説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】蒸気発生材料の微粒子状態の蒸気をガス体に含有させて所望に加湿されたガス体を得るにあたり、前記蒸気発生材料の蒸気の加湿量や加湿割合を任意かつ安定に制御することができ、かつこれを簡便な構成により実現できるガスクロマトグラフ装置を提供する。
【解決手段】ガスクロマトグラフ装置10では、蒸気発生器12及び蒸気発生器14を備えており、この蒸気発生器12において、流通するガス体が微粒子状態の液体で加湿され(G1)、またこれと同様に、蒸気発生器14においてもガス体が加湿され(G2)、さらに、これらが合流したガス体(G3)が、ガス体供給源24Aから主流路48へ送給されたガス体(G0)に混合されて所定に加湿されたガス体(G4)が生成されて排出(提供)される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿されたガス体をキャリアーガスとしたガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水に代表される液体を空気などのガス体に溶解(加湿)し、この加湿ガス体をキャリアーガスとしたガスクロマトグラフ装置(所謂、スチームクロマトグラフ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のガスクロマトグラフ装置(スチームクロマトグラフ)は、一般のガスクロマトグラフとは全く異なる新たな分離機能を生み出す手法として好適である。
【0003】
ところで、前記加湿ガス体を得るためには、当該液体を超音波などの方法で微細な粒子にする、加熱などの手段により蒸気とする、霧吹き(ネブライザー)を用いる、等によって大気に放出して加湿空気を得ていた。
【0004】
しかしながら、このような従来の加湿手法では、以下の問題を生じていた。
(1)均一な蒸気を得られない
超音波、加熱気化、霧吹きなどのように水粒子を多量に放出し加湿する手法では、大きな水粒子(蒸気)が放出されるため、粒子分離などの手段を講じなければならず、発生した蒸気の絶対量は把握できるが、発生量自体を制御することが極めて困難である。このため、例えば、過飽和などの現象を生じたり、ヒーターの制御、液滴の大きさの影響を大きく受け、均一な蒸気を長時間連続して得ることは不可能であり、均一蒸気の安定的な供給性が悪い。
(2)精細な湿度制御及び少量加湿雰囲気ガスの提供が困難
超音波、加熱気化、霧吹きなどの加湿機構は、大量の気化雰囲気を得ることを目的としたものであるため、加湿蒸気の発生量が多く、短時間内では精細な湿度制御ができない。また、これらの理由により、数mL/minから数L/min程度の少量の加湿雰囲気ガスを提供(生成)でき難い。
(3)使用条件に制限がある
一般的に、昇華するような固形物は想定されていない。また、圧力を変更すると沸点自体も変わるため、一定圧力での使用に限定される。さらに、ガラスを使用した加湿装置では、0.1MPaを越えるような高圧下または減圧では装置の破損が危惧される。また、超音波方式では、振動子の寿命により長時間の連続加湿はできない。
【0005】
さらに、以上の手法は、一般的に水と空気を想定したものである。
【0006】
このように、従来の加湿手法を適用したガスクロマトグラフ装置(スチームクロマトグラフ)は、加湿ガス体の発生量の変動が大きく、精細に湿度を制御したり経過時間毎に蒸気の種類を変更したりあるいは複数の成分を加湿したりすることができず、このため、要求された最適な(任意の)加湿状態にするための手段が切望されていた。
【特許文献1】特開昭61−47559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、蒸気発生材料の微粒子状態の蒸気をガス体に含有させて所望に加湿されたガス体を得るにあたり、前記蒸気発生材料の蒸気の加湿量や加湿割合を任意かつ安定に制御することができ、かつこれを簡便な構成により実現できるガスクロマトグラフ装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下のガスクロマトグラフ装置によって達成された。
【0009】
請求項1に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、ガス体供給源から所定のガス体が供給され、蒸気発生材料を内部に保持すると共に前記保持した蒸気発生材料を前記供給されたガス体により所定の微粒子状態で放出することで、当該微粒子状態の蒸気を流通する前記ガス体に含有させて加湿されたガス体を生成する蒸気発生器と、前記蒸気発生器の上流側流路及び下流側流路に接続され、当該流路を流れるガス体の流量を測定する流量測定器と、前記蒸気発生器の上流側流路及び下流側流路の少なくとも何れか一方に接続され、前記流量測定器による検出結果に基づいて、前記蒸気発生器から供出される前記加湿されたガス体の供出量を制御する流量制御部と、を備えている。
