説明

ガイドデバイス

【課題】心臓等の組織の拍動等を停止させることなく安定した視野を確保する。
【解決手段】患者の体内に挿入される内視鏡の挿入部の少なくとも先端に設けられた係合部に係合して、挿入部を長手方向に沿ってスライド可能に支持するガイドレール部材2と、該ガイドレール部材2の先端に設けられ、該ガイドレール部材2を体内の組織表面に着脱可能に固定する固定手段3とを備えるガイドデバイス1を提供する。これにより、心臓等の組織の拍動等を停止させることなく安定した視野を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用のガイドデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、拍動による影響を抑えて心臓の安定した手術を行うために、心臓表面にバーを押し付けて吸引することにより心臓を一時的に固定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。心臓を一時的に固定するので安定した視野の確保と操作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第97/10753号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、心臓表面を手術用テーブルや肋骨等の周囲の動かないものに固定して心臓を一時的に固定するので、患者にかかる負担が大きいという不都合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、心臓等の組織の拍動等を停止させることなく、内視鏡の安定した視野を確保することができるガイドデバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、患者の体内に挿入される内視鏡の挿入部の少なくとも先端に設けられた係合部に係合して、挿入部を長手方向に沿ってスライド可能に支持するガイドレール部材と、該ガイドレール部材の先端に設けられ、該ガイドレール部材を体内の組織表面に着脱可能に固定する固定手段とを備えるガイドデバイスを提供する。
【0006】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の患者の体内への挿入に先立って、ガイドレール部材を体内に挿入し、先端に設けられた固定手段を体内の目標部位近傍の組織表面に固定した状態で、内視鏡の挿入部の少なくとも先端に設けられた係合部をガイドレール部材に係合させて、ガイドレール部材に沿ってスライドさせることにより、挿入部の先端を目標部位近傍までスムーズに導くことができる。そして、ガイドレール部材と係合部とを係合させたままの状態に維持することにより、挿入部を組織に固定して、組織の脈動等に関わらず、内視鏡による安定した視野を確保することができる。すなわち、本発明によれば、心臓等の組織を周囲の動かないものに固定しないので、その拍動等を停止させることなく、患者にかかる負担を軽減しつつ、安定した観察を行うことができる。
【0007】
上記発明においては、前記固定手段が、負圧により前記組織表面に吸着する吸着部を備えていてもよい。
このようにすることで、吸着部に負圧を供給して組織に吸着させることによって、ガイドレール部材の少なくとも先端を簡易に組織に固定することができる。また、負圧の供給を停止することで簡易に固定を解除することができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記吸着部が、複数の吸引孔を配列した吸着面を有する吸着パッドを備えていてもよい。
このようにすることで、広い範囲にわたって吸着面を組織表面に固定することができ、内視鏡の体内への挿入および内視鏡による観察をより安定して行うことができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記ガイドレール部材に、その長手方向に沿って、前記吸着面に負圧を供給する吸気流路が設けられていてもよい。
このようにすることで、細長いガイドレール部材野中に吸気流路を形成して、体内に挿入し易いコンパクトな形態に構成することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記吸着パッドが、前記吸着面に直交する軸線回りに、前記ガイドレール部材に揺動可能に取り付けられていてもよい。
このようにすることで、吸着すべき組織表面の状態に合わせて吸着パッドを揺動させて適正な吸着状態を確保することができる。また、吸着面に複数の吸引孔が設けられている場合には、吸引孔がガイドレール部材の長手方向に交差する方向に配列されるように吸着パッドを揺動させることにより、ガイドレール部材のねじれによる内視鏡の回転を抑えることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記固定手段が、前記組織に引っ掛けられる1以上のフック部材を備えていてもよい。
このようにすることで、フック部材を組織に引っかけることによって、ガイドレール部材を機械的に組織に固定することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記固定手段が、膨張により前記組織の凹部に係合されるバルーン部材を備えていてもよい。
