説明

ガスケット及び密封構造

【課題】2部材が、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組む付けられる場合であっても、安定したシール性能を発揮するガスケット及び密封構造を提供する。
【解決手段】ガスケット本体部11からシリンダーブロック300の取付面301に向かい、かつインテークマニホールド200とシリンダーブロックとの対向面に垂直な方向Iに対して傾いた方向に伸びる環状突起部11bを備え、この環状突起部11bは、その表面がシリンダーブロックの取付面301側に向くテーパ面11cを有しており、テーパ面11cにおける中心軸線は、インテークマニホールド200とシリンダーブロックとの組み付け時において前記対向面に垂直な方向Iと一致するように設定されており、かつテーパ面11cのテーパ角度γは、前記中心軸線に対するインテークマニホールド200とシリンダーブロック300との組み付け方向の傾きをθとした場合に、γ>2θを満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケット及び密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットが知られている。例えば、自動車に備えられたインテークマニホールドとシリンダーブロックとの対向面間の隙間を封止するために環状のガスケットが用いられる。
【0003】
かかるガスケットは、2部材により圧縮されることで、その反発力によってシール性を発揮する。ここで、2部材のうちの少なくとも一方が樹脂材で構成されるような場合には、成形時のうねりやクリープ等の影響で、寸法精度がそれほど高くない場合がある。そのため、寸法がばらついているような場合でもシール性能を発揮できる必要がある。また、スペースの関係上、ガスケットが装着される環状溝の断面形状が縦長断面となる場合がある。以上のような場合には、ガスケットの断面も縦長断面としなければならず、環状溝内において、ガスケットの倒れや座屈が発生し易いという問題がある。このような問題の対策として、従来、ガスケットの外周側と内周側に、ガスケットの倒れを抑制するための突起を、周方向に各々間隔を空けて複数設ける技術が知られている。
【0004】
このように構成された従来例に係るガスケットについて図9を参照して説明する。図9は従来例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。なお、この従来例に係るガスケット100は、インテークマニホールド200に設けられた環状溝201に装着されて、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との対向面間の隙間を封止するために用いられる。
【0005】
図示のように、ガスケット100は、断面が縦長形状のガスケット本体部110と、環状溝201の溝底面に密着する第1シール突起部111と、シリンダーブロック300の取付面301に密着する第2シール突起部112とを備えている。また、ガスケット本体部110の外周側と内周側には、環状溝201内においてガスケット本体部110が倒れることを抑制する突起121,122が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられている。なお、図9はこれらの突起121,122が設けられている部分において、ガスケット100の長手方向に対して垂直な方向に切断した断面図である。
【0006】
ここで、一般的に、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300は、これらの対向面に垂直な方向(図9中、矢印X方向)に組み付けられる。これに伴い、上記のように構成されたガスケット100は、図示の断面において幅方向(左右方向)の中心に対して略対称的な状態を保ったまま圧縮する。これにより、第1シール突起部111が環状溝201の溝底面に密着し、かつ第2シール突起部112がシリンダーブロック300の取付面301に密着することでシール性能が発揮される。また、ガスケット本体部110は縦長断面で構成されており、本来的には環状溝201内で倒れたり座屈したりし易いものの、ガスケット100の圧縮に伴い突起121,122が環状溝201の両側面にそれぞれ突き当たることで、倒れや座屈が抑制される。
【0007】
しかしながら、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300が、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられるように構成される場合がある。例えば、図9中の矢印Y方向に組み付けられる場合がある。この場合、ガスケット100における第2シール突起部112には、前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に
力が加わるため、第2シール突起部112は倒れるように変形してしまう。そのため、ガスケット100は、図示の断面において幅方向(左右方向)の中心に対して略対称的な状態を保ったまま圧縮することができず、当該中心に対して非対称的な状態で圧縮してしまう。また、ガスケット100は環状であることから、第2シール突起部112に加えられる力の方向は、力が与えられる部位によって異なるため、変形の仕方も部位により異なる。従って、シール性能が不安定になってしまう。
【0008】
