説明

ガスケット

【課題】気密室の開口が扉若しくは蓋によって閉塞されるときに、開口を囲むように配置されたガスケットのガスケット当たりが当該開口の全周に亘って一様となるようなガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケットGは、開口を有する第1の部材、又は前記開口を閉塞する第2の部材の一方に取り付けられるガスケット本体部10と、先端側22がガスケット本体部10の上端面12aに対して傾斜し、ガスケット本体部10の取り付けられた第1の部材又は第2の部材と反対側の部材に気密状態で接するようにガスケット本体部10から伸びる気密保持片20と、ガスケット本体部10に対する気密保持片20の先端側22の接近を許容しつつガスケット本体部10と気密保持片20とを連結する位置保持部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を有する本体部とこの開口を閉塞する扉(又は蓋)とを備えて開口が扉により閉塞されることで気密室が形成される構造体において、前記開口が扉によって閉塞されるときに前記開口の周囲で前記扉と前記本体部との間を密閉し、前記気密室の密閉状態を保持するためのガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスケットとしては、特許文献1に記載のガスケットが知られている。このガスケットは、容器等の本体部に形成された矩形状の開口の開口周縁部に沿って取り付けられ、前記開口が扉(又は蓋)によって閉塞されたときに、前記本体部と前記扉との間を密閉して前記本体部の気密室の気密状態を保持するものである。
【0003】
具体的には、ガスケットは、図11に示されるように、長手方向と直交する方向の断面(横断面)において、容器等の開口周縁部の前記開口に沿って設けられた嵌合部に挿入係止される係合部102と、中空部104aが形成されたガスケット本体部104と、このガスケット本体部104から伸び、当該ガスケット本体部104の表面を覆う方向へ湾曲した気密保持片(舌片)106とを備える。この気密保持片106は、前記本体部の開口が扉によって閉塞されたときに、前記開口の全周に亘って扉と気密状態で接することにより、前記気密室の気密状態を保持することができる。
【特許文献1】特開平9−152037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のガスケット100が矩形状の開口に沿って囲むように取り付けられる場合、前記開口の角部においては、ガスケット100を直角に屈曲させて取り付けなければならず、この部位では図12に示すようにガスケット本体部104が変形し、これにより気密保持片106が起き上がった状態となる。
【0005】
即ち、前記矩形状の開口に沿ってガスケット100が取り付けられると、前記開口の周囲において角部では気密保持片106が起き上がった状態(図12参照)となり、他の部位では気密保持片106の起き上がりが生じていない状態(自然状態の位置:図11参照)となる。
【0006】
特許文献1においては、この角部での気密保持片106の起き上がりによって、前記気密室の密閉性(気密性)を保持することが可能となる旨記載されているが、ガスケット100が取り付けられる扉や容器等の構造や使用目的によっては、前記開口の全周における扉等と気密保持片106との接触状態(ガスケット当たり)が一様でないと気密室の気密性を保持できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、気密室の開口が扉若しくは蓋によって閉塞されるときに、前記開口を囲むように配置されたガスケットのガスケット当たりが当該開口の全周に亘って一様となるようなガスケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係るガスケットは、開口を有する第1の部材と前記開口を閉塞する第2の部材とを有して前記開口が前記第2の部材で閉塞されることにより気密室が形成される構造体に用いられ、前記開口の周囲で前記第1の部材と前記第2の部材との間を密閉して前記気密室の気密状態を保持するために前記開口の周囲に沿って配置できる長さを有するガスケットであって、前記第1の部材の開口周縁部、又は前記第2の部材における前記開口周縁部に対応する部位の一方に取り付けられ、この取り付けられた部位と反対側の端部に当該取り付けられた部位と平行な上端面を有するガスケット本体部と、弾性体で形成され、このガスケットの長手方向の任意の位置での横断面において、先端側が前記上端面に対して傾斜し、この傾斜した先端側が前記開口が閉塞されるときに前記ガスケット本体部の取り付けられた第1の部材又は第2の部材と反対側の部材に対して気密状態で接するように前記ガスケット本体部から伸びる気密保持片と、前記ガスケット本体部に対する前記気密保持片の先端側の接近を許容しつつ当該ガスケット本体部と当該気密保持片とを連結する位置保持部とを備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、前記開口が閉塞されるときに、前記気密保持片の先端側が前記ガスケット本体部の取り付けられた第1の部材又は第2の部材と反対側の部材と接し、さらに前記第1の部材と第2の部材との間を狭くして前記気密保持片が前記ガスケット本体部側に押し倒されることにより、その弾性力によって自然状態の位置まで復帰しようとする当該気密保持片の先端側と当該先端側が接している前記第1の部材又は前記第2の部材とが密着して、前記気密室の気密状態が保持される。
【0010】
また、前記開口が多角形状等で角部を有する場合の開口の角部においては、当該ガスケット本体部が前記角部に沿って折り曲げられることで前記気密保持片が前記ガスケット本体部の上端面に対して自然状態の位置から起き上がろうとしたときに、この起き上がりが前記位置保持部によって引き止められる。そのため、前記開口が閉塞されるときに前記開口の全周に亘って前記気密保持片と前記第1の部材又は前記第2の部材との接触状態、即ち、ガスケット当たりが一様となる。
【0011】
尚、本発明において自然状態の位置とは、前記気密保持片に力が加わっていない自然状態での当該気密保持片の位置のことをいう。
【0012】
本発明に係るガスケットにおいては、前記位置保持部は、弾性体で形成され、前記横断面において、その中間部が屈曲又は湾曲するように前記ガスケット本体部の上端面と前記気密保持片の先端側の前記上端面を臨む面とを連結する構成が好ましい。
【0013】
このように構成されることで、前記位置保持部は、前記気密保持片が自然状態の位置から起き上がろうとしたときに前記気密保持片を引っ張って前記起き上がりを抑制する一方、前記気密保持片の先端側と当該先端側が接する前記第1の部材又は前記第2の部材とをより密着させるために前記第1の部材と前記第2の部材との間を狭くして前記気密保持片の先端側を前記ガスケット本体側に押し倒すときにこの押し倒しを妨げない。
【0014】
即ち、前記気密保持片が自然状態の位置から起き上がろうとしたときに、前記上端面とこの上端面を臨む面とが前記位置保持部によって互いに連結されているために当該位置保持部によって引っ張られ、前記気密保持片の自然状態の位置からの起き上がりが抑制される一方、前記第1の部材と前記第2の部材との間隔を狭くして前記気密保持片の先端側が前記ガスケット本体部側に押し倒される(前記面同士が互いに接近する)ときに、前記位置保持部が突っ張り棒のようにならず前記横断面に沿って前記中間部で折れ曲がるため、前記押し倒しが妨げられない。
【0015】
しかも、前記位置保持部は、弾性体で形成されているため、前記のように折れ曲がる(弾性変形する)と元に戻ろうとして前記先端側が接する前記第1の部材、又は前記第2の部材に当該気密保持片の先端側を押し付けるため気密性がより向上する。
【0016】
前記位置保持部は、前記ガスケットの長手方向に連続し、当該位置保持部にはこの位置保持部と前記ガスケット本体部と前記気密保持片とで囲まれた中空部と外部とを連通する連通部が形成されるのが好ましい。
【0017】
このように、前記位置保持部が前記ガスケットの長手方向に連続することで、前記第1の部材、又は前記第2の部材に前記ガスケットが取り付けられたときに、当該ガスケットの長手方向のいずれの位置においても、前記気密保持片の先端側の自然状態の位置からの前記上端面に対する起き上がりが抑制される。
【0018】
