説明

カーリングウェーブ剤

【課題】カーリングウェーブ剤で、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液・第2液を構成することで、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭も発しないこと。
【解決手段】カール用ロットで髪の毛を巻いて固定し(S11)、第1液を満遍なく塗布し(S12)、スチーマーで約10分間髪を暖める(S13)ことによって、髪の毛のコルテックス内部のシスチン結合が切断される。続いて、第1液を洗い流し良く水分を切って(S14)、第2液を満遍なく塗布し(S15)、15分間から20分間放置する(S16)ことによって、切断されたシスチン結合が復元して、カール用ロットで巻かれた形状に髪の毛が固定される。ロットを髪から外し(S17)、温湯で洗髪して第2液を洗うが、この時洗った温湯(第2液が含まれる)を流さずに容器に貯め(S18)、貯めた温湯を髪の毛に2回から5回、繰り返し塗布する(S19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオグリコール酸アンモニウムを用いることなく髪に美しいウェーブのかかったカーリングウェーブ加工を行うことができるカーリングウェーブ剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーリングウェーブ加工のメカニズムについて、図2乃至図4を参照して説明する。図2は髪の毛(頭髪)の構造を示す模式図である。図3(a)〜(d)はカーリングウェーブ加工のメカニズムを示す模式図である。図4は従来のカーリングウェーブ加工の手順を示すフローチャートである。
【0003】
図2に示されるように、髪の毛1は3層構造になっており、最も外側がキューティクル(毛表皮)2で包まれ、その内側に髪の毛の本体とも言うべきコルテックス(毛皮質)3が細い繊維状に並んでおり、最も内側はメデュラ(毛髄質)4で構成されている。この中で、コルテックス(毛皮質)3は、髪の毛1の85%〜90%を占めるメラニン色素を多量に含む繊維状のタンパク質であり、このコルテックス3の形状によって髪の毛1の形状が決まると言える。
【0004】
図3(a)に示されるように、このコルテックス3はシスチン結合5によって形成されている。そこで、カーリングウェーブ加工においては、アルカリ性の「1液」によって図3(b)に示されるようにシスチン結合5を切断し、図3(c)に示されるようにコルテックス3を変形させ、その変形させた状態を保ったまま、酸性の「2液」によって図3(d)に示されるように切断されたシスチン結合5aを再び結合させてシスチン結合5を形成する。これによって、変形した形状に固定されたコルテックス3となり、髪の毛1にカーリングウェーブが施されることになる。
【0005】
具体的には、図4に示されるように、まず洗髪(ステップS30)した後、ウェーブ(カール)の大きさに合わせたカール用ロットで髪の毛を巻き(ステップS31)、カール用ロットを巻いた部分全体に「1液」を塗布する(ステップS32)。そして、10分間〜15分間放置(ステップS33)した後、アルカリ性のリンスをする(ステップS34)が、このリンスは省略される場合もある。温湯で洗髪(ステップS35)した後、「2液」を塗布して(ステップS36)、10分間〜15分間放置(ステップS37)した後、カール用ロットを外し(ステップS38)、洗髪(ステップS39)、乾燥する(ステップS40)。
【0006】
しかしながら、上記「1液」としては、劇薬であるチオグリコール酸アンモニウムを含む水溶液が一般に使用されることから、カーリングウェーブ加工の施術を受ける本人は頭皮に刺激を受けて痛みを感じ、カーリングウェーブ加工の施術を行う美容師・理容師等は手を保護するために手袋をはめなければならず、またチオグリコール酸アンモニウムを洗い流した水はそのまま下水道に排出されるため、地球環境保護の観点からも好ましくないとされている。また、上記「2液」としては、通常ブロム酸ナトリウムを含む水溶液が用いられるが、このブロム酸ナトリウムも刺激性があり、頭皮にとって好ましいものではない。
【0007】
そこで、特許文献1及び特許文献2においては、チオグリコール酸アンモニウム及びブロム酸ナトリウムを用いることなくカーリングウェーブ加工を行うことを目的として、新たなカーリングウェーブ剤を提案している。具体的には、特許文献1においては、海洋深層水等の深層水を濃縮して得られる苦汁と、酸及び/または塩基及び/または塩とを混合することによって得られるカーリングウェーブ液の発明について開示している。これによって、苦汁に含まれる多様なミネラルが頭皮細胞及び皮下組織に触媒的効果をもたらし、作業者の手荒れが抑制されるとしている。
【0008】
また、特許文献2においては、2−メルカプト−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、等の環状メルカプト化合物と、炭化水素類・アルコール類・フェノール類・アルデヒド類・合成ムスク類等の香料とを含有することを特徴とするカーリングウェーブ加工用薬剤の発明について開示している。これによって、中性から弱酸性のpH領域(pH3〜pH7.5)においても使用可能な「1液」となるとともに、香料によってメルカプト基に基づく不快臭がマスキングされるとしている。
【特許文献1】特開2004−155615号公報