また、第2シール突起部112の変形の仕方によっては、図10に示すように、第2シール突起部112の先端付近Zが、インテークマニホールド200における環状溝201の開口端縁付近と、シリンダーブロック300の取付面301との間に噛み込まれてしまうことも考えられる。この場合には、先端付近Zに亀裂が生じたり、欠けが生じたりして、シール機能が損なわれてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−3130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、2部材が、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組む付けられる場合であっても、安定したシール性能を発揮するガスケット及び密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0012】
すなわち、本発明のガスケットは、
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットにおいて、
前記2部材が前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられることにより、これら2部材により圧縮されるガスケットであって、
ガスケット本体部から前記2部材のうちの他方の部材に向かい、かつ前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備え、
該環状突起部は、その表面が前記他方の部材側に向くテーパ面を有しており、
前記テーパ面における中心軸線は、前記2部材の組み付け時において前記対向面に垂直な方向と一致するように設定されており、かつ前記テーパ面のテーパ角度γは、前記中心軸線に対する前記2部材の組み付け方向の傾きをθとした場合に、γ>2θを満たすことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、2部材を組み付ける過程で、ガスケットに設けられている環状突起部におけるテーパ面が、他方の部材に突き当たる。そして、このテーパ面が上記のような関係を満足することから、ガスケットが圧縮されるにつれて、テーパ面が凸となる方向に湾曲するように環状突起部が変形していく。このように、2部材を組み付けることによって、ガスケットに設けられた環状突起部を所望の方向に変形させることができる。言い換えれば、環状突起部の変形の仕方を制御することができる。従って、安定したシール性能を発揮させることができる。
【0014】
ガスケット本体部の外周側と内周側には、前記環状溝内においてガスケット本体部が倒れることを抑制する突起が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられており、
前記2部材により圧縮される前の状態において、前記環状突起部が伸びる方向とは逆側
の周面に設けられた前記複数の突起における突出長さをt1とし、前記テーパ面における前記環状突起部が伸びる方向の長さをt2とし、前記逆側の周面に設けられた前記複数の突起と前記環状溝の側壁面との間の隙間をt3とし、前記環状溝の横幅をWとした場合に、t1+t2+t3<Wを満たすとよい。
【0015】
これにより、2部材によってガスケットが圧縮されて、環状突起部が倒れるように変形した状態であっても、その先端が、環状溝の外側に飛び出てしまうことを抑制できる。
【0016】
また、本発明の密封構造は、
互いに組み付けられる2部材と、
前記2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットと、を備える密封構造において、
前記2部材は、前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられるように構成され、かつこれら2部材の組み付けによって前記ガスケットが圧縮されるように構成された密封構造であって、
前記ガスケットは、ガスケット本体部から前記2部材のうちの他方の部材に向かい、かつ前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部が備えられており、
該環状突起部は、その表面が前記他方の部材側に向くテーパ面を有しており、
前記テーパ面における中心軸線は、前記2部材の組み付け時において前記対向面に垂直な方向と一致するように設定されており、かつ前記テーパ面のテーパ角度γは、前記中心軸線に対する前記2部材の組み付け方向の傾きをθとした場合に、γ>2θを満たすことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、2部材を組み付ける過程で、ガスケットに設けられている環状突起部におけるテーパ面が、他方の部材に突き当たる。そして、このテーパ面が上記のような関係を満足することから、ガスケットが圧縮されるにつれて、テーパ面が凸となる方向に湾曲するように環状突起部が変形していく。このように、2部材を組み付けることによって、ガスケットに設けられた環状突起部を所望の方向に変形させることができる。言い換えれば、環状突起部の変形の仕方を制御することができる。従って、安定したシール性能を発揮させることができる。
【0018】
前記ガスケットにおけるガスケット本体部の外周側と内周側には、前記環状溝内においてガスケット本体部が倒れることを抑制する突起が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられており、
前記2部材により圧縮される前の状態において、前記環状突起部が伸びる方向とは逆側の周面に設けられた前記複数の突起における突出長さをt1とし、前記テーパ面における前記環状突起部が伸びる方向の長さをt2とし、前記逆側の周面に設けられた前記複数の突起と前記環状溝の側壁面との間の隙間をt3とし、前記環状溝の横幅をWとした場合に、t1+t2+t3<Wを満たすことを特徴とする。
【0019】
