説明

ガスタービンで低BTU燃料ガスを使用する方法及び系

【課題】低発熱燃料を高発熱燃料に転換してガスタービンに供給する。
【解決手段】燃焼系は、約100Btu/scf以下の発熱量を有する燃料を含む燃料供給部、この燃料供給部と流体連通した不活性ガス隔離ユニット74、並びに不活性ガス隔離ユニット74及び酸化剤78供給部の下流にそれと流体連通して位置している燃焼系を含んでいる。不活性ガス隔離ユニット74は、N2をCOから分離し、約110Btu/scf以上の発熱量を有する濃縮流を形成するように構成されたメンブランを含んでいる。発電装置を作動させる方法は、燃料流を不活性ガス隔離ユニット74に通して燃料流からN2を除去すると共に濃縮流を形成し、この濃縮流と酸化剤78流を燃焼させて燃焼流を形成することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に燃焼系に関し、より具体的には低い発熱量を有する燃料を使用する燃焼系及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の高性能発電用途は多くの場合ガスタービン技術を基礎としている。しかし、ガスタービンは通常天然ガス燃料で作動するように設計されている。広範囲に及ぶガスパイプライン接続及び液体天然ガス(LNG)輸入品により、ガス品質は様々に変動する。また、代替燃料の使用(例えば、化石燃料、合成ガス、ガス化産業廃棄物(例えば、パルプ産業の黒液、石油精製産業の残油及び鉄鋼産業からの(高炉ガスのような)ガス)も工業上必要になりつつある。消費者は、この新しい環境で、様々な燃料に適応するためのハードウェア又は制御機器の変更を最小にして、ガスタービン装置を作動させる必要がある。かかる代替燃料の多くに共通する重要な特徴はその低い発熱量である。
【0003】
世界的な大気汚染の問題のため、より厳格な排出基準が作られた。これらの基準は、電力産業により発生する窒素酸化物(NOx)、未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)の排出を規制している。特に、二酸化炭素は温室効果ガスとして認定され、環境へ排出される二酸化炭素の濃度を低下するために様々な技術が実施されている。
【0004】
合成ガス転換及びその後の精製(例えば、石炭ガス化プロセスによる生成後)を、石炭からの発電用のガス化複合発電(IGCC)発電装置に適用することができ、石炭から水素及び電気のような複数の生成物を生成するIGCCを基礎とするポリジェネレーション(polygeneration)プラントは、二酸化炭素の分離を含む他のプラントでも有用である。精製は、天然ガス、重油、バイオマス及びその他のイオウ含有重油炭素燃料から誘導された合成ガスを含めて、発電又はポリジェネレーションに使われるもののような他の炭化水素由来合成ガスにも適用可能である。
【特許文献1】米国特許第5558698号明細書
【特許文献2】米国特許第6053965号明細書
【特許文献3】米国特許第6425267号明細書
【非特許文献1】Macromol. Chem., Rapid Commun. 10, 1989, 145-147
【非特許文献2】Polymer Bulletin 20, 1988, 521-524
【非特許文献3】Microporous and Mesoporous Materials 76, July 22, 2004, 9-15
【非特許文献4】Journal of Chemical Physics, Volume 115, Number 14, October 8, 2001, pp.6728-6736
【非特許文献5】Journal of Science, 59 (March 20, 1991) pp.331-352
【非特許文献6】Journal of Membrane Science, 59 (February 8, 1991) pp.353-358
【非特許文献7】Journal of Membrane Science, 53 (April 5, 1990), pp.203-213
【非特許文献8】Journal of Membrane Science, 41 (October 12, 1987), pp.23-35
【非特許文献9】Journal of Membrane Science, 37 (October 21, 1987), pp.267-275
【非特許文献10】Journal of Membrane Science, 27 (September 30, 1985), pp.203-214
【非特許文献11】Zeolites 1992, Volume 12, pp.126-130
【非特許文献12】Separation Science and Technology, 23 (12 & 13), 1988, pp.1627-1643
【非特許文献13】Journal of Chemical Engineering of Japan, Volume 19, Number 5, 1986, pp.431-436
【非特許文献14】Journal of Chemical Engineering of Japan, Volume 19, Number 5, 1986, pp.464-466
【非特許文献15】Polymer 1992, 33, pp.585-592 (February 6, 1991)
【非特許文献16】Polymer 1993, 34, pp.562-565 (March 12, 1992)
【非特許文献17】Polymer Journal, Volume 21, Number 5, pp.433-438 (June 6, 1988)
【非特許文献18】Journal of Applied Polymer Science, Volume 57, (1995) pp.421-429
【非特許文献19】Journal of Applied Polymer Science, Volume 48, (1993) pp.1831-1842
【非特許文献20】Journal of Membrane Science, 138 (1998) pp.99-107 (August 25, 1997)
【非特許文献21】Journal of Membrane Science, 191 (April 16, 2001) pp.85-94
【非特許文献22】Macromolecules, Volume 36, Number 22, August 12, 2003, pp.8483-8488
【非特許文献23】Macromolecules 2002, 35, 4677-4684, Published on Web 05/09/2002
【非特許文献24】Journal of Membrane Science 222, June 2, 2003, pp.181-190
【非特許文献25】web.mit.edu/1.149/www/GER4206.pdfweb.mit.edu/1.149/www/reading.html, April 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、広範囲の燃料を利用しつつ、汚染性排出物(例えば、二酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NO)を最小にして効率的で安全に信頼できるやり方でガスタービンを作動させることが可能な方法及び系は極めて価値があり、絶えず求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、低い発熱量の燃料をより高い発熱量の燃料に転換するための電力系並びに方法及び系の実施形態と、その使用方法が開示されている。
【0007】
一実施形態では、発電装置は、約100Btu/scf以下の発熱量を有する燃料を含む燃料供給部と、この燃料供給部と流体連通した不活性ガス隔離ユニットと、不活性ガス隔離ユニット及び酸化剤供給部の下流に位置しそれと流体連通したガスタービンエンジンアセンブリとを含んでいる。この不活性ガス隔離ユニットは、NをCOから分離し、約110イギリス熱単位/標準立方フィート(Btu/scf)以上の発熱量を有する濃縮流を形成するように構成されたメンブランを含んでいる。ガスタービンエンジンアセンブリは電気を発生するように構成されている。
【0008】
一実施形態では、燃焼系は、約100Btu/scf以下の発熱量を有する燃料を含む燃料供給部と、この燃料供給部と流体連通した不活性ガス隔離ユニットと、不活性ガス隔離ユニット及び酸化剤供給部の下流に位置しそれと流体連通した燃焼系とを含んでいる。この不活性ガス隔離ユニットは、NをCOから分離し、約110Btu/scf以上の発熱量を有する濃縮流を形成するように構成されたメンブランを含んでいる。
【0009】
一実施形態では、発電装置を作動させる方法は、燃料流を不活性ガス隔離ユニットに通して、Nを燃料流から除去すると共に濃縮流を形成し、この濃縮流及び酸化剤流を燃焼させて燃焼流を形成することからなる。この燃料流は約100Btu/scf以下の発熱量を有しており、濃縮流は約110Btu/scf以上の発熱量を有している。
【0010】
上記及びその他の特徴は、添付の図面及び以下の詳細な説明によって具現化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで、代表的であるが限定することのない図面を参照する。図面中、類似の部分・要素は同様な符号を付した。
【0012】
高炉ガスのようなプロセス燃料から不活性ガス(主にN及び場合によりCO)を費用効果的に除去することができ、燃料発熱量を改良すると共にガスタービン用の燃料ガスとしてコークス炉ガスをブレンドするのを省略又は低減することが可能になるメンブランプロセス及びメンブランが開示されている。この開示された方法によると、低い発熱量の燃料に適応するために必要とされるタービンのハードウェア又は制御機器の変更を最小にしてガスタービン装置を作動させることが可能である。より具体的には、低い発熱量(例えば、低いBtu)のプロセス燃料ガス(例えば、約90Btu/scf以下)、特に、高炉ガス(「BFG」。N、CO、一酸化炭素(CO)及び水素(H)の混合物。窒素濃度は50体積%以上である)から、窒素(N)及び場合により他の不活性成分(例えば、CO)を除去するためのメンブランプロセス及びメンブランが開示されている。このプロセスでは、低いBtuの燃料ガス供給流を、ガスメンブラン分離条件下で不活性ガス(例えば、N及びCO)が多くなった透過画分と不活性ガスが少なくなった濃縮画分とに分離するのに充分な流束と選択性を有するメンブランと接触させる。この濃縮画分は、例えば約110Btu/scf以上、又はより具体的には約140Btu/scf以上、又はさらにより具体的には約180Btu/scf以上の実質的に向上したBtu値を有することができる。180以上のBtu/scfの濃縮画分はガスタービン発電用途に適切である。これより低い値の濃縮画分は、少なめのブレンドガス流を用いてガスタービンエンジン用途に使用することができる。また、このN/COを分離するメンブラン技術は、Jenbacher機械で使用するコークス炉ガスからの汚染物質の除去のような他の分離にも使用することができることに留意されたい。
【0013】
様々なプロセス燃料、例えば鋼プロセス、低い品質/ランクの石炭を用いた空気吹きガス化、精油所における酸素吹きガス化に由来する高炉ガスの発熱量は、天然ガスの発熱量の一部分でしかない。高炉ガスは通例約75〜約100Btu/scfの低い発熱量を有し、多くのガスタービンユニットは約180〜約200Btu/scfの発熱量を有する燃料を使用する。例えば、55体積%(体積%)のN、20体積%のCO、20体積%のCO及び2〜3体積%のH(高炉ガスの総体積基準)の組成を有する高炉ガスは約75Btu/scfの発熱量を有する。従って、この高炉ガスをガスタービンで使用するためには、コークス炉ガス、天然ガスなど(ブレンドガス)とブレンドして発熱量の値を180Btu/scfを超えるまで充分に増大させる。しかし、プロセス燃料から不活性ガスを除去すれば、燃料の発熱量が改良され、ブレンドガスを低減、さらには削除することが可能になるであろう。
【0014】
ガスタービンの性能は燃料の発熱量によって大きな影響を受ける。発熱量が低下すると、プロセスに熱を供給するために燃料流を増大させなければならないが、その追加の質量流は圧縮機で圧縮されない。質量流を増大すると幾つかの副次的な効果がある。1)タービンを通る質量流が増大すると、そのタービンで生み出される電力が増大する。圧縮機はこの増大した電力の一部を使用し、その結果圧縮機を横切る圧力比が増大し、サージ限界に近づく。2)また、タービン電力の増大させるにより、タービン及びパワートレイン内の全ての装置をその100%最大出力を超えて作動させることができる。従って、場合によっては、より高い限界に格付けされる装置(例えば、より高価な装置)が必要なことがある。3)燃料流量の増大と共に配管の大きさとコストが増大する。4)低めの発熱量のガスは普通タービンへの配送前に水で飽和しており、その結果燃焼生成物の熱伝達率が増大し、従ってタービンの温度が上昇する。5)発熱量が低下するにつれて燃料を燃焼するのに必要とされる空気の量が増大する。つまり、高い焼成温度のガスタービンは低い発熱量の燃料で作動させることができない。
【0015】
本明細書には、N及びその他の不活性成分(例えばCO)を、ガス流(例えば、低いBtuのプロセス燃料ガス、すなわち100Btu/scf以下の発熱量を有する燃料ガス)、特に高炉ガスから除去するためのメンブランプロセス及びメンブランが開示されている。このプロセスでは、燃料ガス供給流を、不活性ガス(例えば、N及びCO)が多くなった透過画分と不活性ガスが少なくなった濃縮画分とに燃料ガスを分離するのに充分な流束と選択性を有するメンブランと接触させる。分離の結果として、濃縮画分は実質的に向上した発熱量を有しており、直接(又は最小のブレンドガスと共に)発電装置に使用することができ、また、例えば、ガスタービン発電用途用の燃料としてタービンに送ることができる。
【0016】
図1は、代表的なガスタービンエンジンアセンブリ10を含む代表的な発電装置8の概略説明図である。ガスタービンエンジンアセンブリは空気流78中の酸化剤(例えば、空気)を受容し、一方燃料はミキサー(図示してない)及び燃焼器16に導入される前に不活性ガス(N、CO)隔離ユニット74を通る。不活性ガス隔離ユニットは不活性ガス選択メンブランを含んでいる。