【特許文献2】特開2006−298915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、深層水を濃縮して得られる苦汁3%とクエン酸3%の混合液を1000倍〜10000倍希釈してカーリングウェーブ液としており、別に従来の還元剤としての「1液」、即ちチオグリコール酸アンモニウム等の水溶液と、酸化剤としての「2液」、即ち臭素酸ナトリウム等の水溶液を使用しており、深層水からなる構造水による炎症軽減効果が期待されるものの、実質的効果はないものと考えられる。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の技術においては、中性から弱酸性のpH領域において使用できるというメリットはあるものの、従来の「1液」の主成分であるチオグリコール酸アンモニウムによるアンモニア臭と同等の不快臭を有する環状メルカプト化合物を使用しており、これに各種の香料を混合することによって不快臭をマスキングするものであるため、余計な成分が必要となり、コストアップになるとともに、そのまま洗い流すことによって環境汚染を引き起こすという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、人体及び生物に含まれる無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後に前記カール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で前記第2液を洗って、洗った温湯を髪の毛に繰り返し塗布するカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液と前記第2液からなるカーリングウェーブ剤であって、前記第1液はプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とし、前記第2液はタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とするものである。
【0013】
ここで、「繰り返し塗布する」とは2回〜5回塗布することを意味し、「アルカリ性水溶液」としては、貝化石の水溶液や海洋深層水等の自然界に存在するものを用いることができ、「酸性水溶液」としてはクエン酸等を用いることができる。
【0014】
請求項2の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後に前記カール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で前記第2液を洗って、洗った温湯に第3液を加えたものを髪の毛に繰り返し塗布するカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液と前記第2液と前記第3液からなるカーリングウェーブ剤であって、前記第1液はプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とするものであり、前記第2液はタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とするものであり、前記第3液はセリシン水溶液であるものである。
【0015】
請求項3の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1または請求項2の構成において、前記第1液の水素イオン指数(pH)は10〜14の範囲内であり、前記第2液の水素イオン指数(pH)は2〜5の範囲内であるものである。
【0016】
請求項4の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記第1液の前記アルカリ性水溶液は貝化石の水溶液または海洋深層水であるものである。
【0017】
請求項5の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記第1液はシステインを含有するものである。
【0018】
請求項6の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記第1液のアミノ酸(プロリンのみまたはプロリンとシステイン)の濃度は5重量%〜30重量%であるものである。
【0019】
請求項7の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記第2液の前記セリシンまたは前記1以上のアミノ酸の濃度は5重量%〜30重量%であるものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後にカール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で第2液を洗って、洗った温湯を髪の毛に繰り返し塗布するカーリングウェーブ工程において使用される第1液と第2液からなるカーリングウェーブ剤であって、第1液はプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とし、第2液はタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とする。
【0021】
ここで、「繰り返し塗布する」とは2回〜5回塗布することを意味し、「アルカリ性水溶液」としては、貝化石の水溶液や海洋深層水等の自然界に存在するものを用いることができ、「酸性水溶液」としてはクエン酸等を用いることができる。
【0022】
上述の如く、人の髪の毛はその85%〜90%がコルテックス(毛表皮)で構成されており、コルテックス内部のシスチン結合を還元剤で切ることによって髪の毛が自由に変形できるようになり、変形させた状態を保ったまま酸化剤でシスチン結合を復元させることによって、髪の毛の形状が固定されてカーリングウェーブがかかるものである。本発明に係るカーリングウェーブ剤においては、還元剤である第1液としてプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とするものを使用し、酸化剤である第2液としてタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とするものを使用している。
