説明

ガスサンプリング装置およびガスサンプリング方法

【課題】測定対象ガスの無駄がなく、採取先で測定対象ガスの圧力が低い場合でもサンプリングが行え、機器内の測定対象ガスだけを確実にサンプリングでき、しかも機器への悪影響を与えることがないようにする。
【解決手段】測定対象ガスとしての同位体ガスを内部に有する蒸留分離装置11と、これに連通して蒸留分離装置11からの同位体ガスを流すサンプリング配管13と、このサンプリング配管13に第1の弁14および第2の弁16を介して接続され、同位体ガスが貯められるサンプラー17と、第1の弁14と第2の弁16とをつなぐ第1の配管15から分岐された第2の配管18に第3の弁19を介して接続されるパージ容器20と、第2の配管18に第4の弁21を介して接続される真空排気ポンプ22を備え、パージ容器20の内容積がサンプリング配管13の内容積よりも大きくされたガスサンプリング装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば同位体ガスの蒸留分離装置において、この蒸留分離装置の各部位から蒸留過程の同位体ガスを採取し、その同位体濃度を測定する際などに用いられるガスサンプリング装置と、このガスサンプリング装置を用いたガスサンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同位体ガスの蒸留分離を行う場合、分離が困難なことから蒸留装置を多段に組み合わせることが多い。また、同位体の天然存在比が小さいことから、製品量は少量であり、高価となることが多い。さらに、蒸留分離装置の運転開始から製品濃度に到達するまでの時間が長くなることが多く、運転管理上蒸留分離装置の各部位での同位体濃度の管理が必要となる。
【0003】
このため、蒸留分離装置の各部位から適宜内部の同位体ガスを採取して分析を行うことになる。
従来、このような蒸留分離装置からの同位体ガスの採取には、図3に示すように、蒸留分離装置1の各部位に連通するサンプリング配管2を取り付けておき、このサンプリング配管2に弁3、弁4を介して容器状のサンプラー5を接続し、サンプラー5の出口側に弁6を取り付けた装置が用いられている。
【0004】
このサンプリング装置では、弁3、4、6を開とし、蒸留分離装置1からの測定対象ガスとなる同位体ガスを流し、配管、サンプラー5の内部のガスを十分量の同位体ガスでパージしたのち、弁6を閉としてサンプラー5内に同位体ガスを取り込み、ついで弁3、4を閉としてサンプラー5を弁3と弁4との間で切り離して、このサンプラー5を分析室に持ち込むようにしていた。
【0005】
しかし、このサンプリング方法にあっては、稀少で高価な同位体ガスを大量に廃棄しなければならない欠点がある。同位体ガスの廃棄量を少なくするため、パージ時間を短くするとサンプラー5内でのガス置換が不十分になり、正確な分析が行われないことになる。
さらに、蒸留分離装置1内の同位体ガスが大気圧以上の圧力を持っていない場合にはパージが十分に行えず、サンプリングができない問題がある。
【0006】
一方、特開平9−210880号公報、特開2000−164952号公報には、図4に示すようなガスサンプリング装置が開示されている。
このガスサンプリング装置は、測定対象ガスが存在する機器1に連通するサンプリング配管2に弁3および弁4を介して容器状のサンプラー5が接続されている。弁3と弁4をつなぐ配管10から分岐した配管7には、弁8を介して真空排気ポンプ9が接続されている。
【0007】
このサンプリング装置では、弁3を閉とし、弁4、弁8を開として真空排気ポンプ9を動作させてサンプラー5内のガスを排気する。ついで弁8を閉とし真空排気ポンプ9を停止し、弁3、弁4を開として機器1内の測定対象ガスをサンプラー5内に導入することができる。
【0008】
この先行発明のサンプリング装置にあっては、測定対象ガスを無駄にすることがなく、採取先で測定対象ガスの圧力が低い場合でもサンプリングが可能であるなどの利点がある。
【0009】
ところが、この先行発明のサンプリング装置を上述の同位体ガス蒸留分離装置からの同位体ガスのサンプリングに適用した場合には、以下のような不具合が生じる。
すなわち、蒸留分離装置1から延びるサンプリング配管2内に溜まっているガスは、装置1内の同位体ガスとその組成が異なっていることがある。これは、サンプリング配管2内では常時ガスが流れているわけではなく、ガスが停滞しているため、ガスが拡散しにくく、成分の濃度差が生じるためである。
【0010】
したがって、サンプリングに際しては、予めサンプリング配管2内に留まっているガスを除去しておく必要がある。この場合、弁3、弁8を開とし、真空排気ポンプ9を作動させれば、サンプリング配管2内のガスは真空排気ポンプ9を介して外部に排出され、目的が達成されることになる。
【0011】
しかし、サンプリング配管2内のガス量は高々100cm程度であり、一旦真空排気ポンプ9を作動させると、瞬時にこのガスが吸引されるとともに蒸留分離装置1内の測定対象ガスである同位体ガスも同時に吸引されることになり、稀少な同位体ガスが無駄になるだけではなく、蒸留分離装置1での蒸留操作にも悪影響を与えることになる。