また、前記連通部によって外部から前記中空部内への空気の出入りが可能となるため、雰囲気温度によって前記中空部内の空気が加熱又は冷却されることで膨張又は収縮しても、この中空部内の空気が前記連通部から出入りすることによって当該ガスケットの変形が抑制される。
【0019】
しかも、前記連通部が前記位置保持部にのみ形成されることで、前記気密保持片や前記ガスケット本体部の気密性や強度の低下を生じさせることなく雰囲気温度による前記ガスケットの変形の抑制が可能となる。
【0020】
また、前記ガスケット本体部は、前記第1の部材の開口周縁部、又は前記第2の部材の前記対応する部位に沿って設けられる溝状の凹部に挿入される挿入片を有し、この挿入片には、前記溝状の凹部への挿入方向と交差する方向に突出して前記溝状の凹部内に突出している突出部と係合可能な係合部が設けられてもよい。
【0021】
かかる構成によれば、前記挿入片が前記溝状の凹部に挿入されることで前記係合部が前記凹部内の突出部と係合し、前記ガスケット本体部が前記第1の部材、又は前記第2の部材に取り付けられるため、接着やリベット等によって取り付ける必要がなく、当該ガスケットの前記第1の部材、又は前記第2の部材への着脱が容易になる。
【発明の効果】
【0022】
以上より、本発明によれば、気密室の開口が扉若しくは蓋によって閉塞されるときに、前記開口を囲むように配置されたガスケットのガスケット当たりが当該開口の全周に亘って一様となるようなガスケットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、以下の図1乃至図8(b)を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は、ガスケットの正面図である。背面図は、図1の正面図と左右対称にあらわれるため省略する。図2(a)はガスケットの左側面図であり、図2(b)は中間省略を用いた参考図であり、図2(c)は、ガスケットの右側面図である。図3(a)は、ガスケットの平面図であり、図3(b)は、ガスケットの底面図である。図4は、ガスケットの拡大正面図である。図5(a)は、A−B部拡大左側面図であり、図5(b)は、A−B部拡大右側面図である。図6(a)は、A−B部拡大平面図であり、図6(b)は、A−B部拡大底面図である。図7(a)は、C−C断面図であり、図7(b)は、D−D断面図である。図8(a)は、ガスケットの使用状態を示す参考図であり、図8(b)は、ガスケットの取り付け状態を示す参考図である。尚、本実施形態に係るガスケットは、図2(a)の左側面図において、左右にのみ連続する。
【0025】
前記の図1乃至図8(b)に示される本実施形態に係るガスケットGは、信頼性試験等の環境試験を行うための環境試験装置50に用いられる(図8(a)参照)。この環境試験装置50は、開口52を有する試験槽(第1の部材)54と開口52を閉塞する扉(第2の部材)56とを有し、開口52が扉56で閉塞されることにより槽内空間(気密室)Sが形成される。ガスケットGは、本実施形態においては、環境試験装置50の扉56に取り付けられ、この扉56によって試験槽54の開口52が閉塞されるときに、開口52の周囲で扉56と試験槽54との間を密閉して槽内空間Sの気密状態を保持するためのものである(図8(b)参照)。このガスケットGは、開口52の周囲で気密状態を保持するために当該開口52の周囲に沿って配置できる長さを有する。
【0026】
尚、ガスケットGは、扉56ではなく、試験槽54の開口周縁部54aに取り付けられてもよい。また、ガスケットGが取り付けられるのは、蓋等の部材で気密状に塞ぐ部屋を有する槽であればよく、環境試験装置50に限定されるわけではない。
【0027】
以下、ガスケットGについて具体的に説明する。尚、以下の説明における方向(上下や左右等)は、図4を基準とする。
【0028】
ガスケットGは、弾性材料(弾性体)により形成されており、本実施形態においては、シリコンゴムによって形成されている。図4に示すように、このガスケットGは、扉56に取り付けられる本体部(ガスケット本体部)10と、本体部10から伸びる気密保持片20と、本体部10と気密保持片20とを連結する位置保持部30とを備え、射出成型、プレス成型等によって一体成型される。ガスケットGは、後述する位置保持部30の連通孔(連通部)34が設けられた位置を除き、当該ガスケットGの長手方向(図4において紙面と直交する方向)の任意の位置における当該長手方向と直交する方向の断面形状が正面図(図1及び図4)における形状と同一形状となるように形成されている。
