説明

ガスが小型の樽にポンプ圧送される飲料供給装置

空気を圧縮するためのポンプ手段7と、飲料を小型の樽2から押し出すために、圧縮されたガスを前記ポンプ手段7から当該小型の樽2へと輸送するためのガス輸送手段8とを有する、飲料を含む小型の樽2を格納するための飲料供給装置。当該飲料供給装置は、圧縮された空気が通過することができる空間を包囲している膜10を有し、これにより、窒素が当該膜10を通過することができるよりも、酸素が当該膜を非常に速く通過することができ、この結果、前記小型の樽2へと輸送される前記ガス中の酸素のパーセンテージが減じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを圧縮するためのポンプ手段と、飲料を小型の樽から押し出すために、圧縮されたガスを前記ポンプ手段から前記小型の樽へと輸送する手段と、飲料供給装置からの飲料出力を制御するために、飲料を前記小型の樽から供給蛇口へと輸送するための手段とを有する、飲料を含む小型の樽を格納するための飲料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
斯様な飲料供給装置が、米国特許公開公報US‐A‐2006/0131325に開示されている。この刊行物は、家庭用ビール供給装置について記述しており、ビールを含む小型の樽が、装置内に置かれている。当該供給装置は、小型の樽を冷却するため、及びビールを飲むのに適した温度に保つための手段を具備している。当該供給装置は、ビールを装置の供給蛇口へと押し出すために、空気を小型の樽内にポンプで注入するためのポンプ手段も具備している。小型の樽の内部でビールは、可撓性プラスチック材料で作られた容器内に含まれており、圧縮された空気が、可撓性容器と小型の樽の内壁との間の空間に供給される。当該容器のプラスチック材料は、ビールが小型の樽から押し出される間に容器を変形させるために必要とされる柔軟性を得るために、比較的薄い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ビール及び他の飲料は、限られた期間の間のみ、貯蔵されることができる。概して、飲料が酸素と接触しているとき、この期間の長さは短縮される。酸素は、飲料の品質(味わい)への顕著な悪影響をもち、加圧された小型の樽の寿命を限定することであろう。これゆえ、小型の樽が飲料を押し出すために開栓されない限り、酸素は小型の樽内にはない。小型の樽が開栓された後、酸素との接触を妨げるため、及び長い期間の間、飲料の品質を維持するために、飲料は、空気の代わりに窒素又はCO2のようなガスによって小型の樽から押し出されることができる。
【0004】
しかしながら、空気は至る所に在り、これゆえ、飲料を小型の樽から押し出すために、空気を利用することは好都合である。空気は、およそ窒素を79%及び酸素を20%含んでいる。飲料と空気との間の接触を減らすために、飲料は、小型の樽内部の可撓性の容器内に格納されることができ、圧縮空気は、当該容器の外側に在る。しかし、飲料が小型の樽内部で可撓性の容器によって包囲されているときでさえ、空気中の酸素は時間が経過すると、特に、可撓性の容器が比較的に薄いプラスチック材料である場合、容器の可撓性の材料を通過することであろう。酸素は窒素より最高10倍速く、容器のプラスチック材料を通過する(拡散する)ことが知られている。これ以降、「拡散する」及び「拡散」という表現が、ガスが浸透性の材料を通過する場合に使われるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、空気が、飲料を小型の樽から押し出すために圧縮され、飲料と酸素との間の接触が減じられる、飲料を含む小型の樽を格納するための飲料供給装置である。
【0006】
この目的を実現するために、当該飲料供給装置は、圧縮された空気が通過することができる、空間を包囲している膜を有し、当該膜は窒素に対してよりも酸素に対して、より高い透過率をもち、この結果、小型の樽へと輸送されるガス中の酸素のパーセンテージが減じられる。
【0007】
この態様にて、窒素が膜を通過することができるよりも、酸素が膜を非常により速く通過することができ、この結果、小型の樽へと輸送されるガス中の酸素のパーセンテージが減じられる。飲料供給装置の使用時には、ポンプ手段がガス輸送手段に圧力を供する間、ガス輸送手段内のガスは圧縮され、この結果、膜を通じた酸素の拡散が、供給蛇口が閉じている比較的長期間の間にも連続的に起きることができる。
