説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】バックフラッシュ分析を実行する際のカラム入口圧、カラム出口圧を制御するためのプログラムの作成の手間を軽減するとともに、検出器入口圧の制約に適合した適切なプログラムを作成する。
【解決手段】目的試料に対する通常分析を実行すると、バックフラッシュ設定画面30のクロマトグラム表示領域32には通常分析で得られたクロマトグラム321が表示される。分析者がこのクロマトグラム321で必要な部分と不要な部分(バックフラッシュしたい部分)とを判断し、バックフラッシュ開始点としたい時間位置にカーソル322を移動させダブルクリックする。すると、この時間位置以降でカラム出口圧がカラム入口圧よりも高くなり、且つ検出器の種類に応じたカラム出口圧の上限値以下となるようなプログラムが自動的に作成され、圧力制御プログラム記述欄331、332に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスクロマトグラフ装置に関し、特に、バックフラッシュ分析が可能なガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ分析ではバックフラッシュと呼ばれる手法が知られている。バックフラッシュとは、先行してカラムから溶出した目的成分(一般に低沸点成分)が検出器を通過した直後に、キャリアガスを逆流させてカラム中や試料気化室中から不要な成分(一般に高沸点成分)を追い出す手法である(例えば特許文献1参照)。これにより、分析時間を短縮して次の分析を速やかに開始することができるだけでなく、カラムの汚染を軽減するのに有効である。
【0003】
図6は特許文献2などに記載の、バックフラッシュが可能なガスクロマトグラフ装置の概略流路構成図である。この構成では、カラム8の入口に試料気化室1が接続され、カラム8の出口にはバックフラッシュ素子9を介して検出器10が接続されている。
【0004】
通常分析時には、試料気化室1内の圧力つまりカラム入口圧PAはカラム出口圧PBよりも大きくされている(PA>PB)。そのため、図6(a)に示すように、試料気化室1に導入された試料はキャリアガス(この例ではヘリウム)流に乗って、カラム8を通りバックフラッシュ素子9を経て検出器10へと導入される。
一方、バックフラッシュ時には、カラム入口圧PAがカラム出口圧PBよりも小さくされる(PA<PB)。そのため、図6(b)に示すように、キャリアガスは上記通常分析時とは逆にカラム8の出口から入口に向かって進み、最終的には試料気化室1に設けられた排出口から外部へと排出される。これにより、カラム8中に残っている試料成分は迅速に排出口から排出される。
【0005】
このようにバックフラッシュ時には通常分析時とはカラム入口圧PA及びカラム出口圧PBを変更する必要がある。そこで従来一般的には、まず目的試料に対する通常分析を実行してクロマトグラムを取得し、分析者がこのクロマトグラムを確認して不要な成分を決定し、カラム入口圧及びカラム出口圧を制御するための圧力制御プログラムを作成する。例えば通常分析によって図7に示すようなクロマトグラムが得られたものとする。分析者にとってA部が目的成分で、B部が不要な成分であるとすると、分析者はA部とB部との間の適宜の時間をバックフラッシュ開始時間として決定し(この例では5分)、図8に示すような、カラム入口圧及びカラム出口圧の圧力制御プログラムを作成する必要がある。こうした作業は煩雑であって時間を要するのみならず、入力ミスも起こり易い。
【0006】
また、上記のような圧力制御プログラムを作成する際にはカラム出口圧に関する制約に留意する必要がある。これはカラム出口圧つまりは検出器入口圧が高すぎると、検出器に悪影響を及ぼす場合があることによる。例えば、検出器が水素炎イオン化検出器である場合、検出器入口圧が高く検出器への流入ガス流量が多すぎると(例えば30mL/min以上)、水素炎が立ち消えてしまうおそれがある。また検出器が質量分析計である場合には、検出器への流入ガス流量が多すぎると(例えば20mL/min以上)、質量分析計の真空チャンバ内の真空排気を行う真空ポンプが破損するおそれもある。こうしたことから、使用する検出器に応じた制約を考慮に入れて圧力制御プログラムを作成する必要があり、圧力制御プログラムの作成は一層面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−218527号公報
