説明

ガイドローラ及び繊維束配列装置

【課題】ガイドローラに撚りがない繊維束が巻き付かないようにする。
【解決手段】ガイドローラ34は、支軸341に嵌合して固定される筒部44と、筒部44の両端に一体形成されたフランジ45,46と、フランジ45,46間に架設された円柱形状の複数の接触バー47とを備えている。複数の接触バー47は、ガイドローラ34の回転軸線340と平行となるように、且つ回転軸線340から等距離の位置にあるように、環状に配列されている。繊維束Fは、複数の接触バー47のうちの一部に接触するように、ガイドローラ34に巻き掛けられる。複数の接触バー47は、繊維束Fを接触させるガイド周面Sを回転軸線340の周りに形成する。フランジ45,46には複数の通口451,461が貫設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドローラのガイド周面に撚りがない繊維束を接触させて前記繊維束を案内するガイドローラ及び繊維束配列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量の構造材料として広く使用されている繊維強化複合材のうち、三次元織物(三次元繊維構造体)を強化材として使用したものは、強度が非常に高く、航空機等の構造材として一部使用されている。このような繊維強化複合材の強化材に使用する三次元繊維構造体の製法としては、繊維束を折り返し状に配列した繊維束層を複数積層して少なくとも2軸配向となる積層繊維束群を形成し、その積層繊維束群を各繊維束層と直交する方向に配列される厚さ方向糸で結合する三次元繊維構造体の製造方法がある。特許文献1には、配列面に沿って移動されるガイドパイプから繊維束を繰り出しながら、所定ピッチで配置したピン間に繊維束を偏平な状態で、かつ繊維束の偏平な面が配列面に沿った状態で折り返し状に配列して繊維束層を形成する繊維束配列装置が開示されている。
【0003】
繊維束の供給源から送り出される繊維束は、複数のガイドローラのガイド周面に接してガイドパイプまで導かれる。複数のガイドローラのうちの一部は、モータによって駆動され、モータによって駆動されるガイドローラは、そのガイド周面の周速が繊維束の移送速度(つまりガイドパイプの移動速度)よりも速くなるように、回転される。これは、繊維束の移送を円滑に行うためである。
【特許文献1】特開2007−16347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、モータによって駆動されるガイドローラの周速が大きい場合には、ガイドローラのガイド周面の周囲に随伴気流が生じ、繊維束の単繊維がこの随伴気流によってガイドローラのガイド周面に巻き付けられてしまうことがある。単繊維が1本でも切れて、単繊維がガイドローラに一旦巻き付けられると、他の単繊維も引きつられてガイドローラに巻き付けられてゆき、結果的には繊維束がガイドローラに巻き付けられてしまう。そうすると、ガイドパイプに繊維束を供給することができなくなる。
【0005】
本発明は、撚りがない繊維束がガイドローラに巻き付かないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガイドローラのガイド周面に撚りがない繊維束を接触させて前記繊維束を案内するガイドローラを対象とし、請求項1の発明は、前記ガイドローラが、その回転によって前記ガイドローラの側面から空気を導入して前記ガイドローラのガイド周面の外部へ吹き出させる空気流路を有することを特徴とする。
【0007】
ガイドローラが回転すると、その側面から空気が空気流路に導入されてガイド周面から吹き出す。ガイド周面の外部へ吹き出す空気流は、切れた単繊維のガイドローラへの巻き付きを防ぐ。
【0008】
好適な例では、前記ガイドローラは、前記ガイドローラの回転による遠心力によって前記空気流路内の空気を前記ガイド周面の外部へ空気を移送する吹き出し口を備えている。
ガイドローラが回転すると、空気流路内の空気が遠心力によってガイド周面から吹き出し、ガイドローラへの単繊維の巻き付きが防止される。
【0009】
好適な例では、前記ガイド周面は、前記ガイドローラの回転軸線の周りに複数の接触バーを環状に配列して形成されており、前記吹き出し口は、隣り合う前記接触バー間の間隙である。
【0010】
ガイドローラが回転すると、隣り合う接触バー間の空気が遠心力によって外部へ吹き出し、ガイドローラへの単繊維の巻き付きが防止される。