【0017】
理論に制限されることはないが、ポリマーメンブランを介したガスの輸送は溶液−拡散機構によって行われる。溶液−拡散機構は、上流境界における捕捉(例えば、吸収及び/又は吸着)、メンブランを通る活性化された拡散(溶解度)及び下流側での放出(例えば、脱着及び/又は蒸発)の3つの段階を有すると考えられる。このガス輸送は、メンブランの上流及び下流側に存在する熱力学的な活動度の差並びにメンブラン材料を構成する分子と透過分子との間の相互作用力によって駆動される。活動度の差は濃度差を生じ、これが活動度を低下させる方向への拡散を起こす。使用する特定のメンブランは、いろいろな化学種の透過を制御する能力を基礎としている。
【0018】
ここでも、理論に制限されることはないが、1以上の多孔質無機メンブランを介したガスの輸送において、幾つかの機構が多孔質メンブランを横切るガスの輸送に関与する可能性がある。すなわち、クヌーセン拡散、表面拡散、毛管凝縮、層流及び/又は分子篩である。異なる機構の相対的寄与率は、メンブラン及びガスの性質、並びに温度及び圧力のような作動条件に依存する。(ゼオライト及び炭素モレキュラーシーブのような)モレキュラーシーブメンブランは多孔質であり、分子寸法(0.5nmより大きい)の孔を含有しており、そのため分子の大きさによる選択性を示すことができる。
【0019】
透過度又は厚さで規格化された透過率は、メンブランを通るガス流量に材料の厚さを乗じ、面積で除し材料を横切る圧力差で除したものであることに留意されたい。この量を測定するために、単位(barrer)は、10−10立方センチメートル/秒(標準温度及び圧力、0℃及び1気圧での体積)の流量×1センチメートルの厚さ÷平方センチメートルの面積÷1センチメートルの水銀差の圧力で表される透過率である。用語「メンブラン選択性」又は「選択性」は2つのガスの透過率の比であり、メンブランが2つのガスを分離する能力の尺度である。例えば、N選択メンブランの選択性はそのメンブランを通るNの透過率とCOの透過率との比である。メンブランは望ましくは約4以上、又はより具体的には約8以上、又はさらにより具体的には約12以上の選択性を有する。
【0020】
可能なメンブランとしては、ポリマーメンブラン(例えば、アクリレートコポリマー、マレイン酸コポリマー、ポリイミド、ポリスルホンなどのような非多孔質ポリマーメンブラン)、(優先的に配向されたMFIゼオライトメンブランのような)無機モレキュラーシーブ、ナノポーラスセラミックメンブラン、混合マトリックスメンブランのような有機/無機ハイブリッドメンブラン、遷移金属イオンを有する促進メンブラン及び固定化及び/又は架橋イオン性液体を含有するメンブラン、並びにこれらの1種以上を含む組合せがある。これらのメンブランは、螺旋巻きモジュール構成にパッケージされた平坦なシート形態、中空繊維形態、チューブ状形態などのような様々な形態で使用することができる。
【0021】
実施に際して、メンブランは支持層上に配置された分離層を含むことが多い。非対称無機メンブランの場合、多孔質支持体は分離層と異なる材料からなることができる。非対称無機メンブランの支持体材料としては、多孔質アルミナ、チタニア、コージライト、炭素、シリカガラス(例えば、Vycor(登録商標))及び金属、並びにこれらの材料を1種以上含む組合せがある。多孔質金属支持層としては、第一鉄材料、ニッケル材料、並びにステンレス鋼、鉄基合金及びニッケル基合金のようなこれらの材料を1種以上含む組合せがある。ポリマーメンブランはポリマー又は無機支持体上に配置することができる。例えば、可能なメンブランは、エチレンジアミン、トリ−n−プロピルアミン及びHOの混合蒸気中でB含有多孔質ガラスディスクから製造されたB−Al−ZSM−5ゼオライトメンブランである。理論に制限されることはないが、基材表面に対して平行な{101}/{011}及び{002}面の配向を有する結晶がメンブラン内で優位を占めていると考えられる。
【0022】
ガスタービンエンジンアセンブリ10は、高圧圧縮機14(例えば、流れを約45バール以上の圧力に圧縮することができる)、燃焼器16及び高圧タービン18を含むコアガスタービンエンジン12を含んでいる。ガスタービンエンジンアセンブリ10はまた、低圧圧縮機20(例えば、約5バールまで圧縮することができる)及び低圧タービン22も含んでいる。高圧圧縮機14と高圧タービン18は第1のシャフト24により結合されており、低圧圧縮機20は第2のシャフト26により中圧タービン(図示してない)に連結されている。代表的な実施形態では、低圧タービン22はシャフト30を介して発電機28のような負荷に連結されている。代表的な実施形態では、コアガスタービンエンジン12は、General Electric Aircraft Engines社(オハイオ州シンシナティ)から入手可能なLMS100である。