【0029】
本体部10は、気密保持片20や位置保持部30が設けられる基準部12と、この基準部12の下側に設けられ、扉56における試験槽54の開口周縁部54aに対応する部位(取付部位)56a(図8(a)参照)に着脱可能に取り付けられる挿入部(挿入片)14とを有する。
【0030】
基準部12は、図4において左側に向かって水平若しくは略水平に伸び、上端に上端面12aを有する。基準部12の基部(図4においては右側端部)からは上側に気密保持片20が伸びると共に、下側に挿入部14が伸びる。また、基準部12の先端部(図4においては左側端部)からは上側に位置保持部30が伸び、そのさらに先端側(図4においては左側端縁)が下方に向かって屈曲している。
【0031】
挿入部14は、基準部12から所定距離だけ垂下するように伸びる垂下部14bと、この垂下部14bの下端から左側に向かって基準部12と平行若しくは略平行となるように伸びる先端部14aとを有する。この挿入部14の先端部14aは、途中から先端に向かって厚みが漸減し、先端に係合部16が設けられている。
【0032】
係合部16は、挿入部14の先端部14aが伸びる方向(水平方向)と交差する方向に突出している。具体的には、係合部16は、挿入部14の先端から右上方に向かって伸びた部位である。
【0033】
気密保持片20は、本体部10が環境試験装置50の扉56に取り付けられたときに、試験槽54の開口周縁部54a側に本体部10(基準部12)から伸びている部位であり、その先端側に本体部10の基準部12(上端面12a)に対して傾斜する傾斜部22を有する。この傾斜部22は、試験槽54の開口52が扉56により閉塞されるときに、試験槽54の開口周縁部54aに対して傾斜した状態で且つ当該開口周縁部54aと気密状態で接する部位である(図8(b)参照)。具体的には、気密保持片20は、基準部12の基部(右側端部)から上方に所定距離伸びたあと基準部12に沿って(水平に)伸びる気密保持片基部24と、この気密保持片基部24の先端から左上方へ向かって斜めに伸びる傾斜部22とを有する。これら気密保持片基部24と傾斜部22との連接位置は、図4の水平方向における基準部12の略中央に相当する位置である。
【0034】
傾斜部22は、先端に向かって薄くなるように形成され、上面(基準部12を臨む面と反対側の面)における気密保持片基部24との連接位置近傍に当該傾斜部22と略直交する方向に伸びる立上り部26が設けられ、下面(基準部12を臨む面)には長手方向に沿った複数本(図4では3本)の溝mが設けられている。
【0035】
位置保持部30は、本体部10(基準部12)に対する気密保持片20の先端側(傾斜部22)の接近を許容しつつ本体部10と気密保持片20の中間部位とを連結する部位である。また、位置保持部30は、気密保持片20の先端側の基準部12に対する起き上がりを抑制する部位でもある。具体的には、位置保持部30は、下端が基準部12の先端部に接合されると共に上端が気密保持片20の傾斜部22に接合されるように基準部12と傾斜部22とを連結している。詳細には、位置保持部30は、基準部12の傾斜部22を臨む面(上端面)12aにおける先端側部位と、傾斜部22の基準部12を臨む面22aにおける気密保持片基部24側部位とを連結している。尚、位置保持部30の上端は、傾斜部22の前記基準部12を臨む面22a上であればより先端側に接続されてもよく、位置保持部30の下端は、基準部12の上端面12a上であればより基部側に接続されてもよい。
【0036】
この位置保持部30は、その中間部が屈曲している。本実施形態においては、位置保持部30の中間部は、基準部12と気密保持片20と位置保持部30とで囲まれた中空部32の外側に向かって膨出するように屈曲しているが、これに限定されず、内側に向かって膨出するように屈曲してもよい。この屈曲部位は、本実施形態の位置に限定されず、より上端側(傾斜部22側)又はより下端側(基準部12側)であってもよい。また、位置保持部30は、その中間部が前記内側又は外側に向かって円弧状に膨出するように湾曲していてもよい。