【0023】
ここで、第1液の成分である「プロリン」は、アミノ酸の一種でコラーゲンを構成する主要要素であり、美肌用サプリメント・美容健康食品や美肌化粧品として近年人気が高まっている。また、体内でも合成されている人体の構成物質でもある。したがって、還元剤としてコルテックス内部のシスチン結合を切断する機能を有するが、頭皮に優しく、不快な刺激を与える恐れが全くないばかりか、そのまま下水道に流されても環境を汚染する心配もない。したがって、第1液の成分である「アルカリ性水溶液」とともに用いても、頭皮に与える刺激は極めて少ない。
【0024】
また、第2液の成分である「セリシン」は、同じくタンパク質である「フィブロイン」とともに蚕の繭、即ち絹糸(シルク)を構成するタンパク質であり、酸化剤として切断されたシスチン結合を復元させる機能を有するが、蚕の繭の構成成分として自然界にも存在する環境に優しい物質であり、頭皮に刺激を与える恐れもない。したがって、第2液の成分である「酸性水溶液」とともに用いても、頭皮に与える刺激は極めて少ない。
【0025】
更に、第2液の成分としてセリシンの代わりに用いることができるバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸は、いずれもセリシンを構成するアミノ酸であり、セリシンがシスチン結合を復元させる機能を有するのは、これらのアミノ酸の存在によるものである。これらのアミノ酸は、単独でも、また2種以上を混合しても、酸化剤として切断されたシスチン結合を復元させる機能を有する。そして、これらのアミノ酸も環境にも頭皮にも優しいことは言うまでもない。
【0026】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0027】
請求項2の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後にカール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で第2液を洗って、洗った温湯に第3液を加えたものを髪の毛に繰り返し塗布するカーリングウェーブ工程において使用される第1液と第2液と第3液からなるカーリングウェーブ剤であって、第1液はプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とするものであり、第2液はタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とするものであり、第3液はセリシン水溶液である。
【0028】
本発明に係るカーリングウェーブ剤が上記請求項1に係るカーリングウェーブ剤と異なるのは、第1液と第2液に加えて第3液を用いる点にある。請求項1に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程において、第2液を洗った温湯を髪の毛に繰り返し塗布するのは、カーリングウェーブをかけた髪の毛をコーティングして、よりツヤを出すのが目的であるが、この第2液を洗った温湯に第3液としてセリシン水溶液を加えて髪の毛に繰り返し塗布することによって、一層髪の毛のツヤが増して、美しい仕上がりになる。
【0029】
そして、第3液もセリシン水溶液であるから、蚕の繭の構成成分として自然界にも存在する環境に優しい物質であり、頭皮に刺激を与える恐れもない。したがって、第1液も第2液も第3液も、頭皮に与える刺激は全くないか極めて少なく、環境にも優しい物質から構成されているため、環境破壊の恐れもなく、美しいカーリングウェーブをかけることができる。
【0030】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液及び第3液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもなく、しかもより美しい仕上がりが得られるカーリングウェーブ剤となる。
【0031】
請求項3の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液の水素イオン指数(pH)が10〜14の範囲内、より好ましくは12〜13の範囲内であり、第2液の水素イオン指数(pH)が2〜5の範囲内、より好ましくは3〜4の範囲内である。
【0032】
第1液は還元剤であるためアルカリ性である必要があり、pHが10〜14の範囲内である場合に、より好ましくは12〜13の範囲内である場合に、頭皮への刺激も少なく美容師等の手も荒れることなく、コルテックスのシスチン結合を切断する優れた効果が得られる。また、第2液は酸化剤であるため酸性である必要があり、pHが2〜5の範囲内である場合に、より好ましくは3〜4の範囲内である場合に、頭皮への刺激も少なく美容師等の手も荒れることなく、優れたシスチン結合の復元効果が得られる。
【0033】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0034】
請求項4の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液のアルカリ性水溶液が貝化石の水溶液または海洋深層水である。貝化石の水溶液及び海洋深層水は、自然界に存在するものであり、しかも強アルカリ性である。したがって、プロリンと混合することによって第1液を構成すれば、還元剤としてコルテックス内部のシスチン結合を切断することができ、カーリングウェーブ剤として用いることができるとともに、自然界に元々存在するものであるから環境を破壊する恐れもない。
【0035】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0036】