【0023】
ガスタービンエンジンアセンブリ10は、高圧圧縮機14に入る圧縮空気流の温度の低下を容易にするためにインタークーラー40を含んでいることができる。より具体的には、インタークーラー40は低圧圧縮機20と高圧圧縮機14との間で流体連通していて、低圧圧縮機20から排出される空気流が高圧圧縮機14に供給される前に冷却されるようにすることができる。
【0024】
発電装置8はまた排熱回収ボイラー(HRSG)50も含んでおり、この排熱回収ボイラー(HRSG)50は、ガスタービンエンジンアセンブリ10から排出される比較的高温の排気流を受容し、この熱エネルギーをHSRG50を通って流れる作動流体に伝達して、代表的な実施形態では蒸気タービン52を駆動するのに使用することができる蒸気を発生させるように構成されている。HSRG50の下流にドレイン54を配置して、HSRG50から排出される排気流から凝縮液を実質的に除去することができる。また、HRSG50の下流で、かつドレイン54の上流で除湿器(図示してない)を使用して、排気流からの水の除去を容易にすることもできる。この除湿器は乾燥剤空気乾燥系からなることができる。
【0025】
1以上のインタークーラー(40)は、個別に、水−空気熱交換器、空気−空気熱交換器などであることができる。水−空気熱交換器はこの中を流れる作動流体(図示してない)を有していることができる。例えば、作動流体は発電装置8に近接して位置する水域(例えば、湖)から水路を流れる原水であることができる。空気−空気熱交換器はこの中を流れる冷却空気流(図示してない)を有していることができる。
【0026】
作動中、燃料は不活性ガス隔離ユニット74を通り、ここでN及び場合により他の不活性(例えば不燃性)ガス(例えばCO)が燃料流から除去される。燃料流76は次いで燃焼器16に入り、そこで例えば圧縮機14からの空気と共に燃焼する。
【0027】
ガスタービンエンジンアセンブリ10は、華氏約600度(°F)(セ氏316度(℃))〜約1300°F(704℃)の温度を有する排気流を生成する。ガスタービンエンジンアセンブリ10から排出された排気流はHRSG50を通る流路を流れ、ここで排気流の熱エネルギーの実質的な部分がその中の水路を流れる作動流体に伝達されて、上記のように蒸気タービン52を駆動するのに利用することができる蒸気を発生させる。HSRG50は排気流の作動温度を、約75°F(24℃)〜約125°F(52℃)の温度に低下させるのを容易にする。代表的な実施形態では、HSRG50は排気流の作動温度をおよそ100°F(38℃)の温度に低下させるのを容易にする。一実施形態では、排気流はまた追加の熱交換器(図示してない)を通る流路に流されて、排気流からさらに水を凝縮させることができ、この水はその後例えばドレイン54を介して排出される。
【0028】
不活性成分の除去のためのメンブランプロセス及びメンブランを図1に示された発電装置に関連して説明して来たが、これらのメンブランとプロセスは発電装置のあらゆる変形又は気体流からのN除去が望ましい他の系で使用することができることに留意されたい。本発明のメンブランを含む装置は、不活性ガス(例えばN)除去後の濃縮流の発熱量が約180〜約200Btu/scfである場合に特に有用である。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は、本発明のメンブラン及びその用途をさらに例証するために挙げるものであり、本出願の広い範囲を限定するものではない。
【0030】
実施例1
コンピューターによる計算を実施して、図2の実施形態に従って燃料流中のCOからNを分離するプロセスを立証する。原料高炉ガスは表1に示す体積%組成と発熱量であると考えられる。ゼオライトメンブランの窒素、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素に対する相対的透過率は、それぞれ7.7、41、1及び130である。
【0031】
【表1】

表2は、この原料高炉ガスを記載されたゼオライトメンブランによりいろいろな割合の回収率(透過流量の供給流量に対する比、すなわちメンブランを透過する供給物質の体積百分率)で分離したときの計算された濃縮組成と発熱量を示す。
【0032】
【表2】

表2は、濃縮物の発熱量が、メンブランを透過する不活性な窒素及び二酸化炭素の結果として濃縮物中の一酸化炭素濃度の増大と共に増大していることを示している。濃縮物の発熱量は30%、50%及び70%の回収率に対してそれぞれ96、127及び189である。言い換えると、本発明の不活性ガス隔離ユニットによって、約115Btu/scf以上、又はより具体的には約130Btu/scf以上、又はさらにより具体的には約160Btu/scf以上、又はさらにより具体的には約175Btu/scf以上及びさらにより具体的には約185Btu/scf以上の発熱量を有する濃縮流が形成され得る。
【0033】
比較例1
ポリジメチルシロキサン(PDMS)メンブランに対してコンピューターによる計算を実施する。原料高炉ガスは表1の体積%組成であると仮定した。この原料高炉ガスの発熱量は75Btu/scfである。PDMSメンブランの窒素、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素に対する相対的透過率はそれぞれ0.76、6.4、1及び1.9である。
【0034】
表3は、この原料高炉ガスを記載されたPDMSメンブランによりいろいろな割合の回収率(透過流量の供給流量に対する比、すなわちメンブランを透過した供給物質の体積百分率)で分離したときの計算された濃縮組成と発熱量を示す。
【0035】
【表3】

表3は、濃縮流の発熱量が最小の増大であることを示している。PDMSメンブランは二酸化炭素を透過させるが窒素は透過させない。その結果、濃縮流中の高い発熱量の一酸化炭素の体積分率は10%、30%及び50%の回収率で大きく変化しない。従って、これらのPDMSメンブランは、高炉ガスの発熱量を有意に高めるのに有用ではない。
【0036】
比較例2
酢酸セルロース(CA)メンブランに対してコンピューターによる計算を実施する。原料高炉ガスは表1の体積%組成であると仮定する。この原料高炉ガスの発熱量75Btu/scfである。このCAメンブランの窒素、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素に対する相対的透過率はそれぞれ0.62、23、1及び50である。
【0037】
表4は、この原料高炉ガスを記載されたCAメンブランによりいろいろな割合の回収率(透過流量の供給流量に対する比、すなわちメンブランを透過した供給物質の体積百分率)で分離するときの計算された濃縮組成と発熱量を示す。
【0038】
【表4】

ここで、濃縮流の発熱量は10%、30%及び50%の回収率で最小の増大又は僅かな発熱量低下を示す。CAメンブランは二酸化炭素を透過させ、窒素を透過させない。その結果、濃縮流中の高い発熱量の一酸化炭素の体積分率は10%、30%及び50%の回収率で大きくは変化しなかった。従って、これらのCAメンブランは高炉ガスの発熱量を大幅に高めるのに有用ではない。
【0039】
本発明のメンブランとプロセスによると、気体燃料中のCOからNを分離することができ、従ってその燃料の発熱量を高めることができる。燃料(例えば、高炉ガス)から単にCOを除去すると、発熱量は10Btu/scf未満だけ増大する。しかし、高炉ガスからNを除去すると、発熱量は約40Btu/scf以上、又はより具体的には約60Btu/scf以上、又はさらにより具体的には約80Btu/scf以上、さらにより具体的には約100Btu/scf以上増大する。このメンブランではCOからNを分離することが可能であり、その結果濃縮流中のCO濃度は、濃縮流の総体積を基準にして約35体積%以上、又はより具体的には約45体積%以上、さらにより具体的には約55体積%以上である。
【0040】
本明細書に開示した範囲は包括的で組合せ可能である(例えば、「約25体積%以下、又はより具体的には約5〜約20体積%」の範囲は終端点及び「約5〜約25体積%」の範囲のあらゆる中間の値を含む、等)。「組合せ」はブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。また、本明細書中で用語「第1の」、「第2の」などはいかなる順序、量、又は重要性も示すものではなく、1つの要素を他の要素から区別するために使用されており、本明細書中で単数形の用語は量の制限を意味するものではなく、標記のものものが1以上存在することを意味する。量に関して使用する修飾語「約」は表示されている値を含み、文脈により示される意味を有する(例えば、特定の量の測定に伴う程度の誤差を含む)。本明細書を通じて使用する「一実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」などとは、その実施形態に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が、本明細書に記載した1以上の実施形態に含まれ、他の実施形態で存在することも存在しないこともできることを意味している。加えて、記載された要素は、様々な実施形態では適宜組み合わせることができるものと理解されたい。
【0041】
引用した特許、特許出願及びその他の文献は援用によりその全体が本明細書の内容の一部をなす。しかし、本出願の用語が援用された文献の用語と矛盾又は抵触する場合、本出願の用語が援用された文献の抵触する用語より優先する。
【0042】
好ましい実施形態に関連して本発明を説明して来たが、当業者には理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変化をなすことができ、またその要素を等価物で置き換えることが可能である。加えて、特定の状況又は材料を本出願の教示に適合させるべく、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの修正をなすことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に入るあらゆる実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、不活性ガス隔離ユニットを有する代表的な発電装置の概略説明図である。
【図2】図2は、ゼオライトメンブランについて、濃縮物(例えば、流体)中の体積%に対して透過した体積%で表したメンブラン透過率を表示するグラフである。
【符号の説明】
【0044】
8 発電装置
10 ガスタービンエンジンアセンブリ
12 コアガスタービンエンジン
14 高圧圧縮機
16 燃焼器
18 高圧タービン
20 低圧圧縮機
22 低圧タービン
24 第1のシャフト
26 第2のシャフト
28 発電機
30 シャフト
32 不活性ガス隔離ユニット
40 インタークーラー
50 排熱回収ボイラー(HRSG)
52 蒸気タービン
54 ドレイン
74 不活性ガス隔離ユニット
76 燃料流
78 酸化剤(空気流)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約100Btu/scf以下の発熱量を有する燃料を含む燃料供給部、
燃料供給部と流体連通しており、NをCOから分離し、約110Btu/scf以上の発熱量を有する濃縮流を形成するように構成されたメンブランを含む不活性ガス隔離ユニット(32)、並びに
不活性ガス隔離ユニット(32)及び酸化剤(78)供給部の下流にありそれと流体連通しており、電気を発生するように構成されたガスタービンエンジンアセンブリ(10)
を含んでなる発電装置(8)。
【請求項2】
ガスタービンエンジンアセンブリ(10)が、さらに、
酸化剤(78)供給部の下流にありそれと流体連通した圧縮機、
圧縮機及び不活性ガス隔離ユニット(32)の下流にありそれと流体連通した燃焼器、並びに
燃焼器の下流にありそれと流体連通したタービン
を含む、請求項1記載の発電装置(8)。
【請求項3】
メンブランが、ポリマーメンブラン、無機モレキュラーシーブ、ナノポーラスセラミックメンブラン、有機/無機ハイブリッドメンブラン、遷移金属イオンを含む促進メンブラン、固定化及び/又は架橋イオン性液体を含むメンブラン、並びにこれらの1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の発電装置(8)。
【請求項4】
無機モレキュラーシーブがMFIゼオライトメンブランからなる、請求項3記載の発電装置(8)。
【請求項5】
メンブランが、約140Btu/scf以上の発熱量を有する濃縮流を形成するように構成されている、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の発電装置(8)。
【請求項6】
メンブランが約4以上のN/CO選択性を有する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の発電装置(8)。
【請求項7】
約100Btu/scf以下の発熱量を有する燃料流(76)を、不活性ガス隔離ユニット(32)に通して、燃料流(76)からNを除去すると共に、約110Btu/scf以上の発熱量を有する濃縮流を形成し、
濃縮流及び酸化剤(78)流を燃焼させて燃焼流とする
ことを含んでなる、発電装置(8)を作動させる方法。
【請求項8】
さらに、
燃焼させる前に、酸化剤(78)流を圧縮し、
燃焼流をタービンに通す
ことを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
濃縮後の発熱量が約140Btu/scf以上である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、燃焼させる前に、濃縮流を抽気流と混ぜ合わせて濃縮後の発熱量を約180Btu/scf以上に増大させることを含む、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−157226(P2008−157226A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324110(P2007−324110)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】