このようにすることで、バルーン部材を収縮させた状態でガイドレール部材を体内に挿入し、膨張させることにより組織の凹部に係合させて、ガイドレール部材をを組織に固定することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記固定手段が、前記組織を把持する把持鉗子を備えていてもよい。
このようにすることで、把持鉗子によって組織を把持することでガイドレール部材を組織に固定することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記ガイドレール部材の少なくとも一部に、X線不透過性の材料からなる可視化手段が設けられていてもよい。
このようにすることで、患者の体内に挿入された状態で、X線撮影することによって、ガイドレール部材に設けられた可視化手段によりガイドレール部材の位置や形態を患者の体外から確認することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記ガイドレール部材の少なくとも一部に、磁石からなる可視化手段が設けられていていてもよい。
このようにすることで、患者の体内に挿入された状態で、体外に配置した磁気センサによって、ガイドレール部材に設けられた可視化手段の位置を検出し、ガイドレール部材の位置や形態を患者の体外から確認することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記ガイドレール部材の先端部に、該ガイドレール部材の先端の方向を変更する湾曲部が設けられていてもよい。
このようにすることで、ガイドレール部材を患者の体内に挿入する際に、湾曲部を湾曲させてガイドレール部材の先端の方向を変更し、所望の方向に容易に挿入していくことができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記係合部が、前記挿入部に長手方向に沿って設けられたチャネルであってもよい。
このようにすることで、患者の体内にガイドレール部材を挿入して固定手段により体内の組織に固定した状態で、ガイドレール部材の基端側から該ガイドレール部材をチャネル内に挿入した挿入部を体内に挿入していくことにより、ガイドレール部材にそって挿入部を安定して目標部位まで導くことができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記係合部が、前記挿入部に固定されたスライダ部材であってもよい。
このようにすることで、患者の体内に挿入されて固定されたガイドレール部材に対してスライダ部材をスライドさせることで、該スライダ部材が固定されている挿入部をガイドレール部材に沿って容易に目標部位まで導くことができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記ガイドレール部材が、長手方向に直交する方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
このようにすることで、複数のガイドレール部材に係合部を契合させることによって、挿入部の長手軸線回りの回転を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、心臓等の組織の拍動等を停止させることなく安定した視野を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るガイドデバイスの先端部を示す斜視図であり、(a)吸着パッドをガイドレール部材に沿う方向に配置した状態、(b)吸着パッドをガイドレール部材に直交する方向に配置した状態をそれぞれ示す図である。
【図2】図1のガイドデバイスを示す縦断面図である。
【図3】図1のガイドデバイスを用いた内視鏡の挿入部の挿入作業を説明する説明図である。
【図4】図1のガイドデバイスのガイドレール部材と係合部の第1の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1のガイドデバイスのガイドレール部材と係合部の第2の変形例を示す斜視図である。
【図6】図1のガイドデバイスのガイドレール部材と係合部の第3の変形例を示す斜視図である。
【図7】図1のガイドデバイスのガイドレール部材と係合部の第4の変形例を示す斜視図である。
【図8】図1のガイドデバイスのガイドレール部材および固定手段の変形例を示す斜視図である。
【図9】図1のガイドデバイスの係合部の変形例を示す正面図である。
【図10】図1のガイドデバイスのガイドレール部材および固定手段の他の変形例を示す斜視図である。
【図11】図1のガイドデバイスの係合部の他の変形例を示す正面図である。
【図12】図8および図9のガイドデバイスを用いた側視内視鏡の挿入部の挿入作業を説明する説明図である。
【図13】図1のガイドデバイスの変形例であって、固定手段としてフック部材を有する場合の動作を説明する縦断面図である。
【図14】図1のガイドデバイスの変形例であって、固定手段としてバルーン部材を有する場合を説明する図である。
【図15】図1のガイドデバイスの変形例であって、固定手段として把持鉗子を有する場合を説明する図である。
【図16】図1のガイドデバイスのガイドレール部材に備えられる可視化手段の変形例を示す横断面図である。