請求項5の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液がシステインを含有する。即ち、本発明に係るカーリングウェーブ剤の第1液は、プロリンとシステインとアルカリ性水溶液とからなるものである。これによって、プロリンによるシスチン結合を切断する効果がより強化されて、優れたカーリングウェーブ剤の第1液となる。
【0037】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0038】
請求項6の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液のアミノ酸(プロリンのみまたはプロリンとシステイン)の濃度が5重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%である。本発明者は、鋭意実験研究の結果、第1液のアミノ酸の濃度が5重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%である場合に、より優れたカーリングウェーブ効果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0039】
即ち、第1液のアミノ酸の濃度が5重量%未満であるとシスチン結合を切断する効果が低下して、効率の良いカーリングウェーブ効果が得られず、一方、第1液のアミノ酸の濃度が30重量%を超えると水溶液の粘性が高くなって、髪の毛に満遍なく塗布することが困難になる。したがって、第1液のアミノ酸の濃度は5重量%〜30重量%であることが好ましく、10重量%〜20重量%であることがより好ましい。
【0040】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0041】
請求項7の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第2液のセリシンまたは1以上のアミノ酸の濃度が5重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%である。本発明者は、鋭意実験研究の結果、第2液のセリシンまたは1以上のアミノ酸の濃度が5重量%〜30重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%である場合に、より優れたカーリングウェーブ効果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0042】
即ち、第2液のセリシンまたは1以上のアミノ酸の濃度が5重量%未満であるとシスチン結合を復元させる効果が低下して、仕上がりの美しいカーリングウェーブ効果が得られず、一方、第2液のセリシンまたは1以上のアミノ酸の濃度が30重量%を超えると水溶液の粘性が高くなって、髪の毛に満遍なく塗布することが困難になる。したがって、第2液のセリシンまたは1以上のアミノ酸の濃度は5重量%〜30重量%であることが好ましく、10重量%〜20重量%であることがより好ましい。
【0043】
このようにして、人体及び生物に含まれる無害な成分で第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程を示すフローチャートである。
【0045】
本実施の形態においては、第1液としてプロリン15重量%を含む貝化石水溶液(pH=12)を用い、第2液としてセリシン15重量%を含むクエン酸水溶液(pH=2.5)を用いた。プロリンの構造式を化1に示す。
【0046】
【化1】

【0047】
化1に示されるように、プロリン(proline)はピロリジン−2−カルボン酸であり、アミノ酸の一種である。コラーゲンを構成する主要要素であり、美肌用サプリメント・美容健康食品や美肌化粧品として、近年人気が高まっているものである。一方、セリシンは同じくタンパク質である「フィブロイン」とともに蚕の繭、即ち絹糸(シルク)を構成するタンパク質であり、蚕の繭の構成成分として自然界にも存在する環境に優しい物質である。セリシンを構成するアミノ酸の組成を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示されるように、セリシンを構成するアミノ酸の中でも、アスパラギン酸、セリン、グリシンの割合が特に多く、このうち最も多く含まれているセリンは、皮膚にコラーゲンを補う美肌化粧品等の化粧品の主成分として広く用いられているものであり、頭皮に対しても優しいアミノ酸である。セリンの構造式を化2に示す。
【0050】
【化2】

【0051】
このような第1液及び第2液を用いた本実施の形態に係るカーリングウェーブ工程について、図1を参照して説明する。図1においては、頭髪全体にカーリングウェーブ加工を行う場合について説明している。まず、髪全体に霧吹きで満遍なく水を塗布して湿らせ(ステップS10)、カール用ロット(「ロッド」とも言う。)で髪の毛を巻いて固定する(ステップS11)。その上から、第1液を満遍なく塗布し(ステップS12)、スチーマーで約10分間、髪を暖める(ステップS13)。これらの工程によって、髪の毛のコルテックス内部のシスチン結合が切断される。
【0052】
続いて、カール用ロットを巻いたまま洗髪して第1液を洗い流し、良く水分を切って(ステップS14)、第2液を満遍なく塗布し(ステップS15)、15分間から20分間放置する(ステップS16)。これらの工程によって、切断されたコルテックス内部のシスチン結合が復元して、カール用ロットで巻かれた形状に髪の毛が固定される。次に、カール用ロットを髪から外し(ステップS17)、温湯で洗髪して第2液を洗うが、この時洗った温湯(第2液が含まれる)を流さずに容器に貯める(ステップS18)。
【0053】