これにより、2部材によってガスケットが圧縮されて、環状突起部が倒れるように変形した状態であっても、その先端が、環状溝の外側に飛び出てしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、2部材が、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組む付けられる場合であっても、安定したシール性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す模式的断面図)である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係るガスケットの概略図である。
【図3】図3は図1の一部を拡大した拡大図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係る密封構造における各部の角度寸法に関する説明図である。
【図5】図5は本発明の実施例1に係るガスケットにおける2部材の組み付け後の状態を示す模式的断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例1に係る密封構造における各部の長さ寸法に関する説明図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図(2部材を組み付ける前の状態を示す模式的断面図)の一部を拡大した拡大図である。
【図8】図8は本発明の実施例2に係る密封構造における各部の角度寸法に関する説明図である。
【図9】図9は従来例に係るガスケットの装着時の様子を示す模式的断面図である。
【図10】図10は従来例に係るガスケットにおける2部材の組み付け後の状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
(実施例1)
図1〜図6を参照して、本発明の実施例1に係るガスケット及びこれを備えた密封構造について説明する。なお、本実施例においては、密封構造を構成する2部材が、インテークマニホールドとシリンダーブロックである場合を例にして説明する。
【0024】
<密封構造>
特に、図1を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造全体の構成について説明する。インテークマニホールド200とシリンダーブロック300は、図1中の矢印V方向に組み付けられるように構成されている。ここで、これらの組み付け方向Vは、図1から明らかなように、これらの対向面に垂直な方向に対して傾いた方向である。
【0025】
また、インテークマニホールド200におけるシリンダーブロック300との対向面側には環状溝201が設けられている。この環状溝201に、ガスケット10が装着される。このガスケット10は、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との対向面間の隙間を封止するために用いられる。
【0026】
本実施例に係るインテークマニホールド200は、V型構造であり、吸気管がV字状に分岐する構成となっている。これに伴い、吸気管の先端が突き当たるシリンダーブロック300の取付面301は傾斜面によって構成されている。
【0027】
<ガスケット>
特に、図2及び図3を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットについて詳細に説明する。図2(a)は平面図、同図(b)は(a)中のAA断面図、同図(c)は(a)中のBB断面図である。また、図3は、図1においてガスケットの付近を拡大した図である。
【0028】
本実施例に係るガスケット10は、断面が縦長形状のガスケット本体部11と、環状溝
201の溝底面に密着する突起部11aと、シリンダーブロック300の取付面301に密着する環状突起部11bとを備えている。この環状突起部11bは、ガスケット本体部11からシリンダーブロック300の取付面301に向かい、かつインテークマニホールド200とシリンダーブロック300との対向面に対して垂直な方向(図3中、矢印I方向)に対して傾いた方向に伸びるように構成されている。より具体的には、環状突起部11bは外径側に傾いた方向に伸びるように構成されている。また、この環状突起部11bは、その表面がシリンダーブロック300の取付面301側に向くテーパ面11cを有している。
【0029】
また、ガスケット本体部11の外周側と内周側には、環状溝201内においてガスケット本体部11が倒れることを抑制する突起12,13が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられている。
【0030】
<環状突起部>
特に、図4〜図6を参照して、環状突起部11bについて、より詳細に説明する。図4においては、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300とを組み付ける際における、各部の角度寸法の関係を示している。なお、図4中、環状突起部11bについては、そのテーパ面11cのみを図示している。
【0031】
本実施例において、テーパ面11cにおける中心軸線Tは、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との組み付け時において、これらの対向面に対して垂直な方向(図3中I方向)と一致するように設定されている。
【0032】
また、テーパ面11cのテーパ角度γは、中心軸線Tに対するインテークマニホールド200とシリンダーブロック300との組み付け方向Vの傾きをθとした場合に、γ>2θを満たすように構成されている。
【0033】
ここで、θとγの好適な例としては、θ=45°,γ=120°を挙げることができる。なお、本実施例においては、シリンダーブロック300が水平面に設置された状態で、このシリンダーブロック300に対してインテークマニホールド200を組み付ける場合には、インテークマニホールド200を鉛直方向に移動させるように組み付ける。従って、図4から明らかなように、シリンダーブロック300の取付面301の傾斜角度と上記のθは同一の角度となる。言い換えれば、上記のθは取付面301の傾斜角度となる。