【0008】
膜によって囲まれた空間を有する膜モジュールであって、当該空間内の酸素は膜を通過することができ、より大きな分子をもつ、膜を通るガスの拡散は限定され、この結果、この空間内のガス中の酸素のパーセンテージが減じられる当該膜モジュールが、例えば米国特許公報US‐A‐4542010から知られている。斯様な膜モジュールによって、圧縮された空気中の酸素のパーセンテージは著しく減じられることができ、ガス中の酸素のパーセンテージは0.5%、又は、より低い値でさえ実現されることができる。飲料供給装置で斯様な膜を利用することによって、飲料に対する酸素の暴露のかなりの減少が得られることができ、結果として、小型の樽内の飲料の寿命の有意な増大になる。実際には、両方のガス、酸素及び窒素が、膜を通じて拡散することであろう。しかしながら、酸素は窒素より非常に速く拡散し、この結果、ガス中の酸素のパーセンテージが減少することであろう。
【0009】
本発明の好ましい実施例では、冷却手段が小型の樽を冷却するために存在し、少なくともガス輸送手段の一部が、前記冷却手段によって冷却される。好ましくは、ガス輸送手段の一部は、冷却手段の近くに位置する。膜を通じた酸素の拡散速度と窒素の拡散速度との違いは、膜の温度を低下させることによって、著しく増加され、飲料を冷やすための冷却手段が、ガス輸送手段を冷却するためにも使われることができる。従って、ガス輸送手段を冷却することによって、ガス中の酸素の低いパーセンテージが実現されることができる。
【0010】
好ましくは、ガス輸送手段は、管状の膜を有し、これによって、圧縮されたガスは、管状の膜を通じてポンプ手段から小型の樽へと輸送される。既存の飲料供給装置では、圧縮された空気をポンプ手段から小型の樽へと輸送するための管が、管状の膜と置き換えられることができ、これによって、管状の膜は、既存の管よりも大変長く作られることができ、管状の膜の大部分が、飲料供給装置の冷却手段の近くに位置することができる。これによって、飲料供給装置の既存の設計が維持されることができる。
【0011】
好ましい実施例では、ガス輸送手段は、ファイバを通じて圧縮されたガスが輸送される、平行関係にある多数の中空の膜ファイバを有する。膜が中空のファイバから成る膜モジュールは、国際特許公開公報WO‐A‐2006/009449に記述されている。中空ファイバ膜モジュールは、比較的小さな寸法をもつことができ、この結果、当該モジュールは、容易に飲料供給装置内に存在することができる。さらにまた、比較的大きな膜の表面が得られることができ、膜によって包まれる空間の量は、比較的小さい。
【0012】
本発明は、ここで、圧縮ガスを小型の樽へと輸送するためのガス輸送手段を有する、ビールを含む小型の樽を格納するための家庭用ビール供給装置の実施例の説明を用いて、更に説明されることだろう。ここで、ガス輸送手段は、圧縮されたガスが通過することができる、空間を包囲している膜を有し、これにより、小型の樽に供給されるガス中の酸素のパーセンテージが減じられる。ここで、家庭用ビール供給装置の縦断面図を示している、一つの図を有する図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】家庭用ビール供給装置の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図に示した実施例は家庭用ビール供給装置であるが、しかし、同様の装置が他の炭酸入り飲料及び/又はアルコール飲料を供するために使われることができる。図示された装置は、供されるビールの流出を制御するための蛇口1を有する。当該蛇口1は、案内部3によって小型の樽2と接続されている。当該小型の樽2は、供給装置によって囲まれている。小型の樽2の内部には、小型の樽2の上部から小型の樽2の下部まで延在している案内部4がある。ビールが供されるために、案内部4は案内部3と接続されており、この結果、小型の樽2内のビールは小型の樽2の下部から蛇口1へと流れることができる。
【0015】
蛇口1が開かれると、ビールが、小型の樽2内のビールより上の圧縮ガスの存在により、小型の樽2から押し出される。ビールとガスとの間の接触を制限するために、ビールは、薄いプラスチック材料の可撓性の容器(図示されず)に包まれることができる。これにより、案内部4は、可撓性容器の開口部を通る。
【0016】
供給装置は、小型の樽2が当該供給装置内に置かれているとき、当該小型の樽2内のビールを冷やすための冷却装置5を、更に具備している。これにより、冷却装置5は小型の樽2の下部6で小型の樽2と接触し、この結果、ビールが下から効果的に冷やされる。
【0017】
小型の樽2内のガス圧力は空気ポンプ7によって確立され、圧縮されたガスを小型の樽2に供給するために、供給装置の周囲からの空気をガス輸送手段8に注入する。当該ガス輸送手段8は、案内部3が小型の樽2内の案内部4と接続されている場所の近くにある一方向弁9を用いて、小型の樽2の内部と接続されている。
【0018】
小型の樽2に供されるガス中の酸素のパーセンテージを低下させるために、飲料供給装置、及び本実施例では当該装置のガス輸送手段8は、ガスが小型の樽へと輸送される空間を包囲している膜を有する。上述の実施例では、ガスは、管であり、管状の膜を通じて流れており、これにより、管の壁は、酸素が拡散することができる膜である。管状の膜10は空間11にあり、当該空間11は冷却装置5によって冷却され、この結果、管状の膜10の壁を通じた酸素の拡散を、窒素の拡散に比較して改善するために、少なくとも管状の膜10の一部が冷却される。
【0019】
管状の膜10が存在する空間11を周囲の空気圧に保つために、小さな開口部が存在し、この結果、拡散された酸素が空間11を退出することができる。図1では、ガス輸送手段8は管状の膜11として示されているが、しかしながら代替案として、空間11が平行関係にある多数の中空ファイバを有する中空ファイバ膜モジュールを含んでもよく、このファイバを通じて圧縮されたガスが輸送される。
【0020】
説明された実施例は、本発明による飲料供給装置の例にすぎない。多くの他の実施例が可能であり、例えば、平面シートの膜、又は他のいかなる種類の膜を伴う実施例も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮するためのポンプ手段と、飲料を小型の樽から押し出すために、圧縮されたガスを当該ポンプ手段から当該小型の樽へと輸送するためのガス輸送手段と、飲料供給装置からの飲料の出力を制御するために、当該飲料を前記小型の樽から供給蛇口まで輸送するための手段とを有する、飲料を含む小型の樽を格納する飲料供給装置であって、前記飲料供給装置は圧縮空気が通過することができる空間を包囲している膜を有し、当該膜は窒素に対するよりも酸素に対してより高い透過率をもち、この結果、前記小型の樽へと輸送される前記ガス中の酸素のパーセンテージが減じられることを特徴とする、飲料供給装置。
【請求項2】
前記ガス輸送手段が、前記膜を有する、請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項3】
前記小型の樽を冷却するための冷却手段が存在し、少なくとも前記ガス輸送手段の一部が当該冷却手段によって冷却されることを特徴とする、請求項1に記載の飲料供給装置。
【請求項4】
前記ガス輸送手段が管状の膜を有し、圧縮されたガスが、前記ポンプ手段から前記小型の樽まで前記管状の膜を通じて輸送されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飲料供給装置。
【請求項5】
前記ガス輸送手段が、平行関係にある多数の中空ファイバを有し、当該ファイバを通じて圧縮されたガスが輸送されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の飲料供給装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−519138(P2010−519138A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549883(P2009−549883)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050551
【国際公開番号】WO2008/102288
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】