【特許文献1】特開平9−210880号公報
【特許文献2】特開2000−164952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、本発明における課題は、測定対象ガスの無駄がなく、採取先で測定対象ガスの圧力が低い場合でもサンプリングが行え、機器内の測定対象ガスだけを確実にサンプリングでき、しかも機器への悪影響を与えることがないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、測定対象ガスを内部に有する機器と、
この機器に連通して機器からの測定対象ガスを流すサンプリング配管と、
このサンプリング配管に第1の弁および第2の弁を介して接続され、測定対象ガスが貯められるサンプラーと、
上記第1の弁と第2の弁とをつなぐ第1の配管から分岐された第2の配管に第3の弁を介して接続されるパージ容器と、
上記第2の配管に第4の弁を介して接続される真空排気ポンプを備え、
上記パージ容器の内容積がサンプリング配管の内容積よりも大きくされたことを特徴とするガスサンプリング装置である。
【0014】
請求項2にかかる発明は、第1の弁の二次側および第2の弁の一次側において着脱可能としたことを特徴とする請求項1に記載のガスサンプリング装置である。
【0015】
請求項3にかかる発明は、請求項1または2に記載のガスサンプリング装置を用い、以下の工程を順次実行することによって、機器内の測定対象ガスをサンプラー内に導入することを特徴するガスサンプリング方法である。
第1工程:真空排気ポンプを動作させて、第1の配管、第2の配管、サンプラーおよびパージ容器内を排気する。
第2工程:サンプリング配管内のガスをパージ容器内に導入する。
第3工程:真空排気ポンプを動作させ、第1の配管および第2の配管内のガスを排気する。
第4工程:機器からの測定対象ガスをサンプラー内に導入する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サンプリング配管内に留まっているガスをパージ容器に取り込むことができ、パージ容器の内容積が限られているので、機器内の測定対象ガスが余分にパージ容器に取り込まれることがない。このため、機器内での蒸留操作などに悪影響を与えることがない。
【0017】
また、機器内の稀少な測定対象ガスを無駄にすることがなく、機器側で測定対象ガスの圧力が低い場合でもサンプリングが可能である。
さらに、第1の弁の二次側および第2の弁の一次側において着脱可能としておけば、必要に応じてサンプリング装置を持ち運ぶことができ、1基のサンプリング装置で機器の色々の部位から測定対象ガスをサンプリングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明のサンプリング装置の一例を示すもので、機器として同位体ガスの蒸留分離装置を用い、測定対象ガスが同位体ガスであるものを例示する。
図1において、符号11は蒸留分離装置を示す。この蒸留分離装置11は断熱外槽12内に設置されている。
【0019】
蒸留分離装置11の所定の部位からはこの部位における同位体ガスを抜き出すサンプリング配管13が断熱外槽12を通って外部に延びており、第1の弁14の一次側に接続され、蒸留分離装置11からの同位体ガスが第1の弁14に向かって流れるようになっている。なお、この例では、サンプリング配管13から後段(下流)の構成部位をサンプリング装置と言う。
【0020】
第1の弁14の二次側には第1の配管15が接続され、第1の配管15は第2の弁16の一次側に接続され、第2の弁16の二次側はサンプラー17に接続されている。サンプラー17は、その内容積が10〜100cm程度のもので、測定対象となる同位体ガスが取り込まれるものである。
【0021】
第1の配管15は、第1の弁14と第2の弁16との間で分岐され、この分岐された第2の配管18はさらに分岐され、その一方には第3の弁19を介してパージ容器20が接続されている。その他方には第4の弁21を介して真空排気ポンプ22が接続されている。
【0022】
パージ容器20は、その内容積が少なくともサンプリング配管13の内容積よりも大きくされ、内容積の上限は蒸留分離装置11内での蒸留操作などに悪影響を与えることがない程度に適宜選定すればよい。
真空排気ポンプ22には、系内の圧力を1kPa以下にまで減圧できるものが用いられるが、限定するものではない。
さらに、第2の配管18には、圧力計23が取り付けられ、系内の圧力が測定できるようになっている。
【0023】
ついで、このサンプリング装置を用いたサンプリング方法を説明する。
このサンプリング方法は、以下の各工程を経時的に順序通りに実施することで行われる。
第1工程:まず、第1の弁14を閉、第2の弁16を開、第3の弁19を開、第4の弁21を開とし、真空排気ポンプ22を動作させて、第1の配管15、第2の配管18、サンプラー17およびパージ容器20内を排気する。
これにより、第1の弁14の二次側以降が減圧とされ、内部のガスが除去される。
【0024】