【0010】
請求項1記載のガスクロマトグラフ装置では、蒸気発生器を備えており、この蒸気発生器がガス体の加湿を行う。すなわち、蒸気発生器には蒸気発生材料が内部に保持されており、ガス体を流通させることにより、当該通過ガスに蒸気発生材料が微粒子状態で含有されて加湿されて下流側へと供出される。
【0011】
なお、蒸気発生器の蒸気発生材料保持部の保持材としては、高分子保水材、ろ紙材、脱脂綿、化繊、ガラス繊維、セラミックスなどの溶液を一時的に蓄える材料が用いられる。この材質を変えることにより、加湿特性を大きく変えることができる。例えば、保液性が高くかつ離液性がよい材料ほど効率が良く、弗化ビニリデン樹脂、ナイロン樹脂などが相当する。湿度は、保液量(流通するガス体に対する接触面積)、効率(材料離液性)、接触流速・距離、温度、及び圧力などにより変更(制御)できる。一方、粒子放出防止策としての止液材としては、テフロン(登録商標)製のメンブランフィルタなどの薄膜状のフィルター、セラミックスなどを用いる。
【0012】
ナイロン毛糸を例に加湿過程を示すと、先ず、液体を含んだナイロン毛糸(保液材)にガス体が通過すると、繊維表面の微細な溶液を奪い通過するガス体が加湿される。その後、内部の溶液が毛細管現象などで再表面に供給される。加湿されたガス体は、止液材で細かな粒子のみ通過し、大きな粒子は止められ再び加湿に供される。このようにして、流通するガス体を微粒子状態の液体で加湿する構成である。
【0013】
なお、前述の如き蒸気発生器(加湿器)として好適な構成のものを、本出願人が既に提案している(特願2003−186207号)。
【0014】
ここで、請求項1記載のガスクロマトグラフ装置では、蒸気発生器から供出される前記加湿されたガス体の供出量を任意に制御すること(蒸気発生量の詳細な把握)が可能である。
【0015】
すなわち、蒸気発生器の上流側流路及び下流側流路には流量測定器が接続されており、蒸気発生器の上流側流路では当該流路を流れるガス体(非加湿のキャリヤーガスのみ)の流量が測定され、一方、蒸気発生器の下流側流路では当該流路を流れる加湿されたガス体(蒸気が含有したガス体)の流量が測定される。これにより、両者の流量差を求めれば蒸気発生量が把握でき、この検出結果に基づいて、流量制御部によって制御することで、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体を得ることができる。
【0016】
このように、請求項1記載のガスクロマトグラフ装置では、ガス体に微粒子状態の蒸気発生材料を含有させて所望に加湿されたガス体を得るにあたり、前記蒸気発生材料の加湿量や加湿割合を任意かつ安定に制御することができ、かつこれを簡便な構成により実現することができる。
【0017】
なお、流量測定器としては、所謂MFM(マスフローメーター)を適用することができ、また、流量制御部としては、所謂MFC(マスフローコントローラー)を適用することができ、さらに、両者を組み合わせて構成することも可能である。
【0018】
請求項2に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1記載のガスクロマトグラフ装置において、前記ガス体供給源からの前記ガス体が前記蒸気発生器とは独立して送給される主流路を設けると共に、前記蒸気発生器の前記ガス体供出側を前記主流路に接続して構成し、前記ガス体供給源から前記主流路へ送給された前記ガス体に、前記蒸気発生器から供出されるガス体を混合することで加湿されたガス体を生成する、ことを特徴としている。
【0019】
請求項2記載のガスクロマトグラフ装置では、蒸気発生器がガス体の基本的な(前段階としての)加湿を行う。すなわち、前述の如き蒸気発生器から供出されたガス体(前記前段階の加湿が行われた後のガス体)は、ガス体供給源から主流路へ送給されたガス体(すなわち、蒸気発生器を通過させない非加湿のガス体)に混合され、これにより、所定に加湿されたガス体が生成されて排出(提供)される。
【0020】
ここで、請求項2記載のガスクロマトグラフ装置では、ガス体供給源から主流路へ送給されるガス体(すなわち、蒸気発生器を通過させない非加湿のガス体)と、蒸気発生器から供出されるガス体(前記前段階の加湿が行われた後のガス体)とを混合することで所定に加湿されたガス体を生成する構成であるため、前記主流路へ送給されるガス体(非加湿のガス体)と、蒸気発生器から供出されるガス体(前段階の加湿後のガス体)の混合割合を任意に変更(制御)すれば、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体を得ることができる。
【0021】
このように、請求項2記載のガスクロマトグラフ装置では、ガス体に微粒子状態の蒸気発生材料を含有させて所望に加湿されたガス体を得るにあたり、前記蒸気発生材料の加湿量や加湿割合を任意かつ安定に制御することができ、かつこれを簡便な構成により実現することができる。
