説明

ガスタービンエンジン、ファンブレード及びその設計方法

【課題】チャネル内に特定位置に生じる問題に応じた充填材102,104を含んだファンブレードを提供する。
【解決手段】ガスタービンエンジンのファンブレード20は、前縁21と後縁22との間に延びる主胴体部28を有する。主胴体部28内にはチャネル30が形成され、該チャネル間にリブ26が延びている。ファンブレード20は、チャネル内に配された剛性材料102および減衰材料104を含む。剛性材料102は、ファンブレードにさらなる剛性をもたらすように選択され、減衰材料104は、減衰特性をもたらすように選択される。チャネル101は、剛性材料102により充填される。チャネル103は、剛性材料102が充填された部分と、減衰特性を有するように選択された減衰材料104が充填された部分と、を有する。チャネル41は、材料104を含み、チャネル300は、材料102,104を含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジン用の中空のファンブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、圧縮セクションに空気を供給するファンを備える。空気は圧縮セクションで圧縮され、その後、燃焼セクションに送られる。空気は燃焼セクションで燃料と混合されて燃焼される。燃焼生成物が下流へと送られ、タービンロータを通流して該ロータを回転させ、この回転により圧縮機およびファンが回転する。
【0003】
ファンは、複数のブレードを有するロータを有する。
【0004】
一形式のファンブレードは、複数のチャネルを有する中空のファンブレードであり、該チャネルは、ファンブレードの主胴体部における中間リブによって画定される。主胴体部には、チャネルを閉じるための外側スキン(外板)が取付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレードは、ファンブレードの長さに応じて変動する内部応力などの種々の問題を有する。
【0006】
ブレードのチャネルに補強充填材を含むことが周知である。補強充填材としては、ハニカム、波状、金属発泡体等がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例はファンブレードに関する。例示的なファンブレードは、前縁と後縁との間に延びるとともに、主胴体部を有する。主胴体部内にチャネルが形成され、該チャネル間に複数のリブが延びる。ファンブレードは、ダブテールと、ダブテールから半径方向外側に延びるエアフォイルと、を備える。少なくとも2つの材料がチャネル内に配される。2つの材料は、第1の材料および第2の材料を含み、第1の材料は、ファンブレードにさらなる剛性をもたらすように選択され、第2の材料は、減衰特性をもたらすように選択される。
【0008】
ファンブレードの他の実施例では、少なくとも1つのチャネルは、主胴体部内において開口端部から閉鎖端部まで延びている。
【0009】
さらにファンブレードの他の実施例では、少なくとも1つのリブにカバースキンが接合される。
【0010】
ファンブレードの一実施例では、カバースキンは少なくとも1のチャネルの開口端部を覆う。
【0011】
ファンブレードの一実施例では、第1の材料は、半径方向内側に位置するチャネルに用いられ、第2の材料は、半径方向外側に位置する同じチャネルに用いられる。
【0012】
ファンブレードの一実施例では、少なくとも1つのチャネルは第1の材料だけを含む。
【0013】
ファンブレードの一実施例では、少なくとも1つのチャネルは第2の材料だけを含む。
【0014】
ファンブレードの一実施例では、第2の部材はゴム発泡体である。
【0015】
ファンブレードの一実施例では、第1の部材は金属発泡体である。
【0016】
ファンブレードの一実施例では、エアフォイルに沿った屈曲する領域におけるノードが特定され、前記ノードにおけるエアフォイルを支持するように選択された位置における少なくとも1つのチャネルに第2の材料が含まれる。
【0017】
ファンブレードの一実施例では、前記ノードに対応するチャネルにおいて、第2の材料の半径方向外側および半径方向内側に第1の材料が存在する。
【0018】
ファンブレードの一実施例では、第1および第2の材料は、主胴体部を形成する材料より低密度である。
【0019】
ファンブレードの一実施例では、第1の材料は、第2の材料よりもより高い剛性を有し、第2の材料は、第1の材料よりもより優れた減衰特性を有する。
【0020】
本発明の他の実施例は、ファンブレードを設計する方法に関する。このファンブレード設計方法は、中空のファンブレード内においてさらなる剛性を必要とする領域およびさらなる減衰を必要とする他の領域を特定するステップと、ファンブレード内に形成されたチャネル内においてさらなる剛性を必要とする位置に剛性材料を配設するステップと、ファンブレード内に形成されたチャネル内においてさらなる減衰を必要とする位置に減衰材料を配設するステップと、を含む。
【0021】