【0037】
この位置保持部30には、図2(a)、図5、図7(a)及び図7(b)にも示されるように、中空部32と外部とを連通する連通孔34が設けられている。この連通孔34は、本実施形態においては、長手方向に一定の間隔をおいて複数設けられている(図2(b)参照)。
【0038】
以上のように構成されるガスケットGは、図8(a)及び図8(b)に示すように扉56における試験槽54の開口周縁部54aに対応する部位(取付部位)56aに取り付けられる。
【0039】
この扉56の取付部位56aは、取付部材58を有し、この取付部材58によってガスケットGの挿入部14が挿入される溝状の取付凹部60が形成される。詳細には、取付部材58は、扉56が試験槽54の開口52を閉塞したときに開口(本実施形態においては、矩形の開口)52の周囲を囲うように扉56に取り付けられ、槽内空間S側の端縁(図8(b)においては右側端縁)と扉56との間に開口52の径方向に窪んだ溝状の取付凹部60を形成する。この取付凹部60は、開口52に沿って当該開口52を囲むように形成されており、取付凹部60内にはガスケットGの挿入部14が挿入されたときに、この挿入部14の係合部16と係合する突出部62が突出している(図10参照)。
【0040】
このように構成される取付凹部60内にガスケットGの挿入部14の先端部14aが挿入(圧入)される。そうすると、係合部16が挿入部14の先端部14a側に折畳まれた状態で当該挿入部14の先端部14aが取付凹部60内に入り込み、係合部16が突出部62と係合して、ガスケットGが係止される(図10参照)。
【0041】
このように扉56に取り付けられたときに、本実施形態に係るガスケットGでは開口52の角部C(図8(a)参照)においても位置保持部30により気密保持片20の基準部12(上端面12a)に対する起き上がりが抑制される。
【0042】
具体的には、開口52が多角形状(本実施形態では矩形状)で角部を有する場合において、この開口52の周囲を囲むようにガスケットGが取り付けられたときに、当該開口52の角部Cにおいては本体部10が前記角部Cに沿って折り曲げられ(図10においては本体部10が右側に折り曲げられ)、これにより気密保持片20が基準部12に対して自然状態の位置から起き上がろうとする。即ち、基準部12の基部側が開口52の内側を向くように本体部10が折り曲げられると、これにより気密保持片20が起き上がろうとする。この場合、例えば、図9に示されるように、位置保持部30がなければ、気密保持片20は、自然状態の位置NPから起き上がり状態の位置SP2まで大きく起き上がる。しかし、図10に示す本実施形態のガスケットGのように、位置保持部30が設けられることにより、気密保持片20は、自然状態の位置NPから位置SP1までの僅かな起き上がりに抑制される。
【0043】
詳細には、基準部12の上端面12aと傾斜部22における前記上端面12aを臨む面22aとが位置保持部30によって互いに連結されているため、気密保持片20が自然状態の位置NPから起き上がろうとしたときに(傾斜部22が基準部12から離間しようとしたときに)、当該位置保持部30によって引っ張られ気密保持片20の自然状態の位置NPからの起き上がりが抑制される。そのため、気密保持片20が開口52の全周に亘って自然状態の位置若しくは略自然状態の位置となり、開口52が扉56により閉塞されるときに開口52の全周に亘って気密保持片20(傾斜部22)と試験槽54の開口周縁部54aとの接触状態、即ち、ガスケット当たりが一様となる。その結果、槽内空間Sの気密状態が好適に保持される。
【0044】
また、当該ガスケットGにおいては、位置保持部30が長手方向に連続するため、長手方向の何れの位置においても位置保持部30により気密保持片20の起き上がりが抑制され、これにより長手方向の何れの部位が開口52の角部Cに取り付けられても当該角部Cにおける気密保持片20の起き上がりが抑制される。
【0045】
以上のように扉56に取り付けられたガスケットGは、以下のようにして扉56の取付部位56aと試験槽54の開口周縁部54aとの間を密閉し、槽内空間Sを気密状態にする。