【図17】図1のガイドデバイスのガイドレール部材に備えられる湾曲部の一例を示す横断面図である。
【図18】図1のガイドデバイスの固定手段の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るガイドデバイス1について、図面を参照して以下に説明する。本実施形態においては、内視鏡の挿入部を心臓Aと心嚢膜Bとの間の心膜腔C内に挿入する場合を例に挙げて説明する。
本実施形態に係るガイドデバイス1は、内視鏡を体内に安定して挿入しかつ支持するためのデバイスであって、図1に示されるように、体内に挿入される細長く柔軟なガイドレール部材2と、該ガイドレール部材2の先端を体内の組織(例えば、心臓A)に固定する固定手段3とを備えている。
【0023】
ガイドレール部材2は、図1および図2に示されるように、内視鏡の挿入部に長手軸に沿って設けられ、先端開口から鉗子等の処置具を出没させるための鉗子チャネル(係合部)内を移動できるように、鉗子チャネルの内径よりも小さい外径寸法を有する管状に形成されている。ガイドレール部材2内には、長手方向に沿って、ほぼ全長にわたって2つの貫通孔4,5が設けられている。一方の貫通孔4は、基端側において吸引することにより、先端側に負圧を供給する吸気流路を形成している。他方の貫通孔5は、固定手段3の回転用に使用される。
【0024】
固定手段3は、ガイドレール部材2の先端に、その長手方向に直交する軸体6a回りに回転可能に支持された吸着パッド6を備えている。吸着パッド6は、細長い帯板状に形成され、その一面に複数の吸引孔6bが開口する吸着面6cを備えている。吸着面6cの各吸引孔6bは前記ガイドレール部材2内の貫通孔4に接続されている。貫通孔4の基端側において吸引すると、その負圧が各吸引孔6bに供給される結果、近接する組織表面に吸着面6cを吸着させることができるようになっている。
【0025】
ガイドレール部材2の貫通孔5には、吸着パッド6を回転させるためのワイヤ7が挿入されている。ワイヤ7は吸着パッド6に固定された軸体6aに巻かれており、ガイドレール部材3の基端側に露出するワイヤ7を引くことにより、軸体6aをその軸線回りに回転させ。軸体6aに固定されている吸着パッド6を回転させることができるようになっている。
また、ワイヤ7は、X線不透過性の金属材料により構成されている。
【0026】
このように構成された本実施形態に係るガイドデバイス1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るガイドデバイス1を用いて、内視鏡により体内の組織、例えば、心臓Aの外表面に存在する壊死部位D等を観察するには、図3(a)に示されるように、内部にガイドレール部材2および吸着パッド6を収容した状態のガイドシース8を剣状突起Eの下部から心膜Bを貫通して心膜腔C内に挿入する。
【0027】
このとき、吸着パッド6は、軸体6a回りに回転させることにより、ガイドレール部材2の長手方向に沿って配置しておく(図1(a)の状態)。これにより、細長いガイドシース8内に容易に挿入することができ、かつ、ガイドシース8に対して長手方向にスムーズに移動させることができる。
【0028】
また、ガイドレール部材2の長手方向の前進を容易にするために、吸気流路を構成する貫通孔4内には、可撓性を有する金属材料からなる芯金(図示略)を挿入しておく。これにより、ガイドレール部材2自体が柔らかい材料によって構成されていても、芯金の剛性によってガイドレール部材2に張りを持たせてスムーズに前進させることができる。
【0029】
そして、ガイドシース8の先端部が、心膜腔C内に配置された状態で、図3(b)に示されるように、ガイドシース8内のガイドレール部材2をガイドシース8の先端開口8aから押し出す。吸着パッド6が所望の目標位置近傍に配置された時点で、基端側においてワイヤ7を引くことにより、図3(c)に示されるように、吸着パッド6を軸体6a回りに回転させ、ガイドレール部材2に対して略直交する方向に配置する(図1(b)の状態)。
【0030】
そして、ガイドレール部材2の吸気流路を構成する貫通孔4内に挿入されていた芯金を基端側から引き抜いて、図示しないポンプを接続し、貫通孔4を介して吸着パッド6の吸着面6cに開口する各吸引孔6bに負圧を供給する。これにより、吸着面6cに心臓Aの表面を吸着させることができ、ガイドレール部材2が心臓Aの表面に固定されることになる。
【0031】
この状態で、鉗子チャネル内にガイドレール部材2を貫通させた内視鏡の挿入部9をガイドシース8の基端側からガイドシース8内に挿入し、図3(d)に示されるように、ガイドシース8を介してその先端部を心膜腔C内に挿入する。
ガイドレール部材2が心臓Aの表面に固定されているので、該ガイドレール部材2を鉗子チャネル内に挿通させることによって、内視鏡の挿入部9の半径方向の移動が拘束され、かつ、挿入部9のガイドレール部材2に沿う移動が案内される。
【0032】
この場合に、ガイドレール部材2が心臓Aに固定されるので、心臓Aの拍動に追従して挿入部9を移動させることができ、心臓Aの拍動にかかわらず、挿入部9の先端を目的部位まで安定的に導くことができる。また、心臓Aの拍動にかかわらず、ほぼ静止した壊死部位D等の患部の画像を内視鏡に取得させることが可能となる。すなわち、心臓Aの拍動を止めることなく安定した挿入作業および観察を行うことができるという利点がある。
【0033】
この場合において、本実施形態に係るガイドデバイス1によれば、吸着パッド6をガイドレール部材2の長手方向に直交する方向に配置して心臓Aの表面に吸着させるので、挿入部9に係るねじれに抗して挿入部9の姿勢が変動しないように維持することができる。
【0034】
なお、本実施形態に係るガイドデバイス1においては、ガイドレール部材2を管状に形成し、挿入部9に設けられた鉗子チャネル内に挿通させることにより、鉗子チャネルを係合部として機能させることとした。これに代えて、図4および図5に示されるように、ガイドレール部材2の外面に長手方向に沿うアリ溝10またはアリ状の突起11を設け、該アリ溝10あるいは突起11に長手方向に移動可能に係合されるアリ状の突起12または凹部(係合部)13を挿入部9に設けることにしてもよい。また、図6および図7に示されるように、アリ状の凹部10,13または突起11,12は、挿入部9にスライダ部材14として外付けすることにしてもよい。図6および図7は、挿入部9の外面に固定する環状のスライダ部材14を例示している。
【0035】
また、本実施形態においては、単一のガイドレール部材2を有する場合について説明したが、これに代えて、図8および図10に示されるように、平行間隔をあけて配置される2本以上のガイドレール部材2を備えていてもよい。この場合、図9に示されるように、両ガイドレール部材2に係合可能な係合部13を有するスライダ部材14を挿入部9に固定することにすればよい。
【0036】
このようにすることで、挿入部9を周方向に間隔をあけた2カ所以上において拘束することができ、挿入部9の長手軸回りの回転をより容易に抑制することができる。
また、この場合には、ガイドレール部材2の間に隙間を設けることができ、該隙間を介した側視または斜視の内視鏡による観察および処置具による処置を容易に行うことができる。この場合のガイドレール部材2と係合部13とはアリ状に形成してもよいし、図10および図11に示されるように、ワイヤ16と該ワイヤ16を貫通させる貫通孔17とにより構成してもよい。
【0037】
側視または斜視の内視鏡を用いた観察および処置を行う場合には、図12(a)に示されるように、ガイドデバイス1の固定時には挿入部9の先端方向を観察する直視型の内視鏡18を用いてガイドデバイス1の固定位置の確認を行う。その後、図12(b)に示されるように、観察および処置に際して直視型の内視鏡18を抜き去って、図12(c)に示されるように、側視または斜視の内視鏡19に交換することにしてもよい。図中、符号19aは湾曲部、符号19bは観察窓、符号19cは処置具である。観察窓内には図示しない観察光学系が収容されている。
【0038】
内視鏡19をガイドシース8の先端開口8aから突出させた後には、図12(d)に示されるように、湾曲部19aを作動させて、観察窓19bと心臓Aの表面との距離を確保することにより、壊死部位D等の患部を鮮明に観察し、その状態で処置具19cによる処置を施すことができる。
【0039】
また、ガイドレール部材2を固定する固定手段3としては、吸着パッド6に代えて、図13に示されるように、心臓Aに引っ掛けられる鉤状のフック部材20を固定手段3として採用してもよい。図13に示される例では、例えば、挿入部9の鉗子チャネル(図示略)を介して、外筒部材(ガイドレール部材)21に収容した状態のフック部材20を体内に挿入する。
【0040】
すなわち、図13(a)に示されるように、外筒部材21に収容した折り畳んだ状態のフック部材20を体内において外筒部材21の先端開口21aから突出させることにより、図13(b)に示されるように先端の鉤部20aを開いて引っ掛かり易くし、図13(c)に示されるように、若干後退させることによって心臓A等の組織に引っ掛けることができる。これにより、負圧のような動力を供給することなく、外筒部材21の先端を心臓A等の組織に固定することができる。なお、フック部材20は1つに限られるものではなく、複数のフック部材20を突出させて引っ掛けることにしてもよい。
【0041】
また、組織に凹凸がある場合、例えば、心臓Aの表面の凹凸を利用できる場合には、固定手段3としては、図14に示されるように、バルーン部材22を採用してもよい。すなわち、上記と同様に鉗子チャネルを介して挿入部9の先端から突出させられたバルーン部材22を、心膜腔C内の心臓A表面の凹部近傍で膨張させることにより、心膜Bと心臓A表面との間に挟んだ状態に固定することができる。
【0042】
また、バルーン部材22に代えて、図15に示されるように、把持鉗子23を固定手段3として用いてもよい。すなわち、同様に鉗子チャネルを介してガイドレール部材2の先端に設けた把持鉗子23を操作して心臓A表面を把持することにより、ガイドレール部材2を心臓A表面に固定することができる。把持鉗子23としては、把持部に組織に食い込ませる複数の突起23aを有するものが望ましい。
【0043】
また、吸着パッド6を回転させるためのワイヤ7をX線不透過性の材料によって構成することで、X線撮影によって体外からガイドレール部材2の状態を確認することを可能としたが、図16に示されるように、樹脂製のガイドレール部材2に部分的に白金、鉛、タングステンのようなX線不透過性の金属薄膜24を配置することにしてもよい。
【0044】