【0022】
請求項3に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項2記載のガスクロマトグラフ装置において、前記ガス体供給源からの前記主流路への前記ガス体の送給量、及び前記ガス体供給源からの前記蒸気発生器への前記ガス体の供給量をそれぞれ独立して制御可能とした、ことを特徴としている。
【0023】
請求項3記載のガスクロマトグラフ装置では、ガス体供給源から主流路へ送給されるガス体(非加湿のガス体)の送給量と、ガス体供給源からの蒸気発生器へ供給されるガス体(非加湿のガス体)の供給量とをそれぞれ独立して制御可能であるため、蒸気発生器から供出されるガス体(前段階の加湿後のガス体)の供出量を制御することができ、結果的に、両者(非加湿のガス体と、前段階の加湿後のガス体)の混合割合を任意に変更することができ、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体を得ることができる。
【0024】
請求項4に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記蒸気発生器の温度を制御可能とした、ことを特徴としている。
【0025】
請求項4記載のガスクロマトグラフ装置では、蒸気発生器の温度を制御可能であるため、蒸気発生器から供出されるガス体の供出量を制御することができ、結果的に、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体を得ることができる。
【0026】
請求項5に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記蒸気発生器を複数備え、かつ、前記各蒸気発生器は並列的に接続されている、ことを特徴としている。
【0027】
請求項5記載のガスクロマトグラフ装置では、蒸気発生器を複数備えておりしかも各蒸気発生器は並列的に接続されているため、生成するガス体の加湿状態を任意の時間で任意の割合で変化(グラジェント)させることが可能になる。また、各蒸気発生器がそれぞれ独立した構成であるため設置が容易であり、しかも、それぞれが単独で動作可能なため生成する複数の加湿ガス体を時間、流量などの条件に基づいて混合することが容易となる。例えば、乾燥状態から5分後に湿度50%とし、10分後に香り成分を追加するなどのガス体生成が可能となる。さらに、前述の如き混合・切り替え等は、瞬時に行うことが可能であるばかりか、グラジェントと呼ばれるように徐々に変化させ所定時間にその目的濃度に達するように生成することも可能になる。
【0028】
請求項6に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記蒸気発生器の前記主流路への接続流路に、当該蒸気発生器から供出されるガス体の物性を検出するセンサを設けた、ことを特徴としている。
【0029】
請求項6記載のガスクロマトグラフ装置では、蒸気発生器から供出されるガス体の物性を検出することができるため、前記各請求項に記載した如き加湿ガス体の精細な生成制御を行うことが容易になる。例えば、各種センサからの検出信号に基づいてCPUが情報収集及び解析を行い、バルブ、流量調節器などを適切に処理する構成とすることにより、前記各請求項に記載した如き加湿ガス体の精細な生成制御を行うことができる。
【0030】
センサとしては、湿度、温度を始めとする各種センサ、あるいはガスクロマトグラフ装置の物性検出部などに使用される水素炎型検出器などの検出器を使用することができる。ガスまたは溶液の組成の変化を検出する水素炎型検出器などの場合、分取流路を設けて加湿ガス体の一部を分取・検出する。この場合、分取した量をCPUにより自動補正することも容易である。センサの検出上限を超えるような濃度の場合においても、上記と同様に分取・希釈によりセンサの動作保証内に希釈測定することもできる。また、予めガス体、液体の物性情報をデータベース化することにより、加湿割合などがより制御し易くなる。
【0031】
請求項7に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記ガス体供給源から供給される前記ガス体は、空気、炭酸ガス、窒素、水素、ヘリウム、及びアルゴンのうちの一つまたは複数を含む、ことを特徴としている。
【0032】
請求項8に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記蒸気発生材料は、水、アルコール、及びその他有機化合物のうちの一つまたは複数を含む、ことを特徴としている。
【0033】
請求項9に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項8に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記蒸気発生材料は、沸点が−100℃〜200℃の液体とされる、ことを特徴としている。