【0034】
以上のような構成により、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300とを組み付ける過程で、ガスケット10に設けられている環状突起部11bにおけるテーパ面11cが、シリンダーブロック300の取付面301に突き当たる。そして、このテーパ面11cが上記のような関係を満足することから、ガスケット10が圧縮されるにつれて、テーパ面11cが凸となる方向に湾曲するように環状突起部11bが変形していく。図5はインテークマニホールド200とシリンダーブロック300とを組み付けた状態を示している。
【0035】
次に、各部の長さ寸法の関係について、特に、図2(c)及び図6を参照して説明する。なお、図6においては、環状溝201内にガスケット10が装着された状態の各部の寸法を示したものである。ただし、説明の便宜上、ガスケット10については、テーパ面11cの位置と突起12,13の位置のみを示している。なお、テーパ面11cについては、ガスケット10が圧縮される前の状態を点線で示し、圧縮後の状態を実線で示している。また、突起12,13については、ガスケット10が圧縮される前の状態の位置を示している。
【0036】
ここで、ガスケット10が圧縮される前の状態において、環状突起部11bが伸びる方向とは逆側の周面(本実施例では、内周面)に設けられた複数の突起13における突出長さをt1とする。また、ガスケット10が圧縮される前の状態において、テーパ面11cにおける環状突起部11bが伸びる方向の長さをt2とする。更に、ガスケット10が圧縮される前の状態において、環状突起部11bが伸びる方向とは逆側の周面(本実施例では、内周面)に設けられた複数の突起13と環状溝201の側壁面との間の隙間をt3とする。
【0037】
このとき、本実施例においては、環状溝201の横幅をWとした場合に、t1+t2+t3<Wを満たすように構成されている。
【0038】
このように構成されることで、ガスケット10が圧縮されて、環状突起部11bが倒れるように変形した状態であっても、その先端が、環状溝201の外側に飛び出てしまうことを抑制できる。
【0039】
<本実施例の優れた点>
以上のように、本実施例に係るガスケット10、及びこれを備えた密封構造によれば、ガスケット10が圧縮されるにつれて、テーパ面11cが凸となる方向に湾曲するように環状突起部11bが変形していく。このように、本実施例によれば、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300とを組み付ける際に、ガスケット10に設けられた環状突起部11bを所望の方向に変形させることができる。言い換えれば、環状突起部11bの変形の仕方を制御することができる。従って、安定したシール性能を発揮させることができる。
【0040】
また、本実施例によれば、上記の通り、ガスケット10が圧縮されて、環状突起部11bが倒れるように変形した状態であっても、その先端が、環状溝201の外側に飛び出てしまうことを抑制できる。従って、環状突起部11bの先端が、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との間の隙間に噛み込まれてしまうことに起因する亀裂や欠けの発生を抑制することができる。これにより、シール性能の低下を抑制できる。
【0041】
(実施例2)
図7及び図8には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、環状突起部が外径側に傾いた方向に伸びるように構成された場合を示した。これに対して、実施例2では、環状突起部が内径側に傾いた方向に伸びるように構成された場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0042】
図7に示すように、本実施例に係るガスケット15においても、上記実施例1の場合と同様に、シリンダーブロック300の取付面301に密着する環状突起部15bを備えている。そして、この環状突起部15bは、上記実施例1の場合と同様に、ガスケット本体部11からシリンダーブロック300の取付面301に向かい、かつインテークマニホールド200とシリンダーブロック300との対向面に対して垂直な方向(図7中、矢印I方向)に対して傾いた方向に伸びるように構成されている。
【0043】
そして、本実施例においては、この環状突起部15bは、実施例1の場合とは異なり、内径側に傾いた方向に伸びるように構成されている。また、この環状突起部15bは、その表面がシリンダーブロック300の取付面301側に向くテーパ面15cを有している。
【0044】
なお、特に図示はしないが、ガスケット本体部11の外周側と内周側に、環状溝201
内においてガスケット本体部11が倒れることを抑制する突起が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられている点については、実施例1の場合と同様である。
【0045】
特に、図8を参照して、環状突起部15bについて、より詳細に説明する。図8においては、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300とを組み付ける際における、各部の角度寸法の関係を示している。なお、図8中、環状突起部15bについては、そのテーパ面15cのみを図示している。
【0046】
