面が赤外線反射コーティングで更に、又は代わりにコーティングされてもよい。当該技術分野において知られているように、CNT浸出コーティング120で覆われた吸熱要素110からの赤外線放射により熱が失われる。赤外線反射コーティングでコーティングされたアニュラス1310は、CNT浸出コーティング120により放射されたこのような赤外線を反射して吸熱要素110に戻すが、ここでCNT浸出コーティング120は、このように反射したIR放射を再吸収する。したがって、赤外線放射による実質熱損失(effective heat loss)は、放射された放射線の再吸収により効果的に低減される。このような赤外線反射コーティングの例には、スズ酸カドミウム膜がある。
【0065】
例示的な実施形態において、太陽熱受熱器1300には、アニュラス1310と、CNT浸出コーティング1310で少なくとも部分的に覆われた吸熱要素110と、の間のエアギャップ又はエアポケットが含まれる。別の実施形態において、アニュラス1310は真空排気されて、CNT浸出コーティング120とアニュラス1310の間に存在する空気の対流による熱損失を低減する。さらにまた別の例示的な実施形態において、太陽熱受熱器1300には、更に、図5〜12に関連して説明される低放射率の環境コーティングが1以上含まれる。
【0066】
ここで図14を参照すると、本願発明の実施形態による太陽熱受熱器1400が図示されている。太陽熱受熱器1400は、太陽熱受熱器400にほぼ類似している。太陽熱受熱器400には、CNT浸出コーティング120で少なくとも部分的に覆われた吸熱要素110を囲むアニュラス1310が更に含まれる。アニュラス1310は、図13の実施形態に関して本明細書で説明されたように、外面、内面又はその両面が、反射防止膜、低放射率コーティング、赤外線反射コーティングのうちの1以上でコーティングされてもよい。さらにまた別の例示的な実施形態において、太陽熱受熱器1400には、更に、図5〜12に関連して説明された低放射率の環境コーティングが1以上含まれる。
【0067】
下記にCNT浸出繊維材料を生成するための処理を例示する。この処理は、炭素繊維材料で例示されるが、当業者であれば、操作パラメータが他の材質(ガラス、セラミック、及び金属繊維材料など)に関しても同様であることを認識するであろう。
【0068】
ある実施形態において、本願発明はCNT浸出の連続処理を提供するが、この処理には、(a)巻き取り可能な寸法の繊維材料の表面にカーボン・ナノチューブを形成する触媒(以下、「CNT形成触媒」という)を配置すること、及び(b)繊維材料上にカーボン・ナノチューブを直接合成して、これにより、カーボン・ナノチューブが浸出した繊維材料を形成すること、が含まれる。長さ9フィートのシステムのために、処理のラインスピードは毎分約1.5フィートから毎分約108フィートの範囲となる。本明細書に記載された処理により達成されるラインスピードは、商業的に適量のCNT浸出繊維材料を短い製造時間で形成可能にする。例えば、毎分36フィートのラインスピードでは、独立した5つのトウ(1トウ当たり20ポンド)を同時に処理するように設計されたシステムにおいて、CNT浸出繊維(繊維上に5重量%超のCNTsが浸出する)の量は、1日の製造量で100ポンド以上に及ぶ。このシステムは、成長ゾーンを繰り返すことにより、一度に、又はより高速に大量のトウを製造するように構成されている。また、CNTsの製造工程の中には、当該技術分野で知られているように、連続運転モードを阻む極低速なものがある。例えば、当該技術分野で知られている標準的な処理において、CNT形成触媒還元工程を実施するのに1〜12時間かかる。また、CNT成長自体も時間を浪費しており、例えば、CNT成長に数十分を必要とするため、本願発明において実現される高速のラインスピードを不可能にしている。本明細書に記載された処理は、このような速度を制限する工程を取り除く。
【0069】
本願発明のCNT浸出繊維材料の形成処理は、前もって形成されたカーボン・ナノチューブの懸濁液を繊維材料に適用しようとする場合に生じるCNTの束化(bundling)を回避できる。すなわち、前もって形成されたCNTsは炭素繊維材料に結合しないため、CNTsは束になって絡み(entangle)やすくなる。その結果、炭素繊維材料に弱く付着するCNTsの均一な分布が不十分となる。しかし、本願発明の処理は、必要である場合には、成長密度を低減することにより、繊維材料の表面で高均一に絡み合ったCNTマットを提供できる。低密度で成長したCNTsは、最初に繊維材料に浸出する。このような実施形態において、繊維は、垂直配列を生じさせるほどには高密度に成長しない。その結果、炭素繊維材料表面で絡み合ったマットとなる。これとは対照的に、前もって形成されたCNTsを手作業で塗布する場合、炭素繊維材料上のCNTマットの分布及び密度を確実に均一にすることはできない。
【0070】
図15は、本願発明の具体例に従ってCNT浸出炭素繊維材料を生成する処理1500のフローチャートを示す。また、炭素繊維材料の使用は単なる例示である。
【0071】
処理1500には、少なくとも以下の工程が含まれる。
【0072】
工程1501:炭素繊維材料の官能化。
【0073】
工程1502:官能化された炭素繊維材料へのバリア・コーティング(barrier coating)及びCNT形成触媒の適用。
【0074】
工程1504:カーボン・ナノチューブを合成するのに十分な温度までの炭素繊維材料の加熱。
【0075】
工程1506:触媒を含んだ炭素繊維上におけるCVDを介したCNT成長の促進。
【0076】
工程1501において、炭素繊維材料は官能化され、繊維の表面湿潤を促進するとともに、バリア・コーティングの付着性を向上させる。
【0077】
炭素繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるために、カーボン・ナノチューブは、バリア・コーティングで等角的にコーティングされた炭素繊維材料上に合成される。1つの実施形態において、これは、工程1502のように、まず炭素繊維材料をバリア・コーティングで等角的にコーティングし、その後、バリア・コーティング上にナノチューブ形成触媒を配置することにより達成される。ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒配置前に、部分的に硬化していてもよい。これにより、CNT形成触媒と炭素繊維材料との表面接触が可能となるなど、触媒を受け入れてバリア・コーティング内へ埋め込むことのできる表面がもたらされる。このような実施形態では、バリア・コーティングは、触媒を埋め込んだ後、十分に硬化される。ある実施形態において、バリア・コーティングは、CNT形成触媒の配置と同時に炭素繊維材料全体にコーティングされる。CNT形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されると、バリア・コーティングは十分に硬化される。
【0078】
ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒の配置前に十分に硬化される。このような実施形態では、十分に硬化したバリア・コーティングを施した炭素繊維材料は、プラズマで処理され、触媒を受容するために表面を整える。例えば、硬化したバリア・コーティングを有するプラズマ処理された炭素繊維材料は、CNT形成触媒の配置が可能な粗面化した(roughened)表面を提供する。バリア・コーティングの表面を「粗面化(roughing)」するプラズマ処理は、触媒の配置を容易にする。粗度は、通常、ナノメートルのスケール(scale)である。プラズマ処理工程において、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター(crater)又はくぼみが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素及び水素など、種々異なる1以上のガスをプラズマに用いて達成される。ある実施形態では、プラズマによる粗面化は、炭素繊維材料自体に直接行われる。これにより、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの付着が容易になる。
【0079】
さらに図15を併用して後述されるように、また図15を併用して、触媒は、遷移金属ナノ粒子を含んで構成されるCNT形成触媒を含有する溶液として調整される。合成されたナノチューブの直径は、前述のように、金属粒子のサイズに関係する。ある実施形態では、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒を含有する工業用の分散液を利用して希釈せずに使用されるが、他の実施形態では、触媒を含有する工業用の分散液は希釈される。このように溶液を希釈するかどうかは、前述のように、成長するCNTの所望の密度及び長さによる。
【0080】
図15の具体例に関して、カーボン・ナノチューブの合成は、化学蒸着(CVD)処理に基づいて示されており、高温で生じる。具体的な温度は触媒の選択に応じて変化するが、通常は、約500℃〜約1000℃の範囲である。したがって、工程1504には、カーボン・ナノチューブの合成を補助する前記範囲における温度まで、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料を加熱することが含まれる。
【0081】
次に、工程1506において、触媒を含んだ炭素繊維材料上でCVDにより促進されるナノチューブ成長が行われる。CVD処理は、例えば、炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、及び/又はエタノール)により進められる。CNT合成処理では、主要なキャリアガスとして、通常、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)が用いられる。炭素原料は、混合物全体の約0%から約15%の範囲で供給される。CVD成長のための略不活性環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去して用意される。
【0082】
CNTの合成処理において、CNTsは、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の部位で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、ナノチューブの成長に影響を与えることができる。すなわち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマ・スプレーの配置及び電界を適切に調節することにより、垂直配列の(すなわち、炭素繊維材料に対して垂直な)CNTsを合成できる。一定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したナノチューブは、成長方向を垂直に維持して、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のCNTsになる。また、バリア・コーティングの存在はCNT成長の方向性にも影響を与える。
【0083】
炭素繊維材料上に触媒を配置する工程は、溶液のスプレー、若しくは溶液の浸漬コーティングにより、又は、例えば、プラズマ処理を用いた気相蒸着により可能である。方法の選択は、バリア・コーティングが適用される方法と連係してなされる。このように、ある実施形態では、溶媒に含まれた触媒の溶液を形成した後、その溶液を用いて、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料にスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングの組み合わせにより、触媒が適用される。単独、又は組み合わせて用いられるいずれかの方法は、1回、2回、3回、4回、あるいは何回でも使用され、CNT形成触媒で十分均一にコーティングされた炭素繊維材料を提供する。浸漬コーティングが使用される場合、例えば、炭素繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、炭素繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、炭素繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、CNT形成触媒の溶液にさらされる。スプレー又は浸漬コーティングを用いて、CNT形成触媒ナノ粒子が略単分子層である、約5%未満から約80%の表面被覆率の触媒表面密度を備えた炭素繊維材料を処理する。ある実施形態では、炭素繊維材料上におけるCNT形成触媒のコーティング処理は、単分子層だけを生成すべきである。例えば、CNT形成触媒の積層上におけるCNT成長は、CNTの炭素繊維材料への浸出度を損なうことがある。他の実施形態では、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に知られている他の処理(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて、遷移金属触媒を炭素繊維材料上に配置する。
【0084】
本願発明の処理は連続処理となるように設計されるため、巻き取り可能な炭素繊維材料は、浸漬コーティング槽が空間的に分離されている一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能である。発生期の炭素繊維が新たに生成されている連続処理において、CNT形成触媒の浸漬又はスプレーは、炭素繊維材料にバリア・コーティングを適用して硬化又は部分的に硬化させた後の第1段階である。バリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用は、新たに形成された炭素繊維材料のために、サイジング剤の適用に代えて行われるものである。他の実施形態において、CNT形成触媒は、バリア・コーティングの後、他のサイジング剤の存在下で、新たに形成された炭素繊維に適用される。このようなCNT形成触媒及び他のサイジング剤の同時適用であっても、CNT形成触媒を炭素繊維材料のバリア・コーティングと表面接触させて供給し、確実にCNTを浸出できる。
【0085】
使用される触媒溶液は、遷移金属ナノ粒子であるが、これは、前述したように、dブロックの遷移金属であればいかなるものでもよい。加えて、ナノ粒子には、元素形態又は塩形態のdブロック金属を含む、合金や非合金の混合物、及びそれらの混合物が含まれる。このような塩形態には、限定するものではないが、酸化物、炭化物及び窒化物が含まれる。限定されない例示的な遷移金属NPsには、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAg、並びにそれらの塩及び混合物が含まれる。ある実施形態において、バリア・コーティングの配置と同時に、CNT形成触媒を直接炭素繊維材料に適用あるいは浸出させることにより、このようなCNT形成触媒は炭素繊維上に配置される。この遷移金属触媒の多くは、例えば、Ferrotec Corporation(Beford, NH)などの様々なサプライヤーから市販されており容易に入手できる。
【0086】
炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用するために用いられる触媒溶液は、CNT形成触媒の全体にわたる均一な分散を可能とするいかなる共通溶媒にも含まれる。このような溶媒には、限定するものではないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又はCNT形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するために制御された極性を有する他のいかなる溶媒も含まれる。CNT形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、およそ1:1から1:10000の範囲内である。このような濃度は、バリア・コーティング及びCNT形成触媒が同時に適用されるときにも用いられる。
【0087】
ある実施形態において、炭素繊維材料は、CNT形成触媒の配置後、約500℃〜1000℃の温度で加熱されて、カーボン・ナノチューブを合成する。この温度での加熱は、CNT成長のための炭素原料の導入前に、又は略同時に行われる。
【0088】
ある実施形態において、本願発明により提供される処理には、炭素繊維材料からサイジング剤を除去し、炭素繊維材料全体に等角的にバリア・コーティングを適用し、炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用し、炭素繊維材料を少なくとも500℃まで加熱し、そして、炭素繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成する工程が含まれる。ある実施形態において、CNT浸出処理の工程には、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維へのCNT形成触媒の適用、CNT合成温度までへの繊維の加熱、及び触媒含有炭素繊維材料におけるCVD促進のCNT成長が含まれる。このように、工業用の炭素繊維材料が使用される場合、CNT浸出炭素繊維を構成するための処理には、炭素繊維材料上に任意のバリア・コーティング及び触媒を配置する前に、炭素繊維材料からサイジング剤を除去する個別の工程が含まれる。
【0089】