そして、貯めた温湯を髪の毛に2回から5回、繰り返し塗布する(ステップS19)。これによって、貯めた温湯に含まれるセリシン及び分解したアミノ酸によって髪の毛が被覆されて、ツヤのある美しい仕上がりとなる。後は、温湯で洗髪して(ステップS20)カーリングウェーブがかかった頭髪を乾燥して(ステップS21)仕上げる。
【0054】
このようにして、本実施の形態に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程においては、人体及び生物に含まれる無害な成分であるプロリン及びセリシンを主成分として第1液及び第2液を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも全くなく、不快臭を発することもない。
【0055】
本実施の形態においては、第1液にプロリンを15重量%、第2液にセリシンを15重量%混合した場合について説明したが、第1液にプロリンを5重量%〜30重量%、第2液にセリシンを5重量%〜30重量%混合した場合にも、同様なカーリングウェーブ効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施の形態においては、第1液をプロリンとアルカリ性水溶液としての貝化石水溶液で構成した場合について説明したが、第1液をプロリンとシステインとアルカリ性水溶液とで構成することもできる。また、第2液をセリシンと酸性水溶液としてのクエン酸水溶液で構成した場合について説明したが、第2液をバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とから構成することもできる。
【0057】
更に、本実施の形態においては、第1液のアルカリ性水溶液として貝化石水溶液を用いた場合について説明したが、それ以外にも海洋深層水や他のアルカリ性水溶液を使用することができる。また、第2液の酸性水溶液としてクエン酸水溶液を用いた場合について説明したが、その他の酸性水溶液を使用することもできる。
【0058】
本発明を実施するに際しては、カーリングウェーブ剤のその他の部分の構成、成分、配合、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、本実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は髪の毛(頭髪)の構造を示す模式図である。
【図3】図3(a)〜(d)はカーリングウェーブ加工のメカニズムを示す模式図である。
【図4】図4は従来のカーリングウェーブ加工の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 髪の毛
3 コルテックス(毛皮質)
5 シスチン結合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後に前記カール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で前記第2液を洗って、洗った温湯を髪の毛に繰り返し塗布するカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液と前記第2液からなるカーリングウェーブ剤であって、
前記第1液はプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とし、前記第2液はタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とすることを特徴とするカーリングウェーブ剤。
【請求項2】
カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後に前記カール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で前記第2液を洗って、洗った温湯に第3液を加えたものを髪の毛に繰り返し塗布するカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液と前記第2液と前記第3液からなるカーリングウェーブ剤であって、
前記第1液はプロリンとアルカリ性水溶液とを主成分とするものであり、前記第2液はタンパク質であるセリシンまたはバリン・セリン・アルギニン・アスパラギン酸・グルタミン酸からなる群から選ばれる1以上のアミノ酸と酸性水溶液とを主成分とするものであり、前記第3液はセリシン水溶液であることを特徴とするカーリングウェーブ剤。
【請求項3】
前記第1液の水素イオン指数(pH)は10〜14の範囲内であり、前記第2液の水素イオン指数(pH)は2〜5の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項4】
前記第1液の前記アルカリ性水溶液は貝化石の水溶液または海洋深層水であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項5】
前記第1液はシステインを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項6】
前記第1液のアミノ酸(プロリンのみまたはプロリンとシステイン)の濃度は5重量%〜30重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項7】
前記第2液の前記セリシンまたは前記1以上のアミノ酸の濃度は5重量%〜30重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−143787(P2008−143787A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329193(P2006−329193)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(506406548)
【Fターム(参考)】