好適な例では、前記接触バーは、前記ガイドローラの回転方向に向かうにつれて前記回転軸線に近づいてゆく降り坂となる降り面を備えている。
【0011】
このような降り面は、前記ガイドローラの回転に伴って空気をガイド周面から外方へ放出する。ガイド周面から外方へ放出される空気は、ガイドローラへの単繊維の巻き付きを防止する。
【0012】
好適な例では、前記ガイドローラは、その回転軸線を包囲する筒部を備え、前記筒部の筒内は、前記ガイドローラの側面に開口しており、前記ガイド周面は、前記筒部の外周面であり、前記吹き出し口は、前記ガイド周面から前記筒部を貫通して前記筒内に達する通路である。
【0013】
ガイドローラが回転すると、通路内の空気が遠心力によってガイド周面の外部へ吹き出し、ガイドローラへの単繊維の巻き付きが防止される。
好適な例では、前記ガイドローラは、前記ガイドローラの回転によって前記側面から空気を前記空気流路内へ積極的に取り入れるファンを備えている。
【0014】
ガイドローラの回転によって前記側面からファンを介して空気流路内へ空気が移送されると、空気流路内の空気がガイド周面の外部へ押し出され、ガイドローラへの単繊維の巻き付きが防止される。
【0015】
好適な例では、前記ガイドローラは、回転駆動可能である。
好適な例では、前記ガイドローラは、前記ガイド周面の周速が前記繊維束の移送速度よりも大きい速度で駆動可能である。
【0016】
ガイド周面の周速が繊維束の移送速度よりも大きくなるように駆動されるガイドローラは、本発明の適用対象として特に好適である。
好適な例では、前記ガイドローラを備え、ボビンから繰り出される繊維束を偏平な状態で配列する繊維束配列装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ガイドローラに撚りがない繊維束が巻き付かないようにすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を繊維束配列装置に具体化した第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1(a)は、繊維束配列装置10の全体を示す。
図2(a)に示すように、長方形状のベース11上には一対のリニアスライダ12,13がベース11の長手方向(以下においてはX軸方向という)に延びるように設けられている。リニアスライダ12は、図示しないボールネジ機構と、ボールネジ機構によってX軸方向に移動される移動体121とを備え、リニアスライダ13は、図示しないボールネジ機構と、ボールネジ機構によってX軸方向に移動される移動体131とを備えている。リニアスライダ12,13の各ボールネジ機構は、同期して駆動され、移動体121,131は、同期してX軸方向へ移動する。
【0019】
移動体121,131上にはリニアスライダ14がX軸方向と直交する方向(以下においてはY軸方向という)に延びるように架設されている。リニアスライダ12,13が作動すると、リニアスライダ14は、X軸方向へ平行移動する。リニアスライダ14は、図示しないボールネジ機構と、ボールネジ機構によってY軸方向に移動される移動体141とを備えている。
【0020】
図1(a)に示すように、移動体141には支持フレーム15が設けられている。支持フレーム15には正逆転可能なモータ16が固定されている。モータ16の出力軸であるネジ軸161であり、ネジ軸161は、上下方向(以下においてはZ軸方向という)に向けられている。ネジ軸161にはナット部18が螺合されており、ナット部18には支持プレート17が止着されている。ネジ軸161が回転すると、支持プレート17がZ軸方向に移動する。
【0021】
支持フレーム15の上部にはブラケット19が固定されており、ブラケット19には支軸20がZ軸方向に延びるように、且つ回転可能に支持されている。支軸20には支持板21が止着されており、支持板21上にはモータ22及びボビンホルダ23が支持されている。ボビンホルダ23には繊維束Fからなるボビン24が装着されており、ボビン24は、モータ22の作動によって繊維束Fを繰り出す方向〔図1(a)に矢印Rで示す方向〕に回転される。繊維束Fは、多数本の単繊維を撚らないで偏平形状に束ねて形成されている。
【0022】