カーボン・ナノチューブの合成工程には、同時係属の米国特許出願第2004/0245088号に開示され、参照により本明細書に組み込まれるものなど、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の技術が含まれる。本願発明の繊維上におけるCNTs成長は、限定するものではないが、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD技術、レーザー・アブレーション、アーク放電、高圧一酸化炭素(HiPCO)などの、当該技術分野において知られている技術により可能である。CVDの間、特に、CNT形成触媒が配置されバリア・コーティングが施された炭素繊維材料が直接用いられる。ある実施形態において、従来のいかなるサイジング剤もCNT合成前に除去可能である。ある実施形態において、アセチレンガスはイオン化されて、CNT合成のための低温炭素プラズマジェットを形成する。プラズマは触媒を有する炭素繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、炭素繊維材料上におけるCNTsの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)炭素繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長したCNTsの直径は、前述のように、CNT形成触媒のサイズにより決定される。ある実施形態において、サイジングされた繊維基材は約550℃〜約800℃に加熱され、CNTの合成を容易にする。CNTsの成長を開始するために、プロセスガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)の2つのガスが反応器(reactor)に流される。CNTsは、CNT形成触媒の部位で成長する。
【0090】
ある実施形態において、CVD成長はプラズマで助長される。プラズマは、成長処理中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長したCNTsは電界の方向に従う。したがって、反応器の配置を調節することにより、垂直配向のカーボン・ナノチューブが、円筒状の繊維の周囲から放射状に成長する。ある実施形態では、繊維の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要とされない。明確な面を有する炭素繊維材料(例えば、テープ、マット、織物、パイルなど)に対して、触媒は一面又は両面に配置され、それに対応して、CNTsも一面又は両面で成長する。
【0091】
前述のように、CNT合成は、巻き取り可能な炭素繊維材料を機能化する連続処理を行うのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0092】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、「オール・プラズマ(all plasma)」処理で作られる。オール・プラズマ処理は、前述のように、プラズマによる炭素繊維材料の粗面化を伴って、これにより、繊維表面の湿潤特性を向上させ、より等角的なバリア・コーティングをもたらすとともに、アルゴン又はヘリウムをベースとしたプラズマ中に酸素、窒素、水素など特定の反応ガス種を用いた炭素繊維材料の機能化を利用して、機械的連結あるいは化学的接着を介してのコーティングの接着性を向上させる。
【0093】
バリア・コーティングの施された炭素繊維材料は、更なる多数のプラズマ介在工程を通って、最終的なCNT浸出製品を形成する。ある実施形態において、オール・プラズマ処理には、バリア・コーティングが硬化した後の第2の表面の改質が含まれる。これは、炭素繊維材料上のバリア・コーティング表面を「粗面化」して、触媒の配置を容易にするプラズマ処理である。前述のように、表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素、及び窒素などの種々異なる1以上のガスからなるプラズマを用いて実現できる。
【0094】
表面改質後、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料は触媒の適用へと進む。これは、繊維上にCNT形成触媒を配置するためのプラズマ処理である。CNT形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、磁性流体、有機金属、金属塩、又は気相輸送を促進する他の組成物の形態で、前駆体としてプラズマ原料ガスに添加される。触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とせず、周囲環境の室温で適用可能である。ある実施形態では、炭素繊維材料が触媒の適用前に冷却される。
【0095】
オール・プラズマ処理を継続すると、カーボン・ナノチューブの合成がCNT成長反応器で生じる。これは、プラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、ここでは、炭素プラズマが、触媒を含む繊維にスプレーされる。カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜1000℃の範囲)で発生するので、触媒を含む繊維は炭素プラズマにさらされる前に加熱される。浸出処理のために、炭素繊維材料は、それが軟化するまで任意に加熱されてもよい。加熱後、炭素繊維材料は炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素を含むガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなど)を、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、スプレーノズルにより炭素繊維材料に向けられる。炭素繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、スプレーノズルから約1センチメートル以内など、スプレーノズルにごく近接している。ある実施形態においては、加熱器は、炭素繊維材料の上側のプラズマ・スプレーに配設され、炭素繊維材料を高温に維持する。
【0096】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成には、カーボン・ナノチューブを炭素繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器が含まれる。その反応器は、カーボン・ナノチューブを含む繊維を生成するための連続的なインライン処理用に設計される。ある実施形態において、CNTsは、化学蒸着(「CVD」)処理により、大気圧かつ約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。合成が大気圧で生じるということは、繊維上にCNTを合成するための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、CNTの成長が数秒単位で発生するということであり、当該技術分野で標準的な他の手段及び装置構成における数分単位(又はもっと長い)とは対照的である。
【0097】
様々な実施形態によるCNT合成反応器には、以下の特徴が含まれる。
【0098】
(矩形に構成された合成反応器)
当該技術分野で知られている標準的なCNT合成反応器は横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器にモデル化すると容易であり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。本願発明は、従来の円筒形状を変えて、矩形横断面を有するCNT合成反応器を提供する。変更した理由は以下の通りである。1.反応器により処理される多数の炭素繊維材料は、例えば、形状が薄いテープやシート状など相対的に平面的であるので、円形横断面では反応器の容積を効率的に使用していない。この非効率性は、円筒状のCNT合成反応器にとって、例えば、以下のa)ないしc)など、いくつかの欠点となる。a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要になる。これは、開放環境におけるCNTsの大量生産には非効率なシステムとなる。b)炭素原料ガス流量の増大;前記a)のように、不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素原料ガス流量を増大させる必要がある。12Kの炭素繊維トウは、矩形横断面を有する合成反応器の全容積に対して2000分の1の容積であることを考慮されたい。同等の円筒状の成長反応器(すなわち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化された炭素繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、炭素繊維材料は、チャンバー容積の17,500分の1の容積である。CVDなどのガス蒸着処理(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与える。矩形反応器の場合、それでもなお過剰な容積が存在する。この過剰容積は無用の反応を促進してしまうが、円筒状反応器は、その容積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会が増加することにより、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器チャンバーでは遅くなってしまう。このようなCNT成長の減速は連続処理の進行には問題となる。矩形反応器の構成の利点の1つは、矩形チャンバーの高さが低いことを利用することで、反応器の容積が低減され、これにより容積比が改善され反応がより効率的になるという点である。本願発明のある実施形態において、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して僅か約3000倍にしかすぎない。またある実施形態では、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して僅か約4000倍にしかすぎない。また更なる実施形態では、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して約10,000倍未満である。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を供給するためには、より大量の炭素原料が必要である点に注目されたい。当然のことながら、実施形態の中には、合成反応器が、矩形ではないが比較的矩形に類似する多角形状で表される横断面を有し、円形横断面を有する反応器に対して反応器の容積を同様に低減するものがある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器が用いられた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるなど、サイズの増大に伴い、温度勾配は増加する。このような温度勾配により、炭素繊維材料基材の全域で製品品質がばらつく結果となる(すなわち、製品品質が半径位置の関数として変化する)。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。2.ガス導入:当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なCNT合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して、反応器の中心又は
対象とするゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分(CNT成長が最も活発な場所)に連続的に補充されるので、全体的なCNT成長速度が向上する。このような一定のガス補充は、矩形のCNT反応器により示される成長速度の向上にとって重要な側面である。
【0099】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーが矩形合成反応器の両端に従属する。出願人は、高温ガスが外部環境(すなわち、反応器の外部)と接触すると、炭素繊維材料の分解が増加するだろうと断定した。低温パージゾーンは、内部システム及び外部環境間の緩衝となる。当該技術分野で知られている標準的なCNT合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが必要とされる。本願の矩形CNT成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0100】
(非接触、ホットウォール型、金属製反応器)
ある実施形態において、金属製、特にステンレス鋼のホットウォール型(hot-walled)反応器が使用される。このことは、金属、特にステンレス鋼は炭素を析出(すなわち、すす及び副生成物の形成)しやすいため、常識に反するようにも考えられる。従って、大部分のCNT反応器の構造には、炭素の析出が少なく、また、石英は洗浄しやすく、試料の観察が容易であることから、石英反応器が使用されている。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上にすす及び炭素析出物が増加することにより、より着実、高速、効率的かつ安定的なCNT成長がもたらされるという点に着眼した。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で生じるCVD処理では拡散が制限されることが示されている。すなわち、触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素が触媒粒子に付着してCNTsの合成能力を低下させる。ある実施形態において、金属反応器壁にすすが析出して反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上の単分子層に一度析出すると、炭素は、それ自体を覆って析出しやすくなる。得られる炭素には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、触媒を被毒させない速度で触媒と反応する。既存のシステムが「清浄に」運転しても、連続処理のために開放状態であれば、成長速度が低下してCNTsの生産量は著しく小さくなる。
【0101】
CNT合成を、前述のように「汚れが付いて」いる状態で実施するのは概して有益であるが、それでも、装置のある部位(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、すすが閉塞状態を引き起こした場合、CNTの成長処理に悪影響を与える。この問題に対処するために、CNT成長反応チャンバーの当該部位を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどのすす抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部位は、すす抑制コーティングで浸漬コーティングが施される。INVAR(商標名)は、高温におけるコーティングの接着性を確実にする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおけるすすの著しい堆積を抑制するので、例えば、INVARなどの金属がこれらのコーティングに用いられる。
【0102】
(触媒還元及びCNT合成の組み合わせ)
本明細書に開示されたCNT合成反応器において、触媒還元及びCNT成長のいずれもが反応器内で生じる。還元工程は、個別の工程として実施されると、連続処理に用いるものとして十分タイムリーに行われなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において知られている標準的な処理において、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本願発明によれば、両工程は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることによる。還元処理は、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる;この時点までに、ガスには、触媒と反応して(水素ラジカルの相互作用により)酸化還元を引き起こす前に反応器壁と反応して冷える時間がある。還元が起こるのは、この移行領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでCNTの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最速の成長速度が生じる。
【0103】
ある実施形態において、緩く関連する(loosely affiliated)炭素繊維材料(例えば、炭素トウ)が使用される場合、連続処理には、トウのストランド(strand)及び/又はフィラメントを広げる工程が含まれる。トウは巻き取られていないので、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される(spread)。サイジングされた比較的堅い炭素繊維を使用する場合、トウを「軟化」して開繊しやすくするために、更に加熱することができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積をさらせるよう十分バラバラに広がり、これにより、トウが、次の処理工程でより効率的に反応できるようにする。このような開繊により、3kトウの直径を約4インチ〜約6インチに近づけることができる。開繊された炭素トウは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。バリア・コーティングが適用され粗面化された後、次に、開繊繊維はCNT形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、繊維表面で放射状に分布した触媒粒子を有する炭素トウ繊維となる。触媒を含んだトウ繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なCNT成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はPE−CVD処理を通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でCNTsを合成する。トウ繊維は、こうして放射状に配列されたCNTsを備えて、CNT成長反応器を出る。