【0034】
さらに、請求項10に係る発明のガスクロマトグラフ装置は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置において、前記蒸気発生材料は、昇華性の固体試料とされる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
以上説明した如く本発明に係るガスクロマトグラフ装置は、ガス体に微粒子状態の蒸気発生材料を含有させて所望に加湿されたガス体を得るにあたり、前記蒸気発生材料の加湿量や加湿割合を任意かつ安定に制御することができ、かつこれを簡便な構成により実現することができるという優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1には、本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置10の全体構成図が示されている。
【0037】
このガスクロマトグラフ装置10は、蒸気発生器12及び蒸気発生器14を備えている。蒸気発生器12と蒸気発生器14は、基本的に同一の構成とされており、互いに独立して設けられている。
【0038】
ここで、図2には蒸気発生器12の構成が概略的な断面図にて示されており、図3には蒸気発生器12の原理図が示されている。蒸気発生器12は、供給部16、保液部18、止液部20、及び空間層22によって構成されている。供給部16は、ガス体供給源24Aから流路26を介して所定のガス体G0(例えば、空気)が供給される。保液部18は、供給部16に連通して設けられており、親液性または保水性と透過性を有する材料で構成された保液材18Aを有している。この保液部18は、液体供給源28Aから流路30を介して所定の液体E(加湿物質、例えば、水)が供給され、しかもこの液体Eを保液材18Aで保液すると共にこの保液した液体を、供給部16から流通されたガス体G0により微粒子状態で放出することができる。また、止液部20は、保液部18に連通して設けられており、疎液性の材料で構成された止液材20Aを有している。この止液部20は、保液部18から流通されたガス体G0により保液部18から放出された前記液体Eを所定の微粒子状態で放出することができる。さらに、空間層22は、保液部18と止液部20の間に設けられており、保液部18から放出された前記液体Eの粒子膜の生成を抑制する。
【0039】
これらにより、蒸気発生器12は、流通する(内部を通過する)ガス体G0に止液部20から放出される微粒子状態の液体Eを含有させて一定の割合で加湿する(加湿されたガス体G1を生成する)ことができる構成である。
【0040】
またさらに、蒸気発生器12の本体部分には加熱・冷却部13が設けられており、必要に応じて加熱・冷却部13を加熱または冷却することにより、温度制御可能となっている。
【0041】
なお、他方の蒸気発生器14も前述した蒸気発生器12と同様の構成であり、ガス体供給源24Bから供給されて流通する(内部を通過する)ガス体G0に微粒子状態の液体Eを含有させて一定の割合で加湿する(加湿されたガス体G2を生成する)ことができる。
【0042】
以上の構成の蒸気発生器12の保液部18に液体供給源28Aから液体Eを供給するための流路30には、バルブ31が設けられており、また、蒸気発生器14の保液部34に液体供給源28Bから液体Eを供給するための流路40には、バルブ41が設けられている。
【0043】
さらに、蒸気発生器12の供給部16にガス体供給源24Aからガス体G0を供給するための流路26には、バルブ43及びマスフローメーター44が設けられており、また同様に、蒸気発生器14の供給部32にガス体供給源24Bからガス体G0を供給するための流路42には、バルブ45及びマスフローメーター46が設けられている。
【0044】
一方、ガス体供給源24Cには、蒸気発生器12の供給部16に所定のガス体G0を供給するための流路26や蒸気発生器14の供給部32に所定のガス体G0を供給するための流路42とは独立して、主流路48が接続されている。主流路48には、ガス体供給源24Cからの前記ガス体G0が、蒸気発生器12及び蒸気発生器14とは独立して送給されるようになっている。この主流路48には、バルブ49及びマスフローコントローラ50が設けられている。
【0045】
さらに、この主流路48には、前記蒸気発生器12及び蒸気発生器14の供出側が接続されている。すなわち、蒸気発生器12の止液部20が、供出路52によって主流路48に接続されており、また、蒸気発生器14の止液部36が、供出路54によって主流路48に接続されている。すなわち、各蒸気発生器12と蒸気発生器14とは、主流路48に対し、並列的に接続された構成となっている。
【0046】