ファンブレード設計方法の他の実施例では、中空のファンブレードにおける振動ノードを特定する。
【0022】
さらに、ファンブレード設計方法の他の実施例では、前記ノードに対応する領域においてチャネル内に減衰材料を配設する。
【0023】
本発明の他の実施例は、空気を圧縮セクションに供給するファンセクションを有するガスタービンエンジンに関する。空気は圧縮セクションにおいて圧縮されて、燃焼器に供給され、次いで、空気は燃焼器において燃料と混合されて燃焼される。燃焼生成物はタービンセクションを通って下流に流れる。ファンセクションは、複数のファンブレードを有し、該ファンブレードは、前縁と後縁との間に延びる主胴体部を備え、該主胴体部内にはチャネルが形成されている。該チャネルの間には複数のリブが延びている。ファンブレードは、ダブテールと、ダブテールから半径方向外側に延びるエアフォイルと、を備える。少なくとも2つの材料がチャネル内に配される。2つの材料は、第1の材料および第2の材料を含み、第1の材料は、ファンブレードにさらなる剛性をもたらすように選択され、第2の材料は、減衰特性をもたらすように選択される。
【0024】
ガスタービンエンジンの他の実施例では、少なくとも1つのチャネルは、主胴体部内において開口端部から閉鎖端部まで延びる。
【0025】
さらにガスタービンエンジンの他の実施例では、少なくとも1つのリブにカバースキンが接合される。
【0026】
本発明の上記および他の特徴は、後述する記載の発明を実施するための形態によって明らかになるであろう。以下、図面について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ガスタービンを示す図。
【図1A】ファンブレードの一実施例を示す図。
【図1B】図1Aのファンブレードの他の特徴部分を示す図。
【図2】図1Aの線2−2に沿った断面図。
【図3】図1Aのファンブレードの主胴体部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1Aにガスタービンエンジン210を図示する。図示するように、ガスタービンエンジン210は、ファン250、圧縮セクション254、燃焼器260およびタービンセクション262を有する。ファン250は、複数のファンブレード20を有する。圧縮セクション254は、低圧圧縮機256および高圧圧縮機258を含む。タービンセクション262は、高圧タービン264および低圧タービン266を含む。高圧圧縮機258は、第1のスプール268を介して低圧タービン264によって駆動される。低圧圧縮機256は、第2のスプール270を介して低圧タービン266によって駆動される。ファン250のファンブレード20は、低圧タービン266によって回転される。ファンは、ギア272により第2のスプール270に接続されている。
【0029】
ファン250は、圧縮セクション254に空気を送る。空気は、圧縮セクションにより圧縮されて、燃焼器260へと送られる。燃焼器における燃焼生成物は、タービンセクション262を通って下流へと送られる。
【0030】
図1Bに図示するファンブレード20は、鳩尾型のテール部分つまりダブテール24から半径方向外側に延びるエアフォイル18を含む。前縁21および後縁22により、エアフォイル18の前方および後方の境界が画定される。
【0031】
図1Cに図示するように、ファンロータ16は、半径方向外側に延びるエアフォイル18を含むファンブレードを取り付けるようにダブテール24を受ける。ロータが回転駆動されると、ファンブレードも共に回転する。ファンブレード20のロータ16に隣接する部分には、半径方向外側において生じるよりもより高い応力が生じる。
【0032】
図2は、エアフォイル18におけるファンブレード20の断面図である。図示するように、前縁21には、主胴体部28に固定されたキャップ37が含まれる。主胴体部28におけるキャビティやチャネル30を閉じるための外板つまりカバースキン(cover skin)32が配設される。主胴体部28、キャップ37およびカバースキン32は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。代替例として、チタン、チタン合金や他の適切な金属等の他の材料を用いてもよい。
【0033】
また、図では、1つのカバースキンを有するファンブレードを示し、チャネル30は内側端部が閉鎖されているが、ファンブレードは、主胴体部の厚さの全体に亘って延在するチャネルを含み、両側にカバースキンを有するものであってもよい。
【0034】
図示するように、図2に示す断面図において、チャネル30は複数のリブ26により分離されている。チャネル30内には充填材100が充填される。充填材の重量は、通常、主胴体部28よりも軽い。後述するように、本用途においては、特定の種類の充填材がファンブレード20の領域に亘って用いられる。図示した充填材100は、チャネル30を完全に満たしているが、このような構成でなくてもよい。
【0035】