【0104】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は更に別の処理工程を経ることもできるが、それは、ある実施形態においては、CNTsを機能化するために用いられるプラズマ処理である。CNTsの更なる機能化は、特定の樹脂への接着力を促進するために用いられる。このように、ある実施形態では、本願発明が機能化されたCNTsを有するCNT浸出炭素繊維材料を提供する。
【0105】
巻き取り可能な炭素繊維材料の連続処理の一部として、最終製品にとって利点となる追加的なサイジング剤を適用するために、CNT浸出炭素繊維材料がサイジング剤の浸漬槽を更に通過してもよい。最終的にウェットワインディング(wet winding)が求められる場合、CNT浸出炭素繊維材料は、樹脂槽を経てマンドレル又はスプールに巻かれる。その結果得られた炭素繊維材料/樹脂の組み合わせは、CNTsを炭素繊維材料上に固着し、これにより、取り扱い及び複合材料の製造をよりたやすくする。ある実施形態において、CNT浸出は、向上したフィラメント・ワインディング(filament winding)を提供するために用いられる。このように、例えば、炭素トウなどの炭素繊維上に形成されるCNTsは、樹脂槽を経て、樹脂含浸処理されたCNT浸出炭素トウが生成される。樹脂含浸後、炭素トウは、デリバリー・ヘッド(delivery head)により、回転するマンドレルの表面上で位置を合わされる。そして、トウは、既知の方法による正確な幾何学的パターンでマンドレルに巻かれる。
【0106】
前述のワインディング処理により、パイプ、チューブ、又は雄型を介して特徴的に製造される他の形態がもたらされる。しかし、本明細書に開示されるワインディング処理から形成される形態は、従来のフィラメント・ワインディング処理から作られるものとは異なる。具体的には、本明細書に開示される処理において、その形態は、CNT浸出トウを含む複合材料から形成される。このため、このような形態にとって、CNT浸出トウによりもたらされる強度の向上などは有益となるであろう。
【0107】
ある実施形態において、巻き取り可能な炭素繊維材料上においてCNTsを浸出させる連続処理により、毎分約0.5フィート〜毎分約36フィートのラインスピードが可能となる。CNT成長チャンバーが、長さ3フィートで、750℃の成長温度で稼動するこの実施形態において、例えば、長さが約1ミクロン〜約10ミクロンのCNTsを製造するために、毎分約6フィート〜毎分約36フィートのラインスピードで処理が行われる。また、例えば、長さが約10ミクロン〜約100ミクロンのCNTsを製造するために、毎分約1フィート〜毎分約6フィートのラインスピードで処理が行われる。長さが約100ミクロン〜約200ミクロンのCNTsを製造するためには、毎分約0.5フィート〜毎分約1フィートのラインスピードで処理が行われる。CNTの長さは、ラインスピード及び成長温度のみに関係しているだけでなく、炭素原料ガス及び不活性ガスのいずれの流量もまたCNTの長さに影響を与える。例えば、高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分36フィート)で、不活性ガス中の炭素原料が1%未満からなる流量により、長さが1ミクロン〜約5ミクロンのCNTsが得られる。高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分約36フィート)で、不活性ガス中の炭素原料が約1%を上回る流量の場合には、5ミクロン〜約10ミクロンの長さを有するCNTsが得られる。
【0108】
ある実施形態においては、複数の炭素材料は同時に処理過程を通過する。例えば、複数のテープ、トウ、フィラメント、ストランドなどが並行して処理過程を通過する。こうして、炭素繊維材料の既製スプールはいくつでも並行に処理過程を通過して、処理が終わると再度巻き取られる。並行して通過して巻き取られる炭素繊維材料の数には、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は、最大でCNT成長反応チャンバーの幅に収まるいかなる数も含まれる。さらに、複数の炭素繊維材料が処理過程を通過する場合、回収スプール数は、処理開始時のスプール数よりも少なくなり得る。このような実施形態において、炭素ストランド、トウなどは、当該炭素繊維材料をより高い規則構造の炭素繊維材料(例えば、織物など)に結合する更なる処理を経て送り出される。また、連続処理には、例えば、CNT浸出短繊維マットの形成を容易にする後処理チョッパー(post processing chopper)を組み込みこむことができる。
【0109】
当然のことながら、本願発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を与えない変更も、本明細書で提供された本願発明の定義内に含まれる。したがって、以下の実施例は、本願発明を例示するものであって限定するものではない。
【実施例1】
【0110】
本実施例は、太陽熱受熱器に用いられるCNT浸出コーティングの製造及び1モデルの特性を示している。
【0111】
CNTベースのコーティングは、以下の手順により製造される。
【0112】
CNTsは、前記概略のように、オープンリール式のシステムにおいて(炭素繊維の例示である)炭素繊維トウに浸出する。その後、CNT浸出繊維トウは発熱体に巻き付けられ、必要に応じて更なる反射層が追加される。この手順により製造されるコーティングは、太陽熱選択コーティングとしての特性を表すことが予期される。CNT浸出繊維を使用したコーティングの正確な特性はCNTの長さ及び密度によって決まる。
【0113】
図16は、このようなCNT浸出繊維コーティングの1モデル、つまり、破線として示される理論的理想的なコーティングの重層を有したバッキーペーパー(Buckypaper)に関する反射率データを示している。発熱体の周囲に巻き付けられるCNT浸出繊維は、バッキーペーパーに類似するCNTsの配列を有している。バッキーペーパーにおけるCNTsの配列は、図17のSEM画像に示される。
【0114】
CNT浸出繊維を有するコーティングは、例えば、図18において1例として示されるように、太陽熱受熱器に組み込む吸熱要素の外面上に形成される。この太陽熱受熱器には、CNT浸出コーティングでコーティングされた吸熱要素を囲むアニュラスが含まれる。アニュラスは、その外面、内面又は両面に反射防止膜を備えたホウケイ酸ガラスであり、アニュラスを通して伝達する入射放射線量を最大化する。アニュラスは、(0.0001Torr以下に)減圧されて、CNT浸出コーティングとアニュラス間に存在する空気が対流することによって生じる熱損失を最小限にする。
【0115】
前述の発明を前記実施形態に関連して説明したが、本願発明の精神から逸脱することなく、様々な変更及び変換が可能である。したがって、全ての変更及び変換は、添付の特許請求の範囲の範囲内であると考えられる。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、概略的には、電磁放射線を受け、吸収し、封じ込め、熱エネルギーに変換する太陽熱受熱装置に関する。
【0002】
(関連出願の記載)
本願は、2009年4月7日出願の米国仮特許出願第61/167,386号に基づいて合衆国法典第35巻(35 U.S.C.)第119条(e)により優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
太陽熱集熱器(solar thermal collector)は、様々な産業プロセス、発電及び温水利用に太陽放射線(solar radiation)からのエネルギーを用いるために開発されている。地球表面上に入射する太陽放射線は、出力密度が約1kW/m2であり、波長が紫外線の約200ナノメートル(nm)から赤外線(IR)の約2500nmまでの範囲にあると推定されている。太陽熱集熱器には、通常、受熱器(thermal receiver)上に太陽放射線を集める反射体(reflector)が含まれる。受熱器は、太陽放射線の光エネルギーを熱伝導流体の熱エネルギーに変換する。受熱器には、通常、例えば、紫外線(UV)領域や可視領域における短波の太陽放射線を良好に吸収する吸収体である吸熱体(thermal absorber)が含まれる。しかしながら、吸熱体の少なくともいくつかは、赤外線領域における長波の良好な放熱体でもあり、短波長の太陽放射線の吸収により十分に励起された場合、赤外線により熱を放射する。入射する太陽放射線は、最初に、高い割合で吸収されるが、吸熱体は、熱として高い割合で放射し、これにより、太陽エネルギーの効果的な集熱を低下させてしまう。
【0004】
太陽熱集熱器には、限定するものではないが、平板型太陽熱集熱器及び真空ガラス管ハウジングに収められる吸熱管など、いくつかの種類が開発されている。吸収体の表面は、地金、又は、太陽放射線スペクトル内(すなわち、約200nm〜2500nm)の放射線を吸収する選択的な吸収コーティング(selective absorber coating)でコーティングされた金属を含む。このような太陽光の選択的な吸収コーティング(例えば、0.92〜0.96の範囲の吸光係数と、例えば、0.07〜0.11の範囲の放射率とを有する)は、実質的に入射放射線の全てを吸収するが、通常、赤外線の波長で熱を放射する。このような太陽光の選択的な吸収コーティングの例には、高反射性の金属をベースとした極めて薄い黒色の金属酸化物コーティング(例えば、約0.5〜1ミクロンオーダー)、並びに、黒色クロム、黒色ニッケル、及びニッケルを伴う酸化アルミニウムなどガルバニック的に(galvanically)適用される選択的なコーティングが含まれる。太陽光の選択的な吸収コーティングでコーティングされた吸熱管は、通常、ガラス管又は真空ガラス管に入れられ、これにより、伝達による外気への熱損失を最小限にしている。しかしながら、これらのコーティングとともに通常用いられる真空ガラス管は、組み立て費用がかさみ、設置時に破損しやすい。多くの場合、直接的な熱放射線から真空シールを保護するために、例えば、シュラウドなどの追加部品が用いられるが、その結果、これは効率を約2%も減少させてしまう。このため、良好な吸光度特性及び低放射率特性を有する別の太陽熱受熱器が望ましい。本願発明は、このニーズを満たし、関連する利点をも提供するものである。
【発明の概要】
【0005】
ある態様において、本明細書で開示された実施形態は、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素;及び吸熱要素の外面と表面で係合し(in surface engagement with)、これを少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブが浸出した(以下、「カーボン・ナノチューブ浸出」又は「CNT浸出」という)繊維材料を含む第1のコーティングを備えた吸熱要素を含む太陽熱受熱器に関する。第1のコーティングに入射する太陽放射線を受けて吸収し、そして熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーを第1のコーティングから吸熱要素へ伝達する。
【0006】
ある態様において、本明細書で開示された実施形態は、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングと、第1のコーティング上に配設された環境コーティングと、を含む、太陽熱受熱装置用の多層コーティングに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】吸熱要素の外面上にCNT浸出コーティングを備えた例示的な太陽熱受熱器の外形図。
【図2】吸熱要素の外面上に溝を更に含む、図1に示される太陽熱受熱器の外形図。
【図3】CNT浸出コーティングの上に環境コーティング(environmental coating)を更に含む、図1に示される太陽熱受熱器の外形図。
【図4】本願発明の第4実施形態に準じて、吸熱要素の外面上に溝を更に含む、図3に示される太陽熱受熱器の外形図。
【図5】本願発明の実施形態に準じて、CNT浸出コーティングと一体化し(integrated into)、太陽熱受熱器の吸熱要素の外面に適用された低放射率セラミック環境コーティングの断面図。
【図6】本願発明の実施形態に準じて、反射防止膜を更に含む、図5の、一体化した低放射率セラミック環境コーティングの断面図。
【図7】本願発明の実施形態に準じて、CNT浸出コーティング上に適用された低放射率金属環境コーティングの断面図。
【図8】本願発明の実施形態に準じて、図7に示される一体化した低放射率金属環境コーティング上に適用された反射防止膜の断面図。
【図9】本願発明の実施形態に準じて、図5に示される一体化したコーティング上に適用されて積層された一体化低放射率サーメット(cermet)環境コーティングの断面図。
【図10】本願発明の実施形態に準じて、反射防止膜を更に含む、図9に示される積層された一体化低放射率サーメット環境コーティングの断面図。
【図11】本願発明の実施形態に準じて、太陽熱受熱器の吸熱要素の外面上に適用されて一体化した低放射率のサーメットCNT浸出環境コーティングの断面図。
【図12】本願発明の実施形態に準じて、反射防止膜を更に含む、図11に示される一体化した低放射率のサーメットCNT浸出環境コーティングの断面図。
【図13】本願発明の実施形態に準じて、アニュラス(annulus)を備えた太陽熱受熱器の断面図。
【図14】本願発明の実施形態に準じて、図2に示される第2実施形態で説明されるような溝を更に含む、図13に示される太陽熱受熱器の断面図。
【図15】本願発明の例示的な実施形態に準じて、CNT浸出炭素繊維材料を生成する処理を示す図。
【図16】CNT浸出繊維材料を含むコーティングの反射率のデータを示す図。
【図17】太陽熱受熱器のコーティングにおいて使用される繊維材料に浸出したCNTsの走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
【図18】例示的な太陽熱受熱器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明は、1つには、第1のコーティングを有する吸熱要素を組み込んだ太陽熱受熱器に対するものであり、第1のコーティングは、約200nmにおける紫外線(UV)から約2500nmにおける赤外線(IR)の広範なスペクトル域での電磁放射線を吸収する働きをする、カーボン・ナノチューブ(CNT)浸出繊維材料を含んでいる。CNT浸出繊維材料のCNTsは、熱の良導体であり、光エネルギーを取り入れて熱に変換するための導管として機能する。CNTsには、最も高い熱伝導性を有するものがあり、約6,600Wm-1K-1まで示すことがある、あらゆる材料として知られている(Berber et al. Phys. Rev. Lett. 84(20):4613-4616, (2000))。
【0009】
さらに、第1のコーティングの繊維材料自体は、予測可能な配列を備えた複数の浸出CNTsを組織化する骨格を提供して、CNTの配向性を最適化する。CNTsは、拡大縮小が可能な量で制御可能に配列された配置で繊維材料基材上に作られ、表面積の大きい太陽熱受熱器パネルが得られる。「無規律な(loose)」CNTの複合材料では実現が困難なCNT配向性の制御により、光から熱への変換が増進される。高い熱伝導性と結びついたCNT配列の制御により、熱が、吸熱要素に向かってCNTの長さに沿って効率的かつ一方向に伝導され、そして、その発熱体から、発電などの様々な用途で使用する熱伝導流体へと伝導される。
【0010】
本願発明の太陽熱受熱器は、多数の従来型太陽熱集熱器の構成に用いることができる。例えば、太陽熱受熱器は、スイミングプールの暖房装置などの低機能の暖房用途や、作物乾燥などの農業利用に用いられるものなど、比較的低温で作動する。本願発明の太陽熱受熱器は、発電(例えば、蒸気発生)で用いられる温度など、高温を使用する用途にも用いられる。本願発明の太陽熱受熱器は、平板構造に加えて、パラボラ構造でも構成される。
【0011】
本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、例えば、約0.92から約0.99の範囲の吸光係数を有する。さらに、本願発明の太陽熱受熱器の放射率は、約0.01から約0.11の範囲である。本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、UVからIRまでのスペクトル帯における殆ど全ての入射放射線を吸収できる一方、発熱体とそれ以降の熱伝達流体に伝達して、熱的な赤外線放射を抑制する。適切なナノチューブ密度により、垂直に配列された複数の単層CNTsは、ほぼ完全黒体として振る舞うことが示されている(Mizuno et al. Proc. Natl, Acad. Sci. 106:6044-6047(2009))。黒体吸収体を生成する1つの手段は、光の反射を抑制することであり、これは、物体の屈折率が空気の屈折率に近づいたときに達成される。反射率を最小化するというこの解決法は、以下のフレネルの法則から明白である。
【数1】
ここでRは反射率であり、nは物体の屈折率であり、n0は空気の屈折率である。繊維材料上におけるCNTの密度は、本明細書で後述する連続処理において調節可能である。CNTの密度を調節することにより、CNT浸出繊維材料は、空気の屈折率n0に近似する屈折率nを表すように変化する。