支持板21には支柱33が立設されており、支柱33の上部には一対のガイドローラ34,35及びモータ36が取り付けられている。ガイドローラ34,35は、モータ36の作動によって積極的に回転される。ガイドローラ34,35の下方にはテンションローラ37が上下動可能に配設されている。又、支柱33の下部にはガイドロ−ラ38が自由回転可能に取り付けられている。ボビン24から繰り出される繊維束Fは、ガイドローラ34,35、テンションローラ37及びガイドロ−ラ38によって支持板21の下方へと案内される。繊維束Fは、テンションローラ37を含む張力付与機構によって適正な張力を付与されるようになっている。
【0023】
支持プレート17にはモータ25が固定されている。モータ25の出力軸251は、Z軸方向に向けられており、出力軸251には支持ブラケット26が止着されている。モータ16が作動すると、モータ25及び支持ブラケット26がZ軸方向に移動する。支持ブラケット26は、モータ25の作動により出力軸251を中心にして回動する。支持ブラケット26には連結バー27がZ軸方向に向けて立設されている。連結バー27は、支持板21に形成された孔を貫通し、且つ支持板21に係合するように設けられている。支持ブラケット26がZ軸方向に移動すると、連結バー27は、Z軸方向へ移動するが、モータ25が作動すると、支持ブラケット26、連結バー27及び支持板21が出力軸251を中心にして一体的に回動する。
【0024】
出力軸251の直下における支持ブラケット26の下部には配列ヘッド28が取り付けられている。配列ヘッド28は、繊維束Fを繰り出すガイドパイプ29を備えている。図3(b)に示すように、ガイドパイプ29内のガイド孔291は、偏平形状にしてあり、ガイドパイプ29は、繊維束Fを偏平な状態でガイド孔291から繰り出す。
【0025】
支持ブラケット26にはガイドローラ30,31及びモータ32が取り付けられている。ガイドローラ30は、モータ32によって矢印Qの方向に回転するように積極的に駆動され、ガイドローラ31は、自由回転する。ガイドロ−ラ38を経由して案内された繊維束Fは、ガイドローラ31,30を介してガイドパイプ29内へ導かれる。
【0026】
図2(a)に示すように、ベース11上には枠体39が設置されている。枠体39は、長方形状に形成されており、枠体39の上面にはピン40が枠体39の周辺に沿って所定ピッチ(例えば、数mmピッチ)で配列されている。ガイドパイプ29は、モータ16の作動によって適宜の高さ位置に配置されると共に、リニアスライダ12,13の作動とリニアスライダ14の作動との組み合わせによって、X軸方向、Y軸方向又はバイアス方向に移動される。ガイドパイプ29がX軸方向、Y軸方向又はバイアス方向に移動されることにより、ガイドパイプ29内を導かれている繊維束Fがピン40に掛け止められながらガイドパイプ29から引き出されてゆく。図3(a)は、繊維束Fをピン40に掛け止めながら繊維束Fを配列してゆく一例を示す。
【0027】
なお、ピン40の周りでガイドパイプ29を反転させるように移動してピン40に繊維束Fを掛け止めるとき以外には、ガイドパイプ29は、ガイドパイプ29から繰り出される繊維束Fの偏平な面がガイドパイプ29の移動方向を向くように、モータ25の作動によって向きを調整される。図2(a)に実線で示す支持板21の配置状態は、ガイドパイプ29から繰り出される繊維束Fの偏平な面がX軸方向を向いた状態であり、図2(a)に鎖線で示す支持板21の配置状態は、ガイドパイプ29から繰り出される繊維束Fの偏平な面がY軸方向を向いた状態である。
【0028】
図2(b)に示すように、ガイドローラ34,35の支軸341,351は、ベアリング41,42を介して支柱33に回転可能に支持されており、支軸341,351には被動ギヤ342,352が止着されている。被動ギヤ342にはモータ36の駆動ギヤ361が噛合されており、被動ギヤ342,352には伝達ギヤ43が噛合されている。モータ36の駆動ギヤ361が回転されると、ガイドローラ34,35は、互いに同じ方向〔図1(a)に矢印Pで示す方向〕に回転される。
【0029】
ガイドローラ34,35及びガイドローラ30は、いずれも同じ構成であるので、以下においてはガイドローラ34の構成についてのみ説明する。
図1(b)に示すように、ガイドローラ34は、支軸341に嵌合して固定される筒部44と、筒部44の両端に一体形成されたフランジ45,46と、フランジ45,46間に架設された円柱形状の複数の接触バー47とを備えている。図1(c)に示すように、フランジ45,46には複数の通口451,461が貫設されている。複数の接触バー47は、ガイドローラ34の回転軸線340と平行となるように、且つ回転軸線340から等距離の位置にあるように、環状に配列されている。隣り合う接触バー47間の距離は、同一にしてある。繊維束Fは、複数の接触バー47のうちの一部に接触するように、ガイドローラ34に巻き掛けられる。複数の接触バー47は、繊維束Fを接触させるガイド周面Sを回転軸線340の周りに形成する。