【0046】
ガスケットGを取り付けられた扉56が閉じると、気密保持片20の傾斜部22が試験槽54の開口周縁部54aに接する。さらに扉56が閉じられ当該扉56と試験槽54の開口周縁部54aとの間が狭くなると、気密保持片20の傾斜部22が試験槽54の開口周縁部54aにより基準部12に向かって押し倒される。気密保持片20はシリコンゴム(弾性体)で形成されているため、傾斜部22が撓るように弾性変形して押し倒される。このとき、傾斜部22は、基準部12を臨む面22a側に長手方向に沿った複数の溝mが設けられているため撓り易い。
【0047】
このようにして押し倒された当該気密保持片20の傾斜部22は、その弾性力によって自然状態の位置まで復帰しようとすることで試験槽54の開口周縁部54aに気密状態で密着し、これにより槽内空間Sの気密状態が保持される。
【0048】
また、前記のように扉56が閉じるときに、位置保持部30は、傾斜部22の基準部12への接近を妨げない。即ち、位置保持部30は、傾斜部22と試験槽54の開口周縁部54aとをより密着させるために扉56と試験槽54の開口周縁部54aとの間を狭くして傾斜部22を基準部12側に押し倒すときに、この押し倒しを妨げない。具体的には、扉56と試験槽54の開口周縁部54aとの間隔を狭くして気密保持片20の傾斜部22が基準部12側に押し倒されるときに、位置保持部30が突っ張り棒のようにならず、屈曲している中間部で折れ曲がるため、前記の押し倒しが当該位置保持部30によって妨げられない。しかも、位置保持部30は、シリコンゴムで形成されているため、前記のように折れ曲がる(弾性変形する)と元に戻ろうとして試験槽54の開口周縁部54aに傾斜部22を押し付け、これにより気密性がより向上する。
【0049】
環境試験装置50では、槽内空間Sの気密状態を保持しつつ当該槽内空間S内の温度を変化させることで試料に対して環境試験が行われる。このとき、ガスケットGは、槽内空間S内の高温又は低温になった空気に曝される。そのため、この熱が中空部32に伝わって当該中空部32内の空気が高温又は低温となり、膨張又は収縮する。このように雰囲気温度によって中空部32内の空気が加熱又は冷却されることで膨張又は収縮しても、この中空部32内の空気が連通孔34から出入りすることによって当該ガスケットGの変形が抑制され、これにより扉56と試験槽54の開口周縁部54aとの間の気密性が保たれる。その結果、槽内空間S内の温度(空気の温度)に関わらず、当該槽内空間Sの気密状態が好適に維持される。しかも、連通孔34が位置保持部30にのみ形成されることで、気密保持片20や本体部10の気密性や強度の低下を生じさせることなく雰囲気温度によるガスケットGの変形の抑制が可能となる。
【0050】
尚、本発明のガスケットGは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0051】
例えば、本実施形態においては、位置保持部30は、ガスケットGの長手方向に連続するように設けられているが、これに限定されず、扉56や試験槽54の開口周縁部54aにガスケットGが取り付けられたときに、少なくとも開口52の角部Cに位置する部位に位置保持部30が設けられていればよい。このように構成されても、開口52の角部Cでの気密保持片20の基準部12に対する自然状態の位置からの起き上がりが当該位置保持部30により抑制され、開口52の全周に亘ってガスケット当たりが一様となる。
【0052】
また、位置保持部30は、長手方向に断続的に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係るガスケットの正面図である。
【図2】同実施形態に係るガスケットにおける(a)は左側面図であり、(b)は連通孔の配設状態を示すために連通孔の間の部位を中間省略した参考図であり、(c)は右側面図である。
【図3】同実施形態に係るガスケットにおける(a)は平面図であり、(b)は底面図である。
【図4】同実施形態に係るガスケットの拡大正面図である。
【図5】同実施形態に係るガスケットにおける(a)は図2(a)のA−B部拡大左側面図であり、(b)は図2(a)のA−B部拡大右側面図を示す。