【特許文献2】特開平5−126814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、バックフラッシュ分析時の圧力制御プログラムの作成の手間を軽減するとともに安全な、つまりは検出器に悪影響を及ぼすことのない圧力制御プログラムを作成することができるガスクロマトグラフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明は、カラムと、カラム入口圧を制御する第1圧力制御部と、カラム出口圧を制御する第2圧力制御部と、該第2圧力制御部の下流側に配設された検出器と、を具備するガスクロマトグラフ装置において、
a)目的試料を通常分析することにより得られたクロマトグラムを表示する表示手段と、
b)前記表示手段に表示されたクロマトグラム上で任意の時間を分析者が指示するための指示手段と、
c)前記指示手段により指示された時間に基づいてクロマトグラムを前半の必要部分と後半の不要部分とに分け、その必要部分ではカラム入口圧がカラム出口圧を上回り、不要部分ではカラム出口圧がカラム入口圧を上回るように、前記第1圧力制御部に対する圧力制御プログラム及び前記第2圧力制御部に対する圧力制御プログラムの少なくとも一方を作成して記憶する圧力制御プログラム作成手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
上記指示手段は例えばマウス等のポインティングデバイスであり、ポインティングデバイスを操作することによりクロマトグラム上に重畳表示されたカーソルを任意の時間位置に移動させ、ダブルクリック等の所定の操作を行うことでクロマトグラム上の任意の時間を指示するものとすると便利である。ここでいう時間の指示とは時間軸上の或る位置を指示するとは限らず、クロマトグラム表示枠内の任意の位置が指示されたときにそれに対応した時間が指示されたものとみなせばよい。
【0011】
本発明に係るガスクロマトグラフ装置では、分析者はクロマトグラムを表示手段の画面上で確認して、必要な成分によるピークと不要な成分によるピークとを判断し、その間の適宜の位置を例えばダブルクリック操作するだけで、バックフラッシュ分析を行うための圧力制御プログラムを作成することができる。目的試料(又は同種の他の試料)について圧力制御プログラム作成手段により作成された圧力制御プログラムに従って第1圧力制御部及び第2圧力制御部を制御してバックフラッシュ分析を行うと、上記必要部分に対応する時間範囲では通常モードにより、カラムを通過した成分が検出器に導入されて検出され、その時間範囲が終了するとバックフラッシュモードに移行し、カラム中をキャリアガスが逆流してカラム中に残っていた成分がカラム入口側から排出される。このようにして分析者が意図するバックフラッシュ分析が達成される。
【0012】
本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施態様として、前記圧力制御プログラム作成手段は、前記指示手段により指示された時間において、その直前のカラム入口圧が第1の所定圧力に降下する一方、その直前のカラム出口圧が第2の所定圧力に上昇するように、第1圧力制御部及び第2圧力制御部に対する圧力制御プログラムをそれぞれ作成する構成とすることができる。
【0013】
ここで第1の所定圧力、第2の所定圧力はそれぞれ分析者が予め設定するようにしてもよいし、予め適宜決められたデフォルト値であってもよい。但し、上述したように、使用される検出器の種類によっては、検出器を保護するためにカラム出口圧に制約を課す必要がある。
【0014】
そこで、本発明に係るガスクロマトグラフ装置では、好ましくは、前記圧力制御プログラム作成手段が、前記第2の所定圧力を予め指定された前記検出器の種類に応じた上限値以下に制限する構成とするとよい。第2の所定圧力が上記のようにデフォルト値である場合には、このデフォルト値を検出器の種類に応じた上限値以下に決めておけばよく、第2の所定圧力が分析者により設定される場合には、検出器の種類に応じた上限値を超えた設定ができないようにしておけばよい。これにより、使用する検出器の種類に応じたカラム出口圧の制約について分析者が何ら留意せずとも、カラム出口圧を検出器を保護し得る上限値以下に抑えることができる。
【0015】
また例えば、作成された圧力制御プログラム中の上記第2の所定圧力を分析者が書き換え可能とした場合に、予め指定された前記検出器の種類に応じた上限値を超える設定値が第2の所定圧力として入力された際に警告メッセージを表示する構成としておくとよい。これにより、適切でない設定値の入力を分析者が行うことを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガスクロマトグラフ装置によれば、分析者自らが圧力制御プログラムの作成・入力等の煩雑な操作を行うことなく、適切な、つまり必要な成分を確実に検出し、不要な成分を迅速に除去するようなバックフラッシュ分析を実行することができる。従って、分析作業に関する分析者の負担が軽減され、分析効率が向上するとともに、分析者の入力ミス等による不適切な分析の実行も防止することができる。また、圧力制御プログラム入力設定時にカラム出口圧(検出器入口圧)を過剰な圧力に設定してしまうことも回避でき、それにより検出器を確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例であるガスクロマトグラフの概略構成図。