【0030】
以下においてはガイドローラ34の回転に伴う作用について説明するが、ガイドローラ35,30の回転に伴う作用もガイドローラ34の場合と同じである。
繊維束配列装置10の作動開始に伴い、ガイドローラ34が矢印Pの方向に回転される。ガイドローラ34のガイド周面Sを形成する接触バー47の周速は、ガイドパイプ29の移動速度(つまり、繊維束Fの移送速度)よりも大きくなるようにしてある(例えば、繊維束Fの移送速度の1.5倍)。複数の接触バー47に接触するようにガイドローラ34に巻き掛けられている繊維束Fは、ガイドローラ34の回転に伴って、ボビン24に巻かれている繊維束Fを引き出すように移送される。接触バー47の周回に伴い、隣り合う接触バー47間の間隙K〔図1(c)に図示〕にある空気は、遠心力や、接触バー47の送風作用によって、回転軸線340を中心とする半径方向の外部側へ移送(放出)される。接触バー47の送風作用は、接触バー47の前進側、且つ回転軸線340を中心とする半径方向の外部側にある接触バー47の周面領域E〔図1(c)に図示〕の前進によって、回転軸線340を中心とする半径方向の外部側へ移送(放出)されるものと推考する。周面領域Eは、ガイドローラ34の回転方向(矢印Pの方向)に向かうにつれて回転軸線340に近づいてゆく降り坂となる降り面となる。
【0031】
隣り合う接触バー47間の間隙Kにある空気がガイド周面Sの外部へ移送されるに伴い、ガイドローラ34の側面343,344〔図1(b)に図示〕から空気が通口451,461を介してフランジ45,46間、且つガイド周面Sの内部N〔図1(c)に図示〕へ導入される。つまり、ガイドローラ34の回転に伴い、ガイド周面Sの内部Nの空気がガイド周面Sの外部へ送り出される。
【0032】
ガイドローラ34のガイド周面Sの周囲には随伴気流が生じ、この随伴気流が接触バー47から離れてゆこうとする繊維束Fの単繊維をガイドローラ34に巻き付けようとする。ガイド周面Sの内部Nからガイド周面Sの外部へ送り出される空気の流れは、この巻き付けを阻止する。
【0033】
通口451,461及びガイド周面Sの内部Nは、ガイドローラ34の回転によってガイドローラ34の側面343,344から空気を導入してガイド周面Sの外部へ吹き出させる空気流路を構成する。隣り合う接触バー47間の間隙Kは、ガイド周面Sの内部Nからガイド周面Sの外部へ空気を移送する吹き出し口である。
【0034】
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)ガイド周面Sの内部Nからガイド周面Sの外部へ吹き出す空気流は、ガイドローラ34への単繊維の巻き付きを防ぐ。その結果、ガイドローラ34への繊維束Fの巻き付きが回避され、繊維束Fは安定してガイドローラ34へ供給される。
【0035】
(2)間隙Kは、一方のフランジ45から他方のフランジ46に至るため、ガイド周面Sに巻き掛けられている繊維束Fの幅全体がガイド周面Sの内部Nからガイド周面Sの外部へ吹き出す空気流に晒される。そのため、ガイドローラ34への繊維束Fの巻き付きが確実に回避される。
【0036】
(3)複数の接触バー47を円環状に配列した構成は、ガイド周面Sの内部Nの空気をガイド周面Sの外部へ移送する吹き出し口〔間隙K〕を形成する上で簡便である。間隙Kが小さいほど、遠心力による空気移送効果が高くなる。
【0037】
(4)ガイドローラ34のガイド周面Sの周速は、繊維束Fの移送速度よりも大きくなるようにしてある。ガイド周面Sに接して案内される繊維束Fの移送速度がガイド周面Sの周速よりも小さい場合には、ガイド周面Sから離れてゆこうとする単繊維は、繊維束Fの移送速度よりも大きい周速で回転するガイド周面Sの周囲に生じる随伴気流によって、ガイドローラ34に特に巻き込まれ易い。
【0038】
ガイド周面Sの周速が繊維束Fの移送速度よりも大きくなるように駆動されるガイドローラ34は、本発明の適用対象として特に好適である。
次に、図4の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0039】