これにより、ガス体供給源24Cから主流路48へ送給されたガス体G0に、蒸気発生器12から供出されるガス体G1のみを混合して加湿されたガス体G4を生成することができる構成であり、またしかも、蒸気発生器12から供出されるガス体G1に、蒸気発生器14から供出されるガス体G2を混合して新たに加湿されたガス体G3とした状態で、ガス体G0に混合してガス体G4を生成することもできる構成である。
【0047】
また、蒸気発生器12の供出路52には、マスフローコントローラ56が設けられている。同様に、蒸気発生器14の供出路54には、マスフローコントローラ60が設けられている。
【0048】
さらに、前記主流路48には、供出路52及び供出路54の接続箇所よりも下流側に、マスフローメーター70が設けられている。
【0049】
前述したバルブ31及びバルブ41はCPU76に接続されており、蒸気発生器12あるいは蒸気発生器14への液体Eの供給を制御することができる。また同様に、バルブ49及びマスフローコントローラ50もCPU76に接続されており、主流路48を流れるガス体の流量を独立して制御することができる。
【0050】
またさらに、バルブ43、マスフローメーター44及びマスフローコントローラ56もCPU76に接続されており、蒸気発生器12から供出されるガス体G1の流量を制御することができる。すなわち、蒸気発生器12の上流側流路(流路26)では当該流路26を流れるガス体(非加湿のキャリヤーガスのみ)の流量がマスフローメーター44によって測定され、一方、蒸気発生器12の下流側流路(供出路52)では当該供出路52を流れる加湿されたガス体G1(蒸気が含有したガス体)の流量がマスフローコントローラ56によって測定される。これにより、両者の流量差を求めれば蒸気発生量が把握でき、この検出結果に基づいて、マスフローコントローラ56によって制御することで、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体G1を得ることができる。
【0051】
これと同様に、バルブ45、マスフローメーター46及びマスフローコントローラ60もCPU76に接続されており、蒸気発生器14から供出されるガス体G2の流量を制御することができる。すなわち、蒸気発生器14の上流側流路(流路42)では当該流路42を流れるガス体(非加湿のキャリヤーガスのみ)の流量がマスフローメーター46によって測定され、一方、蒸気発生器14の下流側流路(供出路54)では当該供出路54を流れる加湿されたガス体G2(蒸気が含有したガス体)の流量がマスフローコントローラ60によって測定される。これにより、両者の流量差を求めれば蒸気発生量が把握でき、この検出結果に基づいて、マスフローコントローラ60によって制御することで、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体G2を得ることができる。
【0052】
さらに、マスフローメーター70もCPU76に接続されており、上記構成と併せて、生成されて下流に供出される加湿されたガス体G4の流量を制御することができる構成である。
【0053】
CPU76には、予めデータベースにガス体G0乃至G4、及び液体Eの沸点、粘度などの物性、各マスフローメーター、各マスフローコントローラなどでの換算係数、加湿運転制御方法などが記載されており、各マスフローメーター及び各マスフローコントローラからの検出信号及びユーザーが入力した使用流量や制御方法などに基づいて、最適な制御条件を決定し上記で示した各バルブ、各マスフローメーター、及び各マスフローコントローラを制御する。また、データ不足などでCPU76が処理できない場合には、ユーザーが必要な情報、制御方法を入力することも可能となっている。
【0054】
以上の構成により生成される加湿されたガス体G4の下流側(供出側)には、検出器80(ガスクロマトグラフ)が接続されており、加湿されたガス体G4を分析することができる。
【0055】
なお、上記構成のガスクロマトグラフ装置10においては、液体供給源28A、28Bから供給される前記液体Eとしては、水が一般的であるが、その他に例えばアルコールあるいは両者を含む構成とすることができる。また、蒸気発生器12と蒸気発生器14へ供給される液体Eを互いに異ならせて(A、B二つの液体を使用する)構成とすることもできる。さらに、ガス体供給源24A、24B、24Cから供給される前記ガス体G0としては、空気が一般的であるが、その他に例えば炭酸ガス、窒素、水素、ヘリウム、及びアルゴンのうちの一つまたは複数を含む構成とすることができる。
【0056】
この場合、図4(A)及び図4(B)には、例えば加湿されたガス体量が、数mL/min程度以上の極微少量から数十L/minのような流量となるように想定し、かつ、加湿液体の種類、加湿量を精度良く管理する場合の例が示されている。
【0057】
次ぎに、本実施の形態の作用を説明する。
【0058】