【0012】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料を有する本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、黒体様物体(black-body-like object)として振る舞い、黒体放射の形で高い熱放射率を示す。ある実施形態において、このエネルギー損失は、CNTsから吸熱要素へ熱エネルギーを導くことにより、低減され、あるいは防止される。そして、次に、吸熱要素は、例えば、発電に用いられる熱伝達流体を加熱する。また、システムの放射率の低減は、例えば、発熱体の周囲に真空ガラス・チャンバーを使用したり、反射防止膜などのような更なるコーティング材を使用するなど、当該技術分野において知られた方法によっても達成できる。
【0013】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料を有する本願発明の太陽熱受熱器に使用されるコーティングは、ほぼ全ての入射光を吸収する固有の太陽光選択材料として振る舞う一方、極めて低い放射率を有し、更なるコーティングを不要とする代わりに、熱エネルギーを吸熱要素へ伝達し、そして吸熱要素から様々な用途で使用する熱伝達流体へ効率的に伝達する。
【0014】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素が含まれる。受熱器は、吸熱要素の外面と表面で係合して、これを少なくとも部分的に覆う第1のコーティング内に、カーボン・ナノチューブ浸出(「CNT浸出」)材料を含む。CNT浸出繊維材料の第1のコーティングには、限定するものではないが、CNT浸出繊維材料と、複合材料を形成するマトリックス内のCNT浸出繊維材料と、が含まれる。第1のコーティングのCNT浸出繊維材料に入射した太陽放射線は、吸収され、封じ込められて、熱エネルギーに変換される。変換された熱エネルギーは、吸熱要素の外面上における第1のコーティングのCNT浸出繊維材料から吸熱要素の内面に伝達され、その後、内面から熱伝達流体などの物質へ伝達される。
【0015】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、表面上に複数の溝を有する吸熱要素が含まれる。1つの実施形態において、溝は、サイズ及び深さがミクロン(pm)オーダーである。溝は、吸熱要素の外周に沿うらせん状に配置され、外面上において、吸熱要素の一端から他端まで延びる単一の溝を形成する。このような溝は、例えば、CNT浸出繊維トウを収容して、CNT浸出繊維材料と吸熱要素との間の接触表面積を大きくすることができる。理論に拘束されるものではないが、このような表面積の増大により、吸熱要素の外面へ熱をより効率的に伝達させることが可能となる。同様の方法で、吸熱要素の内面上においても表面積を増大させることができ、熱伝達流体への熱伝達の効率性を高めることが可能となる。
【0016】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングを覆う、又はこれと一体化した、低放射率の環境コーティングが含まれる。第1のコーティングと一体化した場合、環境コーティングはマトリックス材として機能し、複合材料の構造体である第1のコーティングを提供する。環境コーティングにより、その外面に入射する(少なくとも紫外線から可視領域における)電磁放射線は、吸収及び熱エネルギーへの変換を行う第1のコーティングのCNT浸出繊維材料上へと伝達されることになる。環境コーティングは、外部環境に戻る、CNT浸出コーティングによる熱エネルギーの放射を効果的に低減するために、低放射率特性を有する。環境コーティングは、第1のコーティングのCNT浸出繊維材料がシステムの作動温度で熱エネルギーを放射するスペクトルに応じて、特に、赤外線スペクトルにおいて、低放射率を有してもよい。
【0017】
ある実施形態において、太陽熱受熱器には、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングにより少なくとも部分的に覆われる吸熱要素を囲むアニュラスが含まれる。1つの構成において、アニュラスは、CNT浸出コーティングから半径方向に離間している。例示的な実施形態において、アニュラスには、アニュラス及びCNT浸出コーティング間に配設されるエアポケット(air pockets)又はエアギャップが含まれる。別の実施形態において、アニュラスは真空排気されて、エアギャップが真空状態に保たれる。アニュラスは、1以上の反射防止膜及び低放射率コーティングでコーティングされ、外面及び内面の一方又は両方に適用され得る。アニュラスは、CNT浸出コーティングに対向する内面に適用される赤外線反射防止膜を更に有する。
【0018】
本明細書では、用語「繊維材料」とは、基本的な構成要素として繊維を有するいかなる材料も指す。この用語には、繊維、フィラメント、ヤーン、トウ(tow)、テープ、織物及び不織布、パイル(pile)、マット(mat)などが包含される。さらに、繊維材料の組成物には、限定するものではないが、ガラス、炭素、金属、セラミック、有機物などのあらゆる種類のものがある。
【0019】
本明細書では、用語「巻き取り可能な寸法」とは、繊維材料をスプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、繊維材料の有する少なくとも1つの寸法をいう。「巻き取り可能な寸法」の繊維材料は、本明細書に後述されるように、CNT浸出のための1回分の処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。市販の巻き取り可能な寸法の炭素繊維材料である例示的な繊維材料の1つのとしては、800テックス(1テックス=1g/1,000m)又は620ヤード/ポンドの寸法を有するAS4 12k炭素繊維のトウ(Grafil, Inc., Sacramento, CA)が挙げられる。特に、工業用の炭素繊維のトウは、例えば、5、10、20、50及び100ポンド(高重量のスプール用で、通常、3k/12Kのトウ)のスプールで入手されるが、より大きなスプールには特注を必要とする。本願発明の処理は、5〜20ポンドのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールの使用も可能である。さらに、例えば、100ポンド以上の極めて長大な巻き取り長を、取り扱いが容易な寸法、例えば、50ポンドのスプール2つに分割する前処理工程を組み込むこともできる。
【0020】
本明細書では、用語「カーボン・ナノチューブ」(単数ではCNT、複数ではCNTs)とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、二層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)などのフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のうちのすべてをいう。CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は開口端を有していてもよい。CNTsには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0021】
本明細書で、「長さが均一」という場合、反応器において成長するCNTsの長さについて言及するものである。「均一な長さ」は、約1ミクロンから約500ミクロンの間における様々なCNT長さに対して、全てのCNTの長さが±約20%以内の許容誤差となるような長さをCNTsが有していることを意味する。極めて短い長さ、例えば、1〜4ミクロンなどでは、この誤差は、全てのCNTの長さの±約20%から±約1ミクロンまでの範囲内、すなわち、CNTの全長の約20%よりも若干大きくなる。
【0022】
本明細書で、「分布が均一」とは、繊維材料におけるCNTsの密度が不変であることをいう。「均一な分布」は、CNTsで覆われる繊維の表面積の割合として定義される被覆率の誤差が±約10%となる場合の繊維材料上の密度をCNTsが備えていることを意味する。これは、直径8nmの5層CNTでは、1平方マイクロメートル当たり±1500のCNTsに相当する。この形状ではCNTsの内部空間を充填可能と仮定している。
【0023】
本明細書では、用語「浸出する」とは結合することを意味し、用語「浸出」とは結合処理を意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及び/又はファンデルワールス力の介在による物理吸着などが含まれ得る。例えば、ある実施形態において、CNTsは、繊維材料に直接結合される。結合は、例えば、CNTが、バリア・コーティング、及び/又はCNTs及び炭素繊維材料間にはさまれて配設された遷移金属ナノ粒子を介して繊維材料へ浸出するなど、間接的であってもよい。本明細書に開示されたCNT浸出繊維材料において、カーボン・ナノチューブは、前述のように、直接的又は間接的に繊維材料に「浸出する」ことが可能である。CNTが繊維材料に「浸出する」具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0024】
本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のdブロックにおけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属」には、遷移金属元素ベースの塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物など)も含まれる。
【0025】
本明細書では、用語「ナノ粒子」若しくはNP(複数ではNPs)、又はその文法的な同等物とは、NPsは球形である必要はないが、球の等価直径が約0.1から約100ナノメートルの間のサイズの粒子をいう。遷移金属NPsは、特に、繊維材料上においてCNTを成長させる触媒として機能する。
【0026】
本明細書では、用語「マトリックス材」とは、CNT浸出繊維材料をランダム配向などの特定の配向性で組織化する機能を果たすバルク材をいう。マトリックス材に対してCNT浸出繊維材料の有する物理的及び/又は化学的性質のある部分が付与されることにより、マトリックス材にとってCNT浸出炭素繊維材料の存在は有益となる。ある実施形態において、マトリックス材は、CNTsによる太陽光放射線の吸収に基づいて生成される熱を保持しておくのに有用な環境コーティングとして作用する。ある実施形態において、マトリックス材はセラミックである。ある実施形態において、マトリックス材は、赤外線を反射してCNTsに戻し、環境への熱損失を抑制する。
【0027】
本明細書では、用語「材料滞留時間」とは、巻き取り可能な寸法の繊維材料に沿った各ポイントが、本明細書で説明されるCNT浸出処理の間、CNTの成長状態にさらされる時間をいう。この定義には、複数のCNTの成長チャンバーを用いる場合の材料残留時間が含まれる。
【0028】
本明細書では、用語「ラインスピード」とは、本明細書で説明されるCNT浸出処理により、巻き取り可能な寸法の繊維材料を送り込むことができるスピードをいい、この場合、ラインスピードは、CNTの(1つの又は複数の)チャンバー長を材料残留時間で除して算出される速度である。
【0029】
ある実施形態において、本願発明は、外面及びその反対側の内面を有する吸熱要素を含む太陽熱受熱器;及び、吸熱要素の外面と表面で係合し、これを少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む第1のコーティングを提供し、それにより、第1のコーティングに入射する太陽光放射線を受けて吸収し、そして、熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーを第1のコーティングから前記吸熱要素へ伝達する。
【0030】
本願発明の太陽熱受熱器は、当該技術分野で知られている低・中・高温用途で運転可能である。高温の受熱器は、多くの発電用途、例えば、蒸気タービンの駆動に用いられる。高温用途は、約400℃より高い温度を利用するあらゆる用途である。低温用途には、例えば、プール暖房又は作物乾燥が含まれる。このような温度は、大気温度よりも約10〜100℃高い。約100℃〜400℃の温度を利用するあらゆる用途は、中温用途と考えられる。中温用途の例としては、例えば、パラボリック・トラフ型又は集光型の太陽光発電所が含まれる。
【0031】
太陽熱受熱装置は、第1の端部及び第2の端部を有する吸熱要素と、前記第1の端部で吸熱要素に流入し前記第2の端部で吸熱要素から流出する熱伝達流体と、を有する。吸熱要素は内面上又は外面上に溝を有し、これによって吸熱要素の外側で第1のコーティングと、又は吸熱要素の内側で熱伝達流体と接触する表面積が拡大する。発熱体の第1及び第2の端部は、熱伝達流体の受熱器までの輸送に用いられる。受熱器自体は、既存のシステムに組み入れて構成され、パラボラ型及び平板型の受熱器に包含可能である。
【0032】
吸熱要素は、通常、金属製のヒートパイプであるが、いかなる伝導材料も用いることができる。さらに、吸熱要素はパイプのような円筒状である必要はない。吸熱要素はいかなる形状であってよく、内面及び外面の表面積を向上させるために選択される。例えば、ある実施形態において、太陽熱受熱器の吸熱要素は、CNT浸出繊維材料を収容するように形成された溝を有する。CNT浸出繊維材料がCNT浸出繊維トウである場合、溝は、発熱体の外面にらせん状に配設され、溝内に巻き付けられたCNT浸出繊維トウと溝とが、溝の穴で接触する。ある実施形態において、CNT浸出繊維トウが使用される場合、トウは発熱体上に広げられてもよい。
【0033】
ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器が有するCNT浸出繊維材料には、炭素、金属、ガラス、セラミックなどから選択された材料を含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維トウが含まれる。
【0034】
ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器は、前記第1のコーティング内で一体化して複合材料を形成する環境コーティングを更に含む。環境コーティングを形成するこのような材料は、限定するものではないが、セラミックマトリックスを含む。ある実施形態において、マトリックス材で形成される複合材料は、金属粒子を更に含む。金属粒子は、伝導経路を更に増加させて、CNT浸出材料により集熱された熱を分散するために用いられる。それらは、例えば、隣接するCNTs間で熱を伝達する導管として機能する一方、赤外線の反射体として機能する。
【0035】
ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器は、第1のコーティング上に配設される環境コーティングを更に含み、この環境コーティングには低放射率のコーティングが含まれる。このような実施形態において、環境コーティングには、CNT浸出繊維材料内で一体化したマトリックス型の環境コーティングも含まれる。ある実施形態において、環境コーティングには、例えば、銅などの金属が含まれる。
【0036】
本願発明の太陽熱受熱器は極めて低い放射率を示す。いかなる環境コーティングも、この目的に資する。加えて、ある実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器には、反射防止材料を含む環境コーティングが更に含まれる。これは、CNTs又は吸熱要素から放射された赤外線加熱を反射してCNTs及び発熱体に戻すために用いられ、環境への熱損失を抑制する。
【0037】
また更なる実施形態において、本願発明の太陽熱受熱器には、第1のコーティング及び吸熱要素を、取り囲んでエアギャップを形成するアニュラスが含まれる。このギャップは空気を含むことができるか、あるいは、殆ど真空になることも可能である。
【0038】
本願発明の太陽熱受熱器は、発電システムと一体化して構成される。この点において、受熱器の全体設計は、当該技術分野で知られているものと表面的に同じにすることが可能である。
【0039】
ある実施形態において、本願発明は、CNT浸出繊維材料を有する第1のコーティングを含む太陽熱受熱器のための多層コーティングと、第1のコーティング上に配設される環境コーティングと、を提供する。第1のコーティングには、セラミックスマトリックスが更に含まれ、また、第1のコーティングには、前述及び後述のように、金属粒子が更に含まれる。
【0040】
本願発明の多層コーティングには、前述及び後述のように、金属膜、反射防止膜、及び/又は低放射率のコーティングを含む環境コーティングが含まれる。
【0041】
当然のことではあるが、本願発明の図面及び説明は簡略化されて、本願発明の理解を明瞭にするために相応しい構成要素を図示する一方で、明確化のために、典型的な太陽熱受熱器及び集熱器に見られる他の多くの構成要素を除外している。しかし、このような構成要素は当該技術分野で周知であり、また、それらは、本願発明のさらなる理解を促すものではないので、このような構成要素についての検討は本明細書では行わない。本明細書における開示は、当業者に知られたこのような全ての変形及び変更に対してなされる。
【0042】
図1を参照すると、本願発明の第1実施形態に係る太陽熱受熱器100の外形図が図示されている。太陽熱受熱器100には、吸熱要素110、及び吸熱要素110の外面115の少なくとも一部に適用されるCNT浸出コーティング120が含まれる。
【0043】
1つの構成において、吸熱要素110は、熱伝達物質(例えば、熱伝達流体)をその内部に受け入れるのに適した中空の要素である。限定されないほんの一例として、熱伝達流体には、水、不凍液(例えば、水とグリコール)、空気、様々なガス、オイル、及び他の高温(高熱容量)流体が含まれる。例示的な実施形態において、吸熱要素110は、第1の端部112及び第2の端部114を有する金属製又は合金製吸熱管である。吸熱要素110は、外面115及びその反対側に内面117を有している。限定されないほんの一例として、吸熱要素110は、ステンレス鋼製、炭素鋼製、又はアルミニウム製である。当業者であれば、他の金属及び合金を用いることができる、ということを認識するであろう。内面117は、吸熱要素110内に存在し内面117と通常表面で係合する熱伝達物質を加熱するが、吸熱要素110の厚さ、及び吸熱要素110の材料特性は、外面115からその内面117へ熱を効率的に伝達するために選択される。例示的な構成において、吸熱管は、長さが約3メートル(m)、直径が約70ミリメートル(mm)、そして壁厚が約2mmである。本明細書で言及される吸熱要素110は管又は管状構造の形態をとるが、当然のことながら、吸熱要素110は、様々な幾何学的形態(ほんの一例として、円筒形、円錐形、多角形又は他の形状及び構成など)で構成されてもよい。