図3は主胴体部28を図示する。複数のチャネル30は、前部つまり前縁21と後部つまり後縁22との間に配され、半径方向内側の端部と半径方向外側の先端部との間で異なっている。図示するように、いくつかのチャネル30は、実質的に半径方向上方に延びている。チャネル40等の他のチャネルは、前縁21に向かって屈曲している。チャネル41は、実質的に主胴体部28の中間部分から前縁21に向かって延びている。
【0036】
重量を減少させるため、チャネルの数を最大限にし、リブの数を最小限にすることが望ましい。しかし、より高い耐久性および最小のブレード応力をもたらすため、半径方向内側エッジ42に近接する部分にさらなる剛性が必要となる。
【0037】
また、エンジンの運転範囲に亘る特定の運転ノード(節)(operational nodes)を避けるブレードを形成することが望ましい。ブレードの外側エッジや先端部にかけての付加的な質量により、基本ノード(節)(fundamental nodes)から移行することに対しての問題が生じる。
【0038】
図2から分かるように、充填材100は、チャネル内に充填される。従来は、剛性をもたらす充填材だけが用いられていた。
【0039】
本発明では、図3に示す2つの特定の材料102,104により充填材をもたらすことができる。したがって、主胴体部28の半径方向の範囲の一部に亘って延びるチャネル101等のチャネルは、材料102(剛性材料ともいう)により充填される。材料102は、さらなる剛性をもたらすように選択される。一例として、材料はアルミニウム発泡体など金属発泡体である。波状の材料(コルゲート材)を用いてもよい。半径方向外側に延びるチャネル103等の他のチャネルは、材料102が充填された部分と、減衰特性を有するように選択された材料104(減衰材料ともいう)が充填された部分と、を有する。減衰特性を有する材料は、例えば、ゴム発泡体である。
【0040】
チャネル41は、材料104だけを有するものとして図示されている。
【0041】
このようにして、各チャネルは、エアフォイルにおける位置に応じて特定の特性を有するように構成される。基本ノードを避けるための減衰が最も重要な半径方向外側端部では、材料104によって所望の特性を実現することができる。一方、剛性が最も重要である半径方向内側部分では、材料102によってより高い剛性がもたらされる。例えば、チャネル300のように、所望であれば、材料102,104が充填されないチャネルがあってもよい。
【0042】
2種類の材料を用いる他の例としては、チャネル110がある。この実施例では、ノード又は振動により著しく屈曲する領域を位置112で特定している。1つ以上のノード(節)が特定される場合もある。減衰材料104は、位置112に用いられ、剛性材料102は、位置112に対して半径方向外側および半径方向内側の位置に用いられる。
【0043】
本発明は、中空のファンブレード内に2つの種類からそれぞれ利益を受ける領域があることを認識している。特定位置に生じる問題に応じて選択される3種類以上の特定の材料を用いてもよいことを理解されたい。
【0044】
材料102,104は、主胴体部28の材料に比べて、低密度であり、重量が著しく軽い。したがって、材料102,104を加えることによって、主胴体部が中実であるときの重量まで主胴体部28全体の重量が増すことはない。
【0045】
さらに、材料102は、材料104よりも剛性が高く、材料104は、材料102よりも優れた減衰特性を有する。利用可能な剛性材料としては、例えば、ERGエアロスペースコーポレイション(ERG Aerospace Corporation)から利用可能なDuocel(登録商標)アルミニウム発泡体(Duocel(登録商標)aluminum foam)がある。また、減衰材料としては、例えば、AMS−3356シリコ−ンゴム化合物がある。他の材料を用いてもよいことを理解されたい。
【0046】
本発明の実施例について説明したが、図示した実施例は例示的なものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
18 エアフォイル
20 ファンブレード
26 リブ
28 主胴体部
30 チャネル
32 カバースキン
37 キャップ
102 剛性材料
104 減衰材料
210 ガスタービンエンジン
250 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前縁と後縁との間に延びるとともに、内部にチャネルが形成され、該チャネル間に延びる複数のリブを備えた主胴体部と、
チャネル内に配された少なくとも2つの材料と、
を備えたファンブレードであって、
ファンブレードは、ダブテールと、ダブテールから半径方向外側に延びるエアフォイルと、を備え、
前記2つの材料は、第1の材料および第2の材料を含み、第1の材料は、ファンブレードにさらなる剛性をもたらすように選択され、第2の材料は、減衰特性をもたらすように選択されることを特徴とするファンブレード。
【請求項2】
少なくとも1つのチャネルは、主胴体部内において開口端部から閉鎖端部まで延びることを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項3】