第2工程:ついで、第4の弁21を閉、第2の弁16を閉、第3の弁19を開、第1の弁14を開とし、サンプリング配管13内のガスをパージ容器20内に導入する。パージ容器20内は減圧となっているのでサンプリング配管13内のガスは自動的にパージ容器20内に移動する。
また、パージ容器20の内容積は、サンプリング配管13の内容積よりも大きいもののその容積は限られているので、この操作の際に蒸留分離装置11内の同位体ガスを吸引するとしてもその量はわずかで、蒸留分離装置11内の蒸留操作などに悪影響を与えることはない。
【0025】
第3工程:ついで、第1の弁14を閉、第2の弁16を閉、第3の弁19を閉、第4の弁21を開とし、真空排気ポンプ22を動作させ、第1の配管15および第2の配管18内のガスを排気する。
【0026】
第4工程:次に、第4の弁21を閉、第3の弁19を閉、第2の弁16を開、第1の弁14を開とし、蒸留分離装置11からの測定対象となる同位体ガスをサンプラー17内に導入する。
同位体ガスがサンプラー17に所定量導入されたのち、第1の弁14を閉、第2の弁16を閉とし、サンプラー17を取り外し、内部の同位体ガスを分析に供する。
なお、上記例において、第3工程と第4工程の間に、第1の配管15および第2の配管18内のガスを排気した後、第2の弁16を開としてサンプラー17内を再排気する工程を行ってもよく、上記例の手順に限定されるものではない。
【0027】
図2は、本発明のサンプリング装置の他の例を示すもので、図1に示したものと同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
この例では、第1の弁14の二次側と第2の弁16の一次側とに、ネジ、袋ナット、フランジなどの着脱可能な部材25、25を取り付けた点が先の例と異なるところである。
【0028】
この例では、必要に応じて第1の弁14の二次側のサンプリング装置を持ち運ぶことができ、1基のサンプリング装置で蒸留分離装置11の色々の部位から同位体ガスをサンプリングすることができる。
なお、第1の配管15を延長して分析室にサンプラー17を設置できるようにすることもできる。
【0029】
本発明では、機器としては上記説明での同位体ガスの蒸留分離装置に限られることはなく、測定対象ガスがその内部に存在する機器、例えばガス貯蔵タンクなどであってもよく、また測定対象ガスの温度、圧力は、常温常圧であってもよい。さらには、機器内の圧力が負圧の場合でも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のサンプリング装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明のサンプリング装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】従来のサンプリング方法を示す概略構成図である。
【図4】従来のサンプリング装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0031】
11・・蒸留分離装置、13・・サンプリング配管、14・・第1の弁、15・・第1の配管、16・・第2の弁、17・・サンプラー、18・・第2の配管、19・・第3の弁、20・・パージ容器、21・・第4の弁、22・・真空排気ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスを内部に有する機器と、
この機器に連通して機器からの測定対象ガスを流すサンプリング配管と、
このサンプリング配管に第1の弁および第2の弁を介して接続され、測定対象ガスが貯められるサンプラーと、
上記第1の弁と第2の弁とをつなぐ第1の配管から分岐された第2の配管に第3の弁を介して接続されるパージ容器と、
上記第2の配管に第4の弁を介して接続される真空排気ポンプを備え、
上記パージ容器の内容積がサンプリング配管の内容積よりも大きくされたことを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項2】
第1の弁の二次側および第2の弁の一次側において着脱可能としたことを特徴とする請求項1に記載のガスサンプリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスサンプリング装置を用い、以下の工程を順次実行することによって、機器内の測定対象ガスをサンプラー内に導入することを特徴するガスサンプリング方法。
第1工程:真空排気ポンプを動作させて、第1の配管、第2の配管、サンプラーおよびパージ容器内を排気する。
第2工程:サンプリング配管内のガスをパージ容器内に導入する。
第3工程:真空排気ポンプを動作させ、第1の配管および第2の配管内のガスを排気する。
第4工程:機器からの測定対象ガスをサンプラー内に導入する。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−76357(P2008−76357A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259260(P2006−259260)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】