【0044】
1つの構成において、吸熱要素110は、例えば、熱伝達流体などの熱伝達物質が、第1の温度で第1の端部112に流入し、第1の温度よりも高い第2の温度で第2の端部114から流出する開放系(open system)である。別の構成では、吸熱要素110は、例えば、ヒートパイプなどの閉鎖系(closed system)であり、この場合、熱伝達流体は吸熱要素110内に保持される。図示された実施形態において、吸熱要素110は概して均一な外面115を有する。
【0045】
さらに図1を参照すると、CNT浸出コーティング120は、吸熱要素110の外面115に配設されている。このため、CNT浸出コーティング120は吸熱要素110の外面115を少なくとも部分的に覆っている。CNT浸出コーティング120は、吸熱要素110の外面115上に、張力を受けて巻き付けられ、それらの間のギャップを最小限にしつつ、吸熱要素110の外面115との効果的な表面係合又は接触を確立及び維持する。CNT浸出コーティング120は、入射する電磁放射線(通常、太陽放射線の形態)を受けて、熱又は熱エネルギーに変換する。変換された熱又は熱エネルギーは、吸熱要素110の外面115に伝達される。例示的な実施形態において、吸熱要素110の外面115は、CNT浸出コーティング120により殆ど完全に覆われる。別に実施形態において、外面115のうち予め設定された1以上の領域は、CNT浸出コーティング120で覆われずに残される。
【0046】
1つの構成において、CNT浸出コーティング120は、カーボン・ナノチューブを浸出させたガラスロープ又はガラス繊維の形態をとる。CNT浸出コーティングの他の実施例には、例えば、カーボン・ナノチューブを浸出させた炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボン・ナノファイバー(carbon nanofibers)、グラフェンなどのカーボン・ナノチューブ浸出繊維及び織物が含まれる。例示的な実施形態において、CNT浸出コーティング120は、厚さが約15ミクロン(pm)〜約1000pmの範囲である。CNT浸出コーティング120には、カーボン・ナノチューブ又は金属ナノ粒子でドープ(dope)した、耐熱サーメット、耐熱樹脂又は耐熱エポキシのマトリックスが任意に含まれ、これにより、CNT浸出コーティング120に構造的完全性がもたらされる。
【0047】
例示的な実施形態において、CNT浸出コーティング120は、カーボン・ナノチューブのその場成長技術を用いて、ガラス繊維状に製造される。例えば、ガラス繊維は、約5000〜750℃の所与の温度に維持された成長チャンバーを介して与えられる。炭素を含有する供給ガスは、その後、成長チャンバーに導入され、ここで、炭素ラジカルが解離し、触媒ナノ粒子の存在下で、ガラス繊維上におけるカーボン・ナノチューブの形成を開始する。このような技術の1つが、発明の名称を「ガス予熱法を用いた低温CNT成長(Low Temperature CNT Growth Using A Gas-Pre-heat Method)」という、2009年2月27日出願の米国仮出願第61/155,935号に説明されており、その出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。複合材料のカバー層、繊維(thread)若しくはロープの形態でカーボン・ナノチューブ浸出繊維が生成される他のこのような方法も使用されて、CNT浸出コーティング120が得られる。
【0048】
当該技術分野において知られているように、カーボン・ナノチューブをベースとした構造体の電磁放射線の吸光係数は、1つには、カーボン・ナノチューブの長さに加えて、その構造体のナノチューブ体積充填率に依存する。ナノチューブ体積充填率は、ナノチューブにより占められる構造体の全体積における割合を表す。例示的な実施形態において、CNT浸出コーティング120のナノチューブ体積充填率は、約0.5%〜約25%の範囲である。CNT浸出コーティング120におけるカーボン・ナノチューブ間の平均的間隔は、約2ナノメートル(nm)から約200nmに及ぶ。CNT浸出コーティング120のナノチューブ体積充填率は、そこでのカーボン・ナノチューブの選択的な配置により調整され、CNT浸出コーティング120により効果的に吸収される電磁放射線の範囲を制御する。CNT浸出コーティング120におけるナノチューブ間のギャップは、1以上の所与の波長を有する放射線を選択的に捕捉及び吸収するために用いられる。
【0049】
CNT浸出コーティングにおけるカーボン・ナノチューブが長くなるにつれて、(少なくとも可視光のスペクトルにおいて)電磁放射線の吸光係数も高くなる。CNT浸出コーティング120には、約10ミクロン〜約数百ミクロンの範囲の長さを有するカーボン・ナノチューブがある。
【0050】
当該技術分野において知られているように、カーボン・ナノチューブの熱伝導性は、その構造配置に依存している。特に、カーボン・ナノチューブは、長手軸に対して垂直な方向の熱伝導性と比較すると、長手軸の方向において、より高い熱伝導性を有する。このため、1つの構成において、CNT浸出コーティング120には、外面115に対してほぼ垂直に配列されたカーボン・ナノチューブ、外面115に対してほぼ平行に配列されたカーボン・ナノチューブ、及び、外面115に対して平行でも垂直でもなく配列されたカーボン・ナノチューブが含まれる。外面115にほぼ垂直なそれらのカーボン・ナノチューブは、外面115に入射する放射線から変換された熱を効果的に伝導する。外面115に対してほぼ垂直ではないそれらのカーボン・ナノチューブは、外面115に対して直接的には有効熱(sufficient heat)を一切伝導しない。しかし、外面115にほぼ垂直でないそれらのカーボン・ナノチューブは、CNT浸出コーティング120内におけるほぼ垂直なカーボン・ナノチューブへの熱経路を形成し、これにより、CNT浸出コーティング120から外面115へ伝達する全熱量を増加させる。このため、CNT浸出コーティング120におけるカーボン・ナノチューブの配列は調整されて、吸熱要素110へのCNT浸出コーティング120の熱伝導性は最大化される。
【0051】
図2を参照すると、本願発明の別の実施形態による太陽熱受熱器200が図示されている。太陽熱受熱器200は、太陽熱受熱器100にほぼ類似するが、受熱器200は、外面115に形成された溝215を有する吸熱要素110を備えている。1つの構成において、溝215は、吸熱要素110の長さに沿って延びるらせん状の形態をとる。当業者であれば、らせん溝の機械加工は単純であり周知の製造処理であるということを認識するであろう。例示的な実施形態において、溝215は、約50pm〜約5000pmの範囲のサイズである。溝215により、CNT浸出コーティング120にさらされる吸熱要素110の外面115の表面積は効果的に増加する。そして、増加した表面積により、CNT浸出コーティング120から吸熱要素110の外面115への熱伝達の効率性が増大する。例示的な実施形態において、溝215は、CNT浸出繊維トウ120のCNT浸出コーティングと組み合わせたとき、特に効果的となる。溝215は、溝215の内面とCNT浸出コーティング120の1以上の個々の繊維の外面との間で接触面積を最大化するように形成される。例示的な実施形態において、溝215は、CNT浸出コーティング120のCNT浸出繊維とほぼ同じようなサイズ及び深さを有するように形成され、これにより、CNT浸出コーティング120のCNT浸出繊維を溝215内にぴったり合った状態で収容・固着(seat)させ、溝215とCNT浸出コーティング120との間の表面接触を最大にする。他の実施形態において、溝215は、CNT浸出コーティング120の複数のCNT浸出繊維を収容する。
【0052】
1つの構成において、溝215は、外面115上でらせん状に定められ、吸熱要素110の全長に沿って連続的に延びる単一の溝の形態をとる。別の実施形態において、溝215には、吸熱要素110の外面115上に定められる不連続の、又は分割された一連の溝が含まれる。このような溝215は、相互に長手方向に並べられて、吸熱要素110の周囲に巻き付けられた1以上のCNT浸出繊維の少なくとも一部を収容するように形成される。
【0053】
図3を参照すると、本願発明の別の実施形態による太陽熱受熱器300が図示されている。太陽熱受熱器300は、太陽熱受熱器100(図1)にほぼ類似する。1つの実施形態において、環境コーティング310は、CNT浸出コーティング120の上面に適用されて、CNT浸出コーティング120を保護するとともに、CNT浸出コーティング120及び環境コーティング310の組み合わせが有する反射及び放射特性を改善する。環境コーティング310のいくつかの実施形態は、図5〜12で模式的に図示されるとともに、本明細書に説明される。
【0054】
ここで図4を参照すると、本願発明の別の実施形態による太陽熱受熱器400が図示されている。太陽熱受熱器400は、太陽熱受熱器200(図2)にほぼ類似するが、太陽熱受熱器300(図3)に関して説明されたように、環境コーティング310を更に含んでいる。
【0055】
ここで図5を参照すると、1つの構成の太陽熱受熱器500において、環境からCNT浸出コーティング120を保護し、CNT浸出コーティング120からの熱エネルギーの放射を低減するために、CNT浸出コーティング120と一体化したセラミック環境コーティング510が示されている。環境コーティング510は、少なくとも太陽放射線を透過して、これにより、入射放射線はCNT浸出コーティング120に到達可能となる。さらに、環境コーティング510は、CNT浸出コーティング120により放射される赤外線放射などの熱放射を反射し、これにより、熱放射を反射してこれを再吸収のためにCNT浸出コーティング120へ戻す。このように、環境コーティング510は、低放射特性を有する。例示的な実施形態において、環境コーティング510には、液体として適用され、高温の硬化サイクルを介してガラスに変換されるセラミック(誘電体)ベースの材料が含まれる。別の実施形態において、環境コーティング510は、化学的蒸着処理又はプラズマ・スパッタリングを介して適用される。このようなコーティングの適用処理は当該技術分野において知られているので、更なる詳細については簡潔を期するために説明しない。1つの構成において、環境コーティング510はCNT浸出コーティング120及び吸熱要素110が高温(400℃〜500℃まで到達する)に耐えるように構成されている。別の構成において、環境コーティング510は疎水性となるように構成され、環境湿度からCNT浸出コーティング120を保護する。例示的な実施形態において、環境コーティング510は、約50nm〜約500nmの範囲の厚さを有する。環境コーティング510を形成するために用いられる材料の例には、アルミナ、二酸化ケイ素、二酸化セシウム、硫化亜鉛、窒化アルミニウム、及び酸化ジルコニウムが含まれる。
【0056】
ここで図6を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器600において、一体化したセラミック環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120は、更に反射防止膜615でコーティングされる。一体化した環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120による反射に起因した入射放射線量の損失は、その上に反射防止膜615を配置することにより低減される。このため、反射防止膜615は、下層で一体化した環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120の反射損失を効果的に低減し、CNT浸出コーティング120により吸収される入射放射線量を増大させる。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体、及びシリカベースのコーティングが含まれる。このような反射防止膜の使用は、当該技術分野において知られているので、更なる詳細については説明しない。
【0057】
図7を参照すると、1つの構成の太陽入熱器700において、金属環境コーティング710がCNT浸出コーティング120の上に適用される。例示的な実施形態において、環境コーティング710は、少なくとも太陽放射線を透過する金属薄膜であり、これにより、入射放射線がCNT浸出コーティング120に到達できるようにする。さらに、再吸収のため、赤外線放射などの熱放射を、CNT浸出コーティング120から再びCNT浸出コーティング120へと反射させて戻すことにより、環境コーティング710は、低放射特性を有することになる。例示的な実施形態において、環境コーティング710は、化学的蒸着処理を介して、又はプラズマ・スパッタリング若しくはスプレーを介して適用される金属薄膜材料を含む。1つの構成において、環境コーティング710は、CNT浸出コーティング120及び吸熱要素110が高温(400℃〜500℃に到達する)に耐えるように構成される。別の構成において、環境コーティング710は、疎水性となるように構成される。例示的な実施形態において、環境コーティング710は、約1nm〜約250nmの範囲の厚さを有する。環境コーティング510を形成するために用いられる材料の例には、限定されるものではないが、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、タングステン(W)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、酸化銅(CuO)、酸化コバルト(Co3O4)、二酸化モリブデン(MoO2)、酸化タングステン(WO)、酸化チタン(TiO)、窒化チタン(TiN)、鉄(Fe)、及び酸化鉄(Fe2O3)が含まれる。
【0058】
ここで図8を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器800において、金属環境コーティング710(図7)は、反射防止膜615で更にコーティングされている。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0059】
図9を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器900において、一体化したセラミック環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120(図5)は、金属コーティング710(図7)で更にコーティングされ、これにより、吸熱要素110上に積層したサーメット・コーティングを形成する。積層したサーメット・コーティングには、一体化したセラミック・コーティング510及びCNT浸出コーティング120を覆う金属コーティング710が含まれる。セラミック層510と金属層710の組み合わせにより、CNT浸出コーティング120にもたらされる耐環境性が効果的に増大し、また、再吸収のために熱放射を反射してCNT浸出コーティング120に戻すことで、下層のCNT浸出コーティング120からの熱放射損失が効果的に低減する。積層したサーメット層は、下層で一体化したセラミック・コーティング510及びCNT浸出コーティング120に対して、更なる構造的完全性をもたらす。
【0060】
ここで図10を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器1000において、図9の一体化したサーメット・コーティングは、反射防止膜615で更にコーティングされる。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0061】
ここで図11を参照すると、別の構成の太陽熱受熱器1100において、一体化したセラミック環境コーティング510及びCNT浸出コーティング120(図5)は、金属粒子1110でドープされている。1つの構成において、粒子1110は、コーティング710を特徴付ける金属を含み、コロイド分散、又は選択的なプラズマ・スパッタリング若しくはスプレーを介して適用される。粒径は数ミクロンから数ナノメートルの間である。したがって、このような構成により、金属粒子1110でドープされた、CNT浸出コーティング120及びセラミック製コーティング510の一体化した層が提供される。
【0062】
図12を参照すると、別の構成1200において、図11のコーティングの一体化した層は、反射防止膜615で更にコーティングされている。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0063】
ここで図13を参照すると、本願発明のまた別の実施形態による太陽熱受熱器1300が図示されている。太陽熱受熱器1300は、太陽熱受熱器300(図3)にほぼ類似している。太陽熱受熱器1300には、CNT浸出コーティング120でコーティングされた吸熱要素110を囲むアニュラス1310が更に含まれる。例示的な実施形態において、アニュラス1310は、ガラス製アニュラスの形態をとる。他の実施形態において、アニュラス1310は、入射電磁放射線(例えば、太陽放射線)を透過する他の材料(例えば、石英又は他のドープガラス(doped glass)材料)から作られてもよい。1つの構成において、アニュラス1310は、その外面、内面又はその両面が反射防止膜でコーティングされて、アニュラス1310を通って透過する入射放射線量を最大にする。例示的な実施形態において、反射防止膜には、対照的な屈折率が交互に現れる層を有する多重薄膜構造体が含まれる。層の厚さは、界面から反射されるビーム(光線)に相殺的干渉をもたらし、付随する透過ビームに建設的干渉をもたらすように選択される。このような反射防止膜の例には、フッ化マグネシウム、フッ素重合体及びシリカベースのコーティングが含まれる。
【0064】
別の構成において、アニュラス1310は、外面、内面又はその両面が低放射率のコーティングで更に、又は代わりにコーティングされて、アニュラス1310からの放射による放射熱損失(radiation heat loss)を低減してもよい。例示的な実施形態において、低放射率のコーティングは、アニュラス1310に被着した薄膜金属又は金属酸化物層である。このような低放射率コーティングの限定されない例には、500から50nmの厚さを備えた、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)が含まれる。また別の構成において、アニュラス1310は、内面、外面又はその両面が赤外線反射コーティングで更に、又は代わりにコーティングされてもよい。当該技術分野において知られているように、CNT浸出コーティング120で覆われた吸熱要素110からの赤外線放射により熱が失われる。赤外線反射コーティングでコーティングされたアニュラス1310は、CNT浸出コーティング120により放射されたこのような赤外線を反射して吸熱要素110に戻すが、ここでCNT浸出コーティング120は、このように反射したIR放射を再吸収する。したがって、赤外線放射による実質熱損失(effective heat loss)は、放射された放射線の再吸収により効果的に低減される。このような赤外線反射コーティングの例には、スズ酸カドミウム膜がある。
【0065】
例示的な実施形態において、太陽熱受熱器1300には、アニュラス1310と、CNT浸出コーティング1310で少なくとも部分的に覆われた吸熱要素110と、の間のエアギャップ又はエアポケットが含まれる。別の実施形態において、アニュラス1310は真空排気されて、CNT浸出コーティング120とアニュラス1310の間に存在する空気の対流による熱損失を低減する。さらにまた別の例示的な実施形態において、太陽熱受熱器1300には、更に、図5〜12に関連して説明される低放射率の環境コーティングが1以上含まれる。
【0066】
ここで図14を参照すると、本願発明の実施形態による太陽熱受熱器1400が図示されている。太陽熱受熱器1400は、太陽熱受熱器400にほぼ類似している。太陽熱受熱器400には、CNT浸出コーティング120で少なくとも部分的に覆われた吸熱要素110を囲むアニュラス1310が更に含まれる。アニュラス1310は、図13の実施形態に関して本明細書で説明されたように、外面、内面又はその両面が、反射防止膜、低放射率コーティング、赤外線反射コーティングのうちの1以上でコーティングされてもよい。さらにまた別の例示的な実施形態において、太陽熱受熱器1400には、更に、図5〜12に関連して説明された低放射率の環境コーティングが1以上含まれる。
【0067】
下記にCNT浸出繊維材料を生成するための処理を例示する。この処理は、炭素繊維材料で例示されるが、当業者であれば、操作パラメータが他の材質(ガラス、セラミック、及び金属繊維材料など)に関しても同様であることを認識するであろう。
【0068】
ある実施形態において、本願発明はCNT浸出の連続処理を提供するが、この処理には、(a)巻き取り可能な寸法の繊維材料の表面にカーボン・ナノチューブを形成する触媒(以下、「CNT形成触媒」という)を配置すること、及び(b)繊維材料上にカーボン・ナノチューブを直接合成して、これにより、カーボン・ナノチューブが浸出した繊維材料を形成すること、が含まれる。長さ9フィートのシステムのために、処理のラインスピードは毎分約1.5フィートから毎分約108フィートの範囲となる。本明細書に記載された処理により達成されるラインスピードは、商業的に適量のCNT浸出繊維材料を短い製造時間で形成可能にする。例えば、毎分36フィートのラインスピードでは、独立した5つのトウ(1トウ当たり20ポンド)を同時に処理するように設計されたシステムにおいて、CNT浸出繊維(繊維上に5重量%超のCNTsが浸出する)の量は、1日の製造量で100ポンド以上に及ぶ。このシステムは、成長ゾーンを繰り返すことにより、一度に、又はより高速に大量のトウを製造するように構成されている。また、CNTsの製造工程の中には、当該技術分野で知られているように、連続運転モードを阻む極低速なものがある。例えば、当該技術分野で知られている標準的な処理において、CNT形成触媒還元工程を実施するのに1〜12時間かかる。また、CNT成長自体も時間を浪費しており、例えば、CNT成長に数十分を必要とするため、本願発明において実現される高速のラインスピードを不可能にしている。本明細書に記載された処理は、このような速度を制限する工程を取り除く。
【0069】
本願発明のCNT浸出繊維材料の形成処理は、前もって形成されたカーボン・ナノチューブの懸濁液を繊維材料に適用しようとする場合に生じるCNTの束化(bundling)を回避できる。すなわち、前もって形成されたCNTsは炭素繊維材料に結合しないため、CNTsは束になって絡み(entangle)やすくなる。その結果、炭素繊維材料に弱く付着するCNTsの均一な分布が不十分となる。しかし、本願発明の処理は、必要である場合には、成長密度を低減することにより、繊維材料の表面で高均一に絡み合ったCNTマットを提供できる。低密度で成長したCNTsは、最初に繊維材料に浸出する。このような実施形態において、繊維は、垂直配列を生じさせるほどには高密度に成長しない。その結果、炭素繊維材料表面で絡み合ったマットとなる。これとは対照的に、前もって形成されたCNTsを手作業で塗布する場合、炭素繊維材料上のCNTマットの分布及び密度を確実に均一にすることはできない。
【0070】
図15は、本願発明の具体例に従ってCNT浸出炭素繊維材料を生成する処理1500のフローチャートを示す。また、炭素繊維材料の使用は単なる例示である。
【0071】
処理1500には、少なくとも以下の工程が含まれる。
【0072】
工程1501:炭素繊維材料の官能化。
【0073】
工程1502:官能化された炭素繊維材料へのバリア・コーティング(barrier coating)及びCNT形成触媒の適用。
【0074】
工程1504:カーボン・ナノチューブを合成するのに十分な温度までの炭素繊維材料の加熱。
【0075】
工程1506:触媒を含んだ炭素繊維上におけるCVDを介したCNT成長の促進。
【0076】
工程1501において、炭素繊維材料は官能化され、繊維の表面湿潤を促進するとともに、バリア・コーティングの付着性を向上させる。
【0077】
炭素繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるために、カーボン・ナノチューブは、バリア・コーティングで等角的にコーティングされた炭素繊維材料上に合成される。1つの実施形態において、これは、工程1502のように、まず炭素繊維材料をバリア・コーティングで等角的にコーティングし、その後、バリア・コーティング上にナノチューブ形成触媒を配置することにより達成される。ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒配置前に、部分的に硬化していてもよい。これにより、CNT形成触媒と炭素繊維材料との表面接触が可能となるなど、触媒を受け入れてバリア・コーティング内へ埋め込むことのできる表面がもたらされる。このような実施形態では、バリア・コーティングは、触媒を埋め込んだ後、十分に硬化される。ある実施形態において、バリア・コーティングは、CNT形成触媒の配置と同時に炭素繊維材料全体にコーティングされる。CNT形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されると、バリア・コーティングは十分に硬化される。
【0078】
ある実施形態において、バリア・コーティングは、触媒の配置前に十分に硬化される。このような実施形態では、十分に硬化したバリア・コーティングを施した炭素繊維材料は、プラズマで処理され、触媒を受容するために表面を整える。例えば、硬化したバリア・コーティングを有するプラズマ処理された炭素繊維材料は、CNT形成触媒の配置が可能な粗面化した(roughened)表面を提供する。バリア・コーティングの表面を「粗面化(roughing)」するプラズマ処理は、触媒の配置を容易にする。粗度は、通常、ナノメートルのスケール(scale)である。プラズマ処理工程において、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター(crater)又はくぼみが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素及び水素など、種々異なる1以上のガスをプラズマに用いて達成される。ある実施形態では、プラズマによる粗面化は、炭素繊維材料自体に直接行われる。これにより、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの付着が容易になる。
【0079】
さらに図15を併用して後述されるように、また図15を併用して、触媒は、遷移金属ナノ粒子を含んで構成されるCNT形成触媒を含有する溶液として調整される。合成されたナノチューブの直径は、前述のように、金属粒子のサイズに関係する。ある実施形態では、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒を含有する工業用の分散液を利用して希釈せずに使用されるが、他の実施形態では、触媒を含有する工業用の分散液は希釈される。このように溶液を希釈するかどうかは、前述のように、成長するCNTの所望の密度及び長さによる。
【0080】
図15の具体例に関して、カーボン・ナノチューブの合成は、化学蒸着(CVD)処理に基づいて示されており、高温で生じる。具体的な温度は触媒の選択に応じて変化するが、通常は、約500℃〜約1000℃の範囲である。したがって、工程1504には、カーボン・ナノチューブの合成を補助する前記範囲における温度まで、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料を加熱することが含まれる。
【0081】
次に、工程1506において、触媒を含んだ炭素繊維材料上でCVDにより促進されるナノチューブ成長が行われる。CVD処理は、例えば、炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、及び/又はエタノール)により進められる。CNT合成処理では、主要なキャリアガスとして、通常、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)が用いられる。炭素原料は、混合物全体の約0%から約15%の範囲で供給される。CVD成長のための略不活性環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去して用意される。
【0082】
CNTの合成処理において、CNTsは、CNT形成遷移金属ナノ粒子触媒の部位で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、ナノチューブの成長に影響を与えることができる。すなわち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマ・スプレーの配置及び電界を適切に調節することにより、垂直配列の(すなわち、炭素繊維材料に対して垂直な)CNTsを合成できる。一定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したナノチューブは、成長方向を垂直に維持して、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のCNTsになる。また、バリア・コーティングの存在はCNT成長の方向性にも影響を与える。
【0083】
炭素繊維材料上に触媒を配置する工程は、溶液のスプレー、若しくは溶液の浸漬コーティングにより、又は、例えば、プラズマ処理を用いた気相蒸着により可能である。方法の選択は、バリア・コーティングが適用される方法と連係してなされる。このように、ある実施形態では、溶媒に含まれた触媒の溶液を形成した後、その溶液を用いて、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料にスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングの組み合わせにより、触媒が適用される。単独、又は組み合わせて用いられるいずれかの方法は、1回、2回、3回、4回、あるいは何回でも使用され、CNT形成触媒で十分均一にコーティングされた炭素繊維材料を提供する。浸漬コーティングが使用される場合、例えば、炭素繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、炭素繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、炭素繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、CNT形成触媒の溶液にさらされる。スプレー又は浸漬コーティングを用いて、CNT形成触媒ナノ粒子が略単分子層である、約5%未満から約80%の表面被覆率の触媒表面密度を備えた炭素繊維材料を処理する。ある実施形態では、炭素繊維材料上におけるCNT形成触媒のコーティング処理は、単分子層だけを生成すべきである。例えば、CNT形成触媒の積層上におけるCNT成長は、CNTの炭素繊維材料への浸出度を損なうことがある。他の実施形態では、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に知られている他の処理(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加することなど)を用いて、遷移金属触媒を炭素繊維材料上に配置する。
【0084】
本願発明の処理は連続処理となるように設計されるため、巻き取り可能な炭素繊維材料は、浸漬コーティング槽が空間的に分離されている一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能である。発生期の炭素繊維が新たに生成されている連続処理において、CNT形成触媒の浸漬又はスプレーは、炭素繊維材料にバリア・コーティングを適用して硬化又は部分的に硬化させた後の第1段階である。バリア・コーティング及びCNT形成触媒の適用は、新たに形成された炭素繊維材料のために、サイジング剤の適用に代えて行われるものである。他の実施形態において、CNT形成触媒は、バリア・コーティングの後、他のサイジング剤の存在下で、新たに形成された炭素繊維に適用される。このようなCNT形成触媒及び他のサイジング剤の同時適用であっても、CNT形成触媒を炭素繊維材料のバリア・コーティングと表面接触させて供給し、確実にCNTを浸出できる。
【0085】
使用される触媒溶液は、遷移金属ナノ粒子であるが、これは、前述したように、dブロックの遷移金属であればいかなるものでもよい。加えて、ナノ粒子には、元素形態又は塩形態のdブロック金属を含む、合金や非合金の混合物、及びそれらの混合物が含まれる。このような塩形態には、限定するものではないが、酸化物、炭化物及び窒化物が含まれる。限定されない例示的な遷移金属NPsには、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAg、並びにそれらの塩及び混合物が含まれる。ある実施形態において、バリア・コーティングの配置と同時に、CNT形成触媒を直接炭素繊維材料に適用あるいは浸出させることにより、このようなCNT形成触媒は炭素繊維上に配置される。この遷移金属触媒の多くは、例えば、Ferrotec Corporation(Beford, NH)などの様々なサプライヤーから市販されており容易に入手できる。
【0086】
炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用するために用いられる触媒溶液は、CNT形成触媒の全体にわたる均一な分散を可能とするいかなる共通溶媒にも含まれる。このような溶媒には、限定するものではないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又はCNT形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するために制御された極性を有する他のいかなる溶媒も含まれる。CNT形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、およそ1:1から1:10000の範囲内である。このような濃度は、バリア・コーティング及びCNT形成触媒が同時に適用されるときにも用いられる。
【0087】
ある実施形態において、炭素繊維材料は、CNT形成触媒の配置後、約500℃〜1000℃の温度で加熱されて、カーボン・ナノチューブを合成する。この温度での加熱は、CNT成長のための炭素原料の導入前に、又は略同時に行われる。
【0088】
ある実施形態において、本願発明により提供される処理には、炭素繊維材料からサイジング剤を除去し、炭素繊維材料全体に等角的にバリア・コーティングを適用し、炭素繊維材料にCNT形成触媒を適用し、炭素繊維材料を少なくとも500℃まで加熱し、そして、炭素繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成する工程が含まれる。ある実施形態において、CNT浸出処理の工程には、炭素繊維材料からのサイジング剤の除去、炭素繊維材料へのバリア・コーティングの適用、炭素繊維へのCNT形成触媒の適用、CNT合成温度までへの繊維の加熱、及び触媒含有炭素繊維材料におけるCVD促進のCNT成長が含まれる。このように、工業用の炭素繊維材料が使用される場合、CNT浸出炭素繊維を構成するための処理には、炭素繊維材料上に任意のバリア・コーティング及び触媒を配置する前に、炭素繊維材料からサイジング剤を除去する個別の工程が含まれる。