上記構成のガスクロマトグラフ装置10では、蒸気発生器12及び蒸気発生器14を備えており、これらの蒸気発生器12及び蒸気発生器14が、ガス体G0の加湿を行う。
【0059】
すなわち、先ず、蒸気発生器12は、液体Eを保液する保液部18、空間層22、及び、液体Eを微粒子状態で放出する止液部20で構成されており、ガス体G0を流通させることにより、当該通過ガスに液体Eが微粒子状態で含有されて加湿されて下流側(供出路52)へと供出される。
【0060】
ナイロン毛糸を例に加湿過程を示すと、先ず、液体Eを含んだナイロン毛糸(保液材18A)にガス体G0が通過すると、繊維表面の微細な液体を奪い通過するガス体G0が加湿される。その後、内部の液体Eが毛細管現象などで再表面に供給される。加湿されたガス体G0は、止液材20Aで細かな粒子のみ通過し、大きな粒子は止められ再び加湿に供される。このようにして、流通するガス体G0が微粒子状態の液体Eで加湿されてガス体G1が生成される。
【0061】
またこれと同様に、蒸気発生器14においてもガス体G0が加湿され、供出路54を介してガス体G2が供出される。
【0062】
さらに、前述の如き蒸気発生器12から供出路52を介して供出されたガス体G1及び蒸気発生器14から供出路54を介して供出されたガス体G2が混合されてガス体G3となり、更にこのガス体G3は、ガス体供給源24Cから主流路48へ送給されたガス体G0(すなわち、蒸気発生器12、14を通過させない非加湿のガス体)に混合され、これにより、所定に加湿されたガス体G4が生成されて排出(提供)される。
【0063】
ここで、このガスクロマトグラフ装置10では、蒸気発生器12から供出されるガス体G1(前記加湿が行われた後のガス体)と、ガス体供給源24Cから主流路48へ送給されるガス体G0(すなわち、蒸気発生器12を通過させない非加湿のガス体)とを混合することで所定に加湿されたガス体G4を生成する構成であり、またあるいは、蒸気発生器12から供出されるガス体G1に、蒸気発生器14から供出されるガス体G2とを更に混合することで所定に加湿されたガス体G3を生成し、しかもこのガス体G3にガス体G0とを混合して、所定に加湿されたガス体G4を生成する構成であり、しかも、ガス体供給源24Cから主流路48へ送給されるガス体G0の送給量と、ガス体供給源24Aからの蒸気発生器12へ供給されるガス体G0の供給量と、ガス体供給源24Bからの蒸気発生器14へ供給されるガス体G0の供給量とをそれぞれ独立して制御可能であるため、前記主流路48へ送給されるガス体G0(非加湿のガス体)と、蒸気発生器12から供出されるガス体G1(前記加湿後のガス体)の混合割合、あるいは、蒸気発生器14から供出されるガス体G2の更なる混合割合を任意に変更(制御)することで、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体G4を得ることができる。
【0064】
すなわち、例えば、ガス体G0として空気を用いた場合について説明する。
【0065】
40℃の時の飽和水蒸気量は、50.26g/kgである。このとき、空気1モルは、22.4L×(273+40)/273から25.7Lとなる。したがって、水の分子量を18とすると、水蒸気により増加する体積量は、25.7×(50.26/18)から71.8Lとなる。概算で、空気1Lは1gとすると、40℃では、約7.2%流量が加算されることになる。
【0066】
ここで、前述の如く、蒸気発生器12の上流側流路(流路26)では当該流路26を流れるガス体(非加湿のキャリヤーガスのみ)の流量がマスフローメーター44によって測定でき、一方、蒸気発生器12の下流側流路(供出路52)では当該供出路52を流れる加湿されたガス体G1(蒸気が含有したガス体)の流量がマスフローコントローラ56によって測定できるため、両者の流量差を求めれば蒸気発生量が把握でき、この検出結果に基づいて、マスフローコントローラ56によって制御することで、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体G1を得ることができる。
【0067】
これと同様に、蒸気発生器14の上流側流路(流路42)では当該流路42を流れるガス体(非加湿のキャリヤーガスのみ)の流量がマスフローメーター46によって測定でき、一方、蒸気発生器14の下流側流路(供出路54)では当該供出路54を流れる加湿されたガス体G2(蒸気が含有したガス体)の流量がマスフローコントローラ60によって測定できるため、両者の流量差を求めれば蒸気発生量が把握でき、この検出結果に基づいて、マスフローコントローラ60によって制御することで、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体G2を得ることができる。
【0068】