【図2】本実施例のガスクロマトグラフにおけるバックフラッシュ分析の実行手順を示すフローチャート。
【図3】バックフラッシュ分析設定画面の一例を示す図。
【図4】バックフラッシュ分析用の圧力制御プログラムの一例を示す図。
【図5】バックフラッシュ分析用圧力制御プログラムが自動作成された状態の画面の一例を示す図。
【図6】バックフラッシュ分析を説明するための概略流路構成図。
【図7】通常分析により取得されるクロマトグラムの一例を示す図。
【図8】従来のバックフラッシュ分析用圧力制御プログラム作成・設定画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るガスクロマトグラフ装置の一実施例について添付の図面を参照して説明する。図1は本実施例によるガスクロマトグラフの概略構成図である。
【0019】
図1において、図示しないボンベから供給されるヘリウム等のキャリアガスは、キャリアガス供給流路2に設けられた流量制御部(マスフローコントローラ)3により所定の流量に調整されて試料気化室1に供給される。このキャリアガスの一部は、試料気化室1から分岐されるスプリット流路4に設けられたスプリット弁5を通って外部に排出される。また、キャリアガスのごく一部は、試料気化室1の上部に装着されるセプタムから揮発するガスを伴ってパージ流路6から排出される。このパージ流路6上の流路抵抗と試料気化室1との間には、試料気化室1内の圧力を監視する圧力センサ7が設置されている。
【0020】
パージ流路6及びスプリット流路4を経て排出される以外のキャリアガスは試料気化室1からカラム8に流れ込み、バックフラッシュ素子9を経て検出器10に送られる。バックフラッシュ素子9は、カラム出口圧を監視する圧力センサやヘリウム等のメイクアップガスの流量を調節する流量バルブ等を含み、圧力センサによりモニタされるカラム出口圧が指示された目標値になるように、カラム8の出口と検出器10とを繋ぐ流路に供給するメイクアップガスの流量を調整する。
【0021】
検出器10による検出信号はデータ処理部15に入力され、データ処理部15は入力された信号に基づいてクロマトグラムを作成したり、クロマトグラム上の各ピークの定性分析や定量分析などを実行したりする。制御部11はこのガスクロマトグラフ全体の分析動作を制御するものであり、入力部13や表示部14が接続されている。制御部11やデータ処理部15はパーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、これに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアがパーソナルコンピュータ上で実行されることによりその機能が具現化されるものとすることができる。この場合、入力部13はキーボードやマウス等のポインティングデバイスであり、表示部14は液晶ディスプレイモニタなどである。
【0022】
次に本実施例のガスクロマトグラフにおける特徴的な動作を図2〜図5により説明する。図2はバックフラッシュ分析の実行手順を示すフローチャートである。
まずバックフラッシュ分析用の圧力制御プログラムを作成するために、分析者は目的試料の通常分析を実行する(ステップS1)。通常分析時には、カラム入口圧、つまりは圧力センサ7で検出される試料気化室1内の圧力をカラム出口圧、つまりバックフラッシュ素子9内の圧力センサで検出される圧力よりも高くする。これにより、図1中に実線矢印で示すように、試料気化室1からカラム8にキャリアガスが流れる。このとき、制御部11は圧力センサ7により試料気化室1内の圧力をモニタし、流量制御部3を通したガス流量を一定に維持しつつ、スプリット弁5の開度を制御することで試料気化室1内の圧力を目標値に保つ。即ち、制御部11は背圧制御方式により試料気化室1内のガス圧を一定に維持する。
【0023】
その状態で、図示しないインジェクタから試料気化室1内に試料液が注入されると該試料は即座に気化し、キャリアガス流に乗ってカラム8に導入される。カラム8を通過する過程で、試料ガス中の各成分は時間方向に分離され、それぞれ検出器10で検出される。検出器10による検出信号はデータ処理部15で処理され、例えば図7に示すようなクロマトグラムが作成される。この例は、低沸点成分から高沸点成分まで多様な成分を含む試料を分析した例である。一般的に低沸点成分が先にカラム8を通過し、高沸点成分はカラム8を通過する際に遅れる。図7において、分析者が必要とする成分がA部のみであるとすると、B部は分析者にとって不要な成分である。そこで、このB部をバックフラッシュにより除去できるようにする。
【0024】
そのために分析者は入力部13で所定操作を行い、図3に示すようなバックフラッシュ設定画面30を開く。このバックフラッシュ設定画面30には、上段に分析条件パラメータ設定領域31、中段にクロマトグラム表示領域32、下段に圧力制御プログラム設定領域33が設けられている。分析条件パラメータ設定領域31には、カラム寸法や各部のガス流量、圧力などの設定値が表示され、一部は変更可能となっている。これら設定値のうち、「分岐部圧力」312はカラム出口圧に相当し、「圧力」311はカラム入口圧に相当する。これら圧力はいずれも分析開始時の初期圧力である。また圧力制御プログラム設定領域33には、右側にカラム入口圧の圧力制御プログラム記述欄331、左側にカラム出口圧の圧力制御プログラム記述欄332が設けられている。圧力制御プログラム記述欄331、332の1行目にはそれぞれ、分析条件パラメータ設定領域31中の「圧力」311及び「分岐部圧力」312の数値が設定される。
【0025】
制御部11は、上記バックフラッシュ設定画面30中のクロマトグラム表示領域32に、先の通常分析で取得されたクロマトグラム321を表示させる(ステップS2)。また、そのクロマトグラム321に、矢印形状のカーソル322を重畳表示させる。分析者は表示されたクロマトグラム321を見て必要な部分と不要な部分とを判断する。そして、入力部13のポインティングデバイスを操作してカーソル322を所望の位置、つまりはバックフラッシュにより成分除去を開始したい時間位置に移動させ、ダブルクリック操作によりその時間位置を指示する(ステップS3)。ここでは例えば5分の時間位置付近を指示したものとする。
【0026】
制御部11において圧力制御プログラム作成部12は上記指示を受けて、まず指示された時間位置を通常モードからバックフラッシュモードへの移行の境界として、それよりも前の時間範囲(0〜5分)を必要な部分、後の時間範囲(5分以降)を不要な部分であると判断する。そして、その5分の時点からカラム入口圧を所定圧力まで下げ、一方、カラム出口圧を所定圧力まで上げるように各圧力制御プログラムを作成する(ステップS4)。
【0027】
ここでは、通常モードからバックフラッシュモードに移行する際のカラム入口圧及びカラム出口圧の変化のレートは本装置に許容される圧力変化の最大値(この例では±400[kPa/s])とする。バックフラッシュモードにおけるカラム出口圧は検出器10の種類に応じて決まる圧力の最大値(この例では100[kPa])とする。また、バックフラッシュモードにおけるカラム入口圧は、カラム出口圧とカラム抵抗(カラム寸法から計算できる)とから求まるガス流速(又は流量)が適宜の値になるように計算により決められる(この例では20[kPa]とする)。これにより、バックフラッシュ開始点の前後の圧力及び圧力変化のレートがそれぞれ決まるので、圧力変化に要する時間も求まり、図4に示すような圧力変化を規定する圧力制御プログラムが作成され、その圧力制御プログラムを表す数値が図5中の圧力制御プログラム記述欄331、332に表示される。つまり、従来であれば分析者自らが手作業により計算・入力する必要があった数値が自動的に圧力制御プログラム記述欄331、332に設定される。
【0028】
また、図5中のクロマトグラム321に示すように、上記圧力制御プログラムに従ってバックフラッシュ分析を実行した際にバックフラッシュされる、つまり除去される時間範囲321aのクロマトグラムがそれ以前の時間範囲と区別できるように異なる色に着色して表示される。分析者はこの表示を見て、意図する通りのバックフラッシュが実行されるか否かを即座に把握することができる。
【0029】
なお、図5中の圧力制御プログラム記述欄331、332に示される圧力制御プログラムの各数値は分析者が適宜書き換えることが可能である。但し、その場合でも、上述したような検出器の種類に応じたカラム出口圧の上限値を超える書き換えはできないようにしておくか、或いは、そうした書き換えをしようとした際に注意を促すポップアップ表示(警告メッセージ表示)を行ったり警告音を出力したりすることが好ましい。また、バックフラッシュができなくなるよう数値の書き換えについても同様に、書き換えができないようにするか、或いは、警告メッセージ表示や警告音を出力するとよい。
【0030】