少なくとも1つのリブに接合されるカバースキンを有することを特徴とする請求項2に記載のファンブレード。
【請求項4】
カバースキンは、前記少なくとも1のチャネルの開口端部を覆うことを特徴とする請求項3に記載のファンブレード。
【請求項5】
前記第1の材料は、半径方向内側に位置するチャネルに用いられ、
前記第2の材料は、半径方向外側に位置する同じチャネルに用いられることを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項6】
少なくとも1つのチャネルは、第1の材料だけを含むことを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項7】
少なくとも1つのチャネルは、第2の材料だけを含むことを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項8】
第2の部材は、ゴム発泡体であることを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項9】
第1の部材は、金属発泡体であることを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項10】
エアフォイルに沿った屈曲する領域におけるノードが特定され、
前記ノードにおけるエアフォイルを支持するように選択された位置における少なくとも1つのチャネルに第2の材料が含まれることを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項11】
前記ノードに対応するチャネルにおいて、前記第2の材料の半径方向外側および半径方向内側に第1の材料が存在することを特徴とする請求項11に記載のファンブレード。
【請求項12】
第1および第2の材料は、主胴体部を形成する材料より低密度であることを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項13】
第1の材料は、第2の材料よりも高い剛性を有し、
第2の材料は、第1の材料よりも優れた減衰特性を有することを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項14】
少なくとも1つのチャネルは第1および第2の材料を有さないことを特徴とする請求項1に記載のファンブレード。
【請求項15】
ファンブレードを設計する方法であって、
中空のファンブレード内においてさらなる剛性を必要とする領域およびさらなる減衰を必要とする他の領域を特定するステップと、
ファンブレード内に形成されたチャネル内においてさらなる剛性を必要とする位置に剛性材料を配設するステップと、
ファンブレード内に形成されたチャネル内においてさらなる減衰を必要とする位置に減衰材料を配設するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
中空のファンブレードにおける振動ノードを特定することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ノードに対応する領域においてチャネル内に減衰材料を配設することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
空気を圧縮セクションに供給するファンセクションを有するガスタービンエンジンであって、
空気は圧縮セクションにおいて圧縮されて、燃焼器に供給され、次いで、空気は燃焼器において燃料と混合されて燃焼され、燃焼生成物がタービンセクションを通って下流に流れ、
ファンセクションは、複数のファンブレードを有し、該ファンブレードは、前縁と後縁との間に延びるとともに、内部にチャネルが形成され、該チャネルの間に延びる複数のリブを備えた主胴体部と、チャネル内に配された少なくとも2つの材料と、を備え、
ファンブレードは、ダブテールと、ダブテールから半径方向外側に延びるエアフォイルと、を備え、
前記2つの材料は、第1の材料および第2の材料を含み、第1の材料は、ファンブレードにさらなる剛性をもたらすように選択され、第2の材料は、減衰特性をもたらすように選択されることを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項19】
少なくとも1つのチャネルは、主胴体部内において開口端部から閉鎖端部まで延びることを特徴とする請求項18に記載のガスタービンエンジン。
【請求項20】
少なくとも1つのリブに接合されるカバースキンを有することを特徴とする請求項18に記載のガスタービンエンジン。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96416(P2013−96416A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241532(P2012−241532)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION