説明

ガスセンサ及びその形成方法

【課題】低コストかつ高感度のガスセンサユニットを提供する。
【解決手段】ガスセンサユニットが、導電性高分子材料、及びガス分子を吸収するための吸収剤を含む。導電性高分子材料はポリアニリン(PAN)であり、吸収剤はポリウレタン(PU)である。導電性ポリマーの含有量は25〜55重量%であり、吸収剤の含有量は45〜75%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
発明の分野
本発明は、ガスセンサユニット及びその形成方法に関するものである。特に、本発明は低コストかつ高感度のガスセンサユニット及びその形成方法に関するものである。
【0002】
従来技術の説明
工業プロセス中に使用または生成される種々の毒性、可燃性、爆発性、あるいは危険性のあるガスの漏洩は、人間にとって有害であり、環境に大きな被害を生じさせ、これを防止するために、近年、種々のガス分子を検出することのできるセンサが開発され、すべての領域から注目されている。それ以来、研究開発は、高感度、低コスト、良好な選択性、速い応答、及び再現性、等に焦点を置いている。
【0003】
現在、一般に利用可能なガスセンサは、触媒燃焼型、金属半導体吸収型、及び導電性高分子材料型、等を含む。しかし、アルコールのようなガス用に一般に使用される触媒燃焼型または金属酸化物吸収型ガスセンサのような現在のガスセンサ材料のすべてが高温で動作させる必要があり、このため、その可燃性ガスの検出への応用は制限される。
【0004】
上記導電性高分子材料は、その特定の電子配置により交互共役結合を有するので、酸化または還元された後に、電子が分子鎖に沿って、あるいは分子鎖を横切って跳躍することができ、これにより材料が導電性になる。従って、この材料は常温においてガスを検出するために用いることができる。
【0005】
しかし、導電性高分子材料のガスセンサに関する現在の検討では、ポリピロール(PPy)のみが検討されてきた。現在、PPyは、高価でありその原料が容易に入手可能ではないので、商業的用途を有しない。
【0006】
(発明の概要)
従って、本発明は、低コストかつ高感度の利点を有するガスセンサユニットに指向したものである。
【0007】
本発明は、低コストかつ高感度のガスセンサユニットを形成する方法にも指向したものである。
【0008】
本発明は、導電性高分子材料、及びガス分子を吸収するための吸収剤を含むガスセンサユニットを提供する。導電性高分子材料はポリアニリン(PAN)であり、吸収剤はポリウレタン(PU)である。導電性高分子材料は、ガスセンサユニットの総重量の25〜55重量%であり、吸収剤はガスセンサユニットの総重量の45〜75重量%である。
【0009】
本発明の好適例によれば、吸収されたガス分子は、メタノール及びエタノールのようなアルコールの分子を含む。
【0010】
本発明の好適例によれば、さらに、ガスセンサユニットの抵抗を検出するための検出回路を含む。この検出回路は、アルミナ・セラミックリード・チップキャリア(CLCC)で構成することができる。
【0011】
本発明の好適例によれば、上記ガスセンサユニットを用いて、アルコール分子を吸収/脱着し、これによりガスセンサユニットの抵抗が変化することによって、アルコールのガスを検出する。
【0012】
本発明はガスセンサユニットを形成する方法を提供し、この方法は、導電性高分子材料を吸収剤と混合して混合物を形成するステップと;この混合物を硬化させるステップとを含む。この導電性高分子材料は、混合物の固体成分を100重量%として、45〜55重量%のPAN及び45〜75重量%のPUから成る。
【0013】
本発明の好適例によれば、上記混合物を硬化させる方法は、この混合物を用いて熱処理の下で膜を形成するステップを含む。
【0014】
本発明の好適例によれば、上記混合物を硬化させる方法は、この混合物を焼付け(ベーキング)乾燥させることを含む。さらに、混合物を焼付け乾燥させる条件は、50℃〜70℃の範囲の一定温度を280〜320分間維持することを含む。
【0015】
本発明の好適例によれば、上記混合物を形成するステップは、導電性高分子材料と吸収剤とを混合する際に溶剤を加えることを含み、ここでこの溶剤はトルエンを含む。
【0016】
本発明の好適例によれば、上記混合物を形成した後であってこの混合物を硬化させる前に、この混合物を検出回路上に塗布(コーティング)することを含む。この検出回路はアルミナCLCCで構成することができる。
【0017】
本発明の好適例によれば、上記ガスセンサユニットを用いて、ガスセンサユニットの抵抗を変化させ得るアルコールのガス分子を吸収/脱着することによってアルコールのガスを検出する。ガスセンサユニットの抵抗の変化の指標はガスの存在を示す。
【0018】
本発明では、導電性高分子材料PANを検出材料として用い、そしてガス分子の吸収剤としてPUを一緒に用いるので、従ってガスセンサのコストを効果的に低減すると共に、ガスセンサユニットの感度も効果的に向上させることができる。
【0019】
本発明の以上及び他の目的、特徴、及び利点を分かりやすくするために、以下に、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。
【0020】
これらの図面は、本発明をさらに理解させるために提供し、本明細書の一部を構成する。これらの図面は本発明の実施例を示し、その説明文と共に本発明の原理を説明するものである。
【0021】
(実施例の説明)
本発明によるガスセンサは主に、導電性高分子材料、及びガス分子を吸収するための吸収剤を含む。さらに、本発明の好適な実施例では、導電性高分子材料はPANであり、吸収剤はPUである。導電性高分子材料の濃度は25〜55重量%であり、吸収剤の濃度は45〜75重量%であり、これによりガスセンサユニットは好適な導電率、及び膜形成の機械的特性を有することができる。これに加えて、ガスセンサユニットが吸収することのできるガス分子は、メタノール及びエタノールのようなアルコールの分子を含む。
【0022】
本発明によるガスセンサユニットでは、導電率のためにPANを検出材料として用い、そしてガス分子を吸収するための吸収剤としてPUを一緒に用いるので、従って、ガスセンサのコストを効果的に低減すると共に、ガスセンサの感度を効果的に向上させることができる。さらに、この吸収剤は空気からガスを吸収することができ、このことはその化学的構造を変化させ、そしてガスセンサユニット(PAN+PU)の抵抗に変化を生じさせ、ガスセンサユニットのこうした抵抗の変化はリアルタイムで測定することができ、そしてガスの存在を示す。
【0023】
図1は、本発明の他の好適な実施例によるガスセンサユニットを形成するためのプロセス(工程)のフローチャートである。
【0024】
図1に示すように、ステップ100では、導電性高分子材料と吸収剤とを混合して混合物を形成する。導電性高分子材料はPANであり、吸収剤はPUである。PANの含有量は25〜55重量%であり、PUの含有量は45〜75重量%である。さらに、溶剤を加えて導電性高分子材料と吸収剤との混合を促進させることができる。例えば、この溶剤はトルエンである。
【0025】
次に、ステップ110では、この混合物を硬化させる。この混合物を硬化させるステップは、例えば、この混合物を温熱条件下で用いて膜を形成すること、あるいはこの混合物を焼付け乾燥させることを含む。混合物を焼付け乾燥させる条件は、例えば、50℃〜70℃の範囲の温度を280〜320分間維持することを含む。こうしてガスセンサユニットの製造が完了し、そしてガスセンサユニットを用いて、アルコールガスの分子を吸収/脱着することによってアルコールガスを検出することができ、この吸収/脱着は、それに応じたガスセンサユニットの抵抗の変化を生じさせる。
【0026】
これに加えて、ステップ100とステップ110との間に、上記混合物を検出回路上に選択的に塗布する。この検出回路は例えばアルミナCLCCで構成することができる。以下に、ガスセンサユニットを形成する方法を例示するいくつかの例を挙げる。
【0027】
例1:
例1は、2回連続するメタノール(MeOH)の吸収/脱着実験後のDC抵抗(インピーダンス)変化感度を検出することによって電気特性(抵抗)を測定するガスセンサユニット(PAN+PU)に指向したものである。出発材料は、40重量%のPAN及び60重量%のPU(NCOは5.56%)であり、検出は次の実験条件下で行う:(1) 半密封測定系;(2) 常温での自然蒸発;及び(3) ガスセンサユニットの検出面と約1.5cmのメタノールの液面との間の距離。
【0028】
第1の例のよるガスセンサユニットを製造する方法は以下のように記述することができる。所定量の(粘性状態の)PUとPANとを混合する。次に、適切な量の溶剤、例えばトルエンを加え、そして混合物を10分間攪拌して良く混合させる。次に、この混合物を、ピンなしのアルミナCLCCの表面上に塗布する。次に、結果的に生じた構造をオーブン内で、60℃の一定温度で約5時間焼付け乾燥させる。次に、結果的に生じた構造をオーブンから取り出して冷却する。ガスセンサユニットを用いてメタノールを吸収/脱着し、そしてDCインピーダンス特性を測定する。
【0029】
図2に、冷却後であってメタノールの吸収/脱着前のスタンバイ(待機)状態において、例1によるガスセンサユニット(PAN/PU:40/60重量%)がDCインピーダンス特性を測定している状態を示す。測定結果は、抵抗値も長時間にわたって約3740オーム〜約3760オームの間に維持されることを示している。
【0030】
次に、メタノールの連続的な吸収/脱着後に、例1によるガスセンサユニット(PAN/PU:40/60重量%)が、ガスを検出した後にDCインピーダンス特性を測定している状態を図3に示す。メタノールの蒸発なしでは、抵抗値はずっと定常状態に維持され、メタノールの1回目の蒸発後に、抵抗値は3740オームから3800オームまで時間と共に増加する。次に、メタノール溶液を除去し、これに伴い抵抗値は減少する。2回目の蒸発後には、抵抗値は3775オームから3835オームまで時間と共に増加する。次に、メタノール溶液を除去し、これに伴い抵抗値は減少する。
【0031】
即ち、メタノールが蒸発すると、ガスセンサユニットはメタノールガス分子を吸収し、結果的にガスセンサのDC抵抗は増加し、そしてメタノールを除去した後に、吸収されたメタノール分子がガスセンサから脱着し、結果的にガスセンサのDC抵抗は減少する。従って、インピーダンス変化の安定した傾向が示され、この傾向はほぼ直線的であり再現可能である。
【0032】
例2:
例2のガスセンサは、50重量%のPAN及び50重量%のPUを出発材料として用いること以外は例1と同様である。3回連続するメタノール(MeOH)の吸収/脱着実験を行って、抵抗(インピーダンス)変化感度を検出する。
【0033】
図4に、例2によるガスセンサユニット(PAN/PU:50/50重量%)が、ガスを検出した後にDCインピーダンス特性を測定している状態を示す。メタノールの蒸発なしでは、ガスセンサの抵抗値はずっと定常状態に維持され、メタノールの1回目の蒸発後に、ガスセンサの抵抗値は2485オームから2553オームまで時間と共に増加する。次に、メタノール溶液を除去し、これに伴いガスセンサの抵抗値は減少する。
【0034】
次に、2回目の蒸発後に、ガスセンサの抵抗値は2516オームから2547オームまで時間と共に増加する。そしてメタノール溶液を除去し、これに伴いガスセンサの抵抗値は減少する。
【0035】
次に、メタノール溶液の3回目の蒸発後に、ガスセンサの抵抗値は2519オームから2572オームまで時間と共に増加する。次に、メタノール溶液を除去し、これに伴いガスセンサの抵抗値は減少する。
【0036】
従って、PAN及びPUの含有量が共に50重量%に変化すると、メタノールのガス分子を検出した際にガスセンサの抵抗値は増加し、そしてメタノールを除去するとDC抵抗は減少する。これに加えて、(図3に示す)例1による2回連続する吸収/脱着か(図4に示す)例2による3回連続する吸収/脱着かにかかわらず、インピーダンス変化の安定した傾向が示され、この傾向はほぼ直線的であり再現可能である。
【0037】
例3:
例3では、50重量%のPAN及び50重量%のPUを出発材料として用い、そしてエタノールを用いた2回連続する吸収/脱着実験を行って抵抗(インピーダンス)変化感度を検出する。ガスセンサユニットを形成する方法及び実験条件は例1及び例2と同様である。
【0038】
図5に、冷却後であってエタノールの吸収/脱着前のスタンバイ(待機)状態において、例3によるガスセンサユニット(PAN/PU:50/50重量%)がDCインピーダンス特性を測定している状態を示す。測定結果は、抵抗値が長時間にわたって2485オームと2490オームとの間に維持されることを示す。
【0039】
次に、エタノールの連続的な吸収/脱着の後の、例3によるガスセンサユニット(PAN/PU:50/50重量%)のガスを検出した後の状態は、図6示す通りである。エタノールの蒸発なしでは、ガスセンサの抵抗値は定常状態に維持され、エタノールの1回目の蒸発後に、ガスセンサの抵抗値は2485オームから2560オームまで時間と共に増加する。次に、エタノール溶液を除去し、これに伴いガスセンサの抵抗値は減少する。2回目の蒸発後に、ガスセンサの抵抗値は2445オームから2583オームまで時間と共に増加する。次に、エタノール溶液を除去し、これに伴いガスセンサの抵抗値は減少する。
【0040】
例3によるガスセンサユニットがエタノールを検出した後に、DC抵抗が増加し、そしてエタノールを除去した後に、DC抵抗が減少し、これによりインピーダンス変化の安定した傾向が示され、この傾向はほぼ直線的であり再現可能であることがわかる。
【0041】
上述したように、本発明では、抵抗特性を有する低コストかつ高感度の「導電性」高分子材料PANを用い、そして好適な機械特性を有する高分子材料PUをPANキャリア(担体)と共に用いて機械特性を改善し、そしてガス分子を吸収する吸収剤として用いる。従って、本発明によるガスセンサユニットを用いて、リアルタイムで空気中の有害ガスを検出して警告を発することができる。さらに、本発明のガスセンサユニットにおける成分の重量比の範囲によれば、好適な導電率及び膜形成の機械特性を達成することができる。
【0042】
本発明は好適な実施例によって上述しているが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲を逸脱することなしに、本発明に種々の変更及び変形を加え得ることは当業者にとって明らかである。以上の観点から、これらの変更及び変形が請求項の範囲内に入るものであれば、本発明はこれらの変更及び変形をカバーする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の好適な実施例によるガスセンサユニットを形成するプロセスのフローチャートである。
【図2】本発明の第1実施例による、スタンバイ状態におけるガスセンサユニット(PAN/PU:40/60重量%)の抵抗値と時間との関係を示す曲線図である。
【図3】本発明の第1実施例による、ガスを検出した後のガスセンサユニットの抵抗値と時間との関係を示す曲線の図である。
【図4】本発明の第2実施例による、ガスを検出した後のガスセンサユニット(PAN/PU:50/50重量%)の抵抗値と時間との関係を示す曲線図である。
【図5】本発明の第3実施例による、スタンバイ状態におけるガスセンサユニット(PAN/PU:50/50重量%)の抵抗値と時間との関係を示す曲線図である。
【図6】本発明の第3実施例による、ガスを検出した後のガスセンサユニットの抵抗値と時間との関係を示す曲線の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサユニットの総重量の25〜55重量%のポリアニリン(PAN)から成る導電性高分子材料と;
ガスセンサユニットの総重量の45〜75重量%のポリウレタン(PU)から成る、ガス分子を吸収するための吸収剤と
を具えていることを特徴とするガスセンサユニット。
【請求項2】
前記吸収されるガス分子がアルコールの分子を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサユニット。
【請求項3】
前記アルコールの分子がメタノール分子から成ることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサユニット。
【請求項4】
前記アルコールの分子がエタノール分子から成ることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサユニット。
【請求項5】
さらに、前記ガスセンサユニットの抵抗を検出するための検出回路を具えていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサユニット。
【請求項6】
前記検出回路がアルミナ・セラミックリード・チップキャリア(CLCC)で構成されることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサユニット。
【請求項7】
前記ガスセンサユニットが、アルコールのガス分子を吸収/脱着するために使用され、前記ガスセンサユニットの抵抗の変化が、前記アルコールのガスの存在または不在の指標であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサユニット。
【請求項8】
導電性高分子材料を吸収剤と混合して混合物を形成するステップと;
前記混合物を硬化させるステップとを具え、
前記混合物は、前記混合物の固体成分を100重量%として25〜55重量%の導電性高分子材料及び45〜75重量%の吸収剤から成り、前記導電性高分子材料はPANから成り、前記吸収剤はPUから成ることを特徴とするガスセンサユニットの製造方法。
【請求項9】
前記混合物を硬化させるステップは、膜を形成し、前記膜を熱処理することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を硬化させるステップは、前記混合物を焼付け乾燥させることを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を焼付け乾燥させる条件は、50℃〜70℃の温度範囲の下で280〜320分間実行することであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を形成するステップは、前記導電性高分子材料と前記吸収剤とを混合する際に溶剤を加えることを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記溶剤がトルエンを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記混合物を硬化させる前に、前記混合物を検出回路上に塗布するステップを具え、前記ガスセンサユニットの抵抗変化がガスの存在または不在の指標であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記検出回路がアルミナCLCCで構成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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