上記のようにして作成されたカラム入口圧の圧力制御プログラムとカラム出口圧の圧力制御プログラムは、それぞれ制御部11内の記憶装置に保存される(ステップS6)。例えば分析者が引き続いてバックフラッシュ分析の実行を指示すると、制御部11は、カラム入口圧の圧力制御プログラムに従って、圧力センサ7によりモニタされる圧力値が目標圧になるようにスプリット弁5の開度を制御するとともに、カラム出口圧の圧力制御プログラムに従って、バックフラッシュ素子9内の圧力センサによりモニタされる圧力値が目標圧になるように流量バルブの開度を制御する。それにより、分析者が意図したように、分析開始時点から5分が経過するまでは通常モードで分析が実行される。
【0031】
そして、分析開始から5分が経過すると、カラム出口圧がカラム入口圧よりも高くなるため、図1中に点線矢印で示すように、バックフラッシュ素子9から導入されたメイクアップガス及びカラム8中に残っていたキャリアガスがカラム8中を逆流する。それにより、カラム8中に残っていた試料ガスは試料気化室1に押し戻され、試料気化室1中に残っていたガスとともにスプリット流路4を経て排出される。これにより、不要な成分を迅速にカラム8や試料気化室1内から除去することができる。
【0032】
なお、上記実施例では、バックフラッシュ時にカラム入口圧を低下させるとともにカラム出口圧を上昇させるような制御を行っていたが、カラム8中を流れるガスの方向はカラム出口圧とカラム入口圧との高低によりのみ決まるから、カラム入口圧又はカラム出口圧の一方を固定し、他方のみを変化させることでカラム出口圧とカラム入口圧と関係が反転するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても、本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0034】
1…試料気化室
2…キャリアガス供給流路
3…流量制御部
4…スプリット流路
5…スプリット弁
6…パージ流路
7…圧力センサ
8…カラム
9…バックフラッシュ素子
10…検出器
11…制御部
12…圧力制御プログラム作成部
13…入力部
14…表示部
15…データ処理部
30…バックフラッシュ設定画面
31…分析条件パラメータ設定領域
32…クロマトグラム表示領域
321…クロマトグラム
321a…時間範囲
322…カーソル
33…圧力制御プログラム設定領域
331、332…圧力制御プログラム記述欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムと、カラム入口圧を制御する第1圧力制御部と、カラム出口圧を制御する第2圧力制御部と、該第2圧力制御部の下流側に配設された検出器と、を具備するガスクロマトグラフ装置において、
a)目的試料を通常分析することにより得られたクロマトグラムを表示する表示手段と、
b)前記表示手段に表示されたクロマトグラム上で任意の時間を分析者が指示するための指示手段と、
c)前記指示手段により指示された時間に基づいてクロマトグラムを前半の必要部分と後半の不要部分とに分け、その必要部分ではカラム入口圧がカラム出口圧を上回り、不要部分ではカラム出口圧がカラム入口圧を上回るように、前記第1圧力制御部に対する圧力制御プログラム及び前記第2圧力制御部に対する圧力制御プログラムの少なくとも一方を作成して記憶する圧力制御プログラム作成手段と、
とを備えることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置であって、
前記圧力制御プログラム作成手段は、前記指示手段により指示された時間において、その直前のカラム入口圧が第1の所定圧力に降下する一方、その直前のカラム出口圧が第2の所定圧力に上昇するように、第1圧力制御部及び第2圧力制御部に対する圧力制御プログラムをそれぞれ作成することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置であって、
前記圧力制御プログラム作成手段は、前記第2の所定圧力を予め指定された前記検出器の種類に応じた上限値以下に制限することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のガスクロマトグラフ装置であって、
予め指定された前記検出器の種類に応じた上限値を超える設定値が前記第2の所定圧力として入力された際に警告メッセージを表示することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203951(P2010−203951A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50513(P2009−50513)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)