【0089】
カーボン・ナノチューブの合成工程には、同時係属の米国特許出願第2004/0245088号に開示され、参照により本明細書に組み込まれるものなど、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の技術が含まれる。本願発明の繊維上におけるCNTs成長は、限定するものではないが、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD技術、レーザー・アブレーション、アーク放電、高圧一酸化炭素(HiPCO)などの、当該技術分野において知られている技術により可能である。CVDの間、特に、CNT形成触媒が配置されバリア・コーティングが施された炭素繊維材料が直接用いられる。ある実施形態において、従来のいかなるサイジング剤もCNT合成前に除去可能である。ある実施形態において、アセチレンガスはイオン化されて、CNT合成のための低温炭素プラズマジェットを形成する。プラズマは触媒を有する炭素繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、炭素繊維材料上におけるCNTsの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)炭素繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長したCNTsの直径は、前述のように、CNT形成触媒のサイズにより決定される。ある実施形態において、サイジングされた繊維基材は約550℃〜約800℃に加熱され、CNTの合成を容易にする。CNTsの成長を開始するために、プロセスガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)の2つのガスが反応器(reactor)に流される。CNTsは、CNT形成触媒の部位で成長する。
【0090】
ある実施形態において、CVD成長はプラズマで助長される。プラズマは、成長処理中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長したCNTsは電界の方向に従う。したがって、反応器の配置を調節することにより、垂直配向のカーボン・ナノチューブが、円筒状の繊維の周囲から放射状に成長する。ある実施形態では、繊維の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要とされない。明確な面を有する炭素繊維材料(例えば、テープ、マット、織物、パイルなど)に対して、触媒は一面又は両面に配置され、それに対応して、CNTsも一面又は両面で成長する。
【0091】
前述のように、CNT合成は、巻き取り可能な炭素繊維材料を機能化する連続処理を行うのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0092】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は、「オール・プラズマ(all plasma)」処理で作られる。オール・プラズマ処理は、前述のように、プラズマによる炭素繊維材料の粗面化を伴って、これにより、繊維表面の湿潤特性を向上させ、より等角的なバリア・コーティングをもたらすとともに、アルゴン又はヘリウムをベースとしたプラズマ中に酸素、窒素、水素など特定の反応ガス種を用いた炭素繊維材料の機能化を利用して、機械的連結あるいは化学的接着を介してのコーティングの接着性を向上させる。
【0093】
バリア・コーティングの施された炭素繊維材料は、更なる多数のプラズマ介在工程を通って、最終的なCNT浸出製品を形成する。ある実施形態において、オール・プラズマ処理には、バリア・コーティングが硬化した後の第2の表面の改質が含まれる。これは、炭素繊維材料上のバリア・コーティング表面を「粗面化」して、触媒の配置を容易にするプラズマ処理である。前述のように、表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素、及び窒素などの種々異なる1以上のガスからなるプラズマを用いて実現できる。
【0094】
表面改質後、バリア・コーティングが施された炭素繊維材料は触媒の適用へと進む。これは、繊維上にCNT形成触媒を配置するためのプラズマ処理である。CNT形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、磁性流体、有機金属、金属塩、又は気相輸送を促進する他の組成物の形態で、前駆体としてプラズマ原料ガスに添加される。触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とせず、周囲環境の室温で適用可能である。ある実施形態では、炭素繊維材料が触媒の適用前に冷却される。
【0095】
オール・プラズマ処理を継続すると、カーボン・ナノチューブの合成がCNT成長反応器で生じる。これは、プラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、ここでは、炭素プラズマが、触媒を含む繊維にスプレーされる。カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜1000℃の範囲)で発生するので、触媒を含む繊維は炭素プラズマにさらされる前に加熱される。浸出処理のために、炭素繊維材料は、それが軟化するまで任意に加熱されてもよい。加熱後、炭素繊維材料は炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素を含むガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノールなど)を、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、スプレーノズルにより炭素繊維材料に向けられる。炭素繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、スプレーノズルから約1センチメートル以内など、スプレーノズルにごく近接している。ある実施形態においては、加熱器は、炭素繊維材料の上側のプラズマ・スプレーに配設され、炭素繊維材料を高温に維持する。
【0096】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成には、カーボン・ナノチューブを炭素繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器が含まれる。その反応器は、カーボン・ナノチューブを含む繊維を生成するための連続的なインライン処理用に設計される。ある実施形態において、CNTsは、化学蒸着(「CVD」)処理により、大気圧かつ約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。合成が大気圧で生じるということは、繊維上にCNTを合成するための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、CNTの成長が数秒単位で発生するということであり、当該技術分野で標準的な他の手段及び装置構成における数分単位(又はもっと長い)とは対照的である。
【0097】
様々な実施形態によるCNT合成反応器には、以下の特徴が含まれる。
【0098】
(矩形に構成された合成反応器)
当該技術分野で知られている標準的なCNT合成反応器は横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器にモデル化すると容易であり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英など)に容易に対応する)、並びに製造の容易性などの多くの理由がある。本願発明は、従来の円筒形状を変えて、矩形横断面を有するCNT合成反応器を提供する。変更した理由は以下の通りである。1.反応器により処理される多数の炭素繊維材料は、例えば、形状が薄いテープやシート状など相対的に平面的であるので、円形横断面では反応器の容積を効率的に使用していない。この非効率性は、円筒状のCNT合成反応器にとって、例えば、以下のa)ないしc)など、いくつかの欠点となる。a)十分なシステムパージの維持;反応器の容積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要になる。これは、開放環境におけるCNTsの大量生産には非効率なシステムとなる。b)炭素原料ガス流量の増大;前記a)のように、不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素原料ガス流量を増大させる必要がある。12Kの炭素繊維トウは、矩形横断面を有する合成反応器の全容積に対して2000分の1の容積であることを考慮されたい。同等の円筒状の成長反応器(すなわち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化された炭素繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、炭素繊維材料は、チャンバー容積の17,500分の1の容積である。CVDなどのガス蒸着処理(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、容積は蒸着の効率に顕著な影響を与える。矩形反応器の場合、それでもなお過剰な容積が存在する。この過剰容積は無用の反応を促進してしまうが、円筒状反応器は、その容積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会が増加することにより、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器チャンバーでは遅くなってしまう。このようなCNT成長の減速は連続処理の進行には問題となる。矩形反応器の構成の利点の1つは、矩形チャンバーの高さが低いことを利用することで、反応器の容積が低減され、これにより容積比が改善され反応がより効率的になるという点である。本願発明のある実施形態において、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して僅か約3000倍にしかすぎない。またある実施形態では、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して僅か約4000倍にしかすぎない。また更なる実施形態では、矩形合成反応器の全容積は、合成反応器を通過中の炭素繊維材料の全容積に対して約10,000倍未満である。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を供給するためには、より大量の炭素原料が必要である点に注目されたい。当然のことながら、実施形態の中には、合成反応器が、矩形ではないが比較的矩形に類似する多角形状で表される横断面を有し、円形横断面を有する反応器に対して反応器の容積を同様に低減するものがある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器が用いられた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるなど、サイズの増大に伴い、温度勾配は増加する。このような温度勾配により、炭素繊維材料基材の全域で製品品質がばらつく結果となる(すなわち、製品品質が半径位置の関数として変化する)。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。2.ガス導入:当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なCNT合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して、反応器の中心又は
対象とするゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分(CNT成長が最も活発な場所)に連続的に補充されるので、全体的なCNT成長速度が向上する。このような一定のガス補充は、矩形のCNT反応器により示される成長速度の向上にとって重要な側面である。
【0099】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーが矩形合成反応器の両端に従属する。出願人は、高温ガスが外部環境(すなわち、反応器の外部)と接触すると、炭素繊維材料の分解が増加するだろうと断定した。低温パージゾーンは、内部システム及び外部環境間の緩衝となる。当該技術分野で知られている標準的なCNT合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが必要とされる。本願の矩形CNT成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0100】
(非接触、ホットウォール型、金属製反応器)
ある実施形態において、金属製、特にステンレス鋼のホットウォール型(hot-walled)反応器が使用される。このことは、金属、特にステンレス鋼は炭素を析出(すなわち、すす及び副生成物の形成)しやすいため、常識に反するようにも考えられる。従って、大部分のCNT反応器の構造には、炭素の析出が少なく、また、石英は洗浄しやすく、試料の観察が容易であることから、石英反応器が使用されている。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上にすす及び炭素析出物が増加することにより、より着実、高速、効率的かつ安定的なCNT成長がもたらされるという点に着眼した。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で生じるCVD処理では拡散が制限されることが示されている。すなわち、触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素が触媒粒子に付着してCNTsの合成能力を低下させる。ある実施形態において、金属反応器壁にすすが析出して反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上の単分子層に一度析出すると、炭素は、それ自体を覆って析出しやすくなる。得られる炭素には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、触媒を被毒させない速度で触媒と反応する。既存のシステムが「清浄に」運転しても、連続処理のために開放状態であれば、成長速度が低下してCNTsの生産量は著しく小さくなる。
【0101】
CNT合成を、前述のように「汚れが付いて」いる状態で実施するのは概して有益であるが、それでも、装置のある部位(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、すすが閉塞状態を引き起こした場合、CNTの成長処理に悪影響を与える。この問題に対処するために、CNT成長反応チャンバーの当該部位を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgOなどのすす抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部位は、すす抑制コーティングで浸漬コーティングが施される。INVAR(商標名)は、高温におけるコーティングの接着性を確実にする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおけるすすの著しい堆積を抑制するので、例えば、INVARなどの金属がこれらのコーティングに用いられる。
【0102】
(触媒還元及びCNT合成の組み合わせ)
本明細書に開示されたCNT合成反応器において、触媒還元及びCNT成長のいずれもが反応器内で生じる。還元工程は、個別の工程として実施されると、連続処理に用いるものとして十分タイムリーに行われなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において知られている標準的な処理において、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本願発明によれば、両工程は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることによる。還元処理は、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる;この時点までに、ガスには、触媒と反応して(水素ラジカルの相互作用により)酸化還元を引き起こす前に反応器壁と反応して冷える時間がある。還元が起こるのは、この移行領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでCNTの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最速の成長速度が生じる。
【0103】