第2の実施形態では、平板形状の接触バー47Aがガイド周面Sを形成している。接触バー47Aは、ガイドローラ34Aの回転方向(矢印Pの方向)に向かうにつれて回転軸線340に近づいてゆく降り坂となる平面の降り面471を接触バー47Aの前進側に備えている。降り面471は、ガイドローラ34Aの回転に伴ってガイド周面Sの内部Nの空気をガイド周面Sの外部へ放出する。
【0040】
第2の実施形態では、第1の実施形態における(1),(2)項と同様の効果が得られる。
次に、図5(a),(b)の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0041】
図5(b)に示すように、ガイドローラ34Bは、回転軸線340を包囲する筒部48を備えており、筒部48の筒内481は、ガイドローラ34Bの側面343に開口している。図5(a)に示すように、筒部48の外周面は、ガイド周面Sbであり、複数の通路49がガイド周面Sbから筒部48を貫通して筒内481に達するように回転軸線340を中心とする半径方向に貫設されている。ガイドローラ34Bの回転に伴い、通路49内の空気が遠心力によってガイド周面Sbの外部へ放出され、これに伴ってガイドローラ34Bの側面343から空気が筒内481へ流入する。筒内481及び通路49は、ガイドローラ34Bの回転によってガイドローラ34Bの側面343から空気を導入してガイド周面Sbの外部へ吹き出させる空気流路を構成する。
【0042】
第3の実施形態では、第1の実施形態における(1)項と同様の効果が得られる。
次に、図6(a),(b)の第4の実施形態を説明する。第3の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0043】
図6(a)に示すように、ガイドローラ34Cのフランジ45,46間の外周面にはスリット50が回転軸線340の方向に延びるように形成されている。図6(b)に示すように、ガイドローラ34C内には複数の導入通路51がガイドローラ34Cの一方の側面343から他方の側面344へ貫設されている。導入通路51は、回転軸線340を中心とする半径方向の通路52を介してスリット50の底に連通されている。ガイドローラ34Cの回転に伴い、スリット50内の空気及び通路52内の空気が遠心力によってガイド周面Scの外部へ放出され、これに伴ってガイドローラ34Cの側面343,344から空気が導入通路51へ流入する。導入通路51、通路52及びスリット50は、ガイドローラ34Cの回転によってガイドローラ34Cの側面343,344から空気を導入してガイド周面Scの外部へ吹き出させる空気流路を構成する。通路52及びスリット50は、ガイドローラ34Cの回転による遠心力によってガイド周面Scの外部へ空気を移送する吹き出し口である。
【0044】
通路52からスリット50に流出した空気は、スリット50の長さ方向にある程度広がりながらガイド周面Scの外部へ吹き出し、ガイド周面Sに巻き掛けられている繊維束Fの幅全体がガイド周面Sの外部へ吹き出す空気流に晒される。
【0045】
第4の実施形態では、第1の実施形態における(1),(2)項と同様の効果が得られる。
次に、図7(a),(b)の第5の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合が用いてある。
【0046】
ガイドローラ34Dは、一対のフランジ45D,46Dと、フランジ45D,46D間に架設された複数の接触バー47と、フランジ45Dと支軸341とに嵌合して固定されたファン53とを備えている。ガイドローラ34Dの回転に伴い、ファン53は、フランジ45Dの側面343からガイド周面Sの内部Nへ空気を送り込む。これにより、ガイド周面Sの内部Nの空気が隣り合う接触バー47間の間隙Kからガイド周面Sの外部へ吹き出す。
【0047】
第5の実施形態では、第1の実施形態における(1)項と同様の効果が得られる。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○ガイドローラの側面からガイド周面に向かうエアチューブをガイドローラ内に配設して空気流路を形成してもよい。この場合、ガイドローラの側面側に開口するエアチューブの一方の口がガイド周面側に開口するエアチューブの他方の口よりもガイドローラの回転軸線に近い位置にあるようにすればよい。このようにすれば、ガイドチューブ内の空気がガイドローラの回転に伴う遠心力によって、ガイド周面の外部へ放出される。
【0048】
○第2の実施形態において、回転軸線340を中心とする半径方向に沿うように複数の接触バー47Aを放射状に配設してもよい。この場合、ガイドローラ34Aの回転に伴い、隣り合う接触バー47間の空気は、遠心力によってガイド周面Sの外部へ放出される。