【図6】同実施形態に係るガスケットにおける(a)は図2(a)のA−B部拡大平面図であり、(b)は図2(a)のA−B部拡大底面図である。
【図7】同実施形態に係るガスケットにおける(a)は図5(a)のC−C断面図であり、(b)は図7(a)のD−D断面図である。
【図8】同実施形態に係るガスケットにおける(a)は環境試験装置に取り付けた場合の使用状態を示す参考図であり、(b)は環境試験装置に取り付けた状態を示す参考図である。
【図9】同実施形態に係るガスケットが開口の角部に取り付けられた場合の気密保持片の起き上がり状態を示す図である。
【図10】同実施形態に係るガスケットから位置保持部を取り除いたガスケットが開口の角部に取り付けられた場合の気密保持片の起き上がり状態を示す図である。
【図11】従来のガスケットの正面図である。
【図12】従来のガスケットが開口の角部に取り付けられた場合の気密保持片の起き上がり状態を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 本体部(ガスケット本体部)
12a 上端面
14 挿入部(挿入片)
16 係合部
20 気密保持片
22 傾斜部(気密保持片の先端側)
22a 傾斜部の上端面を臨む面
30 位置保持部
32 中空部
34 連通孔
50 環境試験装置
52 開口
54 試験槽(第1の部材)
54a 開口周縁部
56 扉(第2の部材)
56a 取付部位(開口周縁部に対応する部位)
60 取付凹部(溝状の凹部)
62 突出部
C 開口の角部
G ガスケット
S 槽内空間(気密室)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する第1の部材と前記開口を閉塞する第2の部材とを有して前記開口が前記第2の部材で閉塞されることにより気密室が形成される構造体に用いられ、前記開口の周囲で前記第1の部材と前記第2の部材との間を密閉して前記気密室の気密状態を保持するために前記開口の周囲に沿って配置できる長さを有するガスケットであって、
前記第1の部材の開口周縁部、又は前記第2の部材における前記開口周縁部に対応する部位の一方に取り付けられ、この取り付けられた部位と反対側の端部に当該取り付けられた部位と平行な上端面を有するガスケット本体部と、
弾性体で形成され、このガスケットの長手方向の任意の位置での横断面において、先端側が前記上端面に対して傾斜し、この傾斜した先端側が前記開口が閉塞されるときに前記ガスケット本体部の取り付けられた第1の部材又は第2の部材と反対側の部材に対して気密状態で接するように前記ガスケット本体部から伸びる気密保持片と、
前記ガスケット本体部に対する前記気密保持片の先端側の接近を許容しつつ当該ガスケット本体部と当該気密保持片とを連結する位置保持部とを備えることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記位置保持部は、弾性体で形成され、前記横断面において、その中間部が屈曲又は湾曲するように前記ガスケット本体部の上端面と前記気密保持片の先端側の前記上端面を臨む面とを連結することを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記位置保持部は、前記ガスケットの長手方向に連続し、当該位置保持部にはこの位置保持部と前記ガスケット本体部と前記気密保持片とで囲まれた中空部と外部とを連通する連通部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記ガスケット本体部は、前記第1の部材の開口周縁部、又は前記第2の部材の前記対応する部位に沿って設けられる溝状の凹部に挿入される挿入片を有し、この挿入片には、前記溝状の凹部への挿入方向と交差する方向に突出して前記溝状の凹部内に突出している突出部と係合可能な係合部が設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−84927(P2010−84927A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257488(P2008−257488)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】