なおこの場合、図5(A)及び図5(B)に示す如く、マスフローメーター44とマスフローコントローラ56とを互いに入れ替えて設置する構成とすることも可能であり、また、マスフローメーター46とマスフローコントローラ60とを互いに入れ替えて設置する構成とすることも可能である。例えば、キャリアーガス流量と温度または圧力などと蒸気発生器12、14より発生する蒸気量の関係が予め解っている場合、上流側に入れ替えて設置したマスフローコントローラ56、60のみを制御することにより、蒸気発生器12、14よりも下流側の流量が推定可能となる。このような構成では、一定蒸気量で推移する場合に特に有効であり、装置構成が簡素化でき効果的である。
【0069】
また、必要に応じて、マスフローメーター44やマスフローメーター46自体を「マスフローコントローラ」に換えた構成としてもよい。さらに、他のキャリアーガスライン(供給流路等)の圧力影響などを受けるおそれがある場合には、蒸気発生器12、14よりも下流側(主流路48と供出路52及び供出路54の接続箇所との間)に「バルブ」を追加的に設けたり、所謂「逃がし弁」を設ける構成とすることも可能である。
【0070】
またしかも、このガスクロマトグラフ装置10では、蒸気発生器12及び蒸気発生器14を備えておりしかも各蒸気発生器12と蒸気発生器14は並列的に接続されているため、生成するガス体G4の加湿状態を任意の時間で任意の割合で変化(グラジェント)させることが可能になる。また、各蒸気発生器12と蒸気発生器14とはそれぞれが独立した構成であるため設置が容易であり、しかも、それぞれが単独で動作可能なため生成する前記複数の加湿ガス体を時間、流量などの条件に基づいて混合することが容易となる。例えば、乾燥状態から5分後に湿度50%とし、10分後に香り成分を追加するなどのガス体生成が可能となる。さらに、前述の如き混合・切り替え等は、瞬時に行うことが可能であるばかりか、グラジェントと呼ばれるように徐々に変化させ所定時間にその目的濃度に達するように生成することも可能になる。
【0071】
また、例えば蒸気発生器12や蒸気発生器14の供出側流路(供出路52、供出路54)に抵抗を付加した構造とすれば、本来の圧力(ガス体供給源24から供給されるガス体圧)以上での加湿が可能となり、これにより、前述の加湿量制御因子に加え圧力での加湿量制御が可能となる。
【0072】
また同様に、蒸気発生器12や蒸気発生器14の温度を制御可能であるため、蒸気発生器12あるいは蒸気発生器14から供出されるガス体G1、G2の供出量を制御することができ、結果的に、主流路48へ送給されたガス体G0(非加湿のガス体)との混合割合を任意に変更することができ、所望のタイミングで所望に加湿されたガス体G4を得ることができる。
【0073】
さらに、蒸気発生器12や蒸気発生器14から供出されるガス体G1、G2(前段階の加湿後のガス体)の加湿の度合いは、蒸気発生器12や蒸気発生器14内部の保液材18A量、器機の形状や内径・長さ(流通するガス体G0に対する接触面積・距離)等によって適宜に設定・変更することもできる。
【0074】
また、ガス体G0の加湿の度合い(加湿されたガス体G4の生成)はほぼ一定に推移するため、加湿割合の推定が可能であり、例えば予め解析した加湿挙動及び粘性、沸点などの物性値をデータベース化し、当該データを参照して加湿制御すれば、加湿ガス体G4の生成をより安定かつ精細に制御できる。
【0075】
ここで、図6(A)及び図6(B)には、本実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置10の前述の如き作用・効果を、水蒸気によって立証した例が線図にて示されている。
【0076】
すなわち、ガスクロパック54(ポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合、ポーラスポリマービーズ50/80メッシュ)を1/8インチ、内径2.17mm、1mのステンレスチューブに充填したカラムを用いてn−吉草酸とn−吉草酸メチルをガスクロマトグラフ分析し、水素炎型の検出器で検出した例である。また、蒸気発生器12、14は、40℃に制御し、蒸気発生液として水を用い、蒸気発生液保持材(保液部18の保液材18A)としてアクリル毛糸を用いた。
【0077】
図6(A)に示す如く、蒸気を加えない状態では、n−吉草酸とn−吉草酸メチルは、分離できずに1本のピークとなるが、図6(B)に示す如く、蒸気を加えることによって、n−吉草酸とn−吉草酸メチルとが分離されることが解る。このように、本ガスクロマトグラフ装置10を適用することで、分離挙動を変更できることが立証できた。
【0078】