また、ガイドレール部材2にはその長手方向に間隔をあけて複数の磁石(可視化手段:図示略)が取り付けられていてもよい。このようにすることで、ガイドレール部材2が患者の体内に挿入された状態でも、体外に配置された磁気センサ(図示略)によって磁石の位置を検出して、ガイドレール部材2の形態を画像上に可視化することができる。
【0045】
また、ガイドレール部材2の先端部近傍にガイドレール部材2がそれ自体で湾曲することができる湾曲部2aを設けることにしてもよい。湾曲部2aは、図17に示されるように基端側から導いてきた2本のワイヤ25をガイドレール部材2に固定することにより構成することができる。
【0046】
また、吸着パッド6として、ガイドレール部材2の先端に回転可能に取り付けられたものを例示したが、これに代えて、ガイドレール部材2に固定されていてもよい。また、複数の吸引孔6bを有する場合には、図18に示されるように、ガイドレール部材2の長手方向に間隔をあけて吸引孔6bを配置することにしてもよい。
【0047】
また、吸着パッド6に設けられた複数の吸引孔6bに独立に負圧を供給することが好ましい。すなわち、心臓Aの組織の表面は平坦ではないため、全ての吸引孔6bを同時に吸着状態とすることができない場合があり、そのような場合においても、負圧が独立に供給されていることにより、複数の吸引孔6bがそれぞれ別個に吸着状態を達成することができる。
【0048】
また、本実施形態においては、内視鏡を適用する体内の部位として、心臓Aと心膜Bとの間の心膜腔Cを例示したが、これに限定されるものではなく、他の任意の組織に適用することにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
A 心臓(組織)
1 ガイドデバイス
2 ガイドレール部材
2a 湾曲部
3 固定手段
4 貫通孔(吸気流路)
6 吸着パッド(吸着部)
6b 吸引孔(吸着部)
6c 吸着面(吸着部)
9 挿入部
12,13 係合部
14 スライダ部材
18,19 内視鏡
20 フック部材
22 バルーン部材
23 把持鉗子
24 可視化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内に挿入される内視鏡の挿入部の少なくとも先端に設けられた係合部に係合して、挿入部を長手方向に沿ってスライド可能に支持するガイドレール部材と、
該ガイドレール部材の先端に設けられ、該ガイドレール部材を体内の組織表面に着脱可能に固定する固定手段とを備えるガイドデバイス。
【請求項2】
前記固定手段が、負圧により前記組織表面に吸着する吸着部を備える請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項3】
前記吸着部が、複数の吸引孔を配列した吸着面を有する吸着パッドを備える請求項2に記載のガイドデバイス。
【請求項4】
前記ガイドレール部材に、その長手方向に沿って、前記吸着部に負圧を供給する吸気流路が設けられている請求項2に記載のガイドデバイス。
【請求項5】
前記吸着パッドが、前記吸着面に直交する軸線回りに、前記ガイドレール部材に揺動可能に取り付けられている請求項3に記載のガイドデバイス。
【請求項6】
前記固定手段が、前記組織に引っ掛けられる1以上のフック部材を備える請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項7】
前記固定手段が、膨張により前記組織の凹部に係合されるバルーン部材を備える請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項8】
前記固定手段が、前記組織を把持する把持鉗子を備える請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項9】
前記ガイドレール部材の少なくとも一部に、X線不透過性の材料からなる可視化手段が設けられている請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項10】
前記ガイドレール部材の少なくとも一部に、磁石からなる可視化手段が設けられている請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項11】
前記ガイドレール部材の先端部に、該ガイドレール部材の先端の方向を変更する湾曲部が設けられている請求項1に記載のガイドデバイス。
【請求項12】
前記係合部が、前記挿入部に長手方向に沿って設けられたチャネルである請求項1から請求項11のいずれかに記載のガイドデバイス。
【請求項13】
前記係合部が、前記挿入部に固定されたスライダ部材である請求項1から請求項11のいずれかに記載のガイドデバイス。
【請求項14】
前記ガイドレール部材が、長手方向に直交する方向に間隔をあけて複数設けられている請求項1から請求項11のいずれかに記載のガイドデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−200913(P2010−200913A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48456(P2009−48456)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】