【0049】
○モータによって回転駆動されないガイドローラ(図示の例ではガイドローラ31,38)に本発明を適用してもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想を以下に記載する。
【0050】
〔1〕前記吹き出し口は、前記ガイドローラの外周面に前記回転軸線の方向に延びるように設けられた複数のスリットである請求項2に記載のガイドローラ。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)は、繊維束配列装置10の側面図。(b)は、部分拡大断面図。(c)は、図1(b)のA−A線断面図。
【図2】(a)は、繊維束配列装置10の一部省略平断面図。(b)は、部分拡大平断面図。
【図3】(a)は、繊維束Fの配列を示す斜視図。(b)は、ガイドパイプの部分拡大斜視図。
【図4】第2の実施形態を示す部分拡大断面図。
【図5】第3の実施形態を示し、(a)は、部分拡大断面図。(b)は、図5(a)のB−B線断面図。
【図6】第4の実施形態を示し、(a)は、部分拡大断面図。(b)は、図6(a)のC−C線断面図。
【図7】第5の実施形態を示し、(a)は、部分拡大断面図。(b)は、図7(a)のD−D線断面図。
【符号の説明】
【0052】
10…繊維束配列装置。24…ボビン。34,34A,34B,34C,34D…ガイドローラ。340…回転軸線。343,344…側面。47,47A…接触バー。471…降り面。48…筒部。481…筒内。49,51…空気流路を構成する通路。53…ファン。S,Sb,Sc…ガイド周面。F…繊維束。K…吹き出し口としての間隙。E…降り面としての周面領域。P,Q…回転方向を示す矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドローラのガイド周面に撚りがない繊維束を接触させて前記繊維束を案内するガイドローラにおいて、
前記ガイドローラは、その回転によって前記ガイドローラの側面から空気を導入して前記ガイドローラのガイド周面の外部へ吹き出させる空気流路を有するガイドローラ。
【請求項2】
前記ガイドローラは、前記ガイドローラの回転による遠心力によって前記空気流路内の空気を前記ガイド周面の外部へ空気を移送する吹き出し口を備えている請求項1に記載のガイドローラ。
【請求項3】
前記ガイド周面は、前記ガイドローラの回転軸線の周りに複数の接触バーを環状に配列して形成されており、前記吹き出し口は、隣り合う前記接触バー間の間隙である請求項2に記載のガイドローラ。
【請求項4】
前記ガイド周面は、前記ガイドローラの回転軸線の周りに複数の接触バーを環状に配列して形成されており、前記接触バーは、前記ガイドローラの回転方向に向かうにつれて前記回転軸線に近づいてゆく降り坂となる降り面を備えている請求項1に記載のガイドローラ。
【請求項5】
前記ガイドローラは、その回転軸線を包囲する筒部を備え、前記筒部の筒内は、前記ガイドローラの側面に開口しており、前記ガイド周面は、前記筒部の外周面であり、前記吹き出し口は、前記ガイド周面から前記筒部を貫通して前記筒内に達する通路である請求項2に記載のガイドローラ。
【請求項6】
前記ガイドローラは、前記ガイドローラの回転によって空気を前記側面から前記空気流路内へ積極的に取り入れるファンを備えている請求項1に記載のガイドローラ。
【請求項7】
前記ガイドローラは、回転駆動可能である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガイドローラ。
【請求項8】
前記ガイドローラは、前記ガイド周面の周速が前記繊維束の移送速度よりも大きい速度で駆動可能である請求項7に記載のガイドローラ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のガイドローラを備え、ボビンから繰り出される繊維束を偏平な状態で配列する繊維束配列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−260609(P2008−260609A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104132(P2007−104132)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】