以上説明した如く、本実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置10では、ガス体G0に微粒子状態の液体Eを含有させて所望に加湿されたガス体G4を得るにあたり、前記液体Eの加湿量や加湿割合を任意かつ安定に制御することができ、かつこれを簡便な構成により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置の蒸気発生器の構成を示す概略的な断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置の蒸気発生器の原理を説明するための概略的な断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置の蒸気発生器における湿度と経過時間の関係を示す線図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置の蒸気発生器に接続されたマスフローメーターとマスフローコントローラの設置状態を示す図2に対応した概略的な断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るガスクロマトグラフ装置における作用・効果を水蒸気によって立証した例を示す線図である。
【符号の説明】
【0080】
10 ガスクロマトグラフ装置
12 蒸気発生器
14 蒸気発生器
24A〜24C ガス体供給源
44 マスフローメーター(流量測定器)
46 マスフローメーター(流量測定器)
56 マスフローコントローラ(流量制御部)
60 マスフローコントローラ(流量制御部)
E 液体(蒸気発生材料)
1〜G4 ガス体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス体供給源から所定のガス体が供給され、蒸気発生材料を内部に保持すると共に前記保持した蒸気発生材料を前記供給されたガス体により所定の微粒子状態で放出することで、当該微粒子状態の蒸気を流通する前記ガス体に含有させて加湿されたガス体を生成する蒸気発生器と、
前記蒸気発生器の上流側流路及び下流側流路に接続され、当該流路を流れるガス体の流量を測定する流量測定器と、
前記蒸気発生器の上流側流路及び下流側流路の少なくとも何れか一方に接続され、前記流量測定器による検出結果に基づいて、前記蒸気発生器から供出される前記加湿されたガス体の供出量を制御する流量制御部と、
を備えたガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記ガス体供給源からの前記ガス体が前記蒸気発生器とは独立して送給される主流路を設けると共に、前記蒸気発生器の前記ガス体供出側を前記主流路に接続して構成し、
前記ガス体供給源から前記主流路へ送給された前記ガス体に、前記蒸気発生器から供出されるガス体を混合することで加湿されたガス体を生成する、
ことを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記ガス体供給源からの前記主流路への前記ガス体の送給量、及び前記ガス体供給源からの前記蒸気発生器への前記ガス体の供給量をそれぞれ独立して制御可能とした、
ことを特徴とする請求項2記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記蒸気発生器の温度を制御可能とした、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記蒸気発生器を複数備え、かつ、前記各蒸気発生器は並列的に接続されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項6】
前記蒸気発生器の前記主流路への接続流路に、当該蒸気発生器から供出されるガス体の物性を検出するセンサを設けた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項7】
前記ガス体供給源から供給される前記ガス体は、空気、炭酸ガス、窒素、水素、ヘリウム、及びアルゴンのうちの一つまたは複数を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項8】
前記蒸気発生材料は、水、アルコール、及びその他有機化合物のうちの一つまたは複数を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項9】
前記蒸気発生材料は、沸点が−100℃〜200℃の液体とされる、ことを特徴とする請求項8に記載のガスクロマトグラフ装置。
【請求項10】
前記蒸気発生材料は、昇華性の固体試料とされる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−71635(P2007−71635A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257743(P2005−257743)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年5月14日から15日 社団法人日本分析化学会主催の「第66回 分析化学討論会」において文書をもって発表
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)