ある実施形態において、緩く関連する(loosely affiliated)炭素繊維材料(例えば、炭素トウ)が使用される場合、連続処理には、トウのストランド(strand)及び/又はフィラメントを広げる工程が含まれる。トウは巻き取られていないので、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される(spread)。サイジングされた比較的堅い炭素繊維を使用する場合、トウを「軟化」して開繊しやすくするために、更に加熱することができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積をさらせるよう十分バラバラに広がり、これにより、トウが、次の処理工程でより効率的に反応できるようにする。このような開繊により、3kトウの直径を約4インチ〜約6インチに近づけることができる。開繊された炭素トウは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。バリア・コーティングが適用され粗面化された後、次に、開繊繊維はCNT形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、繊維表面で放射状に分布した触媒粒子を有する炭素トウ繊維となる。触媒を含んだトウ繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバーなどの適切なCNT成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はPE−CVD処理を通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でCNTsを合成する。トウ繊維は、こうして放射状に配列されたCNTsを備えて、CNT成長反応器を出る。
【0104】
ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料は更に別の処理工程を経ることもできるが、それは、ある実施形態においては、CNTsを機能化するために用いられるプラズマ処理である。CNTsの更なる機能化は、特定の樹脂への接着力を促進するために用いられる。このように、ある実施形態では、本願発明が機能化されたCNTsを有するCNT浸出炭素繊維材料を提供する。
【0105】
巻き取り可能な炭素繊維材料の連続処理の一部として、最終製品にとって利点となる追加的なサイジング剤を適用するために、CNT浸出炭素繊維材料がサイジング剤の浸漬槽を更に通過してもよい。最終的にウェットワインディング(wet winding)が求められる場合、CNT浸出炭素繊維材料は、樹脂槽を経てマンドレル又はスプールに巻かれる。その結果得られた炭素繊維材料/樹脂の組み合わせは、CNTsを炭素繊維材料上に固着し、これにより、取り扱い及び複合材料の製造をよりたやすくする。ある実施形態において、CNT浸出は、向上したフィラメント・ワインディング(filament winding)を提供するために用いられる。このように、例えば、炭素トウなどの炭素繊維上に形成されるCNTsは、樹脂槽を経て、樹脂含浸処理されたCNT浸出炭素トウが生成される。樹脂含浸後、炭素トウは、デリバリー・ヘッド(delivery head)により、回転するマンドレルの表面上で位置を合わされる。そして、トウは、既知の方法による正確な幾何学的パターンでマンドレルに巻かれる。
【0106】
前述のワインディング処理により、パイプ、チューブ、又は雄型を介して特徴的に製造される他の形態がもたらされる。しかし、本明細書に開示されるワインディング処理から形成される形態は、従来のフィラメント・ワインディング処理から作られるものとは異なる。具体的には、本明細書に開示される処理において、その形態は、CNT浸出トウを含む複合材料から形成される。このため、このような形態にとって、CNT浸出トウによりもたらされる強度の向上などは有益となるであろう。
【0107】
ある実施形態において、巻き取り可能な炭素繊維材料上においてCNTsを浸出させる連続処理により、毎分約0.5フィート〜毎分約36フィートのラインスピードが可能となる。CNT成長チャンバーが、長さ3フィートで、750℃の成長温度で稼動するこの実施形態において、例えば、長さが約1ミクロン〜約10ミクロンのCNTsを製造するために、毎分約6フィート〜毎分約36フィートのラインスピードで処理が行われる。また、例えば、長さが約10ミクロン〜約100ミクロンのCNTsを製造するために、毎分約1フィート〜毎分約6フィートのラインスピードで処理が行われる。長さが約100ミクロン〜約200ミクロンのCNTsを製造するためには、毎分約0.5フィート〜毎分約1フィートのラインスピードで処理が行われる。CNTの長さは、ラインスピード及び成長温度のみに関係しているだけでなく、炭素原料ガス及び不活性ガスのいずれの流量もまたCNTの長さに影響を与える。例えば、高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分36フィート)で、不活性ガス中の炭素原料が1%未満からなる流量により、長さが1ミクロン〜約5ミクロンのCNTsが得られる。高速のラインスピード(毎分6フィート〜毎分約36フィート)で、不活性ガス中の炭素原料が約1%を上回る流量の場合には、5ミクロン〜約10ミクロンの長さを有するCNTsが得られる。
【0108】
ある実施形態においては、複数の炭素材料は同時に処理過程を通過する。例えば、複数のテープ、トウ、フィラメント、ストランドなどが並行して処理過程を通過する。こうして、炭素繊維材料の既製スプールはいくつでも並行に処理過程を通過して、処理が終わると再度巻き取られる。並行して通過して巻き取られる炭素繊維材料の数には、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は、最大でCNT成長反応チャンバーの幅に収まるいかなる数も含まれる。さらに、複数の炭素繊維材料が処理過程を通過する場合、回収スプール数は、処理開始時のスプール数よりも少なくなり得る。このような実施形態において、炭素ストランド、トウなどは、当該炭素繊維材料をより高い規則構造の炭素繊維材料(例えば、織物など)に結合する更なる処理を経て送り出される。また、連続処理には、例えば、CNT浸出短繊維マットの形成を容易にする後処理チョッパー(post processing chopper)を組み込みこむことができる。
【0109】
当然のことながら、本願発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を与えない変更も、本明細書で提供された本願発明の定義内に含まれる。したがって、以下の実施例は、本願発明を例示するものであって限定するものではない。
【実施例1】
【0110】
本実施例は、太陽熱受熱器に用いられるCNT浸出コーティングの製造及び1モデルの特性を示している。
【0111】
CNTベースのコーティングは、以下の手順により製造される。
【0112】
CNTsは、前記概略のように、オープンリール式のシステムにおいて(炭素繊維の例示である)炭素繊維トウに浸出する。その後、CNT浸出繊維トウは発熱体に巻き付けられ、必要に応じて更なる反射層が追加される。この手順により製造されるコーティングは、太陽熱選択コーティングとしての特性を表すことが予期される。CNT浸出繊維を使用したコーティングの正確な特性はCNTの長さ及び密度によって決まる。
【0113】
図16は、このようなCNT浸出繊維コーティングの1モデル、つまり、破線として示される理論的理想的なコーティングの重層を有したバッキーペーパー(Buckypaper)に関する反射率データを示している。発熱体の周囲に巻き付けられるCNT浸出繊維は、バッキーペーパーに類似するCNTsの配列を有している。バッキーペーパーにおけるCNTsの配列は、図17のSEM画像に示される。
【0114】
CNT浸出繊維を有するコーティングは、例えば、図18において1例として示されるように、太陽熱受熱器に組み込む吸熱要素の外面上に形成される。この太陽熱受熱器には、CNT浸出コーティングでコーティングされた吸熱要素を囲むアニュラスが含まれる。アニュラスは、その外面、内面又は両面に反射防止膜を備えたホウケイ酸ガラスであり、アニュラスを通して伝達する入射放射線量を最大化する。アニュラスは、(0.0001Torr以下に)減圧されて、CNT浸出コーティングとアニュラス間に存在する空気が対流することによって生じる熱損失を最小限にする。
【0115】
前述の発明を前記実施形態に関連して説明したが、本願発明の精神から逸脱することなく、様々な変更及び変換が可能である。したがって、全ての変更及び変換は、添付の特許請求の範囲の範囲内であると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面と該外面の反対側の内面を有する吸熱要素と、
前記吸熱要素の前記外面と表面で係合し、前記外面を少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んで構成される第1のコーティングと、
を含んで構成され、
前記第1のコーティングに入射する太陽放射線を受けて吸収し、そして熱エネルギーに変換するとともに、該熱エネルギーが前記第1のコーティングから前記吸熱要素へ伝達される太陽熱受熱器。
【請求項2】
前記吸熱要素は、第1の端部と第2の端部とを有し、熱伝達流体が、前記第1の端部で前記吸熱要素に流入し、前記第2の端部で前記吸熱要素から流出する請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項3】
前記吸熱要素が、ヒートパイプを含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項4】
前記吸熱要素が、金属を含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項5】
前記吸熱要素が、前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を収容するように形成された溝を備えた請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項6】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、カーボン・ナノチューブ浸出繊維トウを含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項7】
前記第1のコーティング内で一体化した環境コーティングを更に含んで構成されて、複合材料を形成する請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項8】
前記環境コーティングが、セラミックマトリックスを含んで構成された請求項7に記載の太陽熱受熱器。
【請求項9】
金属粒子を更に含んで構成された請求項7に記載の太陽熱受熱器。
【請求項10】
前記第1のコーティングに配設された環境コーティングを更に含んで構成され、
前記環境コーティングは、低放射率のコーティングを含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項11】
金属を含んで構成された環境コーティングを更に含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項12】
反射防止材料を含んで構成された環境コーティングを更に含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項13】
前記第1のコーティング及び前記吸熱要素を囲んでギャップを形成するアニュラスを更に含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項14】
前記ギャップが、空気を含んで構成された請求項13に記載の太陽熱受熱器。
【請求項15】
前記ギャップが、真空排気されている請求項13に記載の太陽熱受熱器。
【請求項16】
前記太陽熱受熱器が、発電システムと一体化して構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項17】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んで構成される第1のコーティングと、
該第1のコーティング上に配設される環境コーティングと、
を含んで構成される太陽熱受熱装置の多層コーティング。
【請求項18】
前記第1のコーティングが、セラミックマトリックスを更に含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項19】
前記第1のコーティングが、金属粒子を更に含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項20】
前記環境コーティングが、金属膜を含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項21】
前記環境コーティングが、反射防止膜を含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項22】
前記環境コーティングが、低放射率のコーティングを含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項1】
外面と該外面の反対側の内面を有する吸熱要素と、
前記吸熱要素の前記外面と表面で係合し、前記外面を少なくとも部分的に覆うカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んで構成される第1のコーティングと、
を含んで構成され、
前記第1のコーティングに入射する太陽放射線を受けて吸収し、そして熱エネルギーに変換するとともに、該熱エネルギーが前記第1のコーティングから前記吸熱要素へ伝達される太陽熱受熱器。
【請求項2】
前記吸熱要素は、第1の端部と第2の端部とを有し、熱伝達流体が、前記第1の端部で前記吸熱要素に流入し、前記第2の端部で前記吸熱要素から流出する請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項3】
前記吸熱要素が、ヒートパイプを含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項4】
前記吸熱要素が、金属を含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項5】
前記吸熱要素が、前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を収容するように形成された溝を備えた請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項6】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、カーボン・ナノチューブ浸出繊維トウを含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項7】
前記第1のコーティング内で一体化した環境コーティングを更に含んで構成されて、複合材料を形成する請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項8】
前記環境コーティングが、セラミックマトリックスを含んで構成された請求項7に記載の太陽熱受熱器。
【請求項9】
金属粒子を更に含んで構成された請求項7に記載の太陽熱受熱器。
【請求項10】
前記第1のコーティングに配設された環境コーティングを更に含んで構成され、
前記環境コーティングは、低放射率のコーティングを含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項11】
金属を含んで構成された環境コーティングを更に含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項12】
反射防止材料を含んで構成された環境コーティングを更に含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項13】
前記第1のコーティング及び前記吸熱要素を囲んでギャップを形成するアニュラスを更に含んで構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項14】
前記ギャップが、空気を含んで構成された請求項13に記載の太陽熱受熱器。
【請求項15】
前記ギャップが、真空排気されている請求項13に記載の太陽熱受熱器。
【請求項16】
前記太陽熱受熱器が、発電システムと一体化して構成された請求項1に記載の太陽熱受熱器。
【請求項17】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んで構成される第1のコーティングと、
該第1のコーティング上に配設される環境コーティングと、
を含んで構成される太陽熱受熱装置の多層コーティング。
【請求項18】
前記第1のコーティングが、セラミックマトリックスを更に含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項19】
前記第1のコーティングが、金属粒子を更に含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項20】
前記環境コーティングが、金属膜を含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項21】
前記環境コーティングが、反射防止膜を含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【請求項22】
前記環境コーティングが、低放射率のコーティングを含んで構成された請求項17に記載のコーティング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−523544(P2012−523544A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504838(P2012−504838)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/030300
【国際公開番号】WO2010/118176
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/030300
【国際公開番号】WO2010/118176
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
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