本実施例において、テーパ面15cにおける中心軸線Tは、上記実施例1の場合と同様に、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300との組み付け時において、これらの対向面に対して垂直な方向(図7中I方向)と一致するように設定されている。
【0047】
また、テーパ面15cのテーパ角度γは、中心軸線Tに対するインテークマニホールド200とシリンダーブロック300との組み付け方向Vの傾きをθとした場合に、上記実施例1の場合と同様に、γ>2θを満たすように構成されている。
【0048】
以上のような構成により、本実施例においても、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300とを組み付ける過程で、ガスケット15に設けられている環状突起部15bにおけるテーパ面15cが、シリンダーブロック300の取付面301に突き当たる。そして、このテーパ面15cが上記のような関係を満足することから、ガスケット15が圧縮されるにつれて、テーパ面15cが凸となる方向に湾曲するように環状突起部11bが変形していく。
【0049】
従って、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。なお、各部の長さ寸法についても上記実施例1の場合と同様の関係(t1+t2+t3<W)を満たしている。従って、本実施例においても、ガスケット15が圧縮されて、環状突起部15bが倒れるように変形した状態であっても、その先端が、環状溝201の外側に飛び出てしまうことを抑制できる。
【0050】
(その他)
本実施例においては、ガスケットが取付けられる2部材として、インテークマニホールド200とシリンダーブロック300の場合を示したが、当該2部材は、これらに限られるものではなく、本発明のガスケット及び密封構造は種々の装置に適用し得る。
【符号の説明】
【0051】
10 ガスケット
11 ガスケット本体部
11a 突起部
11b 環状突起部
11c テーパ面
12,13 突起
15 ガスケット
15b 環状突起部
15c テーパ面
200 インテークマニホールド
201 環状溝
300 シリンダーブロック
301 取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットにおいて、
前記2部材が前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられることにより、これら2部材により圧縮されるガスケットであって、
ガスケット本体部から前記2部材のうちの他方の部材に向かい、かつ前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部を備え、
該環状突起部は、その表面が前記他方の部材側に向くテーパ面を有しており、
前記テーパ面における中心軸線は、前記2部材の組み付け時において前記対向面に垂直な方向と一致するように設定されており、かつ前記テーパ面のテーパ角度γは、前記中心軸線に対する前記2部材の組み付け方向の傾きをθとした場合に、γ>2θを満たすことを特徴とするガスケット。
【請求項2】
ガスケット本体部の外周側と内周側には、前記環状溝内においてガスケット本体部が倒れることを抑制する突起が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられており、
前記2部材により圧縮される前の状態において、前記環状突起部が伸びる方向とは逆側の周面に設けられた前記複数の突起における突出長さをt1とし、前記テーパ面における前記環状突起部が伸びる方向の長さをt2とし、前記逆側の周面に設けられた前記複数の突起と前記環状溝の側壁面との間の隙間をt3とし、前記環状溝の横幅をWとした場合に、t1+t2+t3<Wを満たすことを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
互いに組み付けられる2部材と、
前記2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝に装着され、これら2部材の対向面間の隙間を封止する環状のガスケットと、を備える密封構造において、
前記2部材は、前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に組み付けられるように構成され、かつこれら2部材の組み付けによって前記ガスケットが圧縮されるように構成された密封構造であって、
前記ガスケットは、ガスケット本体部から前記2部材のうちの他方の部材に向かい、かつ前記対向面に垂直な方向に対して傾いた方向に伸びる環状突起部が備えられており、
該環状突起部は、その表面が前記他方の部材側に向くテーパ面を有しており、
前記テーパ面における中心軸線は、前記2部材の組み付け時において前記対向面に垂直な方向と一致するように設定されており、かつ前記テーパ面のテーパ角度γは、前記中心軸線に対する前記2部材の組み付け方向の傾きをθとした場合に、γ>2θを満たすことを特徴とする密封構造。
【請求項4】
前記ガスケットにおけるガスケット本体部の外周側と内周側には、前記環状溝内においてガスケット本体部が倒れることを抑制する突起が、周方向に各々間隔を空けて複数設けられており、
前記2部材により圧縮される前の状態において、前記環状突起部が伸びる方向とは逆側の周面に設けられた前記複数の突起における突出長さをt1とし、前記テーパ面における前記環状突起部が伸びる方向の長さをt2とし、前記逆側の周面に設けられた前記複数の突起と前記環状溝の側壁面との間の隙間をt3とし、前記環状溝の横幅をWとした場合に、t1+t2+t3<Wを満たすことを特徴とする